今日は一本です。サービスデーで1,000円でしたので、
「スイートリトルライズ」を見ました。
評価:
– 「お家に帰ろう」なメンヘラ雰囲気映画。【あらすじ】
瑠璃子と聡は結婚三年目のおしどり夫婦である。しかしそれは見た目だけ、夫との生活にドキドキが足りないと感じた瑠璃子はふと知り合った春夫と浮気を始める。一方、夫の聡も大学のサークル同窓会で再開した後輩・しほと浮気をする。しかし春夫が彼女と別れて本気で自分にアプローチしてきたことに尻込みし、瑠璃子は夫の元に返る。その事情を悟り、聡もまた浮気をやめる事を匂わせる、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 夫婦の日常。
※第1ターニングポイント -> 瑠璃子の個展に春夫が訪ねてくる。
第2幕 -> 浮気。
※第2ターニングポイント -> 春夫が文と別れる。
第3幕 -> 瑠璃子の決心。
【感想】
本日は江國香織原作の「スイートリトルライズ」です。あんまり見る気は無かったんですが、1000円だったので入ってみました。小さな箱でしたが、女性を中心に結構お客さんが入っていました。ホワイトデーに女性だけで江國香織を見に来てる時点で「お察しください」なわけですが、それを言ったら私もなのであまり言及しません(笑)。
さて、本作については実はあんまり言及するようなネタもありません。というのも私の大嫌いな「雰囲気映画」だからです(苦笑)。
まず、本作のストーリーは上記の「あらすじ」が全てです。瑠璃子が夫婦生活に満足出来なくなって、ドキドキを求めるために浮気するが、相手が本気になったのにビビって元のサヤに戻る話です。このストーリーなら普通は瑠璃子に変化があるはずです。例えばポジティブ展開なら夫と積極的にコミニュケーションをとるようになったり、ネガティブ展開なら現状に歯を食いしばりながら耐えるようになったり。成長でも諦めでもなんでもいいんですが、必ず何かしら変化しないと物語にならないわけです。
ところが、、、本作ではそういう描写は全くありません。もっというと、そもそも瑠璃子と聡が「愛し合っている」という描写が無いんですね。だから初っ端からまったく乗れないわけです。聡はゲーマーで家に居るときは自室に籠もりがちで、一方の瑠璃子はわけ分からないことをブツブツ言ってる不思議ちゃんです。結局この2人がなんで夫婦なのかという肝心の前提が全っ然見えてこないんです。せめてオープニングの5分ぐらいで結婚前の恋愛状態を見せるとかの「愛し合っている描写」が無い限り、その後の展開がまったく意味の無いものになってしまいます。たぶん本作は「愛し合っていた2人が、結婚3年目にしてお互いに慣れすぎて愛を実感できなくなってしまった」っていう状況のもとで「いろいろあって互いの愛を実感できるようになる」「自分の(精神的な)安息の地としての家族/我が家へ戻る」って話をやろうとしてると思います。でも前提状況が描けていないために、さっぱり意味不明な映画になっています。
そんなわけ分からない話の中でも、本作のテーマを考える上で完全に失敗していると思うのは聡の描写です。聡が夫婦関係に不満を持っている様子が一切描かれませんので、少なくとも映画を見る限りでは聡が浮気したのは単にしほに誘惑されたからです。これってテーマにまったく合ってないんですね。夫婦がお互い浮気するのはいいんですが、一方は夫との恋愛に物足りなさを感じ、一方は単なる浮気(笑)。つまり根本的に浮気した理由がずれています。これじゃあ「互いの愛を実感」するのは無理です(笑)。なにせ、本作のなかで聡は浮気を辞めていません(苦笑)。いいのかそれで、、、。
【まとめ】
え~ここまでの文章であえてストレートな表現を避けてきたんですが、最後に身も蓋もないことを書きます。
馬鹿いってんじゃないよ
お前と俺は ケンカもしたけど
ひとつ屋根の下暮らして来たんだぜ
馬鹿いってんじゃないよ
お前のことだけは
一日たりとも忘れたことなど なかった俺だぜ
(以下略)
もうお分かりですね。本作は、ヒロシ&キーボーの名曲「3年目の浮気」を再解釈しただけです(笑)。再解釈と言っても、サイフォンやテディベアといったOL風オシャレ要素を足しただけ。ところが、中谷さんの演技の問題か演出家の問題かはわかりませんが、オシャレと言うよりは瑠璃子が単なるサイケな変人にしか見えないんです。しかも聡は普通に浮気。テーマが描けていない以上は結局雰囲気しか無いので、もうどうにもなりません。中谷さん以外の役者さんは結構良かったと思うんですが、、、ご愁傷様です。
作中で聡が瑠璃子を「彼女には実在感が無いんだ」と評しますが、それ言っちゃうと本作の世界全体に実在感がありません(苦笑)。この台詞が出た瞬間に「お、メタ構造の日本版レボリューショナリーロードか?」と期待した自分が恨めしいです。あ~~~8時間前にタイムリープしたい(笑)。
本作が気になった方はレンタルで「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」を借りてきて、本作を無かったことにするのがオススメです!!!