第9地区

第9地区

本日はSF映画2本立てです。

1本目は「第9地区」です。

評価:(95/100点) – ヘタレ小役人よ、いまこそ立ち上がれ!!!


【あらすじ】

今から20年前、南アフリカのヨハネスブルグに宇宙船が飛来してきた。そのまま居着いてしまったエイリアンは、その容姿とゴミ漁りの意味を込めて「エビ」と呼ばれ第9地区に隔離されていた。そして現代、軍事組織MNU(マルチ・ナショナル・ユナイテッド=多国籍連合)はエビ達をヨハネスブルグの郊外に移住させる計画を発動する。計画の総指揮は、エイリアン課の真面目な職員・ヴィカスに任された。軍人達の暴走を横目に、ヴィカスは第9地区に向かい移住同意書へのサインを集めるが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> UFOの出現からこれまでの概要。移住計画の発令。
 ※第1ターニングポイント -> ヴィカスの左腕がエビ化する。
第2幕 -> ヴィカスの逃走と黒い液体の奪還作戦。
 ※第2ターニングポイント -> 司令船が撃墜される。
第3幕 -> 第9地区での最終決戦。


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【感想】

やっと、、、やっと日本公開されました。昨年の夏休み映画にして全米で大ヒットした昨年のSF最高傑作、30億というCG映画にしては安い制作費ながら205億円の興収を叩きだしたモンスター映画、「District9」です。
すでにDVDが出てますので映画ファンならばチェック済みの方も多いと思いますが、ようやく9ヶ月遅れでの公開です。去年の秋頃はDVDスルーすら怪しかった冷遇のされ方でしたが、なんとかかんとか公開されたことに安堵しつつ、やっぱり日本の配給会社の方針に疑問を感じずにはおれません。
本作のストーリーは劇場でご堪能いただくとして、やはりずば抜けているのは観客感情の操り方です。
序盤はエビが完全に卑しい低脳なエイリアンにしか見えないんですが、あるポイントからエビ同士の会話シーンが入るようになります。そしてヴィカスがエビ化するにつれ徐々にエビの事情が見えてきて、観客もエビに親近感が湧くようになります。それと同時に、エビにだってインテリで良い奴がいるということが明らかになります。そして極めつけは地下ラボであるものを発見するシーンです。ここで完全に人間側が悪になります。そして人間どもの非道さが観客に浸透してフラストレーションがピークに達した所で、遂にヘタレのヴィカスが熱血ヒーローモードに入るわけです。それこそ「ガンダム大地に立つ!!」のようなロボットものの第1話よろしく、いままでヘタレだった男が意を決して強大な力を手に入れて己の正義のために立ち上がるわけです。これが嫌いな男の子は一人もいないと断言できます。熱血ってやっぱり万国共通なんですね。
とはいえ、プロットは結構雑だったりします。黒い液体でエビ化する原理が説明無しだったり、司令船から母艦をリモートコントロール出来る原理の制約事項の説明が無かったり(=制約無しなら司令船が飛ぶ必要がない。)、どうしてもチグハグな感じが否めません。しかしそれを差し引いても、キャラクターの追い込み方は本当に見事です。「こうなったら、こうするしかない」という追い込まれ型の行動原理が全編続いていて、物語の推進力は最後まで衰えることがありません。だから、2時間近くがあっという間に過ぎてしまいます。
もちろん、本作はご存じの通り「ケープタウン第6地区」と「居着いちゃった宇宙難民」のアイデアを混ぜたものです。ですから黒人のメタファーとしてエビを見ることは可能ですし、それこそアパルトヘイトに対する怒り(人間/白人共をぶっ殺せ)と捉えることも可能です。
しかし、そういった政治的な目線の好みを脇に置いても、第1級のすばらしいSF作品であることは間違いありません。
本作がコケでもした日には金輪際SFは輸入されないんじゃないかというぐらい危機感があったりしますので、是非是非、気になった方は劇場に足を運んでみて下さい。GAGAに儲けさせるのは癪ですが(苦笑)、映画ファンなら必見の作品です。
いや噂に違わぬ素晴らしい出来でした。

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花のあと

花のあと

今日も二本見てきました。一本目は

「花のあと」です。

評価:(70/100点) – 時代劇というよりは現代劇でありアイドル映画。若い人の方が乗れるかも。


【あらすじ】

父である寺井甚左衛門に剣術の手ほどきを受けて育った以登は、ある日花見中に江口孫四郎に声を掛けられる。羽賀道場の筆頭・孫四郎が気になった以登は、父に頼んで手合わせの機会を設けるが、自身を真っ向から打ちのめした孫四郎に惚れてしまう。しかし自身には許嫁がおり、孫四郎にも婚姻の話があった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 以登と孫四郎が出会い、決闘する。
 ※第1ターニングポイント -> 以登が孫四郎に惚れる。
第2幕 -> 孫四郎の結婚と勘解由(かげゆ)の罠。
 ※第2ターニングポイント ->孫四郎が切腹する。
第3幕 -> 以登の敵討ち。


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【感想】

一本目は藤沢周平原作の時代劇「花のあと」です。私は勉強不足にして、監督の中西健二さんを存じ上げておりませんでした。彼の作品を見るのは初めてだと思います。昼の回で見ましたが、年配の方を中心に結構観客が入っていました。
本作は全体として中々良いまとまり方をしていまして、見た後の満足感はかなり高いです。が、、、実は二本目に見た作品で全部吹っ飛んじゃいました(笑)。それはそれとして、まずはストーリーから行ってみましょう。

本作のストーリーについて

本作品のストーリーはかなり良いです。要は男に興味の無かった女性が初めて惚れた男の仇を討つ話しです。シンプルな「女戦士の仇討ちもの」でして梶芽衣子の得意分野です(笑)。とどのつまりは昔の東映・大映に良くあった映画です。まず前半は以登が初恋にとまどいながらも悶々とする話。そして後半はサスペンス仕立ての仇討ち話です。この繋がりが結構面白くなかなかエンターテインメイントとして優れていると思います。
ただ、サスペンス部分に関してはかなり残念な事になっています。第一に、以登は孫四郎がハメられるまさにその場にニアミスするんですが、一方でそれが後半まったく生きてきません。第二に、捜査は全て才助が行ってしまい主役の筈の以登が全然仕事をしないことです(苦笑)。第三に、そしてコレが一番まずいのですが、観客に最初から犯人がハメる場面を見せてしまっていることです。だから謎解きには全く乗れません。以登にとっては謎でも、観客にとってはついさっきスクリーンに映ってたことですから(笑)。なのであんまり盛り上がれません。でも、サスペンス要素はあくまでも蛇足みたいなものです。根幹はあくまでも以登が恋心に悶々とする様子をニヤニヤ見るというアイドル映画です(笑)。
そんなわけで、以登が初恋を追いかけていく内に頼れる才助に惚れていく様子はかなり丁寧に描いています。作品の全編通じて仏頂面をしている以登ですが、最後の最後で、本当に最後で一回だけ笑うんです。そこまでの仏頂面にタメがあるからこそ最後のちょっとした微笑みがとても効果的です。

本作の演出について

演出についてですが、役者の顔のアップがかなり多いために時代劇というよりは現代劇に見えます。それ以上に北川景子と佐藤めぐみが完全に「いまどきの女の子」の顔なので全然江戸時代に見えません(笑)。また、宮尾俊太郎の棒読みもちょっとビックリするレベルです。役者さんでは無いので仕方がないんですが、いくら甲本雅裕や市川亀治郎が超頑張って好演していても全部帳消しになってしまいます。
かくいう以登のキャラ描写にも惜しいところがあります。というのも彼女が「男に興味が無い」という直接的な描写が無いために、孫四郎にちょっとナンパされただけでホイホイ引っ掛かったギャルに見えてしまうんです。冒頭の花見シーンで「別の男に話しかけられても無視した」という描写が欲しかったです。以登は面食いでは無く、あくまでも男勝りの自分を受け入れた初めての男に惚れたはずですから。
その「以登の剣術」についてですが、北川さんは相当頑張ってます。私も剣道を少し囓っていたんですが、映画で俳優さんが素振りをしたときにキチンと左手が鳩尾の高さで止まって右手が絞れているケースはほとんどありません。冒頭の稽古シーンでかなり綺麗な形で左右面の素振りをしているのはグッと来ました。ですが、、、これは仕方がないのかも知れませんが、やはり映画の時代劇で血しぶきの一つも出ないのは納得出来ません。人が切られたら血が出るのは当たり前でしょう? いくらアイドル映画とは言え、「汚いモノは見せない」というのはどうなんでしょう。別にR15+になるまで血糊を使えとは言いません。でもせめて切られた敵の服が赤くなったり、ちょっと返り血を受けるぐらいは当然だと思います。殺陣で血糊が無いと、それだけでショボくて幼稚に見えてしまいます。
最後に最もがっかりする部分を。まさしく最後の最後、以登が初めて笑顔を見せて完全に北川景子の魅力にヤラれたまさにその瞬間に、なぜか一青窈の「J-Popでござい!!!」っていう主題歌が流れ始めます(苦笑)。余韻ゼロ。そして作品のトーンと全くあってない軽快な音楽。それでもエンドロールならまだ諦めはつくんですが、桜並木を才助と以登が歩いていく作品上一番の見せ場が流れてるんですね。挙げ句の果てに間奏部分でナレーションまで入りやがります。タイアップが大事なのは分かるんですが、せめてもう5分待って、エンドロールが始まってからにしてください(苦笑)。これのおかげでせっかくジーンとくる場面が台無しです。

【まとめ】

ストーリーは面白いですし、北川景子さんのアイドル映画としてもバッチりです。ですがちょっと演出がノイズになって結構評価を落としてしまっています。全体のトーンも時代劇というよりは昼ドラっぽいですが、とても良く出来た作品だと思います。時代劇が好きな方よりも、恋愛ドラマが好きな方にマッチするかも知れません。
また、北川景子のファンであれば本作品は鑑賞必須です。義務です。絶対に見に行きましょう。

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シャーロック・ホームズ(2009)

シャーロック・ホームズ(2009)

さてさて、雪降ったり暑かったりで体調崩してるんですが、金曜と言えば当然新作のレイトショー。

今日は「シャーロック・ホームズ」を観てきました。

評価:(65/100点) – 同人にしては良くできてる、、、、でも「天使と悪魔」。


【あらすじ】

ロンドンで5人の若い女性が殺される。捜査に乗り出したホームズとワトソンはブラックウッド卿を突き止め、6人目の犠牲者を危ないところで救出しブラックウッドを逮捕する。そしてブラックウッドは死刑を執行される。ところが彼が地獄から復活したという噂が流れ始める。実際にブラックウッドの棺桶を調べた警察とホームズは、その中に見たことのないミゼット(=こびと)を発見する。果てしてブラックウッドは生き返ったのだろうか? 獄中の彼が遺した「あと3件の殺人が起きる」という予言が徐々に真実味を帯びてくる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ブラックウッド卿の逮捕と死刑執行。
 ※第1ターニングポイント -> アイリーン・アドラーがホームズを訪ねてくる。
第2幕 -> 3件の殺人事件。
 ※第2ターニングポイント -> ブラックウッド卿の連続殺人事件の共通点にホームズが気付く。
第3幕 -> ブラックウッド卿の野望を阻止できるかどうか。


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【感想】

さてさて、本日はガイ・リッチーの最新作「シャーロック・ホームズ」です。マドンナと離婚した今となっては完全に「一発屋」扱いのガイ・リッチー監督ですが、久々にビックバジェット・エンタメ大作です。主演はアイアンマンで薬物中毒から一転ヒーロー路線へ復活を果たしたロバート・ダウニーJrです。
やはりホームズのネームバリューなのか、レイトショーでは珍しく6~7割ほどは座席が埋まっていたでしょうか?かなり混んでいました。
本作は説明不要の「シャーロック・ホームズ シリーズ」のキャラクターを使ったオマージュ作品です。予告でも分かるように、ホームズもワトソンもかなりの武闘派になっておりまして、かなりアップテンポな場面が目に付きます。
でもいまいち盛り上がらないというか、エンタメ映画の割にカタルシスがあんまりないんです。もちろんCGは結構豪華ですし目に見えた破綻があるわけではありません。この原因について考えてみます。

お話しの部分について

本作は構成が非常にしっかりしています。ブラックウッドが死刑になるまでが約25分、ホームズが謎を解くのが100分ごろ、そこからは約30分で国会→ロンドン橋でのアクションシーンです。話の構成自体には何の問題もありません。
おそらく本作に欠けているのは、「観客視点の受け皿」と「物語の推進力」です。
まず前者ですが、原作では「語り手」「常識人」としてのワトソンが読者の受け皿でした。読者はワトソンの視点からホームズの奇想天外な推理を感心出来るわけです。ところが、本作にいわゆる「一般人」は出てきません。強いて言えばレストレード警部とメアリーぐらいが平凡なキャラで、ホームズもワトソンもアイリーンもアクが強く曲者です。濃いキャラだらけにしてしまった結果、観客が完全に客観的な視点からホームズを観察してしまうんです。そうすると、次の「物語の推進力不足」問題がより加速します。
先日の「ライアーゲーム~」や「コラライン~」でもちょっと書きましたが、物語には推進力が必要です。それはほとんどの場合、キャラクターが追い詰められて何かしないといけなくなることです。本作の場合は、「レオダンの家探し」→「殺人事件の謎解き」→「テロの阻止」と目的が変わるのですが、どれも中途半端というか他人事っぽい描き方になっています。例えば、レオダンの家は割とあっさり見つかってしまいますし、その後はアクション・シーンです。殺人事件にいたっては最初の一件だけが彼が直前に会っている「見知った人」で、後の2件はあんまり関係ないためやはり他人事です。
これだと、いくら構成が良くても全然面白くはなりません。きちんとホームズを事件に絡めさせて追い詰めないといけないのですが、本作ではそこまで事件捜査をすることもなくクライマックスの100%アクションシーンに行ってしまいます。また、ブラックウッド卿が獄中で宣言する「期日」もタイムリミットの役目を果たしていません。ですので、全体を通してあまり緊迫感が無いままに漫然と物語りが進んでしまいます。
後半は推理もかなり無茶になっていきますので、推進力はどんどん低下していってしまいます。

キャラクターについて

このキャラクターについてが本作の一番の肝です。おそらくシャーロック・ホームズとワトソン博士のコンビを知らない方はほとんどいないと思います。それほどまでに古典中の古典であるシャーロック・ホームズは、名前だけでも十分なキャラクター意匠になります。なので、本作ではキャラの描き方がかなり雑です。説明しなくてもどうせみんな知ってるという前提です。その上で原作にもあったホームズとワトソンのホモソーシャル的(=男子校的)な関係を拡大し、全キャラに格闘アクション要素を足しています。終盤にホームズの「腕ひしぎ逆十字固め」とワトソンの「胴締めスリーパー」の競演がありますが、場内爆笑でした。そりゃガイ・リッチー監督は柔道黒帯ですけど、、、。
この原作の要素をグッと拡大する感じがとっても漫画っぽいんですね。なので、キャラクターについては映画単体としてはかなり残念です。原作を読んでいるのが大前提で、その上で原作とのギャップを楽しむ感覚です。このあたりが原因で見終わった後にパロディ作品っぽい印象を持ってしまいます。

【まとめ】

キャラクターの名前を借りてきてオリジナルな事をやるという点ではいわゆる同人作品っぽさがあります。ところが見た目や名前がどんなにホームズでも、映画のプロットはそのまんま「天使と悪魔(2009)」です。
もちろんエンターテインメントとして標準のクオリティは十分に保っていますので、小難しいことを考えずに楽しめる良作だと思います。
最後に一点だけ。本作の冒頭でタイトルが出た直後のシーンは、完全に「グラナダ版(=ジェレミー・ブレット版)シャーロックホームズ」のオープニングそのままです。全体のテイストも「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎(1985)」っぽい雰囲気ですので、確実に過去作へのオマージュ感覚は入っていると思います。
もしシャーロック・ホームズが好きならば、確実に「グラナダ版TVドラマシリーズ」をレンタルしてきた方が良いです。でももしハリウッドのエンタメ・アクション映画が見たいのであれば、本作はまさしく適任です。是非、映画館へ足を運んでください。オススメです!!!
今週末ですと、「ハート・ロッカー」を見ていたたまれなくなった方のお口直しにぴったりです。

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しあわせの隠れ場所

しあわせの隠れ場所

2本目は

「しあわせの隠れ場所」をみました。

評価:(75/100点) – 嘘のような本当の話の脚色。


【あらすじ】

マイケルはスポーツの才能を見込まれ、ブライアクレスト・クリスチャンスクールというお坊ちゃん高校に入学する。家族も生活する家も持たない彼は、大富豪のリー・アン・トゥヒーに招かれトゥヒー家の居候となる。父は生後一週間で居なくなり母親はドラッグ中毒という環境で幼い頃から州の保護を受けていたマイケルにとって、トゥヒー家は初めて味わう優しい家族であった。やがて彼はトゥヒー家のバックアップでアメフトの才能を開花させ、数々の名門大学からのスカウトを受けることになる。


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【感想】

さて、二本目はアカデミー賞ノミネート作品の「しあわせの隠れ場所」です。原題は「The Blind Side(=死角)」。チームの大黒柱であるクォーターバックの死角を守るオフェンシブタックルのポジションを表しています。
本作はとても丁寧な描き方でもってマイケルが家族を得て心を開いていく課程が描かれます。ちょっと劇的過ぎるのとどう考えてもリー・アン・トゥヒーが聖人として描かれすぎてるように見えるんですが、それは脚色部分として置いておきましょう。サンドラ・ブロックの大根演技を差し置いても十二分に面白い人間ドラマです。
そして彼が心を開く課程とアメフトで才能が開花する課程がほとんどシンクロして描かれるのも上手いです。
フローズンリバーほどではないですが、さらっと見られる良い話という意味では近作では一番かも知れません。
実は本作で一番不思議なのはサンドラがゴールデングローブ賞・ドラマ部門の主演女優賞を取ったことです。放送映画批評家協会賞はメリル・ストリープとの同時受賞なのでまだ分からなくはないのですが、正直なところ演技ではなくてキャラクターの魅力だけでとってるんじゃないかと思う部分です。たしかにドラマ部門の多作品が微妙だったのはあるんですが、それにしてもどうかなと。2007年のプロレス大賞MVPで、本来なら受賞者無しの所を過去の功績で三沢さんにあげた時のような微妙な感じがします。
もちろん嫌いじゃないですし、45歳にしては驚くほど綺麗ですけどね。
本作はインビクタスと一緒に見るのがオススメです。インビクタスで描いていなかった試合の部分が、本作ではかなり上手く描かれています。

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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々

今日はレイトショーで「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」を観てみました。

評価:(60/100点) – ハリー・ポッターの後継狙いとしてはそこそこ。


【あらすじ】

神の世界である日ゼウスの稲妻が盗まれてしまう。ゼウスは初め兄のポセイドンを疑うが、彼が潔白を証言するやいなやポセイドンの息子に疑いを向ける。一方その頃、高校生のパーシー・ジャクソンは授業で訪れた博物館で魔物に襲われてしまう。ケイロン先生の力で魔物を何とか追い払うが、危機を感じたパーシーは親友のグローバーと母親と共にキャンプ・ハーフブラッドを目指して逃走する。しかし目前で母親をミノタウロスに攫われてしまう。パーシーはキャンプ・ハーフブラッドで自身の血筋を聞かされ、仲間と共に母親を救出する旅に出かける、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ゼウスとポセイドン。またはパーシーが襲われ逃げる。
 ※第1ターニングポイント -> パーシーとグローバーとアナベスが旅に出る。
第2幕 -> ハデスを目指す旅。そしてハデスとの邂逅。
 ※第2ターニングポイント ->冥界から脱出する。
第3幕 -> 最後の対決とオリンポス訪問。


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【感想】

さて、本日は「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」です。監督は少年向け冒険ファンタジーの脚本を多数手がけるクリス・コロンバスです。どちらかというとホーム・アローンやハリー・ポッター初期2作の監督といった方が通りがよいかも知れません。
会社こそ違いますが、ワーナーのハリー・ポッター・シリーズが残すところ1冊分(=前後編で映画二本)で終了することを見越して、後継のシリーズを狙ってきたという趣旨がヒシヒシと伝わってくる作品です。原作の児童書はハリー・ポッターに負けず劣らずアメリカで大人気ですし、素材としてはこれ以上ないほど適しています。

物語の大筋とキャラクター

物語部分は非常にシンプルでありがちなストーリーです。主人公が実はものすごい力を隠し持っていて、それを突如開花させ大活躍する話です。まるでRPGゲームのようなベタさです。主人公はキャラが薄くて「正義感がある真面目な子」という以外の背景はまったく描かれませんし、仲間のアナベスとグローバーに至ってはただの賑やかしです。
しかし、展開のつけ方やちょっとした神話の引用など子供心をくすぐるポイントはきっちり押さえています。中二病を上手くくすぐる絶妙な湯加減で、見終わってからギリシャ神話を読み直したくなってしまいました。

展開の無茶さ

とはいえ、展開はかなり強引かつ行き当たりばったりです。一番気になるのは本作のタイトルにもなっている稲妻泥棒の件です。気付いたら勝手に解決しているというか、答えが勝手にこっちに向かってきてくれて、ご都合主義なんて言葉では言い表せないほどです。そもそも主人公が気付かないのが変ですし、犯人の計画も無理がありすぎます。主人公が無事にハデスの元に着く確率は相当低いはずなのに、それを見越して計画を建てていないと本作は成立しません。
また、犯人の人間描写もイマイチ稀薄です。「例のアレな感じの人」みたいな「雰囲気のみで構成されたキャラクター」になってしまっています。記号的といいますか、「みんなこんな感じのキャラ見たことあるでしょ?それ。そのイメージで。」という適当な描写が目立ちます。
とはいえ、児童書が原作で小中学生をターゲットにしている割には整理はされていますし、そこそこの佳作だと思います。

【まとめ】

本作は決して高いレベルのハリウッドエンタメではないですが、ハリー・ポッターの後継としては十分通用するレベルだと思います。何より徹底したキャラの記号化によって抽象度が上がっていますから、観客各自が好きなように移入することが出来ます。裏を返せばそこまでキャラに惹かれるものが無いとも言えますが、まぁまぁありかなと思います。
子供向けのエンターテインメント映画としてなら十分に及第点のオススメ作品です。。

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きょーれつ もーれつ 古代少女ドグちゃんまつり スペシャル・ムービー・エディション

きょーれつ もーれつ 古代少女ドグちゃんまつり スペシャル・ムービー・エディション

は昨日はシネマート新宿で「きょーれつ もーれつ 古代少女ドグちゃんまつり スペシャル・ムービー・エディション」を見てきました。本編も見たかったんですが、それ以上に目当てだったのは井口昇監督と江口寿史さんと主演の谷澤恵里香さんのトークショーです。
江口さん言うところの「すらっとしたモデル体型の美人ではないが、クラスのみんなが”あの子が良い”って美人に群がる中で僕だけが”後ろに座ってる谷澤さんの方が好き”ってなるような良い存在の女の子」と表する谷澤さんの魅力。男としてはすっごい良く分かるんですが、当の谷澤さんはイマイチ褒められた気がしないようでちょっとむくれていました。谷澤さんはけっしてスタイル抜群ではないですが(←失礼)、自然な美人というか、あきらかに健康を害するほどの無理をしてない範囲での「普通にかわいい魅力的な娘」って感じで、この作品のイメージにぴったりなんです。井口監督も、「オーディションで入ってきた瞬間に”この娘だ!”って思うほどハマリ役だった。」と絶賛するその存在感。本作の大成功を元に、是非とも飛躍して欲しいです。
井口監督は相変わらず「ドグちゃんTシャツを初日(2/20)から一度も脱いでない。多分公開終了まで脱がない。(=二週間着っぱなし)」とキモオタぶりを遺憾なく発揮していました(笑)。いやぁ、世界的にもトップクラスに人気のある監督なんですが、やっぱ変態だなぁと(←褒め言葉ですよ。念のため)。
トークショーの締めで生「ドキドキ・ウェーブ」を見れたので私としては大大満足です。これぞアイドル映画の醍醐味です。


っかくなのでこの「古代少女ドグちゃん」についてちょっと書きたいと思います。いまいち知られていないようですが、この特撮ドラマは超ハイレベルで全映画ファン必見の作品です。
引きこもりで母親に先立たれた高校生・杉原誠は、考古学者の父親に無理矢理付き合わされた発掘作業で古代土器を発掘してしまいます。しかしこの土器こそが一万年前に妖怪退治で名を馳せた「土器の神様」ドグちゃんだったのです。現代に蘇ったドグちゃんは誠を下僕にして、相棒の土偶・ドキゴローと共に妖怪退治を行います。こうして普段はドジッコのドグちゃんは杉原家に居候することになりました、、、、。
というストーリーのラブコメ特撮ヒロインものです。
で、これだとどっから見てもありがちな変身ヒロインものなんですが、何せスタッフが超豪華なんです。監督で名を連ねるのは井口昇(「片腕マシンガール」「ロボゲイシャ」)、豊島圭介(「怪奇大家族」「怪談新耳袋」)、清水崇(「呪怨」)、三宅隆太(「ほんとにあった怖い話」「呪怨 白い老女」)。とにかく、日本のインディ・カルト映画シーンで活躍するトップクラスのクリエイター達が惜しげもなく才能を使って悪ふざけをしています。
さらにゲスト俳優もハンパ無く豪華です。ソニン、藤村俊二、田口浩正、斉木しげる、安達祐実、竹中直人、美保純、そして斉藤由貴。
このドラマシリーズを一言で表すならば、「バカじゃないの(笑)、素晴らしい。」です。特撮を見慣れていない方でも、存分に楽しめるだけの強固で正当派な脚本になっていますのでご安心ください。井口昇監督の近作で多用されるグロ描写はまったく無く(TVドラマなんで当然ですけど)、彼の監督としての基礎能力の高さが良く分かる傑作です。関東では放送がありませんが、すでにDVDも出ていますので是非ともチェックしてみてください。
日本にだって世界トップクラスのエンターテインメントを作れるクリエイターが居るという心強い発見があるはずです。
ちなみに井口昇監督の次回作は「戦闘少女」です。シアターNで上映するようなので必ず行きます。こんなに多作なのに傑作をバンバン作る監督も最近では珍しいですよ。

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インビクタス‐負けざる者たち‐

インビクタス‐負けざる者たち‐

本日も二本立てです。一本目は「インビクタス‐負けざる者たち‐」。

評価:(65/100点) – 人間ドラマはなかなか。 試合はちょっと、、、。


【あらすじ】

ネルソン・マンデラはロペン島の刑務所から釈放されANC議長につく。その勢いのまま大統領に就任したマンデラだが、黒人と白人の対立構造は変わらなかった。ANCが政権を執ったとはいえ経済力や学力は白人の方が圧倒的に上である以上、国家の分裂は南アフリカの黒人にとっても得策ではない。そこでマンデラは白人達のスポーツであったラグビーを通じて、黒人達の愛国心を喚起しようとする。


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【感想】

昨年は「チェンジリング」と「グラン・トリノ」で未だ衰えない構成力を披露してくれたクリント・イーストウッド監督の最新作、「インビクタス」です。何はともあれイーストウッドの新作が出たら映画館に駆けつけるのは映画ファンの義務です。ということで、私もいそいそと出かけましたが、、、観客が入ってない!
300名のキャパで100名も居なかったでしょうか。マット・デイモンなのに、、、。スポーツ物なのに、、、。

ストーリー部分

本作はマンデラ役のモーガン・フリーマンのほぼ一人舞台です。その台詞もほとんどがアジテーションのようで、タクシー内での秘書との駄話しですらどんどん演説調になっていきます。これが結構くどくてどうかなと思ってしまいます。
もちろん話の根幹になるマンデラの考えはかなりのものですし、マンデラ自身には大いに頭が下がります。政治犯として27年も刑務所に入れられた上で、それでもなお白人と黒人の共生というところに向かう達観には恐怖すら覚えます。実際のマンデラの人柄に詳しい訳ではないので何とも言えませんが、本作では極度の絶望の果てに解脱してしまった聖人のように見えます。それでいて自身の家族については急に人間臭い面を見せるなど、大変魅力的に描かれます。
一方、本作のダブル主演といっても過言ではないマット・デイモン演ずるピナールについては正直なところだいぶ陰が薄いです。マンデラの信奉者として以外にはキャプテンとしての能力やチームでの立ち位置はあまり描かれません。あくまでも観客の感情移入先として、「マンデラを仰ぎ見る好青年」としての役割を果たします。実際に本作が微妙な印象になる原因は、多分にラグビーの描き方です。
スプリングボクスはアパルトヘイトの関係で国際試合に出られなかっただけで、90年代前半の時点でも十分に強豪でした。しかし本作の序盤であたかも弱小チームであるように描かれます。「評論家の予想では良くて準決勝どまりです」みたいなセリフ回しがあったりして「そうか、弱いのか」と一瞬思ってしまうんですが、でも当時は優勝候補だったんです。あまりにも無理に「弱小国が連帯感を持ってついに優勝!」という物語に当てはめようとしたために、むしろ何で強くなったかが良く分からないという弊害が生まれてしまいました。これでスプリングボクスの成長物語りも併せられればものすごい傑作だったと思うのですが、ラグビーの使い方が少し中途半端になってしまった印象を受けます。

【まとめ】

さすがはイーストウッドという感じで、凄くデリケートな題材を上手く軟着陸させています。もちろんいくらでも深読みは出来ます。イーストウッド自身も共和党員ですし、「なんでもかんでもチェンジすることが良いわけではない」と意味深なことを言いますし(笑)。
傑作というほどではありませんが、良作なのは間違いありません。
オススメはオススメなんですが、できればyoutubeで95年のワールドカップ決勝の映像を見ておいた方が良いかもしれません。再現性の高さに驚くこと請け合いです。

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サロゲート

サロゲート

本日見てきたのは「サロゲート」です。

評価:(50/100点) – 普通。平均的。平凡。つまり無。

【三幕構成】

第1幕 -> サロゲートのある世界
 ※第1ターニングポイント -> 殺人事件が起きる
第2幕 -> 殺人事件の捜査 & トムが生身で活動を始める
 ※第2ターニングポイント -> ピーターズの>サロゲートがのっとられる。
第3幕 -> 事件の解決。


【あらすじ】

人間がリンクした疑体「サロゲート」によって世界中の犯罪は限りなく0に近くなっていた。そんななか、サロゲートが襲われオペレータが殺される事件がおこる。絶対安全と思われたサロゲート利用者が殺されたことは重大な問題であるため、FBIのグリアーとピーターズは極秘捜査を行う。そこにはサロゲートの開発者キャンターとVSI社の確執があった、、、。


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【感想】

普通。
悪いところも良いところもあって、いたって平凡な感じです。むしろ見た後に興味が再燃しないので若干つまらないよりかも知れません。非常にオーソドックスなサスペンスで、マクガフィンを探して彷徨うよくある話です。
ちなみに本作を見ている間中、実は攻殻機動隊がずっと頭に浮かんできました。きっと押井守なら、あのラストを人間とサロゲートの立場が逆でやったと思います。それやっちゃうとアバターですかね。
「人間の肉体がロボットで代行できるとしたら、人間の実存はどこに帰属するのか?」という命題は、攻殻機動隊およびイノセンス & 攻殻機動隊S.A.C.が5年以上前にとっくにやってます。
でも本作の方はそこまで踏み込んだ議論はしてくれません。美容整形手術と大差ないくらいの描き方です。そこはやはりSFものとしては不満でした。
10年前では考えられない非常に豪華なキャストが登場していますが、アメリカでは見事に転けました。有名俳優ばかり使っても客が集まらない良い例です。脚本もガタガタなりにこぢんまりとまとまっていますし、Vシネマだと思って気軽に見てみると良いかもしれません。
眠いのとあんまり書くことも無いくらい平凡な作品だったので今日はこの辺で(苦笑)

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