バイオハザード:ザ・ファイナル

バイオハザード:ザ・ファイナル

本日の2本目はこちら

「バイオハザード:ザ・ファイナル」です。

評価:(30/100点) – 小じんまり、まとまりました。


【あらすじ】

前作までいろいろあって、アリスはワシントンに居た。ワシントンで彼女はレッドクイーンからのメッセージを受け取る。実はアンブレラ社は「エアボーン・アンチTウィルス」を隠し持っているというのだ!すべてのTウィルス感染体を死に至らしめる強力な薬を手に入れるため、アリスは始まりの地・ラクーンシティの「ハイブ」へと向かう。レッドクイーンの示した人類滅亡へのタイムリミットは48時間。果たしてアリスはアンチTウィルスを手に入れることができるのか?

【三幕構成】

第1幕 -> ワシントンでレッドクイーンと遭う
 ※第1ターニングポイント -> アリスがラクーンシティに着く。
第2幕 -> ゾンビ軍団との対決とハイブへの侵入
 ※第2ターニングポイント -> 最深部に着く
第3幕 -> アリスの正体とアイザックスとの決戦


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【感想】

さて、本日はスクリーン・ジェムズ作品が連続となりました。2本目はシリーズ6作目の「バイオハザード:ザ・ファイナル」です。なんだかんだで1作目が2002年ですから、もう14年もやってるんですね。1作目は井筒監督がテレ朝の「こちトラ自腹じゃ」でボロクソに叩いていたのをいまでも覚えています(笑)。1作目はたしかにダメダメではありましたが「走るゾンビ」を発明したエポックメイキングな作品でした。この作品で走り始めたゾンビは、ついに本家シリーズの「ドーン・オブ・ザ・デッド(2004/リメイク版)」でも取り入れられ、市民権を得ます。いまや何の違和感もなく、多くの作品でゾンビたちは元気に人間を走って追いかけています(笑)。

そう、そんな歴史的なシリーズの最後ですから、これはもうファンなら行くしか無いわけです!!!っと気合を入れてみてみますと、これね、ファンサービスしてくれてるのはわかるんですが、結構がっかりポイントがてんこ盛りです(笑)。

せっかく登場したドクター・アイザックスとウェスカーはとんでもなく小者になり、シリーズ全部の意義を吹っ飛ばすレベルです(笑)。しかも1作目を全否定するように「実はTウィルスはアンブレラ社の陰謀でわざと撒かれたのだ!」みたいな話まで飛び出します。いやいや、1作目でレッドクイーンが超慌ててハイブを閉鎖しようとしてたじゃん。っていうか、本作で出てくる陰謀が本当だとすると、そもそもハイブにTウィルスを撒く理由がないじゃん。もっと遠くで撒けよ、、、。とまぁいろいろとアレな事になっております(笑)。これですね、ある意味ヤケクソといいますか、さすがポール・駄目な方・アンダーソン監督(※注)。頑張っているのはわかるのにすごいヘンテコなことになっています。ファンサービスがファンサービスにあんまりなっていません(笑)。

※注 ポール・アンダーソン監督は世界に二人おります。本作の監督・ポール・ウィリアム・スコット・アンダーソン監督は駄目映画ばっかりとっており、一方のポール・トーマス・アンダーソン監督はカンヌ・ベルリン・ベネチアを総なめにしております。このため映画オタクの間では俗称として、ポール・駄目な方・アンダーソン、ポール・出来る方・アンダーソンと呼び分けられます(笑)。

そう、本作ではファンサービスしようという意図は伝わってくるんですね。最終作なので舞台は1作目に戻ります。そして「対ゾンビ戦」ではなくて1作目の醍醐味であった「対殺人トラップ」にフォーカスされる。ちゃんと1作目で出てきた有名なレーザートラップも再登場します。とても気を使ってくれているのがわかります。でもですね、その割にメイン級の悪役の扱いが本当に酷いです。なんかもうキャラ崩壊しているレベルで、あれだけ強かったウェスカーがまさかそんな社畜的な意味で負けるなんて、、、という、、、なんでSFアクションホラー映画を見て私たちはサラリーマンの悲哀を感じなければいけないのかと(笑)。

そんなこんなで、せっかくのシリーズ最終作にも関わらず、シリーズが好きであればあるほどがっかりするという残念な事態になってしまいました。もはや誰向けなのかすらよくわかりません、、、。シリーズ初見では意味がわからないと思いますし、シリーズファンだとあまりに雑な展開に悲しくなってきます。ということで、この映画は無かったことにしましょう(笑)。

もとはといえば、4作目で完結するはずだったものを無理やり続けさせたスクリーン・ジェムが悪いんですから、ポールは悪くない!たぶん、、、きっと、、、いや、6割ぐらいはポールのせいかも(笑)。個人的には動いているアリ・ラーターを久しぶりに見れたのでそれだけでも良しとします!ということで、オススメ、、、しと、、、きま、、、、しょう、、、、、か?しときましょう!ポールも言ってるじゃないですか!

「ジャン・リュック・ゴダールも言っているように、女性と銃だけで映画は成り立つ。このコンセプトはクールでセクシーだよね」
出典:日刊ゲンダイweb 監督インタビューより
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/196257

やっぱダメだこの人(笑)。

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ドント・ブリーズ

ドント・ブリーズ

今日は2本です。1本目は

「ドント・ブリーズ」を見てきました。

評価:(70/100点) – 一発ネタの嵐でサービス満点


【あらすじ】

デトロイトの田舎町。ロッキー、マニー、アレックスの3人は、いつかこのつまらない田舎を抜け出してカリフォルニアへ行くために、強盗をしてお金を貯めていた。
ある時、マニーはギャングから街に30万ドルもの大金をもった爺さんが住んでいるという話を聞く。しかも家はゴーストタウン。周りには全く人が住んでいない。楽勝だと判断した3人は、意気揚々と強盗へ乗り込む。しかし、爺さんは凄腕の退役軍人だった、、、

【三幕構成】

第1幕 -> 爺さんの噂話
※第1ターニングポイント -> マニーが殺される
第2幕 -> 家から脱出せよ!
※第2ターニングポイント -> ロッキーが脱出する
第3幕 -> 最終決戦


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【感想】

さて、今日は今一番の話題作と言っても良い「ドント・ブリーズ」を見てきました。有楽町のみゆき座に行ってきましたが、完全なフルハウス。実は先週も見ようとして満員で諦めました。公開感が少ないからかものすごい混み方です。

この作品はアメリカの夏休み映画で、かなりわ話題になっていました。制作費10億円で興収は150億円オーバーですから大したもんです。監督はフェデ・アルバレス。残念な出来だったリメイク版「死霊のはらわた(2013)」で大抜擢された監督です。本作も引き続きサム・ライミがプロデューサーを務め、ジャンルものである「小屋に閉じ込められちゃったホラー」をやっています。

さて、ここでお約束です。本作は完全なるジャンルムービーであり、そして感心するほどのジェットコースターシチュエーションムービーです。ですから、ネタバレは作品価値を著しく損なう恐れがあります。私はこの後極力ネタバレ無しで書いていきますが、どうしても少々勘づいてしまうかもしれません。未見の方はお気をつけください。

これはシリアス版ホームアローンだ!

強盗が家主にひどい目にあわされて撃退されるというと、やはり筆頭は「ホームアローン」でしょう。今回は強盗側が主役ではありますが、やっていることは同じです。舐めてかかった盲目の爺さんは、実は近接戦闘最強の屈強のファイターです。とてもじゃないけど近づいたら勝ち目はありません。そしてそんな爺さんが拳銃まで持っています。こんな絶体絶命の状況の中で、ヘタレだけど献身的なアレックスは、惚れた女・ロッキーを守りつつ脱出の糸口を探していきます。

そう、これですね、主人公側は間違いなく強盗犯でありクズの集まりです。どう考えても盲目の爺さんは被害者なので、序盤は「爺さんやっちまえ!」と応援したくもなるのですが、これがとある展開で急に爺さんもアレだというのが発覚しまして、そこから先はもう感情移入もへったくれもない「アレな若者vsアレな爺さん」のグズだらけの異種格闘技戦が展開されます(笑)。

ですから、なんというか全体的にはあんまり応援とかどっちの立場でとかそういう映画じゃないんですね。完全にシチュエーションホラーであり、「なんとなく不穏な事」「すごい嫌な描写」を叩き込みまくってくる映画です。後味最悪。そしてどういう顔をして見ていいかわからない。でもなんか楽しい、という(笑)。これ、いうてみればバトルものだと思うんです。「貞子vs伽倻子」とか、「エイリアンvsプレデター」とか、なんかこう「悪役同士のバトルで両方アレだけど楽しい」というプロレスです。

そういった意味では、本作はとてもサービス精神が旺盛です。ほぼ全ての細かい描写がきっちり伏線になってます。例えば序盤で出てくるバールなんかはしょっちゅうほっぽられながらもちゃんと全編通して万能アイテムとして再登場し、その都度工夫をもって使われます。こういう小技は見事です。制作側がすごく気を使ってプロットを練っているのが伝わってきます。そして、カギやバールや拳銃や犬や、全ての「アイテム」「仕掛け」が絡みあってきます。だからこれ、すごくアクションアドベンチャーゲームっぽいんですね。こっちでこのアイテムを手に入れて、それをあっちで使うとこうなって、でも同じアイテムを後から別の用途に使う、みたいな。すごく練り込んだプロットが災いして、「シナリオちっく」でありちょっと事務的なところがやけに目につきます。多分監督がジャンル映画を撮るには真面目すぎるんだと思います(笑)。

【まとめ】

面白いかどうかで言えば間違いなく面白いですし、もう1回見たいかといえばもう1回と言わず2回はみたいです。でもあんまり「諸手を挙げて大ガッツポーズ!」って感じではないです。単に後味が悪いからなのか、それともメリハリがないからなのか。80分少々のタイトな映画ですが、畳み掛けてくる情報量は多く、結構疲れます(笑)。

クリスマスのデートムービーとしてはちょっとどうかと思いますが、見ておいて損はない良作です。

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ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

今日は

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を見てきました。

評価:(95/100点) – 最高のファンムービー爆誕!!!


【あらすじ】

帝国軍の技術者ゲイレン・アーソは、大量破壊兵器の研究者だったが、嫌気がさして家族ともども軍を脱走して田舎の星に身をやつしていた。しかしそんなアーソ一家の元に、兵器計画の遅れを懸念するオルソン長官の魔の手が忍び寄る。妻を殺されたゲイレンは、1人娘のジンを逃し、自ら帝国軍に連行される。

それから十数年、、、反乱軍の元に「ゲイレン・アーソが破壊兵器の情報をリークするべくカーゴパイロットを脱走させた」という情報が届く。しかし肝心のパイロットは独立ゲリラのソウ・ゲレラ一派に拿捕されてしまう。反乱軍はこの情報を奪うべく、友好の使者としてゲレラの元に1人の少女を送り込むことにする。その女性こそ、ゲイレンの1人娘ジンであった、、、。

【三幕構成】

アバンタイトル -> ゲイレン一家が襲撃に遭う
第1幕 -> キャシアンとジン
※第1ターニングポイント -> ジンが使者として惑星ジェダへ向かう
第2幕 -> ジェダの崩壊とゲイレンとの邂逅
※第2ターニングポイント -> ゲイレンより設計図の在り処を聞く
第3幕 -> 潜入!惑星スカリフの決戦


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【感想】

2ヶ月ご無沙汰しております。きゅうべいです。今年は本当に面白い映画が節目節目で公開されて、ブログをサボっている暇もありゃしません(笑)。ということで、本日は当然これ。スター・ウォーズ・シリーズの最新作「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」です。監督は「ゴジラ(2014)」で一躍時代の人となったギャレス・エドワーズ。「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」の前日譚として、特殊部隊ローグ・ワンが帝国軍の最終兵器「デス・スター」を破壊するために設計図を入手するまでを描きます、、、、と公開前情報では言われていました(笑)。

ところがですね、これ実際見てみるとそんなチンケな話じゃ無いわけですよ。確かに大筋はローグ・ワンがデス・スターの設計図を盗むまでの話です。スター・ウォーズのファンならば、予告を見ただけで「これはローグ・ワンが頑張ってデス・スターの設計図を盗んでレイア姫に渡すまでのミッションインポッシブルみたいなケイパーものなんだろうな」「ディズニーのことだから、どうせ金儲け狙いで安直に外伝作っただけなんだろうな」と思うわけですよ。それが蓋を開けたらあらびっくり。ローグ・ワンとか全然特殊部隊じゃ無いし、こりゃもう完全にスター・ウォーズ愛に溢れた最高の「ファン・ムービー」なんです。

スター・ウォーズのファン・ムービーといえば、金字塔は「ファンボーイズ(2008)」と「ザ・ピープルVSジョージ・ルーカス(2010)」です。両方とも「ファンとしてスター・ウォーズを愛するがゆえに、商業主義丸出しのルーカスを信じながらも毎回裏切られ続け、それでもやっぱり嫌いになれない」というアンビバレンツな愚かさを笑いに変えています。僕ももちろんそうですし、例えば日本でも富野由悠季監督や押井守監督が好きなアニメファンは頷きまくりだと思うんですね(笑)。しかし、今回の「ローグ・ワン」はそれとは違うアプローチのファンムービーです。

すなわち、スター・ウォーズのオタクたちが日夜一生懸命勝手に撮影していたような「ファンカット・ムービー」の延長としてのスター・ウォーズ外伝です。「ゴジラ(2014)」とやってることが全く同じアプローチでして、本当にギャレス・エドワーズは最高だなと心の底からニンマリしていました(笑)。この人は絶対にエドガー・ライトとかタランティーノとかマシュー・ヴォーンと同類です(笑)。

スター・ウォーズ・サーガ。それは調和の物語。

スター・ウォーズの話を始めたら10,000文字あっても足りないのでどんどん先に進みましょう(笑)。みなさん、当然スター・ウォーズの実写映画は全部見てますよね?EP1〜EP6を見ているのが大前提で、出来ればイウォーク・アドベンチャー1・2と3DCGアニメのクローンウォーズシリーズも押さえておくといいでしょう。余力があったらEP7もついでで(笑)。

スター・ウォーズ・サーガは、ルーカス曰く「フォースが調和を失ってから、それを取り戻すまでのストーリー」です。

EP1〜EP3で、歴代最高の才能をもったジェダイナイト・アナキン・スカイウォーカーは、成長し、恋をし、そして絶望し、暗黒面に堕ち、ダース・ベイダーとなります。ダークサイド・オブ・フォースの化身・暗黒皇帝ダース・シディアスは、アナキンを誘惑し、堕落させ、独裁帝国を作り上げ、恐怖で宇宙全土を支配します。

EP4〜EP6では、主役はアナキンの息子ルーク・スカイウォーカーへと移ります。ルークは素性を隠し田舎惑星で百姓の息子として育ちます。そんなルークですが、後見人にしてアナキンの友オビワン・ケノービーや仲間のハン・ソロ、レイア・オーガナと共に帝国反乱軍のエースへと成長して行き、やがて父アナキンに善の心を思い出させます。善の心を取り戻したアナキンは、皇帝を殺し、宇宙に平和と共和制を取り戻します。

そう、EP1〜6までのストーリーは、まさに天才アナキン・スカイウォーカーがグレてから目を覚ますまでの壮大な物語なんです。しかし、このストーリーは必ずしも「ジェダイナイト」という超能力をもった貴族様の話ではありません。EP4〜6では、一貫して帝国軍に対抗するのは一般庶民であり有志の反乱軍です。そして最終的に帝国軍に壊滅的な打撃を与えるのは、田舎惑星に住む未開のもふもふローカル宇宙人のイウォークなんです。冗談でも比喩でもなく、まさに元ネタとなった「隠し砦の三悪人」や「七人の侍」と同じく、ジェダイという侍を先頭にした百姓たちの一揆の物語です。

ローグ・ワン:全てはバトンを繋ぐために

そして本作です。本作には特殊能力をもった人間は全く出てきません。主人公自身を含めて、彼女の周りにいるのは全て「強い意志」をもった普通の人間です。相方のキャシアンだけはずっと命令で動いていましたが、3幕目へと向かう最後の最後で自らの意志でローグ・ワンに参加します。ドニー兄貴扮する盲目の僧兵チアルートも「もしかしてフォースが使えるのかな?」みたいなミスリードがあるものの、実際はフォースを信じる強い意志を持っただけのただの人です。こういった普通の人間たちが、本作のテーマである「人は希望を繋ぐために戦う」というそのままに、命をかけてバトンを繋いでいきます。そしてその果てに「エピソード4 新たなる希望」があるわけで、これはシリーズの外伝として完璧な構成です。本作を通してゲイレンからジンへと渡された希望のバトンは、多くの犠牲をともなってその重みを増し、そしてエピソード4冒頭のレイア、R2-D2、オビワン、ルークへと繋がれていきます。そう、エピソード4も、実はこの「デス・スターの設計図」を反乱軍司令部まで届ける話なんですね。本作は単体での「特攻チームもの」としての面白さもさることながら、この「歴史的名作へシームレスにつながる」という点において、おそらく全世界のスター・ウォーズ・ファンを納得させるでしょう。わかってる!ギャレスはわかってるよ!!!最高!!!!

名作の言い訳としてのファンムービー

さらに本作が良いのは、そもそも「デス・スターがあんなに脆いのはわざとだったのだ!!!」という言い訳を無理なくはめ込んできた点です(笑)。わりと昔から、スター・ウォーズ好きで飲み会をすると定番になるネタは「ヨーダが一番悪い」というのと「デス・スターはヘボすぎる」というもの、あとは「イウォーク宇宙最強説」です。

この中でヨーダ戦犯説についてはもう擁護のしようがありません。アナキンがグレた理由はヨーダの頭が固い嫌がらせですし、弟子デューク伯爵と対決しても勝てず、挙げ句の果てにはラスボスの暗黒皇帝を追い詰めたのに油断した隙に逃したりしてます(笑)。

イウォーク宇宙最強説も、ある意味テーマに合致しています。スターウォーズは百姓一揆の話ですから、百姓の化身であるイウォークが弓矢とロープで帝国軍の最新巨大兵器を倒していくのも仕方ありません。

そうすると残るは「デス・スター弱点さらし過ぎ」という話になるわけです。本作はそこに後付けながら「実は反帝国軍の技術者が弱点を仕込んでいたのだ!」とし、さらにスター・ウォーズの根幹である「親子愛」をそこに絡めてきました。これはね、、、、あざといけど上手い(笑)。だってこれ誰も傷付かない完璧な言い訳ですもん。じゃあもう仕方ないよね、、、っていう説得力があります。めちゃくちゃ愛に溢れています。

【まとめ】

ということで、本作は最高のファンムービーです。期待以上というよりは、スター・ウォーズ・ファンが夢見ていた外伝に対する満額回答といった感じです。マジ完璧。これができるのなら是非ナンバリングタイトルもこのクオリティでひとつ、、、という期待を込めつつ、本気で猛プッシュお勧めします!!!!

私はしばらくレイトショーで通い詰めます(笑)。このクオリティなら本気で二桁回数見れます。まぁEP7もなんだかんだで二週間毎日見たのでアテになりませんが(笑)

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ジェイソン・ボーン

ジェイソン・ボーン

今日はボーンシリーズ第5作

「ジェイソン・ボーン」を見ました。

評価:(55/100点) – ここに来てまさかの作品リセット


【あらすじ】

ジェイソン・ボーンは元CIAの特殊工作員である。かつてCIAの極秘プロジェクト「トレッド・ストーン計画」によって記憶を完全に無くした殺人マシーンとなった。時は経ち、ボーンは記憶を取り戻しCIAの追っ手達を撒きながら、各地を転々としていた。ある日、かつての仲間ニッキー・パーソンズからコンタクトがある。彼に関係する追加の極秘資料を入手したというのだ。ギリシャのアテネで落ち合った二人のもとに、CIAの特殊部隊が襲いかかる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ニッキーのハッキングとボーンとのコンタクト
※第1ターニングポイント -> ボーンがUSBメモリを手に入れる
第2幕 -> ボーンの父を巡る調査
※第2ターニングポイント -> ボーンとヘザー・リーが接触する
第3幕 -> ラスベガスへの殴り込み


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【感想】

さてさて、今日は1本、待ちに待ったボーンシリーズ最新作の「ジェイソン・ボーン」です。一応5作目ですが、ターミネーターと同じく新章を狙った4作目がコケたのを受けて実質3作目の続編となっています。やっぱりこういうファンがガッツリついててかつ作品性も固まっちゃってるものは外伝的な新作は厳しいですね、、、。かくいう私も「ボーン・レガシー(2012)」についてはちょっとアレかなと思ってまして(笑)、この正統派続編は本当に嬉しい限りです。監督はもちろんポール・グリーングラス。相変わらずの細かいカット割りと手持ちグラグラのリアリティ表現は健在です。本作が旧作と決定的に違うのは、やはり脚本のトニー・ギルロイの離脱でしょう。ボーンシリーズは一貫してトニー・ギルロイが脚本を書いていましたが、「ボーン・レガシー」で監督をやってコケたのが影響したのか、今回は完全離脱で代わりにボール・グリーングラス本人がメインで書いてます。これが吉と出るのか凶とでるのか、、、。

ということで毎度のお約束です。いままでのボーンシリーズはどちらかというと巻き込まれ型サスペンスアクションでしたが、本作はいわゆる探偵ものになっています。ですので、ネタバレは楽しみを削いでしまう可能性があります。以降、多大なるネタバレを含みますので、未見の方はご容赦ください。また、本作は完全にキャラもの続編ですので、そもそもシリーズを一回も見たことがないかたはちんぷんかんぷんになります。最低でも、1~3作目までは見てから本作をご覧ください。全てが超高水準ですが、特に3作目はアクション映画史に残る大傑作ですので、本作云々を脇においても絶対見たほうが良いです。

ボーン・イズ・バック!

前作「ボーン・レガシー」では新しい「アウト・カム計画」というのが登場しましたが、本作ではそこには一切触れられず(笑)、3作目「ボーン・アルティメイタム(2007)」から続く「トレッド・ストーン計画」の真相を暴く件が再びフィーチャーされます。とは言え、前作までで「トレッド・ストーン計画」はある程度企みが見えており、かつボーンも過去を思い出しています。ですから話を転がすためには新情報が必要なわけで、今作では皆勤賞のニッキーがそれを持ってきてくれます。曰く、どうも父親がトレッド・ストーン計画に一枚噛んでいたらしいと。ボーンは、テロで死んだと思い込んでいた父親が何かの陰謀に巻き込まれたのではないかという疑念を持ち、独自捜査を開始します。そう、今回のボーンはかなり淡々と情報を辿っていき、淡々と障害を排除していきます。旧三部作であった「とっぽい見た目なのに実は超強いスパイ」というギャップは影を潜め、完全にムキムキなスーパーヒーローとしてボーンは帰ってきます。この辺はもうシリーズものの宿命なので仕方ないでしょう。基本的にシリーズものは回を重ねるほどアイドルムービー化していきますから、これは続編としてとても真っ当です。

お約束はちゃんと入ってるよ!

となれば、ボーンをアイドルたらしめている要素がちゃんと入ってるのかというのが重要になるわけです。今回は2作目からのポール・グリーングラスが監督ということで、ちゃんといつものボーンの見た目をしています。細かいカット割りで勢いをつけ、手持ちカメラで迫力を出し、そしてボーンはジャッキー・チェン直系の「その辺のものを使ったアクション」をきっちり見せてくれます。ちなみになんですが、1作目「ボーン・アイデンティティ(2002)」は今見るとすごく真っ当なカメラワークをしています(笑)。ちゃんと固定カメラでロングショットを使い、レールも使ってます。アクションシーンだけは手持ちグラグラですが、それ以外は極々ノーマルな撮り方です。作品全部が「手持ちグラグラ/カット割細々」はあくまでも2作目「ボーン・スプレマシー(2004)」からです。

ただですね、、、やっぱちょっと今回はお約束に引っ張られすぎちゃった感じがします。「その辺のものを上手く使わせなきゃ!」というのが前面に出てしまってまして、あまりあっと驚くクリエイティビティがないんですね。あからさまに変なところにダンベルがあったり、そこにはないだろってところに椅子が捨ててあったり、使うこと前提で無理やり変な小道具が配置されてます(笑)。旧シリーズなんかだとその辺にある文房具とか、キッチン用品とか、凄いスムーズにうまく使ってたのに今回はちょっと無理やり過ぎるかなと思います。

いま、いま、ここでそれを変えるかね、、、

今回、一番の不満は作品のどんでん返し部分です。3作目の肝って「こんなに一生懸命過去を探していたのに、その過去っていうのが、実はボーンは自分から志願してトレッド・ストーン計画に参加していた」という部分なんですね。それまで延々と巻き込まれ型サスペンスをやって一貫して「被害者」であったボーンが、実は被害者じゃなくて自分から自主的に悪の計画に参加していたのだというのがこのシリーズの「記憶喪失」の大どんでん返しでした。ところが、本作で、その自主的な参加が実は嵌められた結果だったのだというのが明らかになってしまいます。お、おぉ、、、、。つまり旧三部作の余韻台無し(笑)。いや確かにここからシリーズを重ねようと思ったら、ボーンに大きくわかりやすい動機が必要なんですが、いくらなんでもそれはちょいとダメじゃないかと。

でもカーチェイスは良かったよ!

とまぁストーリー自体に大いに不満はあるんですが、でも三幕目のラスベガスは本当に良かったです。これぞ真骨頂!って言う感じで、銃撃戦あり、カーチェイスあり、肉弾戦ありとアクション要素てんこ盛りの大サービスシーンです。特に、たぶん見た方は一番思うであろうSWAT装甲車のカーチェイスですね。おまえバットモービルかっていうぐらい車をなぎ倒していく装甲車に、ボーンが乗用車で立ち向かうという、これぞヒーロー映画の真骨頂です。

【まとめ】

勢いはあってとっても楽しいんですが、良くも悪くもキャラものの域をでない作品でした。ボーン・シリーズは1~3作目が凄すぎるので、新しくシリーズを作り直す上で本作は産みの苦しみかなと思います。ストーリーを転がすにあたりやらなきゃいけないけどどうしても微妙になってしまう「汚れ仕事」みたいな部分を一気にやっつけた作品でした(笑)。ということで、何時になるかわかりませんが、また6作目を期待しつつ、本作もちょくちょくリピートしたいです。惜しむらくは、ちょっとでいいんでジェレミー・レナーにも触れてあげて欲しかったなと思います。完全になかったことにするのはちょいと可哀想すぎますから、、、。

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ラスト・ウィッチ・ハンター

ラスト・ウィッチ・ハンター

今日の2本目は

「ラスト・ウィッチ・ハンター」です。

評価:(25/100点) – ヴィン・ディーゼルのコスプレシリーズ


【あらすじ】

クイーン・ウィッチを退治して早800年、ウィッチ・ハンターのコルダーは呪われた「永遠の命」と共に魔女狩りを続けていた。そんな中、コルダーの所属する「アックス&クロス」の執事・36代目ドーランが何者かに殺害されてしまう。コルダーは仇討ちのため、犯人捜査に乗り出す、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 36代目ドーランの引退と殺人事件
※第1ターニングポイント -> ドーランの部屋で魔法の痕跡を見つける
第2幕 -> コルダーの捜査と過去の秘密
※第2ターニングポイント -> クイーン・ウィッチが復活する
第3幕 -> 最終決戦


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【感想】

今日の2本目は「ラスト・ウィッチ・ハンター」です。ご存知ヴィン・ディーゼル主演最新作で、かついつものヴィン・ディーゼルです(笑)。こちらも「高慢と偏見とゾンビ」と一緒で、ほぼ満員でした。予告を見た時に「デビルクエスト(2011)」と同じノリかと思っていたのですが、意外と現代描写の方が多く、あんまりヒゲモジャで中世風なヴィン・ディーゼルアクションはありませんでした、、、ちょっと残念です。

テンションが上がらんのです、、、

本作は「オカルト探偵もの」です。主人公はウィッチ・ハンターのコルダー。魔女狩り一筋800年の、年季の入った不老不死おじさんです。ある日、信頼していた助手の36代目ドーランが殺されたことから、その仇討ちに乗り出します。捜査の過程で、この事件が800年前に倒した宿敵・クイーン・ウィッチを復活させようとした陰謀だと発覚し、そこから怒涛のオカルトクライマックスへと向かいます。

そう、本作ですね、せっかく楽しいオカルト要素てんこ盛りなのに、完全にいつものヴィン・ディーゼルなんです(笑)。「ワイルド・スピード」シリーズもそうですし、「トリプルX」もしかり、「リディック」もしかり。基本的にちょい半笑いでもごっとした声を出すいつものヴィン・ディーゼルが、いつものように犯人を探すために突き進み、いつものように危なげなく勝利します。「じゃあセガール映画としていいじゃん!」って話なんですが、肝心の敵やアクションが微妙なんです、、、。そこが本作の一番の不満点です。

せっかくヴィン・ディーゼル主演なのに、基本的に魔女たちが精神攻撃ばっかりであんまり肉体アクションに発展しないんですね。そうするとディーゼルの大根っぷりだけが際立ってしまい、しょぼい敵と相まって物凄い退屈になります。
しかも肝心の敵が対して強くもなく、脅威かどうかもよくわからないので、爽快感もありません。まさに誰得映画。で、誰が得かというと、そりゃもちろん主演でプロデューサー兼任のヴィン・ディーゼル本人なわけで、これ単にいつもの「オレ様映画」です(笑)。

【まとめ】

ということで、超テンションが低く、あんまり書くことがありません(笑)。不満はいっぱいあるんですが、どっちかっていうとゲンナリ度の方が高くてもういいかなっていう、、、そのぐらいの温度感です。自慢じゃないですが、私はたぶんヴィン・ディーゼルが出てる映画を全部見てると思うんです。しかもわりと好きな俳優です。それでこのテンションっていうのが、、、お察しください。ファンの私ですらちょっと頭がクラっときたので、おそらくヴィン・ディーゼルのファン以外にはヤバいぐらいつまらないと思います。ということで、良い子の皆はレンタルDVDにしときましょう。ちょっと来年の「xXx: The Return of Xander Cage」が心配です(笑)。

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真田十勇士

真田十勇士

今日は堤幸彦最新作

「真田十勇士」を見てきました。

評価:(3/100点) – アクション以外、何も無い


【あらすじ】

時は17世紀初め。九度山の真田屋敷の近くで村を襲った忍者が女を人質にして立てこもる事件が起こる。真田幸村自らが人質交換に向かうものの、何故か立てこもり犯は幸村になついてしまう。犯人の名前は猿飛佐助。佐助は幸村に志願し、幸村の残りの人生を面白くしてやると嘯く、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 真田九勇士の結成
※第1ターニングポイント -> 出城の建設を進言する
第2幕 -> 大阪冬の陣・夏の陣
※第2ターニングポイント -> 幸村討ち死に
第3幕 -> 豊臣秀頼救出作戦


【感想】

今日は一本、おととい公開された「真田十勇士」を見てきました。なんで「ハドソン川の奇跡」じゃないんだという話はありますが、それはほら、、、美味しいものは最後にとっとくタイプなんで^^;
松竹のお膝元、有楽町のピカデリー・シアター1(※一番大きい800キャパの劇場)では、客入りは2~3割ぐらいでしょうか。正直興行収入を見ても封切り2日間ですでに終戦しちゃってるようなレベルなのですが、さもありなん。客席はわりと年配の方が多く、特撮俳優ファンをあんまり呼べてなさそうな雰囲気でした。結構若手のイケメン俳優を揃えてるんですけどね、、、。

点数を見ていただくとお分かりいただけますが、本作は映画としてみるとハッキリ言ってかなり厳しいです。というか下の下です。いつもならここから2,000字ぐらいかけてグチりまくるところなんですが、もう終戦しちゃってる映画にそれは酷なので、今日は別の切り口から書いてみようと思います。

ということで、お約束です。本作は見どころも何もありません。話もありません。ですから、ネタバレもクソもありません。ですが、今日は趣向を変えてこの「真田十勇士」をストーリーに絞ってみてみたいと思います。結末までがっつり書きますし、何より映画の本編を見ていることが前提で書いていきますので、未見の方はご注意ください。もし、未見でかつ今後もあんまり見る気がない方は、たぶん前売り券が金券ショップですぐに200円ぐらいまで落ちると思いますので、その際にまた改めて検討いただくと良いと思います。DVDで初見だと、絶対冒頭10分はスキップします(笑)。

まずはいつもどおり話の概要から

本作は、2014年に上映された舞台の映画化です。私、舞台畑は完全ノーマークでして、まったく前知識なく映画を見に行きました。もとの真田十勇士の話自体は知っていますが、あんまり熱心な感じではありません。

この映画は大阪冬の陣・夏の陣を戦う真田幸村一派の活躍を描いているっぽい作品です。主人公は猿飛佐助で、1幕目の謎のアニメパートで9人目までを集める所をダイジェストで見せ、その後大阪へ舞台が移り10人目の根津甚八を加え、十勇士となります。その後は冬の陣・真田丸での闘い→夏の陣・幸村特攻と話が進みまして、最終的には負けた豊臣秀頼と淀殿の救出作戦がクライマックスとなります。

話の大枠自体はごくごく普通でして、十勇士なんだから当然そこだよねという活躍ポイントをさくーっとなぞっていきます。相変わらず全編を通して堤幸彦特有の安っぽいテレビドラマ演出と常に流れるBGM、滑り続ける微妙なコントが繰り返されます。本作ではさらに輪をかけて、映画には到底向かない大げさでふざけた演技を中村勘九郎が繰り出してきますので、この2人のコラボレーションは本当に極悪な破壊力で観客を襲ってきます。この辺はグチりだしたら結構書けるんですが、今日は全部封印しましょう。もう興業的には死に体なので、武士の情けです(笑)。一点だけいえば、霧隠才蔵が強すぎて、たぶんあいつに全部任せればさくっと家康を殺せたと思います(笑)。

■ 大真面目に映画を分析してみよう!

ということで、ここからが本題です。見終わってからいろいろ考えていたのですが、たぶんこの映画を供養するには、これをテキスト(=教科書)にして映画のストーリー構成の仕方を真面目に考えるのが一番良いかなと思いました(笑)。そのぐらい本作は破綻していますので、良い教科書になります。全ての堤演出のクドさを脇に避けまして、まずは劇映画の構成の基本から見ていきましょう。

分析1: プロットポイントを掴む

まずは何はなくともストーリーのプロットポイントを正確に抑える必要があります。本作には大きなターニングポイントが2つあります。この記事冒頭の三幕構成を御覧ください。

映画の第1ターニングポイントまでを通常は「1幕目」と呼びまして、ここでは一般的に「物語の前提」「キャラクター達の紹介」「世界観の設定」を行います。普通はドラマが動き出すのは第1ターニングポイントからで、1幕目はイントロです。本作では、冒頭の戦国状況ナレーションで世界観を決め、9勇士の加入でキャラを紹介し、「ヘタレの幸村を佐助と才蔵が盛りたてる」という前提が規定されます。

その後、幸村が豊臣vs徳川の戦争に巻き込まれることで、本作のゴールが「幸村を戦争で活躍させて、彼を”漢”にする」と規定されます。ですから、この映画の第1ターニングポイントは「大阪に呼ばれた幸村が出城を任せろと秀頼に進言する」シークエンスになります。ここから「2幕目」が始まります。

2幕目は物語の核になるところです。作品のテーマの解決に向けて、すったもんだが行われるパートです。本作では大阪冬の陣・夏の陣がまるまるここです。2幕目は幸村の討ち死にで幕を閉じます。

3幕目は物語の解決編です。ここでは、佐助一行が幸村の遺言である「秀頼様を頼む」という言葉を果たすために、秀頼・淀殿救出作戦を行います。

分析2: キャラクターの「ストーリー上の欲求」を考える

さて、ここから本作の反面教師要素が全開になっていきます(笑)。登場人物、特に主要キャラにはかならず「ストーリー上の欲求」が必要です。話を転がすためにはキャラクターに「XXXXをしたい!」という欲求がないとそもそも始まりませんし、物事が動きません。映画に限らずストーリーものでは、必ず冒頭で主人公の欲求が明かされます。サスペンスであれば「事件を解決したい!」「犯人を捕まえたい!」とか、ファンタジーであれば「指輪を捨てに行きたい!」「大魔王を倒したい!」などなど。欲求があって初めて、キャラクターは行動を起こします。

本作は、猿飛佐助が主人公です。佐助が十勇士を集め、佐助が先頭にたって冬の陣/夏の陣を闘い、佐助が主体となって秀頼と淀殿を救出しようとします。では、猿飛佐助がこの一連の動きをするための、欲求とは何でしょうか?



答えは「幸村を”漢(ほんもの)”にしたい!」です。

これは映画の冒頭のアニメパートで本人がセリフでいいます。なので、本作では「幸村が”漢”になる」のが物語のゴールということになります。これに説得力があるかどうかは怪しいですが、それは堤演出の問題なので置いときましょう。本当は佐助が「ウソがホントになるっておもしれぇじゃねぇか」という考え/性格になった背景があるとベストなんですが、それはなんとなく中村勘九郎の「傾奇者」な雰囲気でなぁなぁになってます(笑)。

ちなみに、霧隠才蔵を始めとするその他のキャラクターには「ストーリー上の欲求」はありません(笑)。かろうじて、大島優子演じる火垂にだけは「才蔵を殺す」という欲求が定義され、三好青海・伊三には「才蔵を守る」という定義がありますが、他のキャラはすっからかんです。これが本作が駄作になった一番の原因です。主人公の相方である才蔵に欲求がないので、なんでそこまで付き合ってくれるかよくわからないんですね。十勇士に裏切り者がいるみたいな話もでてきますが、そのキャラにも欲求がありません。なので、行動に説得力が一切なく、みんなバカにしか見えません。

分析3: 主人公の欲求と物語がきちんとリンクしているかどうか

分析1と2で、ストーリーの全体像と主人公の欲求がわかりました。ではこれが正しくリンクしているでしょうか?



答えはNOです。

本作において、「幸村が”漢”になった」のはどのシークエンスでしょう? それは最終出陣の前日夜の場面です。この場面で、幸村は「オレが特攻をかけて家康の首を取る」「最後くらいは”本物”になる」と宣言します。ここが物語上の解決です。ここで幸村は初めて自分から策を提案し、そして本物の軍師として主体的に行動しようとします。

ただ、これには作劇上の失敗が2つあります。

まず1つ目は、この「幸村が”漢”になった」ことに猿飛佐助が何にも関わっていないことです。本作の主人公佐助は、幸村を漢にするために一生懸命頑張ってきたはずで、そしてそれが映画のメインストーリーでした。だから、クライマックスは、佐助が幸村を”漢”にしないといけません。ところが、そもそもからしてなぜ幸村が特攻を決意したのかが見えません。超好意的にエスパー解釈すれば「淀殿を守るため」なのですが、でもそんな描写は無いですし、、、ね。結果的に、幸村の決断に佐助はなにも絡んでおらず、なんのカタルシスもありません。

2つ目は、ストーリーの構成バランスです。よりにもよって、この幸村の決心は物語の終盤手前で来てしまいます。この後実際に討ち死にするわけですが、本来であればこの決意は第2ターニングポイントに置かないといけません。この映画の解決とは「幸村が”漢”になること」なので、3幕目は「幸村が”漢”になるシークエンス」になるんです。ところが、この映画ではそこを含めて2幕目に押し込んでおり、本来であればエピローグ(=余談)になるはずの「幸村の遺言を守る件」が3幕目にドーンと30分も鎮座しています。これによって、ストーリー上のクライマックスと、映画としてのクライマックスがずれてしまいます。ストーリー上のクライマックスは幸村の特攻ですが、映画のクライマックスは最後のどんでん返しなんです。これによって、そもそもの話の焦点がボヤケてしまいます。

また、本来エピローグであるはずの「幸村の遺言を守る件」を3幕目(※映画全体のメインストーリーの解決)にしてしまったがために、そもそもの佐助の「嘘を本当にする」というキーワードもボヤケてしまってます。最後の「嘘を本当にするどんでん返し」は3幕目に唐突に出てきた話であって、映画の最初からの欲求ではないんですね。ですから、「結局この映画のストーリーってなんだったの?」と聞かれるとみんな口ごもってしまうわけです(笑)。佐助が幸村を担ぐ話?それとも秀頼を助ける話?本当は前者なんですが、映画の作りはクライマックスだけ後者なんですね(笑)。せっかく幸村特攻で盛り上がった観客は、その後延々30分も続く謎の茶番劇を死んだ目で見ることになります、、、。

じゃあ、どうしたら良かったんだ!

ではどうしたら良かったのかというと、まずは幸村が決意するためのエピソードに猿飛佐助をきちんと絡めること。理由はなんでも良いです。十勇士に情が移って勇気を奮い立たせるのでもいいし、息子の真田大助を佐助に頼んで逃がしてもらって自分は囮で特攻をかけるのでもいいです。佐助が提案した作戦を断って特攻を逆提案してもいいです。なにか佐助を絡めて幸村が成長しないといけません。そしてもし、この特攻において「嘘を本当にする」を絡められればそれがベストです。十勇士の皆で幸村のコスプレをして陽動作戦をとるのでもいいですし、そもそも幸村を影武者にしちゃってもいいです。この特攻で「嘘を本当にする」ような奇抜な作戦を立てられれば、作劇上はとても良い着地になります。

次に構成です。最後の秀頼のシーンを10分に縮めて全部エピローグに押し込んで、あくまでも三幕目を幸村特攻に絞ることです。エンタメストーリー映画でクライマックスをずらすのは絶対に駄目です。あくまでもクライマックスは特攻。キャラの悶え合いは最後のおまけで十分です。どうしても火垂関係を入れたいなら、特攻中に暇してる才蔵と脇で乳繰り合ってればOKです。

【まとめ】

回りくどくなってすみません。今日は変則的にストーリーに絞って見てみました。映画には必ずメインストーリーがあり、それは登場人物の「物語上の欲求」の結果として生まれます。そして、そのストーリーを構成するために、三幕構成(状況設定・葛藤・解決)があります。この3つは相互に関係性があって、これがきちんとできていないとそもそも見ても意味が分かりません。本作は堤演出を全て差っ引いても、そもそもの脚本構成がムチャクチャで整理できていないため、なかなか面白くはなりません。

もちろんこの方式が唯一絶対の正解ではありませんが、一つ物語を見る上での目安にはなるかと思います。

こんなんで、この映画をちゃんと供養できてるでしょうか(笑)?

ちなみにこの映画は完全にセリフ劇であり、そもそも舞台演劇を映画に置き換えるということをしていません。だから、大げさなリアクションを連発しますし、物理的な距離感も無茶苦茶です。家康の目の前で幸村の最期をダラダラやるのも演劇ならアリなんですね。演劇は物理的に同一の舞台を観客の想像でいろんなロケーションに置き換える文化ですので、舞台上で20メートルしか離れていなくても遥か彼方にいると脳内変換できます。

こういう滅茶苦茶な映画でも、アイドル要素だけで乗り切ることもできます。ですから俳優の熱心なファンなら楽しめるかもしれません。それはそれで大切なことなので、是非々々映画館で御覧ください。物語上の意味はほとんど無いですが、アクションシーンの俳優さん達は結構頑張ってますしよく動けてます。そこだけに絞るなら案外悪くないかもしれません。

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セルフレス 覚醒した記憶

セルフレス 覚醒した記憶

​今日は二本です。一本目はシャンテで

「セルフレス 覚醒した記憶」を見てきました。

評価:(75/100点) – 古き良きB級午後ロー映画


【あらすじ】

“ニューヨークを作った男”建築王のダミアンは、ガンに蝕まれ余命半年を宣告されていた。まだまだ若いもんには負けんという心意気はあるが、確実に死が近づいている。そんな折、彼の家にオルブライト博士の名刺が届く。博士は「人間の脱皮」として、魂を別の”器”へ移す研究を行っていた。人生最後の賭けとして、ダミアンは博士に依頼し、若い肉体への”脱皮”手術を行う、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ガンとオルブライト博士
※第1ターニングポイント -> ダミアンがキドナーとして生まれ変わる
第2幕 -> キドナーの生活と手術の秘密
※第2ターニングポイント -> マデリンとアナが誘拐される
第3幕 -> ラボへの潜入


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【感想】

今日はお休みをとって二本見てきました。一本目はターセム・シン監督の「セルフレス 覚醒した記憶」です。平日昼の回なのに意外と年配の方で埋まっており、ライアン・レイノルズ人気を感じました。

良きB級アクションSF

私、何が好きってB級SFアクションほど好きなものはありません(笑)。ターセム・シン監督といえばスローモーションの面白映像と気持ち悪い変なアーティスティック映像加工が特徴なわけで、それがSFアクションとくっついたら面白く無いはずがありません!

そんなこんなでかなり鼻息荒く見てきたんですが、これですね、すごい午後のロードショーっぽいんですね(笑)。面白映像はエッセンス程度に留まっていて、全体はこれでもかっていうミニマムかつバカっぽいアクション映画。肉弾戦と1:2カーチェイスが一番お金かかってるんじゃないかってくらいの節約っぷりで、前作「インモータルズ-神々の戦い-(2011)」とは180度違います。あっちはCGバリバリ、ケレン味たっぷり、話は一直線って言う王道の大作アクションエンタメ映画でした。対する今作は、もうユーロッパコープが作ってるんじゃないかっていうくらいアホっぽい体を張ったアクションです(笑)。

話はいたってシンプル。初代「仮面ライダー」と一緒です。主人公が改造人間になって、自分を改造した(=生みの親)悪の博士をぶっ殺しに行くっていう王道のエディプスコンプレックスもの。そこにさらに父と娘の確執と修復みたいなものも混ぜ、「親殺しかつ娘との仲直り」という世のお父様の不満を綺麗さっぱり解消する作品となっております。しかも、「まさかこのまんまなんてことないだろうな、、、」と不安だった私の懸念点も、最後にきっちり落とし前つけてくれました。ターセム!あんた、わかってる!わかってるよ!(サムズアップ)
作品のテーマとターゲティングが一致しすぎていて、あざとすぎるんじゃないかと思いつつ、泣いてしまいました(笑)。

いいキャラが勢ぞろい!

本作は、正直に言うと話は全部どっかで見たようなよくある内容です。それなのにめちゃくちゃ楽しく見られるっていうのは、やっぱり俳優さんたちの強度が素晴らしいからなんですね。

特にライアン・レイノルズ。ものすごいイケメンでガタイも良いのに、場面によってはタレ目かつ寄り目でちょっととぼけて見えたり、微妙に頼りなさそうに見えるんですね。この場面場面でガラッっと変わる顔の印象が、本作のような「巻き込まれ型」のサスペンスにはとってもハマってます。困ったな〜って言いながら危なげなく敵をなぎ倒していく感じが最高です。正当なリーアム・ニーソンの後継者です(笑)。

後は敵のマシュー・グードですね。「ウォッチメン(2009)」のオジマンディアスにしても、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014)」のアレグザンダーにしても、こう何考えてるかよくわからん天才というか、淡々とモノ凄いことをやらかす雰囲気が100点満点です。無表情で目の焦点が合ってない感じですね。
もうね、この主人公と敵をキャスティングしてアクション物やろうっていう企画の時点で8割型勝ってると思います(笑)。

【まとめ】

B級アクションのお約束をちゃんと踏襲した上で安定して見せ場を供給してくれるとっても良い作品でした。大作感は全くないですから1800円出すにはちょっと、、、と思われてしまうかもしれませんが、見て損はありません。レンタルでも午後ロー待ち(※やるよね!絶対)でも良いので、ぜひ見て欲しい作品です。結構本気でオススメします!

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ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>

ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>

今日は新作の

「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」です。

評価:(30/100点) – バカさ炸裂お祭り映画


【あらすじ】

前作「ミュータント・タートルズ (2014)」で逮捕されたシュレッダーの移送が予定される中、シュレッダー配下のフット軍団達は移送中の救出作戦を準備していた。計画を知ったタートルズとエイプリルは、阻止するためにゴミ収集車を改造した「タルタルーガ号」を現場に急行させる!

【三幕構成】

第1幕 -> バクスター博士とフット軍団のシュレッダー救出作戦
 ※第1ターニングポイント -> シュレッダーがクランゲ皇帝と出逢う
第2幕 -> フット軍団のアイテム集め
 ※第2ターニングポイント -> 3つのアイテムが揃う
第3幕 -> クランゲ皇帝vsタートルズ


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【感想】

今日はTMNTのリブート版第2作、「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>」を見てきました。こちらもゴーストバスターズに引き続きバリバリ80’sコンテンツでして、私が小学生の時にテレビ東京でアニメをやっていました。同級生の間で「サ・ワ・キ・ちゃ~ん!」というクランゲのモノマネがかなり流行っており(笑)、しょっちゅう言ってたのを覚えています(笑)。90年代に映画が3本作られており、その後2014年にリブートされました。本作はそのリブートされた「ミュータント・タートルズ」の続編にあたります。
そういった経緯からなのか、今日も客席は埋まってはいましたがほぼ30代~40代ぐらいの男性or夫婦ばかりでした。客席に凄い同年代感を感じてしまいました(笑)。

今回はネタバレを極力さけますので、安心して以下お読みください。映画の内容と同じく、今日は雑な文章です(笑)。

良い所:謎のマイケル・ベイ・オマージュ

本作は、前作「ミュータント・タートルズ」と同じくマイケル・ベイがプロデューサーをしています。しかし、監督はジョナサン・リーベスマンからデイヴ・グリーンに変わっています。これ面白いんですが、何故か前作も今作も、「マイケル・ベイが監督した」かと見間違うほど、カメラワークがとても「マイケル・ベイっぽい」です(笑)。
マイケル・ベイの一番の特徴は、「単純な動きをする被写体の周りをカメラがグワングワンと動きまくる」点にあります。要は「勢いはすごいあるけど、実際に何が起きてるかはわかりづらい」んです。ストーリーテリング上はあまりよろしくない演出・カメラワークなのですが、勢いだけは凄まじいので「なんかよくわからないけどテンションがあがる」という効果があります(笑)。
本作でもこの「マイケル・ベイ演出」がほぼすべてのアクションシーンに見られます。下水管の中でもグワングワン。カーチェイスでもグワングワン。飛行機空中アクションでもグワングワン。川に流されてもグワングワン。ドン引きするぐらいカメラがグワングワンに動きまくり、もはや細かい動きがまったく把握できません。っていうか酔います(笑)。あまりにドラッギーなので、だんだん変なツボに入ってすごい楽しくなってくるんですね(笑)。これが本作の一番よいところです。監督が違うのになぜかマイケル・ベイ色が濃い。プロデューサー様への接待なのか、プロデューサー様が口を出し過ぎなのかは定かではありませんが(笑)、ビッグバジェット・バカ映画の勢いを存分に発揮しています。

さらに、本作には往年の人気キャラが多数登場しています。ロックステディとビーバップの脳筋コンビ、仮面のヒーロー ケイシー・ジョーンズ、そしてクランゲ皇帝。ここに前作から引き続きシュレッダーとエイプリルが登場するわけで、否が応でも期待は高まり、ハードルもグイっと上がります。

悪い所:話がガタガタ

では悪い方に行きましょう。本作には、大きく2つの欠点があります。これが結構致命的なレベルでして、せっかく映像であがったテンションをガッツリ削ってくれます。

1つ目の欠点はストーリーラインに対するタートルズの関わり方です。私が上の方に書いた「三幕構成」の所をちょっと見ていただくと、「タートルズ」の文字が出てくるのが三幕目だけなのに気づかれるかと思います。そう、本作はタートルズが話しの本筋に全然絡んできません(笑)。本作のメインストーリーは「クランゲがかつて地球に落とした3つのアイテムが揃うと、”どこでもドア”的なものを作ることができる。シュレッダーがそれを出現させて、クランゲ宇宙艦/テクノドロームを地球に堕ろし、世界征服をしようと企む」というものなんですね。当然タートルズは正義のヒーローとしてこれを阻止しないといけないわけですが、なんと、この「3つのアイテムがそろうと~」というのをタートルズが知るのが、すでに2個集められてしまった”ミッドターニングポイント”なんです。つまり映画の前半半分の話はタートルズがあんま関係ない(笑)。しかも3つ目もサクっと取られちゃって、あっさり最終決戦に突入します。これによって、そもそもの本筋がすごい軽~く見えちゃいます。

2つ目の欠点は、タートルズ側のストーリー、すなわち「もし人間になれるなら、亀を辞めて人間になりたいか?」というアイデンティティの問題です。このテーマ設定自体はとてもいいんですが、肝心の解決にドラマがなんにも無いんです。ちょっと前まで「人間になりたい!」って言ってたのに、理由も何もなしに急に「俺たちは亀だ!」とか言い出しちゃうんで、そもそもいつアイデンティティを持ち直したんだかよくわかりません。これに限らず、「俺たちはもうチームじゃねぇよ」とかSMAP級の解散宣言をした5分後くらいに「俺たちタートルズ!兄弟!カワバンガ!」みたいな円陣を組んでたりもして、結局おまえら何なんだ感がハンパじゃないです。これは邪推なんですが、もしかすると編集をミスって大事な所をカットしちゃったんじゃないかと思います(笑)。DVDが出るときにディレクターズカットかなんかでちゃんと補完されてるような気がしてなりません。あまりにも唐突に主張が変わるので、大混乱でした。

この他にも、シュレッダーがなんぼなんでも扱い酷くないかとか、せっかくの青い薬を粗末にするなとか、ブラジルからどうやっていつの間に帰ってきたんだとか、細かいツッコミどころは結構あります。でもそういうのがスルーできるぐらい、大筋がちょっと酷いです。

【まとめ】

良くも悪くもマイケル・ベイっぽいバカさが炸裂したお祭り映画でした。シン・ゴジラの庵野総監督も樋口監督を差し置いて目立ちまくっていましたが、なんか世界的な流行なんでしょうか(笑)? ノイズが多すぎて引っかかるところが多いのが玉に傷ですが、勢いだけはある映画です。「テレビでやるから流し見しようかな~」ぐらいの姿勢が一番正しい気がします(笑)。積極的なおすすめはしませんが、フラッと入るにはそこまで悪くない作品だと思います。フォローになってるでしょうか(苦笑)。

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