冷たい熱帯魚

冷たい熱帯魚

今日は新宿で3本です。一本目は今更ですが

冷たい熱帯魚」を見ました。

評価:(75/100点) – でんでんは最高 !


【あらすじ】

社本信行は富士郊外で熱帯魚店を経営している。最初の妻を亡くし、一人娘・美津子はグレ、後妻の妙子ともあまり上手くいっていない。
ある日、夜御飯の途中で飛び出していった美津子が万引きをしたとの連絡が信行の元へ来る。急いで妙子と共にスーパーマーケットへ向かった信行は、店長へこっぴどく叱られる。すると、そこに近くで熱帯魚店を経営しているという村田幸雄が現れその場を丸く収めてくれた。そのまま成り行きで村田の熱帯魚店を見学した社本一家は、どんどん村田のペースへと巻き込まれ、やがてにっちもさっちも行かなくなってしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 社本一家と美津子の万引き。
 ※第1ターニングポイント -> 吉田の死。
第2幕 -> 村田のビジネス。
 ※第2ターニングポイント -> 村田の死。
第3幕 -> 社本の逆襲。


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【感想】

今日は3本見て来ました。1本目は冷たい熱帯魚です。今月頭にちょくちょくレイトショー狙いで新宿テアトルに通っていたのですが、ずっと立ち見ばっかりで見逃していました。公開から1ヶ月経って拡大ロードショーが始まったからか、そこまで混んではいませんでした。
随所でかなり感想が出そろった感がありますので、細かい所を抜かして要点だけさらっと書いてしまいます。
個人的には本作は「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」以上、「愛のむきだし」未満って感じです。キャラクターはどなたも最高に切れてますし、役者はどなたも最高にすばらしいです。特に誰しも言うことですが、でんでん演ずる村田幸雄はいろんな意味でちょっと他では見られないくらい切れてます。激情的に捲し立てたかと思うと突然優しげになったり、本当に嫌な意味での「あるあるオヤジ」の村田は存在感抜群です。このキャラクターを作っただけで勝ちかなという気はします。
ただ逆に言うとこのキャラだけかなという印象もあります。もちろんそんなことは無いですし、社本の成長(?)物語にも見えます。ヘタレな社本が村田という暴力的な男性に感化されて”男らしさ”を獲得するも結局そんなことではどうしようも無いという、、、そういう風にも見えます。でもそういう全部を吹き飛ばすぐらい村田が濃すぎるため、どうしても村田が退場した後のがっかり感というか失速を感じてしまいました。
2時間半の長い映画ですが、すくなくとも途中で飽きることはありません。かなり高いテンションで見ることができます。ですがそこまで万人にお勧め出来るかというとちょっと微妙だと思います。そこまで言うほどでもないですがグロい事はグロいです。とはいえ、でんでんさんには是非賞を獲って欲しいので小声でオススメします。

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ザ・タウン

ザ・タウン

2本目は

ザ・タウン」です。

評価:(80/100点) – ベン・アフレックすげぇ。変形の「田舎で女性が不幸になる話」。


【あらすじ】

強盗が多発するチャールズタウンで、ダグは「家業」として銀行や輸送車の強盗を行っていた。ある日彼と仲間が襲った銀行で、仲間の一人ジェムが支店長の女・クレアを人質に取る。
後日、顔を見られたかどうかを確認しにいったダグはコインランドリーで怯えるクレアを目撃する。クレアの相談に乗ったことで知り合った二人は、やがて惹かれ合っていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ダグと仲間の強盗。
 ※第1ターニングポイント -> コインランドリーでダグとクレアが出会う。
第2幕 -> ダグとクレアの付き合いと、ダグの足洗い。
 ※第2ターニングポイント -> ダグが最後の仕事を受ける。
第3幕 -> フェンウェイ・パークの襲撃。


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【感想】

本日の2本目はザ・タウンです。昨年の東京国際映画祭のクロージング作品です。小さな劇場でしたが結構お客さんは入っていました。監督・脚本・主演はベン・アフレック。とはいえ、決して「俺様映画」になることなく、悲惨で鬱屈した街で生きる男を悲哀たっぷりに描いた普遍的で素敵な作品になっています。
結論は、オススメです!!で終わってしまっても良いくらい素敵な作品なので、とりあえず見に行って下さいw
本作は変形の「田舎で女性が不幸になる話」です。チャールズタウンは全然田舎じゃないですが、作品内ではとても鬱屈した街として描かれています。アイルランド人が多く治安の悪い街です。
ダグの父親は強盗で懲役30年(=ほとんど終身刑)を食らっていますし、母親は幼い時に失踪してしまっています。そしてダグ自身はアイスホッケーの選手としてドラフトにまで掛かったものの、結局怪我で挫折しチャールズタウンで強盗に身をやつしています。彼はいつかは街をでて都会へ出ようと考えていますが、なかなか踏ん切りが付かず強盗業を続けています。そんな彼がカタギのクレアと出会うことで足を洗って「人並みに幸せになろう」と決意するようになるわけです。
本作は強盗の元締め・ファーギーとクレアの間で揺れ動くダグと、彼ら強盗団を追うFBI捜査官、そして強盗の被害者でありながら相手が犯人と知らずに恋に落ちたクレアの4者の思惑が交錯して物語が進んで行きます。作中ではこの雁字搦めにされて身動きが取れない感じと、人生に絶望してしまっている鬱屈した感じ、そこからクレアと知り合うことで生まれる希望に溢れる夢が短いスパンでコロコロ入れ替わります。
カテゴリとしでは「ヒューマンドラマ」になってしまいますが、この鬱屈感がまさしく私が大好物な「田舎で女性が不幸になる話」そのものでして、その男性版として大変よくできています。俳優はどなたも素晴らしいですし、ストーリーの組み立て方もまったく飽きが来ないほど良く出来ています。中盤前にはFBIは強盗団4人を早くも特定しますので、そこからのサスペンス展開や真相を知ったクレアとの関係にはグイグイ引っ張られます。
ベン・アフレックのしゃくれ割れアゴと困り顔も相まって、マッチョながらも根が弱気なダグがとても魅力的です。

【まとめ】

すばらしい作品です。愉快な娯楽作ではありませんが、ここまで丁寧に悲哀を描かれると二時間ぐらいあっという間に過ぎてしまいます。大規模公開作品ですので、是非映画館で見てみて下さい。かなりオススメです。

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エクスペリメント

エクスペリメント

12月に入ってようやく初映画です。
今日は

エクスペリメント」を観て来ました。

評価:(25/100点) – 何故リメイクしたか分からないほどes[エス]にほど遠い。


【あらすじ】

老人ホームで働いていたトラヴィスはある日リストラされてしまう。若くして職にあぶれた彼は反戦デモの最中に知り合った女性と恋に落ちるが、彼女は理想を求めてインドで暮らすと言い出してしまう。インドへ行く資金を稼ぐため、彼は新聞広告にのっていた高額なアルバイトに募集する。それは一週間「心理的実験」の被験者となるものであった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> トラヴィスとベイの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> 心理実験が始まる。
第2幕 -> バリスの暴走とトラヴィスの反抗。
 ※第2ターニングポイント -> トラヴィスがカメラに実験終了をアピールする。
第3幕 -> 囚人役の決起。


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【感想】

ようやっと仕事に一段落つきまして、本日は「エクスペリメント」を見て来ました。公開から少し経っているからか、お客さんはほとんど入っていませんでした。

本作の作品位置と概要

本作は1971年のスタンフォード監獄実験を元にした作品です。とかいうと分かりにくいですが、早い話が2001年のドイツ映画「es[エス]」のハリウッドリメイク作品です。es[エス]のオリジナルタイトルも「Das Experiment(The Experiment)」でしたから、完全に同一タイトルでのリメイクとなります。

概要はほぼ同じですが、作品のタッチはかなり変更が加えられています。

オリジナルの「es」はどちらかというとサスペンスよりの作品でした。主人公のタレクはあらかじめ何が行われるかを知った上で取材と好奇心で実験に参加します。ところが本作のトラヴィスはまったく知らない状態でお金を手っ取り早く稼ぐために参加します。そのため、本作では一幕目を丸々使ってかなりどうでもいいトラヴィスのラブロマンスが展開されます。もちろん「反戦活動をしていた男が最後にはみずから戦争を始める」という痛烈な揶揄にはなっているんですが、作品を始めるにあたっての非常に事務的な説明パートですのでかなり退屈はしてしまいます。この退屈な部分を乗り切ると、ようやく本題となる監獄実験が始まります。始まるんですが、、、、はっきりいいますと、この監獄実験がかなり変な味付けになってしまっているように感じました。
というのも、実験開始早々のフラッシュバックで、ウィテカー演じるバリスがかなり母親に虐げられていて且つ厳格なキリスト教義に抑圧されているという描写が入ってくるためです。彼は看守という「支配者」を演じることで、そういった抑圧されたストレスフルな状態から現実逃避して自己実現を果たしていきます。

ちょっとここでそもそもの「スタンフォード監獄実験」に立ち返りましょう。スタンフォード監獄実験は心理学者のフィリップ・ジンバルドーが一般人21人を看守役と囚人役に分けてスタンフォード大学の地下に作った摸擬監獄に隔離したものです。結果、看守役による囚人役への暴行がはじまり、囚人役も被害妄想や精神的な錯乱を見せるようになっていきます。人道的にかなり無茶苦茶な実験ですが、この実験の肝は「普通の人でも特殊な環境下に入れられると”かくあるべし”というロールプレイを始める」ということです。

本作におけるバリスは「特殊な環境下だからロールプレイを始めた」のでは無く、日常の抑圧から解放されたために暴走していきます。なのでエンターテイメントのモンスターとしては申し分ないのですが、そもそものソリッドシチュエーションからは大分はずれてしまっています。それはトラヴィスも同じです。彼が囚人側のリーダーになっていく課程が全く描かれないため、「主人公だから」という理由以外に彼のカリスマ性を裏付ける根拠がありません。囚人側のキャラクターがほとんど立っていないという部分と相まって、かなり残念な感じになっています。またそれとは別に、そもそもソリッドシチュエーションなのに最低限のルールが守られていないという致命的な問題があります。

本作では厳密に規定されたルールが3つあります。一つは暴力行為の禁止。もう一つは囚人側への「相応の罰則」の行使。最後に、一人でも離脱意志がある場合の即時中止です。
そしてこの3つはまったく守られません。ですから「実はルールが存在しない(=実は監視者側のブラフであり実験の一貫)」というのが本当のルールなんです。
ところが、、、、恐ろしい事にこの3つのルールは最後の最後に中途半端に守られます。「人が死んでも止めないのに馬乗りで殴ると止める」というのがまったく意味不明です。この最後の赤ランプですべてが台無しです。しかも赤ランプがついているのに本作では報酬がきちんとでています。

この手のゲーム型ソリッドシチュエーションの場合、最初に決めたルールを守るのは大前提です。もちろんどんでん返しとしてルールをひっくり返すのは有りですが、いきなり最初から無視したあげくに中途半端に適用するというのはいくらなんでも酷すぎます。最後の赤ランプがついた瞬間にそこまで比較的楽しめていた時間が一気に冷めました。

【まとめ】

たしかにこの手の映画を映画館で見るのは楽しいんですが、さすがにこれですとDVDで「es[エス]」を見た方が良いと思います。アメリカでは9月にDVDが出ているタイトルですので、日本でも少しまでばすぐに出るかと思います。ジャンル好きな方は止めませんが、ふらっと入って見るには少々厳しい内容だと感じました。DVDを待って、エスと本作を2本立てで見比べてみるのも面白いかも知れません。
余談として、日本の宣伝はかなり「インシテミル」を意識しているようですが、さすがに「インシテミル」と比べれば本作の方が5億倍マシですw

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ストーン

ストーン

本日は2本です。1本目は

「ストーン」です。

評価:(30/100点) – 宗教観の入る話は日本ではちょっと、、、。


【あらすじ】

刑務所で仮釈放の審査官をするジャックは定年を控え放火犯のストーンを受け持つ。しかしストーンは手強く、一向に面接が進まない。そうこうするうち、ストーンは妻のルセッタをけしかけ、ジャックを誘惑しようとする、、、。


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【感想】

今日の1本目は「ストーン」です。銀座のシネパトスで見ましたが、そこそこお客さんがはいっていました。個人的には予告のウェズリー・スナイプスとセガールでテンションMAXになってしまい(苦笑)、本作自体はあんまり盛り上がれませんでした。
本作は典型的な誘惑話です。「創世記」や「失楽園」ででてくるアダムとイブと蛇の話ですね。本作でオリジナルな要素があるとすれば、ジャックには冒頭から影があるという部分と、そしてストーンが途中で人の死を目の当たりにすることで宗教的な悟りを経験するという部分です。
位置関係としては、ルセッタが最初から最後まで無邪気に倫理観を破壊する「サタン(ルシフェル)」であり、ストーンは新興宗教(=邪教)にのめり込む異端者、ジャックがキリスト教的正義の執行者から堕落した人間、ジャックの妻・マデリンのみが最初から最後まで祈って耐え続ける良き信者です。
そうなんです。本作は劇映画的な面白さはほとんどありません。誘惑っていっても大した描写はありませんし、話が進むのはほとんどが面接部屋です。さもありなん。本作は舞台用の企画です。
確かに舞台で見れば面白いかなと思う部分はあったのですが、しかしいかんせん、下手に有名な俳優が出ている分Vシネマ臭いというか、非常に「手抜き」「退屈」な印象が前に出てしまいました。
正直DVDでも良い作品だと思います。演出自体はそこまで下手ではないため、映画化するには脚本自体に無理があったかなという印象でした。

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リミット

リミット

土曜の二本目は

「リミット」を見ました。

評価:(70/100点) – スペイン発のブラックユーモア・ソリッドシチュエーションスリラー


【あらすじ】

場所は2006年のイラク。食品会社のドライバーをしていたライアン・レイノルズは目覚めると棺の中に居た。棺の中にはライターと携帯電話、ナイフ、ペン、サイリウム、切れかけの懐中電灯のみ。身動きもロクにとれない。果たして彼は脱出できるのか?


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【感想】

土曜の二本目は「リミット」です。公開館はそこまでありませんが、かなり人が入っていました。久々に完全なワンシチュエーションのスリラーです。登場人物(=役者)は一人のみ。あとは電話越しの声やビデオ越しにちらっと見えるだけです。場面も棺の中のみ。最初から最後まで「脱出できるか」という一点のみで100分間引っ張ります。
当然これだけを聞くと「本当に100分間も持つのか?」と不安になりますが、そんな心配は要りません。もちろん途中でどうしても中だるみはしますが、とても上手にイベントを転がして高いテンションを保っていきます。そして全体を通して流れるのはアメリカへの徹底した”おちょくり”と皮肉です。この辺はさすがにスペインというところでしょうかw
ちょっと詳しく書いただけでもネタバレになってしまう内容なのであんまり書けないのですが、もし近くで上映しているのであれば是非見ておいた方が良いと思います。これほど明確にアイデア一発で映画を成立させている意欲作は本当に珍しいです。かなりオススメです。

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ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う

ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う

土曜の三本目は

「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」を見て来ました。

(35 /100点) – 石井隆的というよりは普通のエログロ単館映画。


【あらすじ】

あゆみ、桃、れんの親子は場末でバーを営みながら、保険金殺人を繰り返していた。ある日、いつものように死体を富士山麓に捨てた後、桃はロレックスが無いことに気付く。死体と共に見つかっては製造番号から足が付くと恐れ、桃はれんにロレックスを探してくるよう命令する。森の中から小さなロレックスを探すことなど不可能だと考えたれんは、なんでも代行屋・紅次郎に依頼をする、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ロレックスと紅次郎。
 ※第1ターニングポイント -> れんが紅次郎に人捜しを依頼する。
第2幕 -> 次郎の人捜し。
 ※第2ターニングポイント -> れんが次郎の元へ行く。
第3幕 -> 石切場。


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【感想】

土曜の三本目は「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」を見てきました。意外にもお客さんの半分ぐらいは女性でした。
終盤の雨の中でれんが非常階段に座り込む場面や、次郎の部屋の中でネオンを光らせる場面など、石井隆的なモチーフは随所に散りばめられています。ただ、ここ15年ぐらいの間にこういった表現がもう既に陳腐化してしまっている感が否めません。というのも、それこそ銀座シネパトスのレイトショーにいけば、こういう類のエログロな準ピンク映画はもはや定番になってしまっているからです。
ただし、かならずしも石井隆監督がそういった有象無象に埋没したとは思いません。やはり石切場でのクライマックスのテンションはさすがですし、そこまでの話運びも平凡ながら丁寧に積み重ねていきます。ですが、特にれんのキャラクターがあまりにも浅かったり、紅次郎が本当にただの良い人になってしまっていたり、もったいない箇所が多々あります。石井組とも言うべき大竹しのぶ・井上晴美はいつも通りの棒読みですし、佐藤寛子も慣れないからかキャラクターの掘り下げ不足がかなり酷い事になっています。
話の部分はそこそこまとまってはいるだけに、こういった所でグダグダに見えてしまうのは非常にもったいないという印象でした。位置付けとしては石井隆監督が復活するためのステップという所でしょうか? 良くも悪くもこぢんまりとまとまった佳作だと思います。

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インシテミル 7日間のデス・ゲーム

インシテミル 7日間のデス・ゲーム

今日の二本目は

インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。

評価:(4/100点) – 秋だ! 一番! ホリプロ祭り!!!


【あらすじ】

フリーターの結城はコンビニで求人雑誌を立ち読みしている最中に女性に声を掛けられバイトを紹介される。それは「ある心理的な実験」に7日間参加するだけで時給11万2000円という高額な賃金を得られるというものであった。参加者10名を乗せたリムジンは山奥の建物へと着く。そこには10体のインディアン人形と豪華な夕食が用意されていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 10名の紹介と暗鬼館。
 ※第1ターニングポイント -> 西野が殺される。
第2幕 -> ゲーム。
 ※第2ターニングポイント -> 残り三人になる。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

本日の2本目は「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。若年層とカップルを中心にかなり混雑していました。400人規模の箱でほとんど満席状態は久しぶりです。本作は藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみというホリプロの主力3名を皮切りに、役者は全てホリプロ所属となっています。そして開始早々に「日テレ」のロゴマークに続いてズッコケる「ホリプロ50周年記念作品」の文字。
そう、本作はテレビ屋映画ならぬ「事務所屋映画」です!!!!
ま、原作が事務所と関係ないだけ「瞬 またたき」よりはマシかもしれませんけど(苦笑)、、、。
え~~~いつもの事ですが、ミステリーとはいえツッコミ所が有り余っているため、今回もネタバレを多数含みます。未見の方で見るつもりがある方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ行って地獄を見て下さいw 既にご覧の方、未見だけど見る気が無い方のみ、少々お付き合い下さいますようお願いいたします。

概要とルールのおさらい。

本作はまたまた日本産のソリッドシチュエーションスリラーです。監督は中田秀夫。Jホラーの名監督ですが、近年はキャリアプランを考えてなのかテレビ屋映画にシフトして行っています。

ストーリー自体はソリッドシチュエーションスリラーの典型です。訳ありの数名が密閉空間に閉じ込められ、そこでゲームを通じてサバイバルしていきます。当ブログでは耳タコで書いていますが、ソリッドシチュエーションスリラーはゲームの面白さが全てです。では、本作のゲームのルールは何でしょう?
1) 勝利条件は「1週間生き残る事」または「最後の2人になる事」。
2) 夜になったら部屋に籠もる事。廊下にはガードが巡回し、見つかると殺される。
3) 部屋にはミステリーの名作にちなんだ凶器が一個づつ準備され、使用は自由。
4) 部屋には鍵がかからない。
5) 「事件」がおきたら「解決」をすること。「解決者」は推理を皆の前で発表し、推理は多数決で真贋が決定される。
6) 推理が肯定された探偵にはボーナスが付き、報酬2倍。
7) 推理と多数決により犯人に指名された人間は隔離部屋に投獄される。
8) 殺人を犯した者は報酬2倍。殺人の被害者も報酬2倍。
9) 報酬のベースは1881万6000円。
とりあえず以上でしょうか? かなり原作から変更・削除をされています。

本作のまったく駄目な所。

さて、上記のルールを見てこのジャンルに詳しいかたは嫌な予感がすると思いますw そしてその予感は当たっているでしょう。
つまり、「殺人に抑止力が無い」。これが本作の一番がっかりする所です。本作では一人殺す度に報酬が2倍になります。そして推理は多数決で決まります。なので、開始早々に8人を殺せば終わりです。そうすると報酬48億になりますw
しかし、本作では殺人に抑止力が無いにも関わらず、殺人がたったの3件しか起こりません。驚くべきモラリティの水準ですw ソリッドシチュエーションに必須の「人間の本質としての暴力性の暴露」が一切ありません。なので、まずはスリラーとしてのワクワクがありません。これが致命的です。

そしてがっかりポイントその2は多数決のゲーム性です。これまた驚くべき事に、今回多数決はたったの2回しか行われず、なんと派閥に別れることもありません。しかも後半は多数決が行われること無しに、藤原竜也に勝手に探偵ボーナスがじゃんじゃん付きます。もはやルールすら無視w 意図は分かりませんが、本来この”多数決”をルールに盛り込んだという事は、つまり恣意的に誰かをハメることが出来るということなんです。なので、このルールが説明された時には、私は当然「これは派閥に別れて多数決を奪い合うゲームだ」と思ったんです。だって派閥を作れば「敵対組の一人を殺して」「多数決で敵対組の一人を監獄に送れ」ば、一気に脱落させられるんです。でもそうはなりません。それどころかまともな推理は一回もありません。全部感情論だけの多数決です。なんじゃそれ。

そしてこれがダメ押しですが、そもそも本作のゲームの運営事情が酷すぎます。このゲームは安東の推理によると約2000万人の視聴者がいる会員制のwebコンテンツです。つまり日本人の5人に1人、世界中と考えてもビートルズの「赤盤」「青盤」やマドンナの「LIKE A VIRGIN」レベルのスマッシュヒットです。すっげぇwww
作中の描写でも、渋谷TSUTAYA2階のスタバで携帯を使って見ている若者・サラリーマンが映ります。そもそもスナッフフィルムがそんなメジャーになるわけないですし、よしんばこの世界では日本が「ヒャッハー!!!!」な無法地帯だったとしても、それを参加者達が一人も知らないのは明らかに変です。それこそイギリスのバラエティ番組「サバイバー」以上にメジャーなコンテンツのはずです。

また、これはカイジでも思ったことですが、そもそもこういう「人死に上等」なゲームの主催者が、生き残った人間にお金を渡して帰すんでしょうか? 殺して終わりじゃないかって気がすごいします。
本作も駄目なソリッドシチュエーションスリラーのご多分に漏れず、結局最後は参加者の一人が凶暴化して襲ってくる安い展開に落ち着きます。そしてその襲い方も驚異的なヌルさです。なにせ建物内には、「釘打ち機」「拳銃」「ボウガン」「斧」「ナイフ」と殺傷力抜群なアイテムが転がっています。しかしラスボスが使うのはアイスピックw なぜそのチョイスなのか首をひねらずには居られません。

結局、本作はソリッドシチュエーションの見た目だけを持ってきただけです。「なぜソリッドシチュエーションスリラーが面白いのか」という根本的な分析が全く出来ていません。結果として、「ホリプロ大感謝祭」という単語が透けて見えるようなお遊戯大会になってしまっています。しかも特にメイン級の役者陣が北大路欣也以外はほぼ全滅で、ホリプロのプロモーションとしても失敗しています。
これを見た後だと、ホリプロは50周年を迎えてもうダメなんじゃないかとすら思えますw まぁ伊集院光さんが居る限りは支持し続けますけど(苦笑)。

【まとめ】

またもや日本産のソリッドシチュエーションスリラーの駄目な面が全部凝縮された凄い作品が出てきてしまいました。俳優ファンの方にもオススメしづらいレベルになっていますが、片平なぎさのファンであればかろうじて楽しめるかも知れません。おそらく本作で得をしているのは片平さんだけです。

綾瀬はるかを見ているだけで乗り切れないこともないですが、それでもあまりに酷すぎる話のずさんさが気になって全然乗れませんでした。開始40分目くらいの最初の多数決で心がぼっきり逝きましたw
まったく心がこもりませんが(苦笑)、でもきっと楽しめる人もいると思うので確かめる意味でもオススメです(棒読み)。

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悪人

悪人

さてさて、本日はモントリオール最優秀女優賞で何かと話題の

悪人」を観てきました。

評価:(2/100点) – 人間の振れ幅ではなく、恣意的なキャラの振れ幅。


【あらすじ】

解体業の清水祐一は、出会い系サイトで出会った保険外交員の石橋佳乃を激情にまかせて殺してしまう。その後飄々と生活をしていたが、出会い系サイトで出会った別の女性・光代とデート中に家に警察が来ていることを知り、そのまま光代と共に逃亡生活をする。それまで殺人を何とも思っていなかった祐一だったが、光代に本気で恋したことで罪の重大さに気付いていく、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 石橋佳乃と増尾圭吾
 ※第1ターニングポイント -> 佳乃が殺される。
第2幕 -> 裕一と光代の出会い
 ※第2ターニングポイント -> 裕一の家に捜査が及ぶ。
第3幕 -> 裕一と光代の逃避行


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【感想】

本日は川崎チネチッタが1,000円だったので、あんまり見る気のなかった「悪人」に行ってきました。お客さんはよく入っていまして、ほぼフルハウスだったと思います。本作は先日、深津絵里がモントリオール国際映画祭で最優秀女優賞を獲ったことで話題になっていましたが、そのせいもあるかも知れません。春先の「パレード」よりも観客は入っていました。モントリオール映画祭自体はマスコミをいっぱい連れて行けばくれるモンドセレクションみたいなもんなので価値無いんですが、日本人はこういう謎の横文字に弱いですからね(笑)

大変申し訳ないというか、予告である程度予感はあったんですが、相変わらずな感じでボロカスに書かせていただきます。それも同じ吉田修一原作のパレードみたいに「腹は立つし酷い出来だけどやりたいことはわかるから、点数だけは45点」みたいな事もありません。っていうか満島ひかりと松尾スズキ以外に褒めるところが見当たりません。私の駄文を読んでいただいている奇特な方にはなんとなく察しがついているとおもうんですが、私は好きな俳優や可愛いアイドルがでていると点数が大幅に甘くなりますw 満島ひかりが出ているのに2点を付けたという根拠をこれから一気に書かせていただきます。すなわち私の燃えたぎる怒りのリビドーをw
お約束ですが、以後の文章は多大なネタバレを含みます。まぁ予告を見ただけであらすじは全部分かると思いますが(苦笑)、本作はそれ以上に演出面で本当に怒りを呼ぶレベルの事を平然としてきます。どうしても細部になってしまいますので、これから見ようと思っている映画未見の方はご遠慮下さい。

本作の流れ。

本作の流れをざっとおさらいしましょう。第1幕では、殺される事になる佳乃がいかに最低な女で「殺されても仕方がないか」という描写が続きます。

そして第2幕前半では、裕一が祖父の介護をしたり近所の年寄りの世話をしたりする「良い人」描写があります。そして「将来に希望が持てない閉塞的な人生を送る寂しい女」光代と出会います。裕一はここで光代のあまりの純朴さに惚れてしまいます。そして光代もまたそれまでの人生に居なかった「不良っぽい強引で影のあるイケメン」にコロっといきます。そして当初犯人と思われていた圭吾が実は直接的に事件と関係無いことが明らかになり釈放されます。この段に来てついに裕一に捜査の手が及び、裕一は光代をつれて逃亡します。道中の食事中に裕一が光代に語る回想シーンによって、再度、佳乃がいかに殺されて当然の女かという描写が入ります。一方、裕一の居なくなった実家では、祖母が詐欺にひっかかったりマスコミに追い回されたりして踏んだり蹴ったりな状況になっていきます。また、佳乃の父は、警察の取り調べから釈放された圭吾を逆恨みし、モンキーレンチをもって追いかけ回します。一度は自首を決めた裕一でしたが、光代は逃避行の続行を希望し、再び逃げます。

ついに光代のあこがれの灯台に潜伏した裕一は、買い出しにいった光代の後を付けた警察によって取り押さえられてしまいます。取り押さえられる間際、裕一は光代の首を絞めます。これによって光代はあくまでも犯人に連れ回された被害者として、逃亡援助の罪を免れます。

映画におけるモンタージュ理論の基本

ちょっと話がそれますが、映画にはモンタージュ理論というものがあります。いまや常識としていろいろな表現に使われているもので、この理論を使っていない映像はほとんどありません。ソ連のエイゼンシュタイン監督の「戦艦ポチョムキン」から脈々と続く革命的な理論です。詳しく知りたい方は沢山本が出ていますので読んでみて下さい。

ざっくり説明しますと、これはまったく別々のカメラで撮った映像を編集によってつなげることでそこに意味が付加されるという理論です。例えば建物の映像が10秒ぐらい流れて、次いで居間のような所で夫婦が話している映像に切り替わるとします。これを見た観客は、当然この居間が建物の中にあると思います。でも、実際に最初に写っていた建物の中に居間があるかどうかは本当は分かりません。テレビドラマであれば、外観はロケで実物を撮影して、部屋はスタジオのセットで撮影していることだってあり得ます。ですが、私達はこの並びで映像を見せられると、「写っていた建物の中に居間がある」と認識します。これがモンタージュ理論です。映像は編集によっていくらでも恣意的に観客の心理や感覚を操ることが出来るんです。

これは映像に限ったことではありません。脚本にも同じ事が言えます。脚本はたとえ個別のシーンが全く同じだったとしても、見せる順番や編集点を変えることでいくらでも恣意的な印象操作をすることができます。これに失敗している映画は、見ててどうでもよくなってきたり、飽きてしまったりします。

本作で怒りを呼ぶ主張。

さて、前置きはこれくらいにしまして、いよいよ本題です。本作は、明らかに監督・脚本家の意図として、佳乃と圭吾を「最低な人間」、裕一と光代を「根は良い人」として印象操作を仕掛けてきています。それはエピソードのつなげ方を見ても明らかです。冒頭から佳乃と圭吾は本当に最低に描かれますし、一方の裕一は地元では世話焼きで無口な純朴青年として描かれます。そして逃避行の最中、駄目押しで犯行シーンを見せて佳乃を決定的な糞女として描きます。

私が一番怒りを感じるのは、この佳乃が完全な最低女として描かれる犯行シーンです。満島ひかりを使ってこれかよってのもあるんですが、それ以上に、このエピソードの入れ方に問題があるんです。いいですか、、、このシーンは、港町っぽい食事処で、裕一が光代に「人を殺してしまった」ことを弁解するシーンに裕一の回想として入れ込まれるんです。これぞまさに前述したモンタージュ理論の最低な悪用です。さんまイカの目のアップから回想に入るという面白演出で見失いがちですが、犯行シーンは真実(=神の視点のカメラ)では無く、あくまでも殺人犯が一緒に逃げてくれる恋人に弁解している都合の良い回想なんですよ? それをこのタイミングで入れてくるんです。そしていかにも同情するような深津絵里の顔を繋いできます。本っっつっっっ当にこういう事をされると腹が立ちます。加えて遺族の父親は指名手配犯の裕一を捜すのではなく、釈放された圭吾に説教しにいきます。おかしいでしょ、どう考えても。作品全体で裕一を全面擁護する方向につなげてるんです。

しかも極めつけは、母が訪ねてくるというエピソードと、夕日を灯台で見ている子供の裕一のカットです。つまり、彼は親に捨てられて寂しくってグレちゃったんだから人ぐらい殺してもしょうがないという繋ぎ方なんです。これに関しては、作り手側の良識を疑います。「重力ピエロ(2009)」で「親が人殺しの子供は人を殺しても仕方が無いから自首しなくてOK」という結論がありましたが、それ以来の衝撃です。今度は「孤児はグれて当然だから人を殺しても仕方が無い」そうです。全国の人を殺したことがない孤児の方は本気で怒ったほうが良いです。

もちろん裕一だけでなくこういった描写は光代にもあります。そもそも光代ってそうとう頭がイっちゃってます。だって出会い系サイトでナンパした男にいきなり「ホテル行こうか」って言われてホイホイついて行ったあげくに「私は本気で好きな人が欲しかったの」とかいうような子ですよ。描写がないですが、たぶんこれ出会い系サイトでナンパしたのは初めてじゃないはずでしょ。これって所謂ひとつの「ヤンデレ」ってやつですか? むしろ怖いんですけど、、、。だけど、その明らかにおかしい子を「理解力と包容力のある優しい純朴な子」みたいに演出してくるのがかなり引きます。要は光代はいままで誰からも相手にされなかったのに、裕一が相手にしてくれたのがうれしくって舞い上がっちゃっただけです。それをいかにも「本当の愛を知った」見たいな描かれ方をされるとツッコミたくなります。だって初めて会った日はホテルに連れ込まれてその場でさよならで、次に会った日の夜にはもう逃避行してるんですよ? いくらなんでも早すぎでしょ。もっとも、作りて側の「女なんて一発やっちまえば言うこと聞くんだよ!」という逞しい信念に基づいた物ならば大変結構なんですが、普通それはちょっとねぇ、、、、、女性を馬鹿にしすぎでしょ。北方謙三あたりが言ってるなら苦笑いで済みますけどね(笑)。

なんかもう全部が雰囲気でずさんなんです。そもそも祖母が詐欺に遭う話だって映画の本筋と全然関係ないじゃないですか。悪人と善人の見分けって話ですが、それはそれで余所でやれって。マスコミはマスコミで加害者の祖母の家には押しかけるのに、被害者の葬式や遺族の家には押しかけ無いんですよ。現実のマスコミは被害者の方にだって節操無くガンガンにアタック掛けるでしょ?さらには被害者の父親が、釈放された元容疑者をモンキーレンチで白昼堂々と襲うんですよ。なんで無実の元容疑者を襲うのかもさっぱりですが、そんなもん写真週刊誌に一発でやられますよ。

あと、圭吾君はたいして悪くありません。ストーカー気味の女の子に夜中にばったり会っちゃって仕方無くドライブに誘ったらウザイくらいアピールしてくるから車から蹴り出しただけです。まぁ蹴りはやり過ぎですけど。だから被害者の父は完全に言いがかりの八つ当たりです。そんな暇があったら駅前で裕一の似顔絵のビラでも配れ。そもそも、本作のテーマは「悪人にだって人間的な振れ幅はある」って部分でしょう?そのくせに圭吾を類型的な「嫌な奴」に描くのは、これ作品内矛盾じゃないですか。

ラストで「あの人は悪人なんですよねぇ」とか光代が言いますが、私断言します。裕一は悪人だし、おまえも刑法第100条・逃走援助で普通に逮捕じゃ。もっというと被害者の父も障害罪で逮捕じゃ(っていうか普通に通り魔)。ということで、結論としてはみんな悪人です。監督も、脚本も、こんな程度の演技に賞をくれてやったモントリオールの審査委員も、そしてこんなに口汚い言葉で罵ってる私も。

【まとめ】

映画館で見る価値はありませんが、DVDが出たらレンタルで見る価値はあると思います。確かに日本で出会い系サイトによる売春が普通に行われていて、田舎の閉塞した村社会で切れやすい若者が一杯いて問題視されているとカナダ人が誤解したならば賞の1つぐらいは来てもおかしくはないかも知れません。なぜなら、おそらくこの内容をコンゴとかパキスタンとか日本人に馴染みの薄い国の映画としてやられたら、日本でも文化を誤解して褒める人がいても不思議じゃないと思うからです。
一応マイナス方面でオススメをしておきますが、最後に1つだけ。
見終わった後、30代半ばぐらいの夫婦が「1,000円でよかったね」「いや、これはないでしょ。」という会話をしていたことをご報告いたします。でも後ろの若い女の子2人組は泣いてたんですよね、、、。

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