PUSH 光と闇の能力者

PUSH 光と闇の能力者

いろいろと微妙な噂を聞く「PUSH 光と闇の能力者」の微妙さを確かめてきました。
評価:(60/100点) – 最近このパターン多いですがアイドル映画としてOK。


<あらすじ>
ニック・ガントは物を操るムーバーである。あるとき彼の元に予知能力を持った少女・キャシーが現れる。あるカバンを手に入れると政府機関ディヴィジョンに捕らえられた彼女の母が救えるらしい。ニックはディヴィジョンから脱走したかつての恋人キラと共にキャシーに協力していく、、、。
<三幕構成>
第1幕 -> ニックのキャラ紹介
 ※第1ターニングポイント -> ニックが目覚めるとキャシーが睡蓮を持っている
第2幕 -> カバンを探して奔走
 ※第2ターニングポイント -> カバンがとある建築中のビルにあるのが分かる
第3幕 -> カバン捕獲作戦


<感想>
今回は「微妙でした」と一言で終わらしちゃっても良いんですが、結構良いテキストになりそうなのでCGとストーリー構成について考えたいと思います。
■ 舞台とCGについて。
本作の舞台は香港です。この「アジアでありながらイギリスっぽくもある折衷感」があんまり使えておらず、なんで香港にしたかがよく分からないのが正直なところです。おそらく俳優を欧米人で固めたいけれど中国の胡散臭い感じも出したいということだと思いますが、どうにも俳優が浮いちゃってるんですね。あきらかに風景に溶け込めておらず、隠れて逃げてるはずなのに超目立つという失笑ものの事態になってしまっています。
この溶け込めない感じはCGを使ったアクションシーンにも言えます。念力みたいな空気のゆがみが飛んでいったり、かと思えばどうかってぐらいに合成感たっぷりな閃光が散ったり、お金が掛かってるんだか掛かってないんだかよく分からない微妙なチープさを醸し出しています。いかにも「スタイリッシュなアクションだろ!」と自己主張する外連味たっぷりなカメラワークをしてくるんですが、それが一段とダサさを補強してしまっていてなんか可哀想になってしまいます。
根本的な話になってしまうんですが「超能力」を映画で表現する時にCGを使うのは結構勇気がいります。というのも、通常それは「目に見えない」物であるからです。もちろん空気がゆがむとかそういう物理現象が発生するのは良いのですが、それをやり過ぎると完全にマンガ表現になってしまうんです。同じ「超能力で相手を吹っ飛ばす」にしても、例えばスターウォーズでは単純に相手が吹っ飛んでいきます。フォース自体をCGで可視化することはしません。それは明らかに安っぽくなってしまうからです。CGを使えばはまさにお絵かき感覚でいろんな要素を画面に作ることが出来ます。でも嬉しくなってやり過ぎちゃうと貧乏臭くなってしまいます。このサジ加減と自己抑制がイマイチ崩れてしまっているように見えます。
格好良くするためには「描くこと」と「描かないこと」をバランス良く調整しないといけないという良い教訓となっています。
■ ストーリー構成について
○物語における主人公のステップアップ
とはいえ、前項に書いてきたことはあくまでも絵の安さであって、B級映画好きには特別欠点には見えません。むしろ本作で問題なのはストーリー構成についてです。
皆さん、ドラゴンボールというマンガをご存じでしょうか?よく分からない方はドラクエとかファイナルファンタジーのようなRPGゲームを想像してください。
主人公は最初かなり弱いです。ところがいろんな敵と戦ってどんどん強くなっていきます。そして最終的には世界を救っちゃったりします。
ここには二つの大事な要素が入っています。一つは主人公が成長していくという点。もう一つは敵が段々と強くなっていく点です。これは成長していく主人公がその時々で頑張らないと勝てない「自分よりちょっと強い相手」を倒していく必要があるからです。
つまり、レッドリボン軍と戦ってるときにいきなりフリーザが攻めてきたら地球は全滅しちゃうわけです。セル最終形態を倒した後に桃白白が出てきても、下手すればデコピン一発で倒せてしまうわけです。主人公の成長と敵の強さは綺麗に比例していないとシラけてしまうという事です。
映画のストーリーにもこれと同じ事が言えます。主人公は物語上いろいろな困難をクリアし、話が進んでいきます。困難は最初が一番易しく、終わりに向かってどんどん難しくなっていきます。これを次々と越えることで主人公はステップアップしていくわけです。そして最終的に大きな困難を乗り越えるカタルシスが待っているわけです。これがクライマックスです。では本作について、簡単に敵を見てみましょう。
○本作における戦闘歴
まず冒頭の市場で襲われるシーンでは中国人のウォッチャー・The Pop Girl とその弟のブリーダー・The Pop Boysが登場します。このThe Pop Girlは物語を通してキャシーに立ちはだかるライバルです。The Pop Boysは奇声を挙げて相手を流血させるという超強い能力を持っています。すなわち、このシーンはボスキャラの顔見せみたいな物です。実際にこの段階ではニックは全く歯が立ちません。
つづいての戦闘はエージェント・マックとエージェント・ホールデンをキラが翻弄するシーンです。ここではキラがプッシャーとして相手を操る能力がずば抜けていることが分かります。いきなり最強助っ人候補です。
次は飛びましてカーバーと側近ヴィクターが登場する中華料理屋のシーンです。カーバーは父親の仇(?)とも言える人物で因縁の相手です。そして側近のヴィクターはニックと同種の能力者です。すなわち、ニックにとってのライバルがヴィクターであり、ラスボスがカーバーです。やっぱり歯が立ちません。
さて、次ですが、いきなりクライマックスに飛びます。建築現場で中国マフィアとディヴィジョンとニックが入り乱れてのラストバトル、、、かと思いきや、マフィアはヴィクターと洗脳されたキラが殆ど全員瞬殺してしまい、結局ニックとヴィクターの一騎打ちになる、、、、かと思いきや、ヴィクターもThe Pop Boysの片割れに殺され、結局ニックはThe Pop Boysをちょっと竹槍もどきで殺しただけです。そして物語終了。
はい、ここまで読んでいただいた皆さんはもうお解りですね?この物語はニックが成長する様子も無ければ、成長した結果として歯が立たなかった敵を倒したりすることもありません。ストーリーの推進力がこれでもかっていうくらい不足しています。せっかく超能力者が入り乱れての大乱闘になる要素があるのに、設定を全く生かしていません。唯一正当に成長してライバルを越えるのはキャシーです。彼女は自分より能力の優れたThe Pop Girlの裏をかいて倒します。きちんと乗り越えたわけです。でも彼女だけなんです。後の人たちは成長も工夫もたいしてしません。ちなみにニックの最高の見せ場である赤い封筒配りも、あれはカーバーではなくThe Pop Girlへの対策です。みんな彼女を倒すのに夢中ですが、でも彼女はラスボスじゃないんです。駄目だこりゃ。
<まとめ>
毎度の事ながら、何故ここまで微妙なのに60点/100点かというと、それはもうハンナ・ダコタ・ファニングが可愛いからです。アイドル映画としてだったら全く問題ない出来映えです。全編通じて明らかにポール・マクギガン監督がハンナに恋をしている、フェティッシュなカット割りが続きます。ポール・マクギガンは46才で結構のっぺりした顔をしてます。、おまえその年と顔でハンナ萌えはヤバイだろとか思いつつ、堂々たるアイドル映画です。ハンナ・ダコタ・ファニングのファンなら絶対に何があろうとオススメです!

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