ザ・コンサルタント

ザ・コンサルタント

土曜日は

「ザ・コンサルタント」を見ました。

評価:(35/100点) – あんま爽快感が無い、、、


【あらすじ】

クリスチャン・ウルフは高機能自閉症の会計士である。中華料理屋と洗濯屋の並びの長屋に居を構えた小さな個人会計事務所で、今日も地元のお年寄りの税理業務を手伝っている。

ある日、クリスはリビング・ロボティクス社の横領疑惑の会計監査を頼まれる。得意の驚異的数学力で過去15年分の書類を一晩で洗った結果、クリスは横領と支払い還流に気付く。しかし、それが表沙汰になる直前になって横領犯と目されるCFOのエドが自殺をしてしまう。社長のラマー・ブラックバーンから一方的に事件の幕引きを言い渡されたクリスは、自分の気質と相まって猛烈なフラストレーションを溜めていく。そんなおり、突如クリスは命を狙われる、、、。


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【感想】

さて、土曜日はベン・アフレック主演の最新作「ザ・コンサルタント」を見てきました。今年はこの「ザ・コンサルタント」と「夜に生きる(5月公開)」が立て続けに公開され、さらにはバットマン単独映画も撮影しつつジャスティス・リーグの脚本にも手を入れていると、大車輪のベン・アフレックです。今作はついないだ公開された「ジェーン」の監督・ギャビン・オコナーと組んでおり、俳優のみでの参戦です。

実は私、体調不良の中で無理やり見ていたものですから、あんまりこの映画にテンションが高くありません^^; ちょいと辛口になるのをご容赦下さい。

どうしてこうなった、、、

本作は物凄い変な映画です。

予告を見たときにはてっきり「ユーロコープ映画」のノリだと思ったんですね。舐めてたヤツが実はスーパー殺し屋だった!大変だ!!悪役全員ぶっ倒せ!的な。確かに大筋はそうなんですが、この映画は大きく3つの話が並行で動いており、そのどれもがかなり雑に回収されていきます。

1つはFinCEN(※Financial Crimes Enforcement Network:アメリカ財務省のマネーロンダリング専門対策チーム)が行うマフィアのマネロンを請け負っていると思われる会計士の捜査です。こちらは長官のレイ・キングと脛に傷持つ新人のメリーベス・メディナが主役です。メリーベスはマフィア皆殺し事件の現場テープと偽名の数々を手がかりとして、捜査を行っていきます。

もう1つは会計士クリスの過去トラウマ話です。高機能自閉症と診断されたクリスは、一人でも生き残る術を学ぶため、実の弟ブラクストンと共に元大佐のゴリゴリ体育会系親父からインドネシアの格闘技・シラットを叩き込まれます。そしていじめられっ子たちを物ともしない立派なオトナへ成長していきます。

最後に、本作の中心となるリビング・ロボティクス社の不正会計事件の監査と、そこで出会う経理職員のデイナとの交流、さらに巻き込まれる陰謀の話です。

この3つがロクに整理もされない状態で、すっちゃかめっちゃかグッチャグッチャに混ざって展開されます。もうね、、、せめて整理してくれないかなっていうくらいテンポもヘッタクレも無い叩き込み方をしてくるので、なんかどんどん興味がなくなってくるんですよね。

結論を行ってしまえば、3つめのリビング・ロボティクス社の話以外は全部カットでいいです。蛇足も蛇足。要らない。直接本題と関係ないですから^^;

本作には最後に2つほど”あるオチ”が待っておりまして、そのための布石が1つ目と2つ目のストーリーなんですね。ですが、このオチ自体が「続編に色気だしてるのかな?」っていうくらいふつーーーの内容なため、バレバレな上にもったいぶり方も回収の仕方も本当に酷い(笑)。ということで、結構面白いメインストーリーを全て台無しにしてくれます。

こういうのって見せ方の問題だと思うんですね。話のボリュームと映画の上映時間ってある程度比例していてしかるべきです。当たり前ですけど、アクション映画には長めな2時間10分も引っ張るなら当然2時間10分相当のオチを持ってきてもらわないと困るんです。それが、フタを開けたら連続30分ドラマの第1話みたいなのが待ってるわけです。

これだと全然納得出来ないです。

爽快感もないし、無駄に長いし、そのうえ話は雑だし、ほんとにどうしてこうなったんでしょう。さすがにこの規模の作品じゃベン・アフレックが直接台本を直したりはしないですよね^^;

良い所:ベン・アフそのもの。悪い所:そこに頼りすぎ。

今回の白眉といいましょうか一番良かった所は、やっぱりベン・アフそのもののアイドル要素になります。ムキムキの筋肉ダルマなのに怯えた子犬みたいな高機能自閉症の天才を演じていて、しかもそれがスイッチが入ると手がつけられない殺人マシーンで、それも何故か東洋の神秘・シラットの達人という、この盛り込み方(笑)。詰め込みすぎだろってくらい詰め込みまくったこのクリスというキャラと、ちょっと間の抜けた愛されキャラのベン・アフ本人のシンクロ性が、本作の唯一の拠り所です。というかですね、この映画を作った人たちはベン・アフレックに頼りすぎ。さすがのベン・アフも130分をアイドル要素だけでもたせたるのは荷が重いです。ちょっとこれは可哀想。

「ベン・アフレックが天才会計士だなんてステキ!」とかいってみても、そもそも外見のムキムキっぷりが既に普通の計算オタクじゃないですから(笑)、「ギャップ萌え」ってよりは総ツッコミ待ち状態なんです。「なんだこの会計士!ただものじゃないぞ!」って、そりゃおまえ、見りゃ分かるだろと。身長191センチ体重100kgで体脂肪率1ケタの会計士が”ただもの”なわけがない(笑)。完全に余談ですが、毎年1月4日に秋葉原のヨドバシカメラ周辺にいくと、東京ドーム大会が終わった直後の新日本プロレスのレスラーの打ち上げによく遭遇します。見た瞬間に体格にビビりますよ^^; 同じ人間と思えないくらいデカイですから。

ですからですね、このベン・アフが普通に「内向的なオタク」みたいな扱いを受けている世界観自体がちょっとコントっぽいというか、もうそれだけであんま真面目に見るのもな~~~っていう感じなんです。「ゴーン・ガール(2014)」なんかでは分かりやすく「キレたら怖そう」っていう部分をちゃんと出してたじゃないですか。それが本作ではまったく無いんですね。あくまでも「普段おとなしいのに実はヤバイ人だったのだ!!!」っていうベースラインでくるため「イヤイヤそれは無いんじゃね。」っと軽く白けてしまいます。

【まとめ】

本作については、たぶん頑張って褒めるにしても「ベンアフ格好いい!」みたいな部分しか無理なんじゃないかと思います。じゃあアイドル映画として良い出来なのかと言われると、それはそれで見せ場が少なすぎるなというのがあり、結局とても中途ハンパです。どうせやるならジェイソン・ステイサムの映画みたいに開き直って完全アイドル映画にしちゃえばイイのにと思わずにはいられません。

話の設定や大筋は面白くなりそうな要素がテンコ盛りなだけに、ちょっと勿体無いなという作品でした。

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NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム

NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム

今日は

「NERVE(ナーヴ)」を見てきました。

評価:(60/100点) – 山田悠介meetsハリウッド


【あらすじ】

大学進学を控えた女子高生のヴィーは、ステイトン島で鬱屈した生活を送っていた。母子家庭で働き詰めの母を想い、なかなか思い通りにいかない生活。せっかく受かったカリフォルニア美術大学も「実家から通える」距離では無いため母に進学希望を言い出せない。

そんな中、ハイスクール・クイーンでチアリーダーのシドニーとひょんなことから揉めてしまう。彼女はシドニーへの当てつけで最近流行っているというオンラインゲーム「ナーヴ」に登録する。それは、視聴者たちの無茶振りミッションをクリアしていくと報酬がもらえるという、群衆視聴型ゲームだった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> シドニーの挑発
※第1ターニングポイント -> ヴィーがナーヴを始める
第2幕 -> ヴィーのミッション・チャレンジ
※第2ターニングポイント -> ヴィーが警察にコンタクトする
第3幕 -> ナーヴの決勝戦


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【感想】

さて、今日はおしゃれな日比谷シャンテにたまに紛れこむドB級映画を見てきました(笑)。公開直後なんですが全然お客さんが入っておらず、ちょっと心配です。

主演はエマ・ロバーツ。すごいどっかで見たことあるなーと思ってたら、スクリーム4のジルでした!あんなチンチクリンだったのに、ずいぶんスレンダーになっちゃって、、、と思い、凄い自分の年齢を感じます(笑)。ジュリア・ロバーツの姪というか「エクスペンダブルズ」で敵役だったエリック・ロバーツの娘です。

そして相方はジェームズ・フランコの実弟のデイヴ・フランコです。笑った時のちょっと顎を引いて眉毛を「の」の字にする仕草がまんま兄貴で、そっくりさんかと思って見てました(笑)。

さらにさらに、監督はヘンリー・ジューストとアリエル・シュルマンのコンビで、これそのまんま「パラノーマル・アクティビティ3」「パラノーマル・アクティビティ4」の布陣です。つまり、POV/カメラ視点をやる気満々(笑)。映画の随所にカメラ越しやモニタ越しの視点がこれでもかと出てきます。

そう、本作ですね、見ている間中ずっーーっとなんか「ひっかかり」というかパチモノ臭さを感じるんですね(笑)。その1番の要因が雑なプロットとこの「そっくりさんっぽい」雰囲気だと思います。

山田悠介っぽさが全開

この映画は2012年発売の同名のティーン小説を原作としています。ですから山田悠介とはなんの関係もありません。なんですが、「冴えない女の子が携帯ゲームでクイーンになっていき、イケイケになって調子こきまくりの末、マジでやばい状況になって危ない目にあう」というプロットをどこかで見たことがありませんか?

そうです!かの有名な超大作ホラーSF「アバター(2011)」です!橋本愛が主演のスーパーメガヒット作で、日本中で(※主に渋谷界隈ですが)大アバター旋風を巻き起こしました!!!



なんか2つの映画が混ざってる気がしますが、私も歳なので気にしないでください^^;

そう、これですね、どう見ても山田リスペクトなんですよ。アバターでは橋本愛がどんどん厚化粧になっていってイケイケを表現していましたが、本作ではエマ・ロバーツがセクシーなドレスを着てイケイケになっていきます(笑)。B級映画好きの考えることって世界中どこでもだいたい一緒ですよね(笑)。ちゃんと己を取り戻すとダサいパーカーに戻ったりして、とても好感が持てます。ほんと良い意味で頭が悪い(笑)。

アバターの当時は「携帯電話(いわゆるガラケー)こそが日本の若者が内向きになった諸悪の根源だ!」みたいなノリで「携帯彼氏」とか「アバター」とかのテクノスリラー(※テクノロジーに乗っけた犯罪スリラー)が量産されてたんですが、その波がやっとハリウッドに到達しました。「ホステル」シリーズとか、「ロシアンルーレット(2010)」とか、あとは広い意味で「キャビン(2012)」とか、群衆視聴型スリラーって結構定番ネタです。でもそこに携帯ゲームを入れてきたところに「山田悠介魂」を感じました。

余談ですが、劇中のナーヴのコラージュ映像に「キャビン」と「ハンガーゲーム」の映像が入ってました。そういや「ハンガーゲーム」も視聴型ですね^^。良いリスペクトっぷりです。

本作に1番近い最近の外国映画というと、イライジャ・ウッドが主演をしていた「ブラック・ハッカー(2014)」ですね。インターネットによってプライバシーもクソも無い状態になり、そこに群衆心理が乗っかってとんでもないところまでエスカレートしちゃうという話です。

実際、メインの登場人物は片手に収まるほどで、特に特定の悪役は出てきません。あくまでも群集心理をスリラーにした話です。だからそもそもからしてウソ臭かったり、あんまりルールというか基準がよくわからなかったり、そもそもトップで視聴者8,000人って少なくないかとか、秘密ゲームのくせに決勝戦はかなり目立ってるなとか、そういう雑なところ全部ひっくるめて微笑ましく見られます(笑)。

【まとめ】

フル・プライスを払って見るのはちょっとアレですが、レイトショーや「TOHOシネマの日」を使って安く見られるなら一見の価値があります!個人的には挿入歌が最高のラインナップなのでサントラ買います(笑)。ということで、オススメでーす!!!ついでに是非「アバター」もね(笑)

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怒り

怒り

今日は一本

「怒り」を見ました。

評価:(80/100点) – “信頼”を巡るオムニバス・横溝正史もの


【あらすじ】

八王子で夏の白昼に起きた夫婦殺人事件。現場には被害者の血で「怒」という文字が残されていた。それから1年。千葉、東京、沖縄に、それぞれ不詳の怪しい流れ者が現れる。犯人は誰か? そして流れ者と周りとの関係性は?

【三幕構成】

第1幕 -> 3組の流れ者
※第1ターニングポイント -> しばらく平穏な時間が過ぎる
第2幕前半 -> 3人が各々の懐に飛び込む(親父と話す/母紹介/那覇で飲む)
※ミッドターニングポイント -> 田代と愛子の同棲/優馬の母が死ぬ/泉が襲われる
第2幕後半 -> 過去捜索/浮気窃盗疑惑/旅館住み込み
※第2ターニングポイント -> 通報/警察から連絡/田中の苛立ち
第3幕 -> 結末


【感想】

本日は李相日監督の「怒り」を見てきました。3連休最終日だからなのか劇場はかなり空いていてちょっと寂しかったです。また、結構1人で来ている女性が多くいて驚きました。俳優目当てでしょうか?(※)まさかBL絡みの需要ってことはないとは思いますが、、、といいつつ結構ツイッター上ではそっちのコミュニティに受けており、よく分かりません(笑)。本作は原作者と監督の絡みから「悪人(2010)ふたたび」と宣伝されています。正直な所、私個人的には「悪人」を全く評価していないので(←ファンの方すみません)、結構ハードルを下げて見に行きました。結果、かなり面白かったです。一部ひっかかったものの、全体としてみれば十分楽しめました。

これ以降、直接的に犯人に言及することはいたしませんが、なんとなく雰囲気でわかってしまう可能性があります。未見の方はご注意ください。

※2016年10月4日追記:
「結構1人で来ている女性が多くいて」→「俳優目当てでしょうか」という私の連想が差別的であると受け取られる方がいたようです。謹んでお詫び申し上げます。
こういう予告で猟奇殺人を前面にだしている作品はふつう女性客がほとんどおらず、いても夫婦連れ合いが多いので、女性一人客ばっかりというのが珍しかったという記述でした。純粋に「猟奇殺人ものが好き」な女性が増える分には大歓迎です。是非「高慢と偏見とゾンビ」もよろしくお願いします。、、、とか書いといて単に「文芸好き」って可能性もありますね。亡き「銀座テアトル」も女性客が多かったですし。その場合は正にぴったりですので、是非、文芸超大作が原作の「高慢と偏見とゾンビ」も一つよろしくお願いします。(←猛プッシュ中)

全体像。韓流逆輸入サスペンスとテーマ

この映画は、”信頼”をキーワードとした3つの話からなるオムニバス映画であり、その根底には「横溝正史もの」のサスペンスが流れています。

本作は千葉(勝浦?)、東京(目黒)、沖縄(郊外のどこか)を舞台に、それぞれ素性の分からない訳あり男3人を巡りストーリーが展開していきます。このストーリーは交わることがなく全て独立しており、そして三幕構成に忠実に同期して進行します。このあたり、作りがとても真面目です。

どのあたりが「横溝正史もの」かといいますと、これは「田舎/狭いコミュニティの閉塞感」とそこに乗る「サイコパス的な猟奇殺人事件」という点です。作品全体を通して、八王子郊外での夫婦猟奇惨殺事件の凄惨さ・不穏さが根底にあり、そこにゲイ/性労働経験/レイプ被害という3つの性的な”ハードル”要素が追加され、さらに母の介護/親の借金苦/日雇い労働/軽度知的障害/沖縄米兵問題というオプションが追加されます。ハードル扱い云々の倫理的な面や政治的な主義を脇に置いとくと、たぶんこれが監督の考える現代日本の問題なんでしょう。登場人物たちはこれでもかという「現代日本というコミュニティの生きづらさ」によって追い詰められていき、その中で「信じるもの」「信じたいもの」を選択していきます。

この「現代の生きづらさ」を「横溝正史もの」のフォーマットにテンコ盛りするというのは、それこそ、ここ最近韓国映画が圧倒的に得意としていた分野です。当ブログでいうと「黒く濁る村(2010)」や「母なる証明(2009)」とかですね。もうちょっと前だと「ほえる犬は噛まない(2000)」とか「殺人の追憶(2003)」みたいな一連のポン・ジュノ作品もそうです。「韓国人が見せたくない韓国人の嫌な所」みたいなものを全面にだして、それを「不穏な空気」の表現として使うという手法です。監督の出自云々は置いといて、李相日監督がこのジャンルをもう一回日本に逆輸入してきたというのは大正解だと思います。

本作ではこの「生きづらさ」によって人々がすれ違っていきます。肝心のことをきちんと話さなかったために誤解をしたままになってしまう男、「自分が幸せになるチャンスはこれしかないという焦りで信じて”しまった”」と思い込んで逆に信じられなくなってしまう女、そして一度相手を素直に受け入れ信じてしまったが故に客観的になり切れない少年。こういったそれぞれの思惑を通して、「信じる」ということの不安定さと不確実さが描かれていきます。

それぞれのストーリーラインに「怒り」の描写は出てくるのですが、直接的に「怒り/感情爆発」によってどうこうなるというより、生きづらさ→鬱屈/現状に対する怒り→猜疑心・嫉妬・弱みという流れで、これによって信頼の強度が変わっていくというのが本作の肝です。

静かな描写と熱演する俳優陣

上記のように、この映画は3つの物語が直接的には結びつきません。あくまでも群像劇ではなくオムニバスです。そうすると、当然、中だるみは避けられません。本作が素晴らしかったのは、特に2幕目までの俳優陣含めた描写というか「画作り」の部分です。極力直接描写を避けて、きちんと映画的な表現で間接的に見せるようになってます。沖縄の公園とピアノの女の子とか、ちょっと対位法を使いすぎかなっていうシーンも多かったんですが、これぐらいなら全然問題ありません。PFF出身監督特有の手癖です(笑)。昔、深川栄洋監督の「洋菓子店コアンドル(2011)」のときにちょっと書いた、「演出さえできていれば話がつまらなくても画面は持つ」っていうやつです。特に東京パートと千葉パートはほとんどイベントがないですから、だいぶ演出力に助けられていると思います。

その分というとアレですが、3幕目、特にエピローグはみんなウェットに喚き始めて急に画面が安っぽくなりました。ここだけは本当にもったいなかったです。せっかく「無音で指紋の鑑定結果を聞かされる」っていう演出をやってるのに、わざわざ音声つきでもう一回やりますからね。セリフ無くても見りゃわかるのにっていう。広瀬すずだって海に向かって叫ぶ必要まったくないですから。壁の文字を見つけて呆然とするとこでやめときゃいいのに。2幕目までが本当にすばらしかったので、「終わりよければ全て良し」の逆で最後がもったいなかったです。

また、俳優陣はみんなとてもいいです。今回は特に佐久本宝ですね。この子は本当に新人かっていうくらい佇まいがよくできてました。ぶっちゃけ広瀬すずの存在感を完全に食ってます。千葉パートはベテランが多くて安定しすぎて逆に面白くないってぐらいで(笑)、その分東京パートの妻夫木さんが光りました。私なんかが勝手に想像する”ゲイ像”と妻夫木さんのちょっとわざとらしい演技がちょうどマッチしていて、すごい実在感があってよかったです。個人的にはあんまゲイシーンって見たくないんですが(笑)、汚くなりすぎないギリギリかなっていうところで良い具合でした。

【まとめ】

こういう文芸作品って「空気感」を表現するジャンルなので大変文字に起こしづらいのです(笑)。この映画を私がすんなり見られたのは、たぶん画作りが客観的にできていてちゃんと解釈の幅があったからだと思います。「悪人」は監督の誘導が多すぎ&作品内矛盾で「いやいや、それおかしいでしょ」という反発心が強かったのですが、今作はまったくそんなことありません。本作の方が明らかに映画的な懐の深さがあります。是非是非映画館でご鑑賞ください。「他人を信用しよう」「だけど信用し過ぎもよくない」というモヤモヤした感じがとても文芸作品っぽくていい感じにイヤな気分になれます(笑)。

そんなわけで、あんまり終わった後で他人と会話をするようなタイプの作品じゃないんですね。エグみが云々というよりも、あくまで「空気感」でシンミリする作品ですから、知人と見に行くよりは一人レイトショーでこっそり見る感じが正解だと思います。個人的には、李相日監督のこのテイストでゴリゴリのサスペンス・スリラーが見てみたいと思いました。かなりオススメいたします。

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記事の評価
イレブン・ミニッツ

イレブン・ミニッツ

​今日の2本目は

「イレブン・ミニッツ」です。

評価:(90/100点) – スコリモフスキ meets ファイナル・デスティネーション!


【あらすじ】

ポーランドのワルシャワ、17時。女優はオーディションのため、夫を置いて一人で監督の部屋へ向かう。自殺未遂をした女は、同棲していた彼の犬を譲り受け、別れを告げられる。学生への性犯罪で保護観察中の男は、公園でホットドッグを売る。質屋に強盗に入った男は、そこでクビを吊った店主を発見する。そして17時11分、なにかが起こる、、、。


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【感想】

今日の2本目はイエジー・スコリモフスキの最新作「イレブン・ミニッツ」です。あんまりお客さんが入っていないのはある程度予想していたのですが、さすがに同じ列のサラリーマンが焼酎と唐揚げを食べ始めたのはびっくりしました(笑)。どうみても映画オタク向けの作品なのに、なんかいいんだか悪いんだか、、、というね、、、。

映画オタク向けと書きましたが、本作はイエジー・スコリモフスキらしからぬ、とても愉快なエンタメ色の強いジャンルムービーです。ですので、是非、映画オタクの方以外にも見ていただきたいです。ここから私はこの作品をがっちり褒めちぎります。細かいネタバレはいたしませんが、どうしても具体的に書かざるを得ない部分がありますので、実際に見てから読んで頂いたほうが良いかと思います。本当におすすめですので、是非劇場で御覧ください!

これは悪趣味ジャンルムービーだ!

いきなりですが、この作品には明確なストーリーがありません。いわゆる物語的な意味での起承転結がなく、ある日の世界の「17時~17時11分」までを切り取った形になっています。なぜ「11分」というハンパな時間なのか?これは映画を見ていただければわかります。

本作には起承転結が無いと書きました。では何があるのかというと、それは「不穏な空気とカタストロフの予感」です。本作では、全編を通して、ひたすら「不穏な空気」が描かれます。明らかに悪事を考えてるっぽいエロ監督と、狙われてるっぽいちょい頭の弱いグラマラスな女優。そこに乱入しようとする左目を怪我した女優の夫。保護観察中のホットドッグ売りと、その息子で麻薬中毒のバイク便配達屋。公園で彼氏を待つのは、手首を切って家に火を付けながらそれでも生き残ってしまった女。全ての登場人物が、何か犯罪の臭いというか危険な雰囲気を漂わせており、いたるところでちょっとしたアクシデントや不吉なイベントが頻発します。空にはよくわからない”何か”が浮かび、部屋には鳩が突っ込んでくる。

群像劇である以上はいつかはこの登場人物たちは交わるわけで、それはもうこの不穏さの積み重ねで破滅するしかあり得ないわけです。いつカタストロフがくるのか?いつこの不穏さが爆発するのか? 見ている私たちはヤキモキ・ハラハラしながら、それを待ち続けます。「お!バーナーに火がついた!」「うぉ、交通事故起きそう!」「うわ、飛行機が低空で!これは9・11か!?」「え!?隕石落ちちゃうの!?アルマゲドン!?」。そういったヤキモキが5分に1回くらいやってきます(笑)。まだこない、、、まだこない、、、うぉ、、、まだだ、、、。こうやってジレている内に、いつしかカタストロフを待ち焦がれてハードルが上がりまくっている自分がいるわけです。そしてついに来る破滅の瞬間!やっときた!ガッツポーーーーズ!しかも笑えるぐらい凄いあさっての方からカタストロフがやって来ます(笑)。この開放感!エクスタシー!最高にスッキリします(笑)。もう完全に「ファイナル・デスティネーション」です。

これだけだと普通のブラックホラー・コメディなんですが、さすがにこれで終わらないのがイエジー・スコリモフスキ。ちゃんとこの後に、「でもこういう劇的な事件は、実は世界中でしょっちゅう起きているんだ。」という締めが加わり、最終的には「人生の不条理さとだからこその面白さ」という人間讃歌に着地します。私たちが出会う人やすれ違っただけの人にも、すべてその瞬間に至る人生の物語があるんだってことですね。つまり、この映画は世界で常に起きていることを、たまたま11分だけ切り取ったという形なんですね。だから起承転結もないし、ドラマが途中から始まるんです。11分っていうのは、おそらく9・11の連想、つまり破滅の時ですね。ついでにホテルの部屋番号も「1111」です。

この結末はとても良くまとまってます。なんですが、なんかこういたずらっこの無理矢理なアリバイ言い訳に聞こえるんですね(笑)。「ほら!悪趣味だけど楽しいだろ!皆好きだろ!あ、一応道徳的な内容なんで、親御さんは子供が見ても怒らないでください。」みたいな変な言い訳(笑)。

とてもお茶目で素晴らしい映画です。

【まとめ】

もうすぐ80歳になる巨匠の最新作がまさかの直球ジャンルムービーという、よくも悪くもとても驚いた作品でした。逆に言うとですね、みんなホラーコメディのことを低俗だの下品だの文句いうなよ!ってことです(笑)。巨魁スコリモフスキも認めた素晴らしいジャンルです。是非是非、「ファイナル・デスティネーション(2000)」「デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2(2003)」「ファイナル・デッドコースター(2006)」「ファイナル・デッドサーキット(2009)」「ファイナル・デッドブリッジ(2011)」とセットで見て欲しい作品です。これホント名作です。絶対映画館で見ましょう!

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127時間

127時間

今日の2本目はダニー・ボイルの新作

「127時間」をみました。

評価:(60/100点) – ソリッド・シチュエーションの佳作。


【あらすじ】

アーロン・ラルストンは登山道具屋の店員である。ある金曜の夜、彼はユタ州のブルー・ジョン・キャニオンに趣味のハイキングをしに向かう。途中で旅行中の女性達とも出会ったりしながら、彼はいつものコースを悠々と散策していく。
しかしそんなとき彼は岩の隙間に落っこちてしまう。しかも大きな岩に右腕を挟んでしまった。周りを人が通りかかるような場所でもなく、食料も水もわずかしかない。果たして彼は生還することができるのだろうか、、、。


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【感想】

今日の2本目は前作「スラムドッグ・ミリオネア」でアカデミー賞を獲ったダニー・ボイルの新作「127時間」です。アカデミー賞効果なのか、結構中高年の夫婦が見に来ていました。本作は2003年に実際に起きた事故を元にしたアーロン・ラルストンの自伝「Between a Rock and a Hard Place」の映画化です。
あんまり書きたいことが少ない映画なのでさらっと流させていただきます。本作は昨年公開されたソリッド・シチュエーション・スリラーの「リミット」と同様に動けない人物が延々とそのシチュエーションでもがく姿が描かれます。通常のソリッド・シチュエーション・スリラーでは脱出しようとする努力が中心となりますが、本作においてはアーロンはあまりその努力はしません。どちらかというと精神的なものが中心になります。作品の大半は妄想や回想が中心で、この極限状況で彼が心の底から求めているのは何かというのが段々と明らかになっていきます。ヒューマンドラマですので当然のように結論は「愛」なんですが、そこに至るまでの過程がリアリティがあるといいますか(※実話なのであたりまえですが)、とても面白くできています。
最初の内は食料だったり水だったり性欲だったりするものが、だんだん職場の仲間や家族になっていき、最後は好きな女性になります。そしてある決定的な未練を思い出すことで彼はタフな決断を下します。本作は「極限状態を描くことで人間の本質が見える」というソリッド・シチュエーション・スリラーの王道をきっちりと描いています。ですから、なかなか面白い作品です。主演のジェームズ・フランコは本当にすばらしかったです。前半のいかにもチャラい感じから一転してどんどんシリアスになっていく過程は、彼のタレ目な困り顔があればこそです。
多少不満があるとすれば、中盤に中だるみしてしまう部分と最後に決断を下すところのわかりづらさ、そしてクライマックス以降のエピローグの長さです。大変よくわかるんですが、脱出後のラスト数分でなんぼなんでも水を飲みすぎですw あとはカメラのカット割りのしつこさでしょうか。シチュエーションは固定されているのに、カメラだけはやたらとダイナミックに動きます。さすがに岩の割れ目を空撮で撮られたりサム・ライミばりにシェイキー・カムで早回しされると、どうもちょっと悪ふざけしているように見えてしまいます。
総じて面白いかどうかと言われれば間違いなく面白い作品ですので、是非映画館に見に行って下さい。ちょっとショックシーンもありますがそこまではキつくありませんので、どうしても苦手な方以外は大丈夫だと思います。オススメです。

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ブラック・スワン

ブラック・スワン

今日は二作です。1作目は水曜公開で早くもそこそこ話題作

「ブラック・スワン」です。

評価:(100/100点) – 抑圧を狂気で解き放て!!! 永遠の清純派を卒業できるのか!?


【あらすじ】

ニナ・セイヤーズはバレエ団のソリスト(準主役)である。バレエ団は経営難から立ち直るために次シーズンでプリマ(主役)の交代を考えていた。タイトルは新しく振り付けし直した古典・白鳥の湖。即席のオーディションに合格したニナは念願のプリマの座を射止める。しかし、彼女は完璧主義者であるが故に感情を表に出した演技が苦手で、オデット(白鳥)の演技は出来てもオディール(黒鳥)の演技が上手く出来ない。演技監督のトマスの厳しい指導を受けるうちに、彼女の周りには不思議な事が起き始める。

【三幕構成】

第1幕 -> ニナのオーディション。
 ※第1ターニングポイント -> ニナがスワン・クイーンに選ばれる。
第2幕 -> ニナの苦悩と演技指導。
 ※第2ターニングポイント -> ニナがリリーと夜遊びに行く。
第3幕 -> ニナの開花と初演。


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【感想】

今日の1本目はアカデミー主演女優賞を獲った「ブラック・スワン」です。監督はレスラーのダーレン・アロノフスキー。日本では水曜公開でしたが、平日の初動で結構観客が入ったと話題になっていました。
もしかしたら興味ある人はもうレイトショーで見ちゃってるのかも知れませんが、私の見た回はあんまり人が入っていませんでした。

本作全体のテーマ

本作はダーレン・アロノフスキー監督の前作・レスラーと同様にハンディカメラ調のドアップ画角を中心にして徹底したニナ・セイヤーズの一人称視点で描かれます。どこまでが現実でどこまでが彼女の幻覚かまったく分からないまま(※そしてそんなことはどうでもいいんですが、、、)、世界全体が彼女を追い詰めていきます。
ニナは元端役のバレエダンサーでシングルマザーの母親の夢を全て引き受け、完全なる「良い子」として才能を発揮してきます。彼女は技術的には完璧でありながらバレエへの情熱が踊りには出ません。そんな彼女が「情熱の化身」とも言うべき黒鳥を踊るために苦悩し、そのプレッシャーに耐えきれずに発狂していきます。
本作では「白鳥の湖」の一番の見所である白鳥と黒鳥の一人二役をモチーフに、がちがちの母親に管理され続け抑圧されたニナの解放を描きます。
本作が大変すばらしく大傑作であると思う一番の理由がクライマックスの強烈なカタルシスです。彼女は完全にイっちゃってますが、しかしそれこそが彼女にとっては「解放」だからです。彼女は最後彼女にとってまさに「Perfect…」な結末を迎えたわけで、それがハッピーエンドで無いはずがありません。

やってること自体はレスラーと同じだけど、、、

とまぁ最高なワケですが、メタレベルでやっていることはレスラーとほとんど同じです。つまり13歳でリュック・ベッソンにフックアップされてレオンで世界規模のアイドルになり、さらには18歳でスターウォーズEP1を撮影しながら受験勉強をしてハーバード大学に合格、何カ国語も喋れる美人で秀才なセレブという完璧超人のナタリー・ポートマン自身を役柄に投影します。「超良い子だけどいまいち”良い少女”感が抜けない」というのはまさにナタリー自身であるわけで、それがニナ・セイヤーズの実在感に貢献しているのは間違いありません。
プラスとして、本作では発狂系サイコスリラーからの明らかな引用も随所にあります。一番言われるのはおそらくロマン・ポランスキーの「反撥(1965)」と今敏の「パーフェクトブルー(1998)」だと思います。「反撥」は発狂に至るプロセスと「性的な幻覚」を重ねてくるテーマ的な部分、「パーフェクトブルー」は壁一面の絵/ポスターが話しかけたり笑ったりしてくる演出と鏡の中の自分が挑発してくる場面、プラスでお腹を刺す部分ですね。まぁほとんどそのまんまですw

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左:ポランスキー監督「反撥」(1965/仏)  右:ダーレン・アロノフスキー監督「ブラック・スワン」(2010/米)

ただ、パクリまくってるから駄目だと言うことではなく、それらを使ってきちんと「抑圧からの解放」というドラマを作ってくる所がダーレン・アロノフスキーの小憎らしい所ですw こんだけ面白ければパクってようが目新しくなかろうがなんでも良いやって言う、、、それぐらい黒鳥のピルエットには強烈なカタルシスがあります。まぁ演出的にやり過ぎって話しもありますし、ちょっと吹き出しそうにはなるんですが、、、でも「成長したね!!!」って感じで微笑ましい場面です。文字通り強く羽ばたいてるのでw
この作品のずるいところは、きちんと作劇上のクライマックスと劇中劇「白鳥の湖」のクライマックスが完全にシンクロしていることです。オデットは王子をオディールに奪われたことで絶望しますが、身を投げることで終に呪いから解放されます。そしてニナ・セイヤーズは、、、、というのは見てのお楽しみです。

【まとめ】

発狂系サイコ・スリラーの新しい大傑作です。あの童顔で可愛いナタリー・ポートマンが最後には血走った目をかっぴらいて黒鳥に生まれ変わるワケで、これはもうファンならずとも感涙です。現実でも本作の振り付け担当のべンジャミン・ミルピエとよりによって出来ちゃった結婚して清純派のイメージを破ったので(笑)、間違いなく本作が彼女自身の解放にも良い方向にいったんでしょう。というわけで、これからは「レオンの子役のナタリー・ポートマン」「アミダラ役のナタリー・ポートマン」では無く、「ブラック・スワンのナタリー・ポートマン」です。間違いなく彼女の代表作です。オススメします。マジ必見。

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キラー・インサイド・ミー

キラー・インサイド・ミー

昨日の日曜日は1本、

キラー・インサイド・ミー」を見ました。

評価:(50/100点) – サイコパス視点のカントリー映画


【あらすじ】

ルー・フォードは紳士的な性格で皆から愛されているテキサスの保安官助手である。ある日、彼は町外れで売春を行っている女を追い出すようボブ保安官から依頼を受ける。女の元に向かったルーだったが、彼は彼女に魅了されてしまう、、、。


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【感想】

日曜日は一本、「キラー・インサイド・ミー」を見ました。そこそこ話題のサスペンスでしたがあまりお客さんは入っていませんでした。
実は正直なところ、どう扱ったらいいか困ってます。というのも、本作は典型的なサイコパス・シリアルキラーもので、別段書くような内容がないからです(笑)。幼少時のトラウマからサイコパスになった男が、なんだかんだで人を殺しまくっていくだけです。本作で特徴的なことがあるとすれば、対位法を多用して悲惨な場面にオペラやカントリーミュージックを掛けてくる部分です。でもそれ以外はごくごく平凡なサスペンスです。
ルーを徹底マークするハワード検察官も別段なにかをしかけてくるわけではありませんし、先輩のボブも最後までルーを信用してくれます。恋人のエイミーも最後までルーの味方ですし、ジョイスもそうです。強いて言えばルーを劇中で誰からも愛される魅力的な人物で「どんなに酷い事をされても嫌いになれない」人物として描いているとも見られるんですが、、、、でもそれっていつもの甘やかしってことです。
じゃあ実際にスクリーンに映っているルー・フォードが魅力的な人物かと言われると、、、、、それは別に、、、、って感じがして何とも煮え切りません。
なので、完全にフラットな意味での50点です。面白くないけどつまらなくも無く、飽きはしないが特別興味も湧かない。
たま~~にありますね、こういう本当にどうでも良い映画(笑)。
ということで、オススメデーーース。(←眠すぎて超適当)

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悪魔を見た

悪魔を見た

日曜の二本目は韓国映画の

悪魔を見た」を見たぞ見た!

評価:(30/100点) – これ、グロくもないし、ノリ軽いし、、、深遠か?


【あらすじ】

韓国国家情報員のエージェントを務めるスヒョンは、結婚間もない妻を殺されてしまう。女性を狙った似たような事件が頻発していることから警察は4人の容疑者に絞り込む。怒りに燃えるスヒョンは、義理の父親である退役警官のククァンを通じて捜査情報を入手し独自に復讐を始める。2人の容疑者を病院送りにした後、ついにスヒョンは3人目にして殺人犯を特定する。殺人犯のキョンチョルは連続快楽殺人鬼で今日もまた女子学生を攫っていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サンファの死とスヒョンの捜査
 ※第1ターニングポイント -> スヒョンがキョンチョルに発信器を付ける
第2幕 -> スヒョンのいたぶり
 ※第2ターニングポイント -> キョンチョルが発信器をはずす
第3幕 -> キョンチョルの逆襲と結末


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【感想】

ちょっと日が開いてしまいましたが日曜の二本目は「悪魔を見た」を見ました。監督はグッド・バッド・ウィアードのキム・ジウン。結構な拡大ロードショーでしたが、日曜はガラガラでした。イ・ビョンホンのファンがもう少しくるかなと思っていたんですが、映画オタクみたいな方が多かったのが意外でした。
私も実はかなり期待していた作品だったんですが、正直あんまりピンと来ませんでした。ストーリー自体は「主人公が残酷な復讐をしようとするあまり調子に乗って手痛いしっぺ返しを食らうが、結局は復讐を果たす」というわりと良くある話です。本作の一番の期待所は当然R18+まで食らったゴア描写なわけですが、、、、実際には全然グロいところは映しません。生首とか肉体破損の間接描写が出てきますが、それこそ「冷たい熱帯魚」とか「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」のような直接描写が無いのでそこまで嫌な感じものこりません。この何とも言えない”ヌルい湯加減”が作品全体から伝わってきて、終始微妙な気分にさせられます。「ちょっと面白い」と「ちょっとつまらない」の間をメーターの針が高速で振れまくっているような感覚です。
本作のタイトルは「悪魔を見た/I saw the devil」です。この悪魔とはなんぞやと考えると、直接的には悪魔的な殺人鬼であるキョンチョルを指しています。それにプラスして、悪魔=モラルの破壊者ですから、これは「復讐」という行為そのものを指しているとも考えられます。作中で捜査官(=正義の行使者)であったスヒョンは、復讐心に取り付かれるあまり何度もキョンチョルを痛めつけては解放します。復讐だけを考えるならすぐにキョンチョルを殺せば映画は30分で終わりますw しかし彼はまさに悪魔(=復讐心)に魅入られて道理を忘れてキョンチョルをいたぶり、結果として大きな代償を払うことになります。作品のテーマを考えれば、間違いなく本作の肝はそのスヒョンの心理にあるわけです。この物語はスヒョンの妻が殺されるところで始まり、スヒョンが復讐することで終わるのですから。
おそらく本作がいまいちである大きな要因は、あまりにもスヒョンの格闘力が強すぎてまったく危なげがない点と、スヒョンの調子に乗り方(=悪魔に魅入られ方)が共感しづらい点です。つまりはイ・ビョンホンなわけですが(苦笑)、俳優が悪いというよりはキャラクターが立っていないという方向です。
本作では一番肝心なスヒョンの豹変振りがあまり描かれません。前述の通りこの物語は「真面目だったスヒョンが、我を忘れて”どんどん残忍になっていく(←劇中の台詞)”」のが重要です。つまりスヒョンの落差です。これがほとんど無いんですね。せっかく冒頭でスヒョンの仕事風景がチラッと映るのに、肝心の彼の態度が映りません。彼が冒頭で真面目なら真面目なほど、”どんどん残忍になっていく”過程が面白くなっていくんです。ここが抜けてしまったため、最初から最後までスヒョンは残忍なままですw 結果としてテーマがボケボケです。
そしてスヒョンが最初から強すぎることで、その対比として弱すぎるキョンチョルが全ての美味しいところをかっさらっていきます。キョンチョルは残忍で、小心者で、スケベで、小太りで、しかも弱くて卑怯という敵役キャラクターとしてはパーフェクトな殺人鬼ですw あまりにもキョンチョルのキャラが強すぎるため、これもやはりスヒョンの魅力を激減させています。
ですから見終わった後で印象に残るのは、あまりにも美味しすぎるキョンチョルと、結局適当に流されているだけに見えてしまうスヒョンのがっかり具合です。

【まとめ】

「チェ・ミンシク」「連続殺人鬼」「R18+」と聞いてかなり期待が高かったのですが、かなり消化不良でした。正直な話し、このレベルなら邦画でもゴロゴロ転がっていますのでわざわざ韓国映画を見るほどではないと思います。
「韓国2大名優であるイ・ビョンホン、チェ・ミンシクが初共演。映画史上最も強烈な比類なき復讐劇が観る者すべての心を鷲掴みにする深遠なる物語。」という宣伝文句は結構偽りありです。強烈でも無ければ深遠でもありません。
140分は長すぎますし、ジャンル映画としても物足りないです。ここのところ劇場はお祭り状態で話題作テンコ盛りですので、本作を見るのはとりあえず後回しでも良いと思います。

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