キラー・インサイド・ミー

キラー・インサイド・ミー

昨日の日曜日は1本、

キラー・インサイド・ミー」を見ました。

評価:(50/100点) – サイコパス視点のカントリー映画


【あらすじ】

ルー・フォードは紳士的な性格で皆から愛されているテキサスの保安官助手である。ある日、彼は町外れで売春を行っている女を追い出すようボブ保安官から依頼を受ける。女の元に向かったルーだったが、彼は彼女に魅了されてしまう、、、。


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【感想】

日曜日は一本、「キラー・インサイド・ミー」を見ました。そこそこ話題のサスペンスでしたがあまりお客さんは入っていませんでした。
実は正直なところ、どう扱ったらいいか困ってます。というのも、本作は典型的なサイコパス・シリアルキラーもので、別段書くような内容がないからです(笑)。幼少時のトラウマからサイコパスになった男が、なんだかんだで人を殺しまくっていくだけです。本作で特徴的なことがあるとすれば、対位法を多用して悲惨な場面にオペラやカントリーミュージックを掛けてくる部分です。でもそれ以外はごくごく平凡なサスペンスです。
ルーを徹底マークするハワード検察官も別段なにかをしかけてくるわけではありませんし、先輩のボブも最後までルーを信用してくれます。恋人のエイミーも最後までルーの味方ですし、ジョイスもそうです。強いて言えばルーを劇中で誰からも愛される魅力的な人物で「どんなに酷い事をされても嫌いになれない」人物として描いているとも見られるんですが、、、、でもそれっていつもの甘やかしってことです。
じゃあ実際にスクリーンに映っているルー・フォードが魅力的な人物かと言われると、、、、、それは別に、、、、って感じがして何とも煮え切りません。
なので、完全にフラットな意味での50点です。面白くないけどつまらなくも無く、飽きはしないが特別興味も湧かない。
たま~~にありますね、こういう本当にどうでも良い映画(笑)。
ということで、オススメデーーース。(←眠すぎて超適当)

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ツーリスト

ツーリスト

今日は新作2本です。

1本目は「ツーリスト」です。

評価:(10 /100点) – こ、、、これは、、、Vシネマか?


【あらすじ】

アレクサンダー・ピアースは詐欺師にして7億4400万ポンド(=約1000億円)の脱税を行う国際指名手配犯である。彼の恋人であるエリーズはフランス警察に完全マークされていた。ある日、いつもの喫茶店で朝食を取っていたエリーズのもとにアレクサンダーからメッセージが届く。指示通りにイタリア・ベニス行きの列車に乗ったエリーズは、そこでアレクサンダーと似た体型の男に声を掛ける。彼はアメリカ人で失恋旅行中の冴えない数学教師だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> エリーズの逃亡。
 ※第1ターニングポイント -> 電車内でエリーズがフランクに声を掛ける。
第2幕 -> フランクの災難
 ※第2ターニングポイント -> エリーズがフランクにカミングアウトする。
第3幕 -> エリーズの囮作戦。


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【感想】

今日の1本目はツーリストです。本国では興行的に爆死し、さらには買収してまで推したゴールデングローブ賞ではあまりの出来にミュージカル・コメディ部門でノミネートされるという赤っ恥までかいた問題作ですw
とはいえ、今週公開作の中では間違いなくポップな作品ですので、結構若い方を中心にお客さんは入っていました。学生の内はもっとちゃんとした映画を見た方がいいですよ、、、。
本作はフランス映画「アントニー・ジマー(2005)」のリメイクとのことですが、私はオリジナル作品は未見です。前知識をまったく入れない状態で見に行きました。
で、、、率直に言うと、、、、これは無い。根本的に役者の”格”が主役2人とそれ以外で開きすぎているため、開始早々にオチがわかりますw そしてそのオチを最後の最後まで引っ張るものですから、なんか終始微妙な気持ちで見ることになります。端的に言うと超眠いw
もちろんディモシー・ダルトンは有名ですが、正直”格”っていう意味ではちょっと、、、、。
ということで、本作は最初っから話しがあって無いようなものです。ですので、これはもうアンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップを見るためだけの作品なわけです。ところが、これがまた微妙なんです、正直。
アンジーはものっすごいマスカラの厚化粧で正直老けてますし、ジョニデもおどけ方が完全にジャック・スパロウのそれなのでセルフ・パロディにしか見えません。途中でジョニデが屋根の上をふらふら走るシーンがあるんですが、肩をすぼめて乙女走りみたいな格好をするのがまんまジャック・スパロウです。すっごい安っぽいんです。しかもちょっと太っちゃってます。このスター2人しか見所がないのに、肝心の2人が微妙に撮れているので、、、、、誰得って言葉が頭をグルグル回りますw
結果としては、「楽しかった!!!!」みたいな幸福感とはほど遠い「あぁ、、、、、あぁ、、、、。」というやっちまった空気が残ります。話しが適当で有名な男女スターがワイワイやるだけのサスペンスというのはツタヤにいけば山のように置いてありますが、それらと違い爽快感が決定的に欠けています。スリラーなのにロクなピンチもないため、カタルシスが一切ありません。アンジーとジョニデがスターそのままで適当に活躍して、適当にくっついて、適当に終わります。見ていてどんどんどうでも良くなってしまいました。
本作を映画館で見るぐらいならツタヤに行ってサスペンスのコーナーを漁った方が有意義だと思います。デートムービーとして時間つぶしにするぐらいでちょうどいいのでは無いでしょうか。積極的なオススメはちょっと厳しいです。

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悪魔を見た

悪魔を見た

日曜の二本目は韓国映画の

悪魔を見た」を見たぞ見た!

評価:(30/100点) – これ、グロくもないし、ノリ軽いし、、、深遠か?


【あらすじ】

韓国国家情報員のエージェントを務めるスヒョンは、結婚間もない妻を殺されてしまう。女性を狙った似たような事件が頻発していることから警察は4人の容疑者に絞り込む。怒りに燃えるスヒョンは、義理の父親である退役警官のククァンを通じて捜査情報を入手し独自に復讐を始める。2人の容疑者を病院送りにした後、ついにスヒョンは3人目にして殺人犯を特定する。殺人犯のキョンチョルは連続快楽殺人鬼で今日もまた女子学生を攫っていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サンファの死とスヒョンの捜査
 ※第1ターニングポイント -> スヒョンがキョンチョルに発信器を付ける
第2幕 -> スヒョンのいたぶり
 ※第2ターニングポイント -> キョンチョルが発信器をはずす
第3幕 -> キョンチョルの逆襲と結末


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【感想】

ちょっと日が開いてしまいましたが日曜の二本目は「悪魔を見た」を見ました。監督はグッド・バッド・ウィアードのキム・ジウン。結構な拡大ロードショーでしたが、日曜はガラガラでした。イ・ビョンホンのファンがもう少しくるかなと思っていたんですが、映画オタクみたいな方が多かったのが意外でした。
私も実はかなり期待していた作品だったんですが、正直あんまりピンと来ませんでした。ストーリー自体は「主人公が残酷な復讐をしようとするあまり調子に乗って手痛いしっぺ返しを食らうが、結局は復讐を果たす」というわりと良くある話です。本作の一番の期待所は当然R18+まで食らったゴア描写なわけですが、、、、実際には全然グロいところは映しません。生首とか肉体破損の間接描写が出てきますが、それこそ「冷たい熱帯魚」とか「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」のような直接描写が無いのでそこまで嫌な感じものこりません。この何とも言えない”ヌルい湯加減”が作品全体から伝わってきて、終始微妙な気分にさせられます。「ちょっと面白い」と「ちょっとつまらない」の間をメーターの針が高速で振れまくっているような感覚です。
本作のタイトルは「悪魔を見た/I saw the devil」です。この悪魔とはなんぞやと考えると、直接的には悪魔的な殺人鬼であるキョンチョルを指しています。それにプラスして、悪魔=モラルの破壊者ですから、これは「復讐」という行為そのものを指しているとも考えられます。作中で捜査官(=正義の行使者)であったスヒョンは、復讐心に取り付かれるあまり何度もキョンチョルを痛めつけては解放します。復讐だけを考えるならすぐにキョンチョルを殺せば映画は30分で終わりますw しかし彼はまさに悪魔(=復讐心)に魅入られて道理を忘れてキョンチョルをいたぶり、結果として大きな代償を払うことになります。作品のテーマを考えれば、間違いなく本作の肝はそのスヒョンの心理にあるわけです。この物語はスヒョンの妻が殺されるところで始まり、スヒョンが復讐することで終わるのですから。
おそらく本作がいまいちである大きな要因は、あまりにもスヒョンの格闘力が強すぎてまったく危なげがない点と、スヒョンの調子に乗り方(=悪魔に魅入られ方)が共感しづらい点です。つまりはイ・ビョンホンなわけですが(苦笑)、俳優が悪いというよりはキャラクターが立っていないという方向です。
本作では一番肝心なスヒョンの豹変振りがあまり描かれません。前述の通りこの物語は「真面目だったスヒョンが、我を忘れて”どんどん残忍になっていく(←劇中の台詞)”」のが重要です。つまりスヒョンの落差です。これがほとんど無いんですね。せっかく冒頭でスヒョンの仕事風景がチラッと映るのに、肝心の彼の態度が映りません。彼が冒頭で真面目なら真面目なほど、”どんどん残忍になっていく”過程が面白くなっていくんです。ここが抜けてしまったため、最初から最後までスヒョンは残忍なままですw 結果としてテーマがボケボケです。
そしてスヒョンが最初から強すぎることで、その対比として弱すぎるキョンチョルが全ての美味しいところをかっさらっていきます。キョンチョルは残忍で、小心者で、スケベで、小太りで、しかも弱くて卑怯という敵役キャラクターとしてはパーフェクトな殺人鬼ですw あまりにもキョンチョルのキャラが強すぎるため、これもやはりスヒョンの魅力を激減させています。
ですから見終わった後で印象に残るのは、あまりにも美味しすぎるキョンチョルと、結局適当に流されているだけに見えてしまうスヒョンのがっかり具合です。

【まとめ】

「チェ・ミンシク」「連続殺人鬼」「R18+」と聞いてかなり期待が高かったのですが、かなり消化不良でした。正直な話し、このレベルなら邦画でもゴロゴロ転がっていますのでわざわざ韓国映画を見るほどではないと思います。
「韓国2大名優であるイ・ビョンホン、チェ・ミンシクが初共演。映画史上最も強烈な比類なき復讐劇が観る者すべての心を鷲掴みにする深遠なる物語。」という宣伝文句は結構偽りありです。強烈でも無ければ深遠でもありません。
140分は長すぎますし、ジャンル映画としても物足りないです。ここのところ劇場はお祭り状態で話題作テンコ盛りですので、本作を見るのはとりあえず後回しでも良いと思います。

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冷たい熱帯魚

冷たい熱帯魚

今日は新宿で3本です。一本目は今更ですが

冷たい熱帯魚」を見ました。

評価:(75/100点) – でんでんは最高 !


【あらすじ】

社本信行は富士郊外で熱帯魚店を経営している。最初の妻を亡くし、一人娘・美津子はグレ、後妻の妙子ともあまり上手くいっていない。
ある日、夜御飯の途中で飛び出していった美津子が万引きをしたとの連絡が信行の元へ来る。急いで妙子と共にスーパーマーケットへ向かった信行は、店長へこっぴどく叱られる。すると、そこに近くで熱帯魚店を経営しているという村田幸雄が現れその場を丸く収めてくれた。そのまま成り行きで村田の熱帯魚店を見学した社本一家は、どんどん村田のペースへと巻き込まれ、やがてにっちもさっちも行かなくなってしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 社本一家と美津子の万引き。
 ※第1ターニングポイント -> 吉田の死。
第2幕 -> 村田のビジネス。
 ※第2ターニングポイント -> 村田の死。
第3幕 -> 社本の逆襲。


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【感想】

今日は3本見て来ました。1本目は冷たい熱帯魚です。今月頭にちょくちょくレイトショー狙いで新宿テアトルに通っていたのですが、ずっと立ち見ばっかりで見逃していました。公開から1ヶ月経って拡大ロードショーが始まったからか、そこまで混んではいませんでした。
随所でかなり感想が出そろった感がありますので、細かい所を抜かして要点だけさらっと書いてしまいます。
個人的には本作は「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」以上、「愛のむきだし」未満って感じです。キャラクターはどなたも最高に切れてますし、役者はどなたも最高にすばらしいです。特に誰しも言うことですが、でんでん演ずる村田幸雄はいろんな意味でちょっと他では見られないくらい切れてます。激情的に捲し立てたかと思うと突然優しげになったり、本当に嫌な意味での「あるあるオヤジ」の村田は存在感抜群です。このキャラクターを作っただけで勝ちかなという気はします。
ただ逆に言うとこのキャラだけかなという印象もあります。もちろんそんなことは無いですし、社本の成長(?)物語にも見えます。ヘタレな社本が村田という暴力的な男性に感化されて”男らしさ”を獲得するも結局そんなことではどうしようも無いという、、、そういう風にも見えます。でもそういう全部を吹き飛ばすぐらい村田が濃すぎるため、どうしても村田が退場した後のがっかり感というか失速を感じてしまいました。
2時間半の長い映画ですが、すくなくとも途中で飽きることはありません。かなり高いテンションで見ることができます。ですがそこまで万人にお勧め出来るかというとちょっと微妙だと思います。そこまで言うほどでもないですがグロい事はグロいです。とはいえ、でんでんさんには是非賞を獲って欲しいので小声でオススメします。

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ザ・タウン

ザ・タウン

2本目は

ザ・タウン」です。

評価:(80/100点) – ベン・アフレックすげぇ。変形の「田舎で女性が不幸になる話」。


【あらすじ】

強盗が多発するチャールズタウンで、ダグは「家業」として銀行や輸送車の強盗を行っていた。ある日彼と仲間が襲った銀行で、仲間の一人ジェムが支店長の女・クレアを人質に取る。
後日、顔を見られたかどうかを確認しにいったダグはコインランドリーで怯えるクレアを目撃する。クレアの相談に乗ったことで知り合った二人は、やがて惹かれ合っていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ダグと仲間の強盗。
 ※第1ターニングポイント -> コインランドリーでダグとクレアが出会う。
第2幕 -> ダグとクレアの付き合いと、ダグの足洗い。
 ※第2ターニングポイント -> ダグが最後の仕事を受ける。
第3幕 -> フェンウェイ・パークの襲撃。


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【感想】

本日の2本目はザ・タウンです。昨年の東京国際映画祭のクロージング作品です。小さな劇場でしたが結構お客さんは入っていました。監督・脚本・主演はベン・アフレック。とはいえ、決して「俺様映画」になることなく、悲惨で鬱屈した街で生きる男を悲哀たっぷりに描いた普遍的で素敵な作品になっています。
結論は、オススメです!!で終わってしまっても良いくらい素敵な作品なので、とりあえず見に行って下さいw
本作は変形の「田舎で女性が不幸になる話」です。チャールズタウンは全然田舎じゃないですが、作品内ではとても鬱屈した街として描かれています。アイルランド人が多く治安の悪い街です。
ダグの父親は強盗で懲役30年(=ほとんど終身刑)を食らっていますし、母親は幼い時に失踪してしまっています。そしてダグ自身はアイスホッケーの選手としてドラフトにまで掛かったものの、結局怪我で挫折しチャールズタウンで強盗に身をやつしています。彼はいつかは街をでて都会へ出ようと考えていますが、なかなか踏ん切りが付かず強盗業を続けています。そんな彼がカタギのクレアと出会うことで足を洗って「人並みに幸せになろう」と決意するようになるわけです。
本作は強盗の元締め・ファーギーとクレアの間で揺れ動くダグと、彼ら強盗団を追うFBI捜査官、そして強盗の被害者でありながら相手が犯人と知らずに恋に落ちたクレアの4者の思惑が交錯して物語が進んで行きます。作中ではこの雁字搦めにされて身動きが取れない感じと、人生に絶望してしまっている鬱屈した感じ、そこからクレアと知り合うことで生まれる希望に溢れる夢が短いスパンでコロコロ入れ替わります。
カテゴリとしでは「ヒューマンドラマ」になってしまいますが、この鬱屈感がまさしく私が大好物な「田舎で女性が不幸になる話」そのものでして、その男性版として大変よくできています。俳優はどなたも素晴らしいですし、ストーリーの組み立て方もまったく飽きが来ないほど良く出来ています。中盤前にはFBIは強盗団4人を早くも特定しますので、そこからのサスペンス展開や真相を知ったクレアとの関係にはグイグイ引っ張られます。
ベン・アフレックのしゃくれ割れアゴと困り顔も相まって、マッチョながらも根が弱気なダグがとても魅力的です。

【まとめ】

すばらしい作品です。愉快な娯楽作ではありませんが、ここまで丁寧に悲哀を描かれると二時間ぐらいあっという間に過ぎてしまいます。大規模公開作品ですので、是非映画館で見てみて下さい。かなりオススメです。

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白夜行

白夜行

日曜日は

「白夜行」を観てきました。

評価:(80/100点) – テレビ屋映画でもちゃんとしたサスペンス出来るじゃない。


【あらすじ】

昭和55年、廃墟となったビルで質屋の主人・桐原洋介の遺体が発見された。警察は桐原の身辺を洗い不倫相手と思われる西本文代を突き止める。しかし文代は自宅で自殺体で発見され、事件は被疑者死亡のまま書類送検される。担当刑事の笹垣は文代の犯行を疑い、それから何年も個人的に捜査を進めていく。
それから10年後、桐原の妻・弥生子の愛人だった栗原が他殺体で発見されたことから事件は思わぬ方向へと転がり始める、、、。


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【感想】

日曜日は東野圭吾原作の「白夜行」を見て来ました。客層は中年~高齢者が多く、一人で見に来ている女性も目立ちました。GANTZ程ではないですが、そこそこの入りです。
見た直後に「韓国映画に負けない悲惨な話がまだまだ出来るじゃん」とかなり満足だったのですが、調べたら韓国でも映画化されているんですね。見かけた記憶が無いので日本未公開でしょうか。私は、不勉強ながら原作もドラマも韓国版映画も見ていません。完全に前知識無しで見に行きました。ですので、もしかしたら原作の方が面白いとか、原作ファンからすると「ここが許せない」みたいな所があるかも知れません。少なくとも前知識無しで見た私にとっては、本作は久々に見た日本映画のかなり面白いサスペンスでした。傑作と言ってしまってもいいかと思うぐらい満足度は高いです。
話のフォーマットはサスペンスとして定型的な「悲惨な目にあった少女の(非合法的)成り上がりストーリー」です。ですが本作では外道な振る舞いをしながら光り輝く少女・雪穂と献身的な振る舞いで彼女の影になる少年・亮司が、明暗・表裏のすばらしい対比になってグイグイ物語を引っ張っていきます。ストーリーは間違いなく大変面白いです。
唯一本作で不満があるとすれば、やはり演出的な面です。特に主役の笹垣を演じる船越英一郎がいつも通りの二時間ドラマ演技を見せ、そしてその他の戸田恵子や栗田麗もモロにTVドラマの演技(=はっきりとした滑舌で大げさなリアクション)を行ってくるため、かなり安っぽいことになっています。話の内容の重さ・暗さに反して、ルックスはとても軽いです。
がっかりがピークに達するのが本作でもっとも盛り上がる(はずの)クライマックスです。安っぽい泣き脅しと甘ったるい音楽とスローモーションの極悪コラボレーションで、一瞬火曜サスペンスで定番の沖縄・万座毛での探偵と犯人の説得シーンからの「落ちるなよ!!!落ちるなよ!!!!!(by ダチョウ倶楽部)」がフラッシュバックしますw
ただ、主要キャストは良く嵌っています。堀北真希は相変わらず下手ですがその下手な演技が逆に雪穂の「嘘くささ」にぴったりですし、高良健吾の「偽ダルビッシュ」感も痩せた感じと相まって病的な執着をもった男にきちんと見えています。この二人には珍しく当たり役だと思います。

【まとめ】

あんまり細かい所はサスペンスの面白さが減じてしまうので書けないのですが、間違いなく日本映画では良作の部類です。とはいえあまりハッピーな話ではありませんので、デート等では避けた方が良いと思います。メジャー資本の日本映画でもまだまだ十分に面白いサスペンスが作れるということだけでも、十分に見ておく価値のある作品です。かなりオススメです!

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完全なる報復

完全なる報復

本日は一本、

「完全なる報復」を見てきました。

評価:(35/100点) – ジェラルド・バトラーは最高だけど、、、。


【あらすじ】

妻と娘と暮らすクライドは、ある日二人組の強盗・ダービーとエイムスに自宅を襲われ妻子を殺されてしまう。クライドの目の前で殺されたにも関わらず、物証の少なさから担当検事のニックは主犯のダービーと司法取引をしてエイムスのみを極刑にする作戦を立てる。第三級殺人罪で数年の禁固刑のみで逃れたダービーを前に、クライドは自らの手で復讐することを誓う。
それから10年後、、、ついにクライドが動き始める、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 強盗殺人事件と司法取引。
 ※第1ターニングポイント -> 10年後。
第2幕 -> クライドの復讐劇。
 ※第2ターニングポイント -> 検察仲間が皆殺しに会う。
第3幕 -> クライドの隠れ家とナパーム。


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【感想】

今日は「完全なる報復」を見て来ました。本当は別の映画を見るつもりだったんですが、ちょっと時間が合わずにこっちにしてみました。監督はヒップホップ系のPV監督で知られるゲイリー・グレイ。映画監督としては久々です。客席は2~3割ぐらいの入りでお世辞にも盛況とは言い難い感じでした。
本作は「妻子を殺された男の復讐劇」です。本作の場合、その復讐対象は殺人犯だけでなく、犯人に極刑を与えられなかった検事・司法制度にまで及びます。いうなればジェラルド・バトラー無双。ある意味では「300」のインテリ版ですw
この作品はジェラルド・バトラーの魅力が全てと言っても過言ではありません。アカデミー俳優ながらいまいちパッとしないジェイミー・フォックスを完全にぶっちぎり、一人で作品の全てをかっさらっていきます。インテリな激情家にこれほど似合うマッチョも他にいません。なにせグラスゴー大学主席卒業の肉達磨ですから。なんかそう書くとドルフ・ラングレンみたいで哀愁が漂ってしまいますけどw
もうバトラーの演技を見ているだけでも十分幸せになれる作品なのですが、どうしても中途半端というかガッカリ感が否めません。それは一重に、クライマックスで作品の視点がぶれてしまうからです。
本作はクライドの家族が殺されるシーンから始まります。そして担当検事のニックは「自分の成績(担当案件の有罪率96%!)だけを気にする打算的な男」として描かれます。ですので、当然観客としてはクライド側をヒーロー視します。クライドは殺人鬼ではありますが「妻子の復讐」というまっとうな正義を掲げるダークヒーローなんです。
しかも劇中において、クライドとニックは同じ家族構成をしています。これはどうみても二人を正反対に描くか、または同じ信念をもった「コインの裏表」とするかを意図した人物配置です。だから、例えば「クライドがニックの妻子も殺してしまうが、それでもニックは現行司法制度に縛られて法廷で戦えない」という皮肉な状況にするとか、または「クライドがニックの妻子も殺してしまい、ニックは信念を曲げて私的な復讐をしてしまう。」という「理由(1995年)」のようなアイデンティティ・クライシスの話にするとか、そういった方向で「クライドの(=家族愛の)勝利」を期待するわけです。
ところが蓋を開けてみると、、、、、ああぁあぁぁあぁぁぁっぁあっぁあ orz。

【まとめ】

せっかく面白い設定でテンションが上がっていたのに、後半20分くらいで急激に失速してしまいます。ちょっとびっくりするぐらいの失速具合でして、それまでのストーリーは何だったのかと思いたくなります。非常にもったいなく、非常に残念な作品です。ラストが微妙に美談っぽい感じで終わるんですが、「ニックも家族の大切さを知った」だけだとちょっと弱いというか、話として横滑りしています。
ただ、ジェラルド・バトラーは間違いなく格好良いですので、彼のファンに限りオススメします。
※余談ですが、ヘレン・ケラーをギャグにするのだけは絶対ダメです。論外。しかもそれを被差別層だった黒人に言わせるなって。そこだけはものっすごい引っかかりました。

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リミット

リミット

土曜の二本目は

「リミット」を見ました。

評価:(70/100点) – スペイン発のブラックユーモア・ソリッドシチュエーションスリラー


【あらすじ】

場所は2006年のイラク。食品会社のドライバーをしていたライアン・レイノルズは目覚めると棺の中に居た。棺の中にはライターと携帯電話、ナイフ、ペン、サイリウム、切れかけの懐中電灯のみ。身動きもロクにとれない。果たして彼は脱出できるのか?


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【感想】

土曜の二本目は「リミット」です。公開館はそこまでありませんが、かなり人が入っていました。久々に完全なワンシチュエーションのスリラーです。登場人物(=役者)は一人のみ。あとは電話越しの声やビデオ越しにちらっと見えるだけです。場面も棺の中のみ。最初から最後まで「脱出できるか」という一点のみで100分間引っ張ります。
当然これだけを聞くと「本当に100分間も持つのか?」と不安になりますが、そんな心配は要りません。もちろん途中でどうしても中だるみはしますが、とても上手にイベントを転がして高いテンションを保っていきます。そして全体を通して流れるのはアメリカへの徹底した”おちょくり”と皮肉です。この辺はさすがにスペインというところでしょうかw
ちょっと詳しく書いただけでもネタバレになってしまう内容なのであんまり書けないのですが、もし近くで上映しているのであれば是非見ておいた方が良いと思います。これほど明確にアイデア一発で映画を成立させている意欲作は本当に珍しいです。かなりオススメです。

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