デイブレイカー

デイブレイカー

日曜の二本目は

デイブレイカー」です。

評価:(55/100点) – ジャンル映画としては相当良い感じ。


【あらすじ】

世界の大半をヴァンパイアが占めた世界。人間の絶滅が危惧され、ヴァンパイア達は血に飢えていた。代替血液の研究を行うエドワードはある日帰宅途中に逃走する人間達をかばったことから一転、反ヴァンパイアのレジスタンスに引き入れられる。レジスタンスの頭領・コーマックはヴァンパイアから人間に戻ったと言い、その再現方法を研究していた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> エドワードと会社と弟。
 ※第1ターニングポイント -> エドワードがレジスタンスに引き入れられる。
第2幕 -> ブロムリー・マークス社の人間狩り。
 ※第2ターニングポイント -> エドワードが人間に戻る
第3幕 -> ブロムリー・マークス社への潜入


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【感想】

11月28日の二本目はデイブレイカーです。こちらも東京国際映画祭で先行上映していましたが、TIFFでは未見でした。夕方の回で見たのですが、結構お客さんが入っていて驚きました。大抵こういう作品はおじさんと好き者ばっかりなんですが、以外とカップル客も来ていました。
実は12月に入ってから仕事で徹夜が続いていまして、すでにあんまり良く覚えていませんw なのでメモを頼りにさっくりと書きたいと思います。
本作は、ジャンルムービー的なお約束もまぜつつ新しいアイデアも盛り込みつつ、バランスが結構良いなという印象です。最近よくあるヴァンパイアものですと、「ヴァンパイアが人間とのギャップと怪物性に苦悩する」というタイプの作品が多く見られます。「ぼくのエリ」しかり、「渇き」しかり。本作の場合、極端な事をいってしまえば、作品内でヴァンパイアがヴァンパイアである必然はありません。というか、作品全体が「搾取する側・される側」の構造になっていて、非常に意図的に社会問題をつっこんできています。あくまでもヴァンパイアは体制側の暗喩として使われています。
というと退屈そうに聞こえますが、実際に見てみるとこれが結構乗れます。というのも、所々に挟まれるゴア描写によってジャンルムービーとしてのサービスをきっちり入れてくるからです。共同監督のスピエリッグ兄弟はかなり演出が上手いです。間の引っ張り方や長回しのアクションシーンで、そこまでエキサイティングな内容では無いシーンでも十分に引きつけてきます。
もちろん役者陣に演技派を揃えているからでもあるのですが、ジャンルムービーとしてはかなりの出来だと思います。
アイデアをテンコ盛りにしたディストピア・ヴァンパイアムービーという変なジャンルの作品として、結構画期的ではないでしょうか? この手のやり方は今後定番化していくような気もします。ということで、まぁDVDでも十分かなとは思いつつ、そこそこオススメな作品でした。
余談ですが、ポスターのいかにも近未来SFっぽいデザインに反して中身は結構ゴアです。あんまりデートでは行かない方が良いと思いますw

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記事の評価
マチェーテ

マチェーテ

今日は久々のレイトショーで

マチェーテ」を見てきました。

評価:(65/100点) – 頭悪っw


【あらすじ】

メキシコの連邦捜査官・マチェーテは目の前で麻薬王トレホに家族を殺されてしまう。それから三年後、アメリカへと不法入国したマチェーテは、日雇い労働者のスラムでスーツ姿の男から過激右派の上院議員・マクラーレンの暗殺を依頼される。しかしそれはマクラーレンの補佐官の仕掛けた罠だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> マチェーテとトレホと貧民街。
 ※第1ターニングポイント -> 暗殺の失敗。
第2幕 -> マチェーテの逃走。
 ※第2ターニングポイント -> ルースが殺される。
第3幕 -> メキシカンの逆襲。


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【感想】

本日はグラインドハウスの嘘予告から飛び出したスピンオフ作品「マチェーテ」を見て来ました。かなりイかした予告編にも関わらず、お客さんはまったく入っていませんでした。まぁ、ロバート・ロドリゲス監督という時点で、日本アニメとアクション映画とスプラッタ・ホラーの見過ぎな頭悪い中2映画なのは確定なので仕方がありませんw
本作はまさにそのロバート・ロドリゲスの悪ノリが炸裂した内容になっています。支離滅裂としたキャラクター描写の中で、それでも一貫して血しぶきとコスプレ美女に拘る姿勢は大変信頼がおけますw 監督の従兄弟・ダニー・トレホも遺憾なくその悪顔を発揮していますし、何より無敵超人・スティーブン・セガールを遂に悪役として起用したということは悪ノリの最高峰です。なにせラスボスがセガールという時点で、人類に勝ち目があるようには思えませんw
全体を通して大変愉快なバカ映画なのですが、一方でどうしても「お祭り騒ぎ」だけで終わってしまっている感は否めません。というのも、「セガールがボスって面白くない?」「ロバート・デ・ニーロにアホなヘタレ役って無駄使いっぽくて良くない?」「ミシェル・ロドリゲスと言えば眼帯にタンクトップじゃん?」という小学生が授業中にノートの隅に書いた落書きレベルのアイデアを20億円ほど掛けて実現してみたという内容のみだからです。一応ヒスパニックの移民問題みたいなものも入ってはいますが、あくまでもお祭りを盛り上げる御輿程度の感覚です。いうなれば「先生!!真面目なクラブですから活動費を下さい!!!」といっておいて、部費でエロビデオとカンフー映画を買いあさって麻雀してるだけという感じですw
すなわち、これは昨年の「ドゥームズデイ」と同じ種類の作品です。好きな人は大爆笑できますが合わない人には全く意味がわからないと類のものです。もし、あなたが「ゾンビ」「マッチョ美女」「金髪ナース」「セガールの剣術」という単語にビビっと来るのであれば、間違いなく見た方が良いです。
ただし、決して何かのためになったり、何かを得るような作品ではありませんw DVDで友達と酒を飲みながら見るような、そんなタイプの頭の悪い映画です。でも私は大好きなので、結構オススメです!

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桜田門外の変

桜田門外の変

日曜日は1本、

桜田門外の変」を見ました。

評価:(29/100点) – また出た! 教育テレビ風ドキュメンタリーもどき劇映画


【あらすじ】

安政七年(1860年)一月、大老・井伊直弼と前水戸藩主・徳川斉昭の権力争いに端を発した抗争は一触即発となっていた。強硬過激派の水戸藩士達は、脱藩した上で独自に井伊直弼を襲撃する計画を立てる。首謀者である水戸藩南郡奉行・金子孫二郎に薩摩藩士・有村次左衛門も加わり、事は水戸・薩摩両藩の大規模なクーデターの様相を見せていた。水戸藩士・関鉄之介はスポンサー探しの功績が認められ、襲撃の現場責任者の大役を受ける。決起は3月3日早朝。季節外れの大雪舞う中でのテロであった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 桜田門外の変。
 ※第1ターニングポイント -> 井伊直弼を殺す。
第2幕 -> 関鉄之介の回想と同士達の捕縛。
 ※第2ターニングポイント ->関鉄之介が袋田村の桜岡源次衛門邸にかくまわれる。
第3幕 -> 関鉄之介の最期。


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【感想】

日曜日は「桜田門外の変」を見て来ました。ここのところ毎週のように時代物が公開されてうれしい限りですが、やはり本作も高齢の方ばかりで若者・中年は皆無でした。しかも結構ガラガラです。
本作は、吉村昭の小説「桜田門外の変」を元に映画化されています。とはいえ大枠は史実通りですので、創作は各キャラクターのキャラ付けぐらいです。
あんまり長く書く気がしないくらいのテンションなのでざっくり言ってしまいます。本作でも春先の「てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~」の時にあったような問題に直面しています。つまり、あくまでも「史実」を優先させて教育的な内容(=NHKの「その時歴史が動いた」)にするか、それとも「劇映画」として脚色をしてストーリーの面白さを優先させるかの選択です。
本作はここが非常に中途半端です。前半はキャラものかと見せておいて、後半はほとんどがナレーションだけで進行する台詞劇になってしまいます。
しかも驚くことに、第一幕でいきなり「桜田門外の変」をやってしまうので、開始30分目がクライマックスという本末転倒な構成になっています。その後はひたすら鉄之介が逃げる所と、回想でスポンサーを探す場面が流れるだけです。必然的にそれらは「会話劇」になってしまいますから盛り上がりません。150分もある作品の中で、開始30分までが一番盛り上がります。これによって、ただひたすら、だらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだらだら、大沢たかおのしかめっ面がスクリーンに映されます(苦笑)。
ということで、とてもじゃないですが、大沢たかおが好きで好きで仕方がないような人にしかお勧め出来ませんw
しかし、今の世間的な風潮のなかで、テロリストを英雄視する映画がつくれるというのは大変素晴らしいことだと思います。こういう危ない内容は下手すればポリティカル・コレクトネス的に企画をつぶされかねないですから。
「父親達の脱藩状」と「江戸屋敷からの手紙」みたいに井伊直弼側の視点と関鉄之介側の視点で2本立てにすれば面白かったかも知れません。もちろん1本60分ぐらいの中編であればですけどw
結局本作では関鉄之介の英雄視もイマイチできていませんし(っていうか活躍してない)、かといって逃げる鉄之介を刺客たちが襲ってくるというアクション映画でもありません。なので、本来これはNHKで45分番組ぐらいにしてさっくり語るレベルの内容です。たかおの顔だけで100分ぐらい水増ししているわけですから(苦笑)、これはもう「たかおフリーク」は必見です!!!
もちろん私は綾瀬はるかとヤリやがった恨みがありますのでたかお映画で毎回痛い目をあっていますのであんまり乗れませんでしたw

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ナイト&デイ

ナイト&デイ

連休初日は2本です。1本目は

ナイト&デイ」を見ました。

評価:(40 /100点) – That’s ハリウッド娯楽映画。


【あらすじ】

自動車整備士のジューンはウィチタへパーツの買い出しに来ていた。地元ボストンへと帰るまさにそのとき、ウィチタ空港で彼女はロイと名乗る男と偶然同じ飛行機に乗り合わせる。彼女が手洗いに入ったタイミングを狙って、彼は乗客とパイロットを殺してしまう。畑に飛行機を不時着させたロイは、彼女に自分が組織に追われていることと彼女も追われる可能性があることを警告する。眠り薬を飲まされた彼女が目覚めると、そこはすでにボストンの自宅だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ジューンとロイの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> カーチェイス
第2幕 -> サイモンを探す旅。
 ※第2ターニングポイント -> ロイが撃たれる。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

3連休初日は新作を2本見てきました。1本目は「ナイト&デイ」です。監督は去年「3時10分、決断のとき」で評価の高かったジェームズ・マンゴールド。トム・クルーズとキャメロン・ディアスの主演ということもあって、観客は中高年の夫婦を中心に結構入ってました。
実は今日見た二本ともあんまり書くことが無くって困ってるんですが(苦笑)、本作を無理矢理まとめるならば「これぞハリウッド。」って感じでしょうか。話の構造自体は「巻き込まれ型サスペンス」を非常にオーソドックスにやっています。「ゼフィー」という永久電池を巡ってロイとフィッツジェラルドとアントニオが奪い合いを展開します。もちろんゼフィーはマクガフィンですので、それ自体に意味はありませんし、なにか科学的根拠があるわけではありません。ここにロイとジューンのラブコメ的な展開が加わります。
決して高尚な事をやっているわけではありませんし、ツッコミ所も満載です。FBIがロクに調べもせずに街中でカーチェイスや銃撃戦を展開するとは考えられませんし、いまどきiPhoneでwebを使っておいて匿名性が維持できるわけがありません。ジューンはTVニュースで顔までバッチリ映って指名手配されているのに平気な顔して街中をうろつけますし、何食わぬ顔で結婚式にも出られています。ロイはロイでヘリコプターやら銃やら秘密の無人島やらやりたい放題ですし、そもそも絶対に隠れられる無人島があるなら最初からサイモンをそこに逃がせば良いわけで、、、、。とまぁ細部はボロボロですが、それでも美男美女が車やバイクで銃をぶっ放してそれっぽい感じを出していれば、これはもう十二分に「ハリウッド娯楽映画」です。
頭をカラッポにして見れば、そしていつもの「ハリウッド娯楽映画」を見るつもりであれば、「面白かった」で片付けてしまえる映画だと思います。正直に言うと、こういう映画は別に新作で映画館で見る必要は無いと思いますが、でもカップルや夫婦で当たり障りのない時間つぶしに見る分には十分な出来だと思います。ということで、オススメかと聞かれればオススメしないこともないくらいのテンションで、オススメDEATH!!!

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十三人の刺客

十三人の刺客

2本目は

「十三人の刺客」です。

評価:(96/100点) – お帰り、我らの三池崇史! 悪趣味節全開の18番暴力映画。


【あらすじ】

江戸の中期、暴君・松平斉韶によって世は乱れていた。江戸家老・間宮図書の命を掛けた嘆願をも無視する斉韶の暴虐ぶりに、老中・土井利位は暗殺を決意する。暗殺者に選ばれたのは御目付役の島田新左衛門。彼は御徒目付組頭・倉永左平太を参謀に迎え、十人の有志と共に暗殺計画を練っていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 斉韶の暴虐ぶり
 ※第1ターニングポイント -> 新左衛門が暗殺を引き受ける
第2幕 -> 仲間集めと暗殺計画。
 ※第2ターニングポイント -> 落合宿に斉韶一行が来る。
第3幕 -> 戦闘。


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【感想】

さてさて、土曜の2本目は大本命「十三人の刺客」です。意外というか当然というか、若めのキャストが出ている割には観客の年齢層はかなり高めでした。
最近はアニメやマンガの実写化ですっかり毒気が抜けて「滑るギャグの人」みたいな扱いになっている三池監督ですが、新作はクローズシリーズ以来のホームグラウンドである暴力映画です。オリジナルは1963年の工藤栄一監督作「十三人の刺客」。13人で50数人と戦う集団戦で有名になった作品です。
宣伝でも「ラスト50分の戦闘」をことさら強調しているように、本作の見所は間違いなくラストの落合宿での決戦です。いうなればそれまでの90分は前振りのようなものです。しかし、決してネタフリだけで終わっているわけではありません。限られた時間の中で13人中5人に絞ってキャラクターを描写していきますし、特に敵役・斉韶についてはこれ以上ない悪として三池印全開の演出を見せてくれます。もっとも、本作は監督が得意とした往年のVシネマでは無いですから、直接的な残酷描写はほとんどありません。その意味では非常にポップな描写になっていますので、心臓の弱い方でもご安心下さいw

本作の難点

今回は絶賛しますので、先に難点だけ片付けてしまいます。とはいえ本作の難点はあんまりありません。140分という長丁場を高いテンションのままで職人的にきっちり見せてくれます。
ただ、前半実質60分程度で刺客のキャラクターを見せなければいけないため、どうしても描写は足りなくなってしまいます。もちろん松方弘樹に説明は不要なんですが(笑)、やはり松方が最初に連れてくる5人がデブの大竹以外最後まで誰が誰やらさっぱり分かりません。なので、最後の豪快に散っていくシーンでもあんまり感慨が浮かびにくくなってしまいます。
もう一つは三池崇史お得意の悪ふざけです。特に最終盤に出てくるある苦笑の展開で、どこまで本気で見ていいか良く分からなくなってしまいます。
最後にCGのショボさです。落合宿での戦闘ではかなりCGが使われているのですが、背中に火の付いた牛だったり、崩れ落ちる家屋だったり、かなり合成感の強い浮いたCGになっています。去年のカムイ外伝よりはマシですが、どうしても気にはなってしまいます。特に本作の場合は実際に大がかりなセットを組み立てて撮影しているわけですから、そこはCGを使わなくても良かったのかなとは思います。とはいえ、この過剰なサービス精神が三池監督のモットーですので、それほど嫌いではありません。ただ作品のトーンからはずれてしまっているように感じます。

本作の最高な点

とまぁツッコミはこれぐらいにしてべた褒めにいきましょう。本作で何がすごいかと言えば当然ラストの殺陣のクオリティなわけです。本作ではどちらかというと集団戦というよりは一対多数の殺陣を複数箇所で同時に行うような形になっています。志士達の絡みはそれほどありません。なので、実はこれ時代劇の集団戦というよりは、コーエーのTVゲーム「無双」シリーズのフォーマットなんです。一人で雑魚相手なら何十人でも余裕で倒せる強い名前付きキャラが、バッサバッサとその他大勢をなぎ倒しつつ、ボスと護衛を目指して突き進んでいきます。なので、本来であれば前半のキャラクター描写があればあるほど面白く見えるシーンではあります。
前述のように、本作では13人のキャラクターを全員描く事を最初から捨て、そのかわり主要人物に絞ってエピソードを挟んでいきます。ここはかなり思い切っていまして、松方弘樹と伊原剛志に関しては俳優の佇まいだけで説明無用と割り切り、そこに準主役の新六郎、槍使いの佐原平蔵、野人・木賀小弥太、若手の小倉庄次郎に絞ってエピソードを入れてきます。ですので、実際には13人というよりは7人+おまけで6人といった体裁になっています。
この殺陣につきましては、本当に素晴らしいです。特に松方弘樹。もう名人芸というか職人芸というか、松方さんのシーンは見ている間中テンションが上がりっぱなしでした。とにかく目線や歩き方一つでそのキャラクターの体力や精神の状況が一発で分かるんです。そして貫禄溢れる流れるような太刀捌き。本当に感動いたしました。斉韶を追い詰めるシーンの松方さんでちょっと涙出ましたもの。
そして刀の墓場での伊原剛志の見事な八相の構えからの二刀流。伊原さんと言えばご存じ千葉真一の門下でJACに所属、影の軍団シリーズの後半で二刀鎌の使い手・善九を演じていたわけですが、まさに当時を彷彿とさせるような二刀捌きでした。感涙です。
この”動ける2人”を筆頭に、山田孝之や伊勢谷友介も細かいカメラワークでのごまかしはあるものの、素晴らしいクオリティのアクションを披露してくれました。どれぐらい素晴らしいかと言いますと、主役の役所広司が一番もっさり見えたくらいのクオリティですw もちろん私も「三匹が斬る」は小学生の時から見ている大好きなシリーズなので、役所さんの示現流も大好物なんですが、今回はアクションシーンが少なく、良くも悪くも性格俳優的な立ち位置でした。
冷静に見ているとどう考えても明石藩勢は数百人単位で斬られているんですが(笑)、それもこれも監督のサービス精神と思えば気にもなりません。そりゃ千石と遠山の金さんと善九と芹沢軍団長を相手に200人足らずでは失礼というものですw 無双大いに結構じゃないですか。

薄いストーリーの中の芯

というように本作は殺陣が大変素晴らしいのですが、ではストーリーはと言いますとどうしても薄いと言わざるを得ません。そりゃ暴君を待ち伏せしてぶっ殺すだけの話ですから仕方が無いです。
しかし、本作では薄いながらもきちんと一本の芯が通っています。それは「平和な時代に生まれてしまった武士とはどうあるべきか」という問いです。
斉韶は暴君で頭が逝っちゃってますが、しかし彼は「平和な時代の武士」としてスリルジャンキーになってしまっているだけにも見えます。とにかく人を殺したり暴虐に振る舞うことで、日々の渇望を満たそうとしてどんどんエスカレートしていきます。
そして「武士」として活躍できないことに鬱屈を感じ、死に場所を求める島田新左衛門。彼もまた武士に相応しい死に場所を求めて勝ち目の薄い暗殺計画に積極的に参加していきます。もちろん民百姓のためという題目はあるものの、しかし彼を決定的に動かしているのはその「ヒーロー幻想」であり武士としての誇りです。だからこそ、最後である行動に出て自らの運命を決めるわけです。
一方で敵役として出てくる御用人・鬼頭半兵衛も武士として「主君を守る」事を貫くために、良心を殺して新左衛門に立ちはだかります。この半兵衛も、短い時間の中で「コンプレックスを持った苦労人」として描いてきます。
こうしてみてみると、悪役は斉韶一人だけで、そのほかは皆なにかしら筋の通った考えを持っているわけです。ストーリーを語る上で最小かつ的確なこのキャラ配置こそ、邦画黄金期の時代劇のレベルの高さを如実に表しています。
冒頭では合戦シーンまでを「前振り」と表現しましたが、決してネタフリでは無く、きちんと長編映画として合戦を魅せるための土台をきっちり積み上げる、価値ある濃縮された90分です。

【まとめ】

断言します。今年のシネコン上映の邦画ではダントツで面白いです。今年のベストテンに推す人がいても何ら不思議ではありません。何が良いって、落合宿での決戦の日の朝に志士達が横一列に勢揃いしてカメラに向かってくるシーンがあるんです。それだけで涙腺が刺激されまくりですw
悪い事はいいません。怖い描写が苦手だったり、血が出るのが苦手だったりしても全然問題ありません。とにかく、劇場でやっている今、大スクリーンでやっている今、この作品を見逃して映画ファンとは金輪際呼べません!!! 理屈はいいからとにかく家の近くで、なるべく大きな箱で上映している映画館を探してすぐ行ってください!!! 大プッシュでオススメします!!!

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特攻野郎Aチーム THE MOVIE

特攻野郎Aチーム THE MOVIE

本日は3本です。1本目は

特攻野郎Aチーム THE MOVIE」を観てみました。

評価:(75/100点) – 脚本?辻褄? こまけぇこたぁいいんだよ!!!


【あらすじ】

ハンニバル大佐率いる特殊部隊Aチームは、モリソン将軍の命令を受けイラクのゲリラが持つ偽ドル札の原版の奪取作戦を行う。見事作戦は成功したが、原版受け渡しのまさにそのとき、モリソン将軍のバンが爆破され傭兵のパイクに原版を奪われてしまう。罪を押しつけられたAチームは懲役刑を負ってしまうが、半年後にCIAのリンチ捜査官の手引きで脱獄。名誉を回復するために、パイクと原版を追う。

【三幕構成】

第1幕 -> Aチームの結成と偽ドル原版奪取作戦。
 ※第1ターニングポイント -> Aチームが懲役刑を受ける。
第2幕 -> 脱獄とパイクの追跡
 ※第2ターニングポイント -> Aチームが再び裏切りに会う。
第3幕 -> 港での決戦。


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【感想】

本日の1本目は「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」です。ご存じテレ朝での超人気シリーズ「特攻野郎Aチーム」の前日譚的な内容です。
非常に多くのお客さんが入っていたのですが、意外にも若い人が多かったように思います。オリジナル版は私も結構リアルタイムギリギリでして、途中からは覚えていますが最初の方は後からDVDで見たように思います。
本作は非常に評価しづらい部分があります。というのも、単体の映画として見た場合は話が相当雑なんです。編集的に変な所もありますし、それ以上に作戦の進め方というのが唐突だったり余計だったりという部分が多々あります。
ジェシカ・ピール演じるソーサが何がしたいかさっぱり分からなかったり、そもそも軍事法廷に掛けられるための証拠がまるでないため全然ハメられたことになってなかったり、微妙は微妙です。
とはいえ、オリジナル版にあった水戸黄門的なお約束はバッチリ入っています。銃も車も昔のままで登場しますし、コングへの睡眠薬投与やクレイジーモンキーの脱獄など愉快なシーンをきっちり踏襲してくれます。そして。男4人がお互いに助け合って悪党を懲らしめていくという「男子チームもの」としては大変よくはしゃげていると思います。
このワイワイキャッキャした感じが曲者軍団Aチームの一番の魅力であるのは間違いありません。
ただ、、、ただですね、、、今回のAチームはバリバリに敵を殺します。どうしてもハリウッドの大作アクション映画としては仕方が無いのかも知れませんが、オリジナルでは人を殺さずに「懲らしめる」というのがAチームの痛快さだったはずです。もちろん今回はテレビ版より悪党もスケールアップしていますから、なかなか懲らしめるだけで終わらせるのは難しいかも知れません。それでも、もう少し配慮が欲しかったかなとは思います。あくまでも「ならず者」ではなく「ちょっとおどけたプロ集団」というところがAチームのAチームたる所以なんですから。

【まとめ】

決して単独で出来の良い映画ではありませんが、テレビシリーズのファンであれば間違いなく一見の価値があります。ラストで例のナレーション(俺たちは、道理の通らぬ(中略)助けを借りたい時は、いつでも言ってくれ!)が流れれば嫌でもテンションが上がります。そしてエンドロールの最後の最後で流れるAチームのテーマで、もはや心は80年代にタイムスリップです。
バカが好きな方、映画は火薬の量で決まると思う方、そしてホモソーシャルが好きな方にはオススメです。

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魔法使いの弟子

魔法使いの弟子

遅くなりましたが、先週末は一本、

「魔法使いの弟子」をみました。

評価:(20/100点) – ファンタジアの何所をみるとこうなるのか。


【あらすじ】

デイヴは小学生の時、迷い込んだ怪しげな骨董屋でドラゴンの指輪をもらう。それから10年後、彼の前にかつて骨董屋で出会った魔法使いのホルヴァートが現れる。ホルヴァートは昔デイヴが路地に捨てたマトリョーシカを探していた。そのマトリョーシカの中には魔法使い達が封印されているという、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> デイヴとバルサザール
 ※第1ターニングポイント -> バルサザールが復活する。
第2幕 -> グリムホールドを巡る争い。
 ※第2ターニングポイント -> ホルヴァートがグリムホールドを手に入れる。
第3幕 -> モルガナの復活


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【感想】

遅くなりましてすみません。先週末は1本、魔法使いの弟子を見ました。夏休みって食べられるの?
本作はニコラス・ケイジがプロデューサーで、彼の主演作・ナショナルトレジャーのスタッフを集めて制作されました。それだけで強烈な「俺様映画」なわけですが、なんでこれがディズニーなのか良く分からないほどとてつもなく低いレベルの子供向け映画になっています。
一番初めにツッコまなければいけないのは、キャラクターの命名に見られる強力な中2病センスです。いわずもがなのアーサー王伝説に出てくるマーリンとモルガン、そしてアーサー王の象徴であるドラゴンをあしらった指輪。マーリンの弟子が、バルタザール(東方の三賢者)、マクシモス(証聖者)、ヴェロニカ(ゴルゴタの丘でイエスにタオルを貸した人)。さらに主役がデヴィット(ダビデ/旧約聖書の古代イスラエルの王様)、ヒロインがレベッカ(リベカ/ヤコブの母/全イスラエル人の母)。
全部アメリカなら小学校高学年~中学校ぐらいで習う格好いいキリスト教的有名人です。このすさまじく臆面の無いネーミングセンス、、、凄すぎるw
でまぁ話自体はなんてことはなく、いつも通り少年に「君は伝説の勇者だ!」ってな具合に白羽の矢があたり、別段苦労するでもなく覚醒して「俺ってサイキョー!イェーイ!!!」とはしゃぐだけの下らない話です。今回は一応気休め程度ですが師匠と弟子の特訓シーンが入ります。その意味ではハリー・なんちゃらよりはマシではあるのですが、しかし結局それ自体があんまり役に立たないというか、なぜか突然覚醒してメチャクチャ強くなってしまうため特訓の意味がありません。甘やかし過ぎ。
しかも今回の主人公は完全なナードなためあまり華がありません。このあたりはカツラでフサフサになったプロデューサー様が一番格好良く写るための絶妙なキャストです。しかもプロデューサー様の恋人役が絶世の美女/イタリアの宝石・モニカ・ベルッチで、ヒロインはほぼ無名のテレサ・パルマー。職権乱用しすぎw
とはいえ、元々本作の趣旨はファンタジアの中でミッキー激萌え展開を呼ぶ「魔法使いの弟子」パートを実写にするというものです。なので極端な話この「魔法使いの弟子」パートさえ上手く実写に出来ていればなんの問題もありません、、、、が、、、、出来てな~~~~いw
ファンタジアの「魔法使いの弟子」が素晴らしいのは、ミッキーが手抜きをしようとして魔法で掃除してたら眠っちゃって洪水になっちゃってさぁ大変という「ドジっ子萌え」にあります。そして気付いたミッキーが取り繕うために魔法でモップ達を止めようとした結果、まるで満天の星空のように泡が舞って幻想的な風景が展開されるわけです。
「魔法使いの弟子」パートの肝は、ミッキーの可愛らしい失敗と、それを収めようとした結果に起こる奇跡的に美しい光景にあるんです。
ところが本作ではそこが全く出来ていません。そもそもからして本作で起きる失敗はデイヴの力量不足によるもので、しかも手抜きではなく彼女が来てしまうから早く片付けないといけないという必要に迫られたものです。さらに、デイヴはうっかり寝てしまうのではなく、シャワーに入ってやる気満々で目を離しただけです。全然ドジじゃありません。ただの馬鹿です。しかも止めようとして魔法を追加するのではなく、単にあたふたしてるだけです。こんなので音楽だけ「魔法使いの弟子」を流されても全然乗れません。

【まとめ】

子供向けのファンタジーというにはあまりにもレベルが低く、ファンタジアのファンが期待していくにはあまりにもファンタジアへのリスペクトが足りません。残念ですが、本作を見に行くのであれば、ファンタジアを借りてきて見た方が100倍面白いです。それにしてもファンタジアの中で唯一ディズニーキャラクターが出ている「魔法使いの弟子」を使ってこれかと思うと悲しくなってきます。いっそのこと「はげ山の一夜」を使って実写のゾンビ映画にしたほうが面白かったかも知れません。

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ベスト・キッド(リメイク)

ベスト・キッド(リメイク)

2本目は

ベスト・キッド(リメイク)」です。

評価:(20/100点) – スミス家のホームビデオ。


【あらすじ】

12歳のドレは母親の転勤で中国・北京へ移住してくる。移住したその日、彼は公園で女の子をナンパするが、その子がガキ大将の意中の子だったことからさぁ大変。その日よりドレはガキ大将一味に目を付けられてしまう。追いかけまわされたドレを救ったのは、アパートの管理人・ミスターハンだった。彼らはガキ大将の道場にケンカを売りに行き、カンフートーナメント大会で決着を付けようと提案する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ドレの引っ越し。
 ※第1ターニングポイント -> ドレがミスター・ハンに弟子入りする。
第2幕 -> ドレの修行と七夕祭り。
 ※第2ターニングポイント -> トーナメントが始まる。
第3幕 -> 大会の模様。


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【感想】

さて、2作目は先行公開という体の「ベスト・キッド(リメイク版)」です。余談ですが、最近先行公開といいつつ普通に土日に4回も5回も上映する作品が増えているんですが、これどうなんでしょう? もちろん先行公開の客はそのまま初週の動員数にスライドできるという裏ルールがあるため土・日分をチートできるというカラクリなんですが、客からするとあんまり意味がありません。しかも先行公開した作品で初週一位を逃すと超恥ずかしいというデメリットもありますw とはいえ、本作はかなりお客さんも入っていましたので、なんとか一位はとれそうです。

本作の立ち位置。

本作はキャラクターの名前と舞台が変わっているだけで、オリジナルの「ベスト・キッド」をほぼそのままコピーリメイクしています。台詞単位までほとんど同じです。皆さんご存じだとおもいますが、本作はウィル・スミス夫妻が制作で主演が息子のジェイデン・スミスです。要は、ウィル・スミス夫妻が小学校卒業記念に主演映画をプレゼントしたというだけの話です。ミヤギ師匠役(今回はミスター・ハン)にジャッキー・チェンをキャスティングしていることからも、ウィル・スミスの息子に賭ける意気込み(=親馬鹿っぷり)が伺えます。しかし、、、非常に残念ですが、この息子は酷すぎますw

ジェイデン・スミスという”スター”

ほぼ丸々コピーリメイクである本作は、オリジナルと大きく変わっている箇所が3つあります。1つは見ての通り、競技が「空手」から「カンフー」に変わっている点です。とはいえ、実はこれはあんまり大したことはありません。というのもオリジナルだってダニエルは最後に「鶴の構え」を使うわけで、全然空手じゃないからですw なんの問題もありません。
2つ目はこれも見ての通り、師匠がノリユキ・パット・モリタからジャッキ-・チェンに変わっている点です。これは良くも悪くもですが、パット・モリタが実際には空手が出来ないのに対して、ジャッキーは素で武術の達人です。なので、パット・モリタの持つ「胡散臭さ」が大幅に減り、代わりに訓練シーンやチンピラから主役を救うシーンが豪華になっています。
3つめはこれも見ての通り、主役が青年から子供に変わっています。これははっきりいって全面的にマイナスです。単に説得力の問題もあるんですが、それ以上にジェイデン・スミスが酷すぎます。
で、やっとこさジェイデン・スミスの話なんですが、このクソガキがまったく可愛くないんです。態度が悪いというか、すでに父親のもつ「俺様チンピラオーラ」がビンビン出ていますw どれくらい「俺様」かというと、全ての場面でジェイデンのアゴが上がっていて物理的に他人を見下す目線になっていますw それはジャッキーに対しても明らかです。私たちのアイドル・ジャッキーすら馬鹿にしてるのかと思うと、思わずぶっ飛ばしたくなりますw
実はこのジェイデンへの変更でストーリー上のニュアンスが大分変わってしまっています。というのも、例えば本作のそもそもの発端であるチンピラとのケンカは、どう見てもドレが悪いように見えますw そしてその後の水掛け復讐場面も、どう見てもやり過ぎです。オリジナルでは水道水をホースでかけただけなのに、本作ではあきらかに健康に悪い汚水をかけます。そんなことしたらリンチされて当然です。
これは非常に重要な問題で、要はオリジナルのダニエルはヘタレだけど真面目だったのに、本作のドレはクソ生意気でケンカっ早いチンピラなんです。これじゃ、そもそもの師匠の教え(「空手/カンフーは防御の技だ」)に反してるんです。全然共感できないw 恐ろしいのは、セリフをほとんど変えていないのに、ジェイデンという悪い意味でスター性のある人間のオーラだけでこの感じ悪さが付加されている点ですw ジェイデン、、、恐ろしい子、、、。
もう一方のスター、ミスターハンも「ジャッキーである」以上の背景がありません。キャラとしてミヤギさんよりも明らかに薄っぺらいんです。でもそこはジャッキーなんで大丈夫ですw だって誰がどう見ても達人にしか見えませんからw
そう考えると、ジャッキーをキャスティングしたのは大正解です。

【まとめ】

本作は、エンドロールに作品の全てが詰まっています。ジャッキーのカンフー映画ではお馴染みのNGシーン集の代わりに、本作ではメイキング的な撮影風景の写真が流れます。が、、、が、、、、ウィル・スミス写りすぎwww
写真の半分ぐらいが映画と関係無いウィルとジェイデンの親子写真なんです。つまり「スミス家の中国旅行写真」w
結局、本作はあくまでもウィル・スミス夫妻が息子に贈ったプレゼント以上のものではありません。映画としては明らかにオリジナルの方が数段上ですし、ジェイデンのプロモとしても相当厳しいです。特にラストのカンフートーナメントで明らかなCGを使っているのがアクション志望としてはダメダメです。
残念ですが、ウィル・スミスに思い入れのある方、または生意気なクソガキが大好きな方にのみオススメです!!!

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