本日はアニメ映画の二本立てです。一本目は
評価:(4/100点) – ポスト・エヴァンゲリオンの有象無象の一つ。
【あらすじ】
体が石化してしまう謎の奇病”メデューサ”が流行した世界。コールドスリープカプセルセンターにて治療法が見つかるまでの眠りについたカスミ・イツキは、突如眠りから起こされる。するとそこにはモンスター達が蔓延っていた。逃げ惑う160人のほとんどは殺され、残ったのはわずかに7人。はたしてイツキはセンターから脱出することができるのか? そして世界に何が起こったのか?
【三幕構成】
第1幕 -> 世界観の説明。カスミとシズクとコールドスリープ。
※第1ターニングポイント -> カスミがコールドスリープから目覚める。
第2幕 -> 城からの脱出。
※第2ターニングポイント -> カスミがビデオカメラの映像を見て城に再突入する。
第3幕 -> 結末。
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【感想】
本日はアニメ映画の新作を2作見てきました。1作目は「いばらの王」です。さすがに平日の昼間でしたので、観客も数人でした。
基本的に本作はかなり駄目駄目だと思うのですが、原作のファンの方もいらっしゃると思いますので、どうしても具体的な指摘をせざるを得なくなってしまいます。ですので、以下は多大なネタバレを含んでしまいます(=というか結末も書きます。)ので、例によって原作未読の方や楽しみにしていらっしゃる方はご遠慮下さいo(_ _*)o。
ちなみに私は原作未読で、前知識もまったく無い状態で見ています。
本作の概要と基本プロット
まずは概要をざっとおさらいしておきましょう。本作のストーリーは、宇宙から飛来した細菌「メデューサ」が核となります。「メデューサ」は感染者の「夢」「空想」を具現化します。作中では「進化を促す存在」とされており、一種のオーパーツ的な存在、もっというと「2001年宇宙の旅」のモノリスのイメージです。
で、この「メデューサ」を宗教の信仰として利用としたのが「ヴィナスゲート社」の社長さんで、彼がイツキの双子の姉・シズクを適合者として確保するところから話しがややこしくなります。シズクは確保される直前に愛する妹を殺してしまっており、軽い錯乱状態にありました。ということで、シズクが「メデューサ」で生み出したのは「妹のコピー」と「茨のツタ」でした。彼女は茨のツタで世界から城を隔離して、妹のコピーと平和に暮らそうとしましたとさ、、、とまぁこんなところです。全部ネタバレ(笑)。
上記のような概要が背景で、基本プロットとしては「モンスター有りの脱出もの」です。ミラ・ジョボビッチの映画版「バイオハザード」一作目と同じプロットです。なんか良く分からない怪物達がウヨウヨする中で、サバイバル型の脱出作戦が展開されます。主人公一行は完全にテンプレ通りで、頼れる勇者(正義のマッチョマン)、物知りの案内役、母性剥き出しの介護キャラ、サブ・マッチョマン(キャラかぶってるので途中で脱落)、役に立たない嫌な奴、そして内通者。
襲い来るモンスターから逃げながら、彼らはサバイバルしていきます。
とまぁここまで書くとB級ホラーとして私の大好物なように思えるのですが、、、、、、。
シナリオがガタガタですよ、、、。
まずですね、開始して10分くらいで私の心が折れました(苦笑)。
というのも、見てるこっちが赤面するほど画面作りがダサイんです。本作の冒頭、世界各国のニュースで「メデューサ」と「ヴィナスゲート社」が報道されている映像がでます。ここでいきなり言語の不一致が起きています。日本のアニメですので、別に外人が日本語を喋っているのはそこまで気になりません。問題は、ヴィナスゲート社長の記者会見でイギリスの放送でも中国の放送でも日本語を喋っている点です。仮に劇中で本当は英語をしゃべっているのだとしたら、中国の放送では中国語の字幕が必要です。もし中国の放送が同時通訳の放送なら、LIVEとかのマークの横に訳者の名前が出ないといけません。そのくせ、囲いとか下のテロップは英語・中国語なんです。
その直後、城に入るときにケージにある英語の注意看板が写ります。これはわざわざ日本語字幕を付けてきます。意味不明。格好付けすぎてダサさが半端無いことになってます。イングロリアス・バスターズほど徹底しろとは言いませんが、背伸びするなら中途半端な事はしないで欲しいです。
次に心が折れるのは、7人になってから初めてモンスターが襲ってくるシーンです。このモンスターは目がほとんど見えないらしく音に反応するそうです。つまり、「ディセント」に出てくる地底人のアイツと一緒です(笑)。ところが、、、ガキが「走っちゃ駄目だよ!あいつらは音に反応するんだ!」って大声で叫ぶんです(苦笑)。しかもモンスターはその声をスルー(笑)。ちょ、おま(笑)。
このモンスターの「音に反応する」という設定は劇中通してメチャクチャ適当です。都合の良いときだけ反応して、都合の悪いときは完全スルーを何度もします。それって全然サバイバルホラーになってないんですけど、、、っていうか自分らで作った設定なら、最後までちゃんとやって下さいよ。
さらになんかいろいろあって、SDカードに機密データをいれたりとかを華麗にスルーしますと(←セキュリティ厳しいパソコンに外部記憶デバイスは普通無いです。)、やはり次なるがっかりは全部喋ってくれるヴェガの登場です。出来の悪いセカイ系作品の大きな特徴として「聞いても居ない裏設定をベラベラと長時間喋るキャラが出てくる」という要素があります(苦笑)。まさにそれ。ヴェガ独演会によって、ようやく話しの概要が浮き彫りになり、サバイバルホラーから一転してヘボいセカイ系作品に急展開します。
ここからがもう怒濤のツッコミどころです。まず「眠ってた時間が48時間ぽっちってどういうこと?」っていう所でしょうか?
また、モンスター達の存在も意味不明すぎます。だって彼らは途中でメデューサに罹って石化する描写があるんです。ところが一方でメデューサで夢が具現化した者はメデューサには罹らないとも言っています。ってことは、、、あのモンスターはメデューサから生まれたのでは無いんです。じゃあ、48時間で驚異の進化を遂げた謎の巨大生物なんでしょうか? 結局コイツらの正体は最後まで語られません。なんじゃそれ?
さらに、3幕に入る直前に、なんとA.L.I.C.E.が監視するための腕輪をポロッと外す描写があるんですね。あれはさすがにビックリしました。「え、はずれるの?それも簡単に?」っていう(笑)。よく洪水とか大爆発で外れなかったと感心します(笑)。それって物語上は外れちゃ駄目なんじゃないのでは、、、とか思っていると別に何にも使われていないみたいでそれもズッコケです。てっきり腕輪がキーかと思ったら、なんと首筋注射が鍵だった!、、、、、ミスリードにすらなってない、、、、。
とはいえ本作一番のツッコミどころはラストです。結局、本作では「メデューサ病」は何にも解決していないんです。唯一分かっているのは、メデューサによって具現化したコピー・カスミはメデューサには罹らないってことだけです。で、一緒に生き残るガキは生身なんです。だから本作が終わって数日後には、人類が全滅してカスミだけが生き残るはずです。ま、いっか、、、別に。セカイ系が恐ろしいのは、主人公さえ良ければハッピーエンドって所です。人類全滅おめでとうございます(笑)。
【まとめ】
一応フォローしておきますと、私は片山一良監督は大好きです。「THE ビッグオー」というアメコミ風(=バットマン風)アニメの傑作を世に出しましたし、なによりポスト・エヴァンゲリオンのアニメ群で最も私が好きな「アルジェントソーマ」の作者です。「アルジェントソーマ」は既存の「エヴァンゲリオン風セカイ系」というフォーマットを逆手に取って、最終的には「コミュニケーションの齟齬における悲劇」と「夢敗れたロマンチストがそれでも愛を貫こうとする執念」というすばらしいヒューマニズムに着地する離れ業をやってのけました。
だからこそ、そんな片山監督が本作のような「出来の悪いセカイ系」を監督しているのは、正直信じられません。彼は10年前にはもっと凄い作品を作っていたんです。私は今でも「エヴァンゲリオンのフォロワー」の中で最も重要な作品は「アルジェントソーマ」だと思っています。まぁ「ラーゼフォン」も好きなんですけど(苦笑)。
とにかく、すくなくとも本作は劇場で見るような作品ではありません。極端な事を言えばですね、こういう台詞で全部説明するようなセカイ系の作品は、全部ラジオドラマで十分です。
ですので、本作を見るぐらいなら今すぐレンタルDVD屋に走っていただいて、片山監督の「アルジェントソーマ」を一気鑑賞するのがオススメです!!!!!
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