鉄男 THE BULLET MAN

鉄男 THE BULLET MAN

昨日の二本目は

鉄男 THE BULLET MAN」です。

評価:(60/100点) – 鉄男が自分探しって、、、。


【あらすじ】

アンソニーは目の前で”ヤツ”に息子を轢き殺されてしまう。怒り狂うアンソニーはやがて体の異変に気付く。口からオイルのようなものが漏れ、歯茎が鉄に変わっていたのだ。謎の組織からの襲撃を受けたアンソニーは「地下を調べろ」というメッセージを受け取り、実家の地下室へと潜る。するとそこには自分の出生の秘密が隠されていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 息子が殺される。
 ※第1ターニングポイント ->アンソニーが 謎の組織の襲撃を受ける。
第2幕 -> 両親の秘密
 ※第2ターニングポイント ->”ヤツ”が勝負を仕掛ける。
第3幕 -> ”ヤツ”との決闘。


[スポンサーリンク]

【感想】

昨日の二本目は先週末公開の大本命、鬼才・塚本晋也の17年ぶりの「鉄男」続編です。皆さんは当然ご存じと思いますが、塚本監督は鉄男でインディカルトムービーの一時代を築き上げた大巨匠で、世界三大映画祭の1つ・ヴェネツィア国際映画祭で審査委員まで務めております。北野武が「HANA-BI」で金獅子賞を獲ったときに猛プッシュした張本人でもあります。
その塚本監督が自身のデビュー作でもあり代名詞でもある「鉄男」の続編を作るんですから、駆けつけるしかないわけです。しか~~~し、観客が少ない!!!! 日曜の夕方なのに3人ってどういうことですか!? あんまり一般受けする監督ではないんですが、にしても少なすぎます。

鉄男が、、、、あの鉄男が、、、、。

結論から言いますと、かなり (´・ω・`)ショボーンな出来です。といのも、事もあろうに鉄男が自分探しを始めてしまうんです。「鉄男」シリーズは元々勢い重視なところがありまして、その暴力的に格好良いカット割りと、ナンセンスすぎるアヴァンギャルドな設定・ストーリーが肝なんです。悪夢的といいますか、筋道立てて説明しようとすると妄言にしかならないような訳の分からない連なりが面白いんです。でも今回の「鉄男3」はあまりにも理路整然としています。見終わった後に映画秘宝のインタビューを読んだら、どうもハリウッド狙いで直しの入ったプロットだったようです。本作では、「アンソニーが何故鉄男なのか?」「”ヤツ”は何故アンソニーを付け狙うのか」というのがハッキリ言葉で説明されてしまいます。ですので、ミステリアスで気色の悪い感覚はかなり減じています。
構成にしてもいわゆるハリウッドスタイルになっていまして、中盤で全部言葉で説明してしまう場面ではやはり驚きと失望を隠せませんでした。あの「鉄男」が、、、「カルトムービー」の代表格のような「鉄男」が、、、「普通のハリウッドっぽい特撮アクション映画」になってる(涙)。
がっくし、、、、。
とはいえ、やはり鉄男だけあって、音響の使い方は大変すばらしいです。「爆圧体験」というキャッチコピーの通り、ちょっと耳鳴りするほどの音量で金属のこすれる音を観客に嫌がらせのごとく叩き付けてきます。

【まとめ】

音については、家ではどうしても環境を揃えづらい物です。本作のように、音響が重要となってくる、、、というか音環境以外に魅力が乏しい作品は、劇場で見ざるを得ません。
皆さんも是非、劇場へ足を運んで塚本ワールドを少しのぞいてみて下さい。本作公開による何よりの収穫は、遂に「鉄男」と「鉄男II」がDVDで発売されたことでした。過度な期待は禁物です。

[スポンサーリンク]
記事の評価
春との旅

春との旅

本日は二本です。
一本目は

「春との旅」です。

評価:(45/100点) – 作りは素晴らしいがメッセージが不愉快


【あらすじ】

春は祖父・忠男と二人暮らしの19歳である。ある日、春が務める学校が廃校になることが決まり、彼女は単身上京を決意する。そこで春は忠男に兄弟の元に身を寄せるように勧める。こうして春と忠夫の親戚巡りの旅が始まった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

さて、本日の1本目は「春との旅」です。ティ・ジョイ作品ですので本来ならバルト9で見るのが正しい姿勢なのですが、いろいろあって川崎チネチッタで見てきました。お客さんは20~30人は入っていましたが、すべて中年以上の方で若者は皆無でした。まぁ作品の予告からして「良くできた文芸映画」という雰囲気なので仕方がないのかもしれません。余談ですが、なぜかチネチッタ別館・チネグランデが上映中もライトを落としてくれなかったため、すっごい明るい中でフィルムをみるという不思議体験になってしまい、細かい色合いが完全に飛んでしまっていました。よっぽど途中で出て返金交渉してやろうかとおもいました。最悪です、、、。
本作のストーリーはとても単純です。頑固者で人付き合いが悪く、兄弟達の忠告を無視しつづけてきた忠男が、足が悪くなり春と喧嘩したのを機に兄弟のもとに居候しようと訪ね歩くという話です。
この兄弟役が大滝秀治さんに小林薫さん、さらには弟の内縁の妻として田中裕子さんと超大物そろい踏みで物凄い演技を見せてくれます。特に大滝さんと仲代さんのシークエンスは圧巻の一言で、いつ殴り合ってもおかしくないくらいの緊張感をだしています。
俳優力が素晴らしい反面、ストーリーはあらぬ方向にすっとんでいきます。要は全ての兄弟から説教をくらうわけですが、その説教というのが基本的にはどれも正論なわけです。ストーリー上は誰がどう見ても明らかに忠男と忠男の娘(春の亡き母親)が悪いんです。特に淡島千景さん演じる姉の苦言はまさにその通りです。「困ったときだけ甘えるな。」「周りのみんなはあんたの犠牲者」「春ちゃんだけは犠牲にするな」etc。どれも正論です。てっきり私は、この映画が「忠男の孫離れ」に行くと思っていたんです。ところが、結局忠男は口では良いことを言っても、最後まで甘えっぱなしなんです。それは結局、孫の春が犠牲になることを(彼女が受け入れているからという言い訳付で)肯定しているわけで、だからこそラストシーンはああ撮るしかないんです。ああいうラストにしないと、「春が我慢し続ければいいじゃん」という最悪な結論になっちゃいますので。
私の個人的な意見ですが、本作はきちんと考えて撮っているかなりマトモな邦画だと思います。ですが、特に春が父親に会いに行く場面からものすごく不快指数が上がってしまいました。
原因は2点ありまして、自殺した母親を最低女にしてしまった点と、父の再婚相手を片耳の聞こえない障害者として描いた点です。
前者については簡単でして、要は春が父親を嫌う理由が自分勝手過ぎるし、父親が娘を遠ざける理由がないからです。春は「人間って~」みたいな適当なこと言いやがりますが、父親視点で見るといいがかりそのものじゃないですか。普通こういう状況であれば、父親は娘を引き取りませんかね?少なくとも一緒に暮らそうくらいは言うと思うんですけど、、、。
後者については、母子家庭で左耳の聞こえない女性だけが忠男を無条件で受け入れるという節操のない発想です。しかも明らかに途中で忠男の左側に立って会話する描写があるんですね。出会った時はわざわざ春の右側にまわりこんでアピールしてたのに、設定忘れちゃったんでしょうか? 障害と人格を結びつける設定って個人的にはすごい不愉快です。忠男が居候を辞退したのがせめてもの救いでした。
結局、この話は最後まで忠男が春に依存してしまうわけです。これってあたかも「しっかりものの孫とダメ人間の祖父との愛情・信頼関係」に着地しているように見えますが、これって全然美談ではないです。母親だって浮気したあげく、旦那が怒って出てったことに逆ギレして中学生の娘を遺して自殺するような自己中メンヘラですよ。なに考えてるんでしょうか?私なぞはどうしても忠男の兄と姉の正論の方を支持してしまいます。
仲代達矢さんの素晴らしい俳優力で誤魔化されかけますが、よくよく冷静に考えるとかなり迷惑な話です。描こうとしている対象は山田洋次の「おとうと」と同じなんですが、最後まで孫に甘えきってしまっているという点において、こちらの方が下に思えてなりません。

【まとめ】

テレビ局主導の映画ばかりの状況下では、どうしてもこういう「きちんと作ろうとしている邦画」は嫌いになりきれない部分はあります。しかし、どうしてもストーリー展開に共感できませんでした。ただし仲代達矢さんの力によって「どうしようもないクズだけど愛おしい偏屈老人」という描写は成功していると思います。とはいえ「甘える事」と「家族愛」を混同するような展開は正直なところちょっと腹も立ちました。
徳永えりさんのがに股走りが観たい方は是非是非劇場でどうぞ(苦笑)。

[スポンサーリンク]
記事の評価
ランデブー!

ランデブー!

見に行った私が悪いんですが、昨日から

「ランデブー!」で怒髪天を衝きすぎて困ってます。

評価:(1/100点) – あ、うん。エンタメって簡単だよね。キュートだよね。


【あらすじ】

女優志望のめぐるはオーディションに行く途中のお茶の水・聖橋の横で、落ちていた携帯電話を拾う。着信した携帯電話に出ると、相手は矢島という男であった。矢島に頼まれ携帯電話を一時的に預かることになっためぐるだったが、なぜか謎の男達に追われるハメになってしまう。

【三幕構成】

第1幕 -> めぐるが携帯電話を拾う。
 ※第1ターニングポイント -> めぐるが後楽園の事務所で男達に見つかる。
第2幕 -> めぐるの逃走。
 ※第2ターニングポイント -> めぐるがネットのニュースで男達が警察だと知る。
第3幕 -> ドームでの一幕


[スポンサーリンク]

【感想】

あまりの出来にシネクイントを出た直後にTwitter!で予告してしまいましたが、昨日は「ランデブー!」を見てきました。上映前に尾崎将也監督と木原浩勝さんのトークショーがありましたが、お客さんは10数名ほどでした。
もうTwitter!で触りの部分を書いてしまったので結論を言います。
この糞映画が!!!!! が! が! が!!!!!
あまりにも酷い出来に終始口あんぐりでした。破綻したストーリー。ダサいカメラワーク。場面のトーンにそぐわない音楽。学芸会という言葉すらヌルい大根役者達。商業映画とは思えないクオリティの低さ。どこをとっても褒めるところが見当たりません。
もし上映前のトークショーが無ければ監督1作目という言い訳に免じて見なかったことにしたんですが、ちょっとトークショーでハードルを上げまくっていたので怒りがこみ上げてきました。言ったこと出来てないし、映画を舐めないでくれますかね!?

前置き:トークショーの内容

まずはこの怒りをこのブログを読んでいただいている方と共有するには、トークショーを体験いただくのが不可欠です。ということで、私の速記によりますトークショーメモをざっとまとめてしまいます(笑)。場所は渋谷シネクイント。2010年5月20日の21時20分上映回の前に行われたトークショーです。興味ない方が多数かと思いますが、少々おつきあい下さい。


【ここからトークショー】
木原: ランデブーの中で船頭役をやった木原です。
尾崎: 木原さんは怪談・新耳袋の小説を書かれていて、新耳袋トークライブに
     客として参加したのが出会いです。
木原: 元々映画が好きなので、尾崎さんには前から映画やるなら出して欲しいと
     言ってました。僕の役って必要な役でしたよね?
尾崎: 元から居た役ですよ。何も言わないとプロデューサがエキストラに毛の生え
     た子を連れてくるので、それならと思って。
木原: 船頭になるために生まれてきたと言われました(笑)。ほぼ半日船の上で撮影
     したんですが、映画ではこんなもん(指をちょい開く)でした。監督は楽しそうでしたね?
尾崎: 映画において乗り物って大事です。この映画は車とか出ないし、映画的な乗り物を
     出したいと思ったらたまたま安く借りられたから、船にしました。
木原: 一番最初の作品に作家のすべてが詰まるとよく言いますが、初監督の尾崎さんは
     どこに「自分らしさ」が出てると思いますか?
尾崎: 一作目は「巻き込まれ型サスペンス」をやりたかったです。お金を掛けなくても
     そこそこ面白くなる
し、キュートな画を撮りたかったんです。
     脚本とかみてもあんまり全体が分からないから、キュートをキーワードにやってみようかなと。
     できたかどうかは映画を見てもらって、、、。
木原: ここがキュートだってポイントはありますか?
尾崎: 時間とお金に余裕があればもっと出来るけど、やってる間にそんな時間ないなって、、、。
     どれくらい出来てるかは見た人に判断してもらって、、、。
木原: 僕は携帯電話を取る時ですね。この音楽じゃないと拾わないなって。
尾崎: 音楽の川井さんには「とにかくピチカートで」って言ったんで。
木原: この映画を見に来てるんだから皆さん映画好きだと思うんですが、観客にとっては
     「私はコレを持って帰る」ってものを発見するのが映画の楽しみだと思います。
     この映画を見ていろいろ発見があったんです。みんな昭和を知らない世代の中で、
     川野君だけが昭和の香りですよね。彼の背負ってるものっていうのが一番興味があります。
     この子がやってることは僕らの焼き直しのようで、
     今の子に無いひたむきさがあって美しかった。
部屋の中の物には嘘をついて無いって感じがね。
尾崎: 川野君の役は30代のオッサンでも成立するんですよね。でもキュートな映画のためには
     若い子の方が良いかと思って。リアリティが無くなるリスクはあるけど、面白いでしょう。
木原: 僕もこの役はこの年齢で良いのかって思ってたけど、見てる内に「いいんだ」って思えてきました。
     お客さんを騙そうとおもって作ったものに自分が騙されてるみたいな「やっちまった」感じがすごい伝わった。
尾崎: ストーリーを追っていくという意味ではエンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。
     後は映画のタッチがどう転がっていくかで、、、。
木原: 映画を見終わった後なら二時間は監督を離さないですよ(笑)。プラモデルが好きな人が
     金型師にはなかなかならないんですが、映画が好きな人が映画の撮り手になることは良くあります。
     映画って長い長い夢の残存率があるのかな。尾崎さんのプロフィールを見ると
     疑問が湧くんですが、これだけテレビの脚本を書いてる人が何故今映画なんですか?
尾崎: たまたまですよ。たまたま脚本家として知名度があったんで、
     映画撮りたいって言ったらプロデューサに良いよって。時期はたまたまです。
木原: この映画は前から撮ろうと思ってました?
尾崎: いや。映画を作るって決まってから「キュート」って決めて考えました。
     予算が少ない中で何をやるかっていう選択で、パッとキュートって思いついたんです。
木原: ランデブーってあんまり使わないですよね?
尾崎: 最近は言わないね。昭和(笑)。
木原: 地道に日常が重なっていって巻き込まれる。スタジオジブリの初期に宮崎がよく
     「映画をつくるなら巻き込まれ型だ」って言ってました。
尾崎: テレビって介入型が多いから、映画ではそうじゃないことをやりたかった。
木原: 介入型って簡単ですもんね。「俺はこういう職業だ」って言えばそれでいいから。
尾崎: そろそろ時間だからまとめろって言われた(笑)。
木原: はい、では(笑)。今回は尾崎さんに巻き込まれて映画に関わったんで、
     今度は僕が関わる作品に尾崎さんを巻き込みます(笑)。
【ここまでトークショー】


本編:私の怒りを聞いてけれ。

え~皆さん上記のトークショーの内容をお読みいただけましたでしょうか? 完全に客観的なメモなので、誤訳・意訳は戸田奈津子さんより少ないと思います(笑)。
で、ですね。まずトークショーから伝わってくるのは、作品への自信のなさとエンタメを舐めきった姿勢です(苦笑)。「この作品は予算も時間も無かったから微妙かも」「見た人が判断してね」っていうのを繰り返してます。この辺りはきちんと自分の作品の酷さを自覚している正常な判断です。ところが、、、、どうしてもスルー出来ないことを言ってます。
「エンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。」
あのさ、、、、退屈しないエンターテイメントってすっごいハードル高いの分かってますか? ハッキリ言いますが、こちとら上映開始5秒後から退屈しっぱなしですよ(笑)!!!
まず、この作品は台詞回しが酷すぎます。全員が独り言を大声でつぶやいてるんですよ。会話シーンなのに会話になってないんです。「機能的な台詞」と言いましょうか、「物語を伝えるために必要な事柄を説明するためだけの台詞」しか出てきません。例えば友達と会話してるシーンでもまったく親しそうに見えません。それは互いに物語の要請からくる言葉しか発しないからです。尾崎さんの本業は脚本家なわけですから、台詞回しなんて最も得意じゃなきゃいけません。この時点ですごい「あれっ?」って感じがし始めました。まだ上映開始から40秒ぐらいです(笑)。
次に、この作品の演出の問題です。要は全部テレビのメソッドなんです。顔のどアップばっかりのカメラフレームや、最低限しかない舞台装置。そして日常世界から確実に浮いた「常識のずれた世界観」。全てがテレビ演出の方法です。映画を撮る以上は映画の文法を使って下さい。タイトルの出方や、そこから地下鉄シーンで流れるオープニングのクレジットダイアログなど、完全に舐め腐ってます。尾崎さんは2時間ドラマが撮りたかったの?
そして音楽のだささも気になります。これは年初の「板尾創路の脱獄王」でもありましたが、明るめなMIDIの打ち込みを暗いトーンの場面で流すってすっごいしょぼくてダサいです。ちなみにこれは川井さんの責任では無いと思います。すくなくとも彼の劇盤をやってらっしゃる他作品は良い音楽を作ってますし、あくまでもオーダーの問題です。
最後に、コレが根幹なんですが、「話の組み立て」がグダグダですしそもそも「巻き込まれ型」になってません。この話はめぐるが携帯電話を拾う所から始まります。でも、彼女にはその携帯を警察に渡すという選択肢もありましたし、そもそも道端に捨てる選択肢もあります。彼女が本当に追い詰められるのは、後楽園遊園地で名前がバレた瞬間だけです。あとは全て自分から巻き込まれに行っています(笑)。だから見ている間中、めぐるがキ○ガイにしか見えません。っていうかワールドクラスのバカ。彼女は、自分で判断したり自分で行動を起こさないため、まったくどうでも良いキャラクターなんです。感情移入がまったくできません。
これ以外の細かい所も本当に酷く、すべてがコメディ風のファンシーイメージで覆い尽くされて粗だらけです。
一応書いておきますと、これらのダメポイントは予算や時間の問題ではなく監督のセンスの問題です。だから事は簡単で、要は尾崎さんは映画にはむいてないってだけですよ。っていうか監督がむいてません。いろんな要素を統括して作品を作る能力の問題です。

【まとめ】

これですね、ちょっと扱いに困る作品なんです。というのも「良い所」が本当に1カ所もないため、やろうと思えば全場面の全台詞に突っ込みが入れられます。そして監督の映画を舐めた姿勢。この怒りをどうすればいいんでしょう(苦笑)。とりあえずですね、もし1800円をドブに捨ててもいい方は一度見てみて下さい。ある意味すごい実験映画だと思います。「見た人が判断して」という尾崎監督のお言葉に次の言葉をお返しいたします。
く・そ・え・い・が・!

[スポンサーリンク]
記事の評価
ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を狙え~

ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を狙え~

本日は

ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を狙え~」を見てきました。

評価:(15/100点) – も、盛り上がらない、、、。


【あらすじ】

ベテラン泥棒キース・リプリーは、殺された相方のビクター・コロレンコの代わりに若いガブリエルをスカウトする。二人はロマノフ王朝最後の秘宝にして4000万ドルの価値がある二対の装飾卵を盗み出す計画を立てる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ガブリエルがスカウトされる。
 ※第1ターニングポイント -> 警官慰労パーティーに紛れ込む。
第2幕 -> 卵の略奪計画。
 ※第2ターニングポイント -> 卵を手に入れる。
第3幕 -> 終幕。どんでん返しいっぱい。


[スポンサーリンク]

【感想】

本日は「ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を狙え~」です。レイトショーでしたが、お客さんが10人ぐらいは入っていました。全然宣伝していない作品としては結構盛況です。
本作品は、アメリカとイギリスで昨年発売されたビデオ映画です。昔のVシネマみたいなやつです。低予算なので、1.5流ぐらいのギャラの有名スターを看板にして、お話で勝負するようなタイプの作品です。監督は久々に聞くミミ・レダー。ディープ・インパクトで有名ですが、2000年のペイ・フォワード以降はテレビドラマの脚本をずっとやっていました。本作も制作されたのは2007年ですが、二年間お蔵入りしていました。お蔵入りの理由は見るとよく分かります(笑)。駄目だこりゃ。

本作のディティール

え~本作のデティールは超適当です。それも「パリより愛をこめて」のような「頭悪っ(笑)」って感じの適当さではなく、下手に真面目にやろうとしている分だけ救いようが無い感じです。二幕の終わりまでは、二人のデコボコ・コンビが強盗するだけの話でそれなりにお色気もあったりして何とか耐えられるのですが、三幕に移りますと怒濤の後出しジャンケン祭りが始まります。「実はこの人はこうだったのだ!」みたいなのが山ほど出てくるんですが、完全に後出しジャンケンで、話が矛盾しまくって収拾がつかなくなってしまいます(苦笑)。
おそらくコレに一番近い感覚は「ワイルド・シングス」です。あの過剰な後出しの連続で、もうどうでもよくなっていく感覚(笑)。伏線も何も無いのに、どんでん返しっぽい演出を重ねて無理矢理勢いをつけようとする感じがまさしく「ビデオ映画」のテイストですっごいテンションが下がります(笑)。
面白いとか面白くないとか以前に、盛り上がりません(苦笑)。いや、つまんないんですけどね。

【まとめ】

なんといいましょうか、、、モーガン・フリーマンの無駄使いです。アントニオ・バンデラスもアルモドバル時代の繊細さがゼロで「イメージとしてのヒスパニック系色男」以上のキャラではありません。これは何というか、、、蔵に突っ込んで見なかったことにした方が良かった気がします(苦笑)。
褒めるところがあるとすれば、唯一、ラデ・シェルベッジアの存在感だけが良かったです。今年公開のハリーポッター最終作にも出ますので期待大です。
ということで、ちょっとオススメしづらいかな、、、という微妙な作品でした。あとコレは本当に腰を抜かしたのですが、2010年にもなって劇場の大音響でt.A.T.uは無理(笑)。いまでも残っているのなら、t.A.T.uファンには超オススメです!!!

[スポンサーリンク]
記事の評価
パリより愛をこめて

パリより愛をこめて

今日は一本です。

ピエール・モレルの「パリより愛をこめて」を観てみました。

評価:(75/100点) – ストーリー? 何ですか、それ?(笑)


【あらすじ】

ジェームズ・リースはCIAの見習いとしての顔を持つ、優秀な在仏アメリカ大使補佐官である。ある日、彼はCIAから麻薬捜査で送り込まれた来たパートナーのワックスと出会う。ワックスはそのはちゃめちゃで強引な捜査方法でリースを振り回していくが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> リースの仕事風景
 ※第1ターニングポイント -> リースがワックスと出会う。
第2幕 -> 対麻薬組織の捜査
 ※第2ターニングポイント -> ワックスがアジトを壊滅させ、資料を提出する。
第3幕 -> 結末。


[スポンサーリンク]

【感想】

本日は1本。ヨーロッパ・コープ期待のピエール・モレル監督の「パリより愛をこめて」です。昨年の「96時間」がかなり分かりやすい勢い重視のアホ・アクション映画だったため、本作もかなりの期待を持っていました。昼の回でしたが観客も5割ぐらい入っていまして、アクション映画にしてはそこそこ盛況でした。
本作を一言で言ってしまうと、「いつものヨーロッパ・コープの大味アクション映画」です。しかしやはりそこはピエール・モレル。とても早いテンポでサクサク進むため、いわゆる間延びとか飽きるといったことはありません。爽快感という意味ではかなりのものがあります。その時点で細かい事を気にしなければ全く問題ありません(笑)。ドッカーン!! チュドーン!!! エンドロール。
なので、勢いに乗ったもん勝ちです。
ところが、やはりそこはリュック・ベッソン。まったく期待を裏切らない超B級で超適当な脚本が全開です(笑)。
ヨーロッパ・コープのお約束としてマフィアはみんな中国・中東系ですし、敵は目的不明のテロリストです。たぶん映画を見終わった方が真っ先にひっかかると思うんですが、そもそも敵の新興宗教っぽい奴らが何をしたいかさっぱり分からないんです。っていうか構成員が二人しか出て来ないので、団体自体がよく分かりません(笑)。まさか教祖と唯一の信者って事は無いと思うのですが、にしても雑過ぎます。早い話が、ストーリーなんてどうでもいいんです。本作でやりたいのは、格好良い超人・ジョン=トラボルタとへたれなジョナサン・リース・マイヤーズのホモ・ソーシャル的なバディ感だけです。だから脚本はものっすごい適当です(笑)。
実際に、肝心のジョン・トラボルタはメチャクチャ格好良いです。まぁ「サイエントロジー信者のトラボルタを使って敵が新興宗教ってマズくないかい?」とかちょっと思うんですがOK、OK。
一応指摘をしておけば、本作の「From Paris with Love」というタイトルは100%間違いなく007映画の二作目、「From Russia with Love」を意識しています。「ロシアより愛をこめて」は、冷戦下のロシアにおいてジェームズ・ボンドにスパイとして送り込まれたタチアナが、本気でボンドに恋をしてしまい愛国心と恋との間で揺れ動くというアクション・ラブストーリーです。未だに私は007シリーズの中で一番好きだったりしますし、ボンドガールではダニエラ・ビアンキが一番好きです。では本作はどうかと言いますと、プロット自体は違うものの、やはり恋と忠誠心で揺れ動く女性と言う意味では「ロシアより愛をこめて」を意識したテーマ設定になっています。ところが、、、やっぱり「ヨーロッパ・コープが作るとこうなる!」っていうぐらい大味であっさりとしています(笑)。全然いいんじゃないでしょうか? 本作ではどうしても恋愛部分よりもバディ・ムービーとしての要素が強く出ているため、正直な所あんまりラストはどうでもいいような気がします。あくまでも「男向けの爽快アクション映画なんで美女も出しときました」って感じの適当さでサクサクと進んで行きます(笑)。
ちなみにやはりリュック・ベッソンなので、ボンクラギャグも忘れていません。リースがスタートレック好きと分かったときのやりとり、「おまえスポックが好きなのか?」「いやウフーラだよ。」というジョン・トラボルタのゲイ疑惑を利用したメタ・ギャグは声出すギリギリで笑いました(笑)。こういう無駄なギャグを入れてくるのが、ベッソンのB級作家としての目配せです。やっぱ駄目だこの人(笑)。
余談ですが、横浜ブルグ13でワーナーブラザーズの方が鑑賞後アンケートを採っていました。アンケートの質問内容がすっごい適当で心配だったんですが、私はハッキリと断言します。ヨーロッパ・コープのアクション映画で大ヒットを狙うなら、きちんとB級であることを受け入れた上で「話は適当ですよ。でも楽しさは無類です!」という流れで宣伝するべきだと思います。だって良作のハリウッド大作だと思って変にハードル上がってたら、たぶんがっかりします(苦笑)。そうじゃない!!! 特に本作は重低音と銃声で100分間テンションを上げまくってくれる栄養ドリンクみたいな映画です。鑑賞後には爽快感以外は何にも残りません(笑)。でもそれをこそ見に行くんだから、おしゃれ押しなんて要らないと思うんです。

【まとめ】

本作は、頭をカラッポにしてみる勢い重視のバカ・アクション映画です(笑)。おそらく会社帰りでちょっと疲れていて軽くお酒が入っていれば超楽しめると思います。わりとポスターがおしゃれ系でまとめていますが、騙されてはいけません(笑)!!!
いつものヨーロッパ・コープが好きな方なら間違いなくど真ん中で楽しめますので、是非是非劇場でご覧下さい。
あ、鑑賞時にはポップ・コーンをお忘れなく(笑)。

[スポンサーリンク]
記事の評価
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を (原題:復仇)

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を (原題:復仇)

2本目は

「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を (原題:復仇)」です。

評価:(90/100点) – 漢たちの熱く切ない友情物語


【あらすじ】

マフィアの襲撃を受けて娘が重傷となり孫と娘婿を亡くしたコステロは、娘から犯人がトリオであることを聞き復讐を誓う。たまたま出会った三人組の殺し屋に、コステロは娘の仇の捜索と復讐の手伝いを持ちかける。報酬はわずかな金と腕時計とパリにある自分のレストラン。承諾した三人組とコステロは、いつしか友情にも似た連帯を見せていく。しかしコステロの頭部にはかつて受けた銃弾が残っており、徐々に記憶を失っていく運命であった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> コステロの娘家族が襲われる。
 ※第1ターニングポイント -> コステロがクワイ・チュウ・フェイロクを雇う。
第2幕 -> 実行犯の殺害と、黒幕の判明。
 ※第2ターニングポイント -> 三人が殺される。
第3幕 -> コステロの復讐。


[スポンサーリンク]

【感想】

本日の二本目は香港ノワールの巨匠にして00年代を代表する世界的監督・ジョニー・トーの「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」です。ジョニー・トーの映画は日本ではビデオスルーが多く不遇なのですが、今回はそこそこの公開規模ではありますので、まずは素直にファントムフィルムに感謝いたします。あ、ちなみに私は叶井俊太郎が大嫌いなんで、やっぱ感謝撤回(苦笑)。夜の回でしたが、観客は10人ぐらいでした。あまり宣伝していない作品としてはこんなもんだと思います。
3月の大阪アジアン映画祭で来日したジョニー・トーが「なんで日本ではこんなに長いタイトルなんだ? 香港では2文字だぞ。」と怒ってらしたので、監督の意向を受けまして私は以後原題どおりに「復仇」とよばせていただきます(笑)。っていうか、「復仇」って日本語でも普通に使いますし、、、配給会社の宣伝担当は知らなかったんでしょうか? そもそも本作で「約束の銃弾」を撃つのは「冷たい雨」の中じゃないんですけど(笑)。こういうセンスの無い邦題は本当に酷いです。100歩譲って、英語タイトルの「ヴェンジェンス」か「復讐」です。
さてここからが本題ですが、やはりジョニー・トーと言いますと、「男達の熱い友情」「これでもかと乱れ飛ぶ弾丸」、そして「不思議な舞台を使っためずらしいガン・アクション」が特徴です。その意味ですと、本作はフランスとの合作ながら、間違いなくジョニー・トー印の香港ノワール映画です。
なんといっても、殺し屋三人組が魅力的すぎます。
・冷静沈着なクワイ。
・生真面目な相方のチュウ。
・食いしん坊のコメディキャラ・フェイロク
三人とも香港ノワール映画の常連でベテランですが、この三人が本当にすばらしいトリオっぷりを見せてくれます。そして人種的にもチーム的にも異物であるコステロがスパゲティを一緒に食べることで完全に仲間となるシーンも素晴らしすぎます。やっぱりね、漢(おとこ)は一宿一飯ですよ(笑)。
そして肝心のタイトルにもなっている復讐です。特にコステロが記憶をなくしてからの展開は男泣き必至です。「彼は覚えていないかも知れないが、俺は約束した。」という名セリフとともに死地に赴くクワイは格好よすぎですし、その意志を受けるコステロの祈りのシーンも秀逸です。余談ですが、祈りのシーンで娘さんがでてきますので彼女はフランスに移送された後でおそらく死んでしまっています。このコステロの祈りからはもう完全に涙腺決壊です(笑)。
結局、記憶を無くした彼は娘家族のためではなく三人の友のために復讐をするわけです。まさに女子供は立ち入り禁止の世界(笑)。
ただただ、悲壮さを叩き付けてくる展開を見ながらさめざめするしかありませんでした。ヤバイっす。相当ヤバイっす。

【まとめ】

本作のすばらしさを説明しようとするとどうしても細部にいってしまいますので、あまり書けないもどかしさがあります。
ただ確信を持って言えるのは、この映画は絶対に劇場の大スクリーンで見ておくべきだって事です。
銃弾が飛び交って、マフィアが殺し合いをしていて、でもその中に確かな優しい人間ドラマが入ってるんです。これぞフィルム・ノワールの醍醐味。是非劇場でご覧下さい。

[スポンサーリンク]
記事の評価
書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

例によって土曜は二本です。一本目は

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。

評価:(55/100点) – ベタベタな青春映画。


【あらすじ】

愛媛県は四国中央市。紙産業が盛んな街だったが、商店街は寂れ相次ぐ閉店・倒産に見舞われていた。そんな中、三島高校に臨時教師として赴任してきた池澤先生は、書道部の顧問として書道パフォーマンスでの勧誘を行ってみせる。音楽を掛けながら大きな筆で大きな半紙に書くスタイルに、部長の里子は戸惑いを隠せないが、一方で清美はその姿に惚れ込んでしまう。清美は父の好永文具店の閉店記念に、部員みんなでの書道パフォーマンスを企画するが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 書道部の日常と池澤先生の赴任。
 ※第1ターニングポイント -> 池澤先生が書道パフォーマンスを披露する
第2幕 -> 書道パフォーマンスの練習。そして清美の転校。
 ※第2ターニングポイント -> 美央が書道部に復帰する
第3幕 -> 書道パフォーマンス甲子園


[スポンサーリンク]

【感想】

本日の1本目は「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。TV局映画だからか観客はかなり入っていました。客層もお年寄り夫婦からカップルから子連れまで幅広く、週末の興業ランクでは上位にくるかも知れません。
話の内容はこれ以上ないほどシンプルです。「真面目でぶっきらぼうな努力家」「陽気なムードメイカー」「変わりもの」「おとなしいミステリアスな美少女」「訳ありで部を離れた天才」と超類型的なキャラクター達による青春スポ根映画です(笑)。書道はスポーツじゃないと思ったそこのアナタ! 甘いですよ(苦笑)。本作では書道は完全にスポーツとして扱われます。大事なのは仲間とのチームワーク、そして強靱な足腰。特訓は走り込みと千本ノック的な反復練習。完全にスポ根です。
でまぁ結論を言ってしまうとですね、青春映画としては平均的な出来ですが、肝心の書道があんまり関係無いんです(笑)。せっかく里子の父親が厳しい書道家で「書道パフォーマンス」なる遊びに否定的なのに、里子自身に全然葛藤がないんです。多分この映画を見て「書道パフォーマンス」に興味がでた方はいるかも知れませんが、「書道ならではの楽しさ」が分かった人はあんまり居ないと思います。実際には「書き手の心が字に表れる」所が面白いわけですが、その喜びなり楽しさは表現されていません。だからせっかく本物を連れてきて書道パフォーマンス甲子園の本番を描いたのに、どこが優勝したかを言わないという酷い事になっています。本来なら「一番思いを込めて書いたチームが一番素晴らしい字を書いた」という所に着地しないといけないんですが、、、これもやはり実在の参加校への配慮でしょうか? この部分については、同じ成海璃子さん主演の武士道シックスティーンの方がきちんと描けていました。
とはいえ、 山下リオ、桜庭ななみ、小島藤子というアイドル・テンコ盛りの映画として見ることは十分にできますし、あまりにベタ過ぎてダサイっていう以外はそこそこ楽しめる作品ではあります。ぶっちゃけ病院のシーンで泣いちゃいましたし。
顔に墨汁が飛んで変な顔になるというギャグをしつこく重ねてくるのには正直辟易しましたが、この際桜庭ななみに免じて大丈夫です(苦笑)。
でもせっかくなのだから、エピローグとして「書道パフォーマンスの結果、商店街が活気づいた」ぐらいの描写は見せて欲しかったです。この作品では町興しのために書道パフォーマンス甲子園を開いて頑張ったわけですから、その結果が「池澤先生が書道の楽しさを思い出す」「池澤先生と部員達の信頼関係」っていうのはちょっと違うかなと思い引っかかりました。美央の件にしても、商店街の不況のことにしても、本作では全然解決していないんです。な~んかヨサ気な感じで流れてっちゃった印象ですが、本当に良いんでしょうか? 結構重たい話だと思うんですけど、、、。

【まとめ】

青春映画の佳作として、どなたでも安心してポップコーンを食べながら見れます(笑)。そこまで絶賛するほど出来は良くないですが、なんか今月は変な映画ばっかりだったので感覚的には大当たりです(笑)。
シネコンでの公開ですので、もしお暇な方はフラっと入って見ると良いかも知れません。意外と拾いものでした。

[スポンサーリンク]
記事の評価
グリーン・ゾーン

グリーン・ゾーン

金曜のレイトショーでは

「グリーン・ゾーン」を観ました。

評価:(45/100点) – バカ・アクション映画にしとけばいいのに、、、。


【あらすじ】

ロイ・ミラー上級准尉が率いるMET隊は、WDM(大量破壊兵器)の捜索を続けていた。しかし上官から指示を出された場所はどこもスカばかり。次第にイライラが募っていたミラーは、ある日イラク民間人からの情報を信じ、不審な屋敷に独断で踏み込んでしまう。そこにはフセインの側近・アル・ラウィ将軍が潜んでいた。ミラーは取り押さえた男から秘密の手帳を没収するが、何故かすぐに特殊部隊が現れて捕虜を連行してしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ミラーがWMDの捜索を行う。
 ※第1ターニングポイント -> アル・ラウィの手下から手帳を手に入れる。
第2幕 -> CIAに転籍してのアル・ラウィ捜索。
 ※第2ターニングポイント -> ミラーがマゼランの正体に気付く。
第3幕 -> ミラーとアル・ラウィとの接触。


[スポンサーリンク]

【感想】

金曜はレイトショーで「グリーン・ゾーン」を見てきました。監督はポール・グリーングラス、主演がマット・デイモンということで、ボーン・シリーズのコンビが再びという期待が真っ先に立ちます。やはりその期待感からか、レイトショーながら8割強は入っていたでしょうか?

本作の構成要素

ボーンシリーズの監督ということで当然のようにテンポの速いアクション映画が期待されるわけですが、本作はその点で大変微妙な事になっています。というのも、(これはハート・ロッカーにも通じますが、)どうしても現在進行形のイラク戦争を題材にしている時点でリアリティとか臨場感といったものを重視せざるを得なくなってしまいます。なので、本作では終始手持ちカメラでグラグラした気持ちワル~い映像を見せられ続けます。これによって、トランスフォーマー現象といいますか、位置関係がさっぱり分からず緊張感が激減してしまいます。結局、劇中で起きてることがどのくらいの距離感で、どのくらい切迫しているかがわからんのです。
そして、そのカメラ以上にノイズになるのが、本作のかなり適当な政治主張です。本作は、イラク戦争の発端となった「イラクのWDM保持疑惑」に対して「そんなものは最初から無い」という仮定のもとで陰謀論を展開し、それを正義のヒーローであるミラーが独断で追うという流れです。この「陰謀論をヒーローが追う」というのはサスペンスの王道なのでまったく問題ではありません。しかしですね、、、やはりまだまだ後片付けの最中であるイラク戦争を題材にするにはイマイチ吹っ切りが足りなかったように思います。
極端な話、個人的にはアクション映画なんだから政治主張なんかは適当でも良いと思います。しかし、どうしてもこういう記憶に新しい舞台を使ってしまうと、その政治スタンスを表現せざるを得なくなる気持ちも分かります。
例えば「ハート・ロッカー」は、ぶっちゃけキャスリン・ビグローの男の趣味丸出しの腐女子映画なわけですよ。だけどイラク戦争を舞台にする以上、そこには「イラク戦争は全部ブッシュが悪い。今のアメリカ軍はそのブッシュの尻ぬぐいをしているのだからもっと評価しても良い。」という主張が入ってきてしまいます。
では本作はというと、「イラク戦争の発端はアメリカが国策として難癖つけたんでしょ? 戦争終結宣言したからって喜ぶのは良いけどお先真っ暗だよ? アメリカが信用を落としてるの理解してる?」というアメリカ的にはド左翼のスタンスなわけです。
個人的にはこの主張に賛成なんですが、でもそれをイラク戦争を舞台にしたドキュメンタリー風フィクション映画でやっちゃうのはマズイと思うんです。劇場を出たときに男子学生二人組が「意味わかんなかった。」「でもアメリカってやっぱ酷くね?」みたいな話をしていてビックリしたんですが、リテラシーが無いと本気でこういった事があったと信じちゃう人も居るっていうのは凄い微妙だと思います。
本作の途中ではマスコミ批判も出ます。きちんと情報の裏付けをしないまま適当に書いた記者達も戦争幇助だろという批判です。この記者自体はモデルになった実在の人物がいますが、でも一方でこの映画自体が情報の裏付けが無い架空の話なわけで、政治的主張を架空の話にのせて表明するというのは、劇中の記者もこの映画の作り手も一緒なんです。だから特にラスト付近でミラーが記者やら国防総省のエリートやらに政治主義的な説教をするシーンになるとシラけちゃうんです。
アクション映画としても微妙だし、サスペンスとしても微妙だし、政治主張の表明の仕方もブサイク。
良さそうな断片だけは随所にあるだけに、もったいない作品でした。

【まとめ】

とても微妙な位置の微妙な映画です。爽快感はほとんどないですし、謎解き的な要素もありません。っていうか開始30分ぐらいでマゼランの正体はバレバレなわけで、、、そこでサスペンス構造にされてもちょっと、、、。根本的に一軍人であるミラーが自由に独断専行しまくる時点で脚本は相当適当です(笑)。
あと、これだけは絶対指摘しないといけません。
本作の戸田奈津子の字幕はいつにもまして酷いです。
本作ではなんども”繰り返し台詞”が出てくるんですね。30分くらい前のやりとりを受けて、おなじ文法・やりとりで逆の事を言ったりという重ね芸です。そういった場面で訳を統一できていないので、それが皮肉やギャグになってるっていう事が分かりません。
そして極めつけは「ブラボー・ワン小隊(B-1 小隊)」を「V-1隊(ヴィクトリー・ワン)」と訳すその糞っぷり。部隊名が変わってるから、それ(笑)。アルファ隊も「α隊」って訳してるけど、それ「A隊」だから。無線だからAのことをアルファって読んでるだけだし、、、。「メット・デルタ」だって「MET-D」なのに「MET-Delta」って訳してますしね。
NATOフォネティックコードなんて戦争映画なら必ずでてくるし現実社会でもNTTと会話するときはたまに使いますけど、戸田奈津子にはそんな常識は通じなかったみたいです(笑)。恐るべし「なっち語」(苦笑)。
ということで、正直なところ、マット・デイモンのファン以外にはあまりオススメできません。逆にいうと、マット・デイモンは結構活躍しますので、彼のファンなら満足できるのでは無いでしょうか?

[スポンサーリンク]
記事の評価