七瀬ふたたび

七瀬ふたたび

今日は注目作二本です。1本目は

七瀬ふたたび」を見ました。

評価:(80/100点) – ラストの賛否が分かれそうだが、これはこれで。


【あらすじ】

火田七瀬は他人の心の中を読むテレパスである。七瀬はマカオからの帰りに空港で狙撃される。さらにホテルで岩淵からのコンタクトを受けた七瀬は、忠告に従って行動するも、友人の瑠璃を目の前で謎の男に殺されてしまう。命からがら北海道の隠れ家に戻った七瀬だったが、そこにも追っ手が迫ってきていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 七瀬と瑠璃。
 ※第1ターニングポイント -> 瑠璃が殺される。
第2幕 -> 隠れ家での生活と追っ手。
 ※第2ターニングポイント -> ノリオが連れ去られる。
第3幕 -> 狩谷との対決。


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【感想】

本日の1本目は、ご存じ筒井康隆の七瀬三部作の二作目「七瀬ふたたび」です。中年男性を中心にそこそこお客さんは入っていました。どうせなら「家族八景」からやって欲しいのですが、三部作の中では一番派手でエンタメよりな本作は映像化しやすいということだと思います。「家族八景」を知らない人には何が「ふたたび」なのか分からない気もするんですが、まぁ「七瀬~」を見に来てる時点で「どうせ原作ファン」という割り切りでしょうか。
監督はホラー・特撮で有名な小中和哉さん。脚本は平成ガメラや劇場版のパトレイバーでお馴染みの伊藤和典さんです。二人ともその筋では完全な大御所でして、70年代SFの映画化にはこれ以上ない人選です。

おさらいと役者陣のハマりっぷり。

「七瀬ふたたび」は過去にも数回映像化されています。私はあいにくと多岐川裕美版(NHK少年ドラマ)と一昨年の蓮佛美沙子版(NHKドラマ8)しか見ていないのですが、どちらも原作からはかなり変えられていました。
一応三部作のおさらいです。一作目「家族八景」で七瀬は18歳にして家政婦として住み込みで働いています。そして色々な家庭を転々としながら、様々に「表面を取り繕った家族」達を観察していきます。ここで七瀬は人間の汚い部分を嫌と言うほど見ることになります。そして二作目の「七瀬ふたたび」で、嫌気がさした七瀬は家政婦を辞め、人目を避けて田舎へ行こうとします。その途中で自分と似たような超能力者達と出会いますが、謎の組織によって仲間もろとも殺されてしまいます。三作目の「エディプスの恋人」では何故か殺されたはずの七瀬は学校の事務のお姉さんとして登場します。そして謎の少年・智広と出会い、彼女は遂に超常的な存在へとなっていきます。
というように、この七瀬三部作は「表面的に取り繕った家族」→「超能力アクション」→「精神世界」と舞台をガラっと変えていくわけです。なんでこんなに全然違う話なのにシリーズになっているかと言えば、それはもう間違いなく「火田七瀬」という強烈なヒロインの魅力故に他なりません。
そして特に「七瀬ふたたび」を映像化するには、七瀬のカリスマ性と圧倒的な絶望/達観の表現が絶対に必要です。
もう長いこと愛されてきた原作シリーズですので、当然ファンの方々の中にはそれぞれの「七瀬像」が出来てしまっていると思います。「家族八景」が好きな人はおっちょこちょいでミーハーだけど気の強い彼女を想像するでしょうし、「七瀬ふたたび」が好きな人は苦悩するクールビューティーを想像するでしょう。こればっかりは古典である以上は仕方が無いです。
で、肝心の本作ですが、私は芦名星さんは相当はまっていると思いました。ちょっとタラコ唇で困った感じの顔だったり、印象が悪くならない程度に無愛想な感じがすごく七瀬の印象と合っていました。すごい良い感じです。「KING GAME」の時とは大違いw そして岩淵役の田中圭さんも不器用でヘタレな田舎者っぽさが上手く出ていました。岩淵の妄想を七瀬がのぞいてしまうシーンが無いのは噴飯ものですが、それが無くても「こいつムッツリスケベだぞ」という雰囲気が十二分にでていましたので合格ですw ノリオ役の今井悠貴くんはきちんと「ませガキ」に見えていましたし、刑事役の平泉さんも類型的ではありますがサスペンスものの刑事として十分好演していました。正直ダンテ・カーヴァーは演技以前の問題ですし、佐藤江梨子さんもちょっと役に対してギャルっぽい軽さが目立ちましたが、役者陣は概ね良い感じにハマっていました。

ストーリー部分の上手いまとめ方。

本作はかなり原作に忠実ですが、一方で変えるところは結構思い切って変えています。
一番変更して成功だと思うのは、超能力者達が集まる部分を回想で済ませてしまう所です。本作は原作そのままで映像化すると、仲間集めの課程が前半を占め、後半から組織との戦いになります。でも本作の場合、いきなり狙撃されるところから始まり、それをフックにして組織から逃げる部分が大半を占めます。この構成変更はかなり成功しているとおもいます。おかげで中だるみが少なく、高いテンションのままで最後まで突っ走ることが出来ます。そのぶん七瀬と岩淵の関係がかなりばっさりと省略されているのですが、本作だけを見ればそこが「超能力者ゆえの一瞬の邂逅・同調」という「アムロとララァ」に通じるような話に見えますので、それはそれでOKです。
ただ、、、、ただ、、、やはり賛否が分かれそうなのはラストの扱いだと思います。原作ファンにとっては蛇足ともとられかねないラスト5分の展開は、どうにも陳腐に見えてしまいます。ですがニコラス・ケイジの「NEXT」ほど唐突な感じではなく、きっちり伏線を張ってはいますから映画単体としてみればこれはこれで良いかなとは思います。ただ、この展開にすると当然「エディプスの恋人」は同一キャストで映画化出来ません。そこがちょっと引っ掛かるというか、もっと芦名星の七瀬を見たかったというのが率直な感想です。それぐらいハマリ役だったのに、、、。
それとこれはもう邦画のお約束ですが、やっぱり本作もCGがショボイ事になっています。特に七瀬が空を飛ぶシーンのなんともいえない合成感はかなりキテます。とはいえ原作が古いので、これも80年代風のブルーバック合成だと思えばそこまで引っかかりはしません。ちょっと好意的に見すぎでしょうかw
また同じCGを使った場面でも、七瀬が心を読むシーンの表現は結構上手く乗り切ったと思います。

【まとめ】

原作が好きすぎて甘くなっている部分も多々ありますが、かなり良い作品だったと思います。細かい粗はあるものの、それを気にする暇もないくらいテンション高く畳みかけてきますので、それほど気にはなりません。十分にオススメできる作品だと思います。
一応、本編前に流れる中川翔子・初監督の短編にも触れておきましょう。カメラフレームが変な部分はあったのですが(とくに神社のシーン)、全体的には結構そつなくこなしたように思います。とはいえ、ポーカー中に心を読むシーンは「カイジ」ばりにダサい演出でした。こういう漫画的な感じが好きなのは凄く良くわかるのですが、これを見たときにすっごい本編が不安になったのも事実ですw にごり水に色水を垂らすイメージ映像など、ちょっと雰囲気だけの危ない方向に流れそうな傾向が見えましたので、もし次に監督をすることがあれば気を付けてもらえるともっとフェティッシュが全面にでてくるかなと思います。。

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パンドラム

パンドラム

今月の映画の日は

「パンドラム」を見てきました。

評価:(45/100点) – 変形の「ディセント」


【あらすじ】

西暦2174年。食糧問題と環境汚染が深刻化した人類は、外宇宙に遂に地球と瓜二つの惑星を発見する。タニスと名付けられた惑星に向かうための大規模な移民船・エリジウムが編成され、約6万人を冷凍睡眠にて運搬、わずか数名のフライトクルーが二年毎に交代勤務をすることになっていた。
ところがフライトチーム5のバウナー伍長が冷凍睡眠から目覚めると、融合炉は過放電を繰り返しており船内扉も開かない状態であった。彼は直後に目覚めたペイトン中尉と共に、船内の探索を行う、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> バウアーの目覚めと船内捜索。
 ※第1ターニングポイント -> バウアーが謎の生物に襲われる。
第2幕 -> 融合炉へと向かう冒険
 ※第2ターニングポイント -> リーランドとの出会い。
第3幕 -> 融合路の再起動と結末。


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【感想】

今日は一本、新作のSFホラー映画「パンドラム」を見てきました。1,000円ですから、ドマイナーなSFホラーにしてはかなりお客さんが入っていました。
アメリカ版のポスターでは思いっきり怪物が使われているんですが、日本版では何故かペイトン・バウアー・ナディアの3人がメインヴィジュアルになっておりホラー色が完全に抜かれています。ホラーは売れないという例の宣伝方針かもしれませんが、それをいったらコスプレSFも似たようなジャンルムービーなのにな、、、、とか思ったりして微妙な気分になりますw
端的に本作を表現しますと、これは宇宙船内で繰り広げられる「ディセント」です。ディセントに出てくる地底人やロードオブザリングに出てくるオークっぽい雰囲気の怪物がうじゃうじゃとバウアー達を襲ってきます。ただ本作の場合、人間と怪物の戦闘能力にはだいぶ開きがありまして、基本的には逃げ惑うしか対処法がありません。怪物達に追われながら、バウアー・ナディア・マンの3人が融合炉へと向かっていきます。
ハッキリ言いまして、ストーリー上の融合炉云々という根拠は限りなく薄いです。融合炉を再起動してブリッジに行けば全てOKというバウアーの理屈は最後まで良く分かりませんし、融合炉を再起動した後は話が明後日の方向にすっ飛んでいきます。「ザ・ホード」の時にもチョロっと書きましたが、第2ターニングポイントで昔から生き延びている「癖のある識者」に出会うというのはジャンルムービーのお約束です。最近では「プレデターズ」もこのフォーマットでローレンス・フィッシュバーンが登場しますし、「ゾンビランド」もビル・マーレイが出てきます。そして最後はきちんと特定の舞台からの脱出でおわります。こういったツボはきちんと押さえてきていますので、それほど駄目駄目という感じではありません。
しかし、怪物が襲ってくる頻度が少ないため緊張感が続かないことと、なによりアクション要素が少ないために生じる中だるみ感はかなりの物があります。そしてペイトンの行動原理・理屈が最後まで良く分かりません。一応説明があるにはあるんですが、あんまり関係ないというか直接的に「だからどう」っていう因果関係がないため、ちんぷんかんぷんです。その混乱も含めて強引に「パンドラム」という設定を使ってくるわけですが、さすがに説明になっていないので微妙な感じです。
また肝心の怪物についても「こうして生まれた」みたいな設定があるにはあるんですが、あんまり乗り切れないというか、そもそもギャロは何を食べて生きてたんだとかありまして、いまいち乗り切れません。
こういったモンスターホラーは嫌いではないのですが、あくまでもジャンルムービーとしての最低限のお約束だけ入れたという程度のものですので、そこまで褒めようもないかなぁというぐらいの印象です。SFだと思って見に行くと相当がっかりしますが、B級モンスターホラーを見に行くんだと思えばそれなりに楽しめると思います。オススメといえばオススメできなくもないですが、でも同じお約束重視なら「バイオハザード4」の方が良いと思います。
モンスターホラーが好きな方限定でオススメいたします。

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メッセージ そして、愛が残る

メッセージ そして、愛が残る

9月最後の映画は

メッセージ そして、愛が残る」です。

評価:(20/100点) – 予告編の前提がドンデン返しのネタバレという衝撃!


【あらすじ】

ネイサンは幼い頃、車に撥ねられ生死の縁を彷徨った。大人になったネイサンは弁護士となり、かつて病院を熱心に見舞ってくれたクレアと結婚し子供を二人持つが、長男を突然死で失ってしまう。それがきっかけで不仲となり離婚したネイサンの元に、謎の男・ケイが現れる。ケイは大学時代の知人のアンナの居所をネイサンに告げ、会いに行くよう勧める、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ネイサンと娘。
 ※第1ターニングポイント -> ネイサンの元にケイが現れる。
第2幕 -> ネイサンとアンナ
 ※第2ターニングポイント -> ネイサンがクレアの元に行く。
第3幕 -> ネイサンとクレアとトレイシー。


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【感想】

昨日は一本、「メッセージ そして、愛が残る」を見ました。レディースデイでしたので、かなりの数のOLで客席が埋まっていました。癒しを求める方の多さに驚きますw
最上段の通り、以下ネタバレが含まれていますのでご容赦ください。っていうか予告をネタバレ前提で作るなっていうツッコミなんですけどねw

いきなりですが、本作で一番のツッコミ所はその「ドンデン返しのネタバレが前提の予告が流れている」点ですw あまりの事に実は見ている間中、ずっと戸惑っていました。というのも、本作の劇場予告では「幼い頃事故にあって生死の境を彷徨ったネイサンは、他人の”死”が見えるようになった、、、。」って言ってるんですね。で、そこにネイサンとクレアが抱き合う映像がながれて「最後に残るのは愛、、、。」見たいなのが出てくるわけです。これを見ると当然「これは、人の死が見えてしまう男が、最愛の人の死を見てしまい悲しみに打ちひしがれながらも愛を貫こうとする話なのだ。」と思うわけです。当たり前ですよね。でも、コレがドンデン返しなんですw はいっ~!????

実際に本編を見てみると「他人の死が見える」のはマルコビッチ扮するケイで、まるでネイサンの死が近いような流れで話が進むんです。まぁ当然予告と違いますので「あれ???」って思いながら見るんですが、1時間20分くらいその流れなので段々と「これは昔よくあった予告詐欺か???」とか思い始めるわけです。で、衝撃のラスト10分を迎えますw いきなり「実は死ぬのは元嫁で、ネイサンはケイの後継者だったのだ!!!!」ってドンデン返しがあるわけです。でも見に来てる人はみんなその前提で来ているわけで(苦笑)、全然ドンデン返しではないというか、むしろ違う意味でショックを覚えますw そしてズッコケます。思わずアゴが外れました。

ストーリー自体は言うなれば「ものすごく甘ったるい”ファイナル・デスティネーション”」です。死ぬ運命にある人は何をやってもその運命からは逃れられず、偶然が積み重なって死んでしまいます。なので私、実はアンナが死ぬ感動の展開で思わず笑ってしまいそうになりましたw 笑いかけて「おっといけね。ホラー・コメディじゃなかった。」と思いとどまりましたが、それくらいB級感漂う愉快な設定です。

でも、そのB級感を徹底的にオシャレでイカした”ラブ・癒し空間”に取り込もうとしてくるため、そのギャップがかなり歪な事になっています。これは言ってみればケイとネイサンの「師弟もの」でもあるわけで、その師弟の修行シーンの一歩手前までを見せられるわけです。ですから必然的に盛り上がりには欠けます。だって本作で一番見せなければいけない「ネイサンが元嫁の死を受け入れ、乗り越え、メッセンジャーとして生きる決意をする」シーンがないんです。その一歩手前の寸止めで映画が終わってしまいます。結果として、成長物語未満の”成長の予兆・雰囲気”だけが残されます。
肝心なところが描かれていない本作は、決して出来の良い映画ではありません。予告で十分ですw。

もし気になっている方が居ましたら、レンタルDVDが出てからでも良いと思います。

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TSUNAMI -ツナミ-

TSUNAMI -ツナミ-

日曜日は一本、

「TSUNAMI -ツナミ-」を見ました。

評価:(12/100点) – 災害の意味が無い災害映画。


【あらすじ】

韓国のヘウンデで漁師をするマンシクは死んだ恩師の娘・ヨニの面倒を見ていた。バツイチ子持ちのマンシクに思いを寄せるヨニだったが、マンシクはなしのつぶて。やがて意を決したヨニはマンシクを父の墓参りに誘う。
一方、学者のキムは日本海で大規模な地震と津波が起こると予測し、対策を訴えていた。


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【感想】

日曜日は一本、韓国映画の「TSUNAMI -ツナミ-」を見ました。観客は中年女性を中心にそこそこ入っていました。コリアタウンの近くで見たので、現地の方かも知れません。週末成績を見ると興行的にはかなり失敗しているようです。
あんまり気合いが入らない感じのどうでもいい駄作だったので、要点だけざっと書きます。
本作はいわゆる「災害映画(ディザスタームービー)」のフォーマットからはかなり外れています。通常のフォーマットでは災害は第一ターニングポイントかミッドポイントで発生し、逃げ惑う人々とそこからの復興がストーリーのメインになります。
ところが、本作では災害は最後の最後、まさにクライマックスとして発生します。つまり、それまでは完全なネタフリです。70分くらいかけてラブストーリーやら離婚した男と娘の再会やらをネタフリして、そのすべてを災害によって洗い流すと言う形式になっています。
ところが、、、ここが本作の最大にしてもっともやらかしている所ですが、、、、本作の災害は「理不尽性」をあまり発揮しません。というのも、マンシクやヨニやオといった主要キャラは不死身の力でまったく危なげなく生き残るからです。このフォーマットでやるのであれば、徹底的にキャラに思い入れを持たせた上で、あっさり災害で殺さないといけません。そうしないと災害の持つ突発的で理不尽な特性は描写できないんです。
ところが本作では一般的なドラマのように、主人公達は主人公であるが故に生き残ります。それだと、たた単に災害が「ちょっとした盛り上がり」以上のものにはならないんです。ですから、本作は厳密な意味での災害映画ではありません。ラブストーリーのちょっとしたスパイスとして大津波がくるだけです。
実は本作を見ていて感じたのは、日本のテレビ屋映画的なセンスです。強引すぎるお涙頂戴で逆に引いてしまう感じですとか、あまりのご都合主義にテーマ自体が破綻してしまっている感じですとか、本当にそっくりです(苦笑)。恐ろしい事に、本作は韓国国内では観客動員1100万人の大ヒットみたいなんです。4人に1人は見ている計算なので日本でいえば興収300億レベル、つまり「タイタニック」や「千と千尋の神隠し」ぐらいの感覚です。ものすごい事になっています。人気俳優が出ているだけで内容の無い映画が宣伝力でヒットするっていうのも似ていますw
結論としては、これを見るくらいなら「The Last Message 海猿」を2Dで見るか、おとなしく「十三人の刺客」に行きましょう。
余談ですが、「超日本語吹替版」という言葉を使っておきながら「日本海」のことを「トンヘ」とか言う時点で配給会社のCJとパラマウントはまったく日本語で見せる気がありません。(2chネラーのニュー速民はともかく)普通は「トンヘ」って言って「日本海」だってすぐ分からないですから。こんなことなら例え韓国語が分からなくても僕らの永遠のアイドル翻訳家・なっちを使って欲しかったです。それならまだ笑えたかも知れません。
あと、12点中10点はこんな映画にまで顔を出すAKB48の商魂逞しさへのプレゼントです。なので実質2点でお願いしますw

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十三人の刺客

十三人の刺客

2本目は

「十三人の刺客」です。

評価:(96/100点) – お帰り、我らの三池崇史! 悪趣味節全開の18番暴力映画。


【あらすじ】

江戸の中期、暴君・松平斉韶によって世は乱れていた。江戸家老・間宮図書の命を掛けた嘆願をも無視する斉韶の暴虐ぶりに、老中・土井利位は暗殺を決意する。暗殺者に選ばれたのは御目付役の島田新左衛門。彼は御徒目付組頭・倉永左平太を参謀に迎え、十人の有志と共に暗殺計画を練っていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 斉韶の暴虐ぶり
 ※第1ターニングポイント -> 新左衛門が暗殺を引き受ける
第2幕 -> 仲間集めと暗殺計画。
 ※第2ターニングポイント -> 落合宿に斉韶一行が来る。
第3幕 -> 戦闘。


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【感想】

さてさて、土曜の2本目は大本命「十三人の刺客」です。意外というか当然というか、若めのキャストが出ている割には観客の年齢層はかなり高めでした。
最近はアニメやマンガの実写化ですっかり毒気が抜けて「滑るギャグの人」みたいな扱いになっている三池監督ですが、新作はクローズシリーズ以来のホームグラウンドである暴力映画です。オリジナルは1963年の工藤栄一監督作「十三人の刺客」。13人で50数人と戦う集団戦で有名になった作品です。
宣伝でも「ラスト50分の戦闘」をことさら強調しているように、本作の見所は間違いなくラストの落合宿での決戦です。いうなればそれまでの90分は前振りのようなものです。しかし、決してネタフリだけで終わっているわけではありません。限られた時間の中で13人中5人に絞ってキャラクターを描写していきますし、特に敵役・斉韶についてはこれ以上ない悪として三池印全開の演出を見せてくれます。もっとも、本作は監督が得意とした往年のVシネマでは無いですから、直接的な残酷描写はほとんどありません。その意味では非常にポップな描写になっていますので、心臓の弱い方でもご安心下さいw

本作の難点

今回は絶賛しますので、先に難点だけ片付けてしまいます。とはいえ本作の難点はあんまりありません。140分という長丁場を高いテンションのままで職人的にきっちり見せてくれます。
ただ、前半実質60分程度で刺客のキャラクターを見せなければいけないため、どうしても描写は足りなくなってしまいます。もちろん松方弘樹に説明は不要なんですが(笑)、やはり松方が最初に連れてくる5人がデブの大竹以外最後まで誰が誰やらさっぱり分かりません。なので、最後の豪快に散っていくシーンでもあんまり感慨が浮かびにくくなってしまいます。
もう一つは三池崇史お得意の悪ふざけです。特に最終盤に出てくるある苦笑の展開で、どこまで本気で見ていいか良く分からなくなってしまいます。
最後にCGのショボさです。落合宿での戦闘ではかなりCGが使われているのですが、背中に火の付いた牛だったり、崩れ落ちる家屋だったり、かなり合成感の強い浮いたCGになっています。去年のカムイ外伝よりはマシですが、どうしても気にはなってしまいます。特に本作の場合は実際に大がかりなセットを組み立てて撮影しているわけですから、そこはCGを使わなくても良かったのかなとは思います。とはいえ、この過剰なサービス精神が三池監督のモットーですので、それほど嫌いではありません。ただ作品のトーンからはずれてしまっているように感じます。

本作の最高な点

とまぁツッコミはこれぐらいにしてべた褒めにいきましょう。本作で何がすごいかと言えば当然ラストの殺陣のクオリティなわけです。本作ではどちらかというと集団戦というよりは一対多数の殺陣を複数箇所で同時に行うような形になっています。志士達の絡みはそれほどありません。なので、実はこれ時代劇の集団戦というよりは、コーエーのTVゲーム「無双」シリーズのフォーマットなんです。一人で雑魚相手なら何十人でも余裕で倒せる強い名前付きキャラが、バッサバッサとその他大勢をなぎ倒しつつ、ボスと護衛を目指して突き進んでいきます。なので、本来であれば前半のキャラクター描写があればあるほど面白く見えるシーンではあります。
前述のように、本作では13人のキャラクターを全員描く事を最初から捨て、そのかわり主要人物に絞ってエピソードを挟んでいきます。ここはかなり思い切っていまして、松方弘樹と伊原剛志に関しては俳優の佇まいだけで説明無用と割り切り、そこに準主役の新六郎、槍使いの佐原平蔵、野人・木賀小弥太、若手の小倉庄次郎に絞ってエピソードを入れてきます。ですので、実際には13人というよりは7人+おまけで6人といった体裁になっています。
この殺陣につきましては、本当に素晴らしいです。特に松方弘樹。もう名人芸というか職人芸というか、松方さんのシーンは見ている間中テンションが上がりっぱなしでした。とにかく目線や歩き方一つでそのキャラクターの体力や精神の状況が一発で分かるんです。そして貫禄溢れる流れるような太刀捌き。本当に感動いたしました。斉韶を追い詰めるシーンの松方さんでちょっと涙出ましたもの。
そして刀の墓場での伊原剛志の見事な八相の構えからの二刀流。伊原さんと言えばご存じ千葉真一の門下でJACに所属、影の軍団シリーズの後半で二刀鎌の使い手・善九を演じていたわけですが、まさに当時を彷彿とさせるような二刀捌きでした。感涙です。
この”動ける2人”を筆頭に、山田孝之や伊勢谷友介も細かいカメラワークでのごまかしはあるものの、素晴らしいクオリティのアクションを披露してくれました。どれぐらい素晴らしいかと言いますと、主役の役所広司が一番もっさり見えたくらいのクオリティですw もちろん私も「三匹が斬る」は小学生の時から見ている大好きなシリーズなので、役所さんの示現流も大好物なんですが、今回はアクションシーンが少なく、良くも悪くも性格俳優的な立ち位置でした。
冷静に見ているとどう考えても明石藩勢は数百人単位で斬られているんですが(笑)、それもこれも監督のサービス精神と思えば気にもなりません。そりゃ千石と遠山の金さんと善九と芹沢軍団長を相手に200人足らずでは失礼というものですw 無双大いに結構じゃないですか。

薄いストーリーの中の芯

というように本作は殺陣が大変素晴らしいのですが、ではストーリーはと言いますとどうしても薄いと言わざるを得ません。そりゃ暴君を待ち伏せしてぶっ殺すだけの話ですから仕方が無いです。
しかし、本作では薄いながらもきちんと一本の芯が通っています。それは「平和な時代に生まれてしまった武士とはどうあるべきか」という問いです。
斉韶は暴君で頭が逝っちゃってますが、しかし彼は「平和な時代の武士」としてスリルジャンキーになってしまっているだけにも見えます。とにかく人を殺したり暴虐に振る舞うことで、日々の渇望を満たそうとしてどんどんエスカレートしていきます。
そして「武士」として活躍できないことに鬱屈を感じ、死に場所を求める島田新左衛門。彼もまた武士に相応しい死に場所を求めて勝ち目の薄い暗殺計画に積極的に参加していきます。もちろん民百姓のためという題目はあるものの、しかし彼を決定的に動かしているのはその「ヒーロー幻想」であり武士としての誇りです。だからこそ、最後である行動に出て自らの運命を決めるわけです。
一方で敵役として出てくる御用人・鬼頭半兵衛も武士として「主君を守る」事を貫くために、良心を殺して新左衛門に立ちはだかります。この半兵衛も、短い時間の中で「コンプレックスを持った苦労人」として描いてきます。
こうしてみてみると、悪役は斉韶一人だけで、そのほかは皆なにかしら筋の通った考えを持っているわけです。ストーリーを語る上で最小かつ的確なこのキャラ配置こそ、邦画黄金期の時代劇のレベルの高さを如実に表しています。
冒頭では合戦シーンまでを「前振り」と表現しましたが、決してネタフリでは無く、きちんと長編映画として合戦を魅せるための土台をきっちり積み上げる、価値ある濃縮された90分です。

【まとめ】

断言します。今年のシネコン上映の邦画ではダントツで面白いです。今年のベストテンに推す人がいても何ら不思議ではありません。何が良いって、落合宿での決戦の日の朝に志士達が横一列に勢揃いしてカメラに向かってくるシーンがあるんです。それだけで涙腺が刺激されまくりですw
悪い事はいいません。怖い描写が苦手だったり、血が出るのが苦手だったりしても全然問題ありません。とにかく、劇場でやっている今、大スクリーンでやっている今、この作品を見逃して映画ファンとは金輪際呼べません!!! 理屈はいいからとにかく家の近くで、なるべく大きな箱で上映している映画館を探してすぐ行ってください!!! 大プッシュでオススメします!!!

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君に届け

君に届け

本日の1作目は

「君に届け」です。

評価:(65/100点) – 緩い恋愛映画かと思ったら熱血友情物語だったの巻


【あらすじ】

高校性の黒沼爽子は長い黒髪と愛想の無さから「貞子」と呼ばれいじめられていた。彼女は入学式の朝に出会った風早翔太や、クラスのはみだし者である吉田千鶴・矢野あやねコンビらと友情を深めていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 爽子と翔太
 ※第1ターニングポイント -> 席替えが行われる。
第2幕 -> 千鶴・あやねとの友情と、くるみの策謀。
 ※第2ターニングポイント -> 翔太がくるみの告白を断る。
第3幕 -> 翔太の告白と大晦日


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【感想】

今日の1本目は「君に届け」です。ティーンエイジの女性を中心にかなりお客さんが入っていました。別マガ連載の人気少女コミックの映画化で、去年末から2クールで深夜アニメにもなっています。
作品としてあんまり内容がないので、ざっくりと書いてしまいますw
要は性格は物凄い良いが社交性が薄く見た目が冴えない爽子が、イケメンでクラスでも人気者の翔太に好かれるという夢のような話です。「あの人だけが私の内面を分かってくれる」というヲトメの欲望そのままな内容ですので、それだけなら「都合良すぎ」「甘えるな」でバッサリ切って捨てるんですが(苦笑)、本作にはバッサリいけない部分が一カ所だけあります。それが爽子・千鶴・あやねの「仲良し三人組」のチーム分です。
この三人組の描写がベタながら完璧なんです。三人とも「見た目で誤解されがちだけど根は超良い人」であって、お互いが足りない部分を支え合うように友情を深めていきます。不覚ながら、中盤に夜の神社前で千鶴・あやねが相談するシーンとその後の屋上のシーンで、私完全に涙腺決壊いたしましたw
あやねのヘルプコールを受けて男子陣を捨ててすぐに駆けつけるシーンであったり、千鶴がお好み焼きを泣きながらヤケ食いするシーンであったり、この3人が集まったシーンはどれも大変素晴らしいです。
ただその一方で、やはり翔太・くるみ絡みの恋愛要素は限りなく類型的で退屈です。爽子も翔太もほとんど一目惚れ状態なためそもそもエピソードの積み重ねがありませんし、くるみも用意周到というにはお粗末です。なので、中盤以降はテンションがみるみる降下していってしまいます。

【まとめ】

恋愛映画としてはお世辞にも出来が良いとは言えませんが、女同士の友情物語としては大変すばらしい出来です。「女の子ものがたり」や「パーマネント野ばら」が好きだった方には是非オススメです!!!

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記事の評価
ミックマック

ミックマック

木曜の秋分の日は

「ミックマック」を見てきました。

評価:(90/100点) – 弱者達の痛快復讐劇


【あらすじ】

レンタルビデオ店で働くバジルは、夜勤中に銃撃戦に巻き込まれ頭に銃弾を受けてしまう。一命は取り留めたものの頭に銃弾が残ってしまい余命短く、さらには入院中に職や家までも失ってしまう。ホームレス同然に身を落とし街頭パフォーマンスで飢えをしのいでいたバジルは、ある日プラカールに声を掛けられ屑鉄回収を行う集団「タイアー・ライオット(=超・暴走)」に招かれる。
廃品回収から帰る途中、彼は父を殺した地雷製造会社と自分の頭に残った銃弾の製造会社を見つける。バジルは、両社の社長に復讐を決意する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> バジルが銃弾を受ける。
 ※第1ターニングポイント -> バジルがタイアー・ライオットに加入する。
第2幕 -> バジルの復讐
 ※第2ターニングポイント -> バジルが捕まる。
第3幕 -> ドッキリ。


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【感想】

今週の木曜日はジャン・ピエール・ジュネ監督の最新作「ミックマック」です。個人的にはジュネ監督というと「エイリアン4」なんですが、世間的には「アメリ」の方が有名なようで、非常に”おしゃれ系”なカップルやら女の子達が目立ちました。ただ、公開規模にしてはそこまではお客さんは入っていなかったように思います。
本作は”おしゃれな雰囲気”を徹底的にまぶしつつも、しかし決定的に「負け犬達のスパイ大作戦」です。フランスの原題は「Micmacs a tire-larigot」ですので、忠実に訳すと「超・暴走☆ドッキリ大作戦」って感じでしょうか。
文字通り、本作では一癖も二癖もある社会的弱者・屑鉄回収の仲間達が、自身の特技(?)を活かしつつ、金持ちでイケ好かない兵器会社の社長をハメていきます。「そもそも兵器は道具なんだから恨むなら実際に使った奴を恨め」とか、「社長は別に悪くないだろ」とか思うところはあるんですが、そこさえ気にならなければ本作は大変面白い痛快娯楽作になってくれると思います。

本作で引っ掛かる所

もし本作を見てイマイチ乗り切れない人が居るとすれば、引っ掛かる部分はおそらく2カ所です。
1つはジュネ監督のトレードマークである「気の利いた(と彼が思っている)」スカした演出です。全体を覆うセピア調の色彩であったり、肩舐めや急なパンによる限りなく欧風コミック調なカット割りであったり、いかにも「ほら、オシャレですよ~♪」っていう監督の自意識が炸裂しています。ただ本作の場合、中島監督の「告白」のように意味も無く効果を詰め込んでいるわけでは無く、きちんと物語や登場人物の心象を反映した理由のある演出になっています。ですので、こちらはそこまで目くじらを立てるほどでは無いかなと思います。
もう1つは、このストーリーを「反戦メッセージ」として受け取った場合の反感です。中盤までは単純な復讐劇として見ることが出来るのですが、最終盤で思いっきり中東問題風味の部分が出てくるために引っかかりが生まれやすくなっています。
はっきり言って、バジル率いる暴走チームも相当酷い事をやっています。それはもうほとんど言いがかりで社屋を爆破しているシーンまであります。演出上で被害者が出ている描写はないですが、あきらかに数十人単位で死傷者がでてもおかしくないことを平気でやってきます。ですので本作で「反戦メッセージ」を受け取ってしまうと、「おまえらこそ酷い事しまくってるのに何言ってるの?」という反感は絶対に生まれます。ここは非常に微妙な所でして、上にも書いた「そもそも兵器会社は倫理的に悪いのか」というアイアンマンにもある問題に繋がってしまいます。「兵器会社は所詮道具を作ってるだけだから善悪は使う人次第」と思えばバジルの復讐は完全に言いがかりですし、「とはいえ兵器会社はもっぱら殺人の道具を作るんだからやっぱり悪」と思えばバジルは正当な理由で正義を実行していることになります。ここはもう観客個々人で意見も反応も分かれてしまうと思います。

【まとめ】

痛快チーム復讐劇として大変愉快な作品ではありますが、一方で道徳的・倫理的に微妙な部分もある作品です。チームものとして見ることができれば今年屈指の快作になりますが、倫理的に躓いてしまうと評価は相当低くなると思います。ですが、良くも悪くも(見終わった後の語りも含めて)楽しめる作品ではありますので、是非是非劇場でご覧ください。結構オススメです!!

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記事の評価
×ゲーム(バツゲーム)

×ゲーム(バツゲーム)

今日も今日とて1本、

×ゲーム」を見てきました。

評価:(55/100点) – 出来はイマイチだが、やっとまともなスリラーが来た!


【あらすじ】

小久保英明は大学生である。ある日、彼の元に小学生時代の同級生から担任が自殺したとのメールが届く。しかし彼らはつい3日前に同窓会で会っていたばかりだった。担任の自殺を不審に思う彼の元に、不思議なDVDが届く。そこには、担任の先生が何者かに拷問されている姿が映っていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 英明と同窓会と先生の死。
 ※第1ターニングポイント -> 謎のDVDが届く。
第2幕 -> 黒髪の女の捜索。
 ※第2ターニングポイント -> 英明が拉致される。
第3幕 -> ×(バツ)ゲーム。
 ※第三ターニングポイント -> 英明が13番を引き罰を受ける。
第四幕 -> 逆襲。
 ※第四ターニングポイント -> 英明が小学校から抜け出す。
第五幕 -> 解決編。


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【感想】

さて、本日は一本、先日公開の「×ゲーム」です。若い子を中心にお客さんが4~5割は入っていまして、ちょっとびっくりしました。AKB48とD-BOYSのネームバリューでしょうか? あんまり山田悠介の映画って入っているイメージが無かったのでうれしい誤算です。
本作は「SAW」シリーズに近いソリッド・シチュエーション・スリラーです。SAWが2004年1月で、「×ゲーム」の原作が2004年8月ですから、テーマ的にも見せ方的にもかなり意識していると思われます。ツッコミ所はかなり多く、ストーリーにもずさんな点が目立ちますが、しかし日本で「SAW」をやってみようという気概だけはビンビン伝わってきました。だからソリッド・シチュエーション・スリラーが好きな方は絶対に見た方が良いです。
まず本作で一番好感が持てる部分は、きちんと「拉致」→「部屋に閉じ込められる」→「ゲーム開始」→「いろいろあって一人だけ生き残る」→「だけど、、、」というCUBEから脈々と続くソリッド・シチュエーション・スリラーのジャンルムービーとしてのお約束をきちんと踏襲している点です。日本で最近作られ始めた同ジャンルもどきの作品は、このお約束が全然出来ていません。このジャンルはあくまでもジャンルムービーとして続編が作り易いように、バッドエンドで終わらなければいけません。だから本作の作りはその一点において紛れもなくソリッド・シチュエーション・スリラーとして正しいんです。
肝心のゲーム部分ですが、これがまた良い湯加減です。実は結構ここに不満があるんですが、でもきちんとスプラッター的な嫌な感じを出そうという努力は見えます。ただし、この罰ゲームが思った以上にヌルイです。エグいのは「画鋲の刑」と「洗濯ばさみの刑」ぐらいで、後は「牛乳イッキ飲み」だの「髪を燃やせ」だの「ウジ虫イッキ食い」だの見た目の面白さはあってもスプラッタ方向には行かず、どうしてもギャグに見えてしまいます。しかもそのエグいものは一番先に見せてしまうんです。
本作で一番の問題はまさにこの「ヌルさ」です。ストーリーの核である罰ゲームをギャグにしてしまった結果、CGのショボさも相まってその後の展開が真面目に見られなくなってしまうんです。只でさえ滑稽な背景部分が、これにより一気に嘘臭く見えてしまいます。ここはもう少し見せる順番を考慮して欲しかったです。最初ギャグみたいな物が続いて油断していた所で「画鋲の刑」が来た方がストーリー上は絶対に自然です。
ちょっと細かいツッコミになってしまうんですが、画鋲の刑の後で英明の太腿の裏には血が付いているのにお尻にはズボンの破けた跡さえ無かったり、あれだけやられてるのにすぐにスクッと立ち上がって暴れ回ったり、極めつけは頸動脈や胸の上に焼き鏝を当てられたのにピンピンしていたり、ディティールのずさんさはかなり目立ちます。追加するなら、一応嘘でもいいのでゲームが終わる条件は設定した方が良いかなとは思いました。
ストーリー的なツッコミで言いますと、一番大きいのは「主人公が偶然と奇跡の積み重ねで生き残らないと成立しないトリック」問題です。この手の映画ではよくある問題ですが、ドンデン返しにしたつもりがその罠が成立するためのハードルが物凄い高すぎて全然罠になってません。映画なんで主人公はたまたま生き残りますが、でもそのたまたまを犯人が当てにしてはいけませんw
またこれは構成上の問題ですが、小学校を脱出した後のエピローグが長すぎます。しかも全部犯人側からベラベラとネタばらしをしてくれるため、著しく集中力と興味が低下します。こういうキャストが少ない低予算のスリラーの場合、全ての裏側を説明してしまうと世界観が薄っぺらに見えてしまいます。想像させる分には無料ですから、もっと思わせぶりにバッサリと省略してしまっても良かったと思います。ここまで喋られてしまうと、続編を作ろうにもコピー作品しか作れなくなってしまいます。
この辺りの演出は日本でこのジャンルが成熟してノウハウが蓄積すればある程度進歩していくのではないかとは思います。
ちょっと苦言が多くなってしまいましたが、でも私はこの作品は結構好きです。少なくともSAWの(超)劣化コピーまでは日本でも作れるというのが分かっただけでも儲け物だと思います。

【まとめ】

ずさんはずさんですし、B級と呼ぶにもかなり苦笑いな部分は多いです。でも先月の「KING GAME」のように表面だけなぞっているわけでは無く、きちんと作ろうという気概は感じました。ジャンル好き限定でオススメします!!!

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