フローズン・リバー

フローズン・リバー

続いての作品は一転して大真面目な

「フローズン・リバー」です

評価:(90/100点) – 「母は強し」は万国共通。


【あらすじ】

舞台はカナダとの国境沿いの田舎町、レイ・エディの夫はクリスマス直前に貯金を持って蒸発してしまう。二人の息子とともに残されたレイは夫を捜しに賭博ビンゴ場を訪ね、そこでまさにインディアンの女性が夫の車を盗む所を目撃する。追いかけたレイは、その犯人・モホーク族のライラと出会う。彼女は姑に奪われた我が子を引き取って暮らすために大金が必要であった。そのためカナダからの密入国者の運び屋をしており運転席からの操作で後ろのトランクを開けられる車を探していたと言う。
車の譲渡を断ったレイに、ライラは密入国の手伝いと報酬山分けを提案する。どうしても金を工面する必要があったレイはこれに同意する。こうしてライラとレイの犯罪家業が始まった。カナダとのルートは冬にしか現れない「凍った川(フローズン・リバー)」。両端には治外法権のインディアン保留地。それは絶対安全な金稼ぎであるはずだった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 夫の蒸発と長男との確執
 ※第1ターニングポイント -> レイがライラと出会う。
第2幕 -> 密入国家業
 ※第2ターニングポイント -> レイが「最後の仕事」を提案する。
第3幕 -> 最後の国境越え。


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【感想】

本作は二年前のサンダンス映画祭のグランプリ作品です。サンダンスといえば言わずと知れた世界最高クラスのインディ映画祭りです。やはりグランプリ作品は伊達ではなく、本作も主要登場人物がわずかに4人のミニマムな構成でありながら、これ以上無いほどの情緒と圧力を観客に叩き込んできます。
日本では二年前に配給会社がつかずDVDスルーも怪しかった所をアステアが拾ったようですが、素晴らしいことをしてくれました。大正解です。
こんな良作を公開しないとかありえないですよ、本当。

本作の肝

この映画は「田舎で女性が不幸になる話」の極北です。本作の肝は「母は強し」につきます。全部で三組の母子が出てきますが、三組とも全て子供のために必死です。特にレイとライラはほとんど絶望的な状況下から、必死でがむしゃらに家庭を立て直そうとします。
そして母に不満を持ちながらも、やはり自分なりに家庭を支えようとする長男。その家族のもがきの全てが最高潮に盛り上がったクリスマスに事件が起きます。悲惨で救いが無いように見えながらも、本作の最後の瞬間・最後のカットに写るちょっとした希望が、得も言われぬ感情を呼び起こさせます。これぞまさしく「映画的な感動」です。
メリッサ・レオの疲れた顔の中で唯一ギラギラ光る目が印象的で、本当にすばらしい演技をしています。ミスティ・アップハムは、、、この人は何やっても”デブキャラ”で終わっちゃうので何とも言えません。でもメリッサに引っ張られたのか中々の演技を見せます。
ちょっと苦言を呈する部分が見つからないような最高レベルのフィルムです。完全に単館映画ですが、渋谷まで足を運べる方は必見の作品です。是非、映画館で引き込まれてください。
余談ですが、渋谷のシネマライズは床が特徴的で、一番後ろから前5列目ぐらいまで急に下ったあと、前の方は逆傾斜でちょっと昇ります。なので一番前で見てもイス自体が上を向いてるので首が痛くなりません。シネマライズは土地柄なのか何時行っても煎餅食ったり携帯いじってるマナー悪い人が多いので、是非一番前で見るのをオススメします!!!

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バレンタインデー

バレンタインデー

「涼宮ハルヒの消失」以後に見た映画をまとめて書いていきたいと思います。
面倒なのでイマイチだった映画はサラッと流す方向で(笑


まずは「バレンタインデー」です。

評価:(45/100点) – バレンタインデー特化型デートムービー


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【感想】

これは公開初日に見ました。なんと言いますか、、、決してダメダメではないんですが、詰め込みすぎててすっちゃかめっちゃかになっています。これならオムニバス形式で各エピソード間をすっぱり断絶しても良かったのかなという印象です。15分x8本でスッキリ。
メインとなる花屋を中心として「友達の友達」的な関係の連鎖でキャラが次々と登場してカップル話を繰り広げるのですが、もはや最後の方はギャグかネタ切れかと思うほど強引な関係になっていきます。下手につながっている分おかしな所が目立ってしまってノイズになっています。
とはいえ、本作はタイトルどおり「バレンタインデーに恋人と見に行く」ことだけに特化していると考えれば、決して失敗はしていません。実際、なんとなくセンスのヨサゲに感じる(※実際には一昔前のポップスでちょっとダサいんですが)音楽と、延々と繰り返される痴話げんか・ノロけ合いは雰囲気作りに一役買っています。デートで行った映画が面白くって見入ってしまうようではデートにならないので(笑)、適度につまらないのに雰囲気だけは作ってくれる本作はデートムービーに最適です。DVDの発売後なら、目的なく家で恋人と見るにはベストチョイスでしょう。
でもそれだけ。キャストはとんでもなく豪華なんですが、別に好演している訳でもないですし皆さん適度に力が抜けています。私の大好きなアン・ハサウェイとアシュトン・カッチャーが気が抜けた演技をしているのは日本ではなかなか見られません(笑)。きちんと幅広い恋人達に対応するためにゲイカップルまで出てきますので、その筋の方にも十分にオススメできます。
ということで、カップルでいくなら文句なくオススメ、一人で行くなら俳優ファン限定でオススメです!

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50歳の恋愛白書

50歳の恋愛白書

今日は「50歳の恋愛白書」を観てきました。

評価:(65/100点) – まぁ良いとは思うんですが、邦題が、、。


【あらすじ】

ピッパ・リーと夫のハーブはコネチカットの老人村に引っ越してきた。ここは老人達が余生を静かに過ごす街。しかし年上の夫とは違い、ピッパはまだ若い。彼女はもてあました時間で陶芸教室に通い始めるが、不安から夢遊病を発症する、、、。


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【感想】

本作は昨年の夏映画でしたが、ようやく日本に来ました。相変わらずのギャガ・クオリティで意味が良く分からない邦題がつけられてしまっています。原題は「The Private Lives of Pippa Lee」。そのまんま「ピッパ・リーのプライベートな日々」で良いと思うんですが、、、「60歳のラブレター」に掛けたんでしょうか?
話の内容は原題のとおり、ピッパ・リーの不安や不満と彼女の来歴を通した自己救済の話です。
彼女が嫌っていたはずの母親にどんどん似てきてしまう無常感と、あるトラウマによって自己抑圧の日々を自分に科す贖罪と義務の日々。そして唐突に訪れる贖罪からの解放。本来悲劇的であるはずにもかかわらず同時に救済であるというアンビバレンツな状況に対し、子供達の口あんぐりな感じを放って置いて青春に戻るピッパの笑顔。かなり悲惨でドロドロな話ではあるんですが、キアヌ・リーブスのちょっと間抜けっぽい雰囲気とロビン・ライト・ペンの年齢を感じさせないイケイケ感が上手く混ざり合って、なんかハッピーな気持ちにさせてくれます。
そこそこの規模で上映して居ますので、機会がありましたら見てみると如何でしょうか?
感情移入してどうこうというのは無かったですが、”強い女性好き”にはジャストフィットな作品だと思います。

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インビクタス‐負けざる者たち‐

インビクタス‐負けざる者たち‐

本日も二本立てです。一本目は「インビクタス‐負けざる者たち‐」。

評価:(65/100点) – 人間ドラマはなかなか。 試合はちょっと、、、。


【あらすじ】

ネルソン・マンデラはロペン島の刑務所から釈放されANC議長につく。その勢いのまま大統領に就任したマンデラだが、黒人と白人の対立構造は変わらなかった。ANCが政権を執ったとはいえ経済力や学力は白人の方が圧倒的に上である以上、国家の分裂は南アフリカの黒人にとっても得策ではない。そこでマンデラは白人達のスポーツであったラグビーを通じて、黒人達の愛国心を喚起しようとする。


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【感想】

昨年は「チェンジリング」と「グラン・トリノ」で未だ衰えない構成力を披露してくれたクリント・イーストウッド監督の最新作、「インビクタス」です。何はともあれイーストウッドの新作が出たら映画館に駆けつけるのは映画ファンの義務です。ということで、私もいそいそと出かけましたが、、、観客が入ってない!
300名のキャパで100名も居なかったでしょうか。マット・デイモンなのに、、、。スポーツ物なのに、、、。

ストーリー部分

本作はマンデラ役のモーガン・フリーマンのほぼ一人舞台です。その台詞もほとんどがアジテーションのようで、タクシー内での秘書との駄話しですらどんどん演説調になっていきます。これが結構くどくてどうかなと思ってしまいます。
もちろん話の根幹になるマンデラの考えはかなりのものですし、マンデラ自身には大いに頭が下がります。政治犯として27年も刑務所に入れられた上で、それでもなお白人と黒人の共生というところに向かう達観には恐怖すら覚えます。実際のマンデラの人柄に詳しい訳ではないので何とも言えませんが、本作では極度の絶望の果てに解脱してしまった聖人のように見えます。それでいて自身の家族については急に人間臭い面を見せるなど、大変魅力的に描かれます。
一方、本作のダブル主演といっても過言ではないマット・デイモン演ずるピナールについては正直なところだいぶ陰が薄いです。マンデラの信奉者として以外にはキャプテンとしての能力やチームでの立ち位置はあまり描かれません。あくまでも観客の感情移入先として、「マンデラを仰ぎ見る好青年」としての役割を果たします。実際に本作が微妙な印象になる原因は、多分にラグビーの描き方です。
スプリングボクスはアパルトヘイトの関係で国際試合に出られなかっただけで、90年代前半の時点でも十分に強豪でした。しかし本作の序盤であたかも弱小チームであるように描かれます。「評論家の予想では良くて準決勝どまりです」みたいなセリフ回しがあったりして「そうか、弱いのか」と一瞬思ってしまうんですが、でも当時は優勝候補だったんです。あまりにも無理に「弱小国が連帯感を持ってついに優勝!」という物語に当てはめようとしたために、むしろ何で強くなったかが良く分からないという弊害が生まれてしまいました。これでスプリングボクスの成長物語りも併せられればものすごい傑作だったと思うのですが、ラグビーの使い方が少し中途半端になってしまった印象を受けます。

【まとめ】

さすがはイーストウッドという感じで、凄くデリケートな題材を上手く軟着陸させています。もちろんいくらでも深読みは出来ます。イーストウッド自身も共和党員ですし、「なんでもかんでもチェンジすることが良いわけではない」と意味深なことを言いますし(笑)。
傑作というほどではありませんが、良作なのは間違いありません。
オススメはオススメなんですが、できればyoutubeで95年のワールドカップ決勝の映像を見ておいた方が良いかもしれません。再現性の高さに驚くこと請け合いです。

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おとうと

おとうと

本日は「おとうと」を観てきました。

評価:(85/100点) – 大満足です。


【あらすじ】

吟子は夫に先立たれ娘と姑の3人暮らしで薬局を営んでいた。娘の結婚式当日に音信不通だった吟子の弟・鉄郎がひょっこりと現れるが、よりにもよって泥酔して披露宴をメチャクチャにしてしまう。このことがきっかけで吟子のもう一人の弟・庄平は鉄郎に絶縁を宣言する。しかし吟子はどうしても縁を切れない。
暫く経って、大阪より鉄郎の恋人が吟子の元を訪れる。彼女は、鉄郎に130万円を貸したまま彼が音信不通になったと告げる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 小春の結婚
 ※第1ターニングポイント -> 小春の披露宴
第2幕 -> 小春の離婚と鉄郎の失踪。
 ※第2ターニングポイント ->吟子が鉄郎に絶縁を告げる。
第3幕 -> 鉄郎の最期。


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【感想】

見終わっての率直な感想は、「あ~~~~映画見た。」という満足感です。さすが山田洋次。中居正広やラサール石井の”ノイズ”が気にならないほど、とても良くできた映画です。本作には最近のエンターテイメント映画にありがちなドラマチックな展開や社会的メッセージなんかはありません。むしろヨーロッパのアート系映画に近い構造をしています。でも、実際にはそれこそが日本映画なんです。日本にだって昔はこういう良い作品があって賑わっていたんです。日本市場は今やハリウッドの映画産業に飲み込まれてしまっていますが、それでもまだ山田洋次監督のような映画人にきちんとバジェットが渡る環境があることは大変喜ばしいです。

物語の肝

本作には際だったドラマがありません。ログラインで表すならば、「ある女にはどうしようもない弟がいて彼が死んだ。」と超簡潔に終わってしまいます。要は展開しないわけです。ですが、それこそが映画の醍醐味だと個人的には思っています。ハリウッド・エンタメ映画も好きなんですが、やっぱり「いま私は映画を見た」と満腹感があるのは、この種の映画なんです。
劇中での鉄郎は考え得る中で最悪レベルの「困った家族」です。そして頭がイカレてるかと思うほど馬鹿で人間のクズです。だけれども家族は家族、吟子にとっては紛れもなく弟です。尻拭いをしてやってるのに調子の良いことばっかり言ってフラフラしているダメ男。そんな奴でも、やっぱり家族なら死ぬ間際には世話をしてやりたくなりますし心配だってします。吟子があまりにも聖人すぎると思う方もいらっしゃるかも知れませんが、家族なんて実際はそんな物なのだと思います。というか思えてきます。
それを表すのに「家族の絆」みたいな安っぽい表現は使いません。小春と旦那のイビつな関係、吟子と姑の関係、吟子と鉄郎の関係、そして吟子と小春の関係。利害を超えて憎まれ口を叩きながらも愛し合う家族が居れば、お互い支え合う親子が居て、その一方で合理的な会話以外を否定する夫婦も居ます。そのいろいろなシチュエーションを観客に見せた上で、どれが正解とメッセージを送る事も無く表現していく山田洋次監督の演出力。ただただ拍手をお送りさせていただきます。本当に素晴らしい作品です。

少々気になる点

とはいえ、気になる点が無いわけではありません。最も大きいノイズは吉永小百合さんの演技です。
断っておきますが私は女優・吉永小百合の大ファンです。だからこそ今回の棒読みで滑舌良くハキハキした文語調の台詞回しは、ちょっと信じられないレベルです。”あの”吉永小百合さんにしては酷すぎます。それと反するかのように蒼井優と鶴瓶師匠の演技は冴え渡っています。それだけに果たして演出が悪いとも思えず、もしや吉永さんが衰えてしまったのではと恐れています。映画の出演数を絞っているようですので、次の作品までの時間で修正できると信じています。

【まとめ】

「山田洋次約10年ぶりの現代劇」の煽りはまったく嘘ではありません。「博報堂DYと朝日が絡んでるから糞映画だ」と判断して観に行かないのは賢明ではありません。是非、劇場で見てみてください。
この種の映画は、観客の感想=観客の自己分析につながっていきます。山田監督が作中で意見を明確に述べていないため、観客は自分の体験や過去に読んだ物語りからモロに影響を受けます。ですので作品は自身の鏡、この作品を語るということは自分をさらけ出すことにつながります。終わったあとの満足度と友人と意見を言う材料になる作品です。
だから、悪い事は言いませんので映画館に見に行っておくべきです。オススメです!!!

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ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

日曜日に「ゴールデンスランバー」を観てきました。

1月最後の映画です。

評価:(55/100点) – 伏線という名の後出しじゃんけん祭り。


【あらすじ】

青柳雅春はお人好しの宅配配達員である。ある日学生時代のサークル仲間・森田に釣りに誘われた青柳は、彼に睡眠薬を飲まされて車中で寝てしまう。目が覚めると、凱旋パレード中の金田首相がすぐ後ろの大通りを通っていた。そして爆殺される首相。車ごと爆死した森田をのこしてその場から逃亡する青柳だったが、首相暗殺容疑で指名手配されてしまう、、、。

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【感想】

え~伊坂幸太郎原作シリーズの最新作、ゴールデンスランバーです。笑う警官を観たときに初めて予告編が流れまして、「同じ話じゃん」と思ったのを強く覚えています。
本作では、陰謀に巻き込まれて首相暗殺の濡れ衣を着せられる青柳を主役に、かつての仲良しサークル仲間4人組の活躍を描きます。
が、、、全編通じて流れるジャイブ調のバックミュージックや伏線に巧妙に見せかけた時系列シャッフル、そして無内容なのにスカした演出など、笑う警官の角川春樹を連想させる作品です。
とはいえ本作はまったく駄作というわけではないと思います、頭を空っぽにして観れば面白いことは面白いですし、雰囲気に流されれば割と良さゲな所に着地します。なので、本作を絶賛する人が居ても不思議ではないと思います。ただ、、、小手先で撮ってる感じが前面に出ていてちょっとどうかと思ったりもします。

本作の気になる点

本作で気になったのは、後出しじゃんけんの多さとディティールの甘さです。
特に後出しじゃんけんについてですが、これは伏線に見せかけているだけに結構タチが悪いと思います。
私が観ていた限り、伏線として機能していたのはアイドルの整形疑惑の部分と花火のバイトをしていたところぐらいです。そのほかはほとんど後出しです。というのも、伏線は「それ単体でも物語上機能するが、後から別の機能を追加で与えられる」ことです。例えば、冒頭のプレタイトルシーン(デパートの親子)は、後からさも伏線であるかのように繰り返されますが、単なる時系列シャッフルです。また冒頭のシーンで娘が一瞬居なくなったことに意味はありません。つまり「単体では意味が無いことにあとから意味が追加された」という事です。同様に下水道の話も書き初めの話も単なる後出しです。しかし花火と整形にはその時々に意味があるため伏線たり得ています。
こういった後出しじゃんけんの多さは普段映画をあまり観ない人には「よく出来た脚本」と誤解されがちです。作り手もそれを狙っているのですが、しかし実際には全部のストーリーを決めた後に要素をばらして前半に配置しているだけなので上手いわけではありません。
伏線として機能していない物を山盛りにするあたり、もしかすると実際に脚本を書かれた方はこれでOKとおもっているのかなぁと、ちょっと心配になってきてしまいます。
ディティールについてはやはりボロボロです。なぜ晴子がカローラのバッテリを取り替えるかの根拠がないですし、なんでそのタイミングで廃車の所に青柳が来るかも分かりません。極端な話、ほとんど全ての登場人物達がエスパーではないかと思うほど、適切な場所に適格なタイミングで意味もなく偶然現れます。
また公園のシークエンスも苦笑いです。生中継のテレビ映像に写っているのに何故か警官だけが見失いますし、晴子が花火をセットするのが早すぎます。物語はまったく解決しませんし、あまつさえ何が起こったかもロクに説明されません。かと思えば検問の前で明らかに不自然に左折した車をスルーしたり、車検を通ってない車が前を通ってもスルーです。カローラだってあんなバッテリー変えただけでは動くはずはありません、最低限タイヤも変えないと、、、。そのほかにも挙げればきりがないくらい不可解な点は多々あります。ご都合主義を連発しまくってしまったがために、単にフィクションレベルが下がって(=嘘くさくなって)しまっています。

【まとめ】

上にも書きましたが、決してダメダメな作品ではありません。よく言えば「作家性の強い」、悪く言えば「オッサン臭いすかしたダサさ」のある作品ですがボケ~っと観ていればそれなりに楽しめます。ポップコーン映画という点では十分にオススメ出来ます!

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ラブリーボーン

ラブリーボーン

本日は二本観てきました。まず一本目は

ラブリーボーン」です。

評価:(45/100点) – サスペンスというよりはスイーツ・ラブストーリー。


【あらすじ】

スージー・サーモンは両親と妹と弟の5人で幸せに暮らしていた。しかしある日中学校からの帰り道で向かいに住むジョージに殺害されてしまう。死後の世界へと旅だったスージーだったが、家族のことが心配でこの世とあの世の”狭間”に留まることにする。しばらく発って、スージーの家族はストレスから崩壊、ジョージは新たにスージーの妹・リンジーを狙い始めた。

【三幕構成】

第1幕 -> スージーと家族の日常とレイとの恋。
 ※第1ターニングポイント -> スージーが殺される
第2幕 -> 父の捜査と家族崩壊。
 ※第2ターニングポイント -> スージーが自身の死を受け入れる。
第3幕 -> リンジーの捜査とスージーの成仏。

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【感想】

とてもかっちりした構成の作品です。第一ターニングポイントはきっちり開始30分で来ますし、第2ターニングポイントはわざわざ暗転してシーンが変わります。非常にオーソドックスというか普段映画をあまり観ない人にも親切な作り方です。
実際、多少冗長に思う部分はあるものの終盤までは非常にスムーズに展開が進んでいきます。そしてスージー役のシアーシャ・ローナンも15歳とは思えないほど素晴らしい演技を見せてくれます。
と、ここまでは絶賛モードなんですが、いまいち微妙な雰囲気になるのはひとえに終盤の展開によるものです。
せっかく「犯人が妹を連れ去って、父親の捜索に手を貸す幽霊」的なベタなストーリーで盛り上げられるにもかかわらず、終盤のサスペンスシーンは「木の床板をそっと戻す」というこれ以上なくショボい展開のみで終わってしまいます。さらにはとってつけたような因果応報・悪が滅びるストーリーや急に道徳的になるスージー等、それまでの話を全て台無しにしてしまう程の超展開で観客全てを置き去りにして斜め上に突っ走ります。
正直な所、最後の30分までは80点~90点つけても良いほどの出来でした。せっかく前振りをして物語を積み上げていったにも関わらず、最後は家族をほっといて色ボケに走るバカ女のせいでメチャクチャです(笑)。
また、演出面もあまりいただけません。CGはさすがの出来ですし特にあの世の描写は本当に綺麗ですが、一方でスローモ-ションにコーラス曲を合わせる演出がしつこく繰り返されてちょっとイライラします。でも、前半のジョージの顔を隠す演出はなかなか上手いです。ピンボケやフレーム見切れを上手く利用して、何を考えているか分からない不審者としての犯人を表現しています。その割に顔がきちんと映るのが早すぎるんですが、まぁ引っ張っても「木の床板サスペンス」では面白くならないので、これで良いのではないでしょうか。面白くなる要素がそろっているだけに、つくづくラストが心残りです。

【まとめ】

良くも悪くもピーター・ジャクソン監督が仕事と割り切って適当に作るときの傾向が出ています(笑)。
きっと「ディストリクト9」のプロデュースが忙しくて片手間になったのかなとか思いつつ、時間が空いている方にはオススメ出来ます!
でもたぶん後悔するので、半年後にDVDで観た方がダメージは少ないかも知れません。一番おもしろかったのは開始前に流れた「第9地区」と「ブルーノ」の予告編でした(笑)。

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ジュリー&ジュリア

ジュリー&ジュリア

三が日最後の映画は「ジュリー&ジュリア」です。

評価:(40/100点) – おおむね良作だが最後で台無し。


【あらすじ】

ジュリーはコールセンターに務める公務員である。夫とピザ屋の2階に引っ越してきたジュリーは満たされない気持ちを晴らすためにブログを始めることを決意する。題材は大好きなジュリア・チャイルドの料理本「王道のフランス料理」。こうして524のレシピを一年で完遂するジュリー/ジュリア・プロジェクトが始まった、、、。


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【感想】

いきなりですが、私は本作はわりと好きです。現在パートは「ジュリアの本を使って日々を充実させようとするOLの話」、過去のパートは「夫と共にフランスに引っ越したジュリアが料理教室に通い、料理好きの友人を見つけて一緒に本を書く話」。このジュリーとジュリアの境遇の重ね方とシーンチェンジが中々うまく、「普通のいい話」として楽しめます。なによりお料理がおいしそうですし、俳優達が本当に良いです。
特にジュリアのパートはメリル・ストリープとスタンリー・トゥッチの「プラダを来た悪魔」コンビが非常に秀逸で、本当に微笑ましいというか幸せな気分にしてくれます。このジュリアのパートだけで一時間ドラマにしてくれれば何回でも見られます。

台無しポイント

とまぁ結構褒めモードなんですが、ところがですね、、、ラストがいかんのです。
まず第一に本作がメタ構造をとっており実話を元にした映画であるという点です。、そして寄りによってジュリー・パウエルが原作を書いてるわけです。要は本作の主人公にして「がんばるOL・悲劇のヒロイン」が作者なんですね、、、自画自賛?
自分自身をここまでヒロイックに書くような人は信用できません。
第二に過去の話と現在の話がうまくクロスしない点です。一応最後にスミソニアン博物館のジュリアのキッチン展示でリンクっぽい感じにはなるんですが、一方でジュリアがジュリーのブログを見て苦言を呈しているみたいな表現もあります。
ところがこの件については特にフォローすることもなく完全にスルーされてしまいます。
そこは拾わないとドラマにならないんですが、、、よほど作者に都合が悪いリアクションだったのでしょうか?
この二点のおかげで、私の中でラスト30分あたりから評価が一気に落ちてしまいました。残念です。

【まとめ】

もしこれが完全なフィクションであったなら、たぶん相当良い評価をしていたと思います。演出も無難ですし構成も悪くありません。最近「実話を元にした」作品がやたらと目に付きますが、それも善し悪しかと思います。本作はエンディングロールの一番最後に「この作品は実話を元にしていますが、ドラマティックにするためにキャラクターと物語に脚色を加えています。」と英語で表示されます。一方で、映画の冒頭では「この作品は二つの実話を元にしています」と日本語字幕付きで表示されます。
私の個人的な意見ですが、別に実話を元にしたから作品が偉くなるということは無いと思います。むしろ実話を元にしたということで変な制約が掛かってしまうように思えます。本作で言えばジュリー(=作者)を魅力的に描こうとすればするほど、単に自己顕示欲の強い嫌な女に見えてしまいます。逆にジュリアのパートはジュリーの憧れもプラスされてとっても素敵で魅力的です。
とはいえ、面白いのは間違いないですし、特に料理が好きだったり日常があんまり充実していない方には相当グッと来ると思います。
オススメはオススメなんですが、できればジュリア・チャイルドの伝記ものとして映画化して欲しかったですね。ジュリーのパートは全部いりません(笑)。

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