パレード

パレード

今日も今日とて二本です、一本目は、

行定勲の「パレード」を見ました。

評価:(45/100点) -架空の問題設定で描く箱庭の世界、、、。


【あらすじ】

世田谷のとあるアパートの一室で、4人の男女がルームシェアをしていた。
映画配給会社勤務の直輝、大学生の良介、イラストレーター志望のフリーター・未来、無職の琴美。ある日彼らの元に謎の金髪少年・サトルが現れ共同生活に加わる。4つの章それぞれで4人の視点を描くことで、徐々にこの共同生活の実態が浮き彫りになってくる、、、。


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【感想】

さて、行定勲の最新作「パレード」です。原作は吉田修一。一応売り文句としては「都会で過ごすゆとり世代の心の闇を描き出す」的な宣伝をしています。これについて、冒頭で書いたようにちょっとどうかという意見があるのですが、それは後述します。
主要登場人物は5人。それぞれ、藤原竜也、小出恵介、香里奈、貫地谷しほり、林遣都です。ぶっちゃけ私の嫌いな人しか出てないんですが(笑)、まぁそこそこ人気があってそこそこ演技も出来そうな雰囲気の人を集めたって感じでしょう。予告も含めて全体の雰囲気もいわゆる「エンタメ全開!!」という感じよりは「知る人ぞ知るウェルメイドな映画」感をビンビン出してきています。この辺りの宣伝手法は上手いと思います。じゃなきゃ監督・キャスト含めて地雷の香りしかしませんから(笑)。
ここでお約束ですが、本作を語る上でやむを得ない範囲で若干ネタバレを含みます。全部書くつもりありませんがニュアンスで伝わってしまう部分もあると思いますので、楽しみで楽しみでしょうがないけど原作未読で1800円払いたくないのでレディーズ・デイ/映画の日を待っているという方は、ご遠慮ください。

物語のプロット

物語のプロットは非常に単純です。一見幸せな共同生活をしているように見える4人が実はそれぞれそれなりに心の闇を持っていて、けれど共同生活を維持するための社交性として上辺を繕って仲良くしている。とまぁこんな感じです。
そして、これが今の現代日本の「東京砂漠感」を良く表しているという評価をする方がいるという事です。
実際に章の冒頭に「伊原直輝 映画配給会社勤務 28歳」みたいなのが黒バック白抜き文字で画面に出てそれぞれの視点が描かれますので、これを見た後で話しが分からないという方は一人もいないと思います。「社会派な重たいテーマをポップに見せる」という意味ではシンプルで良い方法なのかも知れません。
でも、、、僕はこの問題設定そのものと、そしてそれを本当に描けているのかという部分に疑問を抱きます。
そのポイントは、サトルと直輝です。

描き方について

話がややこしくなりますので、まずは問題設定が「あり」だと仮定して描き方を見てみましょう。
一番最初に引っ掛かるのは、少なくともこの映画ではサトルが何の役にも立っていないことです。結局なんなのコイツ。ゲイのオッサン向けの売春とピッキングで生活している住所不定の少年なのですが、プロット上で特に役が与えられていません。予告を見ていててっきりこの「異分子」が安定した共同生活を壊すor暴くのかと思ったのですが、別にそういう描写も無く居ても居なくてもなんの影響もありません。強いて言えばラストのある事件を目撃するためだけの第三者なんですが、でもそれって良介でも未来でも琴美でも問題無いわけで、結局コレって言う存在意義がないんです。
さてそのほかの4人の共同生活者には、そもそも闇があるんでしょうか? 良介は浮気しています。琴美は彼氏を盲信しているメンヘラです。未来は男をとっかえひっかえと言葉では出てきますが、別にそういう描写はありません。幼い頃父から暴力を受けたトラウマを持っている普通のフリーターです。そんでもって実は一番えげつない直輝。
これ、冷静に考えると直輝以外に闇がないんですが、、、。良介は言わずもがなですし、琴美は作品内で成長を見せます。未来なんてトラウマとしっかり向き合って折り合いをつけている立派な自立した大人の女性ですよ。しかも成長まで見せます。だから、「一番まともそうな直輝が実は一番狂ってる。こわ~~い。」みたいな描写に無理があるんです。どっちかというと、「頭がおかしい直輝が、女性に振られて不安定になった自身の精神安定を図るために共同生活を主催している。」というように見えます。
別にそういうスリラーならそれはそれで良いんですが、だとしたらもうちょっと描き方を工夫する必要があります。直輝がもっと頼りになりそうな超好青年で底抜けにいい人に見えないといけないんです。でも藤原竜也では残念ながらその雰囲気は出せません。藤原さんはいかにもなコテコテの「舞台芝居」をする俳優さんなので、映画に出てくるとわざとらしすぎて曲者・小者にしか見えません。非常に惜しいです。最初っから藤原竜也の演技が気持ち悪いので、最後のシークエンスでも全然意外性が無くなんか白けてしまいました。そんなわかりきったことを「これがどんでん返しじゃ!ドーン!!!」みたいな大仰さで見せられても、、、なんだかな。

問題設定について

次に根本の問題設定の部分です。
さて、心に闇をもっていない人間が果たして居るでしょうか?もっというと、自分のプライベートを全てあけすけに公開するような人は世界中でどれだけ居るんでしょうか?
私は、少なくとも文明化した近代社会では皆無だと思います。誰にだって一つや二つ他人に言いたくないことはあるでしょう?むしろ飲み会とかで全部のプライベートを話してくる人間がいたら、ちょっと警戒しますよ。
この「みんな隠し事があるのに上辺だけを繕って共同幻想のもとで社会を運営している」っていうこと自体が、別に当たり前すぎて問題提起になっていないと思うんです。それなら「家族ゲーム(1983)」の方がよっぽどスマートに描いています。そもそもそれが「社交性」ってことですし。
さらに問題になってくるのは最終シークエンスです。
最終シークエンスで「そんな隠し事でも、実はみんな知ってるぜ?」みたいなことをサトルに言わせます。そして最後の最後、直輝が「”共同幻想を守れ!”という圧力」を感じるという場面で終わります。映画だから分かりやすいように極端に描いたと言えなくもないのですが、あまりにも極端すぎてこれを「社会の縮図を上手く表現した問題設定」とは到底思えません。

【まとめ】

実は私が懸念しているのは、本作が「ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞」を獲得したという先日のニュースです。論評をまだ読んでないんですが、もしこれが「日本の若者の社会観念を抉り出した社会派映画」みたいな受け取られ方をしていたらそちらの方がホラーです。
私は本作は「架空の問題提起から膨らませた空想上の社会派問題遊び」だと思います。
若者としての自分の感覚ですが、私はむしろ自分も含めた若い人は、いわゆる団塊世代とかにある団結性はあまり持っていないと思ってます。アイデンティティの規定において、連帯感みたいなものにはあまり頼っていないのかなと。極度の個人主義というか「一人に一つの携帯・パソコン世代」って感じです。
なので、本作は私の目から見ると「オッサンのグチ」に見えるんです。「最近の若者は~~~」で始まる飲み屋のグチを「極端な空想キャラクターの箱庭」を使ってただただ見せられているような感覚です。まったく乗れません。
今回私が見た劇場は結構な大箱だったんですが、若い方と中年が半々ぐらいでした。こういう作品こそ、ちょっとアンケートを取ってみたい気がします。多分若者の評価が低くて中年が絶賛するんじゃなかろうかと、そんな作品だと思います。
ということで、最近職場で虐げられている中間管理職の皆さんや、お子さんが反抗期でうまくいっていないお父さんにはおススメです!!!
※書き忘れてましたが、音楽の使い方は驚くほどダサイです。ピアノではじまるワンパターンな演出に口あんぐりでした。こんなテーマなんだからバックミュージック無しでいいのに、、、。

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記事の評価
交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

木曜日、「交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦」を観てきてました。

評価:(5/100点) – 交渉しない交渉人とアクションのできないアクション・スター


【あらすじ】

宇佐木玲子は警視庁徳署捜査班の交渉人である。ある日スーパーの立てこもり事件で交渉に臨んだ宇佐木は、主犯・御堂啓一郎を逮捕するも共犯者を一名逃してしまう。その後羽田空港で見かけた元人質の木元祐介が気になり、急遽彼の搭乗機に飛び乗ってしまう。彼女の読み通り、木元はハイジャックを行った、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 立てこもり事件。
 ※第1ターニングポイント ->宇佐木の乗った飛行機がハイジャックされる。
第2幕 -> 飛行機の上でのやりとり
 ※第2ターニングポイント ->御堂が射殺される。
第3幕 -> 解決編


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【感想】

先日のブログではハルヒの後と書いたのですが、ハルヒが面白くてその後見た映画を忘れそうなので先に書いてしまおうと思います。一作目は木曜に見ました「交渉人 THE MOVIE」です。テレ朝ドラマの番外編ということですが、相変わらずテレビを一切見ない私は完全初見です。で、またこれがとにかく酷い酷い。な~んにも考えてないんじゃないかと思うほどのストーリー展開と、気持ち悪いくらい前面に出てくる政治思想。そしてそれらを腕っ節で解決しようとする強引な展開。
こういってはなんですが、昨年のアマルフィと勝負できるほどの珍作です。あの~そんな所でまでフジテレビとテレ朝でやり合わなくて良いんですが(笑
とにかく何が酷いって言ってもストーリー運びです。
これはもう順を追ってツッコミ入れるしかないので、沈まぬ太陽の時と同様にストーリーをほぼ全部書きます(笑
なので、ネタバレが嫌な方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ駆け込んでください!!!

お話しの展開

まず冒頭、ショッピングモールでの立てこもり事件が描かれます。犯人は3人、主犯の津川雅彦とポイズン反町と雑魚一名です。
ショッピングモールにたった3人で立てこもってるのに警察が防犯カメラを見れてないとか、周りを警官で取り囲んでるのに野次馬だらけで何故かテレ朝の中継車だけが唯一のマスコミで独占生中継とか(笑)。まぁいきなり酷いんですが、そこで津川が全共闘的なアジテーションを行います。曰く、「全部社会が悪い(笑)!」「頑張っている人が正当に評価される時代にしてみせる!(笑)」。共産党と社民党のポスターに普通に書いてあるキャッチコピーですが、これに林遣都がビビっと反応します。いや~青いね、青い。
そして暴走する雑魚一名。人質一人を盾に何故か警官の前に姿を現します。津川に窘められ引っ込むものの即粛正。これがいわゆる内ゲバですな。
銃声を聞いて突然強行突入を決めるSATも失笑ものですが、それ以上に失笑なのはショーガラスも吹っ飛ぶ程の大爆発なのに人質全員が無傷で飛び出してくるところ(笑)。
おまえら元気ですね。っていうか無傷って、、、。こいつらガムテープで目隠し&手縛りされてたんですが、どうしたんでしょう?
犯人グループはこの時点で津川とポイズンだけなので、順番にガムテープ外していったら数の論理で犯人側が負けちゃいます。多分魔法を使って一瞬で全員のガムテープを蒸発させたんでしょう(笑)。
さらに何故か人質に紛れ込んでパトカーに乗り込むポイズン。一人だけ口にガムテープの跡ないし人質名簿に無いんだから即逮捕でしょ(笑)。作り手から「警察なんてこんなもんでしょ」という侮りがビンビン伝わってきます。
その後、身柄を拘束されて外に連れ出される津川、、、、と思いきや拘束してねぇ~~~!!!(笑)。
周りから銃を突きつけられてるだけの津川が悠然と登場(失笑)。そんなわけあるか!!!津川が爆弾でもポケットに持ってたらどうすんだよ。銃奪われて暴れるかもしれないだろ!!!拘束しろ拘束。手錠はめとけ!
さらには何故か木元が近寄って会話。おまえそんなことしたら当然共犯者と疑われるぞ。っていうか喋らすなよ周りの警官!!!アホか!!!
華麗な捨て台詞を残す津川のシーンでこのシークエンスは終わります。ここまで開始約10分弱。すでに疲労困憊な私(笑)。
さてシークエンスが変わって、いきなり狭いアパートでシャツ一丁の林遣都とカップ麺をすする川野直樹が登場します。テレビには先日の事件。プラスで壊れたクーラー。おそらくこれがテレ朝的な社会の底辺描写です(笑)。まぁ年収1,000万越えのテレビマンや広告代理店が考える社会の底辺なんてこんなもんですよ。僕には普通の貧乏学生のルームシェアに見えますが(失笑)。
さらに変わって米倉と筧の乳繰り合いがあって(中略)、飛行機に乗り込む米倉。まずおまえチケットカウンターで警察手帳を見せただけで飛行機に乱入できるわけないだろ!
搭乗者名簿に載ってないという描写が出てくるので、その場でチケットを発行してもらってすらいない(笑)。しかも知ってる奴を見かけただけで押し入る無茶苦茶さ。ご都合主義って言うか強引すぎです。そして見事に筧の隣に偶然着席。思惑通りハイジャク発生。やったね!!!
ってまず、少なくとも二丁は拳銃を持ち込まれてるのね、この作品。あのね、、、世の中には手荷物検査っていうのがあってね、、、銃を分解っていったって細かい鉄板にまでバラせる訳じゃなくてね、、、ネジならともかく、銃口とかグリップとかは絶対に手荷物検査で引っかかるのよね、、、、。木元兄弟が使う拳銃は便所から降りた貨物室に仕込んであるようですが、もう何がなにやら???この脚本家ふざけてるんでしょうか???
コックピットが制圧され副操縦士が撃たれますが、ちょっと待て!!! 操縦室で銃をぶっ放すとか正気の沙汰とは思えません!!!しかも至近距離からの発砲(笑)
弾が貫通して計器を壊したら即墜落だし、ガラスが割れでもしたら気圧差で酸欠になってパイロット窒息→墜落ですよ。飛行機内で発砲するってのは自殺に等しいんです。絶対にやりません。ハイジャックするなら刃物の凶器が必須です。
ここからは怒濤の展開で雲の上での米倉涼子ワンマンライブが始まります。衛星携帯が欲しくてコスプレして操縦席に向かう米倉ですが、まず制服手に入れて着替えている間中も犯人に気付かれないというスニーキング能力の高さ。これならポイズンと木元ブラザーズを実力で制圧した方が早いのでは?
さらに便所に隠れて衛星携帯で地上とコンタクトをとるんですが、米倉さん声出し過ぎ(笑)。飛行機の便所のドアなんて薄いですよ。木元もドンドン扉を叩く前に耳をつけろ!!!ようやっと米倉のアクションが入りまして、機内ではポイズンがネズミ(笑)の存在に気付きます。ネズミってセンスもどうかと思いますが、ここでもやっぱり発砲があってついに米倉とフェイストゥフェイスが実現します。ところがここで第4の男が登場!!!政府がついに犯人の要求を飲んで・御堂啓一郎釈放→射殺のコンボが決まったあと、木元ブラザーズ兄が殺され、ポイズンがエスケープして、なんだかんだがあって米倉がついに操縦桿を握ります!!!
キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
もはや無茶苦茶です。ここまで交渉要素ゼロ。あれ?タイトルって「交渉人 THE MOVIE」だったんじゃなかっt(以下略
もうなんか色々あるんで良くわかんないんですが万能なんですよ米倉さんは!!! 目をずっと見開いてるしアイシャドウが濃すぎて気持ち悪いですが、でも万能なんです。

【まとめ】

面倒くさくなって中盤以降投げやりにしましたが、なんせ酷いんですよ。怖い物見たさで行くのは良いですが、私からアドバイスがあるとすれば「やめた方が良いですよ」ってことです。止めはしませんが1,000円でももったいないです。あとこれだけは書かねばならないでしょう。本作で伝わってくる政治主張です。
 一つ、政治家は皆腐っておる!!!特にアメリカのシンパは最低だ!!!
 一つ、若者にフリーターが多いのは社会が悪い!!!格差社会だ!!!
 一つ、警官なんて皆適当だ!!!テロリストのが格好良いぞ!!!
 一つ、マーク・チャップマンは国に守られている!!!
どうかしてるぜ、、、全く。

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記事の評価
おとうと

おとうと

本日は「おとうと」を観てきました。

評価:(85/100点) – 大満足です。


【あらすじ】

吟子は夫に先立たれ娘と姑の3人暮らしで薬局を営んでいた。娘の結婚式当日に音信不通だった吟子の弟・鉄郎がひょっこりと現れるが、よりにもよって泥酔して披露宴をメチャクチャにしてしまう。このことがきっかけで吟子のもう一人の弟・庄平は鉄郎に絶縁を宣言する。しかし吟子はどうしても縁を切れない。
暫く経って、大阪より鉄郎の恋人が吟子の元を訪れる。彼女は、鉄郎に130万円を貸したまま彼が音信不通になったと告げる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 小春の結婚
 ※第1ターニングポイント -> 小春の披露宴
第2幕 -> 小春の離婚と鉄郎の失踪。
 ※第2ターニングポイント ->吟子が鉄郎に絶縁を告げる。
第3幕 -> 鉄郎の最期。


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【感想】

見終わっての率直な感想は、「あ~~~~映画見た。」という満足感です。さすが山田洋次。中居正広やラサール石井の”ノイズ”が気にならないほど、とても良くできた映画です。本作には最近のエンターテイメント映画にありがちなドラマチックな展開や社会的メッセージなんかはありません。むしろヨーロッパのアート系映画に近い構造をしています。でも、実際にはそれこそが日本映画なんです。日本にだって昔はこういう良い作品があって賑わっていたんです。日本市場は今やハリウッドの映画産業に飲み込まれてしまっていますが、それでもまだ山田洋次監督のような映画人にきちんとバジェットが渡る環境があることは大変喜ばしいです。

物語の肝

本作には際だったドラマがありません。ログラインで表すならば、「ある女にはどうしようもない弟がいて彼が死んだ。」と超簡潔に終わってしまいます。要は展開しないわけです。ですが、それこそが映画の醍醐味だと個人的には思っています。ハリウッド・エンタメ映画も好きなんですが、やっぱり「いま私は映画を見た」と満腹感があるのは、この種の映画なんです。
劇中での鉄郎は考え得る中で最悪レベルの「困った家族」です。そして頭がイカレてるかと思うほど馬鹿で人間のクズです。だけれども家族は家族、吟子にとっては紛れもなく弟です。尻拭いをしてやってるのに調子の良いことばっかり言ってフラフラしているダメ男。そんな奴でも、やっぱり家族なら死ぬ間際には世話をしてやりたくなりますし心配だってします。吟子があまりにも聖人すぎると思う方もいらっしゃるかも知れませんが、家族なんて実際はそんな物なのだと思います。というか思えてきます。
それを表すのに「家族の絆」みたいな安っぽい表現は使いません。小春と旦那のイビつな関係、吟子と姑の関係、吟子と鉄郎の関係、そして吟子と小春の関係。利害を超えて憎まれ口を叩きながらも愛し合う家族が居れば、お互い支え合う親子が居て、その一方で合理的な会話以外を否定する夫婦も居ます。そのいろいろなシチュエーションを観客に見せた上で、どれが正解とメッセージを送る事も無く表現していく山田洋次監督の演出力。ただただ拍手をお送りさせていただきます。本当に素晴らしい作品です。

少々気になる点

とはいえ、気になる点が無いわけではありません。最も大きいノイズは吉永小百合さんの演技です。
断っておきますが私は女優・吉永小百合の大ファンです。だからこそ今回の棒読みで滑舌良くハキハキした文語調の台詞回しは、ちょっと信じられないレベルです。”あの”吉永小百合さんにしては酷すぎます。それと反するかのように蒼井優と鶴瓶師匠の演技は冴え渡っています。それだけに果たして演出が悪いとも思えず、もしや吉永さんが衰えてしまったのではと恐れています。映画の出演数を絞っているようですので、次の作品までの時間で修正できると信じています。

【まとめ】

「山田洋次約10年ぶりの現代劇」の煽りはまったく嘘ではありません。「博報堂DYと朝日が絡んでるから糞映画だ」と判断して観に行かないのは賢明ではありません。是非、劇場で見てみてください。
この種の映画は、観客の感想=観客の自己分析につながっていきます。山田監督が作中で意見を明確に述べていないため、観客は自分の体験や過去に読んだ物語りからモロに影響を受けます。ですので作品は自身の鏡、この作品を語るということは自分をさらけ出すことにつながります。終わったあとの満足度と友人と意見を言う材料になる作品です。
だから、悪い事は言いませんので映画館に見に行っておくべきです。オススメです!!!

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記事の評価
BANDAGE

BANDAGE

おととい「BANDAGE」を見てきました。

昨日書く時間がなかったので、ちょっとずれてしまいました。

評価:(70/100点) – 自主制作映画なら絶賛してたかも知れません。


【あらすじ】

高校生のアサコは親友のミハルからLANDSというインディバンドのCDをもらう。その後すっかり気に入ったLANDSのライブに出かけたアサコは打ち上げに潜り込み、あろうことかボーカルのナツにナンパされてしまう。いろいろあってアサコは音楽事務所に就職し、LANDSに関わっていくようになる、、、。


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【感想】

妄想とファンタジーに彩られた青春映画の王道的な作品だと思います。
レイトショーで見たんですが、観客は20人ぐらいで私以外は皆女性でした。終わった後にギャルっぽい3人組が「なにこれ!?ラブストーリーじゃないし、、、よくわかんない。」と言っていたのがとても印象的です。「ゆとりって怖~い」とか思ってしまいました、、、あんまり年齢変わらないと思うんですが、妙に老け込みます(笑。

基本的なストーリーについて

ギャルの方々は脇に置いておいて(笑)、ストーリー部分については非常に分かり易いです。要はアサコという平凡な女子高生が、大好きなアイドルと個人的な知り合いになって、ついには仕事でも関わるようになるけど挫折を味わって成長する話です。非常にシンプルな青春作品です。そしていうなればジャニーズ・ファンの女性の妄想の映像化でもあるわけです。
スノープリンスをボロカスに書いたので私はアンチ・ジャニーズかと思われているかも知れませんが、単に興味ないので一般俳優として評価してしまうだけなんです。そんな私から見ても、本作のファン妄想はそこまで気持ち悪い感じはしません。おそらく北乃きいが頑張っているのがすごく伝わってくるためだと思います。妄想は多いに結構じゃないですか。よく言えばナチュラルで悪く言えば超大根な赤西仁の演技も、少なくとも本作のトーンには合っています。下手だとは思いますが酷いとは思いません。クライマックスがちょっと唐突すぎる気もしますが、「青春なんだからそんなもん」という気もしまして、そこまで違和感なく楽しめました。ストーリーは結構良いです。

演出・映像について

問題はこの映像表現についてです。終始ホームビデオのようにグラグラ揺れる映像は、正直気持ちが悪くなってくると共にイライラします。要は「現実世界と地続きな作品世界」を表現するための偽ドキュメンタリーテイストを出すためなのですが、それにしても揺れすぎ。すごくオッサン臭いカット割りも含めて、非常に素人っぽい作りになっています。なので、本作はどっからどう見てもインディ映画に見えます。でも実際はジャニーズと日テレの結構お金を掛けた映画なわけです。これは良くも悪くも岩井俊二色なんですが少し気になります。でも本作の凄いところは、その「演出の下手さ」と「90年代という”ちょっと前のダサさ”」が見事に混同出来ることです。つまりわざとダサくしてるようにも見える(笑)。意図してるかどうかは分かりませんが、プロデューサーのグッドキャストだと思います。

本作の掲げる音楽問題について

演出面ではガタガタですが、やはり小林武史は音楽の人です。本作の中でも、彼のバンド観であったり音楽観が出てきます。ステレオタイプ過ぎる気もしますが、でもすごくシンプルに表現していて非常に好感が持てました。
本作の中盤にLANDSが直面する問題はロックファンの間では当たり前に言われていることです。最近ですと「OASIS問題」というヤツです。
OASISというバンドは皆さん大方がご存じのようにイギリスの超人気ロックバンドです。彼らは最初期には音響音楽としてのロックを追求していたんですが、後に大衆歌謡曲に路線変更します。この時にバンドメンバーのインタビューやファンコミュで論争が合ったわけです。一方では「音楽は芸術なんだからストイックに質を追求して欲しい」というファンが居て、でもその一方で「みんなに聞いてもらえる曲を作って有名になって欲しい/大金持ちになりたい」という感情もあるわけです。どちらも正しいことだと思います。これはロックバンドが潜在的に持っている普遍的な問題です。それはひとえに、ロックがポップスと親和性が高すぎるためです。極端な話「チャート1位が狙えるんだから、曲の質を捨てでも1位を獲りに行く」という誘惑は常にロックバンドにはつきまとっていると言えます。そこで獲りに行く人も入れば、いわゆるメジャーを離れて独自路線を突き進む人も居ます。前者がOASISであり後者がSONIC YOUTHだったりするわけです。
(この辺の音楽について興味のある方は、私の敬愛する大友良英さんのHP「JAMJAM日記、別冊 連載「聴く」」を是非ご一読下さい。)
本作のLANDSにおいては、音響派のユキヤとアルミがトラックメイカーを担い人気より質を優先しようとします。一方マネージャーのユカリは売れることを最優先します。別にどっちも正しいわけで、その間で若いバンドメンバー達が苦悩します。とてもステレオタイプでありがちな話ですが、それだけに見入ってしまいました。やはり小林武史という偉大な「歌謡曲メイカー」に語られると背筋も伸びるってもんです。
ただ、、、その割にとか言っちゃいけないんですが、、、肝心のメインテーマソング「BANDAGE」の質はちょっとどうなんでしょう?
これって劇中では「LANDSの原点」であり「質が良くって評判になった」曲のはずなんです。
そんな2010年になってテイラー・デインのパクリ聞かされても、、、ねぇ(苦笑)。そりゃ小林監督にとっては青春の曲かも知れませんが、、、テーマを考えても、もっと他にパクれるバンドがあったでしょうに。それこそOASISでもいいし、Blurでもいいし、なんならgarbageでも。いくらでも「質と人気」の天秤で「質」から「人気」に転向した人いるのに(苦笑)。それともLANDSがテイラー・デインと同じ「一発屋」であることの暗喩なんでしょうか(笑)?

【まとめ】

ネット上では割と賛否が分かれているようですが、私はかなり楽しめました。なかなか良い青春映画だと思います。出てくる女性達がみんな元気ですし小林監督の女性の趣味が良くわかります。裏テーマでもある不倫とかも含めてですね(笑)。DVDが出たらたぶんレンタルでもう一回見ると思います。
見る前はジャニーズファン専用のアイドル映画かと思っていたんですが、なかなか良いですよ。オススメです。

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記事の評価
板尾創路の脱獄王

板尾創路の脱獄王

今日は「板尾創路の脱獄王」を見てきました。

評価:(1/100点) – およそ考え得る最凶の映像兵器


【あらすじ】

鈴木雅之は無銭飲食をして服役中の囚人である。しかし度重なる脱獄で刑期は膨らむばかり。ついには無期懲役となるも、やはり脱獄をやめない。そんな鈴木に対して脱出不能の監獄島行きが言い渡される、、、。


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【感想】

正直な話、この映画について1分でも長く考えるのは人生の無駄使いだと思います。それほどまでに最低な映画です。ダサイ音楽。幼稚な演出。延々と続く顔面のどアップ。巧みとはかけ離れた三流お笑い芸人達のお遊戯会的投げやり演技。すべてが想像を遙かに上回るレベルのフィルムです。そしてそれが94分も続きます。
ルドヴィコ療法も真っ青な最新の映像兵器です。
そして本作を表すには一文で十分です。
「ネタ振りのためのネタ振りほどつまらない物はない。」
最後の1分がやりたいためだけに93分を見させられる。ただそれだけの映画です。っていうか映画って呼びたくないです。
こんなもん「ガキの使い~」の5分枠でやれ!!!
まだ1月ですが、今年これ以下の作品が出るんでしょうか?恐ろしいことです。
マジ金返せ。
ちなみに50人ぐらいの観客が居ましたが、最初から最後まで愛想笑いの一つも起きませんでした。
お笑い芸人としては致命傷でしょう。

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記事の評価
釣りバカ日誌20 ファイナル

釣りバカ日誌20 ファイナル

さて2010年最初の映画はもちろんこれ。
釣りバカ日誌20 ファイナル」です。

評価:(60/100点) – ヌルい。だが、それが良い!


【あらすじ】

鈴木建設のハマちゃんこと浜崎伝助は釣りが大好きな駄目営業マンである。ところが持ち前の人望によって200億の案件を受注し、会長賞を獲得してしまう。会長はもちろんスーさんこと鈴木一之助。鈴木建設創業者にしてハマちゃんの釣り仲間だ。
祝いに訪れたスーさん馴染みの料亭「沢むら」で、ハマちゃんはスーさんが娘のように大事に面倒を見ている沢村葉子とその娘・沢村裕美を紹介される。亡くなった葉子の両親はスーさんの大親友であった。自身の老い先が短いと悟ったスーさんは、最後に葉子の父の墓参りに北海道を訪ねたいと申し出る。北海道と言えば渓流釣りの名所が目白押し。こうしてハマちゃんとスーさんの北海道旅行が始まった、、、。


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【感想】

あけましておめでとうございます。
2010年のお正月、10年代の始まりにふさわしい映画と言えば、もうこれしかないでしょう。日本最後のプログラムピクチャーにしてお正月映画・お盆映画の代名詞「釣りバカ日誌」であります。
とにかく全編を通してヌルいヌルい。微妙なギャグと古くさい演出のオンパレードで、客観的に見れば映画としてかなり如何な物かと思う出来です。
本作のメインストーリーは劇場予告にもあるとおり、沢村葉子がスーさんの隠し子ではとの疑惑と、裕美の同棲騒動から発展する沢村親子の話です。しかし正直に言って北海道および沢村親子の件は別にどうとも発展しません。極端な話、全部カットしても話は通じます。この適当な感じの脚本とヌル~い掛け合いが全編で続きます。
ここまで書くと酷い駄目映画に思えますが、でも本作はそれで良いと思いますし、それ”が”良いのです。理由は後述します。
役者の方々は全員素晴らしいです。三國さんや西田さんは言わずもがな、益岡徹さんや笹野高史さん、若手では吹石一恵さんも含めて、どなたも皆本当に素晴らしい仕事を見せてくれます。若干一名、塚本高史さんだけが浮いてますが別に出番もセリフも少ないのであんまり気になりません。そもそも演技には期待しない若い女性を劇場に呼ぶための撒き餌ですから(笑)。またカーテンコールで、本作初期のレギュラーメンバーのある方の顔が見えます。最近では健康上の理由で表舞台から離れていますので、本当にうれしいサプライズです。三國さんの本当にうれしそうな笑顔と相まって、私なんぞはこのカーテンコールだけで1000円分の価値はあると思ってしまいます。

最後のプログラム・ピクチャーということ

本作は現存する日本最後のプログラム・ピクチャーのシリーズです。プログラム・ピクチャーとは昔の劇場で二本立ての繋ぎで流れる、時間穴埋め用に適当に作られたB級映画です。ただ一概に適当=駄作とも言えませんで、もともと看板映画ではないので観客の存在を気にしないことから実験場という側面が強くありました。そして毎回独立した作品を撮り下ろすのは面倒ですから、必然的にシリーズ物が多くなります。一聴するとつまらなそうに聞こえますが、とはいえ東映のトラック野郎や不良番長シリーズはいまでも人気がありよく浅草とか神保町の単館でリバイバル上映しています。
プログラム・ピクチャーの低予算シリーズものは、「早撮り低予算」という必然から連続TVドラマのような雰囲気になっていきます。火曜サスペンスのシリーズ物をちょっとまじめに撮ったヤツと思ってもらえれば、当たらずとも遠からずです。
90年代からシネコンが日本でも爆発的に増えました。私は映画ファンとしてこのシネコン大増殖には大賛成ですし大変感謝しています。画一的な上映環境を提供してくれるシネコンのおかげで、都会だろうが田舎だろうが系列シネコンではほとんど同じフィルムが上映されます。ですので、田舎でもある程度ビッグバジェットの映画は見ることが出来ます。もちろん角川やハピネットが配給するB級ホラーや東宝の実験作は東京・大阪でしか見られませんが、それでも映画文化を考えれば田舎の映画上映機会を増やした功績は大きいと思います。一方で、経営的な面で単館に厳しくなっているのは間違いありません。私の近所の単館映画館も10年ぐらい前に2館が閉鎖してしまいました。子供の頃にドラえもんや東映まんがまつりを見に行った思い出の映画館が無くなるのは本当に寂しい物です。でもジャック&ベティや有楽町スバル座のように、大資本の後ろ盾が無いながらも差別化で頑張っている良質な映画館はまだまだあります。
ちょいと脱線してしまいました。シネコンが増えたことによる煽りは映画館だけにあるわけでは無く当然作品側にもあります。その一つが上映形態です。シネコンでは回転率をあげるために「全席指定入れ替え制」が当たり前です。一方でリバイバル上映や2番館(初回ロードショーの半年後ぐらいに余所で使ったフィルムのお下がりで上映するムーブオーバーが主流の映画館)では二本立て三本立ての自由席が主流です。朝チケットを買って入れば、いつまででも座っていられる形式です。前述のプログラム・ピクチャーはあくまでも後者の映画館でメイン作品とサブ作品の間に上映される「トイレ休憩用」の作品です。なのでシネコンでは必要ありません。このシネコン全盛の時代には、プログラム・ピクチャーが流れる環境自体が無くなってしまっています。釣りバカ日誌シリーズの終了も、三國さんのお年の問題とは別にやはりこの上映環境の問題が大きいと思います。日本最後のプログラム・ピクチャー・シリーズの終了が意味するのは、この複数本立てで新作を上映するという文化の終焉を意味します。かつてはメイン作品の看板スターで客を呼び、サブ作品で若手のスター候補を売り出すというのが常識でした。70年代の大映倒産で映画制作所とスター俳優の専属プロダクト制が終焉し、そして00年代のシネコン全盛で二本立て文化が終焉します。

【まとめ】

以上のことから、本作はある意味では日本映画文化の遺産であり、そしてプログラム・ピクチャーを象徴する作品でもあります。
適当な脚本も古くさい演出も、それ自体が一つの「型」として成立しているように思えるのです。本作はいわゆる「お正月映画」としてよりも、「最後のプログラム・ピクチャー」としての文脈を背負ってしまっています。だからこそ、ラストのカーテンコールでちょっと泣いちゃうわけです。別に良い話でも無いですし、泣くほど面白い作品ではありません。でも、こういうしょうもない作品を上映する環境が日本には存在していたんだということと、そしてそれが終わってしまったということ、それ自体が本作の価値だと思います。カーテンコールで三國さんが手を振る姿はまさに日活スターが手を振る姿であり、ひいては日本映画黄金期が手を振っているように見えてしまいます。
非常に残念な事に劇場は客入り4割ぐらいで、ほとんどが中年夫婦と老夫婦の家族連れでした。こういう作品だからこそ、是非20代・30代の人たちにも見て欲しいですし見るべきだと思います。私たちの世代は、こういう文化があったんだと言うことを子供達に話す義務があります。点数は60点としましたが全世代必見の歴史的作品です。全力でオススメします!!!
合体!!!

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インフォーマント!

インフォーマント!

インフォーマント!」を見てきました。
「味の素」とか実名出していいのか心配になってしまいました。

評価:(20/100点) – マット・デイモンじゃね、、、そこだけじゃないですけど、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ウィテカーの工場でウィルス汚染が見られ、日本から脅迫電話を受ける。
 ※第1ターニングポイント -> ブライアン捜査官に価格カルテルをリークし、ウィテカーがスパイになる。
第2幕 -> FBIのスパイとしてのウィテカーの活躍。そしてADMに強制捜査が入り、幹部連中が逮捕される。
 ※第2ターニングポイント -> ウィテカーの裏金作りが判明する。
第3幕 -> ウィテカーの正体と顛末。


【あらすじ】

マーク・ウィテカーはADM社の最年少幹部である。彼の管轄であるコーンからリジンを生成する工場から、ある日ウィルス汚染が検出され生産量が目標に到達しなくなってしまう。そんな彼の元に日本から脅迫電話が掛かってくる。ADM社に産業スパイがおり、その内通者がウィルスを混入したという。事件に発展しFBIから協力を求められるウィテカーは、別件としてADM社が行っている世界を股にかけた価格カルテルの情報をFBIにリークする。興味をもったFBIはウィテカーに証拠集めの協力を指示、ウィテカーはFBIのスパイとしてミーティングの盗聴や書類の横流しに協力していく、、、。


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【感想】

スティーブン・ソダーバーグ監督でマット・デイモン主演、制作ジョージ・クルーニーということでオーシャンズ・シリーズが連想されますが、まぁかなり微妙な出来になっています。というのも、この作品は全体を通して目的地がボケボケだからです。
「ちょ、、、おま、、、話が変わってんじゃねぇか、、、。<30分後> あれ、、、また話変わった、、、どういうこと?」
こんな感じで110分間シリアスな状況の上で笑えないギャグを延々とやってる映像を見せられて辟易するというか、イライラしてきます。
ここからはネタバレ全開となります。もし本作を未見で超楽しみにしている方はご注意ください。

構成の問題

本作は話の構成が煩雑すぎます。上記の「話が変わる」という点なのですが、本作では大きく3つの事件が起こります。はじめにリジン生成工場のウィルス汚染問題。次にADM社の価格カルテルの問題。最後にウィテカーの「双極性障害(=躁鬱病:超気分屋)」と彼の犯罪についてです。
ところが本作をブラック・コメディにしようとしたために、この3つの事件がどれもとっちらかってしまっていて、まったく深く入り込まないんです。実話をもとにした作品であればこそ下手な事は書けないということかもしれませんが、それにしても酷いです。
本作を乱暴にまとめてしまえば「虚言癖の酷いウィテカーがヒーローになろうとして、実際にヒーローになって、そして失脚する話」です。なのでウィテカーがヒーローになるところで観客がカタルシスを得ることが必須な訳です。さもなければ失脚するところに落差が出なくて面白くありません。ですが肝心のヒーローになるところ、すなわちウィテカーが内部告発者として大企業の犯罪を世間に暴くところがまったく盛り上がりません。それはひとえに犯罪全体の重大さとウィテカーの活躍がいまいち描かれないからです。幹部達が逮捕されるシーンは本来ならばクライマックス級に盛り上がらなければなりませんが、実際に逮捕される瞬間ですら手錠掛けや取り調べがなく非常にショボいです。これじゃウィテカーの正体がばれた時も全然すっきりしません。単なるマヌケにしか見えないわけです。

スティーブン・ソダーバーグについて

スティーブン・ソダーバーグというと近年ではオーシャンズ・シリーズで知られていますが、元は職人肌の優等生監督です。非常に手堅い脚本と手堅い撮影で、どんな題材でもそれなりにこなしてしまいます。一方で、この手堅さが面白くない理由にもなってしまっていまして、デビュー作の「セックスと嘘とビデオテープ」でパルム・ドールを獲得した後はそれなりの作品を続けています。アカデミー監督賞なんかも獲ってますが、ファンが付く監督と言うよりは、業界関係者に重宝されるタイプの監督です。
本作「インフォーマント!」もある意味では非常にソダーバーグ監督らしい作品です。つまり、あまり盛り上がらない脚本をそれなりの編集テクニックでそれなりにまとめた佳作といったところです。あしざまに「糞映画!金返せ!」って感じでもありませんが、まぁ別に見なくても良いというか、たぶん来週には存在を忘れてると思いますw

【まとめ】

そんなわけで、本作はマット・デイモンという天才なのに大根役者で童顔なオッサンが醸し出す「とっちゃん坊や感」が悪い方に働いて、こじんまりとした学芸会的空気に包まれています。題材は面白いはずなんです。だって虚言癖全開でヒーローになりたい中年サラリーマンですよ。これをデビッド・リンチが撮ってたらたぶん大爆笑かつドラッギーな気持ちワル~い怪作になったはずです。もったいないな~と思いつつ、レンタルDVDで半額キャンペーン中に見るならオススメです!



余談ですが本作で最も気になっているのは、役作りのために太ったマット・デイモンがきちんとダイエット出来るかです。
もしやワールド・オブ・ライズのラッセル・クロウのように戻らなくなったりして、、、気懸かりですw

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理想の彼氏

理想の彼氏

理想の彼氏」を見てきました。

評価:(1/100点) – モテない女性のための自己満足映画


【あらすじ】

サンディは郊外で子供2人に囲まれ優雅な生活を送っていた。しかしある日、夫の浮気に気付き離婚する。子供を連れてニューヨークに出てきた彼女は、コーヒーショップの二階に住むことにする。そこでコーヒーショップで働くアラムに子供の世話を頼んだことから、彼との恋愛が始まる、、、。


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【感想】

いきなりですが男が一人で見る作品じゃないです。というか本作は中年でブサイクな独身のくせに自意識が高い「さびしくないもん」的な「いつか王子様が迎えに来てくれる」型のキモい女性が見るための映画です。はっきりいってアラムのキャラが酷すぎるんです。だって、頭が超よくて人付き合いも抜群なのに、女にがっついてなくて自分だけを一途に思ってくれて、超一流企業から熱烈に誘われていていつでもエリートになれる純朴なイケメンフリーターですよ。意味が分かりません。どんだけスーパーマンだよ。っていうかそれってフリーター枠にいれて良いのでしょうか?
公式サイトは40歳バツイチが恋に落ちたのは、24歳フリーターだった。ですよ。見終わった後に中年の女性2人組が「よかったね」と言ってるのを聞きましたが、おそらく本作の男女を入れ替えていただければ酷さが良く分かると思います。
40歳バツイチの男が恋に落ちたのは、頭が良くて超可愛いのに、自分以外の男には興味のない、アイドル事務所に誘われてるけど断っている超お金持ちの純真な美少女だった。



死○ばいいのに。マジで○ねばいいのに。酷すぎて舌打ち連発ですよ。チッ、チッ、チッ。
なに考えてるんですか!?
っていうか美談でもなんでも無いんですけど、、、。
キャサリン・ゼタ・ジョーンズも普通のラテン系おばちゃんだし、、、。



チッ、チッ、チッ。

【まとめ】

見に行った僕が悪いんですが本当に酷いです。物語構成もご都合主義の極みですし、なんと突っ込んで良いのか分かりません。実は収容人数800人越えの大きなシアターで見たんですが、20人程度しか観客が居ませんでした。
大きな劇場でゆったりとポップコーンを食べたり昼寝がしたい人には、オススメです!!!
こんなん見るなら「イングロリアス・バスターズ」「マクロスF」でも、もう一回見れば良かったです。
チッ、チッ、チッ。

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