ヒックとドラゴン

ヒックとドラゴン

本日は二本です。
1本目は

ヒックとドラゴン」を見ました。

評価:(95/100点) – ちょっと説教臭い傑作ファンタジー。


【あらすじ】

襲い来るドラゴン達と戦うバイキングの村で、村一番のドラゴンハンターの息子・ヒックはヘタレと思われていた。ある日、彼は自分の能力を証明するため自動投げ縄機を開発する。実践で初めて使った日、彼は誰も見たことのない伝説のドラゴン、ナイト・フューリーを打ち落とす。後日ドラゴンの落下地点へと出向いたヒックだったが、どうしてもトドメを差すことが出来ずに縄をほどいて解放してしまう。自分のせいで尾びれをケガしたドラゴンを放っておくことが出来ないヒックは、やがてドラゴンの世話をし、交流を深めていくことになる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 村がドラゴンに襲われる。
 ※第1ターニングポイント -> ヒックがトゥースレスに魚をあげる。
第2幕 -> ヒックとトゥースレスの交流。
 ※第2ターニングポイント -> ストイックがドラゴンの巣へと向かう。
第3幕 -> レッドデスとの戦い。


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【感想】

本日の1本目は「ヒックとドラゴン」です。全米では大ヒットなんですが、あんまりお客さんは入っていませんでした。年齢層もかなり低く、子供達が大騒ぎして全然映画に集中出来ませんでした。
とはいえ、本作は本当にすばらしいです。ストーリーも、キャラクターも、演出も、文句の付けようがありません。強いて言えば一部のキャラが類型的過ぎるんですが、それも「3DCGアニメ」という類型的でも許される絶妙なリアリティラインに後押しされてそこまで気になりません。
本作は非常に良くあるタイプのファンタジーです。対立する種族間での交流とそれを巡る周囲との軋轢、そして最終的には両種族で共通の敵を倒すという所に着地します。この基本系に仲間との交流や父親との不器用な関係がプラスされるわけです。
ただの成長物語と言えばそれまでなのですが、この「どうしようもないヘタレが世界の価値観を変えてしまう。」ということ自体で、もう十分ガッツポーズが出るような内容なんです。それをとても丁寧にエピソードを積み重ねて描いていきます。
原作からはかなり大きく変更を加えられていますが、特に一番大きいのはヒックがドラゴン語をしゃべれないという部分です。個人的には、これは変えて正解だったと思います。単純に「猛獣使い」として言葉をしゃべれるという設定よりも、言葉が通じないからこそ仕草や態度で心の交流をしていく本作の方が、より異種間交流の本質に近いと思います。
最終的には文字通り2人で1つになるヒックとトゥースレスの描写も、日本ではなかなか出来ないくらい重たい描写になっています。
なにより忘れてはいけないのは本作のキャラクター造形のすばらしさです。もちろん人間達の造形も良いんですが、それにもましてドラゴン達が完璧すぎます。ぬいぐるみ欲しいですものw ナイト・フューリーの犬っぽさや、ダブルジップの怖さと愛嬌の絶妙なバランス、最高です。

【まとめ】

貶すところが見当たらないくらいの完璧な作品ですが、一点だけどうしても許せないところがあります。それがナイト・フューリーの名前です。英語ではトゥースレスとなっていますし、原作の翻訳本でもトゥースレスです。しかし本作の吹き替え版では、「トゥース」となっています。これは本作の宣伝をお笑い芸人のオードリーにさせるため彼らの一発ギャグ「トゥース!」と掛けたという死ぬほど下らない理由から来ています。宣伝のためにキャラクターの名前を変えるというのは、ちょっと聞いたことがありません。というか、100%作品に対するリスペクトがありません。このアイデアを考えた人間はどういう職業倫理を持っているんでしょうか? これは完全に作品への侮辱です。特に本作にはトゥースレスと呼ばれるきっかけになるエピソードまできっちり描かれています。別に適当に名前を付けてるわけではないんですよ。ある意味吹き替え問題なんかよりもよっぽど深刻です。あいにく地元では吹き替え版しか上映していないのですが、こんな侮蔑的な事をされたあげく選択肢もないというはどういう事なんでしょうか。
間違いなくオススメではありますし今年屈指の良作ですが、上記のような客を舐めた配給の方針が理由であんまり大々的にはオススメしたくありません。それにしても、こんな横暴な宣伝をするってこと自体、文化レベルが低すぎます。

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小さな命が呼ぶとき

小さな命が呼ぶとき

2本目は

小さな命が呼ぶとき」です。

評価:(25/100点) – 淡々として温度の低いプロジェクトX


【あらすじ】

製薬会社に勤めるジョン・クラウリーには子供が3人居る。しかし内2人がポンペ病に罹っており、長女のメーガンは余命1年程度と目されていた。ある日、ジョンは筋ジストロフィー研究の権威・ストーンヒル博士を訪ねる。大学からの冷遇に不満を抱えていたストーンヒル博士は製薬のベンチャー企業設立をジョンに持ちかける、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> メーガンが呼吸困難を起こす。
 ※第1ターニングポイント -> 製薬会社を起こす。
第2幕 -> 薬の開発競争と買収。
 ※第2ターニングポイント -> 4チームのコンペが始まる。
第3幕 -> 子供達が臨床試験を受けられるかどうか。


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【感想】

本日の2本目は「小さな命が呼ぶとき」です。あまり大々的に宣伝している作品ではありませんが、中高年を中心にそこそこ観客が入っていました。予告やポスターを見ると完全に「難病もの」のジャンル映画かと思うのですが、ところがどっこい。本作はドキュメンタリーものです。エンドロールで監修としてジョン・クラウリー本人がクレジットされていましたように、本作は実話を元に脚色した「子供が難病に罹った父親が、薬を手に入れるまで」のストーリーです。
いきなり結論を書きますと、本作はジョン・クラウリーの暴走をどこまで許せるかが評価の分かれ目です。演出はあくまでもドキュメンタリータッチで、劇的に盛り上がる場面が1カ所もない退屈なものです。ストーリー自体もまったく盛り上がらず非常に淡々とただただイベントを消化していきます。ですので、ジョンに乗れなければ単なる退屈な映画です。極端な話、「世界丸見えテレビ特捜部」とか「奇跡体験アンビリーバボー」の30分枠の再現ドキュメンタリーと大差ありません。
その肝心のジョン・クラウリーですが、早い話が結構嫌なヤツなんですw
ストーンヒル博士を利用するだけしておいて裏切ったり、ベンチャーを売って60万ドルほど手に入ったら調子に乗って湖畔の豪華な一件家を買ってみたり、かといって娘の容体がちょっと悪化したらテンパって会社の重役にケンカ売ってみたり、人間としては限りなく最低な男です。ところが、これらは全てアメリカ映画にありがちな「家族愛」によって正当化されます。劇中でストーンヒル博士が「私が君の立場だったら、子供のために私など虫けらのように踏みつぶしていくだろう」とお墨付きめいたものを受け取るんですが、全然解決になってないというか、単に監修に入っているジョン本人に気を使っているようにしか見えません。
結局、今作は「家族愛に溢れた男が科学者達の尻を猛烈に叩いて薬を作らせる話」です。恐ろしいのが、肝心のジョンが努力している様子がまったく描写されないことです。序盤の資金集めの部分はともかく、買収されて以降の後半は単に研究者達をかき回しているだけです。あげく最後の最後には、他の病気の子供達を出し抜いて、見事自分の子供達を臨床テストの対象にするんです。自分の子供さえよければなんでもいいの? ストーンヒル博士のために支援してくれた「ポンペ病の子供達のための基金(※すみません。うろ覚えです。)」のメンバー達は無視? なんぼなんでも酷すぎるでしょう。これって美談なのか!?しかも結局ストーンヒル博士と関係ないチームの薬を採用してるし。

【まとめ】

話としては全く駄目な上、倫理的にもちょっとどうかと思いました。先日の「ザ・ロード」とも被るのですが、この倫理面は自分に子供が居るかに賭かっているように思えます。キャストだけは豪華ですので、あまり期待せずにテレビの再現映像をみる感じでフラっと入る分にはオススメできるかも知れません。

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借りぐらしのアリエッティ

借りぐらしのアリエッティ

今日の最後は

ジブリ最新作「借りぐらしのアリエッティ」です。

評価:(55/100点) – 演出は良し。でもストーリーが、、、、。


【あらすじ】

小人のアリエッティは両親とともに人間の家の床下で暮らしていた。ある日、家に養生に来た少年に、アリエッティは姿を見られてしまう。姿を見られたものは引っ越さなければいけないという小人たちのルールを尻目に、アリエッティは少年と交流していく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 翔が養生に来る。
 ※第1ターニングポイント -> アリエッティが”借り”で角砂糖を落としてしまう。
第2幕 -> アリエッティと翔
 ※第2ターニングポイント -> アリエッティの母が誘拐される。
第3幕 -> 母の救出と引っ越し。


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【感想】

本日3本目はジブリ最新作「借りぐらしのアリエッティ」です。宮崎駿が引退したくても後継者がいない苦悩が続くジブリですが、本作ではまたしても新人監督を起用しています。といっても米林監督は本職が原画家ですので、演出という面ではほとんど素人同然です。やはりジブリのネームバリューは絶大で、本当にお客さんがよく入っていました。それも全年代勢揃いという感じで、まだまだブランド力は健在です。
このブランド力がある内に早いところ新監督を発掘しないといけないわけですが、ジブリの苦悩はもしかしたら米林監督出現でなんとかなるかも知れません。本作もゲド戦記や猫の恩返し同様にダメはダメなんですが、しかし演出は悪くありません。むしろ宮崎駿自らの書いた脚本があきらかに失敗しています。
この失敗は「キャラ立て不足」に尽きると思います。なにせ翔とハルが決定的に不審者以外の何者でもないんです。ハルがなんであそこまで「こびと」を捕まえようとするかが分かりませんし、翔に至ってはいきなり「君達は絶滅する種族なんだ」とかわけ分からんこと言ったと思ったら「君は僕の心臓の一部だ」とか言い出す狂人です。心臓病も全然活かされていませんし、翔の両親は一切出てきません。まったく意味不明です。
しかし一方のアリエッティ家はきちんとキャラが立っています。開始30分程度で”借り”に出かけるシーンまでは、傑作の予感すらするほど良く出来ていました。それだけに後半の失速が半端じゃなく、特に人間側があまりに酷すぎて、結局逃げた小人達が正解にしか見えません。
本作はとってもシンプルで内容の薄い作品です。アリエッティが人間に見られて引っ越すだけです。なのに、そこに誘拐話や翔との交流が入ってくるとどうしようもなく酷いことになってしまいます。
ガジェット的にも気になる部分があります。「9~9番目の奇妙な人形~」と同様に本作では「人間の使うもの」を小人が利用しています。だから切手が額縁に入っていたり、壁にボタンを飾っているのはすごくワクワクするんです。その一方で、明らかに小人用に作られたと思われる食器や家具が物凄く浮いて見えます。彼らの技術力がブレブレなんです。しかもせっかくマチ針を剣にしてるのに、戦闘がありません。1カ所ぐらいネズミと戦うシーンでも入れれば良かったのに、、、。
結局、日本語が通じちゃったり、小人の声が人間にも鮮明に大きく聞こえちゃったりする時点でリアリティ・ラインはボロボロなんです。しかも彼らは体調10cm以上あるんですよ。普通に隠れられる大きさじゃないです。

【まとめ】

設定だけを見るとトトロを連想するんですが、足下にも及びません。しかし、単なる駄作として切り捨ててしまうにはもったいないと思います。あまり期待しないで見に行く分には意外と満足出来るかも知れません。オススメです。

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さんかく

さんかく

三本目は

さんかく」です。

評価:(95/100点) – ん~~~~ナイス。


【あらすじ】

釣具店で働くダメ人間の百瀬は、恋人の佳代と同棲している。ある日、佳代の妹が夏休みを利用して遊びに来ることになった。いつもは面倒そうに付き合っていた百瀬だったが、わがままで愛くるしい桃の姿に、やがて心を奪われていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 桃がやってくる。
 ※第1ターニングポイント -> 桃が実家に帰る。
第2幕 -> 百瀬と佳代の破局
 ※第2ターニングポイント -> 佳代が実家に帰る。
第3幕 -> 百瀬の落とし前?


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【感想】

さて、先週末に見ましたのは、吉田恵輔監督の「さんかく」です。初日の舞台挨拶は混んでいたみたいですが、時間をはずしたのでそこまでの混雑ではありませんでした。とはいえ、6~7割ぐらいは入っていたでしょうか。上映館が少ないので、このぐらいの混雑は平均的だと思います。
吉田監督の大きな資質というのが、「中年のダメ男」が「無垢な(に見える)少女」に魅かれるという駄目なファンタジーを描く点にあります。それだけなら単なる平凡な監督なんですが、吉田監督の凄い点は、そのファンタジー自体に客観的なツッコミを入れられる点にあります。「そんな上手いこと行くわけないだろ!」という当たり前の視点が入ることで、そこに悲哀というか情緒というか、そういった微妙な「おとこ心」を重ねてくるわけです。
本作ではその視点はより一層強化されています。作品を重ねる毎にどんどんファム・ファタール (=妖婦/主人公を誘惑する女性) が低年齢化していっていますが、今回は遂に中学生(中の人は16歳)です。ご存じAKB48の小野さんなわけですが、日本人にありがちな「いい年なのに顔が子供っぽい」という童顔に加えて、ちょっと肉付きが良いところがファム・ファタールにばっちりです。仲里依紗的というか、「こいつ素は黒いんだろうな」と思える感じの雰囲気が大変素晴らしいです。その桃に勝手に振り回される百瀬役の高岡蒼甫さんも実在感ばっちりの「ウザイ不良あがり」感が大変すばらしいです。まぁ宮崎あおいがらみでドス黒い背景ばっかり浮かび上がる高岡さんですが、こういった小者の役には本当にばっちりです。
本作の大変良いところは、はっきりとバカな百瀬と中盤に変貌を遂げる佳代との「似たもの同士」な二人が、どうしようもなく阿呆な衝動でお互い猛烈な勢いですれ違いつつ、でも結局最後はお互いしかいないという閉じた世界のラブストーリーをブラックコメディタッチで描いてくる点です。他の人には相手にされない人間達が、失敗しまくりながらも結局すれ違ったりくっついたりする感じが大変愛くるしいです。
高岡さんも小野さんも決して演技が上手いわけではないんです。でも、なんか強烈な現実感を持っているんです。「こういうの居る居る」っていう感覚。それが急にエスカレートしていきつつ、、、というところが本作の肝であり最高の盛り上がりを見せていきます。
上映館は少ないですが、必見の作品だと思います。絶対に損はしません。
余談ですが、AKB48云々という部分は単なると宣伝材料であって、作品自体はアイドル映画でもなんでもありませんので、その辺に抵抗を感じる方もご安心下さい。
面白いラブコメ映画として最高クラスの出来だと思います。

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クレイジー・ハート

クレイジー・ハート

ワールドカップの小休止期間にたまった分を一気に書いてしまいますw

クレイジー・ハート」をみました。

評価:(75/100点) – 溢れるジェフ・ブリッジスの人間力


【あらすじ】

カントリー歌手の“バッド”・ブレイクはかつて一世を風靡したが、今はかつての弟子トミー・スウィートに人気を大きく離されドサ回りを続けていた。そんな中、地方新聞の記者をするバツ一子持ちのジーンと出会う。やがてジーンはバッドの心の支えとなっていくが、、、。


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【感想】

まとめ書き4本の最初はクレイジー・ハートです。なんか細かい内容を半分忘れてるんですが(苦笑)、、、楽しかった印象だけはハッキリと残っています。
「かつてのスターがドサ回り」というと、どうしても昨年のミッキー・ローク主演「レスラー」を連想してしまうんですが、同じ負け犬映画でもこちらは最後にポジティブな着地を見せます。プロットも大変よく似てまして、そして題材であるカントリーソングも一聴してかなり良い感じな雰囲気が伝わってくる点でも同じです。もっとも分かりやすさで言えば、間違いなく本作の方が上です。私はプロレスオタクも兼ねてますので「レスラー」はどストライクでしたが、一般的にはどうしても「ドサ回り歌手の作詞家・作曲家への転身」の方がしっくりくると思います。
厳密には負け犬というよりは才能あるダメ人間ですが、それがジェフ・ブリッジスという「未完の帝王」の人間力によって説明がなくてもハッキリと伝わります。もう本作はジェフが全てと言ってしまってもいいかも知れません。彼の憎めない愛らし雰囲気によって、バッドを慕うコリン・ファレルまで気の良い若造に見えてくるんです。マギー・ジレンホールもまだ若いのに人生に疲れたおばちゃんの味わいがとてもよく出ていて、素晴らしかったです。
逆に言えば、役者達の力以上には話が転がらないという不満はあります。予告編で感じる以上の”何か”はありませんでした。でも、このジェフ・ブリッジスはもっと見ていたいですし、どうしようもないけど幸せになって欲しいんです。
そういった意味では文句なしでオススメ出来る作品でした。

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孤高のメス

孤高のメス

日曜の2本目は

孤高のメス」です。

評価:(45/100点) – 手術描写は頑張ってるが、話としては退屈。


【あらすじ】

さざなみ市民病院はロクな外科医がおらず、近隣の大学病院に頼り切っていた。そこにピッツバーグ大学出身の当麻が赴任する。彼は急患で運ばれてきた料亭のオヤジを緊急オペで見事に救って見せ、市民病院でもオペが可能であることを見せつける。やがて停滞していた看護師達もやる気を見せ始め、市民病院には活気が戻ってくる。
一方、大学から派遣されてきていた医師達は当麻を快く思っていなかった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 弘平と母。
 ※第1ターニングポイント -> 当麻先生が赴任してくる。
第2幕 -> 当麻先生の活躍。
 ※第2ターニングポイント -> 脳死肝移植手術を決意する。
第3幕 -> 脳死肝移植手術


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【感想】

日曜の二本目は「孤高のメス」です。先週公開の作品でスルーしてたんですが、結構評判が良かったので見てみました。お客さんは中高年を中心にかなり入っていました。

確かに、本作での手術描写はかなり頑張っているように見えます。きちんとオッサンの肝臓は汚く、若者の肝臓は綺麗なピンク色で描いています。私も実物は分かりませんが、なんか「本物っぽい」感じはとても伝わってきました。ところが、、、肝心のストーリー部分がかなり雑です。類型的なスーパー外科医に、類型的な感じ悪いエリートが突っかかるという構図。そしてその中で起こるのは、典型的な足の引っ張り合いです。倫理的な問題を脇においても、決定的に盛り上がりません。
相変わらず日記で始まるのに浪子が見られないシーンが一杯出てくるのですが、そこはそれほど気になりません。やはりどちらかというと、手術のシーンに力をかけ過ぎてしまいそれ以外がおざなりになってしまっている点が問題だと思います。

特に後半、脳死の話になってからは、もはや登場人物の誰一人冷静な判断をせず、みんなが泣き方向に行ってしまいます。あまりに無茶苦茶な事をみんなで言い始めるため、物語の整合性以上に予定調和的な展開になることが丸わかりで急激に冷めてしまいました。

作品全体がストーリーよりも泣き脅しの方向に向かう傾向にあるため仕方がないのかもしれませんが、もうちょいドラマ側でなにかイベントが欲しかったです。結局当麻先生は欠点がないんです。じゃあなんでさざなみ市民病院に来る前に各地を転々としていたんだって話はあるんですが、あまりにも欠点がなさ過ぎて、サスペンス的なハラハラがまったくありません。安心して見られてしまうので、成功率は5分5分と言われても全然気になりません。本当に惜しいです。

【まとめ】

さながら2時間ドラマのような地味さと記号表現でした。ですが、手術シーンは間違いなくワクワク出来ます。もし時間が余っているようであれば、見て損はないと思います。

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マイ・ブラザー

マイ・ブラザー

今日は

「マイ・ブラザー」です。

評価:(45/100点) – 劇場予告で全部言ってるやんけ~~~~!!!!。


【あらすじ】

サムは海兵隊員。二人の娘と妻を残し、アフガニスタンへの派兵が決まった。一方、サムの弟トミーは銀行強盗の服役からようやく出所したばかり。父からは出来損ない扱いされ、常に優秀な兄と比較されてきた。サムがアフガンに出兵したのち、トミーは自身がサムの代わりとなってサムの家族の面倒を見るようになる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サムと家族。またはトミーの出所。
 ※第1ターニングポイント -> サムがアフガニスタンへ行く。
第2幕 -> サムのアフガニスタンでの出来事。トミーとサム一家との交流。。
 ※第2ターニングポイント -> サムが戻ってくる。
第3幕 -> サムの奇行。


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【感想】

本日は一本、「マイ・ブラザー」を見てきました、お客さんは3~4割くらい入っていました。この手の作品にしては入っている方だと思います。ナタリー・ポートマンとキャリー・マリガンという当代と次代のスターの共演作でもあり、デンマーク映画「ある愛の風景」のリメイクでもあります。
本作なんですがなんとも言えない感じでした。というのも終始2つの物語がグッチャグッチャに混ざり合っており、ぜ~んぜん収束しないからです。
2つのストーリーとは当然、「帰還兵の精神障害の問題」と「自信を亡くした負け犬が他人と交流を持つことで社会復帰していく話」です。要は兄の話と弟の話なんですが、これが交互に語られてしまうため、何が何やらさっぱりな感じになってしまいます。特にマズイのがサムが捕虜となっている姿を描写してしまうことです。スクリーン上はグレースが旦那が死んだと思って嘆いているのに観客は彼が生きてることを知っているという変な状況になってしまい、とんでもなく冷めてしまいます。
しかも、このグチャグチャの2つのストーリーに落とし所がありません。良くも悪くもヨーロッパ映画っぽい宙ぶらりんさなのですが、中途半端で切られてしまうためにとても不誠実な描き方に見えてしまいます。
またこの構造的な難点以外にも、特にアフガニスタンの描き方についてどうかと思う描写が多くなっています。「お父さんが殺すのは悪い奴だけだよ。」「悪い奴って誰?」「あごひげがある人。」という恐ろしいギャグを皮切りに、アフガン人が蛮族以上の描かれ方をしません。別にアメリカ映画の戦争描写に文句を言っても仕方がないんですが、それにしても酷すぎます。だから後半のPTSD気味になったサムの様子もあんまり感慨を持って見られないんです。なんだかなというか、、、、ハッキリ言いまして別にリメイクしなくて良かったんじゃないでしょうか。拍子抜けというよりは私の嫌いなタイプのハリウッド映画でした。
もちろん俳優達は本当に頑張ってると思います。ちょっとキャリー・マリガンの使い方がもったいないですが、気の強い役が多いナタリー・ポートマンもいつもより繊細そう見えますし、トビー・マグワイアはきちんとイっちゃってる人の目になってます。ジェイク・ギレンホールだって、中盤以降は優しいおじちゃんに見えてます。それだけに、、、ストーリーのとっちらかりっぷりがただただもったいない限りです。
すくなくとも、アメリカ国外に輸出するような映画では無かったと思います。アメリカ人がアメリカ国内で消費していればいいような問題設定と描き方ですから。
またこれは完全に余談ですが、またしてもGAGAのオリジナル邦題はアウトです。この話は弟と兄の2つの話が語られるから「Brothers(兄弟)」なんです。「マイ・ブラザー」だと「僕の兄さん(or弟)」となってしまい、どちらか一方が主役になります。それだと話が変わってしまいますので、これは素直に「ブラザーズ」と直訳するべきだったと思います。

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RAILWAYS  49歳で電車の運転士になった男の物語

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

今月の映画の日は

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」を見ました。

評価:(25/100点) – 夢じゃなくて寝言。


【あらすじ】

筒井肇はエリートサラリーマンである。何事も会社が第一で娘とも上手く話せない。娘が大学に入って育児も一段落したことで、妻はハーブティー屋を始めるなど華やかな生活を送っていた。ある日、彼の元に田舎の母が倒れたとの知らせが届く。そして時を同じく同期の川平までもが交通事故で亡くなってしまう。彼は川平が常に口にしていた「楽しいことをやる」たに会社を辞め、バタデンの運転手になることを志す、、、。


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【感想】

少し遅くなりましたが、今月1日は「RAILWAYS」を見てきました。「意外と良かった」みたいな評判を聞いていましたから、それなりに楽しみにはしていたんですが、、、、、う~~~~~~~~~~~~~ん。1000円で良かったと言うべきか、1000円も取られたと言うべきか、、、なんにせよ微妙でした。
ROBOTの制作ということで完全に「ALLWAYS」を意識したタイトルなわけですが、本作では「ALWAYS 三丁目の夕日」にあったような反吐が出るほど気持ちの悪いファンタジー・ノスタルジーはほとんどありません。代わりにあるのは中年男のファンタジーであり、責任や家族から解放されて童心に戻る中年男のロマン溢れる夢舞台です。
本作はその全てがファンタジー(=究極のご都合主義)に覆われています。なにせ夢を追うために一流企業の取締役の座を捨てて月給14万の契約社員になる50歳の話です。そしてそれを当然のように受け入れる菩薩のような天才妻まで居ます。彼女は趣味で始めたハーブティー屋が雑誌で取り上げられるなどして一気に有名店の経営者となった天才辣腕経営者で、夫が田舎で高卒対象の契約社員になることを笑顔でOKしてくれます。一方の娘はといえば、父がエリートサラリーマンの時には険悪だったにも関わらず、田舎に単身赴任で引っ込むと聞いた途端に優しくなっておばあちゃんの看護のために大学を休んで顔をだしてくれるようにまでなります。
つまり、、、お金を持ってエリートサラリーマンをやっていたときよりも、田舎に引っ込んで月給14万の契約社員になった方が周りのみんながハッピーになっているんです。凄い事だと思います。It’s AMAZING!!!!!
「娘の学費は何処から出てるんだ」とか「東京の家のローンはどうしてるんだ」とかツッコミ所は山ほどありますが、そういったことは中年男の夢の前では些末なことです(苦笑)。
結局本作も近年の糞映画によくみられるエコロジー志向というか、反大都市・反近代的なメッセージに満ちあふれています。だからですね、こういう作品を良いと思った人には、まずは「パーマネント野ばら」を見るようお勧めしたいです。田舎は田舎で大変なんだぞと。閉鎖社会な上で経済活動も多岐にわたらない田舎ってのは、それこそ一回のけ者にされたら人生が終わっちゃうような危なさがあるんだぞと。
現実感のカケラもないような本作は、まさしくファンタジーそのものです。でも多分それこそが本作の狙いなわけで、早い話が人生に疲れちゃってる中年男性をターゲットにして適当なメッセージで癒してあげようというとっても広告代理店的な発想なわけです。まさか本作をみて本気で転職を考える人はいないと思いますが、そういった方には一言「50歳じゃ書類審査に通らないですよ」とつぶやいた上で、是非とも頑張っていただきたいと思います。
中年男性のファンタジーというと、今年「マイレージ、マイライフ」という作品がありました。「マイレージ~」ではあくまでも現実に起こりうる範囲でのリアリティを持って男のロマンを見せていますので、私もノリノリで見ることが出来ました。ところが、本作ではリアリティの片鱗すら見えません。そもそもおばあちゃんが乗り遅れそうだという理由で、独断で司令室の命令を無視して電車を遅延させまくる新人運転手ってなんですか? それって人情的には「良きこと」かもしれませんが、でもそれで秩序を破っても構わないっていうのは違うでしょう? だって目に見えている人は助かったかも知れませんけど、もしかしたら電車が10分遅れたことで親の死に目に会えなかった人が居るかも知れないじゃないですか。だから、決してそれは無条件に美談として了解できるような話ではないと思うんです。でも本作ではそういう傲慢な正義感から生じる歪みは描かれません。あくまでもみんながハッピーになるんです。
だから、ハッキリ言って本作は「誰かが私にキスをした」と変わりません。この世界の全ては主人公・筒井肇のためだけに存在しています。彼が夢を叶えると、世界の全てがハッピーになるんです。気持ち悪い。こんなんで喜ぶ中年男性って本当にいるんでしょうか?よっぽどじゃないと騙されない完成度です。少し前の作品ですが、去年の「プール」にも通じる思想的な気持ち悪さがあります。どんだけワガママ放題をやってものんびりした田舎に行けば全部許されるっていう、ある意味エコロジーで安い精神メッセージです。気持ち悪い。
結局、きっとこの主人公は山ほどお金を貯金して退職金ももらい、本当に道楽として鉄道の運転手になっただけなんでしょうね。せっかく「夢敗れて運転手くらいしか仕事がなかった」という生きるために運転手になった対比キャラまで出てくるのに、結局そのキャラも本作の思想に恭順してしまいます。なんかいろいろな事にたいして酷い作品でした。現役のバタデンの運転手さんは怒って良いと思いますよ。少なくとも本作で運転手は「電車でGO!」レベルの素人でもできる仕事として舐められてますから。

【まとめ】

電車ファンならば見ていおいて損はないとは思いますが、本作の思想に乗れるかどうかで結構評価が別れる作品だと思います。責任や家族を捨て去って田舎で童心に返りたいという野望を持った中年男性にはぴったりな作品ですので、是非劇場でご鑑賞を。

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