コララインとボタンの魔女

コララインとボタンの魔女

「コララインとボタンの魔女」を観てみました。

評価:(95/100点) – ヘンリー・セリックの狂気の職人芸


【あらすじ】

コララインは両親と共にピンク・パレス・アパートに引っ越してきた。両親に構ってもらえないコララインは、居間に壁紙で隠された小さなドアを発見する。その夜、小さなトビネズミを追ってそのドアをくぐると、そこには現実とうり二つの世界が広がっていた。しかもそちらの世界の両親はとても優しくコララインをもてなしてくれる。もう一つの世界はまさしく夢のようだった。ただ一つ、彼らの目がボタンであることを除けば、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> コララインが引っ越してくる。アンバーとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> コララインがもう一つの世界に行く
第2幕 -> もう一つの世界での楽しみ。
 ※第2ターニングポイント ->コララインがボタンの魔女と賭けをする。
第3幕 -> 解決編。


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【感想】

遅ればせながら、本日はコララインとボタンの魔女を見てきました。監督はご存じ「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で有名なヘンリー・セリックです。ストップモーション・アニメ(=コマ撮りアニメ)の巨匠にして、ディズニーのファンタジアやバンビで有名なジュール・エンゲルの弟子筋に当たる御大です。
本作では「ナイトメア~」からさらに進化/深化した、狂気としか言いようのない程の精巧で緻密な人形コマ撮りを披露してくれます。そもそも、ストップモーション・アニメは一日気合いを入れてガッツリ撮影してようやく数秒の画が撮れるような世界です。
それをこの情報密度で100分間も突っ走るわけですから、もうただただ脱帽です。

物語の推進力

本作はそのストップモーションアニメの凄まじさもさることながら、それ以上に物語の語り口がとても良くできています。本作の様に登場人物が限られた作品の場合、もっとも難しいのは観客の興味を引っ張りながら物語の推進力を得ることです。そこで本作の場合には徹底してコララインを追い詰めていくことで実に上手く物語を進めていきます。
例えば序盤、コララインは両親から冷たく扱われることへの現実逃避としてもう一つの世界へ行きます。次はもう一つの世界で起こるある恐怖から逃げるために奔走します。あまり書くとネタバレになってしまいますが、さらに追加で2つの事件がコララインを襲います。要は映画100分間の内ほとんどで彼女は何かから逃げたり何かをやらざるを得ない状況に追い込まれています。それによって、観客も高いテンションを常に維持しながら画面に引き込まれ続けます。まったく気が休まるときがないですし、画面の情報量も物語の盛り上がりに比例してドンドン上がっていきます。

テーマ

さらに本作が圧倒的なのは、ホラー風味でかつ驚異的なルックスでありながらもテーマがとてもオーソドックスな教訓話だということです。「うまい話には罠がある」「家族は大切に」「変わり者のご近所さんでも実は良い人かも」。こんなに道徳的な話をこんなに怖く描ける人もそうそういないと思います。

【まとめ】

物語、画面構成、演出、全てが超一流レベルでまとまったとんでもない傑作です。アメリカで大ヒットした話は聞いていましたが、正直なところここまでは期待していませんでした。今年はのっけから高レベルな作品が目白押しでうれしい限りです。もし、子供向けアニメーションだと思って敬遠している方は、騙されたと思って是非見に行ってください。圧倒的な映像体験を確約します。
またストップモーションアニメと3D上映の親和性の高さも良く表れていました。ボタンの魔女が迫ってくる場面は本気で怖かったですし、なんか夢に出てきそうです。
もしかしたら早くも今年一番の作品かもと思いつつ、絶対にオススメな作品です!!!
一応最後に触れなければいけない点がありまして、それはGAGAで良くある吹き替え問題です。なにせオリジナルは天才・ダコタ・ファニングですよ。戸田恵子さんはまったく問題無いですが、やはり榮倉奈々と劇団ひとりをメイン級で使うのはどうかと思います。芸能人枠なら脇役でやってくださいよ、本当。でもそのノイズを差し引いても素晴らしい大傑作なのは間違いありません。

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パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ

本日の2本目は。

最怖ホラーと宣伝中の「パラノーマル・アクティビティ」です。

評価:(1/100点) – 怖さがカケラもない心霊ホラー映画。


【あらすじ】

ミカは夜中におこる心霊現象の原因を探ろうと高性能なカメラを購入し寝室に仕掛けることにする。そこには怪現象が映っていた、、、。

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【感想】

さて、アメリカで話題沸騰、ロッテントマトでの評価も高いインディ・ホラー映画「パラノーマル・アクティビティ」です。2007年制作の作品ですが、アメリカでもロードショーに乗ったのは昨年秋です。ホームビデオで撮影されたという体のフェイク・ドキュメンタリー形式で、アメリカでは割とめずらしい心霊現象が題材と言うことでかなり期待して観に行きました。ところが、、、本当につまらない、、、というよりホラーなのに怖くない(笑)。
ラストの20秒ぐらいで音に驚く場面はあったのですが、しかし決定的に怖くありません。

フェイク・ドキュメンタリーの体裁について

本作は冒頭に、警察とケイティとミカに謝辞が送られます。ということはこの映画を作ったのは発見者でも撮影者(登場人物)でも無い第三者ということになります。この時点で結構微妙なのに、さらには途中に明らかな編集点と早送りが入ります。そして日時表示が出たり出なかったりします。
ですので、本作はフェイクドキュメンタリーという形式なのに、劇中の映像そのものではなく編集されてしまっていることになります。これでは怖くはなりません。「現実に映っちゃってる」のが怖いのであって、編集していいならそれこそCGでいくらでも出来てしまいます。あくまでもオリジナムービー(=劇中でミカが撮影していたテープ)をそのまま流すから意味があるのに、、、微妙すぎます。

お化けの動きについて

おそらく観た方が最初に思うのが「お化けの茶目っ気について」だと思います。なにせサービス精神が旺盛なお化けでして、律儀に毎回毎回「階段を上がって開いてるドアを通る」コースを辿ります。そして任意の固定カメラ撮影にもかかわらず、キーイベントは必ずカメラの前で行ってくれるエンターテイナーぶり(笑)。寝室のシーンはいつ横や下からお化けがフレームインしてくるのか楽しみにしていたのですが、結局最後までドアを通って来てくれました。
起こる現象といってもドアが閉まるのと怪音ばっかりで、ひたすら前振りが1時間以上続きます。やっとアタックが来たかと思いきや良くあるタイプの微妙なオチで、最後の方はちょっと笑いすら起きるレベルの酷さでした。とにかく怖くありません。

ミカとかいう頭の足りないバカ男について

私の中で本作の評価が完全に紙屑になった一番の原因は「ミカ」とかいう最低な男です(笑)。話を聞かない、独断専行、約束を破る、思い込みで動くくせに結果が伴わない。要は大口たたくだけで何の役にも立たないのですが、後半は常に怒鳴ってヒステリーを起こしています。よくここまでクソ野郎に作り込んだと関心するほどで、本気で舌打ちが止まらずイライラしっぱなしでした(笑)。これが監督の狙いだとしたら私は完全にストライクです。なのでラストに関しては完全にお化けに感情移入しています(笑)。GJ。

【まとめ】

まったく怖くないのでホラー映画嫌いな人でもなんの問題もありません。しかし決定的につまらないのでちょっとオススメしづらいです。とはいえ、この手の心霊ホラーは大勢と一緒に見た方が面白さが増すので、どうせみるならDVDよりは映画館の方が良いと思います。
まぁアメリカでの流行は本当ですので、確認の意味で映画館へ足を運んでみては如何でしょうか?

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Dr.パルナサスの鏡

Dr.パルナサスの鏡

本日は二本見てきました。一本目は

Dr.パルナサスの鏡」です。

評価:(80/100点) – これぞカルト映画の神髄。安心のテリー・ギリアム印。


【あらすじ】

パルナサスは数世紀前に悪魔・Mr.ニックと賭けをして永遠の命を手に入れた。しかし永遠の命は彼に生きることのつらさを思い知らせることとなる。そんな中、パルナサスは街で見かけた女性に恋をする。しかし彼は1000歳を越える年寄りで寄る辺もない。そこでMr.ニックはパルナサスに若さと彼女の愛を与えることにする。その代償は生まれてくる2人の子供が16歳になった時、ニックに引き渡すことであった、、、。


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【感想】

カルト映画好きならばニヤニヤが止まらない、傑作と呼ぶにふさわしい内容の作品でした。
話の内容は至ってシンプルで、「パルナサス老人が悪魔と勝負をして娘を助ける話」です。「96時間」などと同じプロットです。ただしそこはテリー・ギリアム。老いてなお手練れというか、この人は本当に変な映画を撮らせると天下一品です(笑)。
特に今回の「鏡の中には入場者の理想・妄想の世界が広がっている」「入場者は最後に2択を迫られ、正解を選べば現実に戻れるが不正解だと悪魔の手に落ちる」というこれ以上ないほどシンプルで意地悪な気色悪いゲームの設定は素晴らしいです。シンプルなストーリーも、このギリアム特有の「歪んだ世界」とヒース・レジャーの「胡散臭さ」が見事にトッピングされ、これ以上ないほど魅力的で気持ち悪い(←褒め言葉)ストーリーへと変身します。ごちゃごっちゃいうのも野暮なほど魅力あふれる役者達。そして微妙に薄暗くフィルムグレインのたっぷり乗った画面構成。少ない登場人物で物語の推進力を高める展開の旨さ。何処にも文句の付け所がありません。
強いて言うべきことがあるとするならば、ショウゲートの予告編は嘘ばっかってことです(笑)(Youtube)。
そりゃこんなカルトな映画に若い女性を一杯入れようと思ったらイケメン俳優で釣るしかないんですが、にしても酷い。少なくともヒース・レジャーはメインじゃないし、娘を救い出すために鏡に入るわけではありません。すごい意図的なミスリードです。どちらかというと、TOHOシネマズで流れるジョニーデップとおばちゃんが変なタンゴに乗せて踊る映像が一番内容に即してます(笑)。
是非劇場で見て欲しい作品ではあるんですが決して万人にはお勧めしません(笑)。特にジョニー・デップ狙いの女性には「そんなんじゃないよ!」と警告しつつ、しかし確実に、何があろうと、鉄板でオススメです!!!

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彼岸島

彼岸島

二本目の映画は「彼岸島」です。

評価:(5/100点) – 血糊の無駄使い。

【三幕構成】

第1幕 -> 明と冷の出会い。吸血鬼とのファーストコンタクト
 ※第1ターニングポイント -> 明達が彼岸島に着く。
第2幕 -> 彼岸島でのサバイバル
 ※第2ターニングポイント -> 明が師匠に弟子入りを志願する。
第3幕 -> 明と師匠一行が雅のアジトに殴り込みを掛ける


【あらすじ】

高校生の宮本明はある日チンピラに絡まれているところを不思議な女性に助けられる。彼女は行方不明になっている明の兄・宮本篤の免許証を明に渡し、彼女と共に篤を助けにある島に来て欲しいと告げる。友人5人を加えた明一行は、冷と名乗る女性と共に彼岸島へと向かう。そこは吸血鬼達の跋扈する修羅場であった、、、。


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【感想】

残念!!!
本作について実は結構期待していました。というのも、予告で見る限り近年の日本俳優映画(実際には8割方韓国映画ですが)にしては珍しく血糊を結構使っていたからです。モンスターサバイバルもので敵を切っても血の一滴もでないんじゃ拍子抜けです。TAJOMARUなんて、血しぶき一つ出て無いのに何故か刀を拭うそぶりをしたりして失笑ものでした(笑)。それを考えると少なくとも志はあると思えたんです、、、予告をみた限りは、、、予告だけは、、、。

本作の格好悪さ

本作はとても格好悪いです(笑)。身も蓋もない表現ですが、全編通じて主人公側がまともな思考回路を持ち合わせていません。唯一まともなのが兄の篤で、後の連中は本当に馬鹿ばっか(笑)。そのくせ泣き喚きだけは多いので、ものっすごいイライラします。特に中盤、仲間の一人が吸血鬼になってしまう場面は本当に酷いです。主人公の明が延々と理屈の通らないことを大声で喚きながら駄々をこねるために、心の底から早く死ねばと思ってしまいました。なにせ主人公達は全く役に立ちません。というか主人公以外は最後まで何の役にも立ちません。その主人公も、いきなりレジスタンスでもトップクラスな強さを発揮してしまい、全く成長が描かれません。
せっかく冒頭の弓道部ですごい能力を発揮しているユキもただ捕まってるだけですし、せっかく冒頭で爆薬を使っている西山もただオロオロしているだけです。加藤はただのデブですし、ポンは気持ち悪いだけで何の役にも立ちません。ケンは格好つけてるだけで、ヤンキー流のバット術は発揮されません。「漫画では活躍してるんだろうな」という片鱗を感じることは出来るんですが、しかし何の慰めにもならないほどにみんな足手まといです。
ただただテンション高く喚いて血糊を一杯使ってるだけで、やってることは非常にショボくてくだらない事です。しかも宮本兄弟は無敵じゃないかと思えるほどに頑丈で、何回致命的な傷を負わされてもケロッとしてますし、顔の切り傷も場面転換すると綺麗に無くなっていて傷跡すら残りません。
せっかく血糊でリアリティレベルをあげているのに、なんでこんな半端なことをするんでしょう?格好悪いです。

スターウォーズ病について

本作では上記の格好悪さに加えて、スターウォーズ病を発症してしまっています。ジェダイのように目隠ししてトレーニングしたり(SW EP4 新たなる希望)、コロッセオのようなところでモンスターと戦ったり(SW EP2 クローンの攻撃)、最後はラスボスと1対2のチャンバラです。(SW EP1 ファントム・メナス)
ただしCGやアクションが中途半端なため、完全にデッドコピーになってしまっています。やるならちゃんとやって欲しいのですが、、、残念です。

【まとめ】

とてつもない事になっている映画です。整合性は全くありませんしストーリー構成もグダグダです。登場人物の大半は物語に不要ですし、なにより活躍しない有象無象の味方が多すぎます。公式webサイトに「上陸者殺到中。いまだ生還者0」というキャッチコピーが出てますが、そりゃこの出来じゃ生還できません(笑)。皆さん映画館で撃沈されていることでしょう(笑)。
昨年のカムイ外伝と戦えるレベルの超絶クソ映画でした。そういえばCGレベルも似たり寄ったりです(笑)。
まったくオススメ出来る要素が無いのですが、原作ファンがネタとして見るならかろうじて100円ぐらいの価値はあるでしょうか?お金を払ってみるのは全くオススメ出来ません(笑)。
瀧本美織が可愛かったのがせめてもの救いです。でも水川あさみがエラ張り過ぎなのでプラマイゼロ(笑)。
出演者の方々にはお悔やみを申し上げます。

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The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド」見て参りました。

評価:(5/100点) – 工夫はしているが、、、。


【あらすじ】

アラスカ州ノーム。アビゲイル・タイラー博士は寝室で就寝中に隣で夫を殺害される。その後、子供2人を育てながら不眠症の村人のサイコ・セラピーを続けるうちに、多くの人が共通の体験を持っていることに気がつく。夜中に見えるフクロウとは何なのか?そして彼らが体験したことは?セラピーの結果から徐々にタイラー自身の体験と夫の死の真相が明かされる。


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【感想】

非常に微妙な出来です。予告はそこそこB級っぽい雰囲気を出していますが実際には矢追純一やMMRと何ら変わりありません。しかも矢追純一を見たときに感じる真剣過ぎてくだらないというギャグすら成立していません。本作はよく言えば器用に作りすぎであり、悪く言えばテーマと語り口のトーンがチグハグです。

本作に見られる工夫の跡

厳しいことを書きましたが、本作には一つ大きな工夫があります。それはフェイク・ドキュメンタリーをいかに本物っぽく見せるかという部分です。
例えばブレア・ウィッチ・プロジェクトでは、公開前のネタ振りとしてケーブルテレビで「ブレア・ウィッチの謎」と称した特番を放送しました。また前後にwebを用いて嘘のニュースを流し続け、映画があたかも事実であるかと思わせるために多くの宣伝手段を利用しました。報道と称して映画の宣伝を行うことの倫理的是非はありますが、しかし成功したのは事実です。
一方、本作では特に前振りは行っていません。webを検索していただくと分かるようにタイラー博士のそれっぽい嘘記事もほとんどありませんし、むしろユニバーサルの公式コメント(=あくまでも作り物であるという宣言)ばかりが目につきます。この時点でフェイク・ドキュメンタリーとしては駄目です。
しかし本作では2重の創作をかませるという発明を行っています。嘘のドキュメンタリーを劇中でさらに再現映像化することにより、より嘘ドキュメンタリーの信憑性を高めようという発想です。この手法は本当に発明だと思います。惜しむらくは、ドキュメンタリー部分(=劇中における”実際の映像”)の出来があまり芳しくないことです。話の内容自体はよくあるアブダクトもの(=宇宙人による誘拐話。)ですから、本作の成功はこのドキュメンタリー部分の出来にかかっています。せっかくタイラー博士にぴったりの役者を連れてきているのに、肝心のビデオカムが微妙すぎて何とも言えない雰囲気になってしまいました。残念です。
とはいえちょいと腹が立つ部分もあります。それはラストで完全に監督が投げっぱなしにしていることです。「信じるか信じないかはあなたの自由です」とか言うのは勝手ですが、じゃあ入場料返せと思ってしまいます。アブダクトものの映画ならそれらしく、最後まで「UFOは実在する」で押し切ってもらわないと困ります。だって弱気になる矢追純一なんて誰が見たいですか?弱気になる糸井重里なんて誰が見たいですか?彼らが真剣だからこそ客観的に見てる我々は面白いんです。「なにムキになってんの?バカじゃね(笑)」というのが彼らを見る偽らざる観客心理ですし、だからこそ人気があるわけです。でも本作では監督すら本気でUFOの存在を信じていないわけです。そんなもの見せられても何とも言えません。「はいはい、わかったわかった。で?」というのが私の率直な感想です。だって信じてないならこの映画の存在意義が無いじゃないですか。UFOの存在を啓蒙する気もなくUFOを否定する気もない。いったい誰をターゲットにして何故作った作品なのでしょうか?ハッキリしているのはこれよりも100倍は「奇跡体験!アンビリバボー」の方が作り手の意図が見えて面白いって事です。

【まとめ】

え~本作は春先にバルト9で見たアルマズ・プロジェクトとタメをはれるレベルのがっかり映画です。個人的な意見ですが、フェイク・ドキュメンタリーの面白さはやっぱり出落ちであり、そしていかに制作側が真剣に「捏造しようとしているか」だと思っています。本作のような酷い作品を見ると、改めて「ブレア・ウイッチ~」の偉大さが良く分かります。予算は関係ありませんし役者も関係ありません。いかに知恵と情熱を傾けられるかが勝負のジャンルです。
本作からは真剣さが一つも伝わりませんでした。もっとまじめにやっていればコメディとして成立していたのに、なんとも残念な話です。
劇中の村人よろしく、我々もこの映画の存在を忘れましょう。それが一番幸せです。
最後になりましたが大事なことを一つだけ書かせてください。昨年「曲がれ!スプーン」を見て良い話だと思った人は本作を見る責任があります(笑)。だって、UFOを信じるのが純真で素晴らしいことなんでしょ?だったら本作を見て是非とも信じてください。本作をつまらないといった人は本広克行にぶん殴られますよ(笑)。

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スペル( 2回目鑑賞 )

スペル( 2回目鑑賞 )

を持して「スペル」を見てきました。TIFFについで二回目です。公開したらネタバレありで書きたいこと全部書こうと思ってメモとってたのですが、パンフレットを買ったら高橋諭治さんがほとんど書いちゃってました。
なので、それ以外のことを書いてみようかと思います。ちょっと悔しい(笑)
あらすじとかその辺の基本的な事はコチラを見てください。


【感想補足】

■ 非常に「道徳的な話」
間違いなく主人公のクリスティンは超常識人です。すごい良い子。どんなにテンパってても(猫以外の)無実の他人は自分から巻き込みません。すばらしいです。ホラークイーンにあるまじき(笑)優等生です。

■ 直接的な表現を極力控えている
これはサム・ライミ自身も清水崇さんと中田秀夫さんからの影響と語っていますが、直接表現が殆どありません。例えば変な黄色いゼリーや泥を効果的に使って、グロいものを映すことを避けています。
既に見た方はお気づきかと思いますが、ラストのあるシーンでクリスティンが泥水の中に沈むシーンがあります。そこから出てくるときの演出も素晴らしいのですが、それ以上にすごいのは泥の質感です。サラッとしつつも顔に薄く土が張り付く感じは、完全に血の描写方法です。ここは本来であれば血の海に沈む描写のはずなんです。でも、それをやらずに泥水でやってるところが中途半端ながらJホラーイズムみたいなものを感じてすごく好感が持てました。

■ そもそもギャガの宣伝がおかしい。
言葉通りです。宣伝が明らかにおかしい。特に宣伝映像は方向性がおかしいです。この物語は単にババァに逆ギレされて不条理にも呪いをかけられたOLが右往左往する話ではありません。もっというと、「逆ギレされた」と解釈してしまっては話を根本から誤読してしまいます。
作品中で何度も出てくるとおり、クリスティンは「自らの意志」で「出世のために」ババァのローン延長要請を断ったんです。そしてそれがもっとも重要です。この物語の原型は「因果応報の話」です。すなわち、クリスティンが自らの出世のためにババァの生活を壊してしまったことの報いを受ける話なんです。ただし「クリスティンがやったこと」と「クリスティンがやられること」のギャップが凄まじすぎるが故にギャグっぽくもなるし道徳的にもなるということです。
皆さんは子供の頃に「指切りげんまん、嘘付いたら針千本飲~ます。指切った。」ってやりませんでした?あれと一緒です。この場合「嘘をつくこと」と「一万回げんこつで殴られる」&「針を千本飲む」というのがトレードオフになっています。普通それは釣り合いがとれないので「嘘をつくの辞めよう」となるわけです。これが道徳です。本作は「ちょっと悪い事をしただけでも、こんなに酷い目に会うんだからやっちゃ駄目だよ」というのを物凄いスケールでやってるという訳です。なんせ命がけ+地獄でずっと拷問ですから。しかもクリスティンは完全に反省してるんですよ。それでもやっちゃった以上は報いを受けるんです。
だから「逆ギレ」「不条理」という風に捉えるとこの道徳教育が成立しなくなってしまいます。クリスティンはあくまでも自分がやった事の責任を取ってるわけで、意味もなく巻き込まれたのではありません。ギャガの宣伝映像を企画した方はこの一番大事なテーマを見落としたみたいです。

とりあえず以上の三点ぐらいでしょうか。あとちょっと気になったのは、上映中にあんまり笑い声が無かったことです。TIFFの時はみんな爆笑してたんですけど、やはり「映画は静かに見る」というマナーが良く行き届いてるんでしょうか?「映画は静かに」っていうのは「知人と雑談するな」っていう意味であって、クスクスしたりはOKですよ。特にホラー映画は隣の人がビクつと飛び起きたり目を覆ったり、ちょっと笑ったりしてるのが雰囲気作りに役立ちますから。TIFFで笑いが起こってたのは、外人がいっぱいいてちょっとぐらい騒いでも良い雰囲気があったのが要因かも知れません。

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ファイナル・デッドサーキット3D

ファイナル・デッドサーキット3D

二本目は「ファイナル・デッドサーキット3D」です。
なんか今週はホラーばっかり見てる気がします。
評価:(40/100点) – 3Dの嫌な使い方と吹き替え問題


<あらすじ>
ニックは友人とカーレースを観戦していたが、突然事故の予知夢を見てその場を立ち去る。するとサーキットで予知夢通りの大事故が起き、多くの死者がでてしまう。しかし助かった人間達にも死の運命が襲いかかってきた。
<三幕構成>
第1幕 -> サーキット場の大惨事
 ※第1ターニングポイント -> カーター・ダニエルズが事故死する。
第2幕 -> 次々に人が死んでいく
 ※第2ターニングポイント -> ジャネットが助かる
第3幕 -> 映画館での大惨事と終幕


<感想>
本作は「ファイナル・デスティネーション」シリーズの四作目です。このシリーズは全体のプロットはまったく同じです。冒頭に大事故が起きて数人が助かりますが、彼らには「死ぬ運命」がついていて、結局何らかの事故で死んでしまいます。ドラマも大してありません。言うなれば、「いかに細かい出来事を連鎖させて(面白く)人を事故死させるか」という部分を徹底的に研究している非常にストイックなブラックコメディです。
さて、このブラックコメディは1996年にテクモから発売された「刻命館」というゲームのシリーズに影響を受けています。このゲームは「罠ゲー」と呼ばれる独自性の強いホラーゲームで、主人公の館に侵入してくる敵を罠に仕掛けて次々にハメ殺していくという凄い内容のものです。このゲームはホラーとコメディを非常に上手いさじ加減で融合させて大人気になりました。「床の油で滑ったら、柱に頭をぶつけて階段を転げ落ちたあげく、暖炉に突っ込んで服に火がついた直後に、天井からシャンデリアが落ちてきた。」というように「泣きっ面に蜂」を大げさに重ねることで他人の不幸を笑おうという趣旨の嫌~な感じで楽しむゲームです。
このファイナル・デスティネーションシリーズの趣旨も全く同じで、細かい偶然がどんどん連鎖していくことで、しまいには人間が死んでしまいます。そして連鎖から死に至るまでのクリエイティビティが余りに高いために、一種の芸術性すら帯びている変テコなシリーズです。超ブラック。そして超悪趣味。でもちょっと面白い。ホラーと呼んでいいのかすらよく分からない、「珍しい生活事故のアイデア集」です。
さて、本作「ファイナル・デッドサーキット 3D」ですが、シリーズ初の3Dということで、いかに3Dを利用してクリエイティビティを広げてくるかが一つの見所になっています。結論から言いますと、良かったり悪かったり、過去作と比べると結構微妙な内容です。ちょっと偶然と呼ぶには強引な演出が多く、不自然なシーンが結構あります。
ただし本作は3Dを上手く利用しています。作中でもいろいろな「とがったもの」がどんどん飛び出して来て、思わずのけぞってしまうほどです。釘やら木片やらが目の前に飛び出してくるのは、生理的に嫌ですし本当にビックリします。いままでの3D映画にはなかった実験的な使い方をしているとても意欲的な作品です。
■ 吹き替えの問題
これは是非配給会社の方も真剣に考えていただきたいのですが、吹き替えがあまりにも酷すぎます。最近では「くもりときどきミートボール」もそうでしたが、3D映画が吹き替えのみで公開されることが増えてきています。おそらく3D映画で字幕を出すと目が疲れやすいという配慮だと思いますが、一方で吹き替えが酷いときに回避策が無いという深刻な状況を生んでいます。特に本作は素人芸能人のオンパレードで、ことごとく大根役者がそろっています。もはや文化祭レベルの棒読みオンパレードで情緒もへったくれもありません。字幕という選択肢が無い以上、この吹き替えも込みで映画の評価とせざるを得ませんから、本作の評価は作品内容以上に低くなってしまいます。もしかするとDVDでは字幕が付くかもしれませんが、是非劇場でも字幕版を上映していただきたいです。消費者に選択肢すらないのは非常につらいです。
<まとめ>
はっきり言ってドラマは全然面白くないですから、本作の評価はその「珍しい死に方」がいかに面白かったかにかかっています。こればかりは個人個人の趣味ですので、是非見てみてください。ただし、本作は非常に作り物っぽい・安っぽい演出ですが、結構ゴア(残酷)な描写があります。ブラックコメディとはいえ、残虐描写が苦手な方は止めといた方が良いでしょう。嫌なのを我慢してまで見るほど面白くはありません。
また、もしこのシリーズを見たことが無い人は、是非一作目の「ファイナル・デスティネーション」と二作目の「デッドコースター」をDVDで見てみてください。僕たちの身の回りには危険がいっぱいです。

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携帯彼氏

携帯彼氏

ふと気の迷いから、「携帯彼氏」を見てきました。
評価:(35/100点) – D級ホラーだと思ったらB級アイドル映画だったの巻


<あらすじ>
女の子の間で話題沸騰の携帯彼氏(=ポストペット?)。ただの擬似恋愛ゲームだが、恋愛ゲージが0か100になると死ぬという噂が流れる。そんな中、実際に里美の周りでも不可解な死亡事故が次々と起こる。里見は真相を探るべく捜査を開始するが、、、。
<三幕構成>
第一幕 -> 里見の周りで携帯彼氏が原因と見られる死亡事故が連続で起こる。
第二幕 -> 里見がふとしたきっかけで高原直人の携帯彼氏を手に入れる。そして由香関連の色々。
第三幕 -> 解決編。
<感想>
もう何も言えません。いちいち真面目にツッコんだ方がよいのか、ただ呆れた方がよいのか、、、悩ましいです。そもそもこれはホラーではありません。それどころか怖いと思う(思わせようとする)描写が一つもありません。ひとえに「ホラーの文法」が全くできていないからですが、かといって劇映画として見るには物語が破綻しています。今回はどこが破綻したのかを考えながらグチりたいと思います。なので、携帯彼氏を夜も眠れないくらい楽しみにしている諸君はいますぐブラウザを閉じてください。マジ無理。
ストーリー(=劇中設定)について、根本的な破綻が二つあります。それは見た人なら一発でわかるように「携帯彼氏サービスの運用方式」と「携帯彼氏のメカニズム」です。
いきなりネタバレしますが、携帯彼氏サービスは「配信サーバで人物データを管理」し、ユーザは会員登録することでサーバから携帯彼氏プログラムをダウンロードします。つまり買切型ないし月額課金型のゲームで、基本はクライアントのローカルで動くプログラムです。さて劇中で流行っている携帯彼氏ですが、物語のラストで特に管理者がいない廃墟ビルのなかのサーバラックで運営されていることが明らかになります。運営会社が実在するかどうかまでは語られませんが、少なくとも設置ビルは完全に閉鎖されています。
「ハード保守は?」とか「DBのメンテは?」とか「回線や電気の維持費用は誰が出してるの?」とか色々ありますが、一番のツッコミは何で警察が運営会社を調べたときに分からなかったのかです。もはやグダグダ。だいいち、ゲームで人が死ぬみたいな美味しいゴシップネタがあれば、どこかのタブロイド系雑誌が速攻で運営会社を調べると思うんですが、、、。つまり根本的に「ミステリアス」にすらなってないんです。だって現場に行けば分かるんですもの。駄目だこりゃ。
さらに輪をかけて酷いのが、携帯彼氏のメカニズムです。携帯彼氏の「呪い」は、かつて雑居ビルでレイプサークルが被害者の女子もろとも焼死した際に上の階の携帯彼氏サーバに「死んだ人間の魂が入った」ために発生したと説明されます。つまり怨念です。劇中でもバッテリーの切れた携帯電話上で携帯彼氏が突然起動するなど、その「呪いパワー」は描かれます。さらには、携帯彼氏の入った携帯電話に他人が電話をかけると、携帯彼氏が妨害したりするんです。つまり非科学的存在で携帯電話を操れる訳です。呪いなんだから当たり前ですけどね。ところが映画のラスト、呪いを止めるために里見は「携帯彼氏サーバからデータの消去プログラム(=修正パッチ)を配信する」んですね。なんでその通信は邪魔しないんでしょうか?というかプログラムで消えたら非科学的存在じゃないわけで、、、。一応、「目には目を」「呪いには呪いを」ということでレイプ被害者・女子のデータを配信することで最後は呪われた携帯彼氏を消滅させて着地しますが、なんだかなぁ。しかも他のデータが消えてるのに高原直人だけが夜明けまで粘れたり、、、基準がよく分かりません。
結局、話の展開が全部行き当たりばったりで、その瞬間・そのシーンのことしか考えていないんです。だから通しで見ると無茶苦茶で収拾がつかなくなってるんです。また一つ携帯小説とやらのレベルのすさまじさが浮かび上がってしまいました。読んだこと無いのであくまで推察ですが、たぶん原作の携帯小説は、暇なときにちょっとづつ携帯電話で読むことを想定してるために通しでスクリプトのチェックをしてないんだと思います。
もう、携帯小説を映画化するの辞めませんか?




と、ここまでボロカス書いてみたんですが、その割に35/100点とはどういうことかというと、、、、




この映画はアイドル映画として見た瞬間に評価が急上昇します!まさに綾瀬はるか主演「僕の彼女はサイボーグ」状態!
とにかく川島海荷が超可愛い。話が酷かろうが、演出が酷かろうが、そんなことはどうでも良いくらい可愛い。
アイドル映画の水準としては「BALLAD 名もなき恋のうた」なんて遥かに超えています。
と言うことで、アイドル映画が好きな男の子と、ストーリーとか気にしない頭の軽い女の子にはオススメです!!!

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