ザ・ファイター

ザ・ファイター

今日は1本、

「ザ・ファイター」を見て来ました。

評価:(85/100点) – 魅力的な駄目家族達のアンセム


【あらすじ】

ミッキー・ウォードは8人の兄弟を持ち母親も再婚を繰り返す豪快な家庭に育った。彼はかつて「ローウェルの英雄」として知られた兄ディッキーの後を追ってプロボクサーとなる。しかしそんな兄も今やドラッグにおぼれ、姉妹達も自堕落に生活し、家計は全てミッキーの拳に掛かっていた、、、。

【四幕構成】

第1幕 -> ミッキーの練習とシャーリーン。
 ※第1ターニングポイント -> ミッキーvsリッキー・メイヤーズ。
第二幕前半 -> ミッキーの苦悩。
 ※ミッドポイント -> ディッキーが逮捕される。
第二幕後半 -> ミッキーの決意と再起。
 ※第2ターニングポイント -> ミッキーvsアルフォンソ・サンチェス。
第3幕 -> タイトル戦へ向けての練習とディッキーの出所。
 ※第三ターニングポイント -> タイトル戦開始。
第四幕 -> ミッキーvsシー・ニアリー。


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【感想】

本日は1本、「ザ・ファイター」を見て来ました。先日のアカデミー賞でクリスチャン・ベールが助演男優賞、メリッサ・レオが助演女優賞を獲得しています。そのわりにというと何ですが、お客さんはあんまり入っていませんでした。こんな面白い映画がすぐに打ち切られるのは惜しいので、もし映画を見る余裕がある人は是非来週の映画の日にでも見てみて下さい。
さて、もういきなり「面白い」とか書いてしまいました。本作は実話ベースでありながら上手く脚色してハリウッド式物語に落とし込んでいます。そういった意味では最近でいうと「イップ・マン2」に近いかも知れません。
本作ではミッキーがしょうもない家族達に翻弄されながらも、家族愛と共にボクシングに邁進していきます。かつての栄光にしがみつくヤク中の兄、自己中心的で強権的(というか野村サ○ヨ)な母、そして何をするでもなく集団で騒ぐだけの姉妹達。こういった癖がありすぎる家族のノイズの一方で、彼は恋人や父親に助けられ頭角を現していきます。
本作の要素は「ダメ人間が努力と根性でのし上がる話し」+「癖のある家族達への愛」+「ボクシング」というロッキーそのものな内容です。ですのでつまらないワケがありません。ただそれ以上に、本作はとにかくクリスチャン・ベールの存在感が圧倒的です。完全にイっちゃってる見開いた目で終始ヘナヘナと動くベールは、とてもいつもの彼には見えません。相変わらずのメソッド演技で度を超した移入を見せてくれます。そしてそんなイちゃってる兄と対照的に、ミッキー役のマーク・ウォールバーグはとっちゃん坊や感を遺憾なく発揮しています。まぁ実際にプライベートではウォールバーグもベールもどちらもどっこいな暴れっぷりですが、、、だからこそこの役作りの仕方は素敵です。
実在という面で言いますと、本作におけるミッキーはテーマのためにかなりキャリアを省略しています。本作は最初と最後をテレビのインタビュー取材が挟んでおり、回想の形で語られます。回想の冒頭は1991年の10月で、物語のラストのタイトルマッチは2000年です。実際のミッキーはメイヤーズに負けた後で一時的に引退し3年後に復帰します。しかし本作の中では姉妹から「三週間姿を見ていない」とだけ語られ、その後は時間の経過については明示されません。当然兄の警察沙汰等があるのである程度時間が経っているのはわかりますが、かなり思い切った省略の仕方です。実話をもとにする時はどうしても日付表示を入れたくなるものですが、そういった部分をばっさり切ってテーマに対して最短距離でとても上手く描いています。
とはいえ、この省略によってたとえばミッキーとシャーリーンの関係が急展開すぎたり、ミッキーののし上がり方が早すぎたり見えてしまうかも知れません。この辺りは難しい部分です。かなり気を付けて描いてはいるものの、ミッキーが実は結構強いというのが戦績や勝ち方でチラチラ見え隠れしています。ですが、本作は家族愛がメインのテーマですのでこれは仕方がないと思います。ディッキーが出所してからの一連の流れはそれだけで御飯3杯いけるぐらい素晴らしい兄弟愛ものです。兄の影で生きてきた男が、ついに自分が主役になれるシチュエーションになって兄から認められるわけで、それはもう涙無しには見られません。
ロッキーのような熱血ものを期待していくと肩すかしをくらうかも知れませんが、イかれた兄と真面目な弟の兄弟愛映画としてはかなりの出来です。若干試合のシーンはアレな感じがしますが、「あしたのジョー」のように下手に格好を付けずに真面目で丁寧に取り組んでいるのが分かるので全然気になりません。かなりオススメな作品です。

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トゥルー・グリット

トゥルー・グリット

月曜の春分の日は1本、

トゥルー・グリット」を見ました。

評価:(90/100点) – 小規模ながら屈指の出来。


【あらすじ】

マティ・ロスはまだ14歳の少女である。彼女の父・フランクは酒場の喧嘩に巻き込まれ殺されてしまった。マティはアーカンソーのフォートスミスに父の遺体を引き取りに訪れる。しかし彼女にはもう一つの目的があった。悲嘆にくれる母や兄弟を見た彼女は、父の仇討ちを出来るのは自分だけだと決心していたのだ。彼女はフォートスミスで屈指の暴力保安官”ルースター”・コグバーンを50ドルで雇い、父の仇トム・チェイニーが逃げ込んだインディアン・チョクトー族居留地へと向かう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> マティとコグバーン、ラボーフとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> マティが川を渡る。
第2幕 -> チョクトー族居留地での旅。
 ※第2ターニングポイント -> ラボーフが追跡を諦める。
第3幕 -> トム・チェイニーとの遭遇と仇討ち。


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【感想】

月曜日は話題の西部劇トゥルー・グリットを見て来ました。監督はお馴染みのコーエン兄弟。日本では先月に前作「シリアス・マン」が公開されたばかりで立て続けの新作となります。今年のアカデミー賞では「英国王のスピーチ」に次ぐ10部門でのノミネートでしたが、結局一つもタイトルを取れませんでした。しかしアメリカでの評判は素晴らしく、私が見た回も7~8割は埋まっていました。月曜は繁華街の人通りが少なかったので、これは結構な入りだと思います。
本作は同名の映画「トゥルー・グリット(1969: 邦題「勇気ある追跡」)」のリメイクです。基本プロットは同じですが、本作ではよりマティをメインにしてキャラクターが立つようになっており、またラストも単純なハッピーエンドでは無く情緒を前面にだすようにアレンジされています。
さて、本作の何が凄いかというと、これはもう主演のジェフ・ブリッジスの溢れんばかりの人間力と、ほぼ無名ながらジェフを食ってすらいるヘイリー・スタインフェルドです。もともとの「勇気ある追跡」自体も言ってみればジョン・ウェインのアイドル映画だったわけですし、だいたい50年代・60年代の西部劇は大きくはアクション映画の一ジャンルでありアクション・スターを見るためのアイドル映画だったわけです。このあたりの事情はまったく日本の時代劇と同じで、例えば市川雷蔵だったり勝新太郎だったりのように数ヶ月に一度は主演映画が公開されるようなスターがおり、そのための薄味で定型的なストーリーが量産されていきます。「勇気ある追跡」もそういった作品の中の一つですが、他の有象無象との違いは役者達の掛け合いの凄さでした。トム・チェイニー役に名脇役ジェフ・コーリー、トムのボス・ラッキー=ネッドにはロバート・デュバル、さらには重要な情報を漏らす下っ端ムーン役でデニス・ホッパー。錚々たる悪党を向こうに回して豪傑を絵に描いたようなジョン・ウェインが突撃します。これに加えて「古き良きウェスタン」という言葉がぴったり来るような分かりやすい話と分かりやすい構図、そしてエンターテイメントとしての恋愛未満の恋の予感も入れてきます。まさにオリジナル版は「これぞ入門」と太鼓判を押せるほどオーソドックスな西部劇です。
そしてそんな古典をリメイク(正確には同一原作の再映画化)するわけですから、ここには当然「西部劇復興」「エンターテイメントの王道としての古き良きアメリカ映画」というものが入ってくるしかありません。それを象徴するのが、劇中でオーケストレーションされて何度も流れる1887年の賛美歌「Leaning on the everlasting arms(=永遠の/神の腕に抱かれて)」です。この歌の歌詞は以下のようなものです。

なんという一体感 なんという神が与え給うた喜び
永遠の腕に抱かれて
なんという祝福 なんという平穏
永遠の腕に抱かれて
全ての危機から安全で安心な
永遠の腕に抱かれて
なにを心配することがあろうか なにを恐れることがあろうか
永遠の腕に抱かれているのに
我が主のすぐ側で 平和に恵まれているのに
永遠の腕に抱かれて

拙訳ですみません。まさに本作のマティにぴったりな賛美歌の古典です。
本作のストーリーは非常にシンプルな復讐劇です。父の仇を追いかけて、曲者の凄腕保安官とちょっと間抜けなテキサスレンジャーとしっかりものの少女が珍道中を繰り広げます。そんなシンプルな話しだからこそ、こういった音楽であったり、道中の会話であったり、そういう細部が非常に重要になってきます。
このストーリーの大きなテーマは「復讐」と「正義」です。酔っ払って人を殺したトム・チェイニーは当然悪ですし、仇討ちをするマティに理があるのは明らかです。しかしその仇討ちのためにマティがやることは、例えば死体を引き渡して取引したり、直接悪ではない下っ端を死に追い詰めることです。そして全てのエンディングで彼女に残される物はなんでしょう?そういったものを全て踏まえた上での前述の「Leaning on the everlasting arms」なんです。彼女はラスト直前で誰かに抱きかかえられていませんでしたか?そしてそれは彼女にとってどういう意味があったのでしょう?
そう考えると、エンドロールでこのテーマが流れた時、これはやっぱりちょっぴり泣いちゃうわけです。
ラボーフの笑いあり、コグバーンの熱血単騎突撃あり、そしてマティの執念あり。これで文句を言ったらバチがあたるぐらい盛りだくさんのエンターテイメントです。そこにきちんと古典西部劇の情緒まで入れてくるわけですから、これを褒めずして何を褒めるかってぐらいの出来です。
とりあえず絶対見た方が良いですし、見なければ後悔すること請け合いです。大大プッシュでおすすめします!
※それとサントラも買った方が良いです。これ本当にいいですよ。

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ファンタスティック Mr.FOX

ファンタスティック Mr.FOX

3連休の2本目は

ファンタスティック Mr.FOX」です。

評価:(75/100点) -面白い!!! けど、、、ファンタスティックか!?


【あらすじ】

お父さんキツネは運動神経抜群でかつてニワトリ泥棒として名を馳せた。しかし今は新聞コラムニストとして働き、暗い穴蔵のマイホームで妻と反抗期の一人息子の3人で暮らしている。
ある日、新聞の不動産情報を見たお父さんキツネは、弁護士の反対を押し切って格安の木の家をローンで買うことにする。しかし格安にはワケがある。木の前にはボギス、バンス、ビーンという3人の性悪な農場主が住んでいたのだ。
お父さんキツネはよりによってその3人の農場から盗みを働くことにする。盗みは成功したものの、お父さんキツネは命を狙われることになってしまう、、、。


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【感想】

3連休の2本目は「ファンタスティック Mr.FOX」です。アメリカでは2010年のお正月映画で、日本にやっと入ってきました。先日のアカデミー賞でも長編アニメーション部門でノミネートされています。その割にはお客さんはあまり入っていませんでした。結構話題作だっただけに意外です。
本作は1970年出版の同名の童話の映画化です。人形を使ったストップモーションアニメにしては約1時間半という結構な長さがあります。いくつかの章に分けられており、かなり小気味良く物語りが進んで行きます。ストーリーには大きく2つの柱があります。一つは「大人になって社会に適応せざるを得なくなってしまったもの達が自分たちの本能を取り戻す話」。もう一つは「家族から浮いていたお父さんが家族の絆を取り戻す話」です。そこはやはり童話なので、教育的な内容にきっちり着地します。
書くこともあんまりないくらい良く出来たお話しですし、素晴らしい努力の結晶ではあります。ただ、どうしてもイマイチな感じが拭えないのは、ひとえに結局お父さんキツネが散々周りを巻き込んで悪さしたのに一回も謝らないからです。盗みが最初から最後まで「野生の本能だ」で片付けられてしまうので、なんか喉の奥にひっかかりを感じます。基本的には「お父さんキツネが何かする」→「事件が起きてまずい事になる」→「お父さんキツネが乗り越える」というマッチポンプの繰り返しなので、ファンタスティックっていうよりは自業自得って感じしかしません。基本的な流れは本当に面白いんです。終盤のハンパもの達が自分たちの特技を持ち寄って作戦を組み立てていくところなぞ超熱血な展開ですし、「人間なんてやっちまえ!!!!」と感情移入しまくりです。なので、どうしても細かい部分が気になってしまいました。
また、ヘンリー・セリックの頭がおかしいんじゃないかと思うぐらいの狂気の人形劇「コララインとボタンの魔女」と比べてしまうと、ストップモーションアニメの技術的な部分も一枚劣ってしまいます。これは比べるのが可哀想で、ちょっと近々の相手が悪すぎました。
十分にオススメできる内容ではありますので見に行って損はありません。まだ全国で3館しかやっていませんが、子供でも楽しめますので是非連休最後の休みは親子連れでどうぞ。人形だけあって登場キャラクターは本当にみんな可愛いですよ。

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塔の上のラプンツェル

塔の上のラプンツェル

日曜は気分転換で

「塔の上のラプンツェル」を見て来ました。

評価:(90/100点) – 鉄板のお家芸


【あらすじ】

とある王国で王女が生まれた。しかし王女は生まれながらにして余命幾ばくも無い。王は怪我や老いを治すという言い伝えがある魔法の花を探し出し娘に与える。ラプンツェルと名付けられた娘は一命を取り留めた。
一方それまで魔法の花を使って永遠の若さを得ていた老女・ゴーテルは、自信の若さを保つために花の能力の宿ったラプンツェルを誘拐してしまう。ゴーテルは森の中の塔にラプンツェルを閉じ込め、自分の娘として育てていく、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ラプンツェルの日常と盗賊・フリンライダーとの出会い
 ※第1ターニングポイント -> ラプンツェルが塔の外に出る。
第2幕 -> 「灯り」を見るための冒険。
 ※第2ターニングポイント -> 「灯り」の夜、ラプンツェルが連れ戻される。
第3幕 -> 救出。


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【感想】

映画の話しの前に、被災者の方々に謹んでお見舞い申し上げます。映画を見ていて少し後ろめたいような気分になっているのが正直なところですが、日常へのリハビリも兼ねていつも通りに書いていきたいと思います。
さて、先週の日曜日は「塔の上のラプンツェル」を見て来ました。横浜のブルク13で見ましたが、結構なお客さんが入っていました。地震直後ということもありあんまり映画を見ている気分ではありませんでしたが、人混みでいつも通りの繁華街というのも気分が紛れて結果としては良かったと思います。
あんまり論を重ねるほど頭の整理が出来ていないので、少し簡単に書かせていただきます。
本作は、ディズニーアニメの前作「プリンセスと魔法のキス」の長編セルアニメ復活からうって変わっての3Dアニメーションです。そして前作が「ディズニーの王道たるプリンセス・ストーリーの現代的再解釈」であったのに対し、本作はバリバリの「王道のプリンセス・ストーリー」です。主人公は魔女に攫われた王女様で森の中に囚われており、そこにワイルドでイケメンな盗賊が迷い込んだ所から物語が始まります。テーマは「魔女からの解放と幸せな結婚」。これ以上ないほど「白雪姫」であり、「眠れる森の美女」であり、ど真ん中のプリンセス・ストーリーです。ということで、これはもう十二分に安心して楽しむことが出来ます。いろいろ考えすぎている頭には丁度良い湯加減です。
本作では3D的な表現はあくまでも自然に見えるように使われる程度です。ですので、そこまで3D環境にこだわる必要も無いと思います。ここ数年はディズニーアニメもジョン・ラセターがプロデューサーになっていてピクサーとの差別化が難しくなっていますが、この作品は「ディズニーはやっぱりプリンセス・ストーリーだ!」という宣言のようにも見えました。「キャラクター化された白馬・マキシマス」というのがその象徴です。ピクサー映画に出てくるキャラクター化された動物は、動物的な仕草をコミカライズしてきます。あくまでも実在の動物に寄せる感じです。それに対し、本作のマキシマスは男気溢れ、まるで「みどりのマキバオー」のベアナックルのような愛すべきアホキャラです。
極めつけは90年代前半からのディズニーの象徴・アラン・メンケンによる音楽です。一聴しただけで「あ、これはディズニー映画の音楽だ」と分かるほどの”癖”が、「ディズニー復活」に花を添えます。ディズニーの第2黄金期の最後の一花を「リトル・マーメード」「美女と野獣」で咲かせたアラン・メンケンが、ヘラクレス以来13年ぶりにディズニーアニメに帰ってきたわけで、これはいよいよディズニーの第3黄金期が到来しそうな勢いです。
余談ですが、アラン・メンケンが参加した前作「魔法にかけられて」はディズニー自身による「プリンセス・ストーリーの脱構築(=自己パロディ化と破壊)」だったわけで、そこを通ってついにメンケンが王道的なストーリーに起用されたというのは大きな意味があります。
コメディ要素を入れつつも王道的なプリンセス・ストーリーをきっちりと上質なミュージカルを交えて描いてみせる。これを鉄壁と言わずしてどうしましょう。20年たっても30年たっても十分に鑑賞にたえるような普遍的なエンターテイメント、これがいわゆる「インスタント・クラシック(※)」ってやつです。とりあえず3連休は本作を押さえておきましょう。大プッシュです。
映画館はレイトがやっていなかったりそもそも閉館していたりしますので、くれぐれも無理をしないようにして是非ご鑑賞を。

※1 インスタント・クラシック(Instant Classic)
英語のスラングで、発表された瞬間に歴史年表に載ってしまうような大傑作の事。映画や音楽などの作品以外にも、語り継がれるべき超凄いスポーツ事件なんかでも使います。
例)近鉄・北川の「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン お釣りなし」はまさにインスタント・クラシックだね!
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アメイジング・グレイス

アメイジング・グレイス

本日の2本目は

アメイジング・グレイス」です。

評価:(85/100点) – 気品ある歴史ものの傑作。


【あらすじ】

時は18世紀後半。イギリスの政治家・ウィルバーフォースは従兄弟の家に静養に訪れる。彼は長年にわたり奴隷廃止運動に注力するあまり心身共に疲弊していた。従兄弟に紹介された美女・バーバラは彼の運動の支持者で、すぐに意気投合する。彼女を部屋に招いたウィルバーはバーバラに催促され、彼の運動の歴史を語り始める。それは信仰と尊厳を巡る物語であった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ウィルバーの静養とバーバラとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> ウィルバーがバーバラと出会う。
第2幕 -> ウィルバーの回想。
 ※第2ターニングポイント -> ウィルバーとバーバラが結婚する。
第3幕 -> 奴隷廃止運動の結末。


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【感想】

本日の2本目は「アメイジング・グレイス」です。イギリスでは2007年の春休み映画で、4年遅れで日本に上陸しました。川崎のチネチッタで見ましたが、年配のお客さんでそこそこ埋まっていました。
本作は植民地政策全盛期の大英帝国が舞台になります。ご存じ賛美歌の名曲「アメイジング・グレイス」の作詞家ジョン・ニュートン牧師や英国史上最年少の首相ウィリアム・ピットとウィルバーフォースとの出会いからはじまります。
いわゆる史実もののスタンダードなフォーマットを使いつつ、本作では気力を使い果たし無力感に囚われるウィルバーがバーバラと出会い復活し、ついには本懐を遂げるまでを丁寧に描きます。歴史物としての圧倒的な正しさにプラスして、挫折したヘタレの復活劇に落とし込むわけです。つまり私の大好物ですw
もうとにかく「見て下さい!」としか言いようがないぐらい、ものすごい説得力とカタルシスが詰まった作品です。冒頭のウィルバーは信仰に厚く「女性になんか興味無い」というオーラビンビンで使命感に囚われています。それが若いのに物事をハッキリ言うバーバラに出会い、まるで懺悔をするように自らの失敗を吐露するわけです。お互い好きあってる男女が同じ部屋に夜通し居るのに、やることが徹夜で政治話という超真面目さ。そしてこの真面目さと真剣さがあるからこそ、後半に出てくる法案を通す「チート(=ずる)作戦」に「その手があったか!」と膝を打ち、そしてそこからはじまる歴史物としては稀に見るサスペンス展開にハラハラするわけです。
もちろん格調をだすために犠牲にしている部分もあります。一番大きい点でいえば、もし本作をもっと突き抜けた物にするのであれば、奴隷達が劣悪な奴隷船で運ばれている様子や農園で酷使されている様子を映像的に見せれば良いのです。そうすればもっと真に迫って「奴隷制度は本当に酷い」という感覚を観客にも植え付けられます。でもそこは奴隷廃止200周年記念のイギリス作品ですので、あんまり当時のイギリス人を悪く描くわけにもいきません。この「非人道的であるから廃止すべきである」という主張の根幹である「非人道的っぷり」を描かないというのは、テーマを考えれば随分ヌルい手法です。
本作での「非人道的っぷり」の描写は見た限り3カ所だけです。一つは最初の奴隷解放運動者との晩餐で鎖を見せられるシーン。次に、実際の奴隷船を見学するシーン。最後に議員達をクルージングに招いて奴隷船の前に付け、わざと悪臭をかがせるシーンです。この3シーンとも、直接的な描写はしません。ここが本作の上品さでもあり、そして不満点でもあります。
もしかしたらアフリカの人から見たら「イギリス人の自己憐憫」と思われてしまうかもしれません。ウィルバーは昔のイギリスの価値観(=奴隷を使って植民地で富を増やすのは当たり前)を真っ向から否定した人物ですので、ウィルバーの視点にするとどうしても「昔のイギリス」を否定しないといけなくなってしまいます。そこをギャグパートを挟んでやんわりと回避しつつ最終的には人道的な所に落ち着くという無難な方向で逃げたのはとても上手いと思います。
結果として本作は説教臭くないギリギリのバランスでのヒストリカル・ヒューマンドラマとして、大変すばらしい出来になっていると思います。

【まとめ】

「奴隷貿易」という歴史上の負の部分に立ち向かう男を丁寧に描いた傑作だと思います。それもただ歴史を追っていくのではなく、あくまでも挫折した男の復活劇という一般的な作劇に落とし込んでエンターテイメントにまで昇華しています。
おしゃれ映画の雰囲気でちょっと躊躇うかもしれませんが、まちがいなく見ておいたほうが良い作品です。公開規模が少ないですが、お近くで上映している場合は是非見てみて下さい。見た後にあらためてアメイジング・グレイスの和訳を見れば感無慮になること必至です。かなりオススメな作品です。
※余談ですが、本作で唯一がっかりしたのが最後に流れるアメイジング・グレイスのバグパイプ楽隊バージョンの映像です。ウィルバーが眠るウェストミンスター寺院の広場での演奏っぽいんですが、完全に合成で楽隊の輪郭が浮いてますw 世界遺産ですので観光客を避けて撮影するのが難しかったのかもしれませんが、ちょっと萎えました。せっかく上品な映画なのに、最後でちょっとずっこけますw

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ツーリスト

ツーリスト

今日は新作2本です。

1本目は「ツーリスト」です。

評価:(10 /100点) – こ、、、これは、、、Vシネマか?


【あらすじ】

アレクサンダー・ピアースは詐欺師にして7億4400万ポンド(=約1000億円)の脱税を行う国際指名手配犯である。彼の恋人であるエリーズはフランス警察に完全マークされていた。ある日、いつもの喫茶店で朝食を取っていたエリーズのもとにアレクサンダーからメッセージが届く。指示通りにイタリア・ベニス行きの列車に乗ったエリーズは、そこでアレクサンダーと似た体型の男に声を掛ける。彼はアメリカ人で失恋旅行中の冴えない数学教師だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> エリーズの逃亡。
 ※第1ターニングポイント -> 電車内でエリーズがフランクに声を掛ける。
第2幕 -> フランクの災難
 ※第2ターニングポイント -> エリーズがフランクにカミングアウトする。
第3幕 -> エリーズの囮作戦。


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【感想】

今日の1本目はツーリストです。本国では興行的に爆死し、さらには買収してまで推したゴールデングローブ賞ではあまりの出来にミュージカル・コメディ部門でノミネートされるという赤っ恥までかいた問題作ですw
とはいえ、今週公開作の中では間違いなくポップな作品ですので、結構若い方を中心にお客さんは入っていました。学生の内はもっとちゃんとした映画を見た方がいいですよ、、、。
本作はフランス映画「アントニー・ジマー(2005)」のリメイクとのことですが、私はオリジナル作品は未見です。前知識をまったく入れない状態で見に行きました。
で、、、率直に言うと、、、、これは無い。根本的に役者の”格”が主役2人とそれ以外で開きすぎているため、開始早々にオチがわかりますw そしてそのオチを最後の最後まで引っ張るものですから、なんか終始微妙な気持ちで見ることになります。端的に言うと超眠いw
もちろんディモシー・ダルトンは有名ですが、正直”格”っていう意味ではちょっと、、、、。
ということで、本作は最初っから話しがあって無いようなものです。ですので、これはもうアンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップを見るためだけの作品なわけです。ところが、これがまた微妙なんです、正直。
アンジーはものっすごいマスカラの厚化粧で正直老けてますし、ジョニデもおどけ方が完全にジャック・スパロウのそれなのでセルフ・パロディにしか見えません。途中でジョニデが屋根の上をふらふら走るシーンがあるんですが、肩をすぼめて乙女走りみたいな格好をするのがまんまジャック・スパロウです。すっごい安っぽいんです。しかもちょっと太っちゃってます。このスター2人しか見所がないのに、肝心の2人が微妙に撮れているので、、、、、誰得って言葉が頭をグルグル回りますw
結果としては、「楽しかった!!!!」みたいな幸福感とはほど遠い「あぁ、、、、、あぁ、、、、。」というやっちまった空気が残ります。話しが適当で有名な男女スターがワイワイやるだけのサスペンスというのはツタヤにいけば山のように置いてありますが、それらと違い爽快感が決定的に欠けています。スリラーなのにロクなピンチもないため、カタルシスが一切ありません。アンジーとジョニデがスターそのままで適当に活躍して、適当にくっついて、適当に終わります。見ていてどんどんどうでも良くなってしまいました。
本作を映画館で見るぐらいならツタヤに行ってサスペンスのコーナーを漁った方が有意義だと思います。デートムービーとして時間つぶしにするぐらいでちょうどいいのでは無いでしょうか。積極的なオススメはちょっと厳しいです。

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英国王のスピーチ

英国王のスピーチ

東京マラソンを横目に今日も2本です。1本目は

「英国王のスピーチ」を見て来ました。

評価:(80/100点) – 正調ハリウッド式の師弟もの


【あらすじ】

キングジョージ5世の次男・ヨーク公は吃音症に悩まされていた。将来を考え治療をしなければならないと考えてはいるがどの医者もなかなか成果を上げらない。困ったヨーク公の妻・エリザベスは言語障害を専門とするライオネル・ローグを訪ねる。彼は王子であるヨーク公本人に自分を訪ねるよう要求し、対等な立場での治療を求める。不敬と思いながらも治療を一度試したヨーク公はその成果に驚き正式に治療を受けることとなる。こうして王子の特訓が始まった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ヨーク公アルバート王子の吃音症とローグとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> 正式にローグの治療を受けることにする。
第2幕 -> 父王の死と兄・キングエドワード8世。
 ※第2ターニングポイント -> ヨーク公がキングジョージ6世として即位する。
第3幕 -> 第2次世界大戦の開戦


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【感想】

本日の1本目は「英国王のスピーチ」です。ご存じ今年のアカデミー賞の最有力候補です。たぶんこのブログエントリーをアップした数時間後には作品賞と主演男優賞を持って行っているでしょう。個人的には「ソーシャル・ネットワーク」の方が遙かに好きだし出来も良いと思いますが、「アスペルガーの天才ナード」と「吃音症の善良王」のどっちがアカデミー会員向きかって言われたらそりゃあ、、、、ねぇw 特にアカデミー会員は映画を見もしないで投票しやがる人たちが一杯いますので、こういう「レッテル貼り」はかなり結果に響きます(苦笑)。
とはいえ、その評判と話題性からか劇場は9割方埋まっていました。

王道的な「カンフー映画」

本作は大変分かりやすく出来ています。見た直後のTwitterで「カンフー映画」と書きましたが、本作は本当にカンフー映画の「師弟もの」のフォーマットをそのまま使っています。しゃべりが下手な(=弱い)主人公が、変わり者の異端者だけどしゃべりについては天下一品な(=超強い)師匠と出会い、ユニークな修行でもって成長し、全国民への開戦ラジオスピーチ(=強敵)に打ち勝つまでのストーリ-です。きちんと途中には小ハードルも設定され、より段階を踏んで修行の成果が見えるようになっています。この喋りを空手にすれば「ベストキッド」ですし、フォースにすれば「スターウォーズEP4 新たなる希望」です。

本作は史実をそういったベタで王道的なストーリーに当てはめて描きます。

ですから、これはもうエンターテイメントのど真ん中でありキングジョージ6世とエリザベスの夫婦愛という非常に当たり障りのない感動話と相まって気品たっぷりな作品になっています。なので、あんまりツッコミを入れるのも野暮です。これは「カンフー映画」というジャンルムービーを「歴史もの」と足して一般向けにアレンジした「マッシュアップ作品」なわけですから。もちろんカンフー映画好きとしては大いに不満や物足りなさはあります。

まず第1の不満は修行シーンが明らかに短すぎることです。前半に横隔膜を鍛えたり、転がりながら発声したり、ルックス的に面白い修行がいくつか出てきます。とはいえ結構ダイジェストでさらっと流されてしまうため、いまいち修行によって強くなった感じがしません。もちろんFワードや下品な言葉を連呼するところは多いに笑わせていただきましたw コリン・ファースの堅い雰囲気で笑いを持って行くのはさすがです。

不満の2点目はライオネル・ローグの「異端っぷり」があまり描かれないことです。特に作品の冒頭で「王道的な医者」がやる治療が「ビー玉を口にほおばって喋る」という見た目が十分に変なものなので、その後のライオネルの治療がどこまで「当時の常識として変なのか」が良く分かりません。史実として難しいのかもしれませんが、やっぱりここは「正式な医者がやる治療」と「ライオネルがやる異端な治療」を明確に対比して貰わないと後半の熱血展開が半減してしまいます。ミヤギさんしかり、オビワンしかり、それこそ丹下段平しかり。私達は「そのジャンルのど真ん中から厄介払いされた変人師匠」が大好物です。ジェフリー・ラッシュの優しい顔と相まって、いまいちライオネルの変人っぷりが足りないような気がしました。とはいえ、きちんと「極度のシェイクスピア・マニア」という変態性を描いてはいますので、魅力的なのは間違いないです。ちょっと物足りないぐらいの感覚です。

不満点を書こうとしたらやっぱ面白かったっていう方が先に立っちゃってますが(苦笑)、全体的に「もう半歩足りない」という喉の引っかかりみたいな気持ち悪さはありました。いまいち突き抜けるカタルシスが無いんです。もちろんカンフー映画としての「燃え」の代わりに「感動」させに掛かってきているので仕方が無いんですが、エンタメ映画としてはもうチョイです。

【まとめ】

好きか嫌いかで言えば間違いなく好きですし、事実私は2回ほど泣いてますw 本音を言うとアカデミーは「ソーシャル・ネットワーク」にあげたいですが、本作がとっても去年みたいに「え~~~~っ」って感じにはなりません。これならアカデミーを持って行っても仕方がないです。
アカデミー賞後だと劇場が今以上に混んでしまうかも知れませんが、一見の価値があるのは間違いないですし2時間の間微笑ましく見られる良心的な作品なのもたしかです。とりあえず押さえておきましょう。オススメです。
※随所で指摘されていますが、日本の宣伝コピーの「内気な王」っていうのは変です。「内気」と「吃音症による自信喪失」はまったく別物ですのであしからず。

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恋とニュースのつくり方

恋とニュースのつくり方

今日の2本目は

恋とニュースのつくり方」です。

評価:(12/100点) – (自称)負け犬天才美女がみんなにチヤホヤされる話。


【あらすじ】

28歳彼氏無し。ベッキー・フルラーは仕事一筋で生きてきた。しかし地方TV局の緊縮財政の折、ベッキーはリストラされてしまう。それでも夢を追うベッキーは全国局に履歴書を送りまくる。
彼女の新しい仕事は40年以上続いた老舗の全国ネット早朝番組「デイブレイク」のエクゼクティブ・プロデューサー。しかし番組は視聴率が低迷し打ち切りの危機に瀕していた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ベッキーのリストラと新しい仕事。
 ※第1ターニングポイント -> プロデューサー業開始。
第2幕 -> マイクへの懐柔と視聴率獲得作戦。
 ※第2ターニングポイント -> 「デイブレイク」が打ち切りの危機を脱する。
第3幕 -> ベッキーへのオファー。


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【感想】

今日の2本目は「恋とニュースのつくり方」です。「”プラダを着た悪魔”の脚本家」「”ノッティングヒルの恋人”の監督」という宣伝をしているように、配給としては完全にOLに狙いを絞っている、、、、はずなんですが、観客は少々の女子高生と年配の女性のみでした。400人の箱で20人も入っていませんから、初日としては相当マズい感じです。
ちなみに、公式Twitterへのリツイートで褒めてくれた人にオリジナルグッズプレゼントとか、ブログで褒めてくれた人にオリジナルグッズプレゼントとか、作品同様に腐った性根のキャンペーンをやっています。
ですが、私はそんな物で懐柔なんぞされません。甘い!!!!!
レイチェル・マクアダムスの自筆サインポスタープレゼントでも絶対無理。ハリソン・フォードとのディナーにご招待でギリギリ懐柔できるぐらいの作品の出来です。プライベートのハリソン・フォードに突撃して「F○ck Off!!」と叫ばれるという「ブルーノごっこにご招待」なら絶賛してみせますけどねw
とまぁおふざけは置いておきまして、本作で何がショックだったかというと、これはもう「誰かが私にキスをした」レベルの調子こいた万能美女の話をハリウッドメイクで見せられるということに他ありません。本作は「恋に仕事に頑張る冴えない女の子の話」みたいな雰囲気を被った「天才で、美人で、イケメン・エリートの彼氏がいて、誰からもチヤホヤしてもらえる女性の話」です。これを見た本当に冴えないOLの方々は激怒して良いレベルです。
だって、本作ではベッキーが努力するという直接的な描写が一切ないんです。彼氏の家にお泊まりしながらも夜中にニュース番組をチェックしたりする描写はあるんですが、そもそも彼女の受け持つ「デイブレイク」は報道番組ではなく情報番組ですし、直接この勉強が役に立つ場面が一切ありません。なにせ彼女が視聴率を立て直す切り札は「デイブレイク」を下世話なバラエティーにすることなんですから。でも、それってどうなんでしょう? 下世話な番組にしたらすぐに視聴率がV字回復するってちょっとTV視聴者を舐め過ぎじゃないですか? 早い話、本作ではベッキーは最初から最後まで、超優秀で人当たりも良くていろんな男性が声を掛けて好意を寄せてくれる完璧人間なんです。そんな完璧人間が個性的なキャスター2人を懐柔する話しなんです。
私、実は「プラダを着た悪魔」は大好きです。今でもちょくちょくDVDで見返すぐらい好きです。アン・ハサウェイとメリル・ストリープが大好きだというのも多分にあるんですが(苦笑)、あの映画ではきちんとアンディが「上司の無茶振りに根性で耐える」という「修行シーン」があったんです。ところが、本作では同じ脚本家が書いたとは思えないほど、主役のベッキーは最初から才能を持っているんです。それは開始直後の「デイブレイクのプロデューサ就任初の事前ミーテイング」ですぐに発揮されます。聖徳太子よろしく一斉に発せられる複数の要望をすべて完璧に裁いて見せるんです。しかも最後には余裕のアメリカン・ジョークまで付けてきます。この時点でどっちらけです。こいつはもう我々とは違う世界の天才なんだと。これは「冴えない女」では断じてないと。そう思ってしまうわけです。そうすると、後はもう感情移入も応援もすることなく客観的に天才の天才的でイケイケな行動を死んだ目で見るしかないんです。
本作にはテレビ業界特有の苦労や過酷な労働条件で働く女性の苦労は語られません。あくまでも記号としてのTV業界です。
なんか全体的に作り手の愛情や熱意が伝わらない作品でした。別に調子に乗っている天才の話ならそれはそれで良いんですが、だったら天才なりの苦労とか、天才だけどブチ当たる壁とか、そういった物を設定して欲しかったです。なんの障害もなくスルスルと実績を上げて行くベッキーを見て、本当に心底どうでも良いと思ってしまいました。
OLの方には一切オススメしません。もし「自分は天才なのに周りが分かってくれないから不当な扱いを受けている」と日頃から思っている方には、是非見て欲しい作品です。そんな方にはオススメします!!!

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記事の評価