ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

土曜の3本目は

「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」です。

評価:(45/100点) – あれ?ちょっ、、、、、え!?


【あらすじ】

ザラチェンコを襲い瀕死の重傷を負ったリスベットは、強靱な生命力で大学病院へと運ばれ一命を取り留めていた。しかし対するザラチェンコもやはり生き延びてしまい、ニーダーマンに至ってはまんまと逃げ延びて潜伏してしまう。
一方その頃、ザラチェンコが裁判で過去を暴露することを恐れた秘密結社・特別分析班の創設者・エーヴェルト・グルベリは、ザラチェンコとリスベットの口封じを企む。そしてかつての捜査資料を元に国家の暗部へと近づくミカエル。首相からの勅令を受け公安内部の非公式結社の存在を捜査するトーステンとモニカ。特別分析班の息の掛かった検察をも巻き込み、舞台はリスベットの裁判へとなだれ込む、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 特別分析班の登場。
 ※第1ターニングポイント -> フレドリック・クリントンが特別分析班に復帰する。
第2幕 -> ミカエルとリスベットの調査
 ※第2ターニングポイント -> 裁判が始まる。
第3幕 -> 裁判とニーダーマン。


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【感想】

さて、昨日の3本目は「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」です。原題は「Luftslottet som sprangdes」なので「打ち砕かれた空虚な城」って感じなのですが、なんでこんな邦題になったかは良く分かりません。さすがに第2作が公開してすぐの続き物第3作ですので、そんなにお客さんは入っていませんでした。とはいえ、2作目がかなり良いところでぶった切られるので、見たら絶対に続きが気になる作品ではあります。
細かい前提はミレニアム2と同じなので割愛させていただきまして、いきなり本題に行きます。本作ではついに、ザラチェンコの所属していた組織が登場します。前作では思わせぶりで終わっていたんですが、今回でそれが国家ですら把握できていない秘密結社であることが分かります。そして、この”班”の連中達がリスベットをあの手この手で社会的に抹殺しようと企んできます。もちろん最凶ロリコン変態・テレボリアン医師も組織の手先です。そこをリスベットがどう切り抜けていくのか? そしてミカエルはどう援護していくのか? 壮大なリスベットの復讐劇の完結編です。
とか書くと面白そうに聞こえるんですが、、、正直ちょっと拍子抜けというか、、、なんかカタルシス不足を感じてしまいます。というのも、これは仕方が無いことなんですが、実は原作自体が作者の急死により中途半端に終わってしまってるんですね。原作では伏線を張りまくったのに続編が無いという大変微妙な事態が起きていますが、映画ではその伏線部分が綺麗さっぱりカットされています。その分、内容はリスベットと”班”との対決に絞られていてシンプルにはなっているんですが、一方でリスベットという稀代の名ヒロインの復讐劇としてはかなりショボイことになっています。いうなれば「僕らの旅がこれからだ!」エンドでして、ラストで晴れて自由の身となったリスベットがこれからミカエルと組んで大活躍するんだろうな、、、というちょっとした期待で終わってしまいます。本当に静かな終わり方でして、カタルシスはほとんどありません。リスベット物語の第一章で終わってしまったような感じです。もちろん、陰謀仕立ての法廷サスペンスとしては中の上ぐらいの出来ではあります。でも、やはり1作目で「現代のポアロか」ってくらいすばらしい「金持ち一家にまつわる謎を解く」という探偵物を高いレベルで実現し、2作目で「ピンチになったスーパーヒロインの意地と執念の逆襲」を見せてくれたシリーズとしては、ちょっとこの「まぁまぁよくできた法廷劇」では物足りません。
前作以上にミカエルとリスベットの連携が見られますし、よりプレイグ(疫病神)を巻き込んでの「チームもの」としての完成度は上がっています。それだけにもう一押し、せめて班の連中に対する復讐を見せて欲しかったです。いくらなんでも普通に逮捕じゃねぇ、、、。
一応申し訳程度に最後にアクションがあるんですが、それもあまりにショボすぎてむしろ要らないかなという位の感覚です。
惜しいです。

【まとめ】

もちろんシリーズ1作2作を観た方は絶対に行くべきですし、行かないと悶々として過ごすことになりますw また、完全に前作の続きですから、前作を見ずに本作だけ見るというのは限りなく無意味です。
リスベットは相変わらず良い味だしていますし、ミカエルの「船越英一郎化」も着々と進行しています。欲を言えば思い切ってオリジナルストーリーでテレビドラマにしちゃえばいいのにと思わないこともないのですが、これはこれで「ミレニアム3部作」としては無難な着地なのかなとも思います。
なんにせよ1作目と2作目は傑作ですので、観ていない方は1作目をDVD、2作目を劇場で見て、惰性で本作もご鑑賞いただくと良いかと思います。にしても見たのになんか煮え切らないというか悶々とするというか、、、スティーグ・ラーソン生き返って続編書いてくれないかな、、、。

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ミレニアム2 火と戯れる女

ミレニアム2 火と戯れる女

2本目は

「ミレニアム2 火と戯れる女」を観てみました。

評価:(75/100点) – テレビドラマのクオリティでは無い。


【あらすじ】

前作にて逮捕されたミカエルが出所してから暫く経ち、「ミレニアム」には新たなネタの売り込みが来ていた。中でもダグが持ち込んだのは、政府高官達の売春に関わるスキャンダルネタ。2ヶ月の臨時雇用を得たダグだったが、まさに最終稿をあげるそのときになって、恋人と共に射殺体となって発見されてしまう。時を同じくして、リスベットの後見人・ビュルマンも寝室で射殺体で発見される。銃から指紋が発見され3名の殺人容疑で指名手配されたリスベットは、独自の捜査で犯人を捜索する。そこには彼女が長年追い続けた「ザラ」の関与の証拠があった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ダグの持ち込みと取材。
 ※第1ターニングポイント -> ダグが殺される。
第2幕 -> リスベットの逃亡とミカエルの捜査。
 ※第2ターニングポイント -> ミカエルがパルムグレンと接触する。
第3幕 -> リスベットとザラの対決。


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【感想】

今日の2本目は「ミレニアム2 火と戯れる女」です。1作目から1年も経たずに早くも続編の登場です。本日から渋谷のシネマライズではオールナイトイベントで「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」まで一挙上映していますが、とりあえず2作目だけ見てきました。前作の評判が良かったからか、そこまで宣伝していない非ハリウッド作品としてはかなりお客さんが入っていました。

立ち位置の確認

本作はスウェーデンの雑誌編集者・スティーグ・ラーソンの死後に発表されたミレニアム3部作の2作目の映像化です。元々テレビの二時間ドラマとして制作されていましたが、1作目の映画があまりに大ヒットしたため、急遽編集をしなおして映画として公開されました。そのため本作には35mmフィルム版が無く、日本でもブルーレイで上映されています。
ちょっと先日も「怪談新耳袋 怪奇」で書きましたが、ブルーレイ上映ですとどうしても色深度がフィルムより浅かったり、字幕の「シャギ」がすごく目立ったりします。ただ本作はそこまで画像的な破綻はなく、どちらかというとそのままセルBDにする気が満々なために入る「人物紹介テロップ」にゲンナリします。さすがに「リスベット(天才ハッカー)」と出たときは笑いを堪えるのに必死でしたw
特に前半は非常にテレビドラマ的な固定カメラワークが多く、たしかに映像はチープになったように感じます。しかし、それにもまして圧倒的に面白いサスペンス展開にグイグイ引き込まれるため、中盤以降はまったく気になりません。とにかく無類に面白いシリーズです。

シリーズの肝

本作は、1作目よりも謎解き/サスペンス要素はかなり減っています。というよりも、まさに三部作の二部目といった感じでキャラクターを掘り下げるためのストーリーとなっています。当然掘り下げる対象は暴走少女・リスベットなわけで、本作はリスベットの過去にグイッと入り込むことに重点が置かれています。
ですので、例えば犯人は誰かとか、犯行手法はどうとうか、そういった要素はほとんどありません。実行犯はかなり早めに分かりますし、黒幕もパルムグレンに会いに行くだけで分かります。
本作は1作目にあった「リスベットとミカエルの信頼/愛情関係」をすれ違わせ続けて物語の推進力にしています。「果たしてミカエルはリスベットと会えるのか!?」だけで二時間持たせるわけです。なのでどうしても「キャラもの」として見ざるを得ない部分があります。もっとも、リスベットのキャラが濃すぎてまったく問題は無いんですが、ファン限定の作品ということにはなってしまうかと思います。

【まとめ】

サスペンスものは毎回物凄い書きづらいんですが(苦笑)、本作は間違いなくイかした良作です。アクション要素あり、連続殺人あり、そしてお色気あり、娯楽作としては相当に良い線に行っていると思います。
1作目の「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」はDVDも出てますしレンタルにもありますので、是非前作を見てから、ダッシュで映画館に駆け込んで下さい! 3作目がすぐに公開されてしまうため、2作目の公開期間はあらかじめどこも短く予定されています。最近は数が減っているサスペンスでは間違いなく良作ですので、是非是非劇場で見て下さい。大プッシュでオススメです。

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キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争

キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争

本日は2本です。1本目は

キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争」です。

評価:(15/100点) – 犬可愛い。猫可愛い。でもそれ以上では、、、。


【あらすじ】

猫の秘密組織「ミャオ」に所属していたキティ・ガロアはミッション中に番犬に襲われて除毛液に落ち全身の毛を失ってしまう。飼い主からも捨てられたガロアは犬への復讐のため、独自の音波を作成、衛星を通じて全世界の犬を狂わせようと計画する。
キティ・ガロアの謀略を阻止するため、今、仇敵であった犬と猫が手を組む、、、。ついでに鳩も、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ディグスの失敗。
 ※第1ターニングポイント -> ディグスが全世界犬司令部に招かれエージェントになる
第2幕 -> シェイマスとガロアの捜索
 ※第2ターニングポイント -> ガロアの居所が分かる。
第3幕 -> 遊園地での決闘。


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【感想】

本日の1本目は「キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争」です。これもお客さんがほとんど入っていませんで、私以外は子連れ親子が2組居ただけでした。
非常に簡単に言いますと、これは動物を使ったスパイ大作戦のパロディです。のみならず、タイトルはスターウォーズのパロディ(原題の副題がThe Revenge of Kitty Galore = SW ep3の「The Revenge of Sith」)だったり、オープニングが「カジノ・ロワイヤル(2006年版)」以降のボンド映画のパロディだったり、除毛液に落ちるところは「バットマン(1989/ティムバートン版)」でジャック・ニコルソンが漂白液に落ちてジョーカーになる所のパロディです。そのほかにも「羊たちの沈黙」のレクター博士もどきの猫だったり、空中戦はちょっとロボコップorアイアンマンっぽさもあります。
ということで、本作の話自体は行き当たりばったりで下らないのですが、犬や猫が有名作品を再現してくれるという動物好きにはたまらない作品です。逆に言えば、映画として見に行くと痛い目を見ますw あくまでも犬猫が名場面を再現するだけの動画集です。
見も蓋もないことを言いますと、これ要は「親指スターウォーズ」とか「最終絶叫計画」とかと同種の映画で、それの物凄く出来が悪いものです。
なので、犬好きにのみオススメいたします。猫はかなり悪く描かれますので、猫好きには耐えきれないかも知れません。

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特攻野郎Aチーム THE MOVIE

特攻野郎Aチーム THE MOVIE

本日は3本です。1本目は

特攻野郎Aチーム THE MOVIE」を観てみました。

評価:(75/100点) – 脚本?辻褄? こまけぇこたぁいいんだよ!!!


【あらすじ】

ハンニバル大佐率いる特殊部隊Aチームは、モリソン将軍の命令を受けイラクのゲリラが持つ偽ドル札の原版の奪取作戦を行う。見事作戦は成功したが、原版受け渡しのまさにそのとき、モリソン将軍のバンが爆破され傭兵のパイクに原版を奪われてしまう。罪を押しつけられたAチームは懲役刑を負ってしまうが、半年後にCIAのリンチ捜査官の手引きで脱獄。名誉を回復するために、パイクと原版を追う。

【三幕構成】

第1幕 -> Aチームの結成と偽ドル原版奪取作戦。
 ※第1ターニングポイント -> Aチームが懲役刑を受ける。
第2幕 -> 脱獄とパイクの追跡
 ※第2ターニングポイント -> Aチームが再び裏切りに会う。
第3幕 -> 港での決戦。


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【感想】

本日の1本目は「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」です。ご存じテレ朝での超人気シリーズ「特攻野郎Aチーム」の前日譚的な内容です。
非常に多くのお客さんが入っていたのですが、意外にも若い人が多かったように思います。オリジナル版は私も結構リアルタイムギリギリでして、途中からは覚えていますが最初の方は後からDVDで見たように思います。
本作は非常に評価しづらい部分があります。というのも、単体の映画として見た場合は話が相当雑なんです。編集的に変な所もありますし、それ以上に作戦の進め方というのが唐突だったり余計だったりという部分が多々あります。
ジェシカ・ピール演じるソーサが何がしたいかさっぱり分からなかったり、そもそも軍事法廷に掛けられるための証拠がまるでないため全然ハメられたことになってなかったり、微妙は微妙です。
とはいえ、オリジナル版にあった水戸黄門的なお約束はバッチリ入っています。銃も車も昔のままで登場しますし、コングへの睡眠薬投与やクレイジーモンキーの脱獄など愉快なシーンをきっちり踏襲してくれます。そして。男4人がお互いに助け合って悪党を懲らしめていくという「男子チームもの」としては大変よくはしゃげていると思います。
このワイワイキャッキャした感じが曲者軍団Aチームの一番の魅力であるのは間違いありません。
ただ、、、ただですね、、、今回のAチームはバリバリに敵を殺します。どうしてもハリウッドの大作アクション映画としては仕方が無いのかも知れませんが、オリジナルでは人を殺さずに「懲らしめる」というのがAチームの痛快さだったはずです。もちろん今回はテレビ版より悪党もスケールアップしていますから、なかなか懲らしめるだけで終わらせるのは難しいかも知れません。それでも、もう少し配慮が欲しかったかなとは思います。あくまでも「ならず者」ではなく「ちょっとおどけたプロ集団」というところがAチームのAチームたる所以なんですから。

【まとめ】

決して単独で出来の良い映画ではありませんが、テレビシリーズのファンであれば間違いなく一見の価値があります。ラストで例のナレーション(俺たちは、道理の通らぬ(中略)助けを借りたい時は、いつでも言ってくれ!)が流れれば嫌でもテンションが上がります。そしてエンドロールの最後の最後で流れるAチームのテーマで、もはや心は80年代にタイムスリップです。
バカが好きな方、映画は火薬の量で決まると思う方、そしてホモソーシャルが好きな方にはオススメです。

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瞳の奥の秘密

瞳の奥の秘密

木曜は久々のレイトショーで

瞳の奥の秘密」を見てきました。

評価:(90/100点) – 傑作ロマン・サスペンス


【あらすじ】

検察官として活躍したベンハミン・エスポシトは定年を迎え、小説を書いて老後を過ごすことにした。彼が真っ先に書こうと思いついた題材は25年前に担当した婦女暴行殺人事件であった。彼はかつての上司にして才女イレーネ・メネンデス・ヘイスティングスを訪ね、書き連ねた文章を見せていく。それは愛と正義と政治の渦巻く悲しい物語だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 婦女暴行殺人
 ※第1ターニングポイント -> エスポシトがリリアナ・コロトの写真アルバムを見る。
第2幕 -> イシドロ・ゴメスの捜索と結末
 ※第2ターニングポイント -> エシポストが事件を再捜査する。
第3幕 -> 解決編。


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【感想】

さて、8月はここまで全然映画が見られていないんですが、久々にレイトショーに行ってきました。タイトルはアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」。本年度のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品です。完全な単館映画ということもあってか、かなりの観客が入っていました。

作品の概要

本作はミステリー仕立てのロマン映画です。定年を迎えたエスポシトが、自分の人生を振り返るようにかつて担当して完全解決に至らなかった殺人事件を回想していきます。そして事件は意外な方向に転がっていき、アルゼンチンの政治情勢とも絡んで大きな流れへと発展していきます。
一応本作を見る上で必要となるアルゼンチンの歴史をざっと復習しておきましょう。
本作の回想シーンの舞台となる1970年代後半のアルゼンチンは1976年のビデラ将軍の軍事クーデターに端を発する超極右的軍事政権のもとで極端な左翼狩りが行われていました。本作で登場するある男は、この左翼狩り要員として雇われることによって特赦を受けます。そしてこの時代のアルゼンチンは決定的に官の腐敗が進行しており、ほとんど何でもありの無法状態となっています。
本作の主人公であるエスポシトとイリーナは、そんな状況下でも職分を越えて正義を貫こうとします。彼らは無茶な捜査で犯罪まがいの事も行いますが、徹底的に善人として描かれます。そしてここに「身分違いの恋」による甘酸っぱい思い出がプラスされるわけです。エスポシトは正義感や道徳心が強く、特に女性に対してはかなりの奥手です。劇中でなんどもイリーナがサインを送りますが、このヘタレはまったく踏み込みません。その純情さが、やがて遺族の夫・モラレスの狂信的なまでの妻への愛に重なっていきます。そしてエスポシトとモラレスとの共感関係が、互いの人生を変えていきます。
本作はすべての要素が「愛憎」によって巻き起こります。さすが情熱のラテン系w 特にタイトルにもなっている瞳が本作では「外からでも心が見えてしまう場所」として大変重要な要素になっています。エスポシトは写真の中の視線でもって物証も無しに犯人のあたりを付けますし、イリーナはイシドロが取調中に自分の胸を凝視しているのを見て犯人だと確信します。そして判事は保身とプライドのために犯人と司法取引を行います。
その全てが、あるタイミングで一時停止し、そして人生の終わる直前に一斉に再始動します。全体的にはB級サスペンスな作りをしているんですが、その悲哀というかロマンスの部分が本作をとても素敵な作品に押し上げています。

【まとめ】

猟奇殺人が出ると点数が甘めになってしまうんですが(笑)、本作は大変よくできた”文芸作品”だと思います。話の内容がそこまであるわけではないですし、謎解きがどうこうという事でもありません。ただただエスポシトとイリーナにうっとりしながら、パブロで笑って、モラレスで涙する。そういう類の”良質な文芸作品”です。
で、なんでカッコつきで「文芸」というかと言いますと、正直面白い事は面白いんですが、すごくもったいない気もするんです。というのも、本作はやろうと思えばそれこそデヴィッド・フィンチャーの「ゾディアック(2007)」みたいな「傑作捜査チームもの」にも出来たはずなんです。でもそこはやはりラテン系なのか、どうしてもロマンスの方にどんどん寄っていってしまいます。だから、犯罪捜査物としてはあんまり出来が良くないんです。あくまでも文芸作品、もっといえば「毒にも薬にもならないけどなんとなくおしゃれな雰囲気にはなれる映画」としての良作です。
ですので、デートにはぴったりですし、夫婦で休日に見に行くにもぴったりです。
あくまでもアルゼンチンの政治闘争等を深く考えずに、さらっと良い雰囲気を楽しむのがオススメです。

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ザ・ホード 死霊の大群

ザ・ホード 死霊の大群

2本目はアート系映画の鬱憤晴らしw

「ザ・ホード 死霊の大群」を観てきました。

評価:(35/100点) – よくある脱出系ゾンビ映画の凡作。


【あらすじ】

とあるフランスの郊外、警官の一人がナイジェリア人ギャングの兄弟に殺されてしまう。彼の仕事仲間や不倫相手の一行4人は復讐のためギャングのアジトを襲撃する。しかしギャングに囚われてしまい、リーダー格のジメネスは射殺されてしまう。しかしその時、別の死体が急に暴れ始める。外には咆哮が響き、一行はゾンビの大群に襲われることになる。果たして彼らはアパートから脱出することができるのか?

【三幕構成】

第1幕 -> アジトの襲撃
 ※第1ターニングポイント -> 便所の死体が急に襲ってくる。
第2幕 -> ゾンビからの逃走と脱出手段の模索。
 ※第2ターニングポイント -> レネと出会う。
第3幕 -> 地下からの脱出。


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【感想】

さて、アート系映画で眠くなった頭を戻すべく、2本目は「ザ・ホード 死霊の大群」です。近年流行っている「動きの速いゾンビ」の最新型で、おしゃれとスプラッタの国・フランスからやってきました。ジャンル映画な上に公開からも結構時間が経っていますので、さすがのシアターNでもガラガラでした。
いきなりですが、本作はいわゆる「脱出型モンスター映画」のフォーマットに非常に忠実です。というかとても基本的で捻りが無く平凡です。近作ですと「斬撃 -ZANGEKI-」が一番近いでしょうか。なんらの理由でゾンビが増えてしまった世界で建物から脱出することを目的にサバイバルしていきます。ジャンル映画ですので、なんでゾンビが一杯居るのかとか、脱出した後どうするのかとか無粋なツッコミは無しですw きちんとお約束として戦闘力の高い助っ人も登場しますし、生き残るのが一番生き残りそうに無い奴というのもお約束です。
問題点があるとすれば、それはキャラの立ち不足と脱出プロセスのアイデア不足です。
せっかくサスペンス並に入り組んだ人間模様を設定しているのに、それが物語に全く活かされません。本作には対立する警官とギャングが対ゾンビで協力するという面白い設定があります。しかしこれですらロクに使われません。結局変な口喧嘩が頻繁に挟まるだけで、行動自体は普通の仲間です。
そして脱出プロセスについてもどうかと思います。というのも、ただただ曲がり角でゾンビを殺しつつ階段を下りていくだけなんです。裏道があるわけでもないですし、道無き道をアクションを駆使して進むこともありません。本当にただ階段を下りるだけ。これでどうしろというのでしょう、、、、。
とまぁここまでボロクソに書いているわけですが、決して完全な駄作というわけでもないと思います。というのも1カ所だけ褒めるべき所があるんです。それはゾンビのタフさに任せて過剰なまでに「ボコボコにする」描写です。とにかく本作に出てくる人間達は強く、当たり前のように素手でゾンビと渡り合ってしまいます。その時点でホラーとしては怖くないわけですが(苦笑)、一方でコントとして見ればこれが結構成立しています。以前「スペル」の時に書いた「お化けがぼけて人間がツッコむ」という関係性です。とくにオロールとグレコは相手が一人だろうが二人だろうが素手やナイフでゾンビをぶち殺していきます。2人で正面突破出来るんじゃないかと思うほど屈強に描かれています。この辺りはとても好感がもてる描き方です。
とはいえ、やはり物語の部分で残念なところがありすぎます。「俺がここを食い止めるからおまえら逃げろ!!!」という熱い展開を3回もやってしまったり、物語の1/3ぐらいが無意味な泣き言&口喧嘩であったり、どうにも作りが不細工です。決してつまらない作品ではないのですが、どうしてもジャンル映画としての「お約束」を理解していてそれが好きであることが前提となってしまいます。ですので、万人にはとてもオススメ出来ません。
今年はゾンビ映画豊作の年でうれしい限りなんですが、そういった文脈でのみオススメ出来るかと思います。そういえば散々前半で時間を使った不倫や妊娠の件はどこにいったんでしょうw その辺の適当さもジャンル映画ならではです。

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シルビアのいる街で

シルビアのいる街で

本日も2本です。1本目は

シルビアのいる街で」です。

評価:(60/100点) – ザ・単館なおしゃれ雰囲気映画。


【あらすじ】

男はカフェで女性客をスケッチ中にシルビアに似た女性を見つけ尾行する、、、。


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【感想】

本日の1本目は「シルビアのいる街で」です。2007年のヴェネチア映画祭のコンペ作品であり、2008年の東京国際映画祭でもワールドシネマ枠で上映されました。あいにく東京国際で見逃してしまっていたので、2年越しの初見です。話題の作品という事もあり、かなりお客さんが入っていました。とはいえ、渋谷のイメージフォーラムでは併映の「ザ・コーヴ」の方が入っていたようです。
実は本作は非常に感想が書きづらい作品です。というのも、いわゆるアート系の作品でして、話の内容自体がほとんど無いからです。それどころか台詞もほとんどありません。
話の骨格は、画家っぽいイケメンの青年が昼間からビールを飲んでオープンテラスで女性を物色中に、思い出のシルビアに似た女性を見つけストーキングするだけです。イベントとしては本当にそれだけ。一応3幕構成をしてはいるんですが、限りなく物語性が排除され想像に委ねるようになっています。映画として面白いのは、本作の過剰なまでの間(ま)の取り方です。極端な話、本作をまとめようと思えば5分の短編にすることも出来ます。しかしその稀薄な物語に対してほとんど無駄とも思えるほどの間を取ることで、観客は嫌でもスクリーンに引き込まれ想像を膨らませてしまいます。
そこで写されるのはカフェの様々な会話の断片であり、雑踏における生活の断片です。この物語はすべてが断片で出来ています。主人公の男の生活も、シルビアを捜す理由も、そして追いかけられる女性も、全て断片しか見せません。だからこそ観客は嫌でもそこに自分の思いを投影してしまいます。ですから、本作は夢見るおしゃれ志向の人であればあるほどすばらしい傑作に見えると思います。いうなれば「物語を語る映画」ではなく「物語を観客に作らせる映画」です。
なので、もしあなたが「片思い」「思い出の人」「おしゃれな街並み」「孤独なイケメン」といったキーワードにビビっと来るようであれば、本作はあなたの心を映して大傑作になってくれるはずです。まさしく正しい意味でのアート系映画であり90年代に流行った「ザ・単館映画」だと思います。
※余談ですが、もしよければ本作について書いている評論家さんや個人ブログを漁ると面白いかも知れません。上記のように本作を語ることは自分の内面・嗜好を晒すのとイコールです。書き手の性格がにじみ出てしまうはずですw 稀にある「書いたら負け」な映画ですw

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ベスト・キッド(リメイク)

ベスト・キッド(リメイク)

2本目は

ベスト・キッド(リメイク)」です。

評価:(20/100点) – スミス家のホームビデオ。


【あらすじ】

12歳のドレは母親の転勤で中国・北京へ移住してくる。移住したその日、彼は公園で女の子をナンパするが、その子がガキ大将の意中の子だったことからさぁ大変。その日よりドレはガキ大将一味に目を付けられてしまう。追いかけまわされたドレを救ったのは、アパートの管理人・ミスターハンだった。彼らはガキ大将の道場にケンカを売りに行き、カンフートーナメント大会で決着を付けようと提案する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ドレの引っ越し。
 ※第1ターニングポイント -> ドレがミスター・ハンに弟子入りする。
第2幕 -> ドレの修行と七夕祭り。
 ※第2ターニングポイント -> トーナメントが始まる。
第3幕 -> 大会の模様。


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【感想】

さて、2作目は先行公開という体の「ベスト・キッド(リメイク版)」です。余談ですが、最近先行公開といいつつ普通に土日に4回も5回も上映する作品が増えているんですが、これどうなんでしょう? もちろん先行公開の客はそのまま初週の動員数にスライドできるという裏ルールがあるため土・日分をチートできるというカラクリなんですが、客からするとあんまり意味がありません。しかも先行公開した作品で初週一位を逃すと超恥ずかしいというデメリットもありますw とはいえ、本作はかなりお客さんも入っていましたので、なんとか一位はとれそうです。

本作の立ち位置。

本作はキャラクターの名前と舞台が変わっているだけで、オリジナルの「ベスト・キッド」をほぼそのままコピーリメイクしています。台詞単位までほとんど同じです。皆さんご存じだとおもいますが、本作はウィル・スミス夫妻が制作で主演が息子のジェイデン・スミスです。要は、ウィル・スミス夫妻が小学校卒業記念に主演映画をプレゼントしたというだけの話です。ミヤギ師匠役(今回はミスター・ハン)にジャッキー・チェンをキャスティングしていることからも、ウィル・スミスの息子に賭ける意気込み(=親馬鹿っぷり)が伺えます。しかし、、、非常に残念ですが、この息子は酷すぎますw

ジェイデン・スミスという”スター”

ほぼ丸々コピーリメイクである本作は、オリジナルと大きく変わっている箇所が3つあります。1つは見ての通り、競技が「空手」から「カンフー」に変わっている点です。とはいえ、実はこれはあんまり大したことはありません。というのもオリジナルだってダニエルは最後に「鶴の構え」を使うわけで、全然空手じゃないからですw なんの問題もありません。
2つ目はこれも見ての通り、師匠がノリユキ・パット・モリタからジャッキ-・チェンに変わっている点です。これは良くも悪くもですが、パット・モリタが実際には空手が出来ないのに対して、ジャッキーは素で武術の達人です。なので、パット・モリタの持つ「胡散臭さ」が大幅に減り、代わりに訓練シーンやチンピラから主役を救うシーンが豪華になっています。
3つめはこれも見ての通り、主役が青年から子供に変わっています。これははっきりいって全面的にマイナスです。単に説得力の問題もあるんですが、それ以上にジェイデン・スミスが酷すぎます。
で、やっとこさジェイデン・スミスの話なんですが、このクソガキがまったく可愛くないんです。態度が悪いというか、すでに父親のもつ「俺様チンピラオーラ」がビンビン出ていますw どれくらい「俺様」かというと、全ての場面でジェイデンのアゴが上がっていて物理的に他人を見下す目線になっていますw それはジャッキーに対しても明らかです。私たちのアイドル・ジャッキーすら馬鹿にしてるのかと思うと、思わずぶっ飛ばしたくなりますw
実はこのジェイデンへの変更でストーリー上のニュアンスが大分変わってしまっています。というのも、例えば本作のそもそもの発端であるチンピラとのケンカは、どう見てもドレが悪いように見えますw そしてその後の水掛け復讐場面も、どう見てもやり過ぎです。オリジナルでは水道水をホースでかけただけなのに、本作ではあきらかに健康に悪い汚水をかけます。そんなことしたらリンチされて当然です。
これは非常に重要な問題で、要はオリジナルのダニエルはヘタレだけど真面目だったのに、本作のドレはクソ生意気でケンカっ早いチンピラなんです。これじゃ、そもそもの師匠の教え(「空手/カンフーは防御の技だ」)に反してるんです。全然共感できないw 恐ろしいのは、セリフをほとんど変えていないのに、ジェイデンという悪い意味でスター性のある人間のオーラだけでこの感じ悪さが付加されている点ですw ジェイデン、、、恐ろしい子、、、。
もう一方のスター、ミスターハンも「ジャッキーである」以上の背景がありません。キャラとしてミヤギさんよりも明らかに薄っぺらいんです。でもそこはジャッキーなんで大丈夫ですw だって誰がどう見ても達人にしか見えませんからw
そう考えると、ジャッキーをキャスティングしたのは大正解です。

【まとめ】

本作は、エンドロールに作品の全てが詰まっています。ジャッキーのカンフー映画ではお馴染みのNGシーン集の代わりに、本作ではメイキング的な撮影風景の写真が流れます。が、、、が、、、、ウィル・スミス写りすぎwww
写真の半分ぐらいが映画と関係無いウィルとジェイデンの親子写真なんです。つまり「スミス家の中国旅行写真」w
結局、本作はあくまでもウィル・スミス夫妻が息子に贈ったプレゼント以上のものではありません。映画としては明らかにオリジナルの方が数段上ですし、ジェイデンのプロモとしても相当厳しいです。特にラストのカンフートーナメントで明らかなCGを使っているのがアクション志望としてはダメダメです。
残念ですが、ウィル・スミスに思い入れのある方、または生意気なクソガキが大好きな方にのみオススメです!!!

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