見に行った私が悪いんですが、昨日から
「ランデブー!」で怒髪天を衝きすぎて困ってます。
評価:(1/100点) – あ、うん。エンタメって簡単だよね。キュートだよね。
【あらすじ】
女優志望のめぐるはオーディションに行く途中のお茶の水・聖橋の横で、落ちていた携帯電話を拾う。着信した携帯電話に出ると、相手は矢島という男であった。矢島に頼まれ携帯電話を一時的に預かることになっためぐるだったが、なぜか謎の男達に追われるハメになってしまう。
【三幕構成】
第1幕 -> めぐるが携帯電話を拾う。
※第1ターニングポイント -> めぐるが後楽園の事務所で男達に見つかる。
第2幕 -> めぐるの逃走。
※第2ターニングポイント -> めぐるがネットのニュースで男達が警察だと知る。
第3幕 -> ドームでの一幕
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【感想】
あまりの出来にシネクイントを出た直後にTwitter!で予告してしまいましたが、昨日は「ランデブー!」を見てきました。上映前に尾崎将也監督と木原浩勝さんのトークショーがありましたが、お客さんは10数名ほどでした。
もうTwitter!で触りの部分を書いてしまったので結論を言います。
この糞映画が!!!!! が! が! が!!!!!
あまりにも酷い出来に終始口あんぐりでした。破綻したストーリー。ダサいカメラワーク。場面のトーンにそぐわない音楽。学芸会という言葉すらヌルい大根役者達。商業映画とは思えないクオリティの低さ。どこをとっても褒めるところが見当たりません。
もし上映前のトークショーが無ければ監督1作目という言い訳に免じて見なかったことにしたんですが、ちょっとトークショーでハードルを上げまくっていたので怒りがこみ上げてきました。言ったこと出来てないし、映画を舐めないでくれますかね!?
前置き:トークショーの内容
まずはこの怒りをこのブログを読んでいただいている方と共有するには、トークショーを体験いただくのが不可欠です。ということで、私の速記によりますトークショーメモをざっとまとめてしまいます(笑)。場所は渋谷シネクイント。2010年5月20日の21時20分上映回の前に行われたトークショーです。興味ない方が多数かと思いますが、少々おつきあい下さい。
【ここからトークショー】
木原: ランデブーの中で船頭役をやった木原です。
尾崎: 木原さんは怪談・新耳袋の小説を書かれていて、新耳袋トークライブに
客として参加したのが出会いです。
木原: 元々映画が好きなので、尾崎さんには前から映画やるなら出して欲しいと
言ってました。僕の役って必要な役でしたよね?
尾崎: 元から居た役ですよ。何も言わないとプロデューサがエキストラに毛の生え
た子を連れてくるので、それならと思って。
木原: 船頭になるために生まれてきたと言われました(笑)。ほぼ半日船の上で撮影
したんですが、映画ではこんなもん(指をちょい開く)でした。監督は楽しそうでしたね?
尾崎: 映画において乗り物って大事です。この映画は車とか出ないし、映画的な乗り物を
出したいと思ったらたまたま安く借りられたから、船にしました。
木原: 一番最初の作品に作家のすべてが詰まるとよく言いますが、初監督の尾崎さんは
どこに「自分らしさ」が出てると思いますか?
尾崎: 一作目は「巻き込まれ型サスペンス」をやりたかったです。
お金を掛けなくても
そこそこ面白くなるし、キュートな画を撮りたかったんです。
脚本とかみてもあんまり全体が分からないから、キュートをキーワードにやってみようかなと。
できたかどうかは映画を見てもらって、、、。
木原: ここがキュートだってポイントはありますか?
尾崎:
時間とお金に余裕があればもっと出来るけど、やってる間にそんな時間ないなって、、、。
どれくらい出来てるかは見た人に判断してもらって、、、。
木原: 僕は携帯電話を取る時ですね。この音楽じゃないと拾わないなって。
尾崎: 音楽の川井さんには「とにかくピチカートで」って言ったんで。
木原: この映画を見に来てるんだから皆さん映画好きだと思うんですが、観客にとっては
「私はコレを持って帰る」ってものを発見するのが映画の楽しみだと思います。
この映画を見ていろいろ発見があったんです。みんな昭和を知らない世代の中で、
川野君だけが昭和の香りですよね。彼の背負ってるものっていうのが一番興味があります。
この子がやってることは
僕らの焼き直しのようで、
今の子に無いひたむきさがあって美しかった。部屋の中の物には嘘をついて無いって感じがね。
尾崎: 川野君の役は30代のオッサンでも成立するんですよね。でもキュートな映画のためには
若い子の方が良いかと思って。リアリティが無くなるリスクはあるけど、面白いでしょう。
木原: 僕もこの役はこの年齢で良いのかって思ってたけど、見てる内に「いいんだ」って思えてきました。
お客さんを騙そうとおもって作ったものに自分が騙されてるみたいな「やっちまった」感じがすごい伝わった。
尾崎:
ストーリーを追っていくという意味ではエンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。
後は映画のタッチがどう転がっていくかで、、、。
木原: 映画を見終わった後なら二時間は監督を離さないですよ(笑)。プラモデルが好きな人が
金型師にはなかなかならないんですが、映画が好きな人が映画の撮り手になることは良くあります。
映画って長い長い夢の残存率があるのかな。尾崎さんのプロフィールを見ると
疑問が湧くんですが、これだけテレビの脚本を書いてる人が何故今映画なんですか?
尾崎: たまたまですよ。たまたま脚本家として知名度があったんで、
映画撮りたいって言ったらプロデューサに良いよって。時期はたまたまです。
木原: この映画は前から撮ろうと思ってました?
尾崎: いや。映画を作るって決まってから「キュート」って決めて考えました。
予算が少ない中で何をやるかっていう選択で、パッとキュートって思いついたんです。
木原: ランデブーってあんまり使わないですよね?
尾崎: 最近は言わないね。昭和(笑)。
木原: 地道に日常が重なっていって巻き込まれる。スタジオジブリの初期に宮崎がよく
「映画をつくるなら巻き込まれ型だ」って言ってました。
尾崎: テレビって介入型が多いから、映画ではそうじゃないことをやりたかった。
木原: 介入型って簡単ですもんね。「俺はこういう職業だ」って言えばそれでいいから。
尾崎: そろそろ時間だからまとめろって言われた(笑)。
木原: はい、では(笑)。今回は尾崎さんに巻き込まれて映画に関わったんで、
今度は僕が関わる作品に尾崎さんを巻き込みます(笑)。
【ここまでトークショー】
本編:私の怒りを聞いてけれ。
え~皆さん上記のトークショーの内容をお読みいただけましたでしょうか? 完全に客観的なメモなので、誤訳・意訳は戸田奈津子さんより少ないと思います(笑)。
で、ですね。まずトークショーから伝わってくるのは、作品への自信のなさとエンタメを舐めきった姿勢です(苦笑)。「この作品は予算も時間も無かったから微妙かも」「見た人が判断してね」っていうのを繰り返してます。この辺りはきちんと自分の作品の酷さを自覚している正常な判断です。ところが、、、、どうしてもスルー出来ないことを言ってます。
「エンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。」
あのさ、、、、退屈しないエンターテイメントってすっごいハードル高いの分かってますか? ハッキリ言いますが、こちとら上映開始5秒後から退屈しっぱなしですよ(笑)!!!
まず、この作品は台詞回しが酷すぎます。全員が独り言を大声でつぶやいてるんですよ。会話シーンなのに会話になってないんです。「機能的な台詞」と言いましょうか、「物語を伝えるために必要な事柄を説明するためだけの台詞」しか出てきません。例えば友達と会話してるシーンでもまったく親しそうに見えません。それは互いに物語の要請からくる言葉しか発しないからです。尾崎さんの本業は脚本家なわけですから、台詞回しなんて最も得意じゃなきゃいけません。この時点ですごい「あれっ?」って感じがし始めました。まだ上映開始から40秒ぐらいです(笑)。
次に、この作品の演出の問題です。要は全部テレビのメソッドなんです。顔のどアップばっかりのカメラフレームや、最低限しかない舞台装置。そして日常世界から確実に浮いた「常識のずれた世界観」。全てがテレビ演出の方法です。映画を撮る以上は映画の文法を使って下さい。タイトルの出方や、そこから地下鉄シーンで流れるオープニングのクレジットダイアログなど、完全に舐め腐ってます。尾崎さんは2時間ドラマが撮りたかったの?
そして音楽のだささも気になります。これは年初の「板尾創路の脱獄王」でもありましたが、明るめなMIDIの打ち込みを暗いトーンの場面で流すってすっごいしょぼくてダサいです。ちなみにこれは川井さんの責任では無いと思います。すくなくとも彼の劇盤をやってらっしゃる他作品は良い音楽を作ってますし、あくまでもオーダーの問題です。
最後に、コレが根幹なんですが、「話の組み立て」がグダグダですしそもそも「巻き込まれ型」になってません。この話はめぐるが携帯電話を拾う所から始まります。でも、彼女にはその携帯を警察に渡すという選択肢もありましたし、そもそも道端に捨てる選択肢もあります。彼女が本当に追い詰められるのは、後楽園遊園地で名前がバレた瞬間だけです。あとは全て自分から巻き込まれに行っています(笑)。だから見ている間中、めぐるがキ○ガイにしか見えません。っていうかワールドクラスのバカ。彼女は、自分で判断したり自分で行動を起こさないため、まったくどうでも良いキャラクターなんです。感情移入がまったくできません。
これ以外の細かい所も本当に酷く、すべてがコメディ風のファンシーイメージで覆い尽くされて粗だらけです。
一応書いておきますと、これらのダメポイントは予算や時間の問題ではなく監督のセンスの問題です。だから事は簡単で、要は尾崎さんは映画にはむいてないってだけですよ。っていうか監督がむいてません。いろんな要素を統括して作品を作る能力の問題です。
【まとめ】
これですね、ちょっと扱いに困る作品なんです。というのも「良い所」が本当に1カ所もないため、やろうと思えば全場面の全台詞に突っ込みが入れられます。そして監督の映画を舐めた姿勢。この怒りをどうすればいいんでしょう(苦笑)。とりあえずですね、もし1800円をドブに捨ててもいい方は一度見てみて下さい。ある意味すごい実験映画だと思います。「見た人が判断して」という尾崎監督のお言葉に次の言葉をお返しいたします。
く・そ・え・い・が・!
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