マッハ!弐

マッハ!弐

今日は「マッハ!弐」を見てきました。

評価:(45/100点) – やっぱりプラッチャヤー・ピンゲーオは偉大だった。

【三幕構成】

第1幕 -> ティンが奴隷商人に捕まる
 ※第1ターニングポイント -> ティンがガルーダの翼峰に拾われる
第2幕 -> ガルーダの翼峰での修行とティンの回想
 ※第2ターニングポイント -> ラーチャセーナの即位式に殴り込みを掛ける
第3幕 -> ラーチャセーナの即位式とガルーダの翼峰アジトでのアクション


【あらすじ】

アユタヤ王国が勢力を広めるタイ。その東にある王国ではクーデターが勃発していた。 ラーチャセーナの謀反より家臣によって救い出された王子・ティンは、道中家臣とはぐれ奴隷商人に捕らえられたところを山賊に助けられる。ガルーダの翼峰と名乗る山賊達の中でティンはあらゆる戦闘術を学び、やがて組織のトップへと成長する。
山賊のリーダー・チューナンよりリーダーの座を譲られたティンは、やり残した事があるとしてこれを固辞する。そして両親の仇であるラーチャセーナの即位式へと単身殴り込みを掛けるのだった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

ついに日本で公開されました。 「Ong-Bak2」こと「マッハ!弐」です。アクション映画ファンならば言わずと知れた、タイの誇るスーパースター、トニー・ジャー主演の最新作です。ちなみに映画自体は2008年公開作品でして、すでに続編「Ong-Bak3」が来週・1月21日にタイで公開されます。つまり周回遅れ。
でもハリウッド以外の海外映画なんてそんなもんです。劇場公開されただけでもありがたいと思っておきましょう。

本作のストーリーについて

本作にとってストーリーはまったく問題ではありません。というか普段ハリウッド映画や日本映画を見慣れている人からすれば、ものすごく変テコな映画です。
例えば、いつの間にか回想シーンが始まっていてそれがなかなか終わらなかったり、場面転換したと思ったらいきなり10年近く経ってたり、おそらく戸惑うと思います。アクション映画ですのでストーリーは割とどうでも良いんですが、それにしても非常に分かりにくい構成をしています。とはいえ一度分かってしまうとものすごくシンプルな話だと気づきます。ある程度分からなくてもそういうものだと割り切ってしまいましょう(笑)。

スタッフと制作時のゴタゴタについて

知っている方は知っていると思いますので読み飛ばしてください。実は本作は制作時にとてもゴタゴタしました。これはタイ・アクション映画のそもそもを語らないと説明しづらいため、少々長くなります。
アクション映画というと皆さんご存じの通り香港のカンフー映画が有名です。実際、スティーブン・セガールやジャン・クロード・ヴァン・ダム、近年だとウェズリー・スナイプスあたりの生粋のアクションスターは欧米にも居ます。ですが、やはり香港が生身のアクションでは最先端を突っ走っていました。
ところが2003年にまったくノーマークだったタイからとんでもない作品が登場します。それが「マッハ!!!!!」です。ムエタイを駆使して細身のトニー・ジャーがアクロバティックなアクションをこなす姿は本当に衝撃的でした。この作品をきっかけに、監督のプラチャヤー・ピンゲーオとアクション監督のパンナー・リットグライの名前がアクション映画界に轟きます。この2人はどちらも監督が出来るゴールデンコンビとして、時には監督、時にはプロデューサーとしてアクション映画を量産しはじめます。
特にピンゲーオ監督はかなり本気でタイをアクション大国に育てようと苦心し、独自に若手の育成に着手し始めます。なにせトニー・ジャーがたまたま天才だった可能性が有りましたから、タイ映画を香港映画のようなブランドにするためには育成システムの用意が急務だったわけです。そしてピンゲーオが育て上げた第1号が「チョコレート・ファイター」で鮮烈なデビューを飾ったジージャー・ヤーニンです。彼女もデビュー作にして素晴らしいアクションとスター性を見せ、ピンゲーオとタイ・アクション大国計画が本物であることを証明しました。
さてそういった背景の中で、ピンゲーオを抱える映画会社サハモンコル・フィルムは「マッハ!!!!!2」を企画します。ところがトニー・ジャーが超問題児でして、映画は自分が居れば成立すると嘯いて自らメガホンを取ると言い出します。サハモンコル・フィルムはプロデューサー兼お目付役としてリットグライをブッキングしてトニー・ジャーに監督をやらせます。そしてトニー・ジャーが「マッハ!!!!!2」を撮っている間に、問題児トニーの後釜としてピンゲーオに若手育成を託します。それが見事成功しジージャーが誕生するわけです。
じゃあ「マッハ!!!!!2」を撮っている間はトニー・ジャーもおとなしかったかというと、そんなわけはありません。急に失踪したり、テレビで奇行を披露したり、自分のギャラを上げたあげく制作費を使い込んで勝手にボイコットしたりしてます。超問題児。性格最悪です。
そんなわけで、「マッハ!!!!!2」はまさにトニー・ジャーのトニー・ジャーによるトニー・ジャーのための「オレ様映画」になりました。
しかしあまりにも問題行動が多かったため、トニー・ジャーはもはや「マッハ!!!!!」をシリーズ化する以外に俳優として生きる術はありません。どこも使ってくれないですし、すでに自分の代わり(=ジージャー)が世界的な評価を得ています。ピンゲーオ監督とも喧嘩別れ同然です。一方的にトニーからピンゲーオは要らないとか言っちゃってますから。ということで、本作はかなりがっかりな内容でしたが、次作は俳優生命を賭けて死にもの狂いでくるはずです。

【まとめ】

本作はストーリーもさることながらアクションも相当がっかりな出来です。というのも、トニー・ジャーが自分でやりたいことを詰め込んだという印象が非常に強く、ティンのアクションに整合性が見られないためです。前作では古式ムエタイという核がありましたが、本作は本当に「何でもあり」になってしまっており、あまりにもティンが万能過ぎます。万能すぎるが故にハラハラ感も薄く、漫然と戦闘が続いてしまいます。
この点はトニー・ジャーの監督としての力量不足だと言わざるを得ません。やはり「トム・ヤム・クン!」や「マッハ!」で世界を驚愕させた一因である「テーマを持ったアクション・シーン」はピンゲーオ監督の力量でした。トニー・ジャーとピンゲーオにはフィルム構成力に圧倒的なまでの差があります。
トニー・ジャーには心を入れ替えてピンゲーオに謝罪していただいて、是非ともまたすばらしいアクション映画を作って欲しいです。
ま、可愛いくってアクションも凄まじいジージャーがいれば、トニーこそ要らないんですけど(笑)。
そういった意味でも、トニーにはピンゲーオに謝りに行く事をオススメします!
こんな映画作ってたら、本当に居場所なくなっちゃいますよ、、、。

[スポンサーリンク]
記事の評価
彼岸島

彼岸島

二本目の映画は「彼岸島」です。

評価:(5/100点) – 血糊の無駄使い。

【三幕構成】

第1幕 -> 明と冷の出会い。吸血鬼とのファーストコンタクト
 ※第1ターニングポイント -> 明達が彼岸島に着く。
第2幕 -> 彼岸島でのサバイバル
 ※第2ターニングポイント -> 明が師匠に弟子入りを志願する。
第3幕 -> 明と師匠一行が雅のアジトに殴り込みを掛ける


【あらすじ】

高校生の宮本明はある日チンピラに絡まれているところを不思議な女性に助けられる。彼女は行方不明になっている明の兄・宮本篤の免許証を明に渡し、彼女と共に篤を助けにある島に来て欲しいと告げる。友人5人を加えた明一行は、冷と名乗る女性と共に彼岸島へと向かう。そこは吸血鬼達の跋扈する修羅場であった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

残念!!!
本作について実は結構期待していました。というのも、予告で見る限り近年の日本俳優映画(実際には8割方韓国映画ですが)にしては珍しく血糊を結構使っていたからです。モンスターサバイバルもので敵を切っても血の一滴もでないんじゃ拍子抜けです。TAJOMARUなんて、血しぶき一つ出て無いのに何故か刀を拭うそぶりをしたりして失笑ものでした(笑)。それを考えると少なくとも志はあると思えたんです、、、予告をみた限りは、、、予告だけは、、、。

本作の格好悪さ

本作はとても格好悪いです(笑)。身も蓋もない表現ですが、全編通じて主人公側がまともな思考回路を持ち合わせていません。唯一まともなのが兄の篤で、後の連中は本当に馬鹿ばっか(笑)。そのくせ泣き喚きだけは多いので、ものっすごいイライラします。特に中盤、仲間の一人が吸血鬼になってしまう場面は本当に酷いです。主人公の明が延々と理屈の通らないことを大声で喚きながら駄々をこねるために、心の底から早く死ねばと思ってしまいました。なにせ主人公達は全く役に立ちません。というか主人公以外は最後まで何の役にも立ちません。その主人公も、いきなりレジスタンスでもトップクラスな強さを発揮してしまい、全く成長が描かれません。
せっかく冒頭の弓道部ですごい能力を発揮しているユキもただ捕まってるだけですし、せっかく冒頭で爆薬を使っている西山もただオロオロしているだけです。加藤はただのデブですし、ポンは気持ち悪いだけで何の役にも立ちません。ケンは格好つけてるだけで、ヤンキー流のバット術は発揮されません。「漫画では活躍してるんだろうな」という片鱗を感じることは出来るんですが、しかし何の慰めにもならないほどにみんな足手まといです。
ただただテンション高く喚いて血糊を一杯使ってるだけで、やってることは非常にショボくてくだらない事です。しかも宮本兄弟は無敵じゃないかと思えるほどに頑丈で、何回致命的な傷を負わされてもケロッとしてますし、顔の切り傷も場面転換すると綺麗に無くなっていて傷跡すら残りません。
せっかく血糊でリアリティレベルをあげているのに、なんでこんな半端なことをするんでしょう?格好悪いです。

スターウォーズ病について

本作では上記の格好悪さに加えて、スターウォーズ病を発症してしまっています。ジェダイのように目隠ししてトレーニングしたり(SW EP4 新たなる希望)、コロッセオのようなところでモンスターと戦ったり(SW EP2 クローンの攻撃)、最後はラスボスと1対2のチャンバラです。(SW EP1 ファントム・メナス)
ただしCGやアクションが中途半端なため、完全にデッドコピーになってしまっています。やるならちゃんとやって欲しいのですが、、、残念です。

【まとめ】

とてつもない事になっている映画です。整合性は全くありませんしストーリー構成もグダグダです。登場人物の大半は物語に不要ですし、なにより活躍しない有象無象の味方が多すぎます。公式webサイトに「上陸者殺到中。いまだ生還者0」というキャッチコピーが出てますが、そりゃこの出来じゃ生還できません(笑)。皆さん映画館で撃沈されていることでしょう(笑)。
昨年のカムイ外伝と戦えるレベルの超絶クソ映画でした。そういえばCGレベルも似たり寄ったりです(笑)。
まったくオススメ出来る要素が無いのですが、原作ファンがネタとして見るならかろうじて100円ぐらいの価値はあるでしょうか?お金を払ってみるのは全くオススメ出来ません(笑)。
瀧本美織が可愛かったのがせめてもの救いです。でも水川あさみがエラ張り過ぎなのでプラマイゼロ(笑)。
出演者の方々にはお悔やみを申し上げます。

[スポンサーリンク]
記事の評価
アバター(2009)

アバター(2009)

今年最後の超大作「アバター」です。やっとこさありつけました。

評価:(60/100点) – 目が痛い。

【三幕構成】

第1幕 -> ジェイク・サリーがパンドラでアバター・プログラムに参加する
 ※第1ターニングポイント -> ジェイクのアバターがネイティリに出会う
第2幕 -> ジェイクとナヴィとの交流・そしてRDA陣営が実力行使に出る
 ※第2ターニングポイント -> ジェイクがナヴィ側につく決意をする。
第3幕 -> ジェイクがトルーク・マクトとなりナヴィ族をまとめてRDAと全面戦争を行う


【あらすじ】

交通事故で急死した兄の代わりに、ジェイクは惑星パンドラでのアバター・プログラムに参加をする。惑星パンドラの生命の樹の下には高価な飛行石が眠っており、RDA社はその鉱物採取のために原住民・ナヴィ族を立ち退かせることを画策する。アバターはナヴィ族を説得するための策であった。もう一つの肉体を手に入れたジェイクは、ひょんな事からナヴィ族に潜入することに成功し、彼らの信頼を得ていく。しかしナヴィの説得が困難と判断したRDAは実力行使を決断する。こうして人間vsナヴィ族の全面戦争がはじまった。


[スポンサーリンク]

【感想】

はじめに

非常にコメントに困る映画でした(笑。映像は良いけど話はね、、、。
とにかくベタでありがちで王道的な話です。ナヴィ族は青いだけでトライバル模様とか単なるインディアンですし、RDA社は絵に描いたような「侵略者としての白人」です。「優しい原住民vs傲慢な白人」とその中で白人でありながら寝返る主人公。いままで何十作もこんな映画を見たことがあります。言ってしまえば本作にとって話はどうでも良くて、あくまでも「3D映画」であることの技術的な実験作だと思って間違いないと思います。
ちなみに私は今回XpanD・字幕で見ました。本当はIMAXで見たかったんですが、めっちゃ混んでて全然チケット取れませんでした。やっぱり観客も目が肥えてきたのでしょうか?当ブログでIMAXを激押しした手前もあるのでこれで面白ければもう一回IMAXで見るんですが、正直これをもう一度見る気力はちょっと無いです。申し訳ない、、、。

目がぁ、、、目があぁぁぁぁぁ!!!(本作の元ネタより引用)

話については触れる程の出来ではないため脇に置きまして(笑)、やっぱり本作は3Dについてしか無いでしょう。
ということで、XpanDなんですが、、、目が痛いっす。まじキツいっす。とにかく上映時間が長いんですよ。2時間40分もちょい寄り目を続けてたらそりゃ目もやられますよ。
実は私、開始1時間30分ぐらいでちょっと酔い始めまして(笑)、ラスト30分くらいは心の底からさっさと終わって欲しかったです。
やっぱり3D映画はクリスマス・キャロルやファイナル・デスティネーションのように90分くらいがベストだと思います。
部屋の通路が奥に広がっているカットが多かったり、窓ガラス越しに人が何かやってるカットが多かったり、とにかく3Dを意識したカット割が続きます。そしてこれはほぼ成功しているといって良いと思います。こちらに向かってくる「飛び出す3D」はせいぜい矢が何本か来る程度で、基本的には奥行きを表現するための「舞台演劇の書き割り」として使用しています。この書き割り感が大変しつこく出てくるため「現在の3D技術のカタログ」という印象を強く持ちます。正直な所そこまですばらしい映像では無いと思いますし、造形だけを見ればはっきり言ってファイナル・ファンタジー13の方が良くできています。でも3Dとして見たときに、少なくとも2009年を代表する一本であるのは間違いありません。ここまで明確な「3D専門映画」というのはおそらく「戦慄迷宮3D」以来だと思います。「戦慄迷宮3D」が映像的にも物語的にも非常にがっかりな出来だったため、事実上は本作が最初の「一般的な3D専門映画」と言えるでしょう。3D映画のデモ・ムービーみたいなものですから、どうせならもうちょっと話を短くまとめて90分くらいにして欲しかったです。

【まとめ】

映像は一見の価値はありますが、でもそれだけの作品です。ですので2D上映で見たりDVDで見てもまったく面白くないと思います。ちなみに劇場で私の右隣がヤンキー・カップルで左隣が中年夫婦だったのですが、両脇からイビキが聞こえました(笑)。やっぱり話題先行で見に来た人やタイタニックに食いついて見に来る方には厳しいと思います。
博覧会の展示ブースに入ったつもりでストイックに3D技術を拝見しましょう。話はつまんないですし、なにせ訳者が某大物女史ですんで(笑)
「I like this Guy!」は「こいつ気に入った!」で良いじゃん別に(笑)。
いろいろ投げやりに書きましたが、こういう技術革新の最前線の作品はリアルタイムで見ることに意味があります。ジュラシック・パークしかり、ブレア・ウィッチ・プロジェクトしかり。残念ですが後からDVDで見ても単なる駄作にしか見えないと思います。年末年始に余力がある方は是非劇場で見てください!
余談ですが、先々週、Blu-Rayの3D用規格がBDアソシエーションからリリースされました。おそらく来年の夏頃には第1作目がリリースされると思います。タイミング的にはおそらくアバターかアリスインワンダーランドが家庭用3Dソフトの一作目になりそうです。

[スポンサーリンク]
記事の評価
宇宙戦艦ヤマト 復活篇

宇宙戦艦ヤマト 復活篇

昨日のはしご2作目は「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」です。

評価:(10/100点) – 西崎さんよ、、、言ってることとやってることが違いすぎるぜ。

【三幕構成】

第1幕 -> アマールへの第一次・および第二次移民船団の壊滅と古代の現状。
 ※第1ターニングポイント -> 古代進がニュー・ヤマトの船長として第三次移民船団の護衛に発つ
第2幕 -> ヤマトとエトス星艦隊の戦闘。第三次移民船団がアマールに到着。
 ※第2ターニングポイント -> 古代進がSUSに宣戦布告する。
第3幕 -> 地球・アマール連合軍vsSUS、そしてブラックホールが地球を襲来


【あらすじ】

西暦2220年、古代進が深宇宙貨物船「ゆき」の船長として地球を離れて三年が経過していた。その頃地球は巨大ブラックホールの衝突の危機にさらされており、アマール星への緊急避難を決行していたが、第一次および第二次移民船団は正体不明の艦隊の攻撃で壊滅してしまう。第一次移民船団「ブルーノア」の生き残りである上条を救出した古代は、地球への帰還を決意する。地球連邦科学局長官として移民計画の責任者となった真田より、古代は新生ヤマトの艦長と第三次移民船団の指揮を任される。こうして古代進は再びヤマトに乗り込み、人類の危機を救う旅へと出かけることとなった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

ついに来てしまいました。いままでで一番本音を書きづらい問題作品でございます。なにせ相手は鉄砲持ったヤク中です(笑)。
角川春樹以上の強敵ですが、やってみましょう!!!
まずはヤマトの超書きづらい&説明しづらい「経緯」をざっとおさらいしつつ本作について書いていきたいと思います。覚悟はよろしいでしょうか?(笑)
おそらく超絶長くなると思いますのでご容赦を。

「宇宙戦艦ヤマト」という作品のこれまでの経緯

宇宙戦艦ヤマトは言わずとしれた松本零士の代表作ですが、厳密にはテレビシリーズがオリジナルで、マンガは先行マルチ展開という扱いです。ということで原点は1974年のテレビシリーズ第一作となります。舞台は2199年、ガミラス帝國の侵攻を受けた地球は放射能汚染によって人が住めなくなってしまいます。そんな中で、イスカンダルからメッセージ入りカプセルが届きます。人類は中に入っていた波動エンジンの設計図をもとに戦艦大和を宇宙船としてリニューアルし、イスカンダルへ空気清浄機(=コスモクリーナー)をもらいに行きます。これがテレビ版一作目で、1977年に劇場版として再編集されます。
続いてが1978年の劇場アニメ「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」です。舞台は2201年、謎の救難信号を受け取った人類は、発信源の捜索にヤマトを向かわせます。そしてテレザード星のテレサから白色彗星帝国が地球を侵略しようとしていると告げられます。地球を救うべく奮戦するヤマトですが、乗組員の大半が戦死、艦長となった古代進は数少ない生き残りを救難艇に乗せ、自らは恋人・森雪の遺体を抱いてヤマトで特攻を仕掛けます。
この結末を松本零士が気に食わず、TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」が同年に作られます。ここで「さらば~」から結末が変更され、乗組員の戦死と古代の特攻が無くなって白色彗星帝国を普通に倒してハッピーエンドになります。そしてこのテレビシリーズの続編として特番「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」が放送されます。新たな敵は暗黒星団帝國で、ガミラス残党軍とヤマトが共闘するファンサービス的な作品です。
翌年の1980年、新作劇場アニメとして「ヤマトよ永遠に」が公開されます。この作品では「新たなる~」で交戦状態になった暗黒星団帝國が本格的に侵攻してきます。小惑星イカルスにて真田によるパワーアップ改造を受けた宇宙戦艦ヤマトは、ついに暗黒星団帝國の本拠地に殴り込みをかけます。
この続編がテレビシリーズ3作目「宇宙戦艦ヤマトIII」です。ボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国との戦争によってダメージを受けた太陽が暴走、太陽の核融合がものすごい加速をはじめ地球が超温暖化の危機に直面します。そこで地球防衛軍司令長官の藤堂の命令を受け、万が一地球が住めなくなったときのためにヤマトは第二の地球探しに出かけます。
最後に1983年公開の劇場版「宇宙戦艦ヤマト 完結編」です。神出鬼没の水惑星「アクエリアス」を鍵として、母星を追われ行き所を無くしたディンギル星人たちが、地球人類を全滅させたあとで地球に移住しようと計画することから人類対ディンギル星人の戦いが始まります。なぞのご都合主義で復活した初代艦長・沖田十三の元で、再びヤマトとオリジナルメンバーの最後の戦いが繰り広げられます。完結編の名にふさわしいフルキャストのお祭り映画で、話はあんまり重要ではありません(笑)。
そしてこの後、「宇宙戦艦ヤマト」の企画立案に参加した西崎義展と松本零士の泥沼の著作権争いが起きます。これがものっすごいゴタゴタでしてこのシリーズのムック本や雑誌の特集が作りづらい環境が長らく続きました。っていうか今でも続いています。
さらに裁判後も西崎が東北新社に一部権利を”勝手に”譲渡したり、覚醒剤で逮捕されたり、さらにその保釈中にグレネードランチャーをフィリピンから持ち込んで再逮捕されたり、面白い話題が目白押しで誰も語りたがりません(笑)。
ハッキリしてるのは、「宇宙戦艦ヤマト」というシリーズが、劇場版2作目の「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」で一度完全終了した.にも関わらず、商業的な理由なのか何なのか、死んだキャラ達がパラレルワールド扱いで次々に生き返って何事もなく続編が作られ続けたと言うことです。そして原案立案者の西崎と松本の権利争いで、その続編すら作られなくなったと、まぁそういう流れです。
ちなみに死んだ人たちが生き返ったのは、私的には「金儲けのため」だと思いますが、公式には「特攻を美化するエンディングが嫌だったから作り直した」となっています。ここを良く覚えておいてください。「特攻を美化するのは嫌」です。ノートにメモって赤線引いてください。「特攻を美化→禁止」です。

本作「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」について

さて、ようやく話の本題です。いや、前項が長くなったのはきちんとした理由がありまして、それは先ほど赤線を引いた点を良くご理解いただくためだったんです。
じゃないと私の怒りが伝わらないので。
ふざけんな西崎さんよ!!!
おまえ特攻美化しまくりじゃねぇか!!!

ゴルイ艦長は武士道精神に則って特攻。
パスカル将軍はヤマトを守るために自ら盾となって名誉の戦死。
大村副艦長はSUS超巨大要塞のバリアを破るために特務艇シナノで特攻。
死ななかったものの古代艦長率いるヤマトは「生き残るべきはヤマトではない。地球である!」の演説の後、死を覚悟して巨大ブラックホールに特攻。
特攻。特攻。特攻。特攻だらけですよ。しかも全部が信念をもった熱い男の生き様を貫いた格好良い「特攻」です。
ねぇ西崎さん、あなた特攻が嫌だったんでしょ?
だから「さらば宇宙戦艦ヤマト」という超傑作を無かったことにしたんでしょ?
なんで今更「復活篇」とか言って特攻を美化する作品を作ったの?
それだけは一番やっちゃ駄目でしょ?
それやったら、「さらば~」以降の作品は全て「金儲けのためでした」って言ってるようなものですよ?
最低です。マジで最低です。
来年に沢尻エリカと木村拓哉で第一作の実写版をやるとか言ってますが、そんなもんの前にすでに破綻してますよ、このヤマト再始動ビジネス。
ちなみに、本作の脚本は単体で見ても穴だらけです。全人類がアマールへ移住するっていってるのに、アマールの女王は迷惑がってて許可取ってないみたいです。さらにSUSが支配する星間国家連合だっていってるのに、アマールとエトス以外の国家が出てきません。連合ってショボ過ぎじゃね?しかもSUSをつぶしたら大ウルップ星間国家連合の議決も無かったことになるっておかしくないですか?他の国は抵抗しないの?ぜ~んぜん意味が分かりません。
しかもラスボスは自ら正体や弱点をベラベラ教えてくれる超良い人(苦笑)。
「全世界が注目」を表現するのが、サバンナで空を見るライオンやキリンと、チベット仏教徒が空を拝むところと、北欧風の老夫婦が羊の横で空を見上げるところ(苦笑)。
古すぎる!
表現が「オヤジくさいダサさ」なんですよ。いま劇場版の1作目や2作目みても、ここまで古くさい感じはしません。あきらかに西崎さんの演出力が落ちてるんです。



いや、あんま言うと怖いんですよ。なにせグレネードランチャー持ってるヤク中なんで(笑)。

【まとめ】

ヤマトのファンなら何も言わなくてもとりあえず行くでしょう。それはたぶん正解です。でも、「ヤマトって有名じゃん。空いてるし観てみよっかな」とか思ってフラっと入るのはオススメ出来ません。まず意味が分からないですし、面白くもないです。それならまだ「劇場版マクロスF」に行くか、レンタルで「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」を観てください。
あと続編の具体的な予定もないのに「第一部完」とか最後に出すのはやめてください。商売根性みえすぎで萎えます。さらにエンディングテロップで言えば、一番大きなフォントで「西崎義展」って何度も出過ぎ(苦笑)。ホント、ナルシストというか老害って怖いですね。

[スポンサーリンク]
記事の評価
サバイバル・フィールド

サバイバル・フィールド

12月の1本目は「サバイバル・フィールド」にしてみました。

シアターNは水曜日が男も女も1000円で良いですね。レディースデーって男女差別っすよ。

評価:(40/100点) – 「ゲーム世代の殺戮サバイバルホラー」のキャッチコピーに嘘はない!


【あらすじ】

若い男女8人は「ペイントボールゲーム(=日本ではサバイバルゲーム)」に参加する。チームに分かれて旗印を取り合う陣取り合戦だが、その最中スナイパーのクローディアが実弾での狙撃を受け死亡する。果たして相手チームの罠なのか?疑心暗鬼が広がる中、リーダーのデビッドは生き残るべくエゴを剥き出しにしていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 舞台とキャラの紹介。
 ※第1ターニングポイント ->クローディアが射殺される。
第2幕 -> 生き残りをかけた戦い
 ※第2ターニングポイント -> アンナが無線機を拾う
第3幕 -> 解決編。またはアンナvsハンター。


[スポンサーリンク]

【感想】

え~最近女性向け映画が続いてたんでイカした映画が見たくなりまして、サバイバル・フィールドを見てきました。実は昨日イングロリアス・バスターズの2回目にも行ったりしてるんですが、まぁそれはそれで(苦笑。
肝心のサバイバル・フィールドについてですが、これがビックリすることにいろいろとがっかりする映画でした。がっかりポイントは大きく2点ありますが、両方ともがまさしく「ゲーム世代」という言葉にぴったりのポイントです。

■ がっかりポイント1:残虐描写を隠すことによる罪悪感の欠如

本作は超簡単にいうと「サバゲー版賭博黙示録カイジ」です。もちろんくだらない劇場版のほうではなく漫画のカイジです。基本プロットは、「金持ちが外野でモニター越しに現場の様子を楽しんでいて力の執行者(=殺し屋)を雇ってイベントを開催している」という、それだけのことなんです。でも本作でハンターが殺しを行う現場は例外なく「サーマルゴーグル越し」の映像となっています。人が死ぬシーンが本当にゲームみたいで、そこには殺しの罪悪感はありません。目をそらしたくなる描写もありません。
「敵にやられた」というレベルの出来事にしか見えません。だから最も悪意性の強いはずの「外野で楽しんでる金持ち連中」がまったく悪く描かれていないんです。ここは納得いきません。だって本来なら人殺しを見せ物にしてる最低最悪な奴らのはずなのに、終盤はむしろ良い奴にすら見えてしまうんです。ちょっとどうかと思います。

■ がっかりポイント2:ゲーム世代は攻略本が必須

ゲーム世代には攻略本や改造が欠かせませんw
ということで、最終盤、第三幕でアンナはこともあろうに主催者と無線で交信して完璧な助言を受けます。これがゲームなら攻略本っていうよりチートのレベルです。審判と結託してるようなものですから。
せっかくのサバイバルゲームでかつパズル的な要素もちょっと入ってるにもかかわらず、解決法は全部教えてくれちゃうんです。これじゃ意味ないというかハラハラ出来ません。そりゃ主催者が助言してくれたら勝つに決まってますよ。

【まとめ】

看板に偽りなし。まさに「ゲーム世代の殺戮サバイバルホラー」そのものです。ただし悪いほうにテレビゲームっぽかったですけど、、、(苦笑
ということで、バトルフィールドとかHALOみたいなゲームを想像した方にはまったくオススメ出来ません。どちらかというとプレデターのようなモンスターパニックものとして見た方が良いかもしれません。それでも少々説得力に欠けます。限りなく凡作に近い佳作ですね。映画館で見るのは厳しいかもしれませんが、是非DVDででも見てみてください。アルコールが入っていれば、そこそこ楽しめそうです。
ということで、本作は自宅でくつろぎながらDVDで適当に流し見するのがオススメです!

[スポンサーリンク]
記事の評価
イングロリアス・バスターズ

イングロリアス・バスターズ

イングロリアス・バスターズ」に行って参りました。

評価:(90/100点) – タランティーノの中二病が上手く出ました


【あらすじ】

第二次世界大戦時ナチス占領下のフランスにてユダヤ人のショシャナは”ユダヤ・ハンター”ランダ大佐に家族を殺され命からがら逃げ出した。その後、彼女はミミューと名乗り映画館の経営者として生活していた。一方、アメリカ軍のアルド・”アパッチ”・レイン中尉は特殊部隊”バスターズ”を率いてナチス狩りを行っていた。
ある日ナチスSSの英雄・フレデリック一等兵はミミューの気をひこうと彼女の映画館で主演映画のプレミア上映を行う事を企画する。それを聞きつけたアメリカOSS(戦略諜報局)はバスターズを送り込むことを決定した、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

今年は本当に(映画秘宝的な意味で)巨匠監督の新作が目白押しです。ジム・ジャームッシュ、サム・ライミと来て、ついにクエンティン・タランティーノの登場です。まさに真打ち。そして一番頭が悪い(笑)。もちろん褒め言葉ですよ。すばらしいです。

■ストーリーについて

頭が悪いと書きましたが、本作は非常に巧みな構成でストーリーが進んでいきます。本作は「キル・ビル」と同様に一章あたり約30分程度の全5章構成となっており、それぞれ下のようになっています。

  • 第一章 その昔…ナチ占領下のフランスで (Once upon a time in Nazi-occupied France)
  • 第二章 名誉なき野郎ども (INGLOURIOUS BASTERDS)
  • 第三章 パリにおけるドイツの宵 (GERMAN NIGHT IN PARIS)
  • 第四章 映画館作戦 (OPERATION KINO)
  • 最終章 ジャイアント・フェイスの逆襲 (REVENGE OF THE GIANT FACE)

そして第二章~第四章のそれぞれに独立した「主役級」がおり、それが最終章で見事に集結して事件が起きます。この章立てが少々ぎこちなく見えるのは確かですが、それが最終章で収束する時のカタルシスは爽快です。
またポスターや宣伝ではブラッド・ピット扮するアルド・レインが前面に出ていますが、本作のメインはショシャナです。そして今回もタランティーノが大好きな東映ヤクザ映画の基本プロットである「酷い目にあった女性がいろいろあって復讐する」というフォーマットに忠実です。しかしそれだけに留まらず、コラージュのように多くの映画からテイストを持ってきてごった煮になっています。はっきりとは解りませんが、おそらくタランティーノ監督の発想はこうです。


 「ナチスって最低だよね。ボコボコにしようぜ!
 そういや映画を洗脳につかったゲッペルスとかムカツクな~。
 そうだ!映画館でぶっ殺せば面白くね!?
 しかも映画フィルムでぶっ殺せばトンチが効いてていいじゃん!」


すごい中二病(笑)。でも最高です!

■タランティーノ流の悪ふざけ

“ユダヤの熊”ドニーが洞穴から出てくる場面ですとか所々に悪ふざけが満載でとても楽しめます。また、新しくキャラクターが出るときにフラッシュバックのように割り込むショート・シーンの酷さ(←褒め言葉)であったり、多用される長回しであったり、巧みな面も随所に見せます。タランティーノのよく使うストーリーと関係のない長い無駄話も健在です。もちろん軽めのゴア描写も忘れません。
しかし一方で、とても”普通”なハリウッド・エンタメ映画としても通用しています。いわゆる”秘宝ファン”の映画フリーク以外でも、それこそキネ旬しか読まないような人でも全然問題無いと思います。

【まとめ】

本作は、タランティーノの集大成的な作品でありながら、彼には珍しくこぢんまりとまとまった良作です。ですので、タランティーノの熱狂的なファンにはちょっと物足りなく感じます。でも、あんまり酷い作品(←褒め言葉)ばっかり作ってて干されても困るので(笑)、これはこれで良いのではないでしょうか。十分面白いですよ。エンニオ・モリコーネやヤクザ物の音楽が流れる度にニヤニヤできます。
最後に、映画を見る人には常識中の常識ですが、タランティーノは悪趣味で中二病で足フェチのアホです(←褒め言葉)。今回もちょっとではありますが、ついうっかり脳味噌が出たり、ついうっかり顔が蜂の巣になって崩れたり、ついうっかり足を変態的になで回したりしてしまいます(笑)。CMを見て爽快戦争活劇だと勘違いして、デートに使うのは絶対やめましょう。
私の隣で見ていたティーンの女性は、ドニーがドイツ兵を撲殺するシーンから100分近く顔を押さえてうつむいてました(笑)。絶対あとで彼氏がグチられてると思います。
タランティーノの作品は、一人でいそいそと見に行って忍び笑いするのが、オススメです。

[スポンサーリンク]
記事の評価
PUSH 光と闇の能力者

PUSH 光と闇の能力者

いろいろと微妙な噂を聞く「PUSH 光と闇の能力者」の微妙さを確かめてきました。
評価:(60/100点) – 最近このパターン多いですがアイドル映画としてOK。


<あらすじ>
ニック・ガントは物を操るムーバーである。あるとき彼の元に予知能力を持った少女・キャシーが現れる。あるカバンを手に入れると政府機関ディヴィジョンに捕らえられた彼女の母が救えるらしい。ニックはディヴィジョンから脱走したかつての恋人キラと共にキャシーに協力していく、、、。
<三幕構成>
第1幕 -> ニックのキャラ紹介
 ※第1ターニングポイント -> ニックが目覚めるとキャシーが睡蓮を持っている
第2幕 -> カバンを探して奔走
 ※第2ターニングポイント -> カバンがとある建築中のビルにあるのが分かる
第3幕 -> カバン捕獲作戦


<感想>
今回は「微妙でした」と一言で終わらしちゃっても良いんですが、結構良いテキストになりそうなのでCGとストーリー構成について考えたいと思います。
■ 舞台とCGについて。
本作の舞台は香港です。この「アジアでありながらイギリスっぽくもある折衷感」があんまり使えておらず、なんで香港にしたかがよく分からないのが正直なところです。おそらく俳優を欧米人で固めたいけれど中国の胡散臭い感じも出したいということだと思いますが、どうにも俳優が浮いちゃってるんですね。あきらかに風景に溶け込めておらず、隠れて逃げてるはずなのに超目立つという失笑ものの事態になってしまっています。
この溶け込めない感じはCGを使ったアクションシーンにも言えます。念力みたいな空気のゆがみが飛んでいったり、かと思えばどうかってぐらいに合成感たっぷりな閃光が散ったり、お金が掛かってるんだか掛かってないんだかよく分からない微妙なチープさを醸し出しています。いかにも「スタイリッシュなアクションだろ!」と自己主張する外連味たっぷりなカメラワークをしてくるんですが、それが一段とダサさを補強してしまっていてなんか可哀想になってしまいます。
根本的な話になってしまうんですが「超能力」を映画で表現する時にCGを使うのは結構勇気がいります。というのも、通常それは「目に見えない」物であるからです。もちろん空気がゆがむとかそういう物理現象が発生するのは良いのですが、それをやり過ぎると完全にマンガ表現になってしまうんです。同じ「超能力で相手を吹っ飛ばす」にしても、例えばスターウォーズでは単純に相手が吹っ飛んでいきます。フォース自体をCGで可視化することはしません。それは明らかに安っぽくなってしまうからです。CGを使えばはまさにお絵かき感覚でいろんな要素を画面に作ることが出来ます。でも嬉しくなってやり過ぎちゃうと貧乏臭くなってしまいます。このサジ加減と自己抑制がイマイチ崩れてしまっているように見えます。
格好良くするためには「描くこと」と「描かないこと」をバランス良く調整しないといけないという良い教訓となっています。
■ ストーリー構成について
○物語における主人公のステップアップ
とはいえ、前項に書いてきたことはあくまでも絵の安さであって、B級映画好きには特別欠点には見えません。むしろ本作で問題なのはストーリー構成についてです。
皆さん、ドラゴンボールというマンガをご存じでしょうか?よく分からない方はドラクエとかファイナルファンタジーのようなRPGゲームを想像してください。
主人公は最初かなり弱いです。ところがいろんな敵と戦ってどんどん強くなっていきます。そして最終的には世界を救っちゃったりします。
ここには二つの大事な要素が入っています。一つは主人公が成長していくという点。もう一つは敵が段々と強くなっていく点です。これは成長していく主人公がその時々で頑張らないと勝てない「自分よりちょっと強い相手」を倒していく必要があるからです。
つまり、レッドリボン軍と戦ってるときにいきなりフリーザが攻めてきたら地球は全滅しちゃうわけです。セル最終形態を倒した後に桃白白が出てきても、下手すればデコピン一発で倒せてしまうわけです。主人公の成長と敵の強さは綺麗に比例していないとシラけてしまうという事です。
映画のストーリーにもこれと同じ事が言えます。主人公は物語上いろいろな困難をクリアし、話が進んでいきます。困難は最初が一番易しく、終わりに向かってどんどん難しくなっていきます。これを次々と越えることで主人公はステップアップしていくわけです。そして最終的に大きな困難を乗り越えるカタルシスが待っているわけです。これがクライマックスです。では本作について、簡単に敵を見てみましょう。
○本作における戦闘歴
まず冒頭の市場で襲われるシーンでは中国人のウォッチャー・The Pop Girl とその弟のブリーダー・The Pop Boysが登場します。このThe Pop Girlは物語を通してキャシーに立ちはだかるライバルです。The Pop Boysは奇声を挙げて相手を流血させるという超強い能力を持っています。すなわち、このシーンはボスキャラの顔見せみたいな物です。実際にこの段階ではニックは全く歯が立ちません。
つづいての戦闘はエージェント・マックとエージェント・ホールデンをキラが翻弄するシーンです。ここではキラがプッシャーとして相手を操る能力がずば抜けていることが分かります。いきなり最強助っ人候補です。
次は飛びましてカーバーと側近ヴィクターが登場する中華料理屋のシーンです。カーバーは父親の仇(?)とも言える人物で因縁の相手です。そして側近のヴィクターはニックと同種の能力者です。すなわち、ニックにとってのライバルがヴィクターであり、ラスボスがカーバーです。やっぱり歯が立ちません。
さて、次ですが、いきなりクライマックスに飛びます。建築現場で中国マフィアとディヴィジョンとニックが入り乱れてのラストバトル、、、かと思いきや、マフィアはヴィクターと洗脳されたキラが殆ど全員瞬殺してしまい、結局ニックとヴィクターの一騎打ちになる、、、、かと思いきや、ヴィクターもThe Pop Boysの片割れに殺され、結局ニックはThe Pop Boysをちょっと竹槍もどきで殺しただけです。そして物語終了。
はい、ここまで読んでいただいた皆さんはもうお解りですね?この物語はニックが成長する様子も無ければ、成長した結果として歯が立たなかった敵を倒したりすることもありません。ストーリーの推進力がこれでもかっていうくらい不足しています。せっかく超能力者が入り乱れての大乱闘になる要素があるのに、設定を全く生かしていません。唯一正当に成長してライバルを越えるのはキャシーです。彼女は自分より能力の優れたThe Pop Girlの裏をかいて倒します。きちんと乗り越えたわけです。でも彼女だけなんです。後の人たちは成長も工夫もたいしてしません。ちなみにニックの最高の見せ場である赤い封筒配りも、あれはカーバーではなくThe Pop Girlへの対策です。みんな彼女を倒すのに夢中ですが、でも彼女はラスボスじゃないんです。駄目だこりゃ。
<まとめ>
毎度の事ながら、何故ここまで微妙なのに60点/100点かというと、それはもうハンナ・ダコタ・ファニングが可愛いからです。アイドル映画としてだったら全く問題ない出来映えです。全編通じて明らかにポール・マクギガン監督がハンナに恋をしている、フェティッシュなカット割りが続きます。ポール・マクギガンは46才で結構のっぺりした顔をしてます。、おまえその年と顔でハンナ萌えはヤバイだろとか思いつつ、堂々たるアイドル映画です。ハンナ・ダコタ・ファニングのファンなら絶対に何があろうとオススメです!

[スポンサーリンク]
記事の評価
ホワイトアウト

ホワイトアウト

レイトで「ホワイトアウト」を見てきました。
今日の二本ハシゴははずれかな、、、。
評価:(30/100点) – 予告だけなら80点。蓋を開けたら、、、(溜め息)。


<あらすじ>
南極で働く女性保安官キャリー・ステッコは2年の任を終えアメリカ本土への帰国と退職を考えていた。アメリカ帰国まであと3日に迫った日、アイスピックで刺された一つの死体が見つかる。殺人事件を捜査するうちに、彼女は五〇年前のロシアの墜落機に秘密があることに気づく。
<三幕構成>
第1幕 -> ステッコの日常と死体発見。
 ※第1ターニングポイント -> ボストーク基地でムーニーが殺される。
第2幕 -> 墜落機の発見と犯人の逮捕。
 ※第2ターニングポイント -> アメリカ行き飛行機の離陸。
第3幕 -> 解決編。そして真犯人の捜査。


<感想>
予告編の出来がすばらしいです。そのため、私は勝手にSF・ホラーだと思い込んでいました。だって南極の隕石調査隊員が謎の死を遂げるんですよ? だって隕石調査隊員が墜落機を見つけるんですよ? どう考えたってエイリアンが人を襲ってるか、宇宙からきた寄生虫みたいな奴に感染した人間が凶行に及んでるに決まってるじゃないですか!



でも、、、そんな事ないんですよ、、、、、これ。
序盤も序盤、開始30分程度でゴーグルつけてモコモコのジャケット着た男がアイスピッケルで襲ってくるんです。この時点でエイリアンではなくモロに人間です。じゃあ寄生虫か?とか思ったら、墜落機はただのロシアの輸送機で、なにかのお宝を調査隊が盗っちゃってそれを奪い合ってるとか言い出すんですよ、、、。ただの内輪揉めかよ、、、、。一気にしょぼくなっちゃって、、、。南極でマクガフィン奪い合ってるだけ。しかも外は吹雪なのでアクションが非常にスローかつ見にくい(失笑)。あの~この手のスリラーってそれこそレンタルDVDショップ行けば山ほどあるんですけど、、、。
<まとめ>
あんまり一般に知られていませんが、ダークキャッスル・エンターテインメントは好事家の間ではある種の一流ブランドです。さもありなん。バック・トゥ・ザ・フューチャーで有名なロバート・ゼメギス監督の作った映画マニア向けの制作会社なんですね。ホラーやサスペンスの専門ブランドで良質なB級映画をたくさん生み出しています。あくまでB級っていう所がポイントです。
そこでホワイトアウトなのですが、ダークキャッスル制作であの予告編を見たら、誰だって期待するわけですよ。ところが蓋を開けたら超ショボイ。ケイト・ベッキンセイルが格好良いだけで、あと何にも見所ありません。BOX OFFICEの興行収入みたら案の定赤字です。ここは是非ダークキャッスルに投資する目的で、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。だってせっかく良質な作品が出来ても日本未公開なんて嫌じゃないですか。だから、ホワイトアウト、オススメです!

[スポンサーリンク]
記事の評価