マッハ!弐

マッハ!弐

今日は「マッハ!弐」を見てきました。

評価:(45/100点) – やっぱりプラッチャヤー・ピンゲーオは偉大だった。

【三幕構成】

第1幕 -> ティンが奴隷商人に捕まる
 ※第1ターニングポイント -> ティンがガルーダの翼峰に拾われる
第2幕 -> ガルーダの翼峰での修行とティンの回想
 ※第2ターニングポイント -> ラーチャセーナの即位式に殴り込みを掛ける
第3幕 -> ラーチャセーナの即位式とガルーダの翼峰アジトでのアクション


【あらすじ】

アユタヤ王国が勢力を広めるタイ。その東にある王国ではクーデターが勃発していた。 ラーチャセーナの謀反より家臣によって救い出された王子・ティンは、道中家臣とはぐれ奴隷商人に捕らえられたところを山賊に助けられる。ガルーダの翼峰と名乗る山賊達の中でティンはあらゆる戦闘術を学び、やがて組織のトップへと成長する。
山賊のリーダー・チューナンよりリーダーの座を譲られたティンは、やり残した事があるとしてこれを固辞する。そして両親の仇であるラーチャセーナの即位式へと単身殴り込みを掛けるのだった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

ついに日本で公開されました。 「Ong-Bak2」こと「マッハ!弐」です。アクション映画ファンならば言わずと知れた、タイの誇るスーパースター、トニー・ジャー主演の最新作です。ちなみに映画自体は2008年公開作品でして、すでに続編「Ong-Bak3」が来週・1月21日にタイで公開されます。つまり周回遅れ。
でもハリウッド以外の海外映画なんてそんなもんです。劇場公開されただけでもありがたいと思っておきましょう。

本作のストーリーについて

本作にとってストーリーはまったく問題ではありません。というか普段ハリウッド映画や日本映画を見慣れている人からすれば、ものすごく変テコな映画です。
例えば、いつの間にか回想シーンが始まっていてそれがなかなか終わらなかったり、場面転換したと思ったらいきなり10年近く経ってたり、おそらく戸惑うと思います。アクション映画ですのでストーリーは割とどうでも良いんですが、それにしても非常に分かりにくい構成をしています。とはいえ一度分かってしまうとものすごくシンプルな話だと気づきます。ある程度分からなくてもそういうものだと割り切ってしまいましょう(笑)。

スタッフと制作時のゴタゴタについて

知っている方は知っていると思いますので読み飛ばしてください。実は本作は制作時にとてもゴタゴタしました。これはタイ・アクション映画のそもそもを語らないと説明しづらいため、少々長くなります。
アクション映画というと皆さんご存じの通り香港のカンフー映画が有名です。実際、スティーブン・セガールやジャン・クロード・ヴァン・ダム、近年だとウェズリー・スナイプスあたりの生粋のアクションスターは欧米にも居ます。ですが、やはり香港が生身のアクションでは最先端を突っ走っていました。
ところが2003年にまったくノーマークだったタイからとんでもない作品が登場します。それが「マッハ!!!!!」です。ムエタイを駆使して細身のトニー・ジャーがアクロバティックなアクションをこなす姿は本当に衝撃的でした。この作品をきっかけに、監督のプラチャヤー・ピンゲーオとアクション監督のパンナー・リットグライの名前がアクション映画界に轟きます。この2人はどちらも監督が出来るゴールデンコンビとして、時には監督、時にはプロデューサーとしてアクション映画を量産しはじめます。
特にピンゲーオ監督はかなり本気でタイをアクション大国に育てようと苦心し、独自に若手の育成に着手し始めます。なにせトニー・ジャーがたまたま天才だった可能性が有りましたから、タイ映画を香港映画のようなブランドにするためには育成システムの用意が急務だったわけです。そしてピンゲーオが育て上げた第1号が「チョコレート・ファイター」で鮮烈なデビューを飾ったジージャー・ヤーニンです。彼女もデビュー作にして素晴らしいアクションとスター性を見せ、ピンゲーオとタイ・アクション大国計画が本物であることを証明しました。
さてそういった背景の中で、ピンゲーオを抱える映画会社サハモンコル・フィルムは「マッハ!!!!!2」を企画します。ところがトニー・ジャーが超問題児でして、映画は自分が居れば成立すると嘯いて自らメガホンを取ると言い出します。サハモンコル・フィルムはプロデューサー兼お目付役としてリットグライをブッキングしてトニー・ジャーに監督をやらせます。そしてトニー・ジャーが「マッハ!!!!!2」を撮っている間に、問題児トニーの後釜としてピンゲーオに若手育成を託します。それが見事成功しジージャーが誕生するわけです。
じゃあ「マッハ!!!!!2」を撮っている間はトニー・ジャーもおとなしかったかというと、そんなわけはありません。急に失踪したり、テレビで奇行を披露したり、自分のギャラを上げたあげく制作費を使い込んで勝手にボイコットしたりしてます。超問題児。性格最悪です。
そんなわけで、「マッハ!!!!!2」はまさにトニー・ジャーのトニー・ジャーによるトニー・ジャーのための「オレ様映画」になりました。
しかしあまりにも問題行動が多かったため、トニー・ジャーはもはや「マッハ!!!!!」をシリーズ化する以外に俳優として生きる術はありません。どこも使ってくれないですし、すでに自分の代わり(=ジージャー)が世界的な評価を得ています。ピンゲーオ監督とも喧嘩別れ同然です。一方的にトニーからピンゲーオは要らないとか言っちゃってますから。ということで、本作はかなりがっかりな内容でしたが、次作は俳優生命を賭けて死にもの狂いでくるはずです。

【まとめ】

本作はストーリーもさることながらアクションも相当がっかりな出来です。というのも、トニー・ジャーが自分でやりたいことを詰め込んだという印象が非常に強く、ティンのアクションに整合性が見られないためです。前作では古式ムエタイという核がありましたが、本作は本当に「何でもあり」になってしまっており、あまりにもティンが万能過ぎます。万能すぎるが故にハラハラ感も薄く、漫然と戦闘が続いてしまいます。
この点はトニー・ジャーの監督としての力量不足だと言わざるを得ません。やはり「トム・ヤム・クン!」や「マッハ!」で世界を驚愕させた一因である「テーマを持ったアクション・シーン」はピンゲーオ監督の力量でした。トニー・ジャーとピンゲーオにはフィルム構成力に圧倒的なまでの差があります。
トニー・ジャーには心を入れ替えてピンゲーオに謝罪していただいて、是非ともまたすばらしいアクション映画を作って欲しいです。
ま、可愛いくってアクションも凄まじいジージャーがいれば、トニーこそ要らないんですけど(笑)。
そういった意味でも、トニーにはピンゲーオに謝りに行く事をオススメします!
こんな映画作ってたら、本当に居場所なくなっちゃいますよ、、、。

[スポンサーリンク]

記事の評価

トラックバック用URL:

https://qbei-cinefun.com/ong-bak-2/trackback/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。