シビル・ウォーの予習のために(マーベル・シネマティック・ユニバースまとめ)

シビル・ウォーの予習のために(マーベル・シネマティック・ユニバースまとめ)

バットマンvsスーパーマンも良かったけど今度はマーベルのシビル・ウォーだよ!ってなわけでここでマーベル・シネマティック・ユニバースのおさらいでございます。

【フェイズ1】キャラ紹介とアベンジャーズ誕生編

フェイズ1はキャラクター紹介が中心になります。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、超人ハルクの単発映画を次々投入し、ついにアベンジャーズで一同に会す!まさにヒーローオールスターものの王道展開!

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第1作:アイアンマン

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「アイアンマン」(2008年)
監督:ジョン・ファヴロー
アベンジャーズ映画の原点にしてロバートダウニーJrのアタリキャラを産んだ名作中の名作。なにはなくとも、まずはコレ。

第2作:インクレディブル・ハルク

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「インクレディブル・ハルク」(2008年)
監督:ルイ・レテリエ
「ハルク(2003)」の続編っぽいのに続編でなく、リブートってほど新しくなく、、、というアレな作品。アベンジャーズで再登場するハルクがいきなり役者が変わっていたりと、完全に珍作扱い。

第3作:アイアンマン2

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「アイアンマン2」(2010年)
監督:ジョン・ファヴロー(アイアンマン1に引き続き)
ここからだんだん小ネタが増えてきて、マーベルファンのテンションも上がり始める。

第4作:マイティ・ソー

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「マイティ・ソー」(2011年)
監督:ケネス・ブラナー
ここからは完全に「アベンジャーズのための前フリ」へ。正直、アベンジャーズ系列の中で一番微妙かも、、、という悲しい作品。ソーは設定上強すぎるのでどうしても不遇。

第5作:
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

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「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(2011年)
監督:ジョー・ジョンストン
「普通によく出来てる」の極北。面白いが、キャラ紹介以上のものではない。でも楽しい。でも薄い。やっぱ楽しい。

第6作:アベンジャーズ

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「アベンジャーズ」(2012年)
監督:ジョス・ウェドン
ついにキタキタ・アベンジャーズ。ほぼ4年間引っ張ってやっとこさ出た大本命。これだけのアクの集まりを無難にまとめただけでもgood job! これのせいでDCコミックスのハードルがガッツリ上がったのは致し方無い(笑)

【フェイズ2】ラスボス・サノス登場!インフィニティ・ジェムがちょっとずつ登場!

フェイズ2は「アベンジャーズ」のエンドロール後にチラっと映った「サノス(青いゴリラみたいなの)」が世界を司る6つの超強い魔法の石「インフィニティ・ジェム」を集める話です。

第7作:アイアンマン3

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「アイアンマン3」(2013年)
監督:シェーン・ブラック
アイアンマン単独映画の最終章。ここからアイアンマン=トニー・スタークのアイアンマンスーツ溺愛が始まり、ウルトロン計画へ繋がる。数多くのスーツ・バリエーションも出したまさに「アイアンマン祭り映画」。

第8作:マイティ・ソー/ダーク・ワールド

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「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(2013年)
監督:アラン・テイラー
完全にブランド化した「アベンジャーズ」にあって、やっぱり不遇なソー。ついにはロキに人気を取られ、狂言回し役になってしまう。

第9作:キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

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「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014年)
監督:ルッソ兄弟(アンソニー・ルッソとジョー・ルッソ)
アメコミ映画史に残る大傑作アクションヒーローサスペンス。でもルッソ兄弟という奇才を発見したことが一番の功績かも。とにかく面白い「ザッツ・エンターテイメント」

第10作:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年)
監督:ジェームズ・ガン
ドーン・オブ・ザ・デッドでザック・スナイダーと組んでいたジェームズ・ガンを一本釣り。そしてやっぱり上手い。踊りで始まり、踊りで終わる傑作80’sSFリバイバル。サノスのインフィニティ・ジェム集めがフィーチャーされ、徐々にアベンジャーズ・シリーズの全貌が明らかに、、、。ちなみにインフィニティ・ジェムの一個目は「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」「アベンジャーズ」に登場した「(コズミック・)キューブ」。2個目は「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」に出てきた「エーテル」です。

第11作:アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

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「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2014年)
監督:ジョス・ウェドン
再びアベンジャーズ。そして再びジョス・ウェドン。トニー・スタークが溺愛したアイアンマン・スーツがアレなことになってしまい人類の的・ウルトロンになってしまうというなんとも微妙なストーリー。スタークが完全にイタイ子になってしまい話的にはあんまり、、、。でもついにX-MENチームが(ちょっとだけ)合流し、新キャラも多数登場。世代交代風な終わり方で、ついにサノス様大爆発の「インフィニティ・ガントレット」への前振りが予感される。

第12作:アントマン

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「アントマン」(2015年)
監督:ペイトン・リード
もともとは「バカ映画の神」エドガー・ライトが監督する予定だったが、エドガーが(おそらくオタクネタぶち込み過ぎたせいで)降板し、代わりにペイトン・リードが抜擢。当り障りのないキャラ紹介で毒にも薬にもならない佳作。でも冷静に考えて「ヒーロ映画の佳作」がちゃんと制作費が出て作れてるだけでも感動モノ。いままでは超ビッグネームのキャラ以外はこんな待遇なかったですから。

そして【フェイズ3】サノス激闘編へ、、、

ということで、この先、フェイズ3では「サノスが残り3つのインフィニティ・ジェムを集める」「それを使ってインフィニティ・ガントレット(無限の篭手)完成」「宇宙を暴れ回りヒーローをボッコボコ」「ヒーロー側の復活・逆襲で最終決戦・インフィニティ・ウォーへ」という物語が展開される、、、、はずです。


まずはアベンジャーズの分裂とキャプテン・アメリカの離脱を描いてるはずの「シビル・ウォー/キャプテンアメリカ」の登場です。原作では「シビル・ウォー」はアベンジャーズもので、各キャラごとの外伝が山程出版されて派生している「クロスオーバーイベント」です。。X-MEN等は版権の関係で出られませんが、一方のスパイダーマンはついに参戦!「アメイジング・スパイダーマン2」の大爆死でソニーがサジを投げてくれたおかげなので、供養のためにアメイジング・スパイダーマン2を10回ぐらい見てから「シビル・ウォー」を見に行きましょう!(でもシニスター・シックスは見たかった、、、泣)
ここから怒涛のサノス編に突入するはず。たぶん映画の本数の関係で漫画の続編「デス・オブ・キャプテン・アメリカ」や「ロード・トゥ・リボーン」「リボーン」はスキップされる気がしています。
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乞うご期待!



完全に回し者みたい(笑)。

(2016/04/30追記)

【フェイズ3】サノス激闘編・インフィニティ・ウォーへの道

第13作

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「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)
監督:ルッソ兄弟(アンソニー・ルッソとジョー・ルッソ)
悪魔型サスペンスにヒーロー要素をふりかけた傑作。キャプテン・アメリカの友情とアイアンマンの自責の念がお互いをすれ違わせる。バットマンvsスーパーマンと公開時期もテーマも被っており、明らかにこちらの出来が上。マーベル/ディズニー連合の貫禄か。アイアンマン(ディズニー)とスパイダーマン(ソニー・ピクチャーズ)の交換留学・第1弾。

詳しい個別記事はこちら
https://qbei-cinefun.com/captain-america-civil-war/

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記事の評価
ヘイトフル・エイト

ヘイトフル・エイト

復活2回めはこちら

ヘイトフル・エイト」です。

評価:(82/100点) – 超強化型ショ○ンKの感動作


【あらすじ】

舞台は冬のワイオミング、賞金稼ぎのウォーレンは吹雪に追われるなか、馬が倒れて立ち往生してしまう。そんな時、1台の馬車が通りかかる。乗っていたのは同じ賞金稼ぎの「首吊り人」ジョン・ルース。彼は1万ドルの賞金首である女殺人鬼・デイジーを連行中であった。道中、新任保安官として街に向かうクリスも同行し、4人と御者の珍道中が始まる。
しかし、猛吹雪に追いつかれてしまった一行は、道中の”道の駅”ミニーの店で足止めを余儀なくされる。あいにくミニーは留守中であったが、そこには4人の先客がいた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ウォーレンとクリスが馬車に乗り込む
 ※第1ターニングポイント -> ミニーの家に到着する
第2幕 -> ミニーの家での一夜と事件発生
 ※第2ターニングポイント -> ウォーレンが撃たれる
第3幕 -> 解決編


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【感想】

こんにちは。きゅうべいです。もうすでに2番館上映になってしまっていますがご容赦ください。本日はタランティーノ・最新作にしてアメカジファン垂涎のヘイトフル・エイトです。なんでアメカジファン垂涎かと申しますと、実はこの映画、ほぼ全編の衣装があの「RRL(ダブルアールエル)」なんですね。ご存知「ラルフローレン」のカントリー・トラディショナル・ラインでして、元も子もない言い方をすれば、西部劇のコスプレ服みたいなのを高く売ってるブランドです(笑)。その「コスプレ服」が本当の西部劇に使われて、しかもそれがボロ布のようにバンバン血糊やら酒やらで汚れていくという、、、とっても贅沢なひとときを楽しめますw

いきなり「楽しめます」と書いちゃいましたが、本作は無類に面白い「雪山サスペンス」です。正確にはサスペンスってほど謎のある事件ではないんですが、いうなれば超よく出来た最上級の「古畑任三郎」って感じです(笑)。タランティーノ作品を見たことがある方はピンと来てもらえると思います。タランティーノ監督を紹介する際には、よく「過去の名作」や「B級キワモノ映画」のマッシュアップ部分が取り挙げられますが、それ以上に彼の特徴というのは「ダラダラと続く登場人物のひとりがたり & 無駄話」にあります。武勇伝であったり、脅しであったり、はたまたガールズトークであったり、いろいろパターンはあるんですが、劇中でかならず「ダラダラとした無駄話」がはいります。これって、すごく雪山サスペンスと相性がいいと思いませんか? だって、雪山サスペンスってことは基本的には舞台や登場人物が狭いわけで、必然的にみんなでしゃべりまくるしか無いわけです。
ということで、本作は「タランティーノ meets ソリッドシチュエーション」ってだけでもう勝利が約束されたようなものなんです(笑)。

ということで、お約束です。
本作は、第2ターニングポイントをきっかけに、ストーリーがガラッと代わります。ネタバレは極力しないように書きますが、しかしこの「展開」については少々書きたいと思います。もし未見の方は是非劇場にいっていただいてご覧になってからにしてください。最近は劇場公開が終わってからDVDになるまでも3ヶ月ぐらいと早いですから、もしお近くに公開館がない場合でも、是非「これはは見るべし」リストに加えていただいて、是非ご鑑賞ください。いやね、マジで面白いですよ。

話の概要

本作のタイトル「ヘイトフル・エイト」はもちろん「ちょ~イヤ~な8人」を指しています。そしてタイトルどおり、本作に登場する人物は、御者の「O.B.(オービー)」を除いて、ものすごいクセモノがそろっています。南軍・北軍の対立あり、超差別主義者のオラオラ系あり、そして明らかに口だけがうまい曲者有り。役者の豪華さもさることながら、「こんだけ揃ってて殴り合いにならないほうがおかしいわ」というレベルで強烈なメンバーがそろっています。そしてお得意の「無駄話」の数々。映画自体は約3時間と強烈に長いのですが、その長さが「早く外に出たいな~」というまさに登場人物たちが吹雪の小屋で思っていることそのまんまの共感につながり、そして三幕目の血みどろのカタルシスに繋がるわけです。

事件という事件は「コーヒーポットに毒が入れられた件」という一点のみなのですが、これを巡った心理戦の数々に、かなりぐっと引き込まれます。

この映画では、本当に「語り」だけしか出てきません。なので、登場人物みんなが喋っていることに裏付けがまったく無いんですね。もしかしたら全部本当かもしれないし、全部ホラかもしれない。ただ挑発するだけの作り話かもしれないし、照れてて真実を喋っていないだけなのかもしれない。そんな疑心暗鬼が最高潮に達するのが、まさにラストなわけで、これはもうハッタリなのかマジなのか誰にもわかりません。

でも、そんな中で、ラストシーンに出てくるある「ウソ」が、それでも人を感動させ、奮い立たせてくれるわけです。ウソを利用してのし上がってきた彼は、しかしその「のし上がった過程」は真実なわけで、、、とか書くと某ショー○K氏になってしまいますが(笑)、図らずもこの映画はそれを拠り所にした意地を見せてくれます。この映画風にいうならば、例えばショ○ンKが日本代表としてTPP議論に乗り込んでいってアメリカとか東南アジアを丸め込んできてしまったら、やっぱり英雄になれるわけですよ。たとえその基盤がウソまみれの無茶苦茶だったとしてもです。まぁシ○ーンKにはさすがに荷が重いですけどね(笑)。

それでもって、これって、よく考えるとタランティーノそのものなんですね。タランティーノって「自らが好きな過去の作品」を切り貼りして作品を作るわけで、それって作家/クリエーターとしていうなれば「ウソの作品」なわけですよ。超高次元でサノってるというかね(笑)。それでも彼の作品は観客の心を打ちます。実際にキル・ビルやイングロリアス・バスターズはもう完全にオリジナルの感動もまるごと再現してしまったわけです。そう考えると、ラストシーンのとある手紙のシーンというのは、これまさにタランティーノの独白といっていもいいかと思います。そしてタランティーノの映画で感動するのとまったく同じ構図で、やはりその手紙にも感動してしまいます。
これだけでも十分に凄いのですが、タランティーノの真骨頂はここからさらに「でもそれ偽物じゃん」という自己ツッコミまでして、まったく嫌味なく自虐ネタにしてみせる点にあります。自分の立ち位置を完璧に把握して、その上でハイクオリティな作品を量産してみせる。これをやられては他は太刀打ちできません。しかもアイデアというか元ネタは映画史そのものであってほぼ無限ですから(笑。

【まとめ】

おそらく話の筋だけであれば90分ぐらいに収まってしまいます。それはそれで面白そうではありますが、しかしこの170分という長~い時間を通じると、意外とクリスやウォーレンが愛おしく思えてくるのです。衣装やギターなどの小物までひっくるめて徹底される「古き良き西部劇サスペンスのレプリカ」は、必見の出来です。猛プッシュいたします。

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雑記:邦画のレベルが低いのは誰のせい?(製作委員会の仕組み)

雑記:邦画のレベルが低いのは誰のせい?(製作委員会の仕組み)

うも、おはこんばんにちは。きゅうべいです。今日はですね、個別映画に関係なく、良い新聞記事がネットに上がってたので、それから話を膨らませたいと思います。

当該の記事は産経ネットのこちら

http://www.sankei.com/premium/news/160409/prm1604090022-n1.html
●今の日本映画にもの申す…「レベルが本当に低い!」 英映画配給会社代表が苦言

一部抜粋しますと、、、

「日本では映画は製作委員会のもので監督のじゃない。例えば、誰が監督したかみんなほとんど知らないでしょ。監督の名前を宣伝しない。英国などでは出演者には興味がない。『この映画はマイク・リーの新作』などと監督を重視する。日本では、例えば園子温(その・しおん)監督の『新宿スワン』を誰が撮ったかは95%の人々は知らない。監督は製作委員会のパペット(操り人形)なんだ」


これ実は私が随分前から言ってることでして、邦画にダメな映画が多いのって絶対製作委員会の影響なんですよ。私もここ数年、製作委員会や出資がらみの仕事をするようになって切に感じています。ということで、今日は「製作委員会」についてウダウダ書いてみます。

ちなみに上記のアダム・トレル氏は間違っています。日本に限らずハリウッドでも、映画は製作委員会のものではないですし、雇われ監督のものでもありません。プロデューサーのものです。逆に言えば、プロデューサーさえちゃんとしてれば製作委員会形式でもいい映画はできます。相当な話術と騙しのテクニックが必要ですが(汗)

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■ 製作委員会方式ってそもそもどういうもの?

ch1: 製作委員会の誕生

皆さん、「製作委員会」ってどういうものかご存知でしょうか?「知ってるわい!」って方はこのセンテンスはすっ飛ばしちゃってください。

製作委員会とは簡単にいいますと「一口馬主」的な制度のことです。私は最近は映画よりもテレビアニメの製作委員会に出ることが多いので、テレビアニメ(=業界ではこれを”OAアニメ”と呼びます。)を例にとって説明していきましょう。

まず、テレビアニメを作るのにどのくらいお金がかかるでしょうか?
もちろん作品にもよるのですが、一般的には一話あたりで大体1,200万円~1,500万円くらいかかります。ちなみに深夜ドラマ(テレビ東京とかでよくやってるやつ)やU局ドラマだと、これがだいたい900万円くらいで作れます。

そうすると、1クール(=3ヶ月)分13話でだいたいトータルで1.5億~2億円ぐらいかかるわけです。ここにさらに宣伝費として、だいたい純制作費と同額弱が当てられます。そうすると、1クールのアニメを作るためのビジネスにはトータルで2億~3億円かかる計算になります。

ここで大事なのは、映画やドラマやアニメの企画会社も、所詮は「ビジネス」だということです。コンテンツビジネスというのは物凄く博打性が高いビジネスです。例えば、あるアニメの制作会社に2億円渡すとしましょう。このアニメが流行るかどうかはまったくわかりません。良い作品ができるかどうかも作ってみないとわかりません。クソ作品が出来上がった時には、当然すでに制作費は使い終わってるわけです(笑)。

ビジネス的な観点でみると、これは猛烈なリスクです。作ってみないと出来がわからないものに、何億円も突っ込んで、そして殆どの場合は大ヒットなんてしないで終わっていくわけです。大ヒットする作品なんて、年に数本ですから、これは宝くじみたいなものです。

当然、企画会社はリスクの分散をもとめるようになります。そこで、製作委員会が登場するわけです。

ch2: 製作委員会の仕組み

製作委員会の「言い出しっぺ」はほぼ9割9分の確率で「企画会社」です。前述のように企画会社は2~3億円のお金をだしてヒット作ができるかもしれない博打をします。このリスクを抑えるために、企画会社は「出来上がった作品に対しての権利をあらかじめ切り売りする」ことを始めるわけです。いうなれば、作品の先物取引です(笑)。

この企画会社のことを、製作委員会方式では「主幹事会社」と呼びます。アニメの場合には、松竹や東映、KADOKAWA、バンダイビジュアル、ハピネット、TBSなどの映画/アニメ/テレビ会社が「主幹事会社」となります。

では、「切り売りされる作品の権利」とは何でしょうか? 一般的には以下の様なものが挙げられます。

・出演権
・先行放送権
・制作権
・番組販売権
・番組販売権(海外)
・パッケージ化権
・グッズ化優先権
・書籍化権
・遊戯機/アミューズメント化権
・主題歌権

なんとなく文字を見ていただければ想像できると思います。

出演権はそのものずばり声優さんや俳優さんを出演させる権利です。たま~に武井咲とか広瀬すずとかが「ゴリ押し」と言われることがありますが(笑)、実際はこれはゴリ押しでもなんでもなくて事務所がちゃんとお金をはらって製作委員会に入ってるからなんですね。もちろんメインだけじゃなくバーターで若手も出します。

アニメの場合、先行放送権はたいていの場合アニマックスやWOWOWなどの有料放送局が入ります。番組販売権というのは先行放送されたあとの、地方局や地上波テレビ局に番組を売る時の代理店になれる権利です。ちょうどいま「ラブライブ」がNHKで放送されていますが、あれなんかまさにこの「番組販売権」のパターンです。

「パッケージ化権」というのはDVD/BDソフトを発売するときに「販売元」になれる権利です。ここはアニプレックスとか、ポニーキャニオン、ハピネット、MAGES.、キングレコードとかが入ってきます。パッケージ屋さんですね。

「書籍化権」というのは、漫画やラノベ/小説なんかが原作の場合には「原作使用権」に変わることもあります。ここにはその出版社が入ります。ノベライズやコミカライズするときの権利です。最近だと、「劇場版るろうに剣心の漫画化」とかいうアクロバティックなやり方もありました(笑)。漫画を映画にしたやつの再漫画化という、、、なんかもうよくわかりません(笑)。古くは福井晴敏の「月に繭 地には果実」という、アニメ「∀ガンダム」のノベル化だけど純文学という凄いのもありました。

「主題歌権」というのはアニメのオープニング/エンディングを決める権利です。ここはレコード会社が入ってきます。例えば、一時期ガンダムシリーズはすべてソニー・ミュージック・コミュニケーションがここに入っていました。玉置成実とかHIGH AND MIGHTY COLORとかの頃です。ここには、アニメタイアップで新人を売り込んだりしたいレコード会社がお金をだしてバーターをもらうわけです。

最後に、最近は「遊戯機化権」というのも出てきています。これは要はパチンコ台にする権利です。「パチンコ まどか☆マギカ」とかね。平和とかサンキョウとか、最近はオムロンからスピンアウトしたフリューなんかもいます。

こういった作品に付随するビジネスを行う権利を幹事会社は切り売りするわけです。一般的には、出資比率として幹事会社が総製作費の40%程度を出費し、のこりは各社3%~10%ぐらいずつの寄せ集めにして100%に持っていくようにします。最近のアニメプロデューサーの仕事は、もっぱらこの「出資スポンサーを捕まえてきて100%になるように綺麗に調整する」ことになってます(笑)。当然業界内には派閥がありますので、「あいつが出資した作品にはうちは出資しない」みたいなしがらみが山程あり、めちゃめちゃ気苦労の絶えない地味~な仕事です。

ちなみに、こういう製作委員会の企画書を見る場合、まずはじめに見るのは「幹事会社の出資比率」です。ここが、40%を切っている場合、「あ、この幹事は作品に自信がなくてバックれる気マンマンだな( ̄ー ̄)ニヤリ」と読みます(笑)。

ch3: 出資者への見返りはなに?

さて、幹事会社のプロデューサーが、睡眠を削って飲みニケーションを駆使して出資者を集め、見事出資比率の合計が100%に達成したとします。では出資者のメリットはなんでしょうか?
一番のメリットは「実際の製作に関する仕事を受注できること」です。俳優が出れば出演料が入りますし、主題歌になれば楽曲使用料が入ります。例えば、「ST○○○ ○Y ME ドラ○○ん」を例に取りましょう。この映画は製作委員会方式をとっていますが、実際に作っているのは「白組」という会社です。白組は出資して制作権をとってます。この場合、白組は製作委員会に出資をし、製作委員会はみんなから集めたお金を白組に渡して作ってもらうわけです。つまり出てったお金が戻ってきてる(笑)。この時、白組は「出資しない時と比べて利益率は減るが、出資することで絶対に受注できる」状態になるわけです。ただの値引きじゃね~かって話なんですが(笑)、これがもし、東北新社とかが出資して制作権をとったら白組には一切仕事がこないわけで、そのチキンレースが展開されるんです(笑)。

こういうのを製作委員会方式では「随伴利益」と呼びます。一般的に、随伴利益が出資金を上回る場合、制作会社は出資しない理由がありません。

こうして幹事会社は数々の付き合いのある会社に対して「仕事あげるから製作委員会に入ってよ~」というバーターを仕掛けて回るわけです。

ちなみに、製作委員会は形式上は皆がお金を出し合う「投資事業組合」ですから、得られた利益は出資比率にしたがってきちんと分配されます。されますが、「得られた利益」は当然経費が引かれた後ですので、幹事会社が「分配手数料」を先に引っこ抜いてきます。基本的に幹事会社が大損をすることはありません(笑)。ひどい商売です、、、。

■ なぜ製作委員会はクソ映画を量産するのか?

さて、それでは冒頭の話に戻ります。なぜ邦画がクソなのが製作委員会のせいなのか?これはすごく簡単にいいますと、「出資してる人たちがコンテンツにあんまり興味がないから」であり、「幹事会社は出資しやすいようなコンテンツを作るから」なんですね。順番に説明しましょう。

なぜ出資者はコンテンツに興味がないか

製作委員会は前述したように、基本的には随伴利益を目的とした実質上の「値引き」システムです。ですので、出資者にとってコンテンツの出来はさほど重要ではありません。すくなくとも随伴利益である程度ペイできてしまうのであれば、どんなクソ・コンテンツだろうが知ったこっちゃないわけです。出資者が重要視するのは、「随伴利益がいくらでるか」と「どの程度のヒットが見込めて、安全な出資ラインはどこか?」だけです。

会議室映画の誕生!

上記の「どの程度のヒットが見込めて、安全な出資ラインはどこか?」をクライアント各位に提示するために、幹事会社は出資しやすいような企画書を書かないといけません。そんなこんなで、この企画書のフォーマットというのはもう決まっちゃってるんですね。

・予定している俳優/声優は誰か?彼らの過去作はどのくらいヒットしたか?
・原作本は何部出ているか?同一作者の別作品は映像化でどの程度ヒットしたか?
・このジャンルの類似作はどの程度売れたのか?
・この制作者(監督とかブランド)の作品は過去にどの程度売れたか?

さて、これをすべて書こうとすると、どういう企画書になるでしょうか?
そりゃあね、当然似たようなものばっかになるわけですよ。今度の「テラフォーマーズ」なんかは、個人的には「13人の刺客」と「るろうに剣心」と「ミュージカル戦国BASARA」のミックス企画だと邪推しています(笑)。

この製作委員会はリスク分散という大きなメリットがある一方で、すくなくともブランニューな作品だったり、すごい新人監督だったり、はたまた超爆発的にヒットするめちゃくちゃ面白い作品なんかは生まれないわけです。

■ まとめ

ある意味ではビジネスとして成熟しているともいえるんですが(苦笑)、やっぱ「100本作って1本大成功!」みたいな超生え抜きの作品の方が面白いわけで、世界中の死屍累々の上に出てくる「100本中1本の洋画」をピンポイントで見たほうが、そりゃあ面白いわけです。

ということで、「死屍累々に感謝しつつ、面白い映画をみる」というのが、一般的な映画好きの方の一番合理的な方法だと思います。
そのために当ブログのような適当なことばっか書きまくってる脳汁が少しでもお役に立てたら幸いです。

まぁ、私のブログは嘘が8割ぐらいで、残りの2割は私の見た幻影なんですがね(笑)。


おまけ: 実際のアニメ製作委員会の出資比率

おまけです。下記が某大人気声優勢揃いアニメ(1クール)の製作委員会構成です。この作品は主幹事がやる気満々で大ヒット間違いなしの気合い入りまくりだったので、60%も出してます(笑)。宣伝費コミコミで1話あたり2,000万円×13話=2.6億で、中の上ぐらいの製作規模です。

主幹事(某有名アニメレーベル):60%(パッケージ化権、ソングタイアップ権、番組販売権)
某パッケージ会社:10%(自動公衆送信権 ※これネット配信のことです。)
某ゲーム会社:10% (ゲーム制作・販売権)
某グッズ屋:8% (販促物製造権)
某スタジオ:6% (オンエア制作・編集権 ※これがいわゆるアニメを作る所です。)
某おもちゃ屋:6% (フィギュア制作・販売権) 

おまけ2(2016/8/23追記): 広告代理店関連の陰謀論

くままさんにコメントいただいたツイッターで流れてたという「制作費をスポンサーが出すじゃん?そのうち半分を「放映権」の名目でテレビ局が持ってく。残ったうち8から9割を、広告代理店が持っていく。残りカス、元の1割とか2割弱とかが、実際の制作費」という陰謀論についてちょいと長くなりそうなのでこちらに追記します。くままさんありがとうございます。

本文にも書きましたが、大前提として、製作委員会の「総製作費」は「宣伝費」と「制作費」に大きく別れます。きちんと予算配分されており、一般的には4:6ぐらいです。(※噂で聞いたレベルで当てになりませんが、シンゴジラはこれを2:8ぐらいにして中身にガッツリお金使ったらしいです)
きちんと制作費は項目分けて守られていますので、そこが「1割とか2割弱」はあり得ないです。

まず放送権ですが、優先放送権は「製作委員会から番組を優先的に買って一番最初に流す権利」なのでこのテレビ局は制作費には一切手をだしません。むしろ追加で1クール300~400万円程度を「番組放送ライセンス料」として委員会に払います。”「放映権」の名目でテレビ局が持ってく”は絶対にあり得ません。持っていく名目が無いです。ただし、「あしたから新作アニメがはじまるよ!30分特番」みたいな番宣番組を作る場合、この番組制作費を「宣伝費」として委員会に計上することはありえます。WOWOWなんかはよくやってますし、地上波でもテレビ局主幹事のアニメ映画だと必ずあります。ただ、せいぜいダイジェストに編集して声優と監督からコメントもらってくる&ちょいと聖地巡礼程度なので、こんなの高くても20万~50万ぐらいです。

次に「残ったうち8から9割を、広告代理店が持っていく」ですが、これもあり得ません。広告代理店がマックスで持っていけるのは宣伝費ワク分すべてですが、そもそもこの”宣伝費”には前述の番宣番組だったり、原作権で入っている出版社の雑誌特集(広告記事)だったり、パッケージ権で入っているパッケージ会社のチラシ・オマケグッズなんかも含まれています。劇場アニメなら前売り券のオマケや入場者特典もこの宣伝費です。広告代理店が入れるのは企業コラボぐらいですからそんなに額は行かないです。「シンゴジラをつかった商品ポスターがコラ画像みたい」とか話題になってましたが(笑)、あれはたぶん広告代理店が入ってると思います。

また、大前提として、少なくともOAアニメに広告代理店がガッツリ出資することは無いです。彼等のビジネスからすると金額が小さすぎますから。「3000万出資して1000万儲かったらラッキー」みたいなショボい商売を大手広告代理店はやりません。電博(※デンパク=電通と博報堂の合体アダ名)が本気を出すのは、ジブリとか日テレあたりが主幹事の大型映画案件だけです。そういうのは露出がハンパじゃないので企業コラボが相当数みこめますからね。

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記事の評価
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

では四年ぶりの更新はこちら

「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」です。

評価:(60/100点)
ベン・アフレックは頑張った!あとムチムチ!!!


【あらすじ】

地上に、神が降りた。前作「マン・オブ・スティール」にて圧倒的な存在感をもって地上に降臨したスーパーマンは、異星人・ゾッド将軍の地球侵略を見事に阻止した。しかしその一方で、多くの一般市民を戦いに巻き込み、犠牲者を出すに至った。
得体の知れないスーパーマンは、熱狂的信者を生み出す一方で、同じくらい多くの恐怖と反発を招いた。そして遂に、抑止力の必要性が訴えられるようになる。
その時、あの男が遂に動き出した、、、

【三幕構成】

第1幕 -> バットマンの暴走
 ※第1ターニングポイント -> クリプトナイトの塊がメトロポリスに来る
第2幕 -> バットマンによるクリプトナイト奪取作戦と打倒スーパーマン
 ※第2ターニングポイント -> バットマンが改心する。
第3幕 -> マーサ救出作戦とドゥームズデイとの死闘


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【感想】

ということで、改めましてこんばんは。きゅうべいです。ブログ復活第1弾は「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」です。アメリカにおける「ジャンプとマガジン」的な立ち位置のマーベルとDCコミックスにおいて、全てを超越して知名度を誇るのは「スーパーマン」「バットマン」「スパイダーマン」です。日本でいう仮面ライダーとかドラゴンボールみたいな感覚ですね。話しは知らなくても、キャラクターを知らないってことはまずありません。ところがどっこい、マーベルはアイアンマンを筆頭に良作を連発し、「軽いノリで家族や恋人と楽しめるヒーロー映画」を確立してしまいました。しかも大正義スパイダーマン抜きで^^;「ダークナイト」だって面白いですが、やっぱ暗いじゃないですか。これはDCコミックスにとってはかなりまずい状況です。そんなこんなで、マーベルに対抗するために、DCもDC版アベンジャーズであるところのジャスティス・リーグを本格的に始めるわけです。余談ですが、この「DC版アベンジャーズ」という表現が、もうすでにDCコミックスにとっては屈辱なわけです(笑)。
そんな状況の中で、「マン・オブ・スティール」はかなりアレな出来になってしまったわけで(笑)、本作はまさにDCにとっての「負けられない戦いがそこにある」って環境です。プレッシャー5割り増し。7回8点差からの大逆転が求められる大事な場面。だれしも「ザックで大丈夫か?」「ノーランのが良くね?」「っていうかベン・アフレックじゃね?」と怪しい空気が流れる中、ザック・スナイダーの続投です。

さて、このお決まりのセリフを書くのも4年ぶりです。以降、本作を全力で擁護するために完全にネタバレを含みます。未見の方は、ぜひ映画館で見ていただいて、そのあとでお読みください。
また、本作は「マン・オブ・スティール」の完全な続編です。「マン・オブ・スティール」を見ていないとそもそもの話についていけませんので、映画館に行く前にまずは前作をチェックしてください。

話の概要

本作は「マン・オブ・スティール」の「一方その頃劇場」から始まります。「マン・オブ・スティール」にてゾッド将軍とスーパーマンがまさに死闘を繰り広げるそのウラで、メトロポリスにあるバットマン=ブルース・ウェインの会社ビルが倒壊し、従業員に多数の死者が出ます。ここからブルースは私怨の入り混じった「こじらせ正義感」でもってスーパーマンを敵視していくようになるわけです。
そして、その私怨を利用する悪魔レックス・ルーサーによって、ついにはバットマンとスーパーマンは戦わざるをえない状況に突入してしまいます、、、、。そう、「ダークナイト3部作(2005~2012)」の流れを否が応でも意識してしまう本作において、倫理を問う「悪魔」の役はレックス・ルーサーが背負います。レックス・ルーサーを演じるジェシー・アイゼンバーグは、今作でも早口・頭の回転激速・ちょいとイカれたサイコパスという得意芸を披露してくれます。「まんまソーシャル・ネットワークのザッカーバーグやんけ!」という話なんですが、もうなんかアイゼンバーグが出てきただけでキャラがわかるというすごい変な立ち位置になってしまいました(笑)。ある意味では藤原竜也の最終進化系かもしれません(笑)。

また、このあたりは「アベンジャーズ(1作目)」でも苦労していた部分なのですが、ヒーロー同士が戦うというのは、作劇的には非常に難しいのです。プロレスが好きな方には「チャンピオンvsチャンピオン」というとすぐにピンと来ていただけるかと思いますw

ちょいと話しが脱線しますが、「チャンピオンvsチャンピオン」というのはプロレスに古くからある様式美の一つでして、数々のアレげな遺恨を残してきた曰くつきの試合展開のことです(苦笑)。アメリカのプロレス界には昔(※といっても厳密には名前だけはいまも残ってます)NWAという業界団体がありまして、ここが多くの加盟団体を盛り上げるために「統一王者」を核とした「中央ドサ回り体制」というのを組んでいた時代がありました。要は各団体ごとに各々存在しているチャンピオンのさらに上に「NWA世界チャンピオン」という「チャンピオン・オブ・チャンピオンズ」を作って、これが全米を巡業していくんですね。そうすると、一年に一回、「世界チャンピオンがオラが街にやってくる」というイベントが有るわけです。こうしてマンネリ化しがちな団体のストーリーに刺激を加えるんです。そこで生まれるのが「チャンピオンvsチャンピオン」という型です。「世界チャンピオンは負けてはいけない」「その地方のチャンピオンもボロ負けして”格”を落としてはいけない」という制約のもと、試合を組み立てないといけないのです。そうすると、これはもうパターンが決まってきます。

1) 世界チャンピオンの反則負け
2) 接戦での両者リングアウト
3) いい試合を展開するが邪魔者が乱入して無効試合になる。チャンピオン同士が共闘して邪魔者を排除し、最後は二人でガッツポーズ&固い握手
4) 大接戦を演じるが、地元のヒーローが最後にあと一歩およばずに世界チャンピオンに負ける

世界チャンピオンが悪役(ヒール)の場合、1)のパターンが一番楽で疲れません。実際に歴代のNWA王者はヒールで1)を行うことが圧倒的に多かったです(笑)。2)はお客さんが不完全燃焼になってしまうため、ここぞの場面では使えません。3連戦等のときに、初戦で使うのが上等手段です。3)は一番みんながハッピーになるパターンです。これはどちらのチャンピオンも価値を損なうことなく善玉(ベビーフェイス)でいられるとても良い選択肢です。4)はこれもWin-Winなのですが、超疲れるという弱点があります(笑)。世界チャンピオンはほぼ毎日試合をしないといけないので、こういう30分を超えるハイスパートゲームは1年に1回くらいしかできません。これはビッグマッチ用です。

さて、では今回の「チャンピオンvsチャンピオン」、つまりバットマンvsスーパーマンはというと、、、こりゃもう見なくてもなんとなくわかると思います(笑)。その予想があっているかどうか、ぜひ劇場でお確かめください。

ちなみに、本作の元ネタのひとつである「ダークナイト・リターンズ(日本では「バットマン:ダークナイト」名義で小プロから刊行http://books.shopro.co.jp/?contents=9784796870610)」では、とある事情で両者リングアウト状態になっています(笑)。

怒涛の擁護を展開するぜ!

さて、それではいよいよ本日の本題に入ります。ここからが私のアクロバット擁護と詐欺的弁舌の腕の見せ所(笑)。では行ってみましょう!

■ 争点1:「そもそもスーパーマンが暗くね?」問題

まず見た方が一番怒っている部分についてやっつけましょう。「そもそもスーパーマンが暗くね?」っていう問題です。これはですね、、、その通りです(笑)。返す言葉もございません。マーベルの一連のアメコミ映画と比べて、本作は明らかにギャグ要素が少ないです。っていうかほとんどないです。ギャグとして成立しているのは、アクアマンの登場シーンと、バットマンがスーパーマンと戦ってる最中に「ちょ、まって、、、たんま!たんま!」ってやるシーンぐらいです。あとは全体的に超シリアスです。

これは一般論としてなのですが、マーベル系は「ノリの軽いスーパーヒーローがギャグを飛ばしながら敵をやっつける」というパターンが多く、一方のDCコミックス系は「ヒーローが頭脳的な敵の手のひらの上で踊らされて苦戦するが、正義の心でなんとか勝利する」というパターンが多いです。キャラの特性上、これ結構仕方ないんですよね。特に今回の「バットマンvsスーパーマン」はどうしたって序盤は「イデオロギー闘争」にならざるを得ないわけで、これは暗くなるしかないんです。余談ですが「イデオロギー闘争」ってのもプロレスオタクが大好きなキーワードです。脱線すると超長くなるので、それはまた別の機会に(笑)。

今回の「バットマンvsスーパーマン」で一番重要なのは、これを「リアル路線」でやるのか「コミカル路線」でやるのかという点です。そしてワーナー/DCコミックス連合は一貫して「リアル路線」を通してきました。この方向性において、本作の「暗さ」はとても重要な意味をもちます。

本作を成立させるためには、観客をバットマン側に感情移入させないといけません。プロレスにおいての「オラが街のヒーロー」はバットマンであり、スーパーマンは「よそからやってきた宇宙チャンピオン」なのです。「DC宇宙ヘビーウェイト・チャンピオン」がスーパーマンで、「DCゴッサムテリトリー・チャンピオン」がバットマンです。この構造において、スーパーマンは「敵かな~?味方かな~?」という立ち位置をキープする必要があります。真正面から戦えば、生身の人間であるブルースが目から怪光線を出す宇宙人のカル・エルに勝てるわけがないですから。

そのため、本作のスーパーマンは「得体の知れない宇宙人」である必要があります。これこそ、まさに「神のいかづち」というスーパーマンのキャラクター性なわけです。クラーク・ケントがとってもナイスガイなのは世界中の皆が知っているんですが、一方で「でもこいつちょっと、、、」と思わせるために、本作では「後光を背負って空からゆっくり降りてくるスーパーマン」という描写が多用されます。まるで天使か神が降臨したかのように、後光で表情がよく見えないスーパーマンは不気味さを漂わせています。スーパーマンの暗さは、この得体の知れなさを演出するために非常に重要です。

■ 争点2:「バットマンが敵を殺してね?」問題

一方のバットマンですが、こちらは「神」であるスーパーマンとは対照的に、泥臭いまでの人間性を見せてくれます。本作のバットマンは、少なくとも後半のとある転機を迎えるまでは、はっきりと「狂って」います。正義を遂行するためには悪人に焼きごてを押し付けて「拷問」することも厭いません。そして、映画を見た多くの方がツッコミをいれているように、序盤のバットマンは明らかに敵を殺しています。夢の中だろうが現実だろうが、バットマンは銃を撃ち、敵の車を爆破し、ぶっ殺しまくります。これはみんなが想像する「バットマン像」とは違います。

本作のストーリーの核となるのは、「オラが街のヒーロー」であるバットマンの復活劇です

映画の冒頭、ブルースの両親が殺されるおなじみの展開のあと、両親の葬式→地下(井戸?)に落ちる→コウモリと出会うというおなじみの展開があり、そしてタイトルが出ます。映画のラストでは、ブルースが世界中に散らばるヒーローを集めて「ジャスティス・リーグ」を作る決意をする所で終わります。この単純な構成において、映画の最初と最後を担うバットマンは間違いなく本作の主人公です。

映画の1幕~2幕までのブルースは明らかに狂っており、それは
「20年近く戦ってきたのに悪は一向に減らない」
「本当に自分のやりかたは正しかったのか?」
「ポッと出のスーパーマンは犠牲を多く出しているのにヒーロー扱いされている。自分も犠牲を厭わずに強行手段に出るべきでは?」

という自己葛藤の末の「正義感の極端な飛躍」によるものです。ここに及んで、バットマンは「敵を殺さずに逮捕する」というポリシーを捨て、「できるだけ逮捕するが必要ならぶっ殺す」というポリシーに切り替えるわけです。
物語の序盤で、この転向のことをアルフレッドがはっきりとセリフで嘆きます。

“That’s how it starts. The fever, the rage, the feeling of powerlessness that turns good men… cruel. ”

直訳:それ(=スーパーマンの登場)がきっかけです。熱狂、怒り、無力感、それが良い奴(=ヒーロー=バットマン)を残酷な男に変えました。

スーパーマンの登場によってタガが外れたバットマンは、しかし最終盤において、そのスーパーマン自身が「赤い血を流す存在(=全知全能の神ではない)」であり、「母親を心配する一人の良き男(=しかもお母さんの名前がたまたま自分と同じ)」であるという事実を知り、我に帰ります。そしてみんなのバットマンが帰ってきます!本作におけるバットマン最大の見せ場――マーサ救出戦において、バットマンはワイヤーガンで敵を吊るしあげ、殴って気絶させ、そして犠牲者を出すことなく(※ひそかに2人ぐらい手榴弾の自爆で死んでるっぽいですがw)事態を制圧します。そして助けたマーサにギャグを飛ばします。これこそ本作における最大のカタルシスであり、「バットマンお帰り!」という拍手大喝采のシーンなわけです。

そこから先は、ついにジャスティス・リーグとしての初戦、「ヒーロー軍団vsスーパーモンスター」に突入します。これははっきりいって蛇足みたいなものです。ストーリーの本筋はもう終わっていますから、あとは心いくまで「怪獣大戦争」を愉しめばOKです。

■ 争点3:「クリプトナイトを強奪するのにバッツが発信機つけた上でモービルで追っかけるのは変じゃね?」問題

あの場面、バットマンは「いま強奪できるならしちゃいたいけど、万が一ミスったときように発信機をつけとこう」っていうことなんですね。なので、「発信機をつけたのに追っかけるのはおかしい」ではなくて「追っかけるのにわざわざ発信機を付けるなんて、バッツはなんて用意周到なんだ!」と褒めるべきです(断言)。そうなんです。よくやったんです。さすがブルース、百戦錬磨・20年の経験が活かされたナイスチョイスです。そのあとガンぶっ放して発信機が壊れそうになってるのはギャグパートです(笑)。

■ 争点4:「バットマンとスーパーマンの戦いの端初がただのバカじゃね?」問題

返す言葉もございません(笑)。というか、バットマンがスーパーマンの話を聞いてくれなかったのが原因ではじまった「売り言葉に買い言葉」的な喧嘩である事実は否めません。でもさ、仕方ないじゃん。あの場面じゃ「殺る気マンマン」なわけで、まさか「かぁちゃん助けるの手伝って」なんて言ってくるとは思わないべさ。それにさ、スーパーマンは目から怪光線だせるわけで、一瞬でも躊躇ったら即死だからさ。そりゃ先手必勝でいくべさ。仕方ないべさ。そうさ、仕方ないだ(自己暗示)。

■ 争点5:「そもそもマーサを助けるのってスーパーマン単独で楽勝じゃね?」問題

返す言葉もございませんパート2(笑)。スーパーマンが助けを求めるぐらいだから、対スーパーマン専用の罠とか仕込んであるのかなと思ったら、まさかの何もなし(笑)。映画の冒頭でロイスを助けた時と同じやり方でスーパーマン単独で助けることができたのは間違いありません(笑)。でもさ、スーパーマンはウブな坊やだからさ、まさかレックス・ルーサーが100%ハッタリだけであんな大胆な人質の取り方をしてるとは思わないじゃないですか。ということで、あれは間抜けというよりも「さすがレックス!ハッタリだけでスーパーマンを萎えさせるなんて!」とヤツを褒めるべきでしょう。さすがレックス!そこにシビれる!あこがれるゥ!。なんか擁護がキツくなってきた(笑)。

■ 争点6:「スーパーマンが死ぬって酷くね?」問題

最後の最後にスーパーマンが殉職することについて、「これからジャスティス・リーグをやるのにいきなりメインを殺すなよ!」というツッコミが多数見受けられました。でもですね、シリーズを続けるからこそ、これは必要なんです。

これは私が勝手に呼ぶところの「勇者のジレンマ」ってやつです。

皆さん、ドラゴンクエストっていうRPGゲームをご存知でしょうか?エニックスの人気テレビゲームで、だいたいのシリーズ作品は「ど田舎の少年が勇者に成長して、魔王を倒しに行って、世界を救う」という王道ファンタジー・ストーリーです。それでもってですね、この王道ストーリーにおいて勇者にはあるジレンマが発生します。それは「魔王を倒した勇者は、魔王よりも強いうえにもはやライバルがおらず、やろうと思えば世界征服が可能である」ということなんです(笑)。ドラゴンクエストでは、このジレンマを解消するために、勇者が行方不明になったり、勇者が田舎にもどって百姓になったりします。たまに王様になるパターンもありますが、その場合は「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」みたいなヌルい注釈がつきます(笑)。

この「勇者のジレンマ」はかなり切実な問題です。現実世界でも「革命家が独裁者になる」というパターンは世界史で繰り返されてきました。勇者は本気をだせば世界征服ができてしまうわけで、それはつまり「世界の脅威を倒したものは、すなわちそれ自身が新たな世界の脅威である」ということなんですね。

本作「バットマン vs スーパーマン」において、ドゥームズデイを倒したスーパーマンは完全に「世界の脅威」なんです。スーパーマンがいると、彼が強すぎるがゆえにこの先ストーリーが転がせなくなってしまいます。つまり、セガール映画におけるスティーブン・セガールのように(笑)、スーパーマンがいると「いつスーパーマンが本気をだすか」という点以外にストーリーが成立しないんですね。ですので、シリーズを続ける以上はスーパーマンには一旦お休みしてもらう必要があるんです。これにたいしてスーパーマンのファンの方が怒る必要はまったくありません。むしろスーパーマンを最大限に評価しているからこそ「一旦お休み」という選択肢を取らざるを得ないわけですから、最高のリスペクトを受けている証拠です。

■ 争点7:「でもさ、クリプトナイトの槍を貫通させる必要なくね?」問題

返す言葉もございませんパート3(苦笑)。本作では、「自分の胸に突き刺さったドゥームズデイの右腕」をわざわざ引き寄せて(自分に深く突き刺して)まで、スーパーマンはドゥームズデイにクリプトナイトの槍を深く突き刺し、貫通させます。でも、クリプトナイトってその形状に破壊力があるんじゃなくて触れたり近くにいるクリプトンを弱体化させるわけで、っていうことは貫通させずに体内に残しておいたほうが破壊力高いんですよね(笑)。たぶんスーパーマンも久々の熱血展開でテンション上がっちゃって判断をミスったんでしょう。スーパーマンの人間らしさが垣間見えるすばらしいエピソードです(半分泣き目)。

【まとめ】

勢いで書いていたらすでに6,000字を超えてしまったのでまとめに入ります(笑)

本作はスーパーヒーロー軍団「ジャスティス・リーグ」の序章であると同時に、実質的に「新生ベン・アフレックのバットマン」1作目です。ですので、本作は「ジャスティス・リーグ誕生の契機がきちんと描かれているかどうか」と「ベン・アフレックのバットマンは魅力的かどうか」が重要です。その点はどうでしょうか? 本作は随所でボロクソに叩かれてますが(笑)、でも少なくとも「ベン・アフレックのバットマン」と「ワンダーウーマンの太もものムチムチっぷり」についての悪口は見たことがありません!っていうか最高です!太もも最高!!!

ということで、ベン・アフレックが最高で、太ももがむっちむちで、なんの文句がありましょうか??? いや、あるはずがない(反語)。

暗い? 話が長い? バットマンとスーパーマンが戦ってない? ロイスが間抜けすぎる? そんなことはええんや!!!
太ももじゃ太もも!!!!

おすすめで~~~す。(適当)

※ちなみに、大マジな話、そろそろジョゼフ・ゴードン=レヴィットのナイトウィングがみたいので、是非ベンアフ版バットマン単独作品は「Court of Owls」原作でお願いしたいです。

※ザック・スナイダーという監督は、「300」もそうですし「ウォッチ・メン」もそうですし、もちろん「エンジェル・ウォーズ」もそうですが、あんまりお話に興味がないんですよね(笑)。”グラフィックノベルの映像化”の極北が「シン・シティ(2005)」シリーズなわけで、きっと大真面目に巨大バジェットを使ってそれをやりたかったのかなぁと。「いかに漫画を格好良く実写化するか」というオタクマインドで突き進む人なので、そういう意味ではヘンリー・カヴィルもベン・アフレックも十二分に格好いいし、いいじゃんとゆる~く思います(笑)。

【おまけ】

※さんざっぱら言われてますが、本作の元ネタは、7割が「ダークナイト・リターンズ」、2割が「キングダム・カム」、残りが「フラッシュ・ポイント(ヴィレッジブックス刊)」他って感じです。とりあえず、アメコミを掘ってみたい方は小学館集英社プロダクションの「ダークナイト」(←ダークナイト・リターンズと続編のダークナイト・ストライクス・アゲインの合本豪華版)を読んでおくと良いと思います。気に入ったら「バットマン:ゼロイヤー(The New52!)」に行くと、なんとなくイントロから読めます。リブートしたバットマン漫画は、まだ本編6巻+外伝3巻しかないので手を出しやすいです。

以下はアフィリエイト/ステマ等は一切ございませんので安心してご覧ください(笑)。

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記事の評価
4年半振りにちは

4年半振りにちは

無沙汰でございます。
ブログの書き方を忘れたので、まずはリハビリな感じで適当なことを書こうかなとおもいつつ、キーボードを連打しております。きゅうべいです。4年半振りにちは。

まずですね、なんでブログの更新を辞めたかって言うと、これ単に面倒くさかったから^^;



というのは冗談で、私も最初は楽しくて書いてたはずなんですが、最後の方は完全に仕事モードになっちゃってまして、、、サンプルDVDを見ながら書いてるわけでもないので書いてる途中も映画の細部は怪しかったりするんですが、それが許容されない雰囲気になってきちゃったので、じゃあもういいやと。
もう4年前ですが、毎日大量に「◯や侍」に対しての励ましとお叱りのコメントを寄せていただきましてね。今思えばありがたい話なんですが、当時はあの熱量を一人で受けるのはちょいとムリげでした。なにせ毎日100通弱の「死ね」コメントが来てましたから(苦笑
「映画見ただけでなんで監督の思想までわかるんだ!」とか、そんなん言われてもむしろ下半身すっぽんぽんな作品なんだからわかんない方がまっちゃんに失礼だろ、、、とかね(笑)。
まぁでも最近はご本尊もだいぶ良い湯加減のところに落ち着かれていますし、もう大丈夫かなと、、、。
これが復活のひとつ目の理由です。

復活のふたつ目の理由はですね、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」がボロカスに叩かれているから(笑)。これはね、もう私が擁護するしかないじゃないかと。なので、復活第一弾のエントリーは「バットマン vs スーパーマン」になります。

あとは単純にやっぱ私自信が映画が好きなんで、書きたいことがtwitterの文字数じゃ足りない(笑)。

思いかえせば、そもそもこのブログを始めたきっかけは東京国際映画祭でサム・ライミの「スペル」を見たからだったんですよね。「この映画は超良い!ヤバい!でも絶対日本じゃコケる(笑)。俺が宣伝するんだ!」って。いまその時と同じ気持ちです。「俺達のベン・アフレックを守るのは俺しかいない!ついでにザックも守ったろ!」的な。むこうは90kgで体脂肪1桁のモンスターなのでこんなオタクが守らなくても大丈夫なんですけど(笑

昔は手当たり次第に見た映画をすべて2,000文字超えで書きまくるという乱取り稽古をしていましたが、たぶん今後は「これ」っていうのに絞ってゆったり書いていく感じになると思います。更新頻度は以前とは比べるまでもないですが、ご容赦ください。

ちなみにこれは完全に個人的なことなのですが、、、私、数年前から何故か日本アカデミー賞の会員になっておりまして、その絡みで、大作や邦画は相変わらず狂ったように見ています。「スターウォーズ フォースの覚醒」は公開から2週間は毎日見てました。いつかカイロ・レンが活躍するレア・バージョンが見られないかな~~~と思って(笑)。そしたら、あの馬面野郎は毎回素人のおねーちゃんに負けやがるんですわ。ないですわ。
代わりにといってはなんですが、単館系の映画はほとんどレンタルDVDの後追いになっています。

そうそう、一番大事なことを忘れてました!皆さん「ランウェイ☆ビート」って映画を覚えているでしょうか? 覚えている人は脳内容量の無駄遣いだからさっさと忘れろ!!!



というのは置いといて、実は2年ほど前に、その「ランウェイ☆ビート」と仕事でガッツリ組みました(笑)。製作委員会に参加したんですが、もうね、超怖かった(笑)。誰とはいわないですけど、おばちゃんプロデューサーの完全にワンマン体制で、まさに「会議室映画」そのものでしてね、、、、

でも安心してください。このブログは仕事とは一切無関係です。ステマなし、コネなし、変な小遣い稼ぎも無し、完全にきゅうべい個人の脳汁を提供します。宣伝のときはちゃんと宣伝って書きますから安心して読んでいただけると助かります(笑)。

ではそんなこんなで、ほなまた。

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一命

一命

本日は三池崇史最新作、

「一命」です。

評価:(80/100点) – オリジナルよりは落ちるけど、良くなってる所もあるし十分合格!!!


【あらすじ】

桜田門外の井伊家上屋敷を、ある日一人の浪人が訪ねる。名を津雲半四郎。かつて広島藩主・福島正則の家臣であったが改易によって路頭に迷ったという。武士としての最後の意地として名家・井伊の屋敷での切腹を希望する半四郎に、井伊家家老・斎藤勧解由は直々に面会する。勧解由が語り出したのは春先に起きた狂言切腹の顛末だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 半四郎が井伊家を訪ね、勧解由の話を聞く。
 ※第1ターニングポイント -> 下男が沢潟(おもだか)彦九郎を呼びに行く
第2幕 -> 半四郎の昔話。
 ※第2ターニングポイント -> 半四郎の昔話が終わる
第3幕 -> 半四郎の問いただしと結末。


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【感想】

ご無沙汰しちゃってすみません。本日は三池崇史監督の最新作「一命」です。1962年の松竹映画でカンヌ国際映画祭の審査員特別賞をとった傑作「切腹」のリメイクです。制作に名コンビのジェレミー・トーマスを迎え音楽はオリジナル版の武満徹先生に対抗する坂本龍一。「海外向けの日本映画」として盤石の体制をとっています。
さて、ここで毎度のお願いです。本作を考える上ではどうしてもオリジナル版の「切腹」と比べざるを得ません。でまたこの比較が大変おもしろいのですが、どうしても結末近辺に触れざるを得ない箇所があります。未見の方はお控えください。

話の概要

本作は津軽半四郎が井伊家の屋敷に「切腹したいから庭先を貸してほしい」と訪ねてくるところから始まります。第一幕では井伊家家老(=つまり殿様以外の最高責任者)の斉藤勧解由が直々に説得にあたります。春先に同じように訪ねてきた千々岩求女(もとめ)が狂言切腹(※別名「死ぬ死ぬサギ」。武家が迷惑だから金をあげて追い払うのを見越したタカリ行為)をしかけてきたこと。そしてそんなタカリ行為を一度許すと貧乏浪人が押しかけてしまうことから、詰め寄って本当に切腹させたことを伝えます。半四郎は自分は本当に切腹しにきたのだと告げ、ついに庭先に通されます。最後の願いとして介錯人を指名する半四郎でしたが、指名した人物がことごとく病気で休んでるというのです。これに何か裏があると踏んだ勧解由が詰め寄ると、半四郎は昔話を始めます。そこで件の狂言切腹をした求女が半四郎の義理の息子であったことが明らかになります。

本作のキーワードは「武士の面目」です。このキーワードを巡り、求女と半四郎と勧解由と彦九郎がそれぞれの行動を起こしていきます。
ジャンルとしては私が勝手に呼んでいるところの「悪魔型サスペンス」です。まるで「エクソシスト」に出てくる悪魔パズズや「ダークナイト」のジョーカーのように、半四郎は「常識の中に潜む欺瞞」を暴いていきます。「武士の面目とはかくあるべし」という欺瞞を暴こうとする者、欺瞞やプライドをすてて実利を得ようとする者、プライドを捨てきれず欺瞞であることを露呈してしまう者、そしてその欺瞞を必死で守ろうとするもの。この4者を通して、はたして観客には何が見えてくるのか? それが本作の肝です。

オリジナル版との決定的な違い~リテラシーは時代で変わるという話~

本作とオリジナル版との違いをざっくりと言うならば、「ウェットなリメイク版」と「痛烈なオリジナル版」という所でしょうか。本作もオリジナル版も基本的なプロットは同じです。ですが、演出面や語り口ではかなり違いがあります。一番わかりやすいのは第一幕の求女の狂言切腹のエピソードです。オリジナル版では求女は追い詰められて一気に切腹を行いますが、本作では最後に往生際悪くお金をせびります。また本作では湯浴みを行う場面やお茶菓子が出てくる場面などが追加されています。

また本作で最も長い求女が狂言切腹に至るまでの回想では、猫のエピソードや求女と美穂がまんじゅうを分け合うエピソード、さらには半四郎の笠貼りにまつわるエピソードや金吾お食い初めなどなど、多くの「人間味あふれるエピソード」が追加されています。そして極めつけはラストの大立ち回りに関するある決定的な変更です。
これらはすべて求女や半四郎に人間味・生活感を付加するためのエピソードであり、より感情移入をしやすいようにするものです。
この変更は大変合点がいくもので必要なものだとは思います。しかし単純になりすぎている気がしますし、なによりオリジナル版にて痛烈に皮肉られて描かれる井伊家(=エリート)の「武士の面目」が本作ではかなりヌルくなっています。

前述の通りこの話は「武士の面目」がキーワードとなります。ところが非常に面倒なことに、本作の半四郎の主張は大変誤解されやすいものとなっています。というのも、半四郎の主張を理解するためにはそもそもの「武士とはかくあるべし」というリテラシーが大前提として観客に求められるからです。

求女は事情はどうあれ「死ぬ死ぬサギ」をやろうとした結果本当に切腹せざるを得なくなってしまったわけで、情状酌量の余地があるとはいえまったくほめられたことではありません。ですので、半四郎は求女の仇討ちに来たわけではありません。半四郎が訴えているのは、求女に「武士に二言はないのだから切腹すると言った以上は切腹しろ」と迫った井伊家に対して、「だったらおまえらも武士の情けをちょっとは見せたらどうだ。」というものであり、「そこまで言った以上はおまえらも武士の面目を死ぬ気で守ってるだろうな。」という問いかけです。「本当に切腹はしますから一日だけ待ってください」といった求女の申し出を逃げ口上と断じて信用しなかったり、見せしめにするために竹光で切腹させたり、それは「武士として立派な行い」とは到底言えないという価値観です。

このあたりの「武士の面目/武士とはかくあるべし」という前提がないと、本作は詐欺師の仇を討ちに来たハタ迷惑な逆ギレ貧乏浪人の話に見えてしまいます。

話を戻しますが、おそらく制作者側はこの誤解を恐れて、理屈はわからなくても感情的に半四郎側に感情移入できるように前述のようにエピソードを追加したのだと思われます。逆に言えば、オリジナル版の1962年の頃はそんな配慮をする必要もないほど「武士道精神」が常識として浸透していたわけで、なんか微妙~~~な気分にさせられます。まぁ時代劇が少なくなって久しいですし、今日も客席がお年寄りばっかりでしたから仕方がないのかもしれません。

そしてオリジナル版では一貫してこの欺瞞を滑稽なまでに取り繕う役である勧解由は、今回のリメイク版では時折同情を見せる「サラリーマン侍」になっています。こちらの変更は個人的にはオリジナル版よりも好きです。オリジナル版の当時はとことんまでエリート武士側の「体面を保つ」行為を皮肉に描いていたわけですが、今回は「とはいえエリート側にだって建前を守らなきゃいけない事情がある」という視点が追加されています。このあたりも時代性かなと思います。オリジナル版が公開された1962年は高度経済成長期のど真ん中であり、中流階級であり”普通であること”が美徳とされた時代です。だからエリートはまとめてみんな嫌いです(笑)。ところが今では家老の勧解由はエリートではなく「中間管理職」扱いされてるわけです(笑)。このあたりは映画の出来とは別に大変おもしろい所です。

【まとめ】

映画みたいな表現文化はたまに露骨に時代性がでてしまうことがあります。良い方向にせよ悪い方向にせよ、”今の観客”を意識する以上は当然っちゃあ当然のことです。そんな所に注目するとリメイク映画も結構楽しめるのではないでしょうか?

個人的にはオリジナル版の方が面白いし出来も良いと思いますが、でも本作もかなり善戦していると思います。たぶんオリジナル版を事前に見ていなければ、手放しで絶賛していたと思います。十分に自信をもってオススメできます。

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記事の評価
ゴーストライター

ゴーストライター

今日は一本です。ロマン・ポランスキーの陰謀サスペンス、

ゴーストライター」でした。

評価:(90/100点) – ポランスキーの真骨頂!


【あらすじ】

主人公はエージェントのリックの紹介で元イギリス首相・アダム=ラングの自伝のゴーストライターを引き受ける。前任者が酔って船から転落死してしまってリライトが中断してしまっているという。
自伝を書くためにアダムの滞在するアメリカのマーサズ・ヴィニヤード島を訪れた主人公だったが、今度は着いて早々にアダムが違法にスパイを米国に引き渡した嫌疑で国際裁判所に告発つされてしまう。果たして自伝は無事に完成するのだろうか?そして前任者・マイクは本当に事故死なのだろうか?

【三幕構成】

第一幕 -> 主人公の抜擢とヴィニヤード島への到着
※第1ターニングポイント -> ラングが国際裁判所に告発される
第二幕 -> 主人公の調査
※第2ターニングポイント -> 主人公がライカートと出会う
第三幕 -> 解決編


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【感想】

今日は一本、ロマン・ポランスキーの「ゴーストライター」を見てきました。昨年の東京国際映画祭でも上映していましたし、さらに昨年度ベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲っています。その評判からなのかポランスキーのネームバリューからなのか、かなりのお客さんが入っていました。テレビ映画からもどんどんサスペンス映画が減ってきていますが、やっぱり面白いサスペンスには需要があるんですね。大変嬉しい限りです。

わりと静かな陰謀サスペンス

本作はゴーストライターとして首相の近くで働くこととなった男が、前任者の謎の死を興味本位で調べて行くうちに恐るべき陰謀に巻き込まれてしまうという陰謀サスペンスです。あっけらかんとした元首相アダムにその愛人とおぼしき秘書のアメリア。それに不満で冷め切っているアダムの妻・ルース。そして政敵のライカート。たったこれだけの主要キャストながら、主人公が興味本位で首を突っ込んでしまったばっかりに発覚する事実はイングランドの政治に大きく関わる重要な陰謀です。
本作は起こることの重要性に反してとても静かに進んで行きます。主人公が実際にやることと言えば前任者の部屋で秘密の書類を見つけてしまうことと、そしてたまたま乗った前任者の車のカーナビでその足取りを追ってしまうことぐらいです。「介入型サスペンス」でありながらも 限りなく「巻こまれ型」に近い展開を見せます。
そうです。本作の素晴らしい所は、主人公はあくまでも一市民であり、終始ただのしがないゴーストライターなんです。何か驚異的な能力を発揮するわけでもなければ、特別な立場にあるわけでもありません。「たまたま」がどんどん重なっていって、 しまいには国家を揺るがす陰謀と向き合うこととなってしまいます。その過程の好奇心と戸惑いがあまりにも普通かつ下世話すぎて、どうしようもなく見ている人間の興味を惹きつけます。本当によくできたサスペンスです。

そもそもアダム・ラングってブレア元首相のパロディ、、、。

下世話という意味ではここを外すわけには行きません。本作のラングは実在のイギリス首相トニー・ブレアをパロっています。実際にブレアは「テロとの戦い」を前面に出して米国の完全追従を打ち出し当時は「ブッシュの飼い犬」とまで言われていました。イギリスの左翼に言わせればそれがロンドン同時爆破テロにつながって行くわけです。 ブレアの良し悪しは置いておくとしても、前首相のほとんど悪口に近いネタを 使って陰謀サスペンスを作れるというところが、イギリスの懐の深さというか、エンターテイメントのアコギなところです。まぁポランスキーは少女強姦罪で指名手配中で米国から34年間も逃亡してる身ですので、そりゃアメリカが嫌いなのは当然ですけど。

【まとめ】

大変愉快なサスペンス映画です。あくまでも無力な主人公を通じて、ちょっとした正義感と野次馬根性を出してしまったがばっかりに巻き込まれる大き過ぎる陰謀に終始ドキドキしっぱなしです。間違いなく映画界トップクラスのポランスキーの演出とユアン・マクレガーの良い人すぎる困り顔を是非是非劇場でご覧ください。万人に受ける必見の作品です。
オススメです!!!
いや~今週は超豊作です。

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記事の評価
インシディアス

インシディアス

2本目は今週の本命!!!

「インシディアス」を見ました。

評価:(90/100点) – キタコレ!! みんな大好きサム・ライミ・フォロワーの傑作!


【あらすじ】

ルネは3人の子供と夫とともに新しい家に引っ越してきた。ある日、長男のダルトンが屋根裏でハシゴから踏み外して頭を打ってしまう。あくる朝、なかなか起きてこないダルトンを起こそうと部屋へと向かった夫・ジョシュは、昏睡状態になったダルトンを見つける。しかし医者に診せても原因はわからない。身体的には全くの健康体でありながらも目を覚まさないダルトンに、一体何がおこってしまったのだろうか、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 新しい家と屋根裏部屋。
 ※第1ターニングポイント -> ダルトンが昏睡状態になる。
第2幕 -> 引っ越しとエリーゼの登場。
 ※第2ターニングポイント -> エリーゼとロレーヌの告白
第3幕 -> ジョシュの冒険


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【感想】

今日の2本目はジェームズ・ワンの最新作「インシディアス」です。高校生は1000円というキャンペーンをやっているからか、客席は半分ぐらいでほとんどが学生でした。上映中もずっと喋っててなんだかな~~と思ってたら、見事に3幕目に入ったところでサァーっと静かになりましたw まぁホラー映画は騒いでナンボですからオーライオーライ。終わった後も、エンドロール中にみんな逃げるように帰ってまして、本当にいいお客さん達でしたw

作品の概要

本作は監督ジェームズ・ワンで脚本リー・ワネルのSAWコンビに、プロデューサーで「パラノーマル・アクティビティ」のオーレン・ペリが連なっています。その関係で「SAW」+「パラノーマル・アクティビティ」という宣伝をされています。間違ってはいないのですが、どちらかというと本作は「パラノーマル・アクティビティ」+「スペル」です。
ルネが引っ越した新しい家では怪奇現象が起き、ついには長男が原因不明の昏睡状態に陥ってしまいます。徐々に息子の看護と怪奇現象で精神的に追いつめられていくルネは遂に引っ越しを決意しますが、それでも怪奇現象は収まらずに、、、、というよくありがちなホラー映画です。その雰囲気を「パラノーマル・アクティビティ」風の固定カメラ&グラグラの手持ちカメラで演出します。ですので、作品のルックスとしては大変「パラノーマル・アクティビティ」に似ています。
さらにこの演出を乗せる骨組みになっているのが個人的に2009年トップ映画のサム・ライミ「スペル(Drag Me to Hell)」です。イントロの少しイラストっぽくした風景とタイトルの出方。そして序盤から中盤にいたるまでのポルターガイストっぷり。しまいにはショーン・サン・デナばりに強烈なオカルトおばさんエリーゼの登場。そして最後につながる監督の「お土産を持って帰ってね!」という余計なお世話w 完全に骨格は「スペル」です。
そりゃあ次男と赤ちゃんはまったく関係ないですし、中盤以降は完全に居なかったことになってます。発明的な要素はほとんどゼロだといっても良いと思います。でもそんなのどうでもいいくらい本気でエンターテイメントしていて、そして本気で恐い良心的なホラー作品です。B級上等。ベタベタ上等。だって最高に楽しい「お化け屋敷」映画ですもの。畳みかけるように起こるイヤ~~な脅かし演出や、起こるべくして起こるお約束のようなショック演出。そしてしつこいくらいに繰り返される「スペル」でおなじみのバイオリンの不況和音。スタンダードな演出を真面目にやると本当に恐いっていうのが良く分かる作品です。

【まとめ】

日本的な心霊ホラーとアメリカン・モンスター・ホラーの幸せな出会いが楽しめる作品です。「居るはずの無いものがそこに居る」というJホラーと「モンスターが襲ってくる」というアメリカン・モンスター・ホラーの要素が見事に共存していて、ときには息をのみ、ときには「やっちまえ!」とアクション映画バリにテンションがあがるすごく良いバランスです。
これはですね、絶対に劇場で見た方が良いです。劇場の音響でないと、この大きい音と小さな音の差は分かりませんし、この迫力は出ません。
オススメかどうかって言われれば、それはもう絶対にオススメです!!!
行って来んさい!!! そして地獄を見よ!!! オススメです!!!!
ちなみに私は恐すぎて終盤ちょっと薄目がちでしたw

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