交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

木曜日、「交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦」を観てきてました。

評価:(5/100点) – 交渉しない交渉人とアクションのできないアクション・スター


【あらすじ】

宇佐木玲子は警視庁徳署捜査班の交渉人である。ある日スーパーの立てこもり事件で交渉に臨んだ宇佐木は、主犯・御堂啓一郎を逮捕するも共犯者を一名逃してしまう。その後羽田空港で見かけた元人質の木元祐介が気になり、急遽彼の搭乗機に飛び乗ってしまう。彼女の読み通り、木元はハイジャックを行った、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 立てこもり事件。
 ※第1ターニングポイント ->宇佐木の乗った飛行機がハイジャックされる。
第2幕 -> 飛行機の上でのやりとり
 ※第2ターニングポイント ->御堂が射殺される。
第3幕 -> 解決編


[スポンサーリンク]

【感想】

先日のブログではハルヒの後と書いたのですが、ハルヒが面白くてその後見た映画を忘れそうなので先に書いてしまおうと思います。一作目は木曜に見ました「交渉人 THE MOVIE」です。テレ朝ドラマの番外編ということですが、相変わらずテレビを一切見ない私は完全初見です。で、またこれがとにかく酷い酷い。な~んにも考えてないんじゃないかと思うほどのストーリー展開と、気持ち悪いくらい前面に出てくる政治思想。そしてそれらを腕っ節で解決しようとする強引な展開。
こういってはなんですが、昨年のアマルフィと勝負できるほどの珍作です。あの~そんな所でまでフジテレビとテレ朝でやり合わなくて良いんですが(笑
とにかく何が酷いって言ってもストーリー運びです。
これはもう順を追ってツッコミ入れるしかないので、沈まぬ太陽の時と同様にストーリーをほぼ全部書きます(笑
なので、ネタバレが嫌な方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ駆け込んでください!!!

お話しの展開

まず冒頭、ショッピングモールでの立てこもり事件が描かれます。犯人は3人、主犯の津川雅彦とポイズン反町と雑魚一名です。
ショッピングモールにたった3人で立てこもってるのに警察が防犯カメラを見れてないとか、周りを警官で取り囲んでるのに野次馬だらけで何故かテレ朝の中継車だけが唯一のマスコミで独占生中継とか(笑)。まぁいきなり酷いんですが、そこで津川が全共闘的なアジテーションを行います。曰く、「全部社会が悪い(笑)!」「頑張っている人が正当に評価される時代にしてみせる!(笑)」。共産党と社民党のポスターに普通に書いてあるキャッチコピーですが、これに林遣都がビビっと反応します。いや~青いね、青い。
そして暴走する雑魚一名。人質一人を盾に何故か警官の前に姿を現します。津川に窘められ引っ込むものの即粛正。これがいわゆる内ゲバですな。
銃声を聞いて突然強行突入を決めるSATも失笑ものですが、それ以上に失笑なのはショーガラスも吹っ飛ぶ程の大爆発なのに人質全員が無傷で飛び出してくるところ(笑)。
おまえら元気ですね。っていうか無傷って、、、。こいつらガムテープで目隠し&手縛りされてたんですが、どうしたんでしょう?
犯人グループはこの時点で津川とポイズンだけなので、順番にガムテープ外していったら数の論理で犯人側が負けちゃいます。多分魔法を使って一瞬で全員のガムテープを蒸発させたんでしょう(笑)。
さらに何故か人質に紛れ込んでパトカーに乗り込むポイズン。一人だけ口にガムテープの跡ないし人質名簿に無いんだから即逮捕でしょ(笑)。作り手から「警察なんてこんなもんでしょ」という侮りがビンビン伝わってきます。
その後、身柄を拘束されて外に連れ出される津川、、、、と思いきや拘束してねぇ~~~!!!(笑)。
周りから銃を突きつけられてるだけの津川が悠然と登場(失笑)。そんなわけあるか!!!津川が爆弾でもポケットに持ってたらどうすんだよ。銃奪われて暴れるかもしれないだろ!!!拘束しろ拘束。手錠はめとけ!
さらには何故か木元が近寄って会話。おまえそんなことしたら当然共犯者と疑われるぞ。っていうか喋らすなよ周りの警官!!!アホか!!!
華麗な捨て台詞を残す津川のシーンでこのシークエンスは終わります。ここまで開始約10分弱。すでに疲労困憊な私(笑)。
さてシークエンスが変わって、いきなり狭いアパートでシャツ一丁の林遣都とカップ麺をすする川野直樹が登場します。テレビには先日の事件。プラスで壊れたクーラー。おそらくこれがテレ朝的な社会の底辺描写です(笑)。まぁ年収1,000万越えのテレビマンや広告代理店が考える社会の底辺なんてこんなもんですよ。僕には普通の貧乏学生のルームシェアに見えますが(失笑)。
さらに変わって米倉と筧の乳繰り合いがあって(中略)、飛行機に乗り込む米倉。まずおまえチケットカウンターで警察手帳を見せただけで飛行機に乱入できるわけないだろ!
搭乗者名簿に載ってないという描写が出てくるので、その場でチケットを発行してもらってすらいない(笑)。しかも知ってる奴を見かけただけで押し入る無茶苦茶さ。ご都合主義って言うか強引すぎです。そして見事に筧の隣に偶然着席。思惑通りハイジャク発生。やったね!!!
ってまず、少なくとも二丁は拳銃を持ち込まれてるのね、この作品。あのね、、、世の中には手荷物検査っていうのがあってね、、、銃を分解っていったって細かい鉄板にまでバラせる訳じゃなくてね、、、ネジならともかく、銃口とかグリップとかは絶対に手荷物検査で引っかかるのよね、、、、。木元兄弟が使う拳銃は便所から降りた貨物室に仕込んであるようですが、もう何がなにやら???この脚本家ふざけてるんでしょうか???
コックピットが制圧され副操縦士が撃たれますが、ちょっと待て!!! 操縦室で銃をぶっ放すとか正気の沙汰とは思えません!!!しかも至近距離からの発砲(笑)
弾が貫通して計器を壊したら即墜落だし、ガラスが割れでもしたら気圧差で酸欠になってパイロット窒息→墜落ですよ。飛行機内で発砲するってのは自殺に等しいんです。絶対にやりません。ハイジャックするなら刃物の凶器が必須です。
ここからは怒濤の展開で雲の上での米倉涼子ワンマンライブが始まります。衛星携帯が欲しくてコスプレして操縦席に向かう米倉ですが、まず制服手に入れて着替えている間中も犯人に気付かれないというスニーキング能力の高さ。これならポイズンと木元ブラザーズを実力で制圧した方が早いのでは?
さらに便所に隠れて衛星携帯で地上とコンタクトをとるんですが、米倉さん声出し過ぎ(笑)。飛行機の便所のドアなんて薄いですよ。木元もドンドン扉を叩く前に耳をつけろ!!!ようやっと米倉のアクションが入りまして、機内ではポイズンがネズミ(笑)の存在に気付きます。ネズミってセンスもどうかと思いますが、ここでもやっぱり発砲があってついに米倉とフェイストゥフェイスが実現します。ところがここで第4の男が登場!!!政府がついに犯人の要求を飲んで・御堂啓一郎釈放→射殺のコンボが決まったあと、木元ブラザーズ兄が殺され、ポイズンがエスケープして、なんだかんだがあって米倉がついに操縦桿を握ります!!!
キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
もはや無茶苦茶です。ここまで交渉要素ゼロ。あれ?タイトルって「交渉人 THE MOVIE」だったんじゃなかっt(以下略
もうなんか色々あるんで良くわかんないんですが万能なんですよ米倉さんは!!! 目をずっと見開いてるしアイシャドウが濃すぎて気持ち悪いですが、でも万能なんです。

【まとめ】

面倒くさくなって中盤以降投げやりにしましたが、なんせ酷いんですよ。怖い物見たさで行くのは良いですが、私からアドバイスがあるとすれば「やめた方が良いですよ」ってことです。止めはしませんが1,000円でももったいないです。あとこれだけは書かねばならないでしょう。本作で伝わってくる政治主張です。
 一つ、政治家は皆腐っておる!!!特にアメリカのシンパは最低だ!!!
 一つ、若者にフリーターが多いのは社会が悪い!!!格差社会だ!!!
 一つ、警官なんて皆適当だ!!!テロリストのが格好良いぞ!!!
 一つ、マーク・チャップマンは国に守られている!!!
どうかしてるぜ、、、全く。

[スポンサーリンク]
記事の評価
涼宮某の某

涼宮某の某

は今週月曜と水曜にレイトショーで「涼宮ハルヒの消失」を見てきました。面白かったんですが、原作はおろかアニメも未見で一切の知識が無く見たものですからちょっと感想を書きづらくて保留にしてます。今日アニメイトでとりあえず原作四巻まで買ってきたので、今一気に読んでますが、なかなかどうして結構特殊です。
普段の仕事柄わりとアニメや漫画のサンプル品をもらうんですが、いかんせん山積みで放置してるもんで(汗
ラノベ読むのはたぶん「住めば都のコスモス荘」以来なので6年ぶりぐらい(笑
最初は一冊2時間ぐらいで、20時間あれば全巻読めると踏んでたんですが、もしかしたら「~消失」の感想を書くのは来週になるかもしれません。
公開される映画をしらみつぶしに見るというのは、こういう副産物をもたらすんですね。原作も結構面白いんで苦ではないです。
そんなわけで、「交渉人 the Movie」の悪口はたぶんその後になりそうです。いや~酷かった[emoji:i-229]

[スポンサーリンク]
記事の評価
50歳の恋愛白書

50歳の恋愛白書

今日は「50歳の恋愛白書」を観てきました。

評価:(65/100点) – まぁ良いとは思うんですが、邦題が、、。


【あらすじ】

ピッパ・リーと夫のハーブはコネチカットの老人村に引っ越してきた。ここは老人達が余生を静かに過ごす街。しかし年上の夫とは違い、ピッパはまだ若い。彼女はもてあました時間で陶芸教室に通い始めるが、不安から夢遊病を発症する、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

本作は昨年の夏映画でしたが、ようやく日本に来ました。相変わらずのギャガ・クオリティで意味が良く分からない邦題がつけられてしまっています。原題は「The Private Lives of Pippa Lee」。そのまんま「ピッパ・リーのプライベートな日々」で良いと思うんですが、、、「60歳のラブレター」に掛けたんでしょうか?
話の内容は原題のとおり、ピッパ・リーの不安や不満と彼女の来歴を通した自己救済の話です。
彼女が嫌っていたはずの母親にどんどん似てきてしまう無常感と、あるトラウマによって自己抑圧の日々を自分に科す贖罪と義務の日々。そして唐突に訪れる贖罪からの解放。本来悲劇的であるはずにもかかわらず同時に救済であるというアンビバレンツな状況に対し、子供達の口あんぐりな感じを放って置いて青春に戻るピッパの笑顔。かなり悲惨でドロドロな話ではあるんですが、キアヌ・リーブスのちょっと間抜けっぽい雰囲気とロビン・ライト・ペンの年齢を感じさせないイケイケ感が上手く混ざり合って、なんかハッピーな気持ちにさせてくれます。
そこそこの規模で上映して居ますので、機会がありましたら見てみると如何でしょうか?
感情移入してどうこうというのは無かったですが、”強い女性好き”にはジャストフィットな作品だと思います。

[スポンサーリンク]
記事の評価
抱擁のかけら

抱擁のかけら

2本目はスペイン映画「抱擁のかけら」です。

評価:(80/100点) – サスペンスのような人間ドラマ。


【あらすじ】

映画脚本家ハリー・ケインは盲目である。ある日彼の元に「ライ・X」を名乗る自称映画監督が現れる。ライ・Xの持ち込んだ企画を聞いて、ハリーは彼がかつての知り合いにして亡きエルネスト・マルテルの息子だと気づく。彼との関係を知りたがる助手・ディエゴに、ハリーは昔の話を語り始める。それは一人の女性を巡るハリーとエルネストの確執の物語だった、、、。


[スポンサーリンク]

【感想】

ペドロ・アルモドバル作品を見るのは「ボルベール<帰郷>」以来です。ボルベールも「親子ってやっぱり似るのね。」という都市伝説みたいな感慨とサスペンスを上手く織り交ぜた傑作でした。ボルベール同様に本作もペネロペ・クルスとのコンビで人間ドラマを描きます。
本作は、現在とハリーの回想を行き来することで物語りが進んでいきます。実際に事件が起きたのは過去なのですが、そこに上手く現在のイベントが挟まることで物語が進行していきます。非常に上手い脚本です。
要は愛人を奪った男と大富豪の確執とその狂気の物語でして、話自体はそれこそ昼ドラかと思うほどドロドロでベタです。しかしそこはアルモドバル監督。上手い具合におしゃれ雰囲気で隠してきます。ライ・Xの目的は何なのか?彼が再三口にする「僕の撮ったドキュメンタリー」とは何なのか?そして、何故彼は今盲目でレネと暮らしていないのか?その全てがじんわりと分かってきた段階で、本作が屈折したパーソナリティ達の織りなす人間臭いドラマであることが分かります。
そして終盤、とても面白いメッセージが発信されます。それは「映画監督にとって作品はもっとも大事なもの」だということです。ハリーの個人的な感傷も含めて、やはり映画作品は監督が思い入れてナンボだということです。ハリーは、コメディとしてもレネのアイドル映画としても、そのクオリティを再構築していきます、この過程とビーチサイドの悲惨なロマンスで、十分に入場料の元は取れます。
自身を持ってオススメできる傑作だと思います。
ちなみに、ラスト付近で中途半端な尺だけ見せられる「謎の鞄と女たち」はアルモドバル監督自身の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」のセルフパロディです。レンタル屋にも普通に置いてありますので、気になった方は是非観てみてください。まだアントニオ・バンデラスがアルモドバルとコンビを組んで居たときのコメディ作品で、アルモドバルがゲイだったりする関係で「アレな関係では?」とか色々いわれてた作品です。

[スポンサーリンク]
記事の評価
インビクタス‐負けざる者たち‐

インビクタス‐負けざる者たち‐

本日も二本立てです。一本目は「インビクタス‐負けざる者たち‐」。

評価:(65/100点) – 人間ドラマはなかなか。 試合はちょっと、、、。


【あらすじ】

ネルソン・マンデラはロペン島の刑務所から釈放されANC議長につく。その勢いのまま大統領に就任したマンデラだが、黒人と白人の対立構造は変わらなかった。ANCが政権を執ったとはいえ経済力や学力は白人の方が圧倒的に上である以上、国家の分裂は南アフリカの黒人にとっても得策ではない。そこでマンデラは白人達のスポーツであったラグビーを通じて、黒人達の愛国心を喚起しようとする。


[スポンサーリンク]

【感想】

昨年は「チェンジリング」と「グラン・トリノ」で未だ衰えない構成力を披露してくれたクリント・イーストウッド監督の最新作、「インビクタス」です。何はともあれイーストウッドの新作が出たら映画館に駆けつけるのは映画ファンの義務です。ということで、私もいそいそと出かけましたが、、、観客が入ってない!
300名のキャパで100名も居なかったでしょうか。マット・デイモンなのに、、、。スポーツ物なのに、、、。

ストーリー部分

本作はマンデラ役のモーガン・フリーマンのほぼ一人舞台です。その台詞もほとんどがアジテーションのようで、タクシー内での秘書との駄話しですらどんどん演説調になっていきます。これが結構くどくてどうかなと思ってしまいます。
もちろん話の根幹になるマンデラの考えはかなりのものですし、マンデラ自身には大いに頭が下がります。政治犯として27年も刑務所に入れられた上で、それでもなお白人と黒人の共生というところに向かう達観には恐怖すら覚えます。実際のマンデラの人柄に詳しい訳ではないので何とも言えませんが、本作では極度の絶望の果てに解脱してしまった聖人のように見えます。それでいて自身の家族については急に人間臭い面を見せるなど、大変魅力的に描かれます。
一方、本作のダブル主演といっても過言ではないマット・デイモン演ずるピナールについては正直なところだいぶ陰が薄いです。マンデラの信奉者として以外にはキャプテンとしての能力やチームでの立ち位置はあまり描かれません。あくまでも観客の感情移入先として、「マンデラを仰ぎ見る好青年」としての役割を果たします。実際に本作が微妙な印象になる原因は、多分にラグビーの描き方です。
スプリングボクスはアパルトヘイトの関係で国際試合に出られなかっただけで、90年代前半の時点でも十分に強豪でした。しかし本作の序盤であたかも弱小チームであるように描かれます。「評論家の予想では良くて準決勝どまりです」みたいなセリフ回しがあったりして「そうか、弱いのか」と一瞬思ってしまうんですが、でも当時は優勝候補だったんです。あまりにも無理に「弱小国が連帯感を持ってついに優勝!」という物語に当てはめようとしたために、むしろ何で強くなったかが良く分からないという弊害が生まれてしまいました。これでスプリングボクスの成長物語りも併せられればものすごい傑作だったと思うのですが、ラグビーの使い方が少し中途半端になってしまった印象を受けます。

【まとめ】

さすがはイーストウッドという感じで、凄くデリケートな題材を上手く軟着陸させています。もちろんいくらでも深読みは出来ます。イーストウッド自身も共和党員ですし、「なんでもかんでもチェンジすることが良いわけではない」と意味深なことを言いますし(笑)。
傑作というほどではありませんが、良作なのは間違いありません。
オススメはオススメなんですが、できればyoutubeで95年のワールドカップ決勝の映像を見ておいた方が良いかもしれません。再現性の高さに驚くこと請け合いです。

[スポンサーリンク]
記事の評価
おとうと

おとうと

本日は「おとうと」を観てきました。

評価:(85/100点) – 大満足です。


【あらすじ】

吟子は夫に先立たれ娘と姑の3人暮らしで薬局を営んでいた。娘の結婚式当日に音信不通だった吟子の弟・鉄郎がひょっこりと現れるが、よりにもよって泥酔して披露宴をメチャクチャにしてしまう。このことがきっかけで吟子のもう一人の弟・庄平は鉄郎に絶縁を宣言する。しかし吟子はどうしても縁を切れない。
暫く経って、大阪より鉄郎の恋人が吟子の元を訪れる。彼女は、鉄郎に130万円を貸したまま彼が音信不通になったと告げる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 小春の結婚
 ※第1ターニングポイント -> 小春の披露宴
第2幕 -> 小春の離婚と鉄郎の失踪。
 ※第2ターニングポイント ->吟子が鉄郎に絶縁を告げる。
第3幕 -> 鉄郎の最期。


[スポンサーリンク]

【感想】

見終わっての率直な感想は、「あ~~~~映画見た。」という満足感です。さすが山田洋次。中居正広やラサール石井の”ノイズ”が気にならないほど、とても良くできた映画です。本作には最近のエンターテイメント映画にありがちなドラマチックな展開や社会的メッセージなんかはありません。むしろヨーロッパのアート系映画に近い構造をしています。でも、実際にはそれこそが日本映画なんです。日本にだって昔はこういう良い作品があって賑わっていたんです。日本市場は今やハリウッドの映画産業に飲み込まれてしまっていますが、それでもまだ山田洋次監督のような映画人にきちんとバジェットが渡る環境があることは大変喜ばしいです。

物語の肝

本作には際だったドラマがありません。ログラインで表すならば、「ある女にはどうしようもない弟がいて彼が死んだ。」と超簡潔に終わってしまいます。要は展開しないわけです。ですが、それこそが映画の醍醐味だと個人的には思っています。ハリウッド・エンタメ映画も好きなんですが、やっぱり「いま私は映画を見た」と満腹感があるのは、この種の映画なんです。
劇中での鉄郎は考え得る中で最悪レベルの「困った家族」です。そして頭がイカレてるかと思うほど馬鹿で人間のクズです。だけれども家族は家族、吟子にとっては紛れもなく弟です。尻拭いをしてやってるのに調子の良いことばっかり言ってフラフラしているダメ男。そんな奴でも、やっぱり家族なら死ぬ間際には世話をしてやりたくなりますし心配だってします。吟子があまりにも聖人すぎると思う方もいらっしゃるかも知れませんが、家族なんて実際はそんな物なのだと思います。というか思えてきます。
それを表すのに「家族の絆」みたいな安っぽい表現は使いません。小春と旦那のイビつな関係、吟子と姑の関係、吟子と鉄郎の関係、そして吟子と小春の関係。利害を超えて憎まれ口を叩きながらも愛し合う家族が居れば、お互い支え合う親子が居て、その一方で合理的な会話以外を否定する夫婦も居ます。そのいろいろなシチュエーションを観客に見せた上で、どれが正解とメッセージを送る事も無く表現していく山田洋次監督の演出力。ただただ拍手をお送りさせていただきます。本当に素晴らしい作品です。

少々気になる点

とはいえ、気になる点が無いわけではありません。最も大きいノイズは吉永小百合さんの演技です。
断っておきますが私は女優・吉永小百合の大ファンです。だからこそ今回の棒読みで滑舌良くハキハキした文語調の台詞回しは、ちょっと信じられないレベルです。”あの”吉永小百合さんにしては酷すぎます。それと反するかのように蒼井優と鶴瓶師匠の演技は冴え渡っています。それだけに果たして演出が悪いとも思えず、もしや吉永さんが衰えてしまったのではと恐れています。映画の出演数を絞っているようですので、次の作品までの時間で修正できると信じています。

【まとめ】

「山田洋次約10年ぶりの現代劇」の煽りはまったく嘘ではありません。「博報堂DYと朝日が絡んでるから糞映画だ」と判断して観に行かないのは賢明ではありません。是非、劇場で見てみてください。
この種の映画は、観客の感想=観客の自己分析につながっていきます。山田監督が作中で意見を明確に述べていないため、観客は自分の体験や過去に読んだ物語りからモロに影響を受けます。ですので作品は自身の鏡、この作品を語るということは自分をさらけ出すことにつながります。終わったあとの満足度と友人と意見を言う材料になる作品です。
だから、悪い事は言いませんので映画館に見に行っておくべきです。オススメです!!!

[スポンサーリンク]
記事の評価
ボーイズ・オン・ザ・ラン

ボーイズ・オン・ザ・ラン

ボーイズ・オン・ザ・ラン」を観てみました。

評価:(80/100点) – 不覚にも泣きました。


【あらすじ】

田西敏行は冴えない営業マンである。そんな彼も、会社の飲み会で植村ちはると意気投合したことから急接近、お互い好き合うも中々発展せずにいた。ある日ちはるが熱で倒れる。看病に向かった田西だが、そこでちはるの隣人にして姉御肌のしほに誘惑されてしまう。断るもののちはるに誤解され険悪になってしまう。その後、ちはるはライバル会社の営業マンとつきあい始めるが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ちはるとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> ちはると険悪になる。
第2幕 -> 田西とちはると青山。
 ※第2ターニングポイント ->ちはるの中絶手術に長谷川茜が来る。
第3幕 -> 青山との決闘。


[スポンサーリンク]

【感想】

素晴らしい作品でした。原作漫画は未読でしてあんまり映画も注目してませんでした。ところが、たまたま時間の都合で入ってみたところどうしてこれが拾い物でした。とにかくアホでバカでどうしようも無い男がそれでも不器用に生きていく様子が下品な下ネタとストレートなストーリーで語られます。

これ、ある意味では「(500)日のサマー」と似た構成でもあります。簡単に言ってしまえば、ウブで不器用な男が恋愛巧者の女に捕まって振り回される話です。しかし決定的に違うのは「(500)日のサマー」には救いがある(付き合って一時とはいえ幸せになる。そして恋に踏み出せるようになる。)のに対して、本作は救いがほとんどなく”苦さ”だけで出来ています。

田西はせっかく仲良くなれるはずだったちはるに誤解され完全に嫌われてしまいますが、不器用なので上手くリカバリーが出来ません。けれども必死に彼女のために一途に尽くそうとします。その一途さの向こうで、ちはるはことごとく自分勝手な女になっていきます。なんでもかんでも田西のせいにして、田西に頼りながらも他の男の事ばかり考えています。本当に腹が立つぐらい嫌な女です。それでも田西にとっては惚れた女であり彼の全てです。「僕が一生懸命になれるのは君のことだけだ」という田西の言葉の通りに、彼は彼女を最優先にして支えていきます。この健気さとラストに来る恋の盲目から醒める瞬間、それこそが本作を一級の「青春映画」へと押し上げています。

「(500)日のサマー」のトムよりもこちらに感情移入してしまうところが私のダメさ加減を如実に表していますが(笑)、絶対にオススメ出来る作品です! ごちゃごちゃ言うのも野暮なのでとりあえず見に行ってください。こんなにダメで、こんなに悲惨で、だけどこんなに清々しくなれる青春映画はなかなかありません。まさにボーイズ・オン・ザ・ラン。とりあえず溢れるリビドーのままに突っ走れってことですよ。オススメです!!!

余談ですが、松田龍平のアクションシーンが父親そっくりでびっくりしました。蘇える金狼のころの優作が好きなひとにもオススメです。もしかして翔太も、、、と思って「LIAR GAME The final Stage」とかいう100%核地雷を大股で踏みにいきそうになります(笑)。

[スポンサーリンク]
記事の評価
ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

日曜日に「ゴールデンスランバー」を観てきました。

1月最後の映画です。

評価:(55/100点) – 伏線という名の後出しじゃんけん祭り。


【あらすじ】

青柳雅春はお人好しの宅配配達員である。ある日学生時代のサークル仲間・森田に釣りに誘われた青柳は、彼に睡眠薬を飲まされて車中で寝てしまう。目が覚めると、凱旋パレード中の金田首相がすぐ後ろの大通りを通っていた。そして爆殺される首相。車ごと爆死した森田をのこしてその場から逃亡する青柳だったが、首相暗殺容疑で指名手配されてしまう、、、。

[スポンサーリンク]

【感想】

え~伊坂幸太郎原作シリーズの最新作、ゴールデンスランバーです。笑う警官を観たときに初めて予告編が流れまして、「同じ話じゃん」と思ったのを強く覚えています。
本作では、陰謀に巻き込まれて首相暗殺の濡れ衣を着せられる青柳を主役に、かつての仲良しサークル仲間4人組の活躍を描きます。
が、、、全編通じて流れるジャイブ調のバックミュージックや伏線に巧妙に見せかけた時系列シャッフル、そして無内容なのにスカした演出など、笑う警官の角川春樹を連想させる作品です。
とはいえ本作はまったく駄作というわけではないと思います、頭を空っぽにして観れば面白いことは面白いですし、雰囲気に流されれば割と良さゲな所に着地します。なので、本作を絶賛する人が居ても不思議ではないと思います。ただ、、、小手先で撮ってる感じが前面に出ていてちょっとどうかと思ったりもします。

本作の気になる点

本作で気になったのは、後出しじゃんけんの多さとディティールの甘さです。
特に後出しじゃんけんについてですが、これは伏線に見せかけているだけに結構タチが悪いと思います。
私が観ていた限り、伏線として機能していたのはアイドルの整形疑惑の部分と花火のバイトをしていたところぐらいです。そのほかはほとんど後出しです。というのも、伏線は「それ単体でも物語上機能するが、後から別の機能を追加で与えられる」ことです。例えば、冒頭のプレタイトルシーン(デパートの親子)は、後からさも伏線であるかのように繰り返されますが、単なる時系列シャッフルです。また冒頭のシーンで娘が一瞬居なくなったことに意味はありません。つまり「単体では意味が無いことにあとから意味が追加された」という事です。同様に下水道の話も書き初めの話も単なる後出しです。しかし花火と整形にはその時々に意味があるため伏線たり得ています。
こういった後出しじゃんけんの多さは普段映画をあまり観ない人には「よく出来た脚本」と誤解されがちです。作り手もそれを狙っているのですが、しかし実際には全部のストーリーを決めた後に要素をばらして前半に配置しているだけなので上手いわけではありません。
伏線として機能していない物を山盛りにするあたり、もしかすると実際に脚本を書かれた方はこれでOKとおもっているのかなぁと、ちょっと心配になってきてしまいます。
ディティールについてはやはりボロボロです。なぜ晴子がカローラのバッテリを取り替えるかの根拠がないですし、なんでそのタイミングで廃車の所に青柳が来るかも分かりません。極端な話、ほとんど全ての登場人物達がエスパーではないかと思うほど、適切な場所に適格なタイミングで意味もなく偶然現れます。
また公園のシークエンスも苦笑いです。生中継のテレビ映像に写っているのに何故か警官だけが見失いますし、晴子が花火をセットするのが早すぎます。物語はまったく解決しませんし、あまつさえ何が起こったかもロクに説明されません。かと思えば検問の前で明らかに不自然に左折した車をスルーしたり、車検を通ってない車が前を通ってもスルーです。カローラだってあんなバッテリー変えただけでは動くはずはありません、最低限タイヤも変えないと、、、。そのほかにも挙げればきりがないくらい不可解な点は多々あります。ご都合主義を連発しまくってしまったがために、単にフィクションレベルが下がって(=嘘くさくなって)しまっています。

【まとめ】

上にも書きましたが、決してダメダメな作品ではありません。よく言えば「作家性の強い」、悪く言えば「オッサン臭いすかしたダサさ」のある作品ですがボケ~っと観ていればそれなりに楽しめます。ポップコーン映画という点では十分にオススメ出来ます!

[スポンサーリンク]
記事の評価