今日の二本目は
「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。
評価:
– 秋だ! 一番! ホリプロ祭り!!!【あらすじ】
フリーターの結城はコンビニで求人雑誌を立ち読みしている最中に女性に声を掛けられバイトを紹介される。それは「ある心理的な実験」に7日間参加するだけで時給11万2000円という高額な賃金を得られるというものであった。参加者10名を乗せたリムジンは山奥の建物へと着く。そこには10体のインディアン人形と豪華な夕食が用意されていた、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 10名の紹介と暗鬼館。
※第1ターニングポイント -> 西野が殺される。
第2幕 -> ゲーム。
※第2ターニングポイント -> 残り三人になる。
第3幕 -> 結末。
【感想】
本日の2本目は「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」です。若年層とカップルを中心にかなり混雑していました。400人規模の箱でほとんど満席状態は久しぶりです。本作は藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみというホリプロの主力3名を皮切りに、役者は全てホリプロ所属となっています。そして開始早々に「日テレ」のロゴマークに続いてズッコケる「ホリプロ50周年記念作品」の文字。
そう、本作はテレビ屋映画ならぬ「事務所屋映画」です!!!!
ま、原作が事務所と関係ないだけ「瞬 またたき」よりはマシかもしれませんけど(苦笑)、、、。
え~~~いつもの事ですが、ミステリーとはいえツッコミ所が有り余っているため、今回もネタバレを多数含みます。未見の方で見るつもりがある方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ行って地獄を見て下さいw 既にご覧の方、未見だけど見る気が無い方のみ、少々お付き合い下さいますようお願いいたします。
概要とルールのおさらい。
本作はまたまた日本産のソリッドシチュエーションスリラーです。監督は中田秀夫。Jホラーの名監督ですが、近年はキャリアプランを考えてなのかテレビ屋映画にシフトして行っています。
ストーリー自体はソリッドシチュエーションスリラーの典型です。訳ありの数名が密閉空間に閉じ込められ、そこでゲームを通じてサバイバルしていきます。当ブログでは耳タコで書いていますが、ソリッドシチュエーションスリラーはゲームの面白さが全てです。では、本作のゲームのルールは何でしょう?
1) 勝利条件は「1週間生き残る事」または「最後の2人になる事」。
2) 夜になったら部屋に籠もる事。廊下にはガードが巡回し、見つかると殺される。
3) 部屋にはミステリーの名作にちなんだ凶器が一個づつ準備され、使用は自由。
4) 部屋には鍵がかからない。
5) 「事件」がおきたら「解決」をすること。「解決者」は推理を皆の前で発表し、推理は多数決で真贋が決定される。
6) 推理が肯定された探偵にはボーナスが付き、報酬2倍。
7) 推理と多数決により犯人に指名された人間は隔離部屋に投獄される。
8) 殺人を犯した者は報酬2倍。殺人の被害者も報酬2倍。
9) 報酬のベースは1881万6000円。
とりあえず以上でしょうか? かなり原作から変更・削除をされています。
本作のまったく駄目な所。
さて、上記のルールを見てこのジャンルに詳しいかたは嫌な予感がすると思いますw そしてその予感は当たっているでしょう。
つまり、「殺人に抑止力が無い」。これが本作の一番がっかりする所です。本作では一人殺す度に報酬が2倍になります。そして推理は多数決で決まります。なので、開始早々に8人を殺せば終わりです。そうすると報酬48億になりますw
しかし、本作では殺人に抑止力が無いにも関わらず、殺人がたったの3件しか起こりません。驚くべきモラリティの水準ですw ソリッドシチュエーションに必須の「人間の本質としての暴力性の暴露」が一切ありません。なので、まずはスリラーとしてのワクワクがありません。これが致命的です。
そしてがっかりポイントその2は多数決のゲーム性です。これまた驚くべき事に、今回多数決はたったの2回しか行われず、なんと派閥に別れることもありません。しかも後半は多数決が行われること無しに、藤原竜也に勝手に探偵ボーナスがじゃんじゃん付きます。もはやルールすら無視w 意図は分かりませんが、本来この”多数決”をルールに盛り込んだという事は、つまり恣意的に誰かをハメることが出来るということなんです。なので、このルールが説明された時には、私は当然「これは派閥に別れて多数決を奪い合うゲームだ」と思ったんです。だって派閥を作れば「敵対組の一人を殺して」「多数決で敵対組の一人を監獄に送れ」ば、一気に脱落させられるんです。でもそうはなりません。それどころかまともな推理は一回もありません。全部感情論だけの多数決です。なんじゃそれ。
そしてこれがダメ押しですが、そもそも本作のゲームの運営事情が酷すぎます。このゲームは安東の推理によると約2000万人の視聴者がいる会員制のwebコンテンツです。つまり日本人の5人に1人、世界中と考えてもビートルズの「赤盤」「青盤」やマドンナの「LIKE A VIRGIN」レベルのスマッシュヒットです。すっげぇwww
作中の描写でも、渋谷TSUTAYA2階のスタバで携帯を使って見ている若者・サラリーマンが映ります。そもそもスナッフフィルムがそんなメジャーになるわけないですし、よしんばこの世界では日本が「ヒャッハー!!!!」な無法地帯だったとしても、それを参加者達が一人も知らないのは明らかに変です。それこそイギリスのバラエティ番組「サバイバー」以上にメジャーなコンテンツのはずです。
また、これはカイジでも思ったことですが、そもそもこういう「人死に上等」なゲームの主催者が、生き残った人間にお金を渡して帰すんでしょうか? 殺して終わりじゃないかって気がすごいします。
本作も駄目なソリッドシチュエーションスリラーのご多分に漏れず、結局最後は参加者の一人が凶暴化して襲ってくる安い展開に落ち着きます。そしてその襲い方も驚異的なヌルさです。なにせ建物内には、「釘打ち機」「拳銃」「ボウガン」「斧」「ナイフ」と殺傷力抜群なアイテムが転がっています。しかしラスボスが使うのはアイスピックw なぜそのチョイスなのか首をひねらずには居られません。
結局、本作はソリッドシチュエーションの見た目だけを持ってきただけです。「なぜソリッドシチュエーションスリラーが面白いのか」という根本的な分析が全く出来ていません。結果として、「ホリプロ大感謝祭」という単語が透けて見えるようなお遊戯大会になってしまっています。しかも特にメイン級の役者陣が北大路欣也以外はほぼ全滅で、ホリプロのプロモーションとしても失敗しています。
これを見た後だと、ホリプロは50周年を迎えてもうダメなんじゃないかとすら思えますw まぁ伊集院光さんが居る限りは支持し続けますけど(苦笑)。
【まとめ】
またもや日本産のソリッドシチュエーションスリラーの駄目な面が全部凝縮された凄い作品が出てきてしまいました。俳優ファンの方にもオススメしづらいレベルになっていますが、片平なぎさのファンであればかろうじて楽しめるかも知れません。おそらく本作で得をしているのは片平さんだけです。
綾瀬はるかを見ているだけで乗り切れないこともないですが、それでもあまりに酷すぎる話のずさんさが気になって全然乗れませんでした。開始40分目くらいの最初の多数決で心がぼっきり逝きましたw
まったく心がこもりませんが(苦笑)、でもきっと楽しめる人もいると思うので確かめる意味でもオススメです(棒読み)。