KG カラテガール

KG カラテガール

今日の3本目は

「KG カラテガール」です。

評価:(30/100点) – 不満ばっかりなので次作に期待!


【あらすじ】

伝説の空手家・紅宗次郎の末裔・紅達也は謎の男達の道場破りに会い、次女・菜月を攫われ自身も殺されてしまう。なんとか生き延びた長女の彩夏は池上家にやっかいになり、池上彩夏として紅家に伝わる宗次郎の黒帯を守り続ける。
それから数年後、高校生になった彩夏はバイト先でひったくり犯を撃退したことで「スーパー空手少女」としてニュースになってしまう。彩夏が生き延びていることを知った謎の集団のボス・田川は、彩夏へ刺客を放つ、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 彩夏がひったくり犯を撃退し有名になる。
 ※第1ターニングポイント -> 彩夏が二人組に襲われる。
第2幕 -> 彩夏とサクラ。
 ※第2ターニングポイント -> サクラが田川の人質となる。
第3幕 -> 菜月の救出。


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【感想】

本日の三本目は「KG カラテガール」です。T-JOY作品ですので、自社のバルト9とブルグ13のみでの公開となります。初日のレイトショーですがまぁまぁ人が入っていました。主演はハイキックガールの武田梨奈。監督はハイキック~で脚本だった木村好克。アクション監督で西冬彦。キャストも殺陣は大志塾門下が出演で、ほぼハイキックガールの陣容そのままです。続編ではないですが、西冬彦組の一連のカラテ作品の最新作です。
結論から言ってしまいますと、本作はダメダメですw これより書くことはダメ出しばっかりになるとおもいますが、でもこれは期待の裏返しです。間違いなく武田梨奈は日本アクション界の期待の星です。可愛いですし、十分に動けます。そしてきっちりエンディングを歌うなどアイドルとしての佇まいもできています。だから、是非、この素材をフル活用して素晴らしい作品を撮って欲しいんです。今から書くことはアクション馬鹿からの提言というか(苦笑)、アクション映画の面白さの肝の部分になります。

提言その1: アクションでキャラクターを語れ!!!

本作で一番の肝はここになります。アクションはただ戦えばいいというわけではありません。アクションはキャラクター描写の一種であり、立派な演技なんです。例えば先日見たドニー・イェンの「イップマン2」を例に見てみましょう。
イップマンは詠春拳を使います。詠春拳は守りのカンフーであり、空手の「三戦立ち」のように内股気味で正面に構えます。攻撃は適切な時に適切なタイミングで最小限のカウンターを入れます。技は拳が中心となり、足技は相手の動きを制するため、遠い間合いから牽制したり相手の攻撃をかいくぐる際に使用します。この一連の型は、イップマンの平和主義と直結しています。イップマンは決して自分から手を出す人間ではなく、普段は至って温厚で低姿勢です。詠春拳はこのイップマンの性格・理念を体現しています。
このように、アクションとはその動きでキャラクターの性格や理念を表現するものです。力任せの攻撃を行う人間なのか、それとも守りを中心にカウンターで制するのか。足技を多用するのか、拳を多用するのか。正々堂々とした攻撃を使うのか、卑怯な手段を使うのか。とにかく勝利にこだわるのか、勝利よりも礼節を重んじるのか。その動き全てがキャラクターを表さなければいけません。「この人物ならばこういう動きをするはずだ」という物であり、逆に「この動きをするのだからこういう人物に違いない」という物です。
本作では、アクションが一切キャラクターを表しません。敵も味方も似たように飛び跳ねていますし、似たように踏み込んできます。これは本当に残念です。キャラクターを表さないアクションは、もはやただの「演舞」です。これでは例え動きが良くても映画作品にはなりません。

提言その2: アクションでストーリーを語れ!!!

前項にも通じますが、アクションはキャラクターだけでなくストーリーも語る物です。
本作では田川は傭兵集団のボスで「宗次郎の黒帯」をブランドに仕事をしています。しかしそれ以外の具体的なことは何も描写がありません。作中において一番意味が分からないのは「結局田川とは何者なのか」という部分です。それは田川側のアクションに一貫性と特徴がないからです。例えば、田川側の刺客たちが「田川流」的な技を使いさえすれば、この作品は「田川流」と「紅流」の抗争の話なのだと一目で分かります。また、もし田川本人が戦うシーンがあって、そして紅流のあの独特の構えを使いさえすれば、それは十分ストーリーの説明になります。田川が紅流というブランドを奪おうとしている表現になるからです。
ですが、本作には前述のようにアクションに特徴がありません。アクションとストーリーが完全に分離してしまっていますので、アクションパートではストーリーが前に進みません。唯一ストーリーのあるアクションは海沿いでの姉妹の一騎打ちです。ここでは、2人が同じ型を使うことで姉妹だと気付くという描写があります。この積み重ねがないため、90分しかない上映時間が長く感じてしまいます。

提言その3: アクションは主演のプロモーションタイムと心得よ!!!

アクション俳優とアイドルは紙一重です。というのもアクション俳優は演技力よりもアクション力を重視されるため、より俳優本人の魅力・技量がストレートに表れるからです。ですから、アクションシーンは主演俳優のプロモーション的な要素が強くなります。衣装であったりシチュエーションであったり、アクションシーンに物語り上とは別の「テーマ」を設けることが肝心です。
では本作の彩夏のアクションを順を追って見てみましょう。
最初のアクションはひったくり犯との対決です。ここは顔見せ程度であり、素人相手に圧倒的な強さを見せます。
次いでのアクションは額のペットボトルを蹴り飛ばす模擬シーンです。これは彩夏のハイキックの高さと正確さを見せています。
その直後がサクラと武田一馬との2対1の対決です。ここがひったくり犯とのアクションと同じ構図でレベルを上げた物です。
次がサクラとの一騎打ちです。ここは前述のようにお互いが同じ技を出し合って相打ちになるシーンです。
次はもう本拠地に乗り込みます。乗り込み先で1対1の空手戦、1対多数の乱取りの後、ヌンチャクで木刀相手に戦います。ここが本作で唯一武器を使うシーンです。
最後にいかつい外人リチャード・ウィリアム・ヘセルトンとの1対1から菜月が援護にはいった1対2の戦いです。ここでは劇中で唯一の姉妹連携が見られます。
とまぁ羅列してみるとわかるように、パターンが少なすぎますw すべてのアクションは平らな床の上でおこなっており、地形や施設を利用した戦いがありません。武器もヌンチャク対木刀が1回、それも1分ぐらいで終わってしまいます。本作は武田梨奈のアイドル映画でもあるわけですから、彼女の能力を知らしめないといけません。だからもっと戦いのバリエーションを増やして「武田梨奈ってこんな事もできるんだ」というプロモーションをするべきです。本作では空手家・武田梨奈の魅力の半分も伝えられていません。

【まとめ】

残念です。ただただ残念です。正直な所、ドグーンVで私は一気に武田梨奈の魅力にやられました。だから本作もかなり期待していたんです。ところが蓋を開ければ、、、本当に残念です。疑問なのは、本作のスタッフ(=ハイキックガールのスタッフ)は本当にアクション映画が好きなんでしょうか? どうもアクションに愛が感じられないというか、「アクション映画」という一種のジャンルムービーの肝が分かっていないような気がしてなりません。とはいえ、武田梨奈は文句なく可愛いですから、彼女のファンはとりあえず押さえておくに越したことはありません。ただし、間違っても傑作や良作ではありません。つまらない映画だという前提で、是非将来のアクションスターへの投資だと思って見に行ってもらえるといいかなと思います。小声でオススメします。

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ザ・タウン

ザ・タウン

2本目は

ザ・タウン」です。

評価:(80/100点) – ベン・アフレックすげぇ。変形の「田舎で女性が不幸になる話」。


【あらすじ】

強盗が多発するチャールズタウンで、ダグは「家業」として銀行や輸送車の強盗を行っていた。ある日彼と仲間が襲った銀行で、仲間の一人ジェムが支店長の女・クレアを人質に取る。
後日、顔を見られたかどうかを確認しにいったダグはコインランドリーで怯えるクレアを目撃する。クレアの相談に乗ったことで知り合った二人は、やがて惹かれ合っていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ダグと仲間の強盗。
 ※第1ターニングポイント -> コインランドリーでダグとクレアが出会う。
第2幕 -> ダグとクレアの付き合いと、ダグの足洗い。
 ※第2ターニングポイント -> ダグが最後の仕事を受ける。
第3幕 -> フェンウェイ・パークの襲撃。


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【感想】

本日の2本目はザ・タウンです。昨年の東京国際映画祭のクロージング作品です。小さな劇場でしたが結構お客さんは入っていました。監督・脚本・主演はベン・アフレック。とはいえ、決して「俺様映画」になることなく、悲惨で鬱屈した街で生きる男を悲哀たっぷりに描いた普遍的で素敵な作品になっています。
結論は、オススメです!!で終わってしまっても良いくらい素敵な作品なので、とりあえず見に行って下さいw
本作は変形の「田舎で女性が不幸になる話」です。チャールズタウンは全然田舎じゃないですが、作品内ではとても鬱屈した街として描かれています。アイルランド人が多く治安の悪い街です。
ダグの父親は強盗で懲役30年(=ほとんど終身刑)を食らっていますし、母親は幼い時に失踪してしまっています。そしてダグ自身はアイスホッケーの選手としてドラフトにまで掛かったものの、結局怪我で挫折しチャールズタウンで強盗に身をやつしています。彼はいつかは街をでて都会へ出ようと考えていますが、なかなか踏ん切りが付かず強盗業を続けています。そんな彼がカタギのクレアと出会うことで足を洗って「人並みに幸せになろう」と決意するようになるわけです。
本作は強盗の元締め・ファーギーとクレアの間で揺れ動くダグと、彼ら強盗団を追うFBI捜査官、そして強盗の被害者でありながら相手が犯人と知らずに恋に落ちたクレアの4者の思惑が交錯して物語が進んで行きます。作中ではこの雁字搦めにされて身動きが取れない感じと、人生に絶望してしまっている鬱屈した感じ、そこからクレアと知り合うことで生まれる希望に溢れる夢が短いスパンでコロコロ入れ替わります。
カテゴリとしでは「ヒューマンドラマ」になってしまいますが、この鬱屈感がまさしく私が大好物な「田舎で女性が不幸になる話」そのものでして、その男性版として大変よくできています。俳優はどなたも素晴らしいですし、ストーリーの組み立て方もまったく飽きが来ないほど良く出来ています。中盤前にはFBIは強盗団4人を早くも特定しますので、そこからのサスペンス展開や真相を知ったクレアとの関係にはグイグイ引っ張られます。
ベン・アフレックのしゃくれ割れアゴと困り顔も相まって、マッチョながらも根が弱気なダグがとても魅力的です。

【まとめ】

すばらしい作品です。愉快な娯楽作ではありませんが、ここまで丁寧に悲哀を描かれると二時間ぐらいあっという間に過ぎてしまいます。大規模公開作品ですので、是非映画館で見てみて下さい。かなりオススメです。

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ウォールストリート マネー・ネバー・スリープス

ウォールストリート マネー・ネバー・スリープス

今日は三本です。1本目は

「ウォールストリート マネー・ネバー・スリープス」を見ました。

評価:(50/100点) – 期待を裏切らないファン・ムービーだが、、、、。


【あらすじ】

ジェイクは若くしてKZI(ケラー・ゼイベル投資会社)で働くトレーダーである。未来のクリーンエネルギーを専門にし、投資によって社会を良くすることを夢見ている。ある日KZIは信用不審の噂を流されてしまい株価が急落、倒産の危機に瀕してしまう。社長のルイスは政府へ公的資金の投入を求めるがこれを拒否されついには自殺、会社もライバルのチャーチル・スチュワート(C&S)に買収されてしまう。
職を失ったジェイクは母校の公演で、婚約者の父親にして伝説のトレーダー・ゴードン=ゲッコーに出会う。彼はゴードンよりKZIの噂の出所は買収したC&Sの社長ブレトンその人だと聞かされる。復讐を誓うジェイクは自身も噂によってブレトンをハメることを計画する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ジェイクのボーナスとKZIの信用不審。
 ※第1ターニングポイント -> ジェイクがゴードンに出会う。
第2幕 -> ジェイクとゴードンの取引。
 ※第2ターニングポイント -> ゴードンが金を持ち逃げする。
第3幕 -> 仲直り。


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【感想】

今日の1本目は「ウォールストリート マネー・ネバー・スリープス」です。ご存じオリバー・ストーンの不朽の名作「ウォール街」の続編です。何故今続編なのかとかいろいろありますが、年配の方を中心にお客さんは結構入っていました。オリジナル世代でしょうか。
今作は「新キャラクター・ジェイクを主役とした復讐劇」と「前作の主役ゴードンと娘・ウィニーの確執と仲直り」の二本の柱を軸に物語が進んで行きます。予告を見る限りだと前者の配分が多いのかなという雰囲気だったのですが、実際には前者は1時間程度で終わってしまい、話の大半は後者が中心となります。その意味では正しい意味での「キャラ物・ファンムービー」です。ゴードン・ゲッコーの鬼畜っぷりを存分に楽しみつつ、ウィニーの可愛さにほのぼのするという最高のファンサービスでして、それだけで幸せな気分でニヤニヤしてしまいます。ですがキャラ物の宿命で、どうしてもキャラクター描写が多すぎるため話が弱く、全然先に進みません。この「先に進まなさ」はかなりのもので、やってること自体はほとんど内容がありません。
ジェイクが段々とゴードンに似ていく部分であったり、文句をいいながらも父に似たジェイクに惹かれてしまうウィニーであったり、人間描写についてはさすがのオリバー・ストーンです。ですので、内容が無いからと言って決してつまらないわけではありません。面白さは十分です。
可もなく不可も無く、平均的なハリウッド娯楽映画ということで、正にど真ん中の「50点」という感じですw 前作を見ていなくても十分に楽しめるとは思いますので、もし何を見るか迷っていて「ソーシャル・ネットワーク」や「イップマン」等の良作を見終わった方は選択肢に入れてみても良いかもしれません。フラットなテンションでオススメします。
余談ですが、レバレッジを「テコ入れ」と訳すなど、相変わらず戸田奈津子女史は経済用語(=専門用語)をまったく理解せずに誤訳しまくっていますw 訳を追うとものすごく混乱しますので、極力英語を聞いた方が良いと思います。いい加減こういう専門用語が多い作品で使うの止めた方がいいですよ、本当に。

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デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~

デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~

2月の映画の日は

デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~」です。

評価:(40/100点) – ドタバタ・ロードムービーだけど、、、。


【あらすじ】

ピーターは出張先のアトランタで妻の出産が近いことを知る。急いでロサンゼルスまで戻ろうとしたピーターだったが、空港でぶつかった男と荷物が入れ替わってしまい麻薬所持の疑いを掛けられ、さらには機内でテロリストと間違えられ搭乗拒否のブラックリストに載ってしまう。果たしてピーターは5日間で無事アメリカを横断して妻の元へとたどり着けるだろうか?


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【感想】

2月1日は「デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~」を見て来ました。公開から一週間経っていましたので1000円ですがほとんどお客さんは入っていませんでした。昨年公開の快作「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」の監督トッド・フィリップスの最新作です。春には「ハングオーバー! パート2」の公開を控え乗りに乗っている監督です。
本作と「ハングオーバー!」で大きく違うのは、やはりキャストが格段に豪華になっているという部分です。主役をロバート・ダウニー・Jrが演じ、相方のイーサンをザック・ガリフィアナキスが演じます。「ハングオーバー!」の頃はそこまで名の知れていなかったザックも、いまや完全にコメディスターです。
ただ、、、この豪華さというのがプラスに働いているかどうかは微妙なところです。というのも、「ハングオーバー!」では役者達はアドリブ全開で「おもしろ素人」感を出しつつハチャメチャなハイテンションを叩き込んでいましたが、今作では良くも悪くもキャラクターが固まった2人がそのキャラを逸脱しない範囲で「あの○○さんならやりそうw」というラインを狙っているからです。ですからロバート・ダウニー・Jrはトニー・スタークやホームズのままの「真面目だけどちょっと抜けてて愛嬌のあるキャラクター」ですし、ザックは「下品で無神経だけど実は繊細なダメ人間」のままです。そこに意外性やリミッターを突き抜けた感じはありません。予想通りのレベルで予想通りのギャグを予想通りのタイミングで行います。
また、本作ではコメディ・パートとシリアス・パートが目まぐるしく入れ替わります。この配分はほぼイーブンで大変考えられているとは思いますが、どうしても笑いが続かないため面白さが減じてしまいます。
これはかなり難しい問題です。実際、本作で私が一番笑ったのはジェイミー・フォックスの家でのコーヒーのやりとりでした。この場面は典型的な天丼ギャグで、「ハングオーバー!」では何度もやっていた演出です。それが本作では1カ所しかありません。本作を見ていて一番の不満はこの「くだらなさ不足」です。前作のヒットを前提に人気のある俳優を使った結果、どうしてもより安全な方向の企画に逃げてしまったような印象を受けます。あのマイク・タイソンや虎を惜しげもなく使う馬鹿馬鹿しさは本作にはありません。

【まとめ】

相変わらず前半の伏線をクライマックスで一気に回収するなどの「映画的な巧さ」はありますが、いまいちコメディとしての破壊力は足りません。もちろん決してつまらないわけではありませんから、気軽に見に行くには十分な出来だとは思います。下ネタも多いのであんまり大声でオススメはしづらいですが、もし時間に余裕があれば見に行くのもいいのではないでしょうか?
もし「ハングオーバー!」が未見であれば、そちらを圧倒的にオススメします。

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白夜行

白夜行

日曜日は

「白夜行」を観てきました。

評価:(80/100点) – テレビ屋映画でもちゃんとしたサスペンス出来るじゃない。


【あらすじ】

昭和55年、廃墟となったビルで質屋の主人・桐原洋介の遺体が発見された。警察は桐原の身辺を洗い不倫相手と思われる西本文代を突き止める。しかし文代は自宅で自殺体で発見され、事件は被疑者死亡のまま書類送検される。担当刑事の笹垣は文代の犯行を疑い、それから何年も個人的に捜査を進めていく。
それから10年後、桐原の妻・弥生子の愛人だった栗原が他殺体で発見されたことから事件は思わぬ方向へと転がり始める、、、。


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【感想】

日曜日は東野圭吾原作の「白夜行」を見て来ました。客層は中年~高齢者が多く、一人で見に来ている女性も目立ちました。GANTZ程ではないですが、そこそこの入りです。
見た直後に「韓国映画に負けない悲惨な話がまだまだ出来るじゃん」とかなり満足だったのですが、調べたら韓国でも映画化されているんですね。見かけた記憶が無いので日本未公開でしょうか。私は、不勉強ながら原作もドラマも韓国版映画も見ていません。完全に前知識無しで見に行きました。ですので、もしかしたら原作の方が面白いとか、原作ファンからすると「ここが許せない」みたいな所があるかも知れません。少なくとも前知識無しで見た私にとっては、本作は久々に見た日本映画のかなり面白いサスペンスでした。傑作と言ってしまってもいいかと思うぐらい満足度は高いです。
話のフォーマットはサスペンスとして定型的な「悲惨な目にあった少女の(非合法的)成り上がりストーリー」です。ですが本作では外道な振る舞いをしながら光り輝く少女・雪穂と献身的な振る舞いで彼女の影になる少年・亮司が、明暗・表裏のすばらしい対比になってグイグイ物語を引っ張っていきます。ストーリーは間違いなく大変面白いです。
唯一本作で不満があるとすれば、やはり演出的な面です。特に主役の笹垣を演じる船越英一郎がいつも通りの二時間ドラマ演技を見せ、そしてその他の戸田恵子や栗田麗もモロにTVドラマの演技(=はっきりとした滑舌で大げさなリアクション)を行ってくるため、かなり安っぽいことになっています。話の内容の重さ・暗さに反して、ルックスはとても軽いです。
がっかりがピークに達するのが本作でもっとも盛り上がる(はずの)クライマックスです。安っぽい泣き脅しと甘ったるい音楽とスローモーションの極悪コラボレーションで、一瞬火曜サスペンスで定番の沖縄・万座毛での探偵と犯人の説得シーンからの「落ちるなよ!!!落ちるなよ!!!!!(by ダチョウ倶楽部)」がフラッシュバックしますw
ただ、主要キャストは良く嵌っています。堀北真希は相変わらず下手ですがその下手な演技が逆に雪穂の「嘘くささ」にぴったりですし、高良健吾の「偽ダルビッシュ」感も痩せた感じと相まって病的な執着をもった男にきちんと見えています。この二人には珍しく当たり役だと思います。

【まとめ】

あんまり細かい所はサスペンスの面白さが減じてしまうので書けないのですが、間違いなく日本映画では良作の部類です。とはいえあまりハッピーな話ではありませんので、デート等では避けた方が良いと思います。メジャー資本の日本映画でもまだまだ十分に面白いサスペンスが作れるということだけでも、十分に見ておく価値のある作品です。かなりオススメです!

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RED/レッド

RED/レッド

土曜の二本目は

RED/レッド」です。

評価:(65/100点) – 元気な叔父様達の貫禄コメディ。


【あらすじ】

フランク・モーゼズは退役したCIAのエージェントである。手持ちぶさたな彼は年金係のサラとの電話を唯一の楽しみにしていた。
ある日いつものようにサラと電話をした晩、フランクは何者かに襲われ自宅を蜂の巣にされてしまう。なんとか難を逃れたフランクはサラの元へと向かい、危機一髪彼女を助けだす。敵をCIAだと判断したフランクは、引退したかつての仲間達の元を訪ね逆襲を計画する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> フランク邸が襲われる。
 ※第1ターニングポイント -> サラの救出
第2幕 -> サラとの逃走と仲間集め
 ※第2ターニングポイント -> サラが攫われる
第3幕 -> サラの奪還作戦


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【感想】

土曜の2本目は「RED/レッド」です。かなりお客さんが入っていまして、小さめな劇場ながらほぼ満席でした。前評判では「年寄り達のエクスペンダブルズ」なんて言われていましたが、どちらかというと「オールスター感」よりは「年寄りの冷や水感」といいますか、コメディ的な要素が先に立っています。
というのも、エクスペンダブルズのような「劇中でもバリバリの一線で活躍する傭兵」としてのヒーロー達ではなく「劇中ではすでに引退しているかつての凄腕」という体裁だからです。とはいえ、もちろんブルース・ウィリスやヘレン・ミレンはほとんど無敵の活躍を見せてくれます。それだけで爽快感は満点なのでもう十分なのですが、一方で生身のアクションの凄さはありません。せっかくのブルースとカール・アーバンの格闘戦もカメラがグラグラでまったくアクション的な見栄えはしません。
そうするとどうしても「型」を楽しむような見方になってしまいますので、これはもうファンムービーになってしまいます。
とはいえとても幸せな映画なのは間違いありません。ここまで活き活きとコメディを楽しむマルコビッチは久しぶりな気がしますし、ここまで嬉々としたヘレン・ミレンも久しぶりな気がします。何より話の内容が全然無い感じが、いかにもバカ・アクション・コメディという風格すら出ていますw スーパー爺さん達が危なげなく若造どもを手玉にとってくれますので、安心して110分間ポップコーンを頬張れます。
決して高尚な映画ではありませんし、よくできた映画でもありません。しかし爽快感とほほえましさではずば抜けたものがあります。デートの邪魔にもならないくらいのバッチリな温度ですので、是非是非オススメです!

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記事の評価
GANTZ

GANTZ

土曜日は二本見て来ました。1本目は、

「GANTZ」です。

評価:(9 /100点) – 適当でショボい「予告編」。


【あらすじ】

就職活動中の玄野は地下鉄の駅で小学校の同級生・加藤を見かける。加藤は線路に落ちた酔っ払いを救うため、自らも線路に降りてしまう。なんとか酔っ払いを助けた加藤だったが電車はすぐそこまで来ている。ためらいながらも加藤に手を貸した玄野だったが、加藤に引き込まれ線路に転落、2人共電車に轢かれてしまう、、、、。
しかし気がつくと、玄野と加藤はマンションの一室に居た。まわりには数名の男子。目の前には謎の黒い玉。はたして二人は死んだのか、、、そして黒い玉は何なのか、、、。


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【感想】

土曜の1本目は「GANTZ」です。おなじみヤングジャンプ連載のコミックの映画化で、日テレ、東宝、ジェイ・ストーム、ホリプロが制作委員会に名を連ねます。二宮君と松ケン狙いなのか若い女性が多く、漫画ファンの層とはちょっとずれているように感じました。かなりお客さんは入っていまして、一度アニメ化もされている人気シリーズです。

ソープオペラと映画について

当ブログを読んで戴いている方には「そもそも」という単語が出ると危ないというのはご想像できると思いますが(苦笑)、いきなり「そもそも論」から行きたいと思いますw
そもそもですね、原作コミックスはいわゆる「ソープオペラ」の形式をとっています。当ブログでも何度か出てきていますが、一応念のため。「ソープオペラ」はアメリカの連続ドラマの形式の一種で、キャラクターだけを配置して延々と下世話に話を転がしていくものです。ストーリー自体にゴールは無く、またあったとしても限りなく薄いゴールが設定されます。基本的にはシチュエーションとキャラクターの魅力しかありませんので、いくらでも続けることができますし、いつでも止めることができますw 実はそういう風に考えると、連載漫画とソープオペラがとても相性が良いというのがお分かり頂けると思います。つまり編集部やファンの要請が続く限りいくらでも話を転がせますし、また打ち切りが決まればすぐにでも完結させることが出来るからです。
しかしその一方で、ソープオペラは映画にはまったく向いていません。というのも映画には元々「フィルムリール」と言う形で物理的な尺の制限があるからです。もちろん複数リールをつなげるようになってからも、単純にリールが増えるとそれだけダビングに時間も費用もかかりますのである程度の制限は残ります。長さに制限があるということは、つまり作品に明確なゴールを設定した上で、時間に合わせて的確にストーリーを語る必要があるということです。二時間半ならそれに見合った話の内容があり、きっちり二時間半でゴールまで行かないといけません。
さて、原作の「GANTZ」はラストミッションまではこの「ソープオペラ」形式で「星人狩り」のゲームが繰り返されます。この繰り返しの一回一回には特に意味は無く、ゲームや星人のシチュエーションとそこに放り込まれるキャラクターを楽しむものです。正しいソープオペラであり、よく考えられた連載向けの物語構成です。
しかし前述のような映画とソープオペラの相性の悪さがありますから、この原作を映画化するのであれば当然そのままではどうにもならないわけです。(逆に言えば、例えば毎週放送するアニメやドラマであればそのままでもある程度格好は付きます。)
この「原作のストーリーをテーマを絞ってまとめる」事が映画化する際の一番の肝であり、もっとも監督や脚本家の手腕が問われる箇所です。

本作におけるストーリーについて

では今回の映画化はどういった形でテーマをまとめているでしょうか? これは明確で、「玄野の自分探しと成長」です。物語の冒頭では、玄野は面接のマニュアル本を暗記するだけで何の熱意や希望もなく安穏と生活していました。それがGANTZのゲームに参加することで段々と調子に乗り始めます。自分が「いじめっ子をやっつけるのが得意」だと認識した上で、星人狩りを天職だと思うようになり独善的に暴走していきます。しかし対おこりんぼう星人戦で仲間を失ったことで戦いの惨さを再認識し、皆で力を合わせて生き残る事を決意します。これが本作のストーリーの全てです。
問題は、本作のストーリーがどう考えても130分という尺に対して薄すぎることと、そしてストーリーに対して起こっているGANTZを巡る事態が風呂敷を広げすぎな事です。物語の最後で玄野が決意することは、物語の冒頭ではすでに自明であり加藤が連呼していたことです。ですから130分も使った上で成長するゴールとしては低すぎます。
また、映画の尺が伸びすぎている大きな要因がこれでもかというほどクドい「ウェット」で「だるい」演出です。この映画版ではXガンが強力な銃として登場します。実際に劇中で戦う敵は全てこのXガンで撃たれることで倒されます。引き金を引いたら戦闘が終了するような武器を持っているにも関わらず、玄野はなかなか銃を撃ちません。挙げ句の果てには敵の目前で愁嘆場を演じたりする始末です。
特に酷いのがラストの千手観音戦です。ここでは「岸本と加藤」「玄野と加藤」の二回、まったく同じシチュエーションで敵の目前で「感動的なお涙頂戴話」を始めます。それを待ってあげている千手観音もお茶目ですし、「そんなことしている間にXガンで撃てよ」という文句が何度も頭をちらつきます。実際問題、本作の戦闘シーンはほとんどが「そんなことしている間にXガンで撃てよ」で片付いてしまいます。アクションもへったくれもありません。CGがショボイとかカット割りすぎとか以前に、アクションシーンとしておかしな事になっています。しかも玄野と加藤と岸本以外が完全に何の役にもたっていません。ソープオペラというのは各キャラクターを群像劇のように立たせるものですが、本作ではこの3人以外は誰が誰やらさっぱり分からないため、そもそもソープオペラとしても失敗しています。

【まとめ】

だらだらとグチを書いてきましたが、要は本作は後編「GANTZ PERFECT ANSWER」の予告編以上のものではありません。130分も使っておきながら、「みんなで力を合わせよう」などどいうヌルイ着地をしつつ、結局「GANTZ」関連のストーリーには進展がないままです。まるで打ち切り漫画のようなラストショットと、そしてエンドロールの後に流れる心底がっかりする後編の予告によって、本作がただの「前振り」でありただの「お試し版」であることがハッキリします。
本作は見る必要が1ミリたりともありません。どうせ後編をやる直前に日テレで放送するでしょうし、別に後編からいきなり見ても十分に話が通じる程度のボリュームです。まったくオススメしませんが、二宮君と松山ケンイチのファンであれば見に行っても良いかと思います。完全なるドラマ演出によって顔のどアップばかりですので、ファンであれば顔だけは楽しめると思いますw

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完全なる報復

完全なる報復

本日は一本、

「完全なる報復」を見てきました。

評価:(35/100点) – ジェラルド・バトラーは最高だけど、、、。


【あらすじ】

妻と娘と暮らすクライドは、ある日二人組の強盗・ダービーとエイムスに自宅を襲われ妻子を殺されてしまう。クライドの目の前で殺されたにも関わらず、物証の少なさから担当検事のニックは主犯のダービーと司法取引をしてエイムスのみを極刑にする作戦を立てる。第三級殺人罪で数年の禁固刑のみで逃れたダービーを前に、クライドは自らの手で復讐することを誓う。
それから10年後、、、ついにクライドが動き始める、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 強盗殺人事件と司法取引。
 ※第1ターニングポイント -> 10年後。
第2幕 -> クライドの復讐劇。
 ※第2ターニングポイント -> 検察仲間が皆殺しに会う。
第3幕 -> クライドの隠れ家とナパーム。


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【感想】

今日は「完全なる報復」を見て来ました。本当は別の映画を見るつもりだったんですが、ちょっと時間が合わずにこっちにしてみました。監督はヒップホップ系のPV監督で知られるゲイリー・グレイ。映画監督としては久々です。客席は2~3割ぐらいの入りでお世辞にも盛況とは言い難い感じでした。
本作は「妻子を殺された男の復讐劇」です。本作の場合、その復讐対象は殺人犯だけでなく、犯人に極刑を与えられなかった検事・司法制度にまで及びます。いうなればジェラルド・バトラー無双。ある意味では「300」のインテリ版ですw
この作品はジェラルド・バトラーの魅力が全てと言っても過言ではありません。アカデミー俳優ながらいまいちパッとしないジェイミー・フォックスを完全にぶっちぎり、一人で作品の全てをかっさらっていきます。インテリな激情家にこれほど似合うマッチョも他にいません。なにせグラスゴー大学主席卒業の肉達磨ですから。なんかそう書くとドルフ・ラングレンみたいで哀愁が漂ってしまいますけどw
もうバトラーの演技を見ているだけでも十分幸せになれる作品なのですが、どうしても中途半端というかガッカリ感が否めません。それは一重に、クライマックスで作品の視点がぶれてしまうからです。
本作はクライドの家族が殺されるシーンから始まります。そして担当検事のニックは「自分の成績(担当案件の有罪率96%!)だけを気にする打算的な男」として描かれます。ですので、当然観客としてはクライド側をヒーロー視します。クライドは殺人鬼ではありますが「妻子の復讐」というまっとうな正義を掲げるダークヒーローなんです。
しかも劇中において、クライドとニックは同じ家族構成をしています。これはどうみても二人を正反対に描くか、または同じ信念をもった「コインの裏表」とするかを意図した人物配置です。だから、例えば「クライドがニックの妻子も殺してしまうが、それでもニックは現行司法制度に縛られて法廷で戦えない」という皮肉な状況にするとか、または「クライドがニックの妻子も殺してしまい、ニックは信念を曲げて私的な復讐をしてしまう。」という「理由(1995年)」のようなアイデンティティ・クライシスの話にするとか、そういった方向で「クライドの(=家族愛の)勝利」を期待するわけです。
ところが蓋を開けてみると、、、、、ああぁあぁぁあぁぁぁっぁあっぁあ orz。

【まとめ】

せっかく面白い設定でテンションが上がっていたのに、後半20分くらいで急激に失速してしまいます。ちょっとびっくりするぐらいの失速具合でして、それまでのストーリーは何だったのかと思いたくなります。非常にもったいなく、非常に残念な作品です。ラストが微妙に美談っぽい感じで終わるんですが、「ニックも家族の大切さを知った」だけだとちょっと弱いというか、話として横滑りしています。
ただ、ジェラルド・バトラーは間違いなく格好良いですので、彼のファンに限りオススメします。
※余談ですが、ヘレン・ケラーをギャグにするのだけは絶対ダメです。論外。しかもそれを被差別層だった黒人に言わせるなって。そこだけはものっすごい引っかかりました。

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