サベイランス

サベイランス

サクサク行きまして、次は

「サベイランス」です。

評価:(40/100点) – 「カルトの帝王」の困った娘。


【あらすじ】

サンタ・フェの田舎町で5人が無残に殺される事件が発生する。FBI捜査官のエリザベスとサムは警察所に居る目撃者3人から事情聴取を行う。3人は「傷だらけの警官」と「怖がる若い女性」と「無口な女の子」。しかし彼らの証言が微妙に食い違う。果たして彼らに何が起きたのか?そして犯人は誰なのか?


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【感想】

私の大好きな「カルトの帝王」デヴィッド・リンチがプロデューサに名を連ね、長女のジャニファー・リンチが監督・脚本を務めるサスペンススリラー作品です。本国ではおととし公開ですが、ようやく日本に上陸しました。ちなみにジェニファーはすでに去年「蛇女」というボリウッド映画を撮っていますので、ある意味周回遅れでの公開です。
ハッキリ断言しますが、ジェニファー・リンチ監督のファンというのは聞いたことがありません。というのも初監督作品の「ボクシング・ヘレナ」が度を超して最低な映画だったからです(笑)。色男が愛する女の手足を切って所有物として愛でるというサイケな恋愛映画(←いやまじでサスペンスじゃないんです)で、ジェニファーは当然のように映画を撮らせてもらえなくなりました。それから15年、ついにあの問題児が帰ってきた(笑)ってなわけで一部の映画ファンには待望の作品です。
やはりデヴィッド・リンチを思い起こさせるのはサイケなキャラクター達です。一人を除いて出てくるキャラクラー全員が頭イカレてます。情緒不安定なのは言わずもがな、いちいち各キャラの妄想混じりの証言を映像化して見せる物ですから、軽い頭痛を引き起こします。でもそれこそがデヴィッド・リンチの特徴でもあるので、娘に着実に受け継がれているのはうれしい限りです。
ところが、、、ラストが超がっかりで台無しなんです。金返せっていうレベルのオチにもならないオチで、もう本当にどうしようもありません。犯人については中盤あたりで気付きましたので当然もう一ひねりしてくるのかと思いきや、、、結局犯人捜しだけなんです。なんとも言い難いです。
一応「幼い子供だけが物事の真実を見ている」という部分にテーマらしき物はありますし、映画としてまったくダメダメというものではありません。単につまらないだけです。この「単につまらない」というのが割と皆さんが同意できるジェニファーの評価だと思います。これがデヴィッドだったら「単につまらない」なんてならずに訳分からない要素を散りばめて「わかんないし気持ち悪いけどなんか引っ掛かる」というぐらいには煙に巻いてくれるんですが、、、ここいらが限界なんでしょうか?
とはいえ「ツイン・ピークス ローラ・パーマ最後の七日間」でジェニファーの書いた脚本は良かったので、決して才能がないわけではないんです。監督はあきらめて脚本家に専念した方が絶対良いですよ。

【まとめ】

本作もバリバリの単館映画ですが、わざわざ足を運ぶ必要は感じません。正直オススメするのは気が引けます。ただデヴィッドのテイストを感じることは出来ますので、父親の大ファンであればとりあえず押さえておきましょう。
それにしてもきつかったです。

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フローズン・リバー

フローズン・リバー

続いての作品は一転して大真面目な

「フローズン・リバー」です

評価:(90/100点) – 「母は強し」は万国共通。


【あらすじ】

舞台はカナダとの国境沿いの田舎町、レイ・エディの夫はクリスマス直前に貯金を持って蒸発してしまう。二人の息子とともに残されたレイは夫を捜しに賭博ビンゴ場を訪ね、そこでまさにインディアンの女性が夫の車を盗む所を目撃する。追いかけたレイは、その犯人・モホーク族のライラと出会う。彼女は姑に奪われた我が子を引き取って暮らすために大金が必要であった。そのためカナダからの密入国者の運び屋をしており運転席からの操作で後ろのトランクを開けられる車を探していたと言う。
車の譲渡を断ったレイに、ライラは密入国の手伝いと報酬山分けを提案する。どうしても金を工面する必要があったレイはこれに同意する。こうしてライラとレイの犯罪家業が始まった。カナダとのルートは冬にしか現れない「凍った川(フローズン・リバー)」。両端には治外法権のインディアン保留地。それは絶対安全な金稼ぎであるはずだった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 夫の蒸発と長男との確執
 ※第1ターニングポイント -> レイがライラと出会う。
第2幕 -> 密入国家業
 ※第2ターニングポイント -> レイが「最後の仕事」を提案する。
第3幕 -> 最後の国境越え。


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【感想】

本作は二年前のサンダンス映画祭のグランプリ作品です。サンダンスといえば言わずと知れた世界最高クラスのインディ映画祭りです。やはりグランプリ作品は伊達ではなく、本作も主要登場人物がわずかに4人のミニマムな構成でありながら、これ以上無いほどの情緒と圧力を観客に叩き込んできます。
日本では二年前に配給会社がつかずDVDスルーも怪しかった所をアステアが拾ったようですが、素晴らしいことをしてくれました。大正解です。
こんな良作を公開しないとかありえないですよ、本当。

本作の肝

この映画は「田舎で女性が不幸になる話」の極北です。本作の肝は「母は強し」につきます。全部で三組の母子が出てきますが、三組とも全て子供のために必死です。特にレイとライラはほとんど絶望的な状況下から、必死でがむしゃらに家庭を立て直そうとします。
そして母に不満を持ちながらも、やはり自分なりに家庭を支えようとする長男。その家族のもがきの全てが最高潮に盛り上がったクリスマスに事件が起きます。悲惨で救いが無いように見えながらも、本作の最後の瞬間・最後のカットに写るちょっとした希望が、得も言われぬ感情を呼び起こさせます。これぞまさしく「映画的な感動」です。
メリッサ・レオの疲れた顔の中で唯一ギラギラ光る目が印象的で、本当にすばらしい演技をしています。ミスティ・アップハムは、、、この人は何やっても”デブキャラ”で終わっちゃうので何とも言えません。でもメリッサに引っ張られたのか中々の演技を見せます。
ちょっと苦言を呈する部分が見つからないような最高レベルのフィルムです。完全に単館映画ですが、渋谷まで足を運べる方は必見の作品です。是非、映画館で引き込まれてください。
余談ですが、渋谷のシネマライズは床が特徴的で、一番後ろから前5列目ぐらいまで急に下ったあと、前の方は逆傾斜でちょっと昇ります。なので一番前で見てもイス自体が上を向いてるので首が痛くなりません。シネマライズは土地柄なのか何時行っても煎餅食ったり携帯いじってるマナー悪い人が多いので、是非一番前で見るのをオススメします!!!

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交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦

木曜日、「交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦」を観てきてました。

評価:(5/100点) – 交渉しない交渉人とアクションのできないアクション・スター


【あらすじ】

宇佐木玲子は警視庁徳署捜査班の交渉人である。ある日スーパーの立てこもり事件で交渉に臨んだ宇佐木は、主犯・御堂啓一郎を逮捕するも共犯者を一名逃してしまう。その後羽田空港で見かけた元人質の木元祐介が気になり、急遽彼の搭乗機に飛び乗ってしまう。彼女の読み通り、木元はハイジャックを行った、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 立てこもり事件。
 ※第1ターニングポイント ->宇佐木の乗った飛行機がハイジャックされる。
第2幕 -> 飛行機の上でのやりとり
 ※第2ターニングポイント ->御堂が射殺される。
第3幕 -> 解決編


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【感想】

先日のブログではハルヒの後と書いたのですが、ハルヒが面白くてその後見た映画を忘れそうなので先に書いてしまおうと思います。一作目は木曜に見ました「交渉人 THE MOVIE」です。テレ朝ドラマの番外編ということですが、相変わらずテレビを一切見ない私は完全初見です。で、またこれがとにかく酷い酷い。な~んにも考えてないんじゃないかと思うほどのストーリー展開と、気持ち悪いくらい前面に出てくる政治思想。そしてそれらを腕っ節で解決しようとする強引な展開。
こういってはなんですが、昨年のアマルフィと勝負できるほどの珍作です。あの~そんな所でまでフジテレビとテレ朝でやり合わなくて良いんですが(笑
とにかく何が酷いって言ってもストーリー運びです。
これはもう順を追ってツッコミ入れるしかないので、沈まぬ太陽の時と同様にストーリーをほぼ全部書きます(笑
なので、ネタバレが嫌な方は今すぐブラウザを閉じて映画館へ駆け込んでください!!!

お話しの展開

まず冒頭、ショッピングモールでの立てこもり事件が描かれます。犯人は3人、主犯の津川雅彦とポイズン反町と雑魚一名です。
ショッピングモールにたった3人で立てこもってるのに警察が防犯カメラを見れてないとか、周りを警官で取り囲んでるのに野次馬だらけで何故かテレ朝の中継車だけが唯一のマスコミで独占生中継とか(笑)。まぁいきなり酷いんですが、そこで津川が全共闘的なアジテーションを行います。曰く、「全部社会が悪い(笑)!」「頑張っている人が正当に評価される時代にしてみせる!(笑)」。共産党と社民党のポスターに普通に書いてあるキャッチコピーですが、これに林遣都がビビっと反応します。いや~青いね、青い。
そして暴走する雑魚一名。人質一人を盾に何故か警官の前に姿を現します。津川に窘められ引っ込むものの即粛正。これがいわゆる内ゲバですな。
銃声を聞いて突然強行突入を決めるSATも失笑ものですが、それ以上に失笑なのはショーガラスも吹っ飛ぶ程の大爆発なのに人質全員が無傷で飛び出してくるところ(笑)。
おまえら元気ですね。っていうか無傷って、、、。こいつらガムテープで目隠し&手縛りされてたんですが、どうしたんでしょう?
犯人グループはこの時点で津川とポイズンだけなので、順番にガムテープ外していったら数の論理で犯人側が負けちゃいます。多分魔法を使って一瞬で全員のガムテープを蒸発させたんでしょう(笑)。
さらに何故か人質に紛れ込んでパトカーに乗り込むポイズン。一人だけ口にガムテープの跡ないし人質名簿に無いんだから即逮捕でしょ(笑)。作り手から「警察なんてこんなもんでしょ」という侮りがビンビン伝わってきます。
その後、身柄を拘束されて外に連れ出される津川、、、、と思いきや拘束してねぇ~~~!!!(笑)。
周りから銃を突きつけられてるだけの津川が悠然と登場(失笑)。そんなわけあるか!!!津川が爆弾でもポケットに持ってたらどうすんだよ。銃奪われて暴れるかもしれないだろ!!!拘束しろ拘束。手錠はめとけ!
さらには何故か木元が近寄って会話。おまえそんなことしたら当然共犯者と疑われるぞ。っていうか喋らすなよ周りの警官!!!アホか!!!
華麗な捨て台詞を残す津川のシーンでこのシークエンスは終わります。ここまで開始約10分弱。すでに疲労困憊な私(笑)。
さてシークエンスが変わって、いきなり狭いアパートでシャツ一丁の林遣都とカップ麺をすする川野直樹が登場します。テレビには先日の事件。プラスで壊れたクーラー。おそらくこれがテレ朝的な社会の底辺描写です(笑)。まぁ年収1,000万越えのテレビマンや広告代理店が考える社会の底辺なんてこんなもんですよ。僕には普通の貧乏学生のルームシェアに見えますが(失笑)。
さらに変わって米倉と筧の乳繰り合いがあって(中略)、飛行機に乗り込む米倉。まずおまえチケットカウンターで警察手帳を見せただけで飛行機に乱入できるわけないだろ!
搭乗者名簿に載ってないという描写が出てくるので、その場でチケットを発行してもらってすらいない(笑)。しかも知ってる奴を見かけただけで押し入る無茶苦茶さ。ご都合主義って言うか強引すぎです。そして見事に筧の隣に偶然着席。思惑通りハイジャク発生。やったね!!!
ってまず、少なくとも二丁は拳銃を持ち込まれてるのね、この作品。あのね、、、世の中には手荷物検査っていうのがあってね、、、銃を分解っていったって細かい鉄板にまでバラせる訳じゃなくてね、、、ネジならともかく、銃口とかグリップとかは絶対に手荷物検査で引っかかるのよね、、、、。木元兄弟が使う拳銃は便所から降りた貨物室に仕込んであるようですが、もう何がなにやら???この脚本家ふざけてるんでしょうか???
コックピットが制圧され副操縦士が撃たれますが、ちょっと待て!!! 操縦室で銃をぶっ放すとか正気の沙汰とは思えません!!!しかも至近距離からの発砲(笑)
弾が貫通して計器を壊したら即墜落だし、ガラスが割れでもしたら気圧差で酸欠になってパイロット窒息→墜落ですよ。飛行機内で発砲するってのは自殺に等しいんです。絶対にやりません。ハイジャックするなら刃物の凶器が必須です。
ここからは怒濤の展開で雲の上での米倉涼子ワンマンライブが始まります。衛星携帯が欲しくてコスプレして操縦席に向かう米倉ですが、まず制服手に入れて着替えている間中も犯人に気付かれないというスニーキング能力の高さ。これならポイズンと木元ブラザーズを実力で制圧した方が早いのでは?
さらに便所に隠れて衛星携帯で地上とコンタクトをとるんですが、米倉さん声出し過ぎ(笑)。飛行機の便所のドアなんて薄いですよ。木元もドンドン扉を叩く前に耳をつけろ!!!ようやっと米倉のアクションが入りまして、機内ではポイズンがネズミ(笑)の存在に気付きます。ネズミってセンスもどうかと思いますが、ここでもやっぱり発砲があってついに米倉とフェイストゥフェイスが実現します。ところがここで第4の男が登場!!!政府がついに犯人の要求を飲んで・御堂啓一郎釈放→射殺のコンボが決まったあと、木元ブラザーズ兄が殺され、ポイズンがエスケープして、なんだかんだがあって米倉がついに操縦桿を握ります!!!
キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!
もはや無茶苦茶です。ここまで交渉要素ゼロ。あれ?タイトルって「交渉人 THE MOVIE」だったんじゃなかっt(以下略
もうなんか色々あるんで良くわかんないんですが万能なんですよ米倉さんは!!! 目をずっと見開いてるしアイシャドウが濃すぎて気持ち悪いですが、でも万能なんです。

【まとめ】

面倒くさくなって中盤以降投げやりにしましたが、なんせ酷いんですよ。怖い物見たさで行くのは良いですが、私からアドバイスがあるとすれば「やめた方が良いですよ」ってことです。止めはしませんが1,000円でももったいないです。あとこれだけは書かねばならないでしょう。本作で伝わってくる政治主張です。
 一つ、政治家は皆腐っておる!!!特にアメリカのシンパは最低だ!!!
 一つ、若者にフリーターが多いのは社会が悪い!!!格差社会だ!!!
 一つ、警官なんて皆適当だ!!!テロリストのが格好良いぞ!!!
 一つ、マーク・チャップマンは国に守られている!!!
どうかしてるぜ、、、全く。

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ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

日曜日に「ゴールデンスランバー」を観てきました。

1月最後の映画です。

評価:(55/100点) – 伏線という名の後出しじゃんけん祭り。


【あらすじ】

青柳雅春はお人好しの宅配配達員である。ある日学生時代のサークル仲間・森田に釣りに誘われた青柳は、彼に睡眠薬を飲まされて車中で寝てしまう。目が覚めると、凱旋パレード中の金田首相がすぐ後ろの大通りを通っていた。そして爆殺される首相。車ごと爆死した森田をのこしてその場から逃亡する青柳だったが、首相暗殺容疑で指名手配されてしまう、、、。

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【感想】

え~伊坂幸太郎原作シリーズの最新作、ゴールデンスランバーです。笑う警官を観たときに初めて予告編が流れまして、「同じ話じゃん」と思ったのを強く覚えています。
本作では、陰謀に巻き込まれて首相暗殺の濡れ衣を着せられる青柳を主役に、かつての仲良しサークル仲間4人組の活躍を描きます。
が、、、全編通じて流れるジャイブ調のバックミュージックや伏線に巧妙に見せかけた時系列シャッフル、そして無内容なのにスカした演出など、笑う警官の角川春樹を連想させる作品です。
とはいえ本作はまったく駄作というわけではないと思います、頭を空っぽにして観れば面白いことは面白いですし、雰囲気に流されれば割と良さゲな所に着地します。なので、本作を絶賛する人が居ても不思議ではないと思います。ただ、、、小手先で撮ってる感じが前面に出ていてちょっとどうかと思ったりもします。

本作の気になる点

本作で気になったのは、後出しじゃんけんの多さとディティールの甘さです。
特に後出しじゃんけんについてですが、これは伏線に見せかけているだけに結構タチが悪いと思います。
私が観ていた限り、伏線として機能していたのはアイドルの整形疑惑の部分と花火のバイトをしていたところぐらいです。そのほかはほとんど後出しです。というのも、伏線は「それ単体でも物語上機能するが、後から別の機能を追加で与えられる」ことです。例えば、冒頭のプレタイトルシーン(デパートの親子)は、後からさも伏線であるかのように繰り返されますが、単なる時系列シャッフルです。また冒頭のシーンで娘が一瞬居なくなったことに意味はありません。つまり「単体では意味が無いことにあとから意味が追加された」という事です。同様に下水道の話も書き初めの話も単なる後出しです。しかし花火と整形にはその時々に意味があるため伏線たり得ています。
こういった後出しじゃんけんの多さは普段映画をあまり観ない人には「よく出来た脚本」と誤解されがちです。作り手もそれを狙っているのですが、しかし実際には全部のストーリーを決めた後に要素をばらして前半に配置しているだけなので上手いわけではありません。
伏線として機能していない物を山盛りにするあたり、もしかすると実際に脚本を書かれた方はこれでOKとおもっているのかなぁと、ちょっと心配になってきてしまいます。
ディティールについてはやはりボロボロです。なぜ晴子がカローラのバッテリを取り替えるかの根拠がないですし、なんでそのタイミングで廃車の所に青柳が来るかも分かりません。極端な話、ほとんど全ての登場人物達がエスパーではないかと思うほど、適切な場所に適格なタイミングで意味もなく偶然現れます。
また公園のシークエンスも苦笑いです。生中継のテレビ映像に写っているのに何故か警官だけが見失いますし、晴子が花火をセットするのが早すぎます。物語はまったく解決しませんし、あまつさえ何が起こったかもロクに説明されません。かと思えば検問の前で明らかに不自然に左折した車をスルーしたり、車検を通ってない車が前を通ってもスルーです。カローラだってあんなバッテリー変えただけでは動くはずはありません、最低限タイヤも変えないと、、、。そのほかにも挙げればきりがないくらい不可解な点は多々あります。ご都合主義を連発しまくってしまったがために、単にフィクションレベルが下がって(=嘘くさくなって)しまっています。

【まとめ】

上にも書きましたが、決してダメダメな作品ではありません。よく言えば「作家性の強い」、悪く言えば「オッサン臭いすかしたダサさ」のある作品ですがボケ~っと観ていればそれなりに楽しめます。ポップコーン映画という点では十分にオススメ出来ます!

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ラブリーボーン

ラブリーボーン

本日は二本観てきました。まず一本目は

ラブリーボーン」です。

評価:(45/100点) – サスペンスというよりはスイーツ・ラブストーリー。


【あらすじ】

スージー・サーモンは両親と妹と弟の5人で幸せに暮らしていた。しかしある日中学校からの帰り道で向かいに住むジョージに殺害されてしまう。死後の世界へと旅だったスージーだったが、家族のことが心配でこの世とあの世の”狭間”に留まることにする。しばらく発って、スージーの家族はストレスから崩壊、ジョージは新たにスージーの妹・リンジーを狙い始めた。

【三幕構成】

第1幕 -> スージーと家族の日常とレイとの恋。
 ※第1ターニングポイント -> スージーが殺される
第2幕 -> 父の捜査と家族崩壊。
 ※第2ターニングポイント -> スージーが自身の死を受け入れる。
第3幕 -> リンジーの捜査とスージーの成仏。

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【感想】

とてもかっちりした構成の作品です。第一ターニングポイントはきっちり開始30分で来ますし、第2ターニングポイントはわざわざ暗転してシーンが変わります。非常にオーソドックスというか普段映画をあまり観ない人にも親切な作り方です。
実際、多少冗長に思う部分はあるものの終盤までは非常にスムーズに展開が進んでいきます。そしてスージー役のシアーシャ・ローナンも15歳とは思えないほど素晴らしい演技を見せてくれます。
と、ここまでは絶賛モードなんですが、いまいち微妙な雰囲気になるのはひとえに終盤の展開によるものです。
せっかく「犯人が妹を連れ去って、父親の捜索に手を貸す幽霊」的なベタなストーリーで盛り上げられるにもかかわらず、終盤のサスペンスシーンは「木の床板をそっと戻す」というこれ以上なくショボい展開のみで終わってしまいます。さらにはとってつけたような因果応報・悪が滅びるストーリーや急に道徳的になるスージー等、それまでの話を全て台無しにしてしまう程の超展開で観客全てを置き去りにして斜め上に突っ走ります。
正直な所、最後の30分までは80点~90点つけても良いほどの出来でした。せっかく前振りをして物語を積み上げていったにも関わらず、最後は家族をほっといて色ボケに走るバカ女のせいでメチャクチャです(笑)。
また、演出面もあまりいただけません。CGはさすがの出来ですし特にあの世の描写は本当に綺麗ですが、一方でスローモ-ションにコーラス曲を合わせる演出がしつこく繰り返されてちょっとイライラします。でも、前半のジョージの顔を隠す演出はなかなか上手いです。ピンボケやフレーム見切れを上手く利用して、何を考えているか分からない不審者としての犯人を表現しています。その割に顔がきちんと映るのが早すぎるんですが、まぁ引っ張っても「木の床板サスペンス」では面白くならないので、これで良いのではないでしょうか。面白くなる要素がそろっているだけに、つくづくラストが心残りです。

【まとめ】

良くも悪くもピーター・ジャクソン監督が仕事と割り切って適当に作るときの傾向が出ています(笑)。
きっと「ディストリクト9」のプロデュースが忙しくて片手間になったのかなとか思いつつ、時間が空いている方にはオススメ出来ます!
でもたぶん後悔するので、半年後にDVDで観た方がダメージは少ないかも知れません。一番おもしろかったのは開始前に流れた「第9地区」と「ブルーノ」の予告編でした(笑)。

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パーフェクト・ゲッタウェイ

パーフェクト・ゲッタウェイ

先週観て書き逃してました。

「パーフェクト・ゲッタウェイ」です。

評価:(60/100点) – スゴい変な映画だけど、テンションが上がる!


【あらすじ】

クリフとシドニーはハワイでの新婚旅行中に、ホノルルで別の新婚夫婦が殺された事件を耳にする。そして犯人は2人組のカップルらしい。不安に思う二人の前に2組の不振なカップルが現れる。果たして彼らのどちらかが犯人なのだろうか?不安に思いつつも、二人は離れ海岸へのハイキングを行う、、、。


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【感想】

とても変テコな映画です。サスペンスなのであまり詳しく書けないのですが、あきらかに「第一幕&第二幕」と「第三幕」で内容が違います。第2ターニングポイントである「離れ海岸への到着」を機に、物語の構造自体が変わってしまい、第三幕はテンションのみで無理矢理押し切ります。非常に安易な例えをするならば、「火曜サスペンスで大物が出てたら犯人」というお約束です。まぁ本作もポスター見た瞬間にネームバリューで犯人が分かるんですが(笑)
アイデア一発の出落ちレンタルビデオでも十分ではあります。しかしラスト30分はバカ映画としてかなり良い水準にあります。
オススメです!

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サロゲート

サロゲート

本日見てきたのは「サロゲート」です。

評価:(50/100点) – 普通。平均的。平凡。つまり無。

【三幕構成】

第1幕 -> サロゲートのある世界
 ※第1ターニングポイント -> 殺人事件が起きる
第2幕 -> 殺人事件の捜査 & トムが生身で活動を始める
 ※第2ターニングポイント -> ピーターズの>サロゲートがのっとられる。
第3幕 -> 事件の解決。


【あらすじ】

人間がリンクした疑体「サロゲート」によって世界中の犯罪は限りなく0に近くなっていた。そんななか、サロゲートが襲われオペレータが殺される事件がおこる。絶対安全と思われたサロゲート利用者が殺されたことは重大な問題であるため、FBIのグリアーとピーターズは極秘捜査を行う。そこにはサロゲートの開発者キャンターとVSI社の確執があった、、、。


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【感想】

普通。
悪いところも良いところもあって、いたって平凡な感じです。むしろ見た後に興味が再燃しないので若干つまらないよりかも知れません。非常にオーソドックスなサスペンスで、マクガフィンを探して彷徨うよくある話です。
ちなみに本作を見ている間中、実は攻殻機動隊がずっと頭に浮かんできました。きっと押井守なら、あのラストを人間とサロゲートの立場が逆でやったと思います。それやっちゃうとアバターですかね。
「人間の肉体がロボットで代行できるとしたら、人間の実存はどこに帰属するのか?」という命題は、攻殻機動隊およびイノセンス & 攻殻機動隊S.A.C.が5年以上前にとっくにやってます。
でも本作の方はそこまで踏み込んだ議論はしてくれません。美容整形手術と大差ないくらいの描き方です。そこはやはりSFものとしては不満でした。
10年前では考えられない非常に豪華なキャストが登場していますが、アメリカでは見事に転けました。有名俳優ばかり使っても客が集まらない良い例です。脚本もガタガタなりにこぢんまりとまとまっていますし、Vシネマだと思って気軽に見てみると良いかもしれません。
眠いのとあんまり書くことも無いくらい平凡な作品だったので今日はこの辺で(苦笑)

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ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

2本目は「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」です。

評価:(75/100点) – 変テコな映画だが面白い!


【あらすじ】

「ミレニアム」の発行責任者のミカエル・ブルムクヴィストは実業家ヴェンネルストレムへの名誉毀損の罪で3ヶ月の禁固刑の判決を受けてしまう。
一方、ヴァンゲル・コンチェルンのヘンリック・ヴァンゲルはミカエルの身辺調査を行う。調査結果に満足したヘンリックは、刑執行まで6ヶ月の猶予があるミカエルを個人的な調査員として雇い入れる。調査内容はヘンリックの兄の孫娘で失踪中のハリエットについてである。ヴァンゲルは調査を進めるうちに、失踪が連続殺人事件に関連することを突き止める、、、。


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【感想】

この作品を見るのは2度目です。初回は東京国際映画祭でした。原作はスウェーデンの大ベストセラーです。
日本での配給元であるGAGAの宣伝方針なのかやたらとダヴィンチコードを連想させる宣伝を打ちまくっておりますが、はっきりいってまったく関係ありません。
どちらかというと羊たちの沈黙のようなシリアルキラーvs女性捜査官のサスペンス映画です。
サスペンスものなのでネタばれ無しで行こうと思ったらあまり書くことがありませんでした(汗。。
本作の面白さの大半はリスベットが担っています。リスベット役のノオミ・ラパスは苦労人で、長くアルバイトをしながら俳優活動を続けていましたが一向に芽が出ませんでした。ところが本作の大ヒットで一気にスターになっています。確かに眠らせるには惜しい逸材です。リスベットは物語の大半で独特なパンク・ファッションを身にまとっていますが、後半でビジネス・ウーマン風の格好をするシーンがあります。そのギャップたるや凄まじく、ノオミ・ラパスの俳優としての潜在能力が遺憾なく発揮されています。
ツンデレというと安っぽいですが、「難しい精神状態とつらい過去を持ったサディスティックなクールビューティ」というとんでもなく難しい役をこなしたラパスはもっと評価されても良いと思います。
また、話の語り口もかなり巧みです。2時間40分と非常に長い上映時間でありながら、見ている最中はそこまで長く感じませんでした。2012とは大違いです。ただし、容疑者候補となるヴァンゲル一家の紹介が序盤に駆け足で行われてしまうため、なかなか人物関係が頭に入らないと思います。実際、初めて見たときは家族構成がわけ分かりませんでした。
ということで、下記に家系図を載せときます。是非これを何となくでも覚えてから本作を見てみてください。家系図さえ頭に入っていれば相当面白いです。

【まとめ】

映画的な大傑作というたぐいの物ではありませんが、サスペンスとしてはかなり良くできています。一部性的虐待等のシーンがありますので、どなたかと一緒に行く際にはお気をつけ下さい。とはいえ見て全く損は無い映画です。是非見てみて下さい。原作3作全てを映画化するようですので、残り2作を楽しみにしています。
ヴァンゲル家・家系図

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