The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド

The 4th Kind フォース・カインド」見て参りました。

評価:(5/100点) – 工夫はしているが、、、。


【あらすじ】

アラスカ州ノーム。アビゲイル・タイラー博士は寝室で就寝中に隣で夫を殺害される。その後、子供2人を育てながら不眠症の村人のサイコ・セラピーを続けるうちに、多くの人が共通の体験を持っていることに気がつく。夜中に見えるフクロウとは何なのか?そして彼らが体験したことは?セラピーの結果から徐々にタイラー自身の体験と夫の死の真相が明かされる。


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【感想】

非常に微妙な出来です。予告はそこそこB級っぽい雰囲気を出していますが実際には矢追純一やMMRと何ら変わりありません。しかも矢追純一を見たときに感じる真剣過ぎてくだらないというギャグすら成立していません。本作はよく言えば器用に作りすぎであり、悪く言えばテーマと語り口のトーンがチグハグです。

本作に見られる工夫の跡

厳しいことを書きましたが、本作には一つ大きな工夫があります。それはフェイク・ドキュメンタリーをいかに本物っぽく見せるかという部分です。
例えばブレア・ウィッチ・プロジェクトでは、公開前のネタ振りとしてケーブルテレビで「ブレア・ウィッチの謎」と称した特番を放送しました。また前後にwebを用いて嘘のニュースを流し続け、映画があたかも事実であるかと思わせるために多くの宣伝手段を利用しました。報道と称して映画の宣伝を行うことの倫理的是非はありますが、しかし成功したのは事実です。
一方、本作では特に前振りは行っていません。webを検索していただくと分かるようにタイラー博士のそれっぽい嘘記事もほとんどありませんし、むしろユニバーサルの公式コメント(=あくまでも作り物であるという宣言)ばかりが目につきます。この時点でフェイク・ドキュメンタリーとしては駄目です。
しかし本作では2重の創作をかませるという発明を行っています。嘘のドキュメンタリーを劇中でさらに再現映像化することにより、より嘘ドキュメンタリーの信憑性を高めようという発想です。この手法は本当に発明だと思います。惜しむらくは、ドキュメンタリー部分(=劇中における”実際の映像”)の出来があまり芳しくないことです。話の内容自体はよくあるアブダクトもの(=宇宙人による誘拐話。)ですから、本作の成功はこのドキュメンタリー部分の出来にかかっています。せっかくタイラー博士にぴったりの役者を連れてきているのに、肝心のビデオカムが微妙すぎて何とも言えない雰囲気になってしまいました。残念です。
とはいえちょいと腹が立つ部分もあります。それはラストで完全に監督が投げっぱなしにしていることです。「信じるか信じないかはあなたの自由です」とか言うのは勝手ですが、じゃあ入場料返せと思ってしまいます。アブダクトものの映画ならそれらしく、最後まで「UFOは実在する」で押し切ってもらわないと困ります。だって弱気になる矢追純一なんて誰が見たいですか?弱気になる糸井重里なんて誰が見たいですか?彼らが真剣だからこそ客観的に見てる我々は面白いんです。「なにムキになってんの?バカじゃね(笑)」というのが彼らを見る偽らざる観客心理ですし、だからこそ人気があるわけです。でも本作では監督すら本気でUFOの存在を信じていないわけです。そんなもの見せられても何とも言えません。「はいはい、わかったわかった。で?」というのが私の率直な感想です。だって信じてないならこの映画の存在意義が無いじゃないですか。UFOの存在を啓蒙する気もなくUFOを否定する気もない。いったい誰をターゲットにして何故作った作品なのでしょうか?ハッキリしているのはこれよりも100倍は「奇跡体験!アンビリバボー」の方が作り手の意図が見えて面白いって事です。

【まとめ】

え~本作は春先にバルト9で見たアルマズ・プロジェクトとタメをはれるレベルのがっかり映画です。個人的な意見ですが、フェイク・ドキュメンタリーの面白さはやっぱり出落ちであり、そしていかに制作側が真剣に「捏造しようとしているか」だと思っています。本作のような酷い作品を見ると、改めて「ブレア・ウイッチ~」の偉大さが良く分かります。予算は関係ありませんし役者も関係ありません。いかに知恵と情熱を傾けられるかが勝負のジャンルです。
本作からは真剣さが一つも伝わりませんでした。もっとまじめにやっていればコメディとして成立していたのに、なんとも残念な話です。
劇中の村人よろしく、我々もこの映画の存在を忘れましょう。それが一番幸せです。
最後になりましたが大事なことを一つだけ書かせてください。昨年「曲がれ!スプーン」を見て良い話だと思った人は本作を見る責任があります(笑)。だって、UFOを信じるのが純真で素晴らしいことなんでしょ?だったら本作を見て是非とも信じてください。本作をつまらないといった人は本広克行にぶん殴られますよ(笑)。

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アバター(2009)

アバター(2009)

今年最後の超大作「アバター」です。やっとこさありつけました。

評価:(60/100点) – 目が痛い。

【三幕構成】

第1幕 -> ジェイク・サリーがパンドラでアバター・プログラムに参加する
 ※第1ターニングポイント -> ジェイクのアバターがネイティリに出会う
第2幕 -> ジェイクとナヴィとの交流・そしてRDA陣営が実力行使に出る
 ※第2ターニングポイント -> ジェイクがナヴィ側につく決意をする。
第3幕 -> ジェイクがトルーク・マクトとなりナヴィ族をまとめてRDAと全面戦争を行う


【あらすじ】

交通事故で急死した兄の代わりに、ジェイクは惑星パンドラでのアバター・プログラムに参加をする。惑星パンドラの生命の樹の下には高価な飛行石が眠っており、RDA社はその鉱物採取のために原住民・ナヴィ族を立ち退かせることを画策する。アバターはナヴィ族を説得するための策であった。もう一つの肉体を手に入れたジェイクは、ひょんな事からナヴィ族に潜入することに成功し、彼らの信頼を得ていく。しかしナヴィの説得が困難と判断したRDAは実力行使を決断する。こうして人間vsナヴィ族の全面戦争がはじまった。


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【感想】

はじめに

非常にコメントに困る映画でした(笑。映像は良いけど話はね、、、。
とにかくベタでありがちで王道的な話です。ナヴィ族は青いだけでトライバル模様とか単なるインディアンですし、RDA社は絵に描いたような「侵略者としての白人」です。「優しい原住民vs傲慢な白人」とその中で白人でありながら寝返る主人公。いままで何十作もこんな映画を見たことがあります。言ってしまえば本作にとって話はどうでも良くて、あくまでも「3D映画」であることの技術的な実験作だと思って間違いないと思います。
ちなみに私は今回XpanD・字幕で見ました。本当はIMAXで見たかったんですが、めっちゃ混んでて全然チケット取れませんでした。やっぱり観客も目が肥えてきたのでしょうか?当ブログでIMAXを激押しした手前もあるのでこれで面白ければもう一回IMAXで見るんですが、正直これをもう一度見る気力はちょっと無いです。申し訳ない、、、。

目がぁ、、、目があぁぁぁぁぁ!!!(本作の元ネタより引用)

話については触れる程の出来ではないため脇に置きまして(笑)、やっぱり本作は3Dについてしか無いでしょう。
ということで、XpanDなんですが、、、目が痛いっす。まじキツいっす。とにかく上映時間が長いんですよ。2時間40分もちょい寄り目を続けてたらそりゃ目もやられますよ。
実は私、開始1時間30分ぐらいでちょっと酔い始めまして(笑)、ラスト30分くらいは心の底からさっさと終わって欲しかったです。
やっぱり3D映画はクリスマス・キャロルやファイナル・デスティネーションのように90分くらいがベストだと思います。
部屋の通路が奥に広がっているカットが多かったり、窓ガラス越しに人が何かやってるカットが多かったり、とにかく3Dを意識したカット割が続きます。そしてこれはほぼ成功しているといって良いと思います。こちらに向かってくる「飛び出す3D」はせいぜい矢が何本か来る程度で、基本的には奥行きを表現するための「舞台演劇の書き割り」として使用しています。この書き割り感が大変しつこく出てくるため「現在の3D技術のカタログ」という印象を強く持ちます。正直な所そこまですばらしい映像では無いと思いますし、造形だけを見ればはっきり言ってファイナル・ファンタジー13の方が良くできています。でも3Dとして見たときに、少なくとも2009年を代表する一本であるのは間違いありません。ここまで明確な「3D専門映画」というのはおそらく「戦慄迷宮3D」以来だと思います。「戦慄迷宮3D」が映像的にも物語的にも非常にがっかりな出来だったため、事実上は本作が最初の「一般的な3D専門映画」と言えるでしょう。3D映画のデモ・ムービーみたいなものですから、どうせならもうちょっと話を短くまとめて90分くらいにして欲しかったです。

【まとめ】

映像は一見の価値はありますが、でもそれだけの作品です。ですので2D上映で見たりDVDで見てもまったく面白くないと思います。ちなみに劇場で私の右隣がヤンキー・カップルで左隣が中年夫婦だったのですが、両脇からイビキが聞こえました(笑)。やっぱり話題先行で見に来た人やタイタニックに食いついて見に来る方には厳しいと思います。
博覧会の展示ブースに入ったつもりでストイックに3D技術を拝見しましょう。話はつまんないですし、なにせ訳者が某大物女史ですんで(笑)
「I like this Guy!」は「こいつ気に入った!」で良いじゃん別に(笑)。
いろいろ投げやりに書きましたが、こういう技術革新の最前線の作品はリアルタイムで見ることに意味があります。ジュラシック・パークしかり、ブレア・ウィッチ・プロジェクトしかり。残念ですが後からDVDで見ても単なる駄作にしか見えないと思います。年末年始に余力がある方は是非劇場で見てください!
余談ですが、先々週、Blu-Rayの3D用規格がBDアソシエーションからリリースされました。おそらく来年の夏頃には第1作目がリリースされると思います。タイミング的にはおそらくアバターかアリスインワンダーランドが家庭用3Dソフトの一作目になりそうです。

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宇宙戦艦ヤマト 復活篇

宇宙戦艦ヤマト 復活篇

昨日のはしご2作目は「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」です。

評価:(10/100点) – 西崎さんよ、、、言ってることとやってることが違いすぎるぜ。

【三幕構成】

第1幕 -> アマールへの第一次・および第二次移民船団の壊滅と古代の現状。
 ※第1ターニングポイント -> 古代進がニュー・ヤマトの船長として第三次移民船団の護衛に発つ
第2幕 -> ヤマトとエトス星艦隊の戦闘。第三次移民船団がアマールに到着。
 ※第2ターニングポイント -> 古代進がSUSに宣戦布告する。
第3幕 -> 地球・アマール連合軍vsSUS、そしてブラックホールが地球を襲来


【あらすじ】

西暦2220年、古代進が深宇宙貨物船「ゆき」の船長として地球を離れて三年が経過していた。その頃地球は巨大ブラックホールの衝突の危機にさらされており、アマール星への緊急避難を決行していたが、第一次および第二次移民船団は正体不明の艦隊の攻撃で壊滅してしまう。第一次移民船団「ブルーノア」の生き残りである上条を救出した古代は、地球への帰還を決意する。地球連邦科学局長官として移民計画の責任者となった真田より、古代は新生ヤマトの艦長と第三次移民船団の指揮を任される。こうして古代進は再びヤマトに乗り込み、人類の危機を救う旅へと出かけることとなった、、、。


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【感想】

ついに来てしまいました。いままでで一番本音を書きづらい問題作品でございます。なにせ相手は鉄砲持ったヤク中です(笑)。
角川春樹以上の強敵ですが、やってみましょう!!!
まずはヤマトの超書きづらい&説明しづらい「経緯」をざっとおさらいしつつ本作について書いていきたいと思います。覚悟はよろしいでしょうか?(笑)
おそらく超絶長くなると思いますのでご容赦を。

「宇宙戦艦ヤマト」という作品のこれまでの経緯

宇宙戦艦ヤマトは言わずとしれた松本零士の代表作ですが、厳密にはテレビシリーズがオリジナルで、マンガは先行マルチ展開という扱いです。ということで原点は1974年のテレビシリーズ第一作となります。舞台は2199年、ガミラス帝國の侵攻を受けた地球は放射能汚染によって人が住めなくなってしまいます。そんな中で、イスカンダルからメッセージ入りカプセルが届きます。人類は中に入っていた波動エンジンの設計図をもとに戦艦大和を宇宙船としてリニューアルし、イスカンダルへ空気清浄機(=コスモクリーナー)をもらいに行きます。これがテレビ版一作目で、1977年に劇場版として再編集されます。
続いてが1978年の劇場アニメ「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」です。舞台は2201年、謎の救難信号を受け取った人類は、発信源の捜索にヤマトを向かわせます。そしてテレザード星のテレサから白色彗星帝国が地球を侵略しようとしていると告げられます。地球を救うべく奮戦するヤマトですが、乗組員の大半が戦死、艦長となった古代進は数少ない生き残りを救難艇に乗せ、自らは恋人・森雪の遺体を抱いてヤマトで特攻を仕掛けます。
この結末を松本零士が気に食わず、TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」が同年に作られます。ここで「さらば~」から結末が変更され、乗組員の戦死と古代の特攻が無くなって白色彗星帝国を普通に倒してハッピーエンドになります。そしてこのテレビシリーズの続編として特番「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」が放送されます。新たな敵は暗黒星団帝國で、ガミラス残党軍とヤマトが共闘するファンサービス的な作品です。
翌年の1980年、新作劇場アニメとして「ヤマトよ永遠に」が公開されます。この作品では「新たなる~」で交戦状態になった暗黒星団帝國が本格的に侵攻してきます。小惑星イカルスにて真田によるパワーアップ改造を受けた宇宙戦艦ヤマトは、ついに暗黒星団帝國の本拠地に殴り込みをかけます。
この続編がテレビシリーズ3作目「宇宙戦艦ヤマトIII」です。ボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国との戦争によってダメージを受けた太陽が暴走、太陽の核融合がものすごい加速をはじめ地球が超温暖化の危機に直面します。そこで地球防衛軍司令長官の藤堂の命令を受け、万が一地球が住めなくなったときのためにヤマトは第二の地球探しに出かけます。
最後に1983年公開の劇場版「宇宙戦艦ヤマト 完結編」です。神出鬼没の水惑星「アクエリアス」を鍵として、母星を追われ行き所を無くしたディンギル星人たちが、地球人類を全滅させたあとで地球に移住しようと計画することから人類対ディンギル星人の戦いが始まります。なぞのご都合主義で復活した初代艦長・沖田十三の元で、再びヤマトとオリジナルメンバーの最後の戦いが繰り広げられます。完結編の名にふさわしいフルキャストのお祭り映画で、話はあんまり重要ではありません(笑)。
そしてこの後、「宇宙戦艦ヤマト」の企画立案に参加した西崎義展と松本零士の泥沼の著作権争いが起きます。これがものっすごいゴタゴタでしてこのシリーズのムック本や雑誌の特集が作りづらい環境が長らく続きました。っていうか今でも続いています。
さらに裁判後も西崎が東北新社に一部権利を”勝手に”譲渡したり、覚醒剤で逮捕されたり、さらにその保釈中にグレネードランチャーをフィリピンから持ち込んで再逮捕されたり、面白い話題が目白押しで誰も語りたがりません(笑)。
ハッキリしてるのは、「宇宙戦艦ヤマト」というシリーズが、劇場版2作目の「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」で一度完全終了した.にも関わらず、商業的な理由なのか何なのか、死んだキャラ達がパラレルワールド扱いで次々に生き返って何事もなく続編が作られ続けたと言うことです。そして原案立案者の西崎と松本の権利争いで、その続編すら作られなくなったと、まぁそういう流れです。
ちなみに死んだ人たちが生き返ったのは、私的には「金儲けのため」だと思いますが、公式には「特攻を美化するエンディングが嫌だったから作り直した」となっています。ここを良く覚えておいてください。「特攻を美化するのは嫌」です。ノートにメモって赤線引いてください。「特攻を美化→禁止」です。

本作「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」について

さて、ようやく話の本題です。いや、前項が長くなったのはきちんとした理由がありまして、それは先ほど赤線を引いた点を良くご理解いただくためだったんです。
じゃないと私の怒りが伝わらないので。
ふざけんな西崎さんよ!!!
おまえ特攻美化しまくりじゃねぇか!!!

ゴルイ艦長は武士道精神に則って特攻。
パスカル将軍はヤマトを守るために自ら盾となって名誉の戦死。
大村副艦長はSUS超巨大要塞のバリアを破るために特務艇シナノで特攻。
死ななかったものの古代艦長率いるヤマトは「生き残るべきはヤマトではない。地球である!」の演説の後、死を覚悟して巨大ブラックホールに特攻。
特攻。特攻。特攻。特攻だらけですよ。しかも全部が信念をもった熱い男の生き様を貫いた格好良い「特攻」です。
ねぇ西崎さん、あなた特攻が嫌だったんでしょ?
だから「さらば宇宙戦艦ヤマト」という超傑作を無かったことにしたんでしょ?
なんで今更「復活篇」とか言って特攻を美化する作品を作ったの?
それだけは一番やっちゃ駄目でしょ?
それやったら、「さらば~」以降の作品は全て「金儲けのためでした」って言ってるようなものですよ?
最低です。マジで最低です。
来年に沢尻エリカと木村拓哉で第一作の実写版をやるとか言ってますが、そんなもんの前にすでに破綻してますよ、このヤマト再始動ビジネス。
ちなみに、本作の脚本は単体で見ても穴だらけです。全人類がアマールへ移住するっていってるのに、アマールの女王は迷惑がってて許可取ってないみたいです。さらにSUSが支配する星間国家連合だっていってるのに、アマールとエトス以外の国家が出てきません。連合ってショボ過ぎじゃね?しかもSUSをつぶしたら大ウルップ星間国家連合の議決も無かったことになるっておかしくないですか?他の国は抵抗しないの?ぜ~んぜん意味が分かりません。
しかもラスボスは自ら正体や弱点をベラベラ教えてくれる超良い人(苦笑)。
「全世界が注目」を表現するのが、サバンナで空を見るライオンやキリンと、チベット仏教徒が空を拝むところと、北欧風の老夫婦が羊の横で空を見上げるところ(苦笑)。
古すぎる!
表現が「オヤジくさいダサさ」なんですよ。いま劇場版の1作目や2作目みても、ここまで古くさい感じはしません。あきらかに西崎さんの演出力が落ちてるんです。



いや、あんま言うと怖いんですよ。なにせグレネードランチャー持ってるヤク中なんで(笑)。

【まとめ】

ヤマトのファンなら何も言わなくてもとりあえず行くでしょう。それはたぶん正解です。でも、「ヤマトって有名じゃん。空いてるし観てみよっかな」とか思ってフラっと入るのはオススメ出来ません。まず意味が分からないですし、面白くもないです。それならまだ「劇場版マクロスF」に行くか、レンタルで「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」を観てください。
あと続編の具体的な予定もないのに「第一部完」とか最後に出すのはやめてください。商売根性みえすぎで萎えます。さらにエンディングテロップで言えば、一番大きなフォントで「西崎義展」って何度も出過ぎ(苦笑)。ホント、ナルシストというか老害って怖いですね。

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劇場版 マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~

劇場版 マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~

劇場版マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~」をレイトショーで見てきました。
お盆のサマーウォーズ以来のアニメ映画です。

評価:(60/100点) – 3DCGは素晴らしいがドラマパートに難あり。


【あらすじ】

西暦2059年、第25次新マクロス級超長距離移民船団マクロス・フロンティアは、1,000万人規模もの居住民を乗せて銀河の中心を目指す航海をしていた。ある日、近隣宙域を航行中の第21次新マクロス級移民船団マクロス・ギャラクシーより、トップアイドル・シェリル=ノームがコンサートツアーのため来訪する。しかしコンサート中に巨大生物バジュラがマクロス・フロンティアに襲いかかってくる。アクロバット飛行要員としてコンサートに参加していた早乙女アルトは、混乱の中でシェリルと知人のランカ・リーを助けるために可変ロボットVF-25に乗りバジュラを迎え撃つ。この事件をきっかけにシェリルと親交を深めるアルトであったが、シェリルにはスパイ容疑がかけられていた。そんな状況の中マクロス・ギャラクシーがバジュラの大群に襲われる。ギャラクシーのSOS信号を無視するフロンティア政府を尻目に、シェリルは自己資金で民間軍事サービス・S.M.S.を雇いギャラクシーへ派遣、残存艦の救助を命じた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> シェリルのコンサート
 ※第1ターニングポイント -> マクロス・フロンティアがバジュラに襲われる
第2幕 -> アルトとシェリルの交流
 ※第2ターニングポイント -> マクロス・ギャラクシーがバジュラに襲われる
第3幕 -> S.M.Sのギャラクシー救助作戦とフロンティアでの戦い


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【感想】

私は学生時代にものすごい分量のアニメを見てまして、70年代・80年代のクラシック作品も体系立てて見まくっておりました。ところが大学在学中に急に飽きまして、というか正確には萌えアニメの氾濫と作品レベルの低下に嫌気がさしまして、全く見なくなってしまいました。その代わりに映画の比重が上がりまして、いまでは年間三〇〇本とか映画館で見る映画ジャンキーになっております。とはいえアニメが嫌いなわけではなく、話題になった作品については後からレンタルDVDで追いかけています。
そんなこんなでマクロスFについても当然追いかけていました。TV版を見た感想は「イビつな作品だな」という物です。もともとマクロス・シリーズ自体が「男の子の好きな物はアイドルとロボットと飛行機!」という分かりやすいアホ・コンセプトです。それをとことん推し進めたというか、ドラマはどうでも良くてアイドルとロボットが格好良いから全部OK!ってな感じです。TV版は、はっきりとアルトとランカのキャラクターが混乱・崩壊していました。

■ テレビ版と比べて

まず本作のターゲットという部分ですが、順当に考えて9割方がテレビシリーズのファンだと思います。あきらかにテレビ版をミスリードの材料に使っている演出が目立ちます。ストーリーについては、テレビ版の煩雑なソープオペラ要素を極力抑えて、可能な限り最短距離で直進していっています。これは非常に素晴らしいと思います。特にアルトとランカの関係を「昔から知人」で片付けて、その分シェリルとの関係性に当てているのは好感が持てます。ただ正直に言ってストーリーテリングが上手いとは思えません。日本のSFアニメの悪い癖で、台詞で解説している間にストーリーが止まってしまうんですね。それに加えてどうでもいい単語にまで薀蓄がついてくるので、どうしても間延びしてしまいます。本作は120分ですがもう一声で90分程度までスリム化出来たように思います。

■ 3D・CGについて

本作の見所はなんと言ってもシェリルのコンサートシーンとヴァルキリーの戦闘シーンのCGの使い方です。シェリルのコンサートについては、音楽コンサートと言うよりはイリュージョン・ショーでありCGのプロモです。特に序盤のコンサートで歯車と小型ロボットを使った組み立てはとてもよいです。シェリルの歌自体が人を選ぶヘンテコな曲調ですが、映像との組み合わせが本当に良くできていて、単体でも十分に鑑賞に堪えます。
一方の戦闘シーンですが、これがまたとても良くできています。いわゆる「板野サーカス」をCGで再現しているわけですが、良い感じに歪んでいってます。
CGでロボットの映画というとマイケル・ベイのトランスフォーマーがあります。そして間違いなくトランスフォーマーの方がお金は掛かっていますが、演出(見せ方)によって本作の方が映像的にゴージャスに見えます。というのもマイケル・ベイはパン(カメラ視点の横移動)とカットバック(カメラ位置の切り替え)を頻繁に行ってスピード感をあげる方法をとりますが、河森正治は戦闘機やロボットの後ろを追う長回しのカメラフレームを使うことで臨場感をだします。前者は画面上の物体の位置関係が分からなくなるという欠点があり、後者は臨場感を出すために空間を歪ませる必要があります。この歪みというのがモデリングされたCGには難しい点です。そこで本作では爆発エフェクトやロケット軌道を利用して上手く歪む場面(=物理法則を無視した変な場面)を隠しています。この戦闘シーンについては当代随一のクオリティと言って差し支え無いと思います。ここだけでも1,200円の価値があります。

【まとめ】

個人的にはテレビ版よりも良くできていると思います。ストーリーが駄目でCG演出がすごいという点は共通ですが劇場版の方が話が整理されています。なかなか良く風呂敷を広げていますので、これを次作でどうやって上手く畳むかがポイントかなと思います。なんといっても劇場の大音響でロボットの戦闘シーンを見るとテンションがあがりますしね。オススメできる作品だと思います。



でもやっぱりドラマパートが退屈なんですよね~、、、。

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PUSH 光と闇の能力者

PUSH 光と闇の能力者

いろいろと微妙な噂を聞く「PUSH 光と闇の能力者」の微妙さを確かめてきました。
評価:(60/100点) – 最近このパターン多いですがアイドル映画としてOK。


<あらすじ>
ニック・ガントは物を操るムーバーである。あるとき彼の元に予知能力を持った少女・キャシーが現れる。あるカバンを手に入れると政府機関ディヴィジョンに捕らえられた彼女の母が救えるらしい。ニックはディヴィジョンから脱走したかつての恋人キラと共にキャシーに協力していく、、、。
<三幕構成>
第1幕 -> ニックのキャラ紹介
 ※第1ターニングポイント -> ニックが目覚めるとキャシーが睡蓮を持っている
第2幕 -> カバンを探して奔走
 ※第2ターニングポイント -> カバンがとある建築中のビルにあるのが分かる
第3幕 -> カバン捕獲作戦


<感想>
今回は「微妙でした」と一言で終わらしちゃっても良いんですが、結構良いテキストになりそうなのでCGとストーリー構成について考えたいと思います。
■ 舞台とCGについて。
本作の舞台は香港です。この「アジアでありながらイギリスっぽくもある折衷感」があんまり使えておらず、なんで香港にしたかがよく分からないのが正直なところです。おそらく俳優を欧米人で固めたいけれど中国の胡散臭い感じも出したいということだと思いますが、どうにも俳優が浮いちゃってるんですね。あきらかに風景に溶け込めておらず、隠れて逃げてるはずなのに超目立つという失笑ものの事態になってしまっています。
この溶け込めない感じはCGを使ったアクションシーンにも言えます。念力みたいな空気のゆがみが飛んでいったり、かと思えばどうかってぐらいに合成感たっぷりな閃光が散ったり、お金が掛かってるんだか掛かってないんだかよく分からない微妙なチープさを醸し出しています。いかにも「スタイリッシュなアクションだろ!」と自己主張する外連味たっぷりなカメラワークをしてくるんですが、それが一段とダサさを補強してしまっていてなんか可哀想になってしまいます。
根本的な話になってしまうんですが「超能力」を映画で表現する時にCGを使うのは結構勇気がいります。というのも、通常それは「目に見えない」物であるからです。もちろん空気がゆがむとかそういう物理現象が発生するのは良いのですが、それをやり過ぎると完全にマンガ表現になってしまうんです。同じ「超能力で相手を吹っ飛ばす」にしても、例えばスターウォーズでは単純に相手が吹っ飛んでいきます。フォース自体をCGで可視化することはしません。それは明らかに安っぽくなってしまうからです。CGを使えばはまさにお絵かき感覚でいろんな要素を画面に作ることが出来ます。でも嬉しくなってやり過ぎちゃうと貧乏臭くなってしまいます。このサジ加減と自己抑制がイマイチ崩れてしまっているように見えます。
格好良くするためには「描くこと」と「描かないこと」をバランス良く調整しないといけないという良い教訓となっています。
■ ストーリー構成について
○物語における主人公のステップアップ
とはいえ、前項に書いてきたことはあくまでも絵の安さであって、B級映画好きには特別欠点には見えません。むしろ本作で問題なのはストーリー構成についてです。
皆さん、ドラゴンボールというマンガをご存じでしょうか?よく分からない方はドラクエとかファイナルファンタジーのようなRPGゲームを想像してください。
主人公は最初かなり弱いです。ところがいろんな敵と戦ってどんどん強くなっていきます。そして最終的には世界を救っちゃったりします。
ここには二つの大事な要素が入っています。一つは主人公が成長していくという点。もう一つは敵が段々と強くなっていく点です。これは成長していく主人公がその時々で頑張らないと勝てない「自分よりちょっと強い相手」を倒していく必要があるからです。
つまり、レッドリボン軍と戦ってるときにいきなりフリーザが攻めてきたら地球は全滅しちゃうわけです。セル最終形態を倒した後に桃白白が出てきても、下手すればデコピン一発で倒せてしまうわけです。主人公の成長と敵の強さは綺麗に比例していないとシラけてしまうという事です。
映画のストーリーにもこれと同じ事が言えます。主人公は物語上いろいろな困難をクリアし、話が進んでいきます。困難は最初が一番易しく、終わりに向かってどんどん難しくなっていきます。これを次々と越えることで主人公はステップアップしていくわけです。そして最終的に大きな困難を乗り越えるカタルシスが待っているわけです。これがクライマックスです。では本作について、簡単に敵を見てみましょう。
○本作における戦闘歴
まず冒頭の市場で襲われるシーンでは中国人のウォッチャー・The Pop Girl とその弟のブリーダー・The Pop Boysが登場します。このThe Pop Girlは物語を通してキャシーに立ちはだかるライバルです。The Pop Boysは奇声を挙げて相手を流血させるという超強い能力を持っています。すなわち、このシーンはボスキャラの顔見せみたいな物です。実際にこの段階ではニックは全く歯が立ちません。
つづいての戦闘はエージェント・マックとエージェント・ホールデンをキラが翻弄するシーンです。ここではキラがプッシャーとして相手を操る能力がずば抜けていることが分かります。いきなり最強助っ人候補です。
次は飛びましてカーバーと側近ヴィクターが登場する中華料理屋のシーンです。カーバーは父親の仇(?)とも言える人物で因縁の相手です。そして側近のヴィクターはニックと同種の能力者です。すなわち、ニックにとってのライバルがヴィクターであり、ラスボスがカーバーです。やっぱり歯が立ちません。
さて、次ですが、いきなりクライマックスに飛びます。建築現場で中国マフィアとディヴィジョンとニックが入り乱れてのラストバトル、、、かと思いきや、マフィアはヴィクターと洗脳されたキラが殆ど全員瞬殺してしまい、結局ニックとヴィクターの一騎打ちになる、、、、かと思いきや、ヴィクターもThe Pop Boysの片割れに殺され、結局ニックはThe Pop Boysをちょっと竹槍もどきで殺しただけです。そして物語終了。
はい、ここまで読んでいただいた皆さんはもうお解りですね?この物語はニックが成長する様子も無ければ、成長した結果として歯が立たなかった敵を倒したりすることもありません。ストーリーの推進力がこれでもかっていうくらい不足しています。せっかく超能力者が入り乱れての大乱闘になる要素があるのに、設定を全く生かしていません。唯一正当に成長してライバルを越えるのはキャシーです。彼女は自分より能力の優れたThe Pop Girlの裏をかいて倒します。きちんと乗り越えたわけです。でも彼女だけなんです。後の人たちは成長も工夫もたいしてしません。ちなみにニックの最高の見せ場である赤い封筒配りも、あれはカーバーではなくThe Pop Girlへの対策です。みんな彼女を倒すのに夢中ですが、でも彼女はラスボスじゃないんです。駄目だこりゃ。
<まとめ>
毎度の事ながら、何故ここまで微妙なのに60点/100点かというと、それはもうハンナ・ダコタ・ファニングが可愛いからです。アイドル映画としてだったら全く問題ない出来映えです。全編通じて明らかにポール・マクギガン監督がハンナに恋をしている、フェティッシュなカット割りが続きます。ポール・マクギガンは46才で結構のっぺりした顔をしてます。、おまえその年と顔でハンナ萌えはヤバイだろとか思いつつ、堂々たるアイドル映画です。ハンナ・ダコタ・ファニングのファンなら絶対に何があろうとオススメです!

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きみがぼくを見つけた日

きみがぼくを見つけた日

風邪から回復したので
きみがぼくを見つけた日」に行ってきました。

評価:(75/100点) – タイムトラベル。いいね。良くないけど^^;


■ あらすじ

タイムトラベル能力を持った男の前に、自分を知っているという女が現れた。未来の自分が過去でナンパしてきたらしい。結婚するものの、タイムトラベルを制御できない男はいわば放浪癖のあるダメ男。妻は嫌気がさしつつも惚れた弱みで離れられない。そんな二人に子供のことである問題が、、、。
<三幕構成>
第1幕 -> ヘンリーとクレアの出会いとタイムトラベル、そして結婚。
第2幕 -> 夫婦に子供はできるのか? どうすれば良い?
第3幕 -> 死期を知ってしまうヘンリーとアルバの交流。

■ 感想

素直に面白かったです。かなり好印象。ただし、ちょっと一部のSFファンには厳しいだろうなという点もちらほら。それは後ほど整理します。まずはざっと感想を。
この話は、カテゴリとしてはSFではなくラブストーリーです。タイムトラベルは一種の「放浪癖」であり、「どうにもならない理由で引き裂かれる二人」を演出してくれます。初夜でいきなりいなくなる新郎。クリスマス前にいきなりいなくなる新婚の旦那。でも待ち続ける妻。泣けてきます。
ちなみに原題は「The Time Traveler’s Wife(タイムトラベラーの妻)」というモロにSFでございって言うものです。日本では「きみがぼくを見つけた日」というラブストーリーを前面に出したタイトルにしてますが、たぶん正解です。OL層の取り込みを考えてのことだと思いますが、この映画はコテコテのSFファンよりは間違いなく女性の方が楽しめると思います。
妻と夫の引き裂かれる愛、そして娘への思い。泣きたい方は思う存分、泣けば良いじゃない。ちなみに私もちょっと涙腺やられました。泣ける。

● SFとしてどうよ問題

これは絶対に出てくる問題です。しょうがないです。結論から言いますと、「きみがぼくを見つけた日」は
SFレベルを思いっきり下げてセンチメンタルに流した作品です。
サイエンス・フィクションには「SFレベル」というものが存在します。要は科学考証の厳密さです。SFというのは基本的にはハッタリです。ぶっちゃけ嘘です。ですので「どこまで嘘をついて」「どこから本当のことを入れるか」というサジ加減が必要になってきます。
たとえば、スターウォーズというSFの超名作があります。この作品中のC3POとかR2D2の造形を見ると、きちんと腕にシリンダーが見えたりしますし、攻撃されると火花が出ます。つまり、「人工知能ができるかどうかはハッタリだが、駆動部分のメカ機構は本当」ということです。また、「宇宙空間では無重力なのでデススターの近くに宇宙ゴミが浮いているのは本当だが、真空なのにレーザーガンの音が聞こえるのはおかしい」ということもいえます。ジェダイが使うライトセーバーやフォースは完全にファンタジーな超能力です。でもスターウォーズはSFです。つまり、スターウォーズは「SFレベルをちょっと押さえてファンタジーに振った作品」と言えます。
では、「きみがぼくを見つけた日」はどうでしょうか?
タイムトラベルについて、どうやって能力を取得したのかは一切語られません。また、過去の自分と接触したり、過去の人に未来を教えるなど、この手の「タイムトラベルもの」ではタブーとしていることもバンバンやります。過去の世界に干渉すれば、当然バタフライエフェクトが起きて未来が大きく変わるはずですが、そんな気配はありません。でも良いのです。
上記のスターウォーズと同じように、この作品ではタイムトラベルをただの超常現象としてあくまでファンタジックに使ってるんです。だから科学的考証はほとんど入っていません。わりと厳格なSFファンが見ると「なんじゃそりゃ」と言いかねませんが、これでも十分SFなんです。

■ さいごに

「きみがぼくを見つけた日」を気に入った方は、是非「ダンデライオン・ガール」という短編SFを読んでみてください。残念ながら文庫本は絶版ですが、ネットで検索してみてください。原文はこちらのwikipedia(英)の下部にリンクがあります。
タイムトラベルと恋愛を重ねるのはとても古典的な手法です。マンネリといえばマンネリですが、でもなんか好きなんです。
男のクセに乙女ちっくなだけかもしれません。お勧めです。
あ、ちなみに、SFレベルの高いタイムトラベルものが見たければ、「バタフライエフェクト3」も超お勧めです。こちらは単館系ですがめっちゃ良作です。必見。

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記事の評価
バタフライエフェクト3/最後の選択

バタフライエフェクト3/最後の選択

バタフライエフェクト3/最後の選択
評価:(85/100点) – 第一作を踏襲したタイムスリップ・サスペンスの傑作。続編制作のお手本。


■ あらすじ

タイムスリップ能力を持つサム・リードは過去に行って事件現場を目撃することで、警察の捜査に協力していた。ある日彼の元にかつて殺された恋人の妹が訪ねてくる。彼女は犯人として死刑が迫ったロニーが無実であると確信し、真犯人の捜査を依頼してくる。彼は恋人の殺害現場へのタイムスリップを承諾するが、つい過去に介入してしまう。そこから全てが狂い始めた、、、。

■ 三幕構成

第1幕 ->サムの能力・人柄紹介
 ※第1ターニングポイント -> サムがレベッカの殺害現場へタイムスリップする
第2幕 -> 連続殺人事件の捜査
 ※第2ターニングポイント -> ビッキーが殺されサムが逮捕される
第3幕 ->解決編

■ 感想

傑作!!

この作品はバタフライエフェクト・シリーズの三作目ですが、前二作との直接のつながりはありません。実はこのシリーズは、第一作目がSF史に残る大傑作だった反面、二作目がとんでもない駄作でした。何故かというと、第一作目を傑作たらしめた重要な要素が二作目でごっそり削げ落ちてしまったからです。すなわち、「過去を変えたところで状況が改善される訳ではない(むしろ悲惨になる)」「タイムスリップは体への負担が高く寿命が縮まる」という事です。そしてもっとも重要なのは「状況を大きく変えたいのであれば、その状況の根本を変えるしかない」という事です。第一作目では物語設定の根本に立ち返ることで、それまでのストーリーを全てひっくり返し、結果ラブストーリーとして非常に上質な情緒を表現しました。このどんでん返しであり「厳しい現実的な完全解」こそが、バタフライ・エフェクトを名作にのし上げた大きな要因です。
さて、シリーズ三作目の本作はまさにこの第一作目の要素をリファインした作品です。とてつもなく控えめに張り巡らされた伏線とも気づかないほどの伏線は、まさにクライマックスの瞬間に全てが一点に集約されます。その見事さといったら、そんじょそこらのサスペンスには太刀打ちできないほどのレベルです。さらにその集約した一点というのが、前述の第一作目の要素を忠実に再現しているわけです。これは本当に凄いことです。ここからは「物語原型」という概念に焦点を絞って、人気作・傑作の続編について考えてみましょう

物語原型について

物語原型の話をする前に、まずはログラインについておさらいしましょう。「知ってるわ、ボケ~。」というかたは、次のタームまで読み飛ばしてください。
よく小学校の国語のテストで「物語のあらすじを書きなさい」という問題が出ると思います。僕も散々やりました。例として、みんなが知ってる「桃太郎」について考えてみましょう。地域ごとのバリエーションとかは特に気にせずにお願いします。
桃太郎のあらすじを乱暴に書いてみますと、、

ある日、川で洗濯していたおばあさんが川を流れてきた桃を見つけました。それを割ったら男の子がでてきます。男の子は正義感が強く、みんなを苦しめる鬼退治に出かけます。桃太郎と名付けられた男の子は、道中おばあさんにもらった吉備団子で犬・猿・キジを味方に付けて、見事に鬼を退治しました。めでたし、めでたし

こんな感じです。すごい乱暴すぎてバツつけられそうですが(笑)。
これはあくまでも「あらすじ」です。ではこれをログラインに直して見ましょう。ログラインとは「あらすじ」から具体性を徹底して削った「話の根幹」です。

ある所に突如やってきた「よそ者」が、困っている人を助けるために色々な仲間を集めて、ついには悪い奴を退治する話。

はい、こうです。これなら100点(笑)。
ここで、桃太郎のことは一旦忘れて上記のログラインだけを考えてください。さて問題です。上記のログラインを読んであなたが思い出す作品はなんですか?
ロード・オブ・ザ・リング?七人の侍?それともゲームのドラゴンクエスト?
全部正解です。もっと言うと西部劇の八割はこんな感じです(笑)。
すなわち、ある作品や映画を読んだり見たりしてログラインに起こすことで、物語の一番基本的な流れが分かるわけです。そして全然印象の違ういろんな作品が、実は同じログラインを共有していることに気付くはずです。こういったログラインの事を物語原型と言います。

バタフライエフェクトの物語原型

さて本題です。本作のストーリーをログラインとして端的に表すと、「ある特殊能力をもった人間が、嫌な過去を変えるために色々試みるが、挫折し、遂には根本的に世界を変える話」です。

つまり、第一作目と全く同じ物語原型を持っています。決定的に違うのは、第一作目はあくまでもラブストーリーであり、本作はサスペンスであるという点です。すなわち「バタフライ・エフェクト1」と「バタフライ・エフェクト3」は、全く同じ物語原型を共有しながら表面に出てくる肉付けが違う作品ということです

素晴らしい。まさに続編制作の鏡です。単体で見ても楽しめて旧作のファンも喜ぶ、まさに最高の手法です。セス・グロスマン監督Good Job!

■ まとめ

ここまで書いたように、本作は傑作である第一作目の安易な「焼き直し」に留まらない、しかし確実に忠実な作品です。
一作目を見た人も、はじめてシリーズを見る人も間違いなく楽しめる超良作です。惜しむらくは公開館が少ないことですが、是非、見てください。遠出してでも見る価値があります。オススメです!

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