孤高のメス

孤高のメス

日曜の2本目は

孤高のメス」です。

評価:(45/100点) – 手術描写は頑張ってるが、話としては退屈。


【あらすじ】

さざなみ市民病院はロクな外科医がおらず、近隣の大学病院に頼り切っていた。そこにピッツバーグ大学出身の当麻が赴任する。彼は急患で運ばれてきた料亭のオヤジを緊急オペで見事に救って見せ、市民病院でもオペが可能であることを見せつける。やがて停滞していた看護師達もやる気を見せ始め、市民病院には活気が戻ってくる。
一方、大学から派遣されてきていた医師達は当麻を快く思っていなかった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 弘平と母。
 ※第1ターニングポイント -> 当麻先生が赴任してくる。
第2幕 -> 当麻先生の活躍。
 ※第2ターニングポイント -> 脳死肝移植手術を決意する。
第3幕 -> 脳死肝移植手術


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【感想】

日曜の二本目は「孤高のメス」です。先週公開の作品でスルーしてたんですが、結構評判が良かったので見てみました。お客さんは中高年を中心にかなり入っていました。

確かに、本作での手術描写はかなり頑張っているように見えます。きちんとオッサンの肝臓は汚く、若者の肝臓は綺麗なピンク色で描いています。私も実物は分かりませんが、なんか「本物っぽい」感じはとても伝わってきました。ところが、、、肝心のストーリー部分がかなり雑です。類型的なスーパー外科医に、類型的な感じ悪いエリートが突っかかるという構図。そしてその中で起こるのは、典型的な足の引っ張り合いです。倫理的な問題を脇においても、決定的に盛り上がりません。
相変わらず日記で始まるのに浪子が見られないシーンが一杯出てくるのですが、そこはそれほど気になりません。やはりどちらかというと、手術のシーンに力をかけ過ぎてしまいそれ以外がおざなりになってしまっている点が問題だと思います。

特に後半、脳死の話になってからは、もはや登場人物の誰一人冷静な判断をせず、みんなが泣き方向に行ってしまいます。あまりに無茶苦茶な事をみんなで言い始めるため、物語の整合性以上に予定調和的な展開になることが丸わかりで急激に冷めてしまいました。

作品全体がストーリーよりも泣き脅しの方向に向かう傾向にあるため仕方がないのかもしれませんが、もうちょいドラマ側でなにかイベントが欲しかったです。結局当麻先生は欠点がないんです。じゃあなんでさざなみ市民病院に来る前に各地を転々としていたんだって話はあるんですが、あまりにも欠点がなさ過ぎて、サスペンス的なハラハラがまったくありません。安心して見られてしまうので、成功率は5分5分と言われても全然気になりません。本当に惜しいです。

【まとめ】

さながら2時間ドラマのような地味さと記号表現でした。ですが、手術シーンは間違いなくワクワク出来ます。もし時間が余っているようであれば、見て損はないと思います。

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記事の評価
FLOWERS -フラワーズ-

FLOWERS -フラワーズ-

日曜の1本目は

「FLOWERS -フラワーズ-」です。

素直に「TSUBAKI」で良かったんじゃ、、、。

評価:(7/100点) – ドラマが無い、雰囲気キャラものオムニバス。


【あらすじ】

ある一家の3代に渡る親子物語を、イイ感じの雰囲気でまったり語る。


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【感想】

日曜の一本目は「FLOWERS -フラワーズ-」です。初日の舞台挨拶がヤフオクで100円だったそうですが、さもありなん。収容人数500人の箱で観客は10数名でした。公式サイトで「作品紹介」のボタンを押しますと、「日本中の女性を元気にしたい。」とかでっかい字で出てきますが、どっちかというと、「日本中の男女を虚無感で脱力させたい。」って感じですw。
とにかく、内容が酷すぎるんです。ドラマが一切無く、ただひたすら有名女優達が「なんかそれっぽい」感じの記号的セリフを繰り返すだけです。まさしく「資生堂CM」そのもので、まるで企業のイメージ映像を1800円払って見に行った気分です。
それもそのはずで、本作は資生堂の全面監修の元、ROBOTがCGバリバリの「ファンタジー・ノスタルジー」を見せるという地獄絵図のような体制で作られています。今月二本目のROBOT制作ですが、RAILWAYS以上に悪質な「ALWAYS 3丁目の夕日」テイストになっています。
とにかく、そのノスタルジーの出し方が本当に反吐がでるんです。
だって、田中麗奈のパート(昭和44年)では減色処理をした上で背景の全てをCGで書いているんですが、空とか街灯が一切動かないんです。完全に「書き割り」ですよ、これ。「オープン・ユア・アイズ(1997)」「バニラ・スカイ(2001)」で「The Freewheelin’ Bob Dylan」のジャケット写真をトレースするというシーンがありますが、アレです。「オープン・ユア・アイズ」では作中でも「妄想の世界」として気持ち悪い「書き割り」を意図的にやっていたわけですが、本作では本気でこれが良いと思ってやっているんです。おそろしいほどのセンスの無さです。
もっと腹が立つのは冒頭の蒼井優のパート(昭和11年)です。白黒映画の雰囲気を出したいんでしょうが、全然白黒映画になっていません。白黒映画ってのはですね、「色の階調」が少ないからこそ「ライティング」とそれによって生まれる「陰影」「物の輪郭」が大事なんです。昔の白黒映画を見れば分かりますが、全てにおいて「いかに影を出すか」「どこを黒で隠すか」が監督の腕の見せ所なんです。本作の蒼井優のパートはハッキリ言って「白黒映画」ではなく「グレースケール映画」です。白黒のクセして階調がありすぎるし明るすぎるんですよ。そのくせ居間のシーンや蒼井優が母親に髪をとかしてもらうシーンでは、画面のど真ん中にこれ見よがしに電灯を置いてくるんです。昔の映画の雰囲気を出したいなら、表面を適当に真似するんじゃなく、きちんと分析して実践して下さい。ダサ過ぎる。
さらに言うと、いちいち時代が変わる度に「その時代っぽい曲」が流れるわけです。これは本当にイライラしました。
この映画の企画は良いと思うんです。すなわち、有名女優(あえて名優とは言いません。)を山程集めて、ある一家の年代記にするという発想です。でも、せっかく年代記にするなら、きちんと世代を越えた共通点=業(カルマ)を見せる必要があります。今年の2月に見た「50歳の恋愛白書」なんかはまさにそこ(=嫌いな母に否応なく似てきてしまう娘)を丁寧に描いているわけです。ところが、本作は特に親子である意味がありません。完全に各人のパートが分裂してしまっているんです。唯一仲間由紀恵と鈴木京香のパートが出産をキーワードに少しオーバーラップしかかるんですが、しかし立場も状況もまったく別で、すれ違ってしまいます。、
また、コレはわざとだと思うんですが、出てくる男性人がことごとくブサイク揃いですw。資生堂としては「日本女性は綺麗だ」というメッセージを打ち出したいはずなわけで、わざわざ男のレベルを落として相対的に女性を持ち上げる必要はないとおもうんですけど、、、。

【まとめ】

本作はある一点を除いてまったく実になることのない作品でした。糞映画というよりは空虚な映画です。雰囲気以外にはな~にもありません。
もちろん実になる一点というのは、田中麗奈の鼻の穴の大きさが次長課長・河本とほぼ同じってことです。
田中さんをいじりすぎですが、他の俳優の方々も誰一人得していません。
まったくお勧めいたしませんが、もしチケットショップで前売りが50円で売っていたなら見て損はありません。二時間の安眠をお約束いたしますw。

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アイアンマン2

アイアンマン2

本日の二本目は

「アイアンマン2」です。

評価:(70/100点) – 来るぞ!!! 遂にアベンジャーズが来るぞ!!!!!


【あらすじ】

巨大軍需企業・スターク・インダストリーの社長トニー・スタークは心臓に刺さったミサイルの破片を引きつけるために胸に「アーク・リアクター」を装着している。そしてそのアークリアクターを動力として利用するパワードスーツを開発し「アイアンマン」へと変身する。
ある日、モナコでF1レースに出場したトニーは、同型のパワードスーツを着たアイヴァン・ヴァンコに襲撃される。その場で逮捕されたアイヴァンだったが、スターク・インダストリーのライバル会社・ハマーインダストリーのジャスティン・ハマーの手によって脱獄、新型パワードスーツの開発要員として雇われてしまう。
果たしてアイヴァンとハマーのコンビを前に、トニーは生き残ることが出来るのか、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 上院軍事委員会 への召還とナタリーの登用。
 ※第1ターニングポイント -> ウィップラッシュの襲撃。
第2幕 -> ハマーの策略とローディのアイアンマンMk2.
 ※第2ターニングポイント -> スタークエキスポでのハマーインダストリーのプレゼン
第3幕 -> ウィップラッシュvsアイアンマン


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【感想】

今日の2本目はアイアンマン2です。ご存じロバート・ダウニーJrの大復活作にしてハイクオリティなアメコミ・ヒーロー映画を創造した前作に引き続いて、今作でも金持ちでイケメンで天才だけど子供っぽい、物理工学オタクの完璧超人トニー・スタークが大暴れします。
相変わらず保護者であり恋人未満な甘酢の対象として、究極秘書ペッパーも登場します。そして敵役は完全にレスラーのまんまのミッキー・ローク、アベンジャーズのリーダーもやった恋人・ブラックウィドーにスカーレット・ヨハンソン。もう美男美女+むさいオッサンの完璧超人達が所狭しと大暴れします。
話の内容は至ってシンプル。逆恨みする男とライバルの嫌なヤツが突っかかってくるだけですw。でもそこは我らのトニー・スターク。苦戦するかとおもいきや朝飯前でサクっと倒してしまいます。あまりにウィップラッシュが弱すぎて全然話にならないんですが、それはそれw。ちゃんと前作で「next time」とネタフリしていたローディのウォーマシーン化もあり、そして前作同様のD.I.Yシーンも健在で、前作以上にアップテンポなキャラクターものに仕上がっています。ごちゃごちゃ言うのもヤボな程、とにかくエンターテイメント映画としては無類の面白さで釘付けにしてくれます。
でもね、100点付けたのはそれだけが要因じゃないのですね。それはね、、、、、

アベンジャーズキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!

Wooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アベンジャーズついにキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!キタキタキタキタ



すみません。つい取り乱しました。
アベンジャーズが来たんですよ。前作ではエンドロールの後にニック・フューリーが20秒ぐらい顔を見せただけだったんですが、遂に本編に堂々と出てきます。っていうか今回は、S.H.I.E.L.D.の作品に占める割合がかなり高くなっています。
一応知らない人のために説明しますと、アメリカにはアメコミの2大ブランドとして「DCコミックス」と「マーベルコミック」があります。1960年に「DCコミックス」が、バットマンやスーパーマンやフラッシュ等のスーパーヒーローを全部合わせたオールスターごちゃ混ぜコミックを「ジャスティス・リーグ」という名前で始めました。これに対抗して1963年にマーベルも同様の企画ものを始めます。これが「アベンジャーズ」です。「アイアンマン」と「キャプテン・アメリカ」と「雷神ソー」が中心で結成されまして、その中でも特にアイアンマンの世界が中心となっています。要は水島新司の「大甲子園」のノリです。スーパーヒーロー全員集合の夢の企画で、映画化の噂は前から絶えませんでした。このアベンジャーズの作中でヒーロー達が所属する”大ヒーロー本部”が「S.H.I.E.L.D.」です。そして長官のニック・フューリーがすべてのヒーローをまとめ上げるカリスマ・司令官なんです。
本作「アイアンマン2」では、特に後半以降に完全に「S.H.I.E.L.D.」の話になります。劇中ではあんまり説明がないんですが、これってフューリー長官がヒーロー達をスカウトしてる最中にトニー・スタークの所に寄ってるんですね。そしてトニーが地下にハドロン衝突型加速器を作っている時に高さ調整するのに使うオブジェクトが「キャプテン・アメリカ」のトレードマークである星マークの入った盾です。そしてエンディングの最後には雷神ソーのムジョルニア(ハンマー)が映ります。さらにトニーは「S.H.I.E.L.D.」と顧問契約の話までします。ということは、、、、いよいよ来てしまうんですよ。大ヒーロー祭りが!!!!!
YES!!!!!! Yeeeehhhhhsssssss!!!!!!!!!!
WOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!
すみません。つい取り乱しました。
近年に映画化されたマーベル作品というと、「X-MEN」「スパイダーマン」「インクレディブル・ハルク」があります。これに来年公開の「ソー(2011年5月6日公開)」「キャプテン・アメリカ(2011年7月11日公開)」が混ざるわけで、完璧にアベンジャーズ+アルティメッツの布陣になります。よっしゃーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

【まとめ】

興奮しすぎて作品について全然書けてないですが、それほどまでにこの作品は大事件です。「スパイダーマン2」に匹敵するかもしれないぐらい、アメコミ映画化作品のクラシックになり得る作品だと思います。もうね、スカーレット・ヨハンソンの素敵かつフェティッシュすぎる演技を見られただけでも大満足ですよ。結局本作に出てくるのは全員が究極超人なので、それだけでおなか一杯です。
オススメです!!!!。 ファミリーでもデートでも見られますので、超・超・お勧めです!!!!

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アウトレイジ

アウトレイジ

今日も今日とて2本です。1本目は

北野武最新作「アウトレイジ」を観てみました。

カンヌでボロクソだったみたいですが、外国人にこの文脈はわかんないのかなぁ。

評価:(85/100点) – ヤクザ映画の皮を被った懐古の嘆き。


【あらすじ】

極道の山王会池元組・池元組長は独立系の村瀬組組長との仲を疑われ立場を危うくしていた。そこで池元は舎弟の大友組を使い、村瀬組とのいざこざを演出しようと企む。見事に事件を起こして丸く収めた大友であったが、村瀬組若頭の木村を刺激しすぎたことで個人的な恨みを買い、やがて本格的な抗争に発展してしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 池元への疑念。
 ※第1ターニングポイント -> 大友組の若い衆が村瀬組に襲われる。
第2幕 -> 大友と村瀬の抗争。および石原のサイドビジネス。
 ※第2ターニングポイント -> 大友が池元を殺す。
第3幕 -> 大友組の最期。


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【感想】

今日の1本目は北野武最新作「アウトレイジ」です。3月のカンヌ国際で0.9点という酷評を受けた本作ですが、そこは腐っても北野武。実際に見るまでは分からないと思って楽しみにして見にいきました。やはりそのネームバリューなのかお客さんは7割方埋まっていましたが、やはりヤクザ映画だからなのか年配の方ばかりでした。

全体の概要

結論を書いてしまいますと、私はかなり良い作品だと思います。まさに「止まらない暴力」という言葉がよく似合う「暴力の連鎖」を、ギャグとシリアスのギリギリの境界線で(時には境界を越えちゃいながら)描いています。
たしかに俳優達の演技クオリティはかなりバラバラです。石橋蓮司さん演ずる村瀬組長はもうほとんどギャグキャラすれすれですし、北村総一朗さん演ずる山王会会長はまったく威厳がありません。
それでも、、、本作はきちんと暴力映画として、キャラクター達がきちんと追い詰められ否応なく巻き込まれていきます。「こうなってしまっては、こうするしかない」という事情をきちんと設定した上で、暴力の規模がどんどんエスカレートしていきます。そして、映画のラストショットでもなお、その暴力は終わりません。一見和やかな雰囲気のラストショットでも、それが打算だけで成り立っていることが明らかだからです。

本作が提示するもの

本作は決して実際のヤクザを描いているわけではありませんし、いつにもましてチンピラ感・口だけ番長感が強くなっています。ですから、ヤクザ映画として見るとそれこそ歴史的傑作である「ソナチネ」には及ばないと思います。でもですね、私は本作で描かれているのは暴力である以上に「旧態依然とした極道の価値観」から「新しいビジネス的・打算的な価値観」へのパラダイムシフトだと思います。
関内会長は子分達を上手く煽てて自分の思い通りに動くよう仕向ける「人間力」を身につけています。どんなに下っ端でも手厚くねぎらい、心にも無いような嘘の出世話を吹き込んで舎弟達の心を掌握します。また、大友組の面々は本作でもっとも美味しい役の水野をはじめとして義理と人情を重んじる昔気質の集まりです。たけし扮する大友組長も、会長に話をつけに行くときは指を詰めるような儀礼を身につけています。彼らは古い時代の象徴であり、そしてある意味では美学にも見える「極道」を身につけています。
一方、三浦友和が演じる加藤は、常に部下相手に威張り散らかしており、自分が絶対的に”偉い”のだと誇示したい名誉欲に満ちています。そしてその都度関内会長に怒られています。また、大友組の異端児・石原はいわゆる「インテリヤクザ」です。小国の大使館を利用してカジノを開いたり株で資金運用をしたり、仁義とは別の自己顕示欲で動くタイプの人間です。要は自分以外の人間は馬鹿だと思っているようなスノッブなヤクザです。旧来の極道の価値観とは別の、いわば新世代型のヤクザです。
本作ではこの新世代型のヤクザが旧世代型のヤクザを駆逐していきます。いうなればヤクザのイデオロギー闘争・世代交代です。そしてフィルムの視点は、(たけし自身が旧世代を演じるのでも分かるように)、旧世代への懐古的な優しさに満ちています。時にはギャグすれすれの残酷描写も見せながら、しかし作品全体としては極めてまっとうなノスタルジーに包まれています。
フィルムを見終わったときには、やはり椎名桔平が一番格好良いですし、たけしが一番愛嬌があるんです。それは俳優としてどうこうというより、純粋に映画全体のトーンが彼らのような仁義を重んじる人間達を真ん中に据えるからです。
映画の中盤で抗争が一段落してしまい中だるみするという問題はあるのですが、とても楽しい映画でした。
なんでこんな面白いのにカンヌで酷評されたんでしょう、、、、。
この辺の価値観って意外と日本土着なんでしょうか?

【まとめ】

ここ最近はとても困った映画が多かった北野作品ですが、久々に面白い映画でした。近年の映画監督志向の三流芸人達とは比べるまでもなく、やはり北野武健在はうれしい限りです。
小指入り担々麺とか悪趣味なブラックジョークも少しありますので、そういったものが苦手で無い方は是非、劇場に駆けつけて下さい。
おススメったらおススメです!

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マイ・ブラザー

マイ・ブラザー

今日は

「マイ・ブラザー」です。

評価:(45/100点) – 劇場予告で全部言ってるやんけ~~~~!!!!。


【あらすじ】

サムは海兵隊員。二人の娘と妻を残し、アフガニスタンへの派兵が決まった。一方、サムの弟トミーは銀行強盗の服役からようやく出所したばかり。父からは出来損ない扱いされ、常に優秀な兄と比較されてきた。サムがアフガンに出兵したのち、トミーは自身がサムの代わりとなってサムの家族の面倒を見るようになる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サムと家族。またはトミーの出所。
 ※第1ターニングポイント -> サムがアフガニスタンへ行く。
第2幕 -> サムのアフガニスタンでの出来事。トミーとサム一家との交流。。
 ※第2ターニングポイント -> サムが戻ってくる。
第3幕 -> サムの奇行。


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【感想】

本日は一本、「マイ・ブラザー」を見てきました、お客さんは3~4割くらい入っていました。この手の作品にしては入っている方だと思います。ナタリー・ポートマンとキャリー・マリガンという当代と次代のスターの共演作でもあり、デンマーク映画「ある愛の風景」のリメイクでもあります。
本作なんですがなんとも言えない感じでした。というのも終始2つの物語がグッチャグッチャに混ざり合っており、ぜ~んぜん収束しないからです。
2つのストーリーとは当然、「帰還兵の精神障害の問題」と「自信を亡くした負け犬が他人と交流を持つことで社会復帰していく話」です。要は兄の話と弟の話なんですが、これが交互に語られてしまうため、何が何やらさっぱりな感じになってしまいます。特にマズイのがサムが捕虜となっている姿を描写してしまうことです。スクリーン上はグレースが旦那が死んだと思って嘆いているのに観客は彼が生きてることを知っているという変な状況になってしまい、とんでもなく冷めてしまいます。
しかも、このグチャグチャの2つのストーリーに落とし所がありません。良くも悪くもヨーロッパ映画っぽい宙ぶらりんさなのですが、中途半端で切られてしまうためにとても不誠実な描き方に見えてしまいます。
またこの構造的な難点以外にも、特にアフガニスタンの描き方についてどうかと思う描写が多くなっています。「お父さんが殺すのは悪い奴だけだよ。」「悪い奴って誰?」「あごひげがある人。」という恐ろしいギャグを皮切りに、アフガン人が蛮族以上の描かれ方をしません。別にアメリカ映画の戦争描写に文句を言っても仕方がないんですが、それにしても酷すぎます。だから後半のPTSD気味になったサムの様子もあんまり感慨を持って見られないんです。なんだかなというか、、、、ハッキリ言いまして別にリメイクしなくて良かったんじゃないでしょうか。拍子抜けというよりは私の嫌いなタイプのハリウッド映画でした。
もちろん俳優達は本当に頑張ってると思います。ちょっとキャリー・マリガンの使い方がもったいないですが、気の強い役が多いナタリー・ポートマンもいつもより繊細そう見えますし、トビー・マグワイアはきちんとイっちゃってる人の目になってます。ジェイク・ギレンホールだって、中盤以降は優しいおじちゃんに見えてます。それだけに、、、ストーリーのとっちらかりっぷりがただただもったいない限りです。
すくなくとも、アメリカ国外に輸出するような映画では無かったと思います。アメリカ人がアメリカ国内で消費していればいいような問題設定と描き方ですから。
またこれは完全に余談ですが、またしてもGAGAのオリジナル邦題はアウトです。この話は弟と兄の2つの話が語られるから「Brothers(兄弟)」なんです。「マイ・ブラザー」だと「僕の兄さん(or弟)」となってしまい、どちらか一方が主役になります。それだと話が変わってしまいますので、これは素直に「ブラザーズ」と直訳するべきだったと思います。

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告白

告白

今週の本命、

二本目は「告白」です。

評価:(75/100点) – 原作のクオリティを考えると相当頑張ってる。


【あらすじ】

1年B組の年度最後の終業式の日、担任教師・森口悠子は生徒に衝撃の告白をする。事故死と見られていた彼女の娘が実は二人の生徒によって殺されたというのだ。さらに彼女は顛末を皆に語った後ですでに犯人に復讐を仕掛けたと宣言する。それを機に、犯人二人を取り巻く環境が大きく変わっていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 悠子先生の告白
 ※第1ターニングポイント -> 告白終了。
第2幕 -> 委員長と少年A・少年Bの告白。
 ※第2ターニングポイント -> 少年Bが母を殺す。
第3幕 -> 悠子先生の復讐。


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【感想】

さて、二本目は今週公開映画の本命、中島哲也監督の「告白」です。湊かなえさんによる原作は本屋大賞を獲っており、そこそこ売れているようです。個人的にはあまりに規模が小さすぎるため本屋大賞に価値があるとは思っていないんですが、でも書店受けが良いってのはエンタメ本には大事です。恥ずかしながら原作未読だったため、朝に紀伊國屋で買って、映画見る前まで読んでました。ちょうど原作・第三章の途中ぐらいまで読んで映画を見て、さっき続きを全部読みました。

おさらい:中島哲也監督について

まずはざっと概要を語る上で必要なことを整理しましょう。
中島哲也監督と言いますと、「下妻物語(2004)」以降にその個性を爆発させた感があります。それは当たり障り無い言い方をすればヘンテコで大げさな作風であり、ハッキリ言ってしまえば実相寺昭雄とティム・バートンを足して2で割ったような絵面です。中島哲也監督がCM出身だからなのか、映画的な意味でのメッセージのある/見せたいものがある画面よりも、雰囲気重視の絵作りが目立ちます。そこが生理的にダメっていう人が結構多く、賛否がガッツリ別れることでもおなじみです。

特に私は「嫌われ松子の一生(2006)」は傑作だと思っています。「客観から見ればえげつないことでも主観ではすごくハッピーかも知れない」という所から発展させて、とんでもなくドラッギーな松子の内面を頭がクラクラするような躁状態で描いています。
中島哲也監督は、この「客観」と「主観」、「外見」と「内面」と言う部分にかなり執着・興味があるように見受けられます。それが時としてはちゃめちゃで暴力的な感性を伴ってあふれ出て来てしまうところが彼の特徴であり、そしてそのドラッギーな感覚にヤラれてしまったファンが多く居ます。

原作「告白」について

今しがた読み終わったばかりなので深い読み解きをしていないのはご勘弁下さい。原作は全六章からなり、その中で6人のキャラクターの独白形式の文章が展開されます。第一章は悠子先生、第二章は美月、第三章は少年Bの姉と母親、第四章は少年B、第五章に少年Aが来て、最後は悠子に戻ります。正直小説としてはどうかと思う部分もあるのですが(苦笑)、原作小説の最大の美点は第三章にあると思います。第三章において、少年Bの母は主観全開で悠子先生を糾弾します。それまで悠子先生と美月の独白を読んできた読者には、明らかにこの母が過保護であり自己完結型であり、そして被害妄想傾向にあると分かるようになっています。当ブログでも何度か書いていますが、映画に限らず登場人物が「語り出す」時には必ずその人物の主観が入り、フィルター(=バイアス)が掛かります。それをこの第三章ではかなり分かりやすく提示しています。映画や小説を数多く見ていると常識になってしまうんですが、こういう叙述トリック的な仕掛けが可能なんだという作品形態上の構造を意識させるのにはとても良い方法だと思います。

これは巻末インタビューでも中島監督が語っていますが、原作には「地の文」が無いため、全てのストーリーが誰かしらの主観で語られます。なので極端な話、真実は何所にも無いかも知れないわけです。複数人が同時に語って一致したことは良いとしても、それ以外の事柄は全て完全に自己申告です。だから疑おうと思えば全て疑うことが出来ます。極端な話、少年Bが妄想狂で、目を開けた云々をでっち上げている可能性だってあるわけです。

映画について

さて原作を読んで思うのは、この本は間違いなく中島哲也という個性に合っているということです。なにせ上記のような「主観のみで構成される世界」というのは中島監督の資質そのものです。よくこんなぴったりな本を見つけてきたと感心するほど、本当に中島監督が映画化するためにあるような原作です。しかし一方で、登場人物が延々とグダグダ一人語りをするというのは映画的には完全にアウトです。ですから、本作で忠実な映画化を目指すのはかなり無謀です。では中島監督はどうするか、、、。

これが非常に上手いと思ったのですが、彼は本作で主観と客観を上手に切り分けて演出しているんです。例えば、、、冒頭、約30分に渡って松たか子の「告白」が展開されます。当然ここは小説では一人称語りなのですが、映画では客観視点で描かれます。そして再現映像のような形で主観のイメージ映像が合間合間に入ります。この場面に見られるような「物語の整理」を中島監督は全編で丁寧に行っています。結果として、ラジオドラマの方が向いていそうな原作を上手く映画化出来ていると思います。
映画版ではかなり大規模に原作の内容を変えています。起こっているディティールは一緒なのですが、その細かい部分でキャラクターをよりキ○ガイ方向に振って、可能な限り悠子先生側の論理を強化できるように組み立てています。例えば、少年Bは小説では途中までは理性を保っていますが、映画では引きこもってすぐに発狂します。少年Aも起こした事件の詳細をより具体的に描写し、また「処刑マシーン」という新たな要素を足すことで、より救い難い方向へ持って行きます。

そして腹立ち必至の少年Bの母親・木村佳乃の超自分勝手なモンスターペアレンツぶり。はっきりと「こいつらは酷い目にあって当然だ」という印象を持てるようになっています。そしてウェルテルのキレっぷりと委員長の危ないメンヘラ全開な感じ。「学校では真面目そうな子がゴスロリ私服で出てくると危ない」という邦画のお約束をちゃんと守っています(笑)。もちろんそれは悠子先生といえども例外ではありません。最後の最後に彼女が言うワンフレーズによって、実は彼女の内面も相当キてるという片鱗が見られます。

こういった形で全てのキャラクターをマッドにすることで、本作全体の躁状態・お祭り感を存分に発揮できていると思います。ところが、、、演出が完全に一本調子なのがすごく気になります。とくに音の使い方に顕著なのですが、ほとんど全部の場面で映像と音楽の対位法を用いてきます。一回くらいなら良いんですが、それが本当に何度も何度も繰り返されるため、すっごい嫌気が差してきます。なんか変なCMを見せられてる気分です。また、これは作品上仕方がないのですが、やはり各キャラの告白シーンを全てセリフで説明しようとするため、映画的にはまったく盛り上がりません。

ただ、倫理的な所に話を落ち着けるのではなく、あくまでもエンターテイメントに徹して一種の青春映画にしたててきたのには大拍手を贈りたいです。

【まとめ】

正直に言って、このつまらない原作をこれだけの映画に出来たのだから十分だと思います。細かいストーリーについてはツッコみ所が一杯あります。そもそも少年Aが全然匿名になってないとか、悠子先生はどこで爆発を見たのかとか 少年Bの第2の犯罪は正当防衛だとか etc。でもそれ以上にテンションの高さかがかなり面白かったです。間違いなく見て損はありません。個人的には、シネコン映画できっちりバラバラ殺人の返り血を出しただけで合格です。
オススメです!!!
余談ですが、原作小説は本当につまらないので、下手に読まずに映画を先に見た方が良いと思います(苦笑)。

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シーサイドモーテル

シーサイドモーテル

本日は邦画二本です。

1本目は「シーサイドモーテル」にしました。

評価:(3/100点) – どこからツッコんで良いのか、、、。


【あらすじ】

山中にありながら「シーサイドモーテル」と名付けられた場末の安宿を舞台に、4つの部屋でそれぞれの人間模様が描かれる。


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【感想】

本日の1本目は「シーサイドモーテル」です。昼の回で若めのお客さんがかなり入っていました。ちょっと2本目の映画をがっつり書きたいので、こちらはさらっと流させていただきたいと思います(笑)。
もうとにかくダサいというのが正直な感想です。作品としては漫画が原作ですが、シーサイドモーテルの各部屋のシーンが大半でとても舞台演劇っぽい設定になっています。そしてその中で早回しシェイキーカムやスローモーションや三回パン(※アニメ監督出崎統が考案した同じアクションを3回繰り返し/巻き戻して見せる手法。)を使って、ギャグポイントみたいなものを押しつけてきます。それがことごとく笑えないため、ただ小手先だけでエフェクトを盛ってるだけに見えます。この笑いの押しつけを自慢気に終始繰り返すため、本当にうんざりすると言うか辟易してどんどんどうでも良くなってしまいました。
設定だけを見ますと、いわゆる「パズル型ストーリー」を思い浮かべる方も多いと思います。つまり全然関係無い話が同時並行的に語られ、それがある一点で収束するような、、、そういったパズル型です。実は私もそれを期待していました。ところが、実際には決定的に交わる場面がありません(苦笑)。所々で思い出したようにチラッと重なる部分はあるのですが、それが各ストーリーに大きな影響を与えないため、そもそも作品全体が物凄い勢いで拡散していってしまいます。ですので結局なんだったかと聞かれれば、「中途半端なショートコントを4つバラバラに見せられただけ」というのが率直な所です。
しかも残念なことに、各4つのストーリーが個別ではまったく「独立したショートムービー」として成立していないという弱点があります。全て微妙にハートウォーミングな雰囲気に落とそうとするのですが、そもそものドラマが無いためにキャラクターの行動原理が薄く、ドラマとして盛り上がる箇所がありません。
さらにコントも基本的は一発芸が多く、「レッドカーペット」的な質の悪い出オチギャグでして、反応に困るものばかりでした。
お勧めかどうかと聞かれれば絶対にお勧めはしませんが、もし生田斗真のファンという方がいればその方には見る価値があると言っておきましょう。といっても演技は超大根で、ただ単に出番と顔のアップが多いだけです(笑)。
邦画は本当に大丈夫なんでしょうか?

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RAILWAYS  49歳で電車の運転士になった男の物語

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

今月の映画の日は

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」を見ました。

評価:(25/100点) – 夢じゃなくて寝言。


【あらすじ】

筒井肇はエリートサラリーマンである。何事も会社が第一で娘とも上手く話せない。娘が大学に入って育児も一段落したことで、妻はハーブティー屋を始めるなど華やかな生活を送っていた。ある日、彼の元に田舎の母が倒れたとの知らせが届く。そして時を同じく同期の川平までもが交通事故で亡くなってしまう。彼は川平が常に口にしていた「楽しいことをやる」たに会社を辞め、バタデンの運転手になることを志す、、、。


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【感想】

少し遅くなりましたが、今月1日は「RAILWAYS」を見てきました。「意外と良かった」みたいな評判を聞いていましたから、それなりに楽しみにはしていたんですが、、、、、う~~~~~~~~~~~~~ん。1000円で良かったと言うべきか、1000円も取られたと言うべきか、、、なんにせよ微妙でした。
ROBOTの制作ということで完全に「ALLWAYS」を意識したタイトルなわけですが、本作では「ALWAYS 三丁目の夕日」にあったような反吐が出るほど気持ちの悪いファンタジー・ノスタルジーはほとんどありません。代わりにあるのは中年男のファンタジーであり、責任や家族から解放されて童心に戻る中年男のロマン溢れる夢舞台です。
本作はその全てがファンタジー(=究極のご都合主義)に覆われています。なにせ夢を追うために一流企業の取締役の座を捨てて月給14万の契約社員になる50歳の話です。そしてそれを当然のように受け入れる菩薩のような天才妻まで居ます。彼女は趣味で始めたハーブティー屋が雑誌で取り上げられるなどして一気に有名店の経営者となった天才辣腕経営者で、夫が田舎で高卒対象の契約社員になることを笑顔でOKしてくれます。一方の娘はといえば、父がエリートサラリーマンの時には険悪だったにも関わらず、田舎に単身赴任で引っ込むと聞いた途端に優しくなっておばあちゃんの看護のために大学を休んで顔をだしてくれるようにまでなります。
つまり、、、お金を持ってエリートサラリーマンをやっていたときよりも、田舎に引っ込んで月給14万の契約社員になった方が周りのみんながハッピーになっているんです。凄い事だと思います。It’s AMAZING!!!!!
「娘の学費は何処から出てるんだ」とか「東京の家のローンはどうしてるんだ」とかツッコミ所は山ほどありますが、そういったことは中年男の夢の前では些末なことです(苦笑)。
結局本作も近年の糞映画によくみられるエコロジー志向というか、反大都市・反近代的なメッセージに満ちあふれています。だからですね、こういう作品を良いと思った人には、まずは「パーマネント野ばら」を見るようお勧めしたいです。田舎は田舎で大変なんだぞと。閉鎖社会な上で経済活動も多岐にわたらない田舎ってのは、それこそ一回のけ者にされたら人生が終わっちゃうような危なさがあるんだぞと。
現実感のカケラもないような本作は、まさしくファンタジーそのものです。でも多分それこそが本作の狙いなわけで、早い話が人生に疲れちゃってる中年男性をターゲットにして適当なメッセージで癒してあげようというとっても広告代理店的な発想なわけです。まさか本作をみて本気で転職を考える人はいないと思いますが、そういった方には一言「50歳じゃ書類審査に通らないですよ」とつぶやいた上で、是非とも頑張っていただきたいと思います。
中年男性のファンタジーというと、今年「マイレージ、マイライフ」という作品がありました。「マイレージ~」ではあくまでも現実に起こりうる範囲でのリアリティを持って男のロマンを見せていますので、私もノリノリで見ることが出来ました。ところが、本作ではリアリティの片鱗すら見えません。そもそもおばあちゃんが乗り遅れそうだという理由で、独断で司令室の命令を無視して電車を遅延させまくる新人運転手ってなんですか? それって人情的には「良きこと」かもしれませんが、でもそれで秩序を破っても構わないっていうのは違うでしょう? だって目に見えている人は助かったかも知れませんけど、もしかしたら電車が10分遅れたことで親の死に目に会えなかった人が居るかも知れないじゃないですか。だから、決してそれは無条件に美談として了解できるような話ではないと思うんです。でも本作ではそういう傲慢な正義感から生じる歪みは描かれません。あくまでもみんながハッピーになるんです。
だから、ハッキリ言って本作は「誰かが私にキスをした」と変わりません。この世界の全ては主人公・筒井肇のためだけに存在しています。彼が夢を叶えると、世界の全てがハッピーになるんです。気持ち悪い。こんなんで喜ぶ中年男性って本当にいるんでしょうか?よっぽどじゃないと騙されない完成度です。少し前の作品ですが、去年の「プール」にも通じる思想的な気持ち悪さがあります。どんだけワガママ放題をやってものんびりした田舎に行けば全部許されるっていう、ある意味エコロジーで安い精神メッセージです。気持ち悪い。
結局、きっとこの主人公は山ほどお金を貯金して退職金ももらい、本当に道楽として鉄道の運転手になっただけなんでしょうね。せっかく「夢敗れて運転手くらいしか仕事がなかった」という生きるために運転手になった対比キャラまで出てくるのに、結局そのキャラも本作の思想に恭順してしまいます。なんかいろいろな事にたいして酷い作品でした。現役のバタデンの運転手さんは怒って良いと思いますよ。少なくとも本作で運転手は「電車でGO!」レベルの素人でもできる仕事として舐められてますから。

【まとめ】

電車ファンならば見ていおいて損はないとは思いますが、本作の思想に乗れるかどうかで結構評価が別れる作品だと思います。責任や家族を捨て去って田舎で童心に返りたいという野望を持った中年男性にはぴったりな作品ですので、是非劇場でご鑑賞を。

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記事の評価