アウトレイジ

アウトレイジ

今日も今日とて2本です。1本目は

北野武最新作「アウトレイジ」を観てみました。

カンヌでボロクソだったみたいですが、外国人にこの文脈はわかんないのかなぁ。

評価:(85/100点) – ヤクザ映画の皮を被った懐古の嘆き。


【あらすじ】

極道の山王会池元組・池元組長は独立系の村瀬組組長との仲を疑われ立場を危うくしていた。そこで池元は舎弟の大友組を使い、村瀬組とのいざこざを演出しようと企む。見事に事件を起こして丸く収めた大友であったが、村瀬組若頭の木村を刺激しすぎたことで個人的な恨みを買い、やがて本格的な抗争に発展してしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 池元への疑念。
 ※第1ターニングポイント -> 大友組の若い衆が村瀬組に襲われる。
第2幕 -> 大友と村瀬の抗争。および石原のサイドビジネス。
 ※第2ターニングポイント -> 大友が池元を殺す。
第3幕 -> 大友組の最期。


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【感想】

今日の1本目は北野武最新作「アウトレイジ」です。3月のカンヌ国際で0.9点という酷評を受けた本作ですが、そこは腐っても北野武。実際に見るまでは分からないと思って楽しみにして見にいきました。やはりそのネームバリューなのかお客さんは7割方埋まっていましたが、やはりヤクザ映画だからなのか年配の方ばかりでした。

全体の概要

結論を書いてしまいますと、私はかなり良い作品だと思います。まさに「止まらない暴力」という言葉がよく似合う「暴力の連鎖」を、ギャグとシリアスのギリギリの境界線で(時には境界を越えちゃいながら)描いています。
たしかに俳優達の演技クオリティはかなりバラバラです。石橋蓮司さん演ずる村瀬組長はもうほとんどギャグキャラすれすれですし、北村総一朗さん演ずる山王会会長はまったく威厳がありません。
それでも、、、本作はきちんと暴力映画として、キャラクター達がきちんと追い詰められ否応なく巻き込まれていきます。「こうなってしまっては、こうするしかない」という事情をきちんと設定した上で、暴力の規模がどんどんエスカレートしていきます。そして、映画のラストショットでもなお、その暴力は終わりません。一見和やかな雰囲気のラストショットでも、それが打算だけで成り立っていることが明らかだからです。

本作が提示するもの

本作は決して実際のヤクザを描いているわけではありませんし、いつにもましてチンピラ感・口だけ番長感が強くなっています。ですから、ヤクザ映画として見るとそれこそ歴史的傑作である「ソナチネ」には及ばないと思います。でもですね、私は本作で描かれているのは暴力である以上に「旧態依然とした極道の価値観」から「新しいビジネス的・打算的な価値観」へのパラダイムシフトだと思います。
関内会長は子分達を上手く煽てて自分の思い通りに動くよう仕向ける「人間力」を身につけています。どんなに下っ端でも手厚くねぎらい、心にも無いような嘘の出世話を吹き込んで舎弟達の心を掌握します。また、大友組の面々は本作でもっとも美味しい役の水野をはじめとして義理と人情を重んじる昔気質の集まりです。たけし扮する大友組長も、会長に話をつけに行くときは指を詰めるような儀礼を身につけています。彼らは古い時代の象徴であり、そしてある意味では美学にも見える「極道」を身につけています。
一方、三浦友和が演じる加藤は、常に部下相手に威張り散らかしており、自分が絶対的に”偉い”のだと誇示したい名誉欲に満ちています。そしてその都度関内会長に怒られています。また、大友組の異端児・石原はいわゆる「インテリヤクザ」です。小国の大使館を利用してカジノを開いたり株で資金運用をしたり、仁義とは別の自己顕示欲で動くタイプの人間です。要は自分以外の人間は馬鹿だと思っているようなスノッブなヤクザです。旧来の極道の価値観とは別の、いわば新世代型のヤクザです。
本作ではこの新世代型のヤクザが旧世代型のヤクザを駆逐していきます。いうなればヤクザのイデオロギー闘争・世代交代です。そしてフィルムの視点は、(たけし自身が旧世代を演じるのでも分かるように)、旧世代への懐古的な優しさに満ちています。時にはギャグすれすれの残酷描写も見せながら、しかし作品全体としては極めてまっとうなノスタルジーに包まれています。
フィルムを見終わったときには、やはり椎名桔平が一番格好良いですし、たけしが一番愛嬌があるんです。それは俳優としてどうこうというより、純粋に映画全体のトーンが彼らのような仁義を重んじる人間達を真ん中に据えるからです。
映画の中盤で抗争が一段落してしまい中だるみするという問題はあるのですが、とても楽しい映画でした。
なんでこんな面白いのにカンヌで酷評されたんでしょう、、、、。
この辺の価値観って意外と日本土着なんでしょうか?

【まとめ】

ここ最近はとても困った映画が多かった北野作品ですが、久々に面白い映画でした。近年の映画監督志向の三流芸人達とは比べるまでもなく、やはり北野武健在はうれしい限りです。
小指入り担々麺とか悪趣味なブラックジョークも少しありますので、そういったものが苦手で無い方は是非、劇場に駆けつけて下さい。
おススメったらおススメです!

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アウトレイジ」への5件のフィードバック

  1. 素敵なブログですね♪
    桔平ちゃんの格好良さにやられました。
    何故か北野作品にはあまり手が伸びていないのですが、これはとても楽しめました。いろいろ痛そうだったけど…

  2. 加瀬サンが気になって見ました。
    キャストははまってるのかなとおもいます。
    主に椎名さんや加瀬さん
    ストーリーにおもしろみはなかったけど
    ヤクザってものを知るには良い作品だと思いました。

  3. はじめまして。
    結構高評価なんで驚きました。
    久々の得意路線なので点が甘いんでしょうか?
    個人的に色々と辛い点はありますが、
    その中でも看過できない点は、
    出た役者ほとんどが大根な点。
    監督たるもの、役者に好き勝手やらしちゃいけません。
    中でも一番の大根はビートたけし(笑
    役者でなくビートたけしにしか見えないってのは映画俳優として致命的と思います。
    ある意味キムタクと同じかと。
    暴力描写は、椎名桔平氏のアレ以外は別にどおってこと無かったと思います。

  4. はじめまして。
    とても読み応えのあるレビューばかりで感服しました。シュンと申します。
    アウトレイジがなんで酷評?という意見には同意します。
    日本人でもわかりにくいヤクザ組織の構成、登場人物の多さなどから拒否反応をする人が多かったのかな・・と個人的には思います。
    おじさまだけじゃなく、若い人にも観てほしい映画だと思いました。ヤクザになりたくないと思うでしょうし。
    椎名さんは最後まで格好良かったです。

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