ザ・ロード

ザ・ロード

今日は有楽町で2本見てきました。1本目は

「ザ・ロード」を見てきました。

評価:(10/100点) – ドラマの薄い単調な終末ロードムービー


【あらすじ】

天変地異で文明が崩壊したアメリカで、親子はひたすら南を目指す。


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【感想】

本日の1本目は「ザ・ロード」です。公開から結構経っていますが、お客さんはかなり入っていました。とはいえ有楽町シャンテの小さな箱でしたのでせいぜい20~30人と言ったところでしょうか。結構良い評判を耳にしていましたので期待して見てみました。が、、、、確かに好きな人がでそうな雰囲気は分かるのですが、私にはまったく合いませんでした。

本作の基本プロットと引っ掛かる所

本作は、何らかの事情で文明が崩壊してしまったアメリカが舞台となります。母親は気がふれて自殺してしまい、残された父と子は母の遺言である「暖かいところを目指して。」という言葉を守り、ひたすら南へ向かいます。生き延びた人間達は、ギャングのような集団を作って人を襲っては人肉を食べるならず者と、ひたすら彷徨うだけの善良な市民に別れています。親子は時に残虐な連中とニアミスしながらも、ただただ南に向けて歩き続けます。
はっきりと言いますが、本作にドラマはありません。あるのはシチュエーションだけです。上記のような世界で、ひたすら親子が悶えあっているだけです。恐ろしい、、、。
しかも時折挟まれるイベントも2パターンしかありません。1つは、ならず者達に見つかりそうになって逃げるイベント。もう1つは善良そうな不審者にあって、息子が施しを与えようとするのを父が窘めるイベント。以上です。後は何もありません。
私は本作を見ていてほとんど怒りに近い感情をもってしまったんですが、その大きな要因が息子の存在と世界観の適当さです。
本作の世界は、人食い連中がうようよいる危険な環境のはずなんです。ところが、例えば物音がして隠れなきゃいけないシーンですら、明かりや焚き火をつけっぱなしで大声で親子が怒鳴り合うんです。おまえら10秒で見つかって瞬殺だよ!!!しかもナイフがあるのに堂々と銃声を響かせたり、敵のアジトからこっそり抜け出すときに階段をブーツでドタドタ駆け下りたりするんです。どういうリアリティなんでしょう?
それにプラスして、息子がほとんど頭がイカレてるんじゃないかと思うほど危機管理能力がなく、学習もしません。延々と泣き言を言っているだけで、不審者にホイホイついていって勝手に危険になったり、大声で喚きチラしたり、腹減ったとか駄々こねる癖に浮浪者に缶詰をあげて同行させたりします。
フォーマットとしては、「頭の足りない息子をかばいながら南を目指すお父さんの苦労話」としか見えません。それはエンディングまでつづきます。エンディング手前のある重要な事件で成長したのかと思いきや、結局この息子は知らない人にホイホイついていくんです。たまたま良い人だったからいいものの、普通なら即死ですよ、本当。
本作はルックスだけは「ザ・ウォーカー」に似ています。しかし、あちらが西を目指す明確な理由があるのに対して、こちらには何もありません。だから、極端な話、いつまででも話が転がるしいつ終わってもいいんです。画面を持たせるためなのか、時折母親との思い出が回想として差し込まれますが、それすら単なる雰囲気作りにしかなっていません。せめて何かの伏線にでもなっていれば良いんですが、雰囲気以上の何者でもないため、まったく乗りようがありませんでした。
個人的に駄目な映画には「ツッコミをいれてニヤニヤできる映画」と「ただただつまらない興味の続かない映画」と「不愉快な映画」があるんですが、本作は「不愉快な映画」の部類でした。

【まとめ】

本作の評価は、一重に自分に子供がいるかどうかに掛かっているような気がします。自分に子供が居るひとなら、「子供は理屈がとおらない事をするしワガママ放題言うし時折ウザイ」というのを許せると思います。現に、作中の父親は手を焼いてはいるものの、その世話焼きも含めて子供を愛してるのが伝わってきます。
でも、どうしても第3者として客観で見てしまうと、申し訳ないですが「早く死ねば?」としか思えないほど息子がウザくて仕方がありませんでした。特に途中で食料を山ほど見つけて調子に乗るシーンなんぞは、いきなり子供の態度がでかくなってスナック菓子を食い散らかしはじめて物凄い腹立ちますw 「あんだけ食い物で苦労したのに食い物の大事さも学べないのか!!!」と怒り心頭です。
お子様が居る方は、子供を連れずにお一人か夫婦で見に行かれると楽しめるかも知れません。が、それ以外のかたには結構博打な作品だと思います。

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記事の評価
エアベンダー

エアベンダー

本日に2本目は

エアベンダー」です。

評価:(4/100点) – シャマラン、、、、故郷へ帰れ。


【あらすじ】

「火」「水」「土」「気」の4つのエレメントを司る4つの国で分断された世界で、ある日火の国が反乱をおこした。4つのエレメントを自在に操り精霊と会話ができる「アバター」を妬んだ火の国が、アバターの生まれる「気の国」のベンダー達を皆殺しにしたのだ。
そんな中、南の水の国に住むカタラは、氷の下から少年を発見する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> カタラがアンを発見する
 ※第1ターニングポイント -> アンが修行を決意する。
第2幕 -> 北の水の国へ向かう旅
 ※第2ターニングポイント -> 水の国に着く
第3幕 -> 火の国との戦い


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【感想】

さて、本日の2本目はM・ナイト・シャマランの最新作「エアベンダー」です。原作はTVアニメ「Avatar: The Last Airbender」でエミー賞とアニー賞を獲った傑作です。初日なのに観客が一桁しかいませんで、ちょっと意外でちょっと納得という感じでした。
実際、私もかなりの「シャマラー」を自負してはおるんですが、本作は本っ当に厳しいものがあります。「レディ・イン・ザ・ウォーター」を全面的に擁護している私をもってしても(苦笑)、本作は最低ランクの映画ですw。すみません。限界ですw
なんといいましても、話は面白いんです。いわゆる「勇者様ご一行もの」のストーリーで、未熟な勇者様が修行をしつつ独裁帝国を倒すというとても類型的でありきたりな作品です。でも、すくなくとも原作ではこのお約束をきちんとキャラを立てた上で語っており、まったく問題ありません。
で、映画版なんですが、これがまた演出がビックリするほど下手くそです。とにかく大事なことはモノローグと一人言でクリアし、それ以外のどうでも良い部分だけが丁寧に描かれます。会話がぎこちないのもそうですし、なにせアクションが本当にどうかという程ひどいです。そもそもエレメントを呼び出すときに太極拳みたいな動きをするんですが、これが長すぎかつショボイため、まったく盛り上がりません。
本作は110分ですが、上手くまとめれば40分ぐらいで終わります。とにかく長い演出のすべてが無意味で、描かないといけない所を省いてしまっており、もうどうしようもありません。
おそらくオリエンタル感をだすためなのか、俳優陣はとてもアジアっぽい顔が揃っています。シンガポールやインド系がメインで、白人・欧州人が全然出てきません。このあたりの世界観の作りが良いだけにその演出の酷さが余計際立ってしまいます。
なんか書いててゲンナリしてきたんですが(苦笑)、シャマランはこれで5連続駄作がほぼ決定しましたので、そろそろハリウッドで干されるかも知れません。シャマラーとしては大変残念なんですが、今回分かったのは、やはりシャマランは色物監督としてしか生きる道がないってことです。普通の映画を撮ろうとすると、普通につまらない映画になりますw。
次回作に期待しつつ、でもお客さんが入ってないのですでに一般にもシャマランの底の浅さがばれているという事を残念に思いつつ、微妙にオススメいたします。
念のためですが、3Dで見る必要はまったくありませんので、レンタルDVDを待つのが一番ですw。

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記事の評価
インセプション

インセプション

本日は三本です。最初は先行公開の

インセプション」です。

評価:(80/100点) – 使い古された題材をスタイリッシュなB級に再生産


【あらすじ】

コブはターゲットの夢に侵入し秘密を覗き見る産業スパイである。ある時、ターゲットのサイトーの夢でスパイに失敗したコブは、逆にサイトーから仕事を依頼される。それはサイトーのライバル会社の会長・モーリスが死ぬのを受けて跡取りの息子に会社を解体させることだった。普段行っている情報泥棒とは逆の「情報植え付け(インセプション)」に難色を示すコブだったが、自身の犯罪歴を消してやるという条件につられ、仲間を集めて決行することにする、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> サイトーの夢への侵入
 ※第1ターニングポイント -> サイトーからの提案を受ける
第2幕 -> 仲間集め
 ※第2ターニングポイント -> ロバートの夢に侵入する
第3幕 -> インセプション作戦


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【感想】

3連休の初日は久々に三本の映画を見ました。1本目は先行公開の「インセプション」です。ダークナイトで”不必要に上がりすぎた”ネームバリューからか(苦笑)、観客はほぼ満員の入りでした。感慨深いと言いましょうか「こんなにメジャーになっちゃって、、、」という感じのクリストファー・ノーラン監督ですが、本作ではきっちり自身の資質である「ギミックB級サスペンス監督」という部分が前面にでた良い映画でした。
話の内容はまさしく「どこかで見たような気がする設定」のオンパレードです。そもそも「他人の夢の中に入り込む」というのが定番ですし、それをスパイ大作戦風の「チームもの」として表現するのもありきたりです。ですが、そんなありきたりな内容だからこそ、きっちりとルールを説明してくれる律儀な作りが非常に好感が持てます。
もともとノーランはこういった「面白ギミック」を使ってストーリーを転がすのが得意な監督です。どちらかというと演出は下手な部類に入ると思います。実際、本作でも単調な音(ブーンという例の重低音)の使い方や無意味なスローモーションの数々など、時折「イラッ」とする部分がないわけではありません。でもそれを補ってあまりある「メジャー感」がドーンと芯にあります。
本作でのルールは明確です。
(1) 夢の中で死ぬと目が覚めるが、痛みは本当に感じる。 
(2) 夢の中でも夢を見られる。
(3) 現実より夢の中の方が時間の流れが遅い。
(4) 夢の中では潜在意識が他者を排除しようとする。
このシンプルなルールを序盤にチュートリアル形式で説明し、それがすべて応用編たる3幕目に登場します。言ってみれば、1幕から2幕に続く「サイトーの夢」と「仲間集め」はすべてこのルールを説明するためにあるようなものです。ですから実は二時間半ある上映時間はもっと削れるはずです。確かにこの説明が長すぎて眠くはなってくるんですが、でもこれがあるおかげでインセプション作戦の超絶に入り組んだ夢の階層構造が理解しやすくなっているのも事実です。
見ているときにはどうしても「この夢は何階層目の夢か?」という部分を理解するので手一杯になってしまいがちです。しかし、少し冷静に見てみると、夢の中の出来事が、1つ上の階層の現象を上手く反映しているのに気付くはずです。この辺りの設定/設計は本当によくできています。惜しむらくはノーランの演出力によってイマイチ分かりづらくなってしまっている点です。もしかするとノーランを脚本に専念させて、職人監督に演出を任せた方がよかったんじゃないかとさえ思ってしまいました。

【まとめ】

余韻の残し方がシャッターアイランドに似ているのはディカプリオの顔が監督にそうさせているのでしょうかw 決して易しい内容の作品ではありませんが、最後の落とし方をポップにすることで「なんとなく分かったような気にさせる」のはノーラン監督の成長の跡だと思います。夏休み大作映画の第一弾としては間違いなくお勧め出来ます。

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トイ・ストーリー3

トイ・ストーリー3

今週の金曜レイトショーは

「トイ・ストーリー3」です。

評価:(95/100点) – お帰りなさい、極上のストーリー。


【あらすじ】

17歳になったアンディは大学入学を控え部屋の掃除をしていた。母から引っ越し先へもっていくものを選別するよう言われたアンディはお気に入りのカウボーイ人形・ウッディだけを残し他のおもちゃ達を屋根裏部屋にしまおうとするが、母親の手違いでゴミに出されてしまう。絶望したバズ達はアンディを捨て近所の保育園・サニーサイドのやっかいになることになる。しかしそこは、「捨てられたおもちゃの墓場」であった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> アンディの引っ越し
 ※第1ターニングポイント -> バズ達がサニーサイドに入る。
第2幕 -> おもちゃの墓場
 ※第2ターニングポイント -> ウッディが救出に戻る。
第3幕 -> サニーサイド脱出作戦。


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【感想】

さて、今週は金曜の新作が無かったので取っておいたトイ・ストーリー3を見てきました。というのも、私はここ何作か連続でピクサーに泣かされているため、土日以外の空いてるタイミングを狙ってたんですw 平日夜中のレイトショーでしかも3D字幕でしたので、ほとんど観客は入っていませんでした。環境バッチリw
結論から言いますと、今度のピクサーも凄い事になっています。とにかくシンプルな話を演出だけで持っていっていまして、まさに「映画力」満点といった貫禄の趣です。
一応おさらいしておきますと、「トイ・ストーリー」はディズニーアニメが停滞していた時期にジョン・ラセターとピクサーの名を一躍世にしらしめた歴史的な作品です。「おもちゃと持ち主」というある種絶対的な主従関係(=所有関係)にあって、それでも「おもちゃ」の幸せって、、、、という部分がテーマになっています。
ところが、「トイ・ストーリー2」では1での「おもちゃの幸せ」がごっそり抜け落ちてしまい、「おもちゃにとっては主人の言うことを聞くのが一番」という「どこの独裁国家だ!」って酷さになってしまって、お怒りの方も多数かと思います。っていうか言ってることが1作目と真逆w
そういった背景があって、「トイ・ストーリー」のファンは10年以上もやもやしていたわけです。で、今作ですが、、、、すっげぇ。まさに1作目の時のクオリティが戻ってきました。素晴らしいです。1作目から関わっているだけあって、リー・アンクリッチはきちんと本作の肝を理解して演出をしていますし、脚本のマイケル・アーントも完璧です。
本作ではきちんと「おもちゃにとっての幸せ」に一定の結論を出しています。そこは是非劇場で確かめていただくとして、、、、やはり本作で一番凄いところは、真の意味で悪人がいないっていう部分です。悪には悪になる理由があって、ある程度は情状酌量の余地があります。根っからの悪人は出てきません。みんなちょっとしたすれ違いで道をはずしたりすれ違ったりしていくんです。
ですが、本作ではウッディ達の「友情パワー」によって窮地をくぐり抜けていきます。今作における「善人」と「悪人」の差はそこだけなんです。友達がいるかいないか。ロッツィは友達がいないからグレていって、バズやジェシーは友達が居たから戻れたんです。「友達って大事」という教訓をここまで明確に出せるのは凄いです。しかも「ジェダイの復讐」のオマージュまでやってきます。
また、冒頭のシーンから顕著ですが、この監督は「マクロな視点で見るとショボイことをミクロに寄って迫力を出す」という事に特化した抜群の演出力があります。すんごいショボイことをやっているだけなのに、画面上では一大スペクタクルなシーンにきちんとなってますし説得力もばっちりです。
私は恥ずかしながら2箇所で号泣してしまいました。1カ所はもちろん冒頭のビデオカメラシーンです。本当に幸せそうなんだ、これが。手ぶれグラグラのヘンテコなショットなんか使わずに、誰がどう見ても手持ちカメラだっていうのが一発で分かって、しかもそのローテクな感じとノスタルジーを混ぜてくるあたりは完璧です。
そしてもう1カ所は終盤の手をつなぐシーンです。無理。マジ無理。完全に涙腺決壊。絶望の淵で、ご主人様を呼ぶでも泣き叫ぶでもなく、ただ仲間達で手を繋ぐんですよ。ここが本作が一番「分かってる」所だと思うんです。
結局、本作ではアンディとウッディを「主従関係」ではなく「友情関係」として描ききるわけです。「ご主人様の言いたいことも分かるけどそれでも仲間が大事」というウッディの思いがアンディに通じたとき、本作を1から見てきた人たちへのご褒美のような極上なエンディングが待っています。最後にウッディがつぶやく一言で、もう無理なんです、私。涙が止まらんのですよ(苦笑)。

【まとめ】

とにかく、1作目・2作目を見てない人はいますぐレンタル店に駆け込んで1・2を見て、続けて劇場へ走り込んで下さい。断言します。このクオリティの作品をシネコンで全国公開しているのに見に行かない人は大バカモノです。人生の何分の一かは損をしています。悪い事は言いませんので、劇場で、3Dで、トイ・ストーリー3、是非見て下さい。
大プッシュです。

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ぼくのエリ 200歳の少女

ぼくのエリ 200歳の少女

本日は一本です。

ぼくのエリ 200歳の少女」を見ました。

評価:(95/100点) – 珠玉の青春映画


【あらすじ】

いじめられっ子のオスカーはある日隣の部屋に引っ越してきた子と出会う。エリと名乗るミステリアスな少女に魅かれるオスカーは、やがて彼女の勧めに従いいじめに抵抗するようになる。一方その頃、町では奇妙な殺人事件が発生していた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> エリとの出会い
 ※第1ターニングポイント -> エリがヨッケを襲う
第2幕 -> オスカーとエリ。
 ※第2ターニングポイント -> オスカーがエリが吸血鬼だと気付く。
第3幕 -> いじめの結末。


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【感想】

本日は「ぼくのエリ 200歳の少女」です。まだ全国で銀座テアトルシネマのみ公開ですので、完全に満席でした。完全に映画オタクで埋まっており、前評判の高さもあって凄いことになっています。スウェーデンでは2008年に公開された作品で、多くのファンタスティック映画祭で話題を攫っていました。2年掛かってようやく日本公開です。

はじめに

まず、私としては謝らなければいけません。今年の3月に「渇き」を見て「そんじょそこらのジャンルムービーでは太刀打ちできない」と書いてしまいましたが、「そんじょそこら」でないとんでも無い映画が来てしまいました。本作はラブストーリーでありながら怪奇映画でもあります。
ヴァンパイアのラブストーリーというと、どうしても「トワイライト・シリーズ」を思い浮かべてしまうかも知れません。たしかに「トワイライト」もヴァンパイアのラブストーリーでした。しかし、大変申し訳ないですが、本作とはかなりレベルに開きがあります。それは、ラブストーリーとしても、そしてヴァンパイアムービーとしてもです。本作ではヴァンパイアとしての負の部分をがっつりと描きます。決して恋愛の障壁としてのみ使っているわけではありません。そして生まれながらの魅力ある血とかいうご都合主義丸出しの設定もありません。本作の主人公・オスカーはなんの変哲もない少年です。いじめられっ子で、それに抵抗する勇気も無く、一人で夜な夜な憂さを晴らすようにエア抵抗をするような内気な少年です。その少年が、いつしかヴァンパイアの子と交流し、お互いにお互いが絶対必要な存在になっていくわけです。
本作の原題は「Lat den ratte komma in ( Let the Right One In / 正しき者を入れよ)」です。文字通り、オスカーは物理的にもそして心理的にも、エリを”正しき者”として受け入れていきます。この過程で、彼は彼女への共感と恋と拒絶を味わいます。それは決して一目惚れというレベルではなく、もはや分かち難いものとしての依存関係なわけです。

本作におけるヴァンパイア

本作において、エリは決して怪物としては描かれません。彼女は「血を吸い日光に弱い」という性質をもった一人の少女です。そしてホーカンという庇護者と共に生活しています。ホーカンはエリのために夜な夜な通り魔殺人を起こし、ポリタンクで血を収拾します。ある事件があってホーカンが居なくなってからも、彼女はむやみに人間を襲うことはしません。エリは無慈悲なモンスターではなく、あくまでも生きるために血を吸わなければならないという性質をもってしまっているだけです。それはまるで私たちが魚や肉でタンパク質を取らなければいけないように、彼女にとっては血を吸うことが必要なんです。
そして、彼女は人間以上の身体能力を持っていますが、決して万能なわけでもありません。特に「日光に当たると死んでしまう」という一種の虚弱体質でもあります。極端な話、彼女を殺そうと思えば昼間に部屋に忍び込んでカーテンを開けるだけで良いんです。そういった意味で、彼女は弱い存在でもあります。

オスカーとエリ

オスカーは徐々にエリを唯一の友人として、そして唯一の居場所として心の支えとしていきます。一方のエリも、彼女を怖がらずに話をしてくれる人間としてオスカーに魅かれていきます。本作で最もすばらしい所は、このエリとオスカーの交流が、文字通り性別を超えた心の繋がりになっていく点です。
そして、エリはいつまでも年を取らず、オスカーは年を取っていきます。これは穿ち過ぎかも知れませんが、彼らの行き着く先が、エリとホーカンに思えてなりません。ホーカンは冒頭ではエリの父親として登場します。しかし仕草や覚悟は親子と言うよりは恋人のそれです。明らかにホーカンはエリを愛しています。しかしその一方、エリはあまり愛情を表現しません。
彼女は数百年も12歳の姿で生き続けています。ですから、もしかしたらホーカンとも彼が子供時代に出会ったのかも知れませんし、オスカーも彼女にとっては数十人目の庇護者かも知れません。実際にはエリは生存本能としてホーカンの代わりにオスカーを必要としただけなのかも知れません。それでも、本作ではオスカーとエリの甘く重苦しい交流を情緒的に描ききります。まるでハッピーエンドのように描かれるラストの甘酸っぱいシーンにあってさえ、彼らには「血の調達」という困難がすぐに迫ってきます。オスカーはエリと一緒にいるためにこの先何十年も人を殺し続けなければいけません。でもそんな厳しい現実を見る直前の、まるで一瞬の休息のような彼らの希望溢れるラストシーンに、どうしても心揺さぶられざるをえません。

ショウゲートによる改変の問題

本作はオスカーとエリの依存関係の成立が肝になるわけですが、その際に重要な改変が配給会社により行われています。
劇中で何度も「私は女の子じゃないよ」というセリフが出てくるように、エリは男です。終盤エリの去勢根をオスカーが見てしまう場面もあります。これはオスカーとエリの愛情というのが完全に性別を超えた心理的関係であることを表しています。なんかヤオイ肯定派みたいな言い草ですがw
それを「ぼくのエリ 200歳の少女」とかいう変な邦題でエリが女性であるような先入観を与えたり、肝心の場面に修正を入れたりして普通の少年少女のラブストーリーのように誤解させようとしてる根性が気に入りません。エリが男で何が悪い。宣伝のために内容変えるとか最低の悪行です。

【まとめ】

すばらしい作品でした。ラブストーリーとしても、ヴァンパイアムービーとしても、何の文句もございません。ヴァンパイアムービーでここまで愛おしく実在感を持ったストーリーはなかなかありません。ホラームービーが苦手という方もご安心ください。ホラー要素はほとんどありません。それ以上に異種間恋愛としてとても良く出来ています。本当に惜しむらくはフィルム1本の4スクリーン順次興行という上映形態です。こんなに素晴らしく、こんなに話題の作品が小規模公開というのは映画文化にとって間違いなく損失です。
本作はハリウッドでのコピーリメイクが決まっており、10月に公開される予定です。もしかするとリメイク版がシネコン上映されかねない状況だったりするのが、非常に複雑な心境です。ですが、もし、もしお近くで上映がある方は是非とも足を運んでみてください。映画ファンであれば絶対に見ておくべき作品です。
文句なく、全力でオススメいたします!

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プレデターズ

プレデターズ

2本目は

プレデターズ」を観てみました。

評価:(20/100点) – プレデターの意味が無いジャングル・サバイバルもの。


【あらすじ】

ロイスは突如見知らぬ惑星に落とされた同じ状況の7人の男女と合流する。ジャングルを彷徨いあるく彼らだったが、突如動物たちに襲われそして一人が死亡してしまう。そうこうしているとエイリアンとおぼしき異星人のキャンプを発見する。イサベルはこのエイリアンがかつて南米のジャングルに出現したプレデターではないかと推測する、、、。


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【感想】

今日の2本目はプレデターズです。有名シリーズということなのか、観客は物凄く入っていまして、家族連れの方もかなり目立ちました。あんまり小学生には見せない方が良いと思うんですが、まぁその辺はご両親の考えなんでなんとも、、、。
あんまり書くことも無い作品なんですが、どうしても「プレデター」映画としては微妙な感じです。まずですね、これは構造上仕方が無いんですが、話が異様にこぢんまりしています。なにせジャングルで当てもなく彷徨うだけなんです。たとえば同様のシチュエーションということでは昨年「サバイバルフィールド」という映画がありました。「サバイバルフィールド」では明確にゲームのルールと目的が最初に提示されていました。もちろんその目的があとからすり替わっていくわけですが、しかしそれが物語の推進力になっているのは疑いようがありません。ところが、本作ではそもそもからして目的がありません。突然見知らぬジャングルに落とされた8人は、「生き残る事」以外の目的がなく彷徨い歩いて行きます。これでは観客は置いていかれてしまい感情移入できません。ストーリーが完全に止まっています。
結局物語に推進力が生まれるのは、終盤も終盤、プレデターズが宇宙船を持っていると知ってからです。そこまでの1時間くらいはただただ逃げる彼らを見ているだけです。さらに、今回の「スーパープレデター」は従来のプレデターとまったく同じ攻撃パターンのためまったく新鮮さがありません。ものすっごいデジャブに襲われます。
なんか、、、、どこを褒めたら良いかちょっと思い浮かびません(苦笑)
ですが、強いて挙げるとすれば、クライマックスで旧プレデターの男気・任侠が炸裂するシーンです。ここだけは唯一本作でグッと来ました。また、一応小ネタとして「敵の敵は味方」という「エイリアンvsプレデター」にあったセリフが入っていたりはしますが、でもだからどうしたってレベルで、なんかスルーしてしまいます。

【まとめ】

プレデターシリーズとしてみても相当微妙な作品です。せっかく途中でローレンス・フィッシュバーンがプレデター・スーツで光学迷彩を動かして登場するのに、ロイス達はそれを使いません。せっかくなんだから人間達が光学迷彩をつけてプレデターを逆に追い詰めるぐらいのシチュエーションは欲しかったです。
モンスター映画としてもアクション映画としても微妙なので、本当に”誰得”な感じでした。非常にオススメしづらい作品ですが、AVP2を見ているような生粋のプレデター好きなら見ておいて損はないとおもいます。
にしても、、、、プレデター本筋としては20年ぶりの新作なのにこのクオリティはちょっと、、、無いと思います。
完全に余談ですが、1カ所誤訳で気になるところがありました。ロイスが「走ったら死ぬぞ。戦うしかない。」と言うシーンがあるんですが、この「run」って「走る」じゃなくて「逃げる」でしょ? 要は「逃げたってどうせ逃げ切れない。だったら戦ってプレデターを殺すしかない。」って事だと思います。

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記事の評価
エルム街の悪夢(リメイク)

エルム街の悪夢(リメイク)

今月の映画の日は

エルム街の悪夢」を見てきました。

評価:(60/100点) – え? リメイク?。


【あらすじ】

ディーン・ラッセルは3日間寝ずに精神が不安定になっていた。ディーンは彼女・クリスの目の前で自らの喉を切って死んでしまう。彼女はディーンの葬式で幼い頃の自分が墓穴に引きづりこまれる幻覚を見る。その夜、彼女は夢の中で右手にかぎ爪を付けた男に襲われる。

【三幕構成】

第1幕 -> ディーンの死。
 ※第1ターニングポイント -> クリスが死ぬ。
第2幕 -> ナンシーとクエンティンの捜索。
 ※第2ターニングポイント -> 不眠72時間が経過する。
第3幕 -> フレディ退治。


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【感想】

今月の1日は「エルム街の悪夢」です。ご存じ「フレディ・クルーガー・シリーズ」の9作目(スピン込みで12作目)で1作目のリメイクというアナウンスをされています、、、が、、、リメイクか?これ。
1,000円かつ名作リメイクということもあってか、レイトショーでしたがそこそこの人が入っていました。

一応おさらい

念のためということで一応おさらいをしておきましょう。「エルム街の悪夢」は1984年公開の超有名ホラーです。ジェイソンと並ぶホラー・ヒーロー:フレディを生んだ傑作で、夢の中で襲ってくるという変な設定と特徴的なボーダーセーターによって一躍ヒーローになったフレディは、シリーズを重ねる毎にギャグキャラ化していきます。この辺は前に「スペル」の時にちょろっと書きましたが、まさに「ホラーとギャグは紙一重」というのを突進してしまったんです。そしてそれが極限に達したのが「フレディVSジェイソン」です。
「フレディvsジェイソン」はお茶目なフレディがジェイソンを操ろうとして失敗しちゃって、、、、という完全に人間的というかヘタレなフレディになってまして、ちょっとキャラとしては閉塞的になっちゃったわけです。
早い話がこの作品は「アウトロー・ヒーローvsトップ・ヒール」のプロレス映画です。両方ヒールなのでフレディがベビィターンしたところが重要です。つまりニュー・ライン・シネマの中では、シリアル・キラーっぽさで言えばフレディよりジェイソンの方が上だという判断があったという事です。

再誕失敗!?

そこで、フレディをホラー・ヒーローとしてリセットする目的で作られたのが本作です。実際に見てみると、たしかにフレディのお茶目さは影を潜め、完全にシリアル・キラーになっています。が、、、、
非常に厳しい言い方をすれば、フレディがフレディでは無いというか、「フレディ」というキャラクターの持っていた個性が完全に消え失せて、単なる「ロリコン逆恨み地縛霊」になってしまっているんです。しかもフレディに人間味を感じさせないようにする目的なのか、彼のバックボーンが全く描かれません。だから、本当にイカれたロリコン以上のキャラクターではありません。
フレディの部分の不満を無視したとしても、お話しの部分で演出上かなり気になる点はあります。中でも一番違和感を感じるのが、群像劇スタイルで始まるにも関わらず唐突にナンシーとクエンティンの視点に絞られる中盤です。そしてこちらも唐突に始まる、「フレディ冤罪説」を巡る半端なサスペンス・ストーリー。あのですね、、、、「エルム街の悪夢のリメイク」って聴いて見ている人にとって、「フレディが冤罪かも」っていうのは茶番以外のなにものでもないんですよ。「そんなわけあるか!?」っていう。仮にそこを変えちゃったら、今までのシリーズよりもっと人間味が出ちゃって本末転倒じゃないですか。
しかも本作では「フレディは夢の中の存在だから、人々に忘れられると存在が消えてしまう」という大前提が崩れちゃってます。実際に完全にフレディを忘れていた人たちが襲われますし、被害者達に記憶を取り戻させようとするのもフレディの被虐趣味でしかなくなっています。
全体として、「旧作のフレーバーを残しながらもリアル路線を目指す」というバットマン・ビギンズやスーパーマン・リターンズと同じ手法を使っていますが、結果としてまったく意味不明でがっかりなキャラクターになってしまいました。

【まとめ】

一応このリメイク版(=仕切り直し版)の続編として二本は新作を作る計画のようです。ですが、個人的には本作の続編を見たい気はしません。あまりにも今作のフレディには魅力が無さ過ぎます。
「エルム街の悪夢」だということを忘れて見る分には平均よりちょっと悪いぐらいのスプラッタ・モンスター・ホラーだと思いますが、ちょっと期待していた分だけがっかり感が強いです。
シリーズのファンであれば、間違いなく見に行くべきですし見に行ってるとは思いますが、もし旧作を見たことが無い方は、レンタルで「エルム街の悪夢(1984)」を見た方が良いと思います。

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記事の評価
ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション

ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション

二本目は土曜に見ました、

ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」です。

評価:(45/100点) – ヴァンダムは頑張ってるけど、、、、誰得?


【あらすじ】

「ユニバーサルソルジャー/ザ・リターン」から11年後の世界、チェチェン独立過激派にロシア大統領の子供達が誘拐されてしまう。テロリストのリーダー・トポフは、72時間以内に自分たちの独立を認めない場合、チェルノブイリ原発跡を爆破すると予告してくる。誘拐の状況を検討したロシア政府は、誘拐者の中に強化兵士・ユニソルが紛れていることを確認し、アメリカに助けを求める。アメリカの元ユニソル研究者達は、残存する5人の内4人のユニソルをロシアへ派遣するが、敵の新型ユニソルにあっさりと蹴散らされてしまう。残るユニソルは、心理セラピーを受けて社会復帰を目指すリュックだけであった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 誘拐事件。
 ※第1ターニングポイント -> ユニソル4名を使った救出作戦が失敗する。
第2幕 -> リュックの復帰。
 ※第2ターニングポイント -> チェルノブイリにリュックが単身突撃する。
第3幕 -> チェルノブイリでの決戦。


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【感想】

さて、二本目は「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」です。「ユニバーサル・ソルジャー」シリーズの5作目にあたる作品ですが、話は2作目の続きです。お馴染みジャン・クロード・ヴァンダムが主演で、敵役に前作で死んだドルフ・ラングレンがクローンで復活、さらに敵のラスボス・NGU(ニュー・ジェネレーション・ユニソル)にはUFCチャンプのアンドレイ・ザ・ピットブルと肉弾派が勢揃い、、、、、かと思いきや、、、、超残念なことになっています。
本作はある意味では2作目の焼き直しと言えなくもないです。テロリストを鎮圧するヴァンダムの活躍を楽しむわけですが、、、まず第一にヴァンダムがアクションするまでがすっごい長いんです。序盤に酒場でちょっと喧嘩した後は、延々と検査ベッドの上で横たわるヴァンダムが流れます。アクションスターなんだから、アクション見せろってw
さらに、終盤まで引っ張ってやっと登場するドルフ・ラングレンも前作ファン(←いるのかw?)にすれば噴飯ものです。なにせ弱いですし、ラスボスはピットブルであってラングレンは完全に前座なんです。それだったらピットブルvsヴァンダムを先に持ってきて、片が付いたと思った後に、ボーナスステージとしてラングレンが隠しボスで出て来ないと盛り上がりません。だって、ファンの大半はピットブルよりドルフ・ラングレンを見に行ってるんですから。お祭りがそんなあっさり片が付いてもらっちゃ困るんです。
さらにいうと、ヴァンダムが勝つ根拠がないのも気になります。二倍濃度で投薬しただけで強化できたっけ? っていうかドーピングで強くなっても応援できませんけど、、、。

【まとめ】

なんというか、、、シリーズ・ファンもイマイチ喜べず、かといってシリーズ初見だとリュックの覚醒に燃えないという、、、、どうしたらいいんでしょう(苦笑)?
あとこれはユニソル・シリーズの弱点でもあるんですが、銃で決着がつきすぎているため、いまいち肉体アクションで良いシーンがありませんでした。もうヴァンダムにバリバリ動けというのは厳しいかもしれませんが、もうちょっと何かあったとは思います。
決して面白い作品ではありませんが、「ユニバーサル・ソルジャー」シーリーズファンは必見です。スカっと爽快アクションというわけではありませんけれどw。

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