ザ・ウォーカー

ザ・ウォーカー

二本目は

「ザ・ウォーカー(原題:The Book Of ELI/イーライの書)」です。

評価:(75/100点) – 良いエンタメでした。


【あらすじ】

終末の戦争が起きて30年が経っても世界は荒廃したままであった。地球は降りしきる紫外線に犯され、人々はかつての文明の痕跡を奪い合うようにして生活している。ザ・ウォーカーと名乗る男は、バックパックに武器と本を詰めてひたすら西を目指して歩き続けていた。
途中立ち寄った街で、彼はカーネギーと名乗るギャングのボスと知り合う。カーネギーは人々を支配するために「ある本」を探し続けていた。ザ・ウォ-カーが持っている本がまさにそれだと知ると、カーネギーは奪還しようと手下を使って襲いかかる。しかし彼は圧倒的な力で撃退し、ひたすら西に向けて歩き続けるのだった、、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ザ・ウォーカーの人となり紹介
 ※第1ターニングポイント -> ザ・ウォーカーがカーネギーの街につく。
第2幕 -> カーネギーの「本奪還作戦」
 ※第2ターニングポイント -> ザ・ウォーカーが撃たれる。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

本日の二本目はザ・ウォーカーです。今週公開の作品の中ではエンタメ寄りですので、かなりお客さんが入っていました。主演・制作がデンゼル・ワシントン。画面が灰色っぽいディストピアSFという時点で、相当期待していました。
自分でお金をだして主演もこなすと、どうしても「俺様映画」になりがちです。そういった意味では間違いなく「俺様映画」なんですが、すっごい明後日の方向にすっ飛んでった「俺様っぷり」でした。
もちろん冒頭からデンゼル・ワシントンは無敵のオヤジっぷりを遺憾無く発揮します。チンピラ共は何人来ようが瞬殺ですし、「おまえセガールか?」ってぐらい危なげない安定感を見せてくれます。しかもストイックで美女に言い寄られてもものともしない格好良さ。確かに俺様です。
それに対してもう一人の主役といっても良いゲイリー・オールドマンは、ちょっと可哀想な役所となっています。いわゆるインテリチンピラなんですが、あんまり威厳というか凄みが無く説得力がありません。せっかくの悪役・ゲイリーなのにちょっともったいない感じです。
本作はエンターテイメントとして大変良く出来ています。「イーライの書」というマクガフィンをゲイリーとデンゼルが奪い合って、そこに「アンジェリーナ・ジョリー2世」ミラ・キュニスが絡むわけですから、つまらないわけがありません。後半アクションが少なくなってその分突っ込み所満点のガンファイトだらけになるのですが、そこもなんとか耐えられます。
それ以上に引っ掛かる部分があるとすれば、やはり本作全体に流れる宗教的な部分です。
予告の段階で「世界にたった1つ残った本を奪い合う」というプロットが明かされていますから、これはハリウッド映画である以上は絶対「聖書」に決まってるんです。でまぁ実際に見るとまんま聖書なわけですが、これの扱い方というのがキリスト教の信者かどうかに関わらず結構微妙な感じなんです。
本作はキリスト教が原因となって終末戦争が起き、おそらく核兵器か何かでオゾン層が破損して紫外線によって世界が荒廃します。そして終末戦争後に人々はキリスト教が悪であるとして根絶やしにするために聖書をすべて焚書するとなっています。
困ったな~~~というのは、デンゼル・ワシントンがこの窮地を救うキリスト教の「預言者」になっちゃってる部分です。要はイーライってのは神の啓示を受けて祝福された「聖書の守護者」なんですね。で、一方、カーネギーはその聖書を独善的に利用とする不信心者なわけです。
これって、信心深い預言者は助かって、不信心者は酷い目に遭うっていうとても(キリスト教的には)教育的な内容なんです。そして「求めよ、さらばあたえられん(Ask, and it shall be given you.)」という言葉まんまな話なわけです。
ですので、極端な話、これはデンゼル・ワシントン版の「パッション(The Passion of the Christ / 2004)」です。パッションはあまりにあんまりすぎて世界中のキリスト信者から激烈な反応がありましたが、本作は良くも悪くも教育的な内容なので大丈夫でしょう。
バカ・アクション俺様映画かと思いきや、明後日の方向にとんで宗教的な俺様映画だったという、、、、まぁ面白いから良いんですけど、ちょっとどうなんでしょう。

【まとめ】

序盤でいきなり「ダヴィンチ・コード」の原作本を「こんなのはゴミだ。焼いとけ。」と切り捨てる拍手喝采なジョークがあったりと、エンタメとしてかなり本気で考えられた愉快な映画です。デンゼル・ワシントンはなかなか格好良いですし、この(アメリカが)不況の時代に「預言者よ再び」って感じの宗教的カタルシスはある意味必然的です。ちょっと後半に失速しますが、それでもかなり出来の良い部類のハリウッド映画だと思います。
びっくりしたんですが、実は本作は制作費が80億もかかってるんです。舞台も限定的ですしCGもショボイので低予算映画にしか見えないんですが、やっぱ半分以上はスター連中の出演料なんでしょうか?ラストの5分ぐらいだけしか出て来ないチョイ役がマルコム・マクダウェルだったりして、確かに俳優陣は超豪華です。
キリスト教以外を信仰している方には厳しいかもしれませんが、その他の方には間違いなくお勧め出来ます。ちゃんと(薄いながらも)ストーリーのあるアクション映画って久々に見た気がします(笑)。
※完全に余談ですが、劇中に出てくる「第三世代iPod」とモンスターケーブルのイヤホン「MH Beats IE by dr.dre」の組み合わせってディストピアSF的にどうなんでしょう?
「第三世代iPod」はちょっと古いって意味で良い雰囲気なんですが、「MH Beats IE by dr.dre」って確か去年の今頃発売だった気がします。物としてもちょい高めなものなので、この世界観に合わない気がするんですが、、、ヘッドフォン好きの戯言でしたw

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