ヘイトフル・エイト

ヘイトフル・エイト

復活2回めはこちら

ヘイトフル・エイト」です。

評価:(82/100点) – 超強化型ショ○ンKの感動作


【あらすじ】

舞台は冬のワイオミング、賞金稼ぎのウォーレンは吹雪に追われるなか、馬が倒れて立ち往生してしまう。そんな時、1台の馬車が通りかかる。乗っていたのは同じ賞金稼ぎの「首吊り人」ジョン・ルース。彼は1万ドルの賞金首である女殺人鬼・デイジーを連行中であった。道中、新任保安官として街に向かうクリスも同行し、4人と御者の珍道中が始まる。
しかし、猛吹雪に追いつかれてしまった一行は、道中の”道の駅”ミニーの店で足止めを余儀なくされる。あいにくミニーは留守中であったが、そこには4人の先客がいた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ウォーレンとクリスが馬車に乗り込む
 ※第1ターニングポイント -> ミニーの家に到着する
第2幕 -> ミニーの家での一夜と事件発生
 ※第2ターニングポイント -> ウォーレンが撃たれる
第3幕 -> 解決編


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【感想】

こんにちは。きゅうべいです。もうすでに2番館上映になってしまっていますがご容赦ください。本日はタランティーノ・最新作にしてアメカジファン垂涎のヘイトフル・エイトです。なんでアメカジファン垂涎かと申しますと、実はこの映画、ほぼ全編の衣装があの「RRL(ダブルアールエル)」なんですね。ご存知「ラルフローレン」のカントリー・トラディショナル・ラインでして、元も子もない言い方をすれば、西部劇のコスプレ服みたいなのを高く売ってるブランドです(笑)。その「コスプレ服」が本当の西部劇に使われて、しかもそれがボロ布のようにバンバン血糊やら酒やらで汚れていくという、、、とっても贅沢なひとときを楽しめますw

いきなり「楽しめます」と書いちゃいましたが、本作は無類に面白い「雪山サスペンス」です。正確にはサスペンスってほど謎のある事件ではないんですが、いうなれば超よく出来た最上級の「古畑任三郎」って感じです(笑)。タランティーノ作品を見たことがある方はピンと来てもらえると思います。タランティーノ監督を紹介する際には、よく「過去の名作」や「B級キワモノ映画」のマッシュアップ部分が取り挙げられますが、それ以上に彼の特徴というのは「ダラダラと続く登場人物のひとりがたり & 無駄話」にあります。武勇伝であったり、脅しであったり、はたまたガールズトークであったり、いろいろパターンはあるんですが、劇中でかならず「ダラダラとした無駄話」がはいります。これって、すごく雪山サスペンスと相性がいいと思いませんか? だって、雪山サスペンスってことは基本的には舞台や登場人物が狭いわけで、必然的にみんなでしゃべりまくるしか無いわけです。
ということで、本作は「タランティーノ meets ソリッドシチュエーション」ってだけでもう勝利が約束されたようなものなんです(笑)。

ということで、お約束です。
本作は、第2ターニングポイントをきっかけに、ストーリーがガラッと代わります。ネタバレは極力しないように書きますが、しかしこの「展開」については少々書きたいと思います。もし未見の方は是非劇場にいっていただいてご覧になってからにしてください。最近は劇場公開が終わってからDVDになるまでも3ヶ月ぐらいと早いですから、もしお近くに公開館がない場合でも、是非「これはは見るべし」リストに加えていただいて、是非ご鑑賞ください。いやね、マジで面白いですよ。

話の概要

本作のタイトル「ヘイトフル・エイト」はもちろん「ちょ~イヤ~な8人」を指しています。そしてタイトルどおり、本作に登場する人物は、御者の「O.B.(オービー)」を除いて、ものすごいクセモノがそろっています。南軍・北軍の対立あり、超差別主義者のオラオラ系あり、そして明らかに口だけがうまい曲者有り。役者の豪華さもさることながら、「こんだけ揃ってて殴り合いにならないほうがおかしいわ」というレベルで強烈なメンバーがそろっています。そしてお得意の「無駄話」の数々。映画自体は約3時間と強烈に長いのですが、その長さが「早く外に出たいな~」というまさに登場人物たちが吹雪の小屋で思っていることそのまんまの共感につながり、そして三幕目の血みどろのカタルシスに繋がるわけです。

事件という事件は「コーヒーポットに毒が入れられた件」という一点のみなのですが、これを巡った心理戦の数々に、かなりぐっと引き込まれます。

この映画では、本当に「語り」だけしか出てきません。なので、登場人物みんなが喋っていることに裏付けがまったく無いんですね。もしかしたら全部本当かもしれないし、全部ホラかもしれない。ただ挑発するだけの作り話かもしれないし、照れてて真実を喋っていないだけなのかもしれない。そんな疑心暗鬼が最高潮に達するのが、まさにラストなわけで、これはもうハッタリなのかマジなのか誰にもわかりません。

でも、そんな中で、ラストシーンに出てくるある「ウソ」が、それでも人を感動させ、奮い立たせてくれるわけです。ウソを利用してのし上がってきた彼は、しかしその「のし上がった過程」は真実なわけで、、、とか書くと某ショー○K氏になってしまいますが(笑)、図らずもこの映画はそれを拠り所にした意地を見せてくれます。この映画風にいうならば、例えばショ○ンKが日本代表としてTPP議論に乗り込んでいってアメリカとか東南アジアを丸め込んできてしまったら、やっぱり英雄になれるわけですよ。たとえその基盤がウソまみれの無茶苦茶だったとしてもです。まぁシ○ーンKにはさすがに荷が重いですけどね(笑)。

それでもって、これって、よく考えるとタランティーノそのものなんですね。タランティーノって「自らが好きな過去の作品」を切り貼りして作品を作るわけで、それって作家/クリエーターとしていうなれば「ウソの作品」なわけですよ。超高次元でサノってるというかね(笑)。それでも彼の作品は観客の心を打ちます。実際にキル・ビルやイングロリアス・バスターズはもう完全にオリジナルの感動もまるごと再現してしまったわけです。そう考えると、ラストシーンのとある手紙のシーンというのは、これまさにタランティーノの独白といっていもいいかと思います。そしてタランティーノの映画で感動するのとまったく同じ構図で、やはりその手紙にも感動してしまいます。
これだけでも十分に凄いのですが、タランティーノの真骨頂はここからさらに「でもそれ偽物じゃん」という自己ツッコミまでして、まったく嫌味なく自虐ネタにしてみせる点にあります。自分の立ち位置を完璧に把握して、その上でハイクオリティな作品を量産してみせる。これをやられては他は太刀打ちできません。しかもアイデアというか元ネタは映画史そのものであってほぼ無限ですから(笑。

【まとめ】

おそらく話の筋だけであれば90分ぐらいに収まってしまいます。それはそれで面白そうではありますが、しかしこの170分という長~い時間を通じると、意外とクリスやウォーレンが愛おしく思えてくるのです。衣装やギターなどの小物までひっくるめて徹底される「古き良き西部劇サスペンスのレプリカ」は、必見の出来です。猛プッシュいたします。

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記事の評価
息もできない

息もできない

日曜日に渋谷のシネマライズで「息もできない」をみました。

評価:(90/100点) – 見てるだけでも本当に”息もできない”です。


【あらすじ】

ヤクザの下請けをして過ごすチンピラのサンフンは、ある日道端で勝ち気な女子高生・ヨニと出会う。一歩も引かない彼女に好意を感じたサンフンは、次第に甥っ子の遊び相手として、そして自身の話相手として、ヨニに心を開いていく。共に複雑な家庭環境を持っていたサンフンとヨニだったが、やがてヨニの弟ヨンジェがサンフンの部下になったことで運命が捻れていく、、、。


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【感想】

本日は、日曜日に見てきました「息もできない」です。公開から日が経ったこともあり感想はあらかたweb上に出そろっていますから、要点のみを書きたいと思います。
この作品は、暴力でしか自己表現が出来ないサンフンが、もがいて、嫌気がさして、感情を爆発させて、だけど女性によって少しポジティブになれて、けれど結局報いを受けるという、重たい話です。
作品内に出てくる人物で一般的な意味で幸せそうな人間は一人もいません。家庭内暴力もあり、娘を殺す親もあり、友人は殺され、親族が人殺しもやります。だけれども、ヨニとサンフンが一緒に居るときだけお互い馬鹿みたいにくだらない会話が出来るんです。そこでは家庭の事情や仕事の内容なんて関係無く、一対一の不器用で下品な言葉が飛び交う、けれども真に安心できる会話があります。
その一方で、なんと世界の殺伐としたことでしょうか。サンフンという男は報いを受けて当然の酷いことをやってきています。だけれども、その彼が本当に魅力的に描かれています。
作品内では、全員が奇妙にすれ違っていきます。「パレード」の時の話でも書きましたが、人間が全てをさらけ出して会話をすることはまずありません。必ず他人には言わない、他人には見えない部分があります。本作でも、そのすれ違いという部分が肝になってきます。各人が誰に対してどこを隠してどこをさらけ出すのか? それがおぼろげに見えたとき、この映画がとてつもない事を描ききっていることに気付くはずです。
それは暴力の連鎖であり、個々人の幸せの定義の仕方であり、そして感情の折り合いのつけ方です。
こんなとんでもない作品を単館にとどめるのはもってのほかだと思いますが、幸いにして今週末から拡大ロードショーらしいですので是非是非映画館でご鑑賞下さい。


なんか土日は「第9地区」「月に囚われた男」「息もできない」と良品3作しか見なかったので、ちょっと奇妙な罪悪感を感じています(笑)。アリスの前に自制も兼ねてあえて「ダーリンは外国人」を踏みに行こうかと思案してます、、、たぶん明日か明後日にでも。
あんまり良い映画ばっかり見てこれが当たり前になると良くないですから(笑)。
「良い映画を見て感動するには倍の糞映画を見よ!」というのがモットーですんで(苦笑)。

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