KG カラテガール

KG カラテガール

今日の3本目は

「KG カラテガール」です。

評価:(30/100点) – 不満ばっかりなので次作に期待!


【あらすじ】

伝説の空手家・紅宗次郎の末裔・紅達也は謎の男達の道場破りに会い、次女・菜月を攫われ自身も殺されてしまう。なんとか生き延びた長女の彩夏は池上家にやっかいになり、池上彩夏として紅家に伝わる宗次郎の黒帯を守り続ける。
それから数年後、高校生になった彩夏はバイト先でひったくり犯を撃退したことで「スーパー空手少女」としてニュースになってしまう。彩夏が生き延びていることを知った謎の集団のボス・田川は、彩夏へ刺客を放つ、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 彩夏がひったくり犯を撃退し有名になる。
 ※第1ターニングポイント -> 彩夏が二人組に襲われる。
第2幕 -> 彩夏とサクラ。
 ※第2ターニングポイント -> サクラが田川の人質となる。
第3幕 -> 菜月の救出。


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【感想】

本日の三本目は「KG カラテガール」です。T-JOY作品ですので、自社のバルト9とブルグ13のみでの公開となります。初日のレイトショーですがまぁまぁ人が入っていました。主演はハイキックガールの武田梨奈。監督はハイキック~で脚本だった木村好克。アクション監督で西冬彦。キャストも殺陣は大志塾門下が出演で、ほぼハイキックガールの陣容そのままです。続編ではないですが、西冬彦組の一連のカラテ作品の最新作です。
結論から言ってしまいますと、本作はダメダメですw これより書くことはダメ出しばっかりになるとおもいますが、でもこれは期待の裏返しです。間違いなく武田梨奈は日本アクション界の期待の星です。可愛いですし、十分に動けます。そしてきっちりエンディングを歌うなどアイドルとしての佇まいもできています。だから、是非、この素材をフル活用して素晴らしい作品を撮って欲しいんです。今から書くことはアクション馬鹿からの提言というか(苦笑)、アクション映画の面白さの肝の部分になります。

提言その1: アクションでキャラクターを語れ!!!

本作で一番の肝はここになります。アクションはただ戦えばいいというわけではありません。アクションはキャラクター描写の一種であり、立派な演技なんです。例えば先日見たドニー・イェンの「イップマン2」を例に見てみましょう。
イップマンは詠春拳を使います。詠春拳は守りのカンフーであり、空手の「三戦立ち」のように内股気味で正面に構えます。攻撃は適切な時に適切なタイミングで最小限のカウンターを入れます。技は拳が中心となり、足技は相手の動きを制するため、遠い間合いから牽制したり相手の攻撃をかいくぐる際に使用します。この一連の型は、イップマンの平和主義と直結しています。イップマンは決して自分から手を出す人間ではなく、普段は至って温厚で低姿勢です。詠春拳はこのイップマンの性格・理念を体現しています。
このように、アクションとはその動きでキャラクターの性格や理念を表現するものです。力任せの攻撃を行う人間なのか、それとも守りを中心にカウンターで制するのか。足技を多用するのか、拳を多用するのか。正々堂々とした攻撃を使うのか、卑怯な手段を使うのか。とにかく勝利にこだわるのか、勝利よりも礼節を重んじるのか。その動き全てがキャラクターを表さなければいけません。「この人物ならばこういう動きをするはずだ」という物であり、逆に「この動きをするのだからこういう人物に違いない」という物です。
本作では、アクションが一切キャラクターを表しません。敵も味方も似たように飛び跳ねていますし、似たように踏み込んできます。これは本当に残念です。キャラクターを表さないアクションは、もはやただの「演舞」です。これでは例え動きが良くても映画作品にはなりません。

提言その2: アクションでストーリーを語れ!!!

前項にも通じますが、アクションはキャラクターだけでなくストーリーも語る物です。
本作では田川は傭兵集団のボスで「宗次郎の黒帯」をブランドに仕事をしています。しかしそれ以外の具体的なことは何も描写がありません。作中において一番意味が分からないのは「結局田川とは何者なのか」という部分です。それは田川側のアクションに一貫性と特徴がないからです。例えば、田川側の刺客たちが「田川流」的な技を使いさえすれば、この作品は「田川流」と「紅流」の抗争の話なのだと一目で分かります。また、もし田川本人が戦うシーンがあって、そして紅流のあの独特の構えを使いさえすれば、それは十分ストーリーの説明になります。田川が紅流というブランドを奪おうとしている表現になるからです。
ですが、本作には前述のようにアクションに特徴がありません。アクションとストーリーが完全に分離してしまっていますので、アクションパートではストーリーが前に進みません。唯一ストーリーのあるアクションは海沿いでの姉妹の一騎打ちです。ここでは、2人が同じ型を使うことで姉妹だと気付くという描写があります。この積み重ねがないため、90分しかない上映時間が長く感じてしまいます。

提言その3: アクションは主演のプロモーションタイムと心得よ!!!

アクション俳優とアイドルは紙一重です。というのもアクション俳優は演技力よりもアクション力を重視されるため、より俳優本人の魅力・技量がストレートに表れるからです。ですから、アクションシーンは主演俳優のプロモーション的な要素が強くなります。衣装であったりシチュエーションであったり、アクションシーンに物語り上とは別の「テーマ」を設けることが肝心です。
では本作の彩夏のアクションを順を追って見てみましょう。
最初のアクションはひったくり犯との対決です。ここは顔見せ程度であり、素人相手に圧倒的な強さを見せます。
次いでのアクションは額のペットボトルを蹴り飛ばす模擬シーンです。これは彩夏のハイキックの高さと正確さを見せています。
その直後がサクラと武田一馬との2対1の対決です。ここがひったくり犯とのアクションと同じ構図でレベルを上げた物です。
次がサクラとの一騎打ちです。ここは前述のようにお互いが同じ技を出し合って相打ちになるシーンです。
次はもう本拠地に乗り込みます。乗り込み先で1対1の空手戦、1対多数の乱取りの後、ヌンチャクで木刀相手に戦います。ここが本作で唯一武器を使うシーンです。
最後にいかつい外人リチャード・ウィリアム・ヘセルトンとの1対1から菜月が援護にはいった1対2の戦いです。ここでは劇中で唯一の姉妹連携が見られます。
とまぁ羅列してみるとわかるように、パターンが少なすぎますw すべてのアクションは平らな床の上でおこなっており、地形や施設を利用した戦いがありません。武器もヌンチャク対木刀が1回、それも1分ぐらいで終わってしまいます。本作は武田梨奈のアイドル映画でもあるわけですから、彼女の能力を知らしめないといけません。だからもっと戦いのバリエーションを増やして「武田梨奈ってこんな事もできるんだ」というプロモーションをするべきです。本作では空手家・武田梨奈の魅力の半分も伝えられていません。

【まとめ】

残念です。ただただ残念です。正直な所、ドグーンVで私は一気に武田梨奈の魅力にやられました。だから本作もかなり期待していたんです。ところが蓋を開ければ、、、本当に残念です。疑問なのは、本作のスタッフ(=ハイキックガールのスタッフ)は本当にアクション映画が好きなんでしょうか? どうもアクションに愛が感じられないというか、「アクション映画」という一種のジャンルムービーの肝が分かっていないような気がしてなりません。とはいえ、武田梨奈は文句なく可愛いですから、彼女のファンはとりあえず押さえておくに越したことはありません。ただし、間違っても傑作や良作ではありません。つまらない映画だという前提で、是非将来のアクションスターへの投資だと思って見に行ってもらえるといいかなと思います。小声でオススメします。

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ベスト・キッド(リメイク)

ベスト・キッド(リメイク)

2本目は

ベスト・キッド(リメイク)」です。

評価:(20/100点) – スミス家のホームビデオ。


【あらすじ】

12歳のドレは母親の転勤で中国・北京へ移住してくる。移住したその日、彼は公園で女の子をナンパするが、その子がガキ大将の意中の子だったことからさぁ大変。その日よりドレはガキ大将一味に目を付けられてしまう。追いかけまわされたドレを救ったのは、アパートの管理人・ミスターハンだった。彼らはガキ大将の道場にケンカを売りに行き、カンフートーナメント大会で決着を付けようと提案する、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ドレの引っ越し。
 ※第1ターニングポイント -> ドレがミスター・ハンに弟子入りする。
第2幕 -> ドレの修行と七夕祭り。
 ※第2ターニングポイント -> トーナメントが始まる。
第3幕 -> 大会の模様。


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【感想】

さて、2作目は先行公開という体の「ベスト・キッド(リメイク版)」です。余談ですが、最近先行公開といいつつ普通に土日に4回も5回も上映する作品が増えているんですが、これどうなんでしょう? もちろん先行公開の客はそのまま初週の動員数にスライドできるという裏ルールがあるため土・日分をチートできるというカラクリなんですが、客からするとあんまり意味がありません。しかも先行公開した作品で初週一位を逃すと超恥ずかしいというデメリットもありますw とはいえ、本作はかなりお客さんも入っていましたので、なんとか一位はとれそうです。

本作の立ち位置。

本作はキャラクターの名前と舞台が変わっているだけで、オリジナルの「ベスト・キッド」をほぼそのままコピーリメイクしています。台詞単位までほとんど同じです。皆さんご存じだとおもいますが、本作はウィル・スミス夫妻が制作で主演が息子のジェイデン・スミスです。要は、ウィル・スミス夫妻が小学校卒業記念に主演映画をプレゼントしたというだけの話です。ミヤギ師匠役(今回はミスター・ハン)にジャッキー・チェンをキャスティングしていることからも、ウィル・スミスの息子に賭ける意気込み(=親馬鹿っぷり)が伺えます。しかし、、、非常に残念ですが、この息子は酷すぎますw

ジェイデン・スミスという”スター”

ほぼ丸々コピーリメイクである本作は、オリジナルと大きく変わっている箇所が3つあります。1つは見ての通り、競技が「空手」から「カンフー」に変わっている点です。とはいえ、実はこれはあんまり大したことはありません。というのもオリジナルだってダニエルは最後に「鶴の構え」を使うわけで、全然空手じゃないからですw なんの問題もありません。
2つ目はこれも見ての通り、師匠がノリユキ・パット・モリタからジャッキ-・チェンに変わっている点です。これは良くも悪くもですが、パット・モリタが実際には空手が出来ないのに対して、ジャッキーは素で武術の達人です。なので、パット・モリタの持つ「胡散臭さ」が大幅に減り、代わりに訓練シーンやチンピラから主役を救うシーンが豪華になっています。
3つめはこれも見ての通り、主役が青年から子供に変わっています。これははっきりいって全面的にマイナスです。単に説得力の問題もあるんですが、それ以上にジェイデン・スミスが酷すぎます。
で、やっとこさジェイデン・スミスの話なんですが、このクソガキがまったく可愛くないんです。態度が悪いというか、すでに父親のもつ「俺様チンピラオーラ」がビンビン出ていますw どれくらい「俺様」かというと、全ての場面でジェイデンのアゴが上がっていて物理的に他人を見下す目線になっていますw それはジャッキーに対しても明らかです。私たちのアイドル・ジャッキーすら馬鹿にしてるのかと思うと、思わずぶっ飛ばしたくなりますw
実はこのジェイデンへの変更でストーリー上のニュアンスが大分変わってしまっています。というのも、例えば本作のそもそもの発端であるチンピラとのケンカは、どう見てもドレが悪いように見えますw そしてその後の水掛け復讐場面も、どう見てもやり過ぎです。オリジナルでは水道水をホースでかけただけなのに、本作ではあきらかに健康に悪い汚水をかけます。そんなことしたらリンチされて当然です。
これは非常に重要な問題で、要はオリジナルのダニエルはヘタレだけど真面目だったのに、本作のドレはクソ生意気でケンカっ早いチンピラなんです。これじゃ、そもそもの師匠の教え(「空手/カンフーは防御の技だ」)に反してるんです。全然共感できないw 恐ろしいのは、セリフをほとんど変えていないのに、ジェイデンという悪い意味でスター性のある人間のオーラだけでこの感じ悪さが付加されている点ですw ジェイデン、、、恐ろしい子、、、。
もう一方のスター、ミスターハンも「ジャッキーである」以上の背景がありません。キャラとしてミヤギさんよりも明らかに薄っぺらいんです。でもそこはジャッキーなんで大丈夫ですw だって誰がどう見ても達人にしか見えませんからw
そう考えると、ジャッキーをキャスティングしたのは大正解です。

【まとめ】

本作は、エンドロールに作品の全てが詰まっています。ジャッキーのカンフー映画ではお馴染みのNGシーン集の代わりに、本作ではメイキング的な撮影風景の写真が流れます。が、、、が、、、、ウィル・スミス写りすぎwww
写真の半分ぐらいが映画と関係無いウィルとジェイデンの親子写真なんです。つまり「スミス家の中国旅行写真」w
結局、本作はあくまでもウィル・スミス夫妻が息子に贈ったプレゼント以上のものではありません。映画としては明らかにオリジナルの方が数段上ですし、ジェイデンのプロモとしても相当厳しいです。特にラストのカンフートーナメントで明らかなCGを使っているのがアクション志望としてはダメダメです。
残念ですが、ウィル・スミスに思い入れのある方、または生意気なクソガキが大好きな方にのみオススメです!!!

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書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

例によって土曜は二本です。一本目は

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。

評価:(55/100点) – ベタベタな青春映画。


【あらすじ】

愛媛県は四国中央市。紙産業が盛んな街だったが、商店街は寂れ相次ぐ閉店・倒産に見舞われていた。そんな中、三島高校に臨時教師として赴任してきた池澤先生は、書道部の顧問として書道パフォーマンスでの勧誘を行ってみせる。音楽を掛けながら大きな筆で大きな半紙に書くスタイルに、部長の里子は戸惑いを隠せないが、一方で清美はその姿に惚れ込んでしまう。清美は父の好永文具店の閉店記念に、部員みんなでの書道パフォーマンスを企画するが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 書道部の日常と池澤先生の赴任。
 ※第1ターニングポイント -> 池澤先生が書道パフォーマンスを披露する
第2幕 -> 書道パフォーマンスの練習。そして清美の転校。
 ※第2ターニングポイント -> 美央が書道部に復帰する
第3幕 -> 書道パフォーマンス甲子園


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【感想】

本日の1本目は「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。TV局映画だからか観客はかなり入っていました。客層もお年寄り夫婦からカップルから子連れまで幅広く、週末の興業ランクでは上位にくるかも知れません。
話の内容はこれ以上ないほどシンプルです。「真面目でぶっきらぼうな努力家」「陽気なムードメイカー」「変わりもの」「おとなしいミステリアスな美少女」「訳ありで部を離れた天才」と超類型的なキャラクター達による青春スポ根映画です(笑)。書道はスポーツじゃないと思ったそこのアナタ! 甘いですよ(苦笑)。本作では書道は完全にスポーツとして扱われます。大事なのは仲間とのチームワーク、そして強靱な足腰。特訓は走り込みと千本ノック的な反復練習。完全にスポ根です。
でまぁ結論を言ってしまうとですね、青春映画としては平均的な出来ですが、肝心の書道があんまり関係無いんです(笑)。せっかく里子の父親が厳しい書道家で「書道パフォーマンス」なる遊びに否定的なのに、里子自身に全然葛藤がないんです。多分この映画を見て「書道パフォーマンス」に興味がでた方はいるかも知れませんが、「書道ならではの楽しさ」が分かった人はあんまり居ないと思います。実際には「書き手の心が字に表れる」所が面白いわけですが、その喜びなり楽しさは表現されていません。だからせっかく本物を連れてきて書道パフォーマンス甲子園の本番を描いたのに、どこが優勝したかを言わないという酷い事になっています。本来なら「一番思いを込めて書いたチームが一番素晴らしい字を書いた」という所に着地しないといけないんですが、、、これもやはり実在の参加校への配慮でしょうか? この部分については、同じ成海璃子さん主演の武士道シックスティーンの方がきちんと描けていました。
とはいえ、 山下リオ、桜庭ななみ、小島藤子というアイドル・テンコ盛りの映画として見ることは十分にできますし、あまりにベタ過ぎてダサイっていう以外はそこそこ楽しめる作品ではあります。ぶっちゃけ病院のシーンで泣いちゃいましたし。
顔に墨汁が飛んで変な顔になるというギャグをしつこく重ねてくるのには正直辟易しましたが、この際桜庭ななみに免じて大丈夫です(苦笑)。
でもせっかくなのだから、エピローグとして「書道パフォーマンスの結果、商店街が活気づいた」ぐらいの描写は見せて欲しかったです。この作品では町興しのために書道パフォーマンス甲子園を開いて頑張ったわけですから、その結果が「池澤先生が書道の楽しさを思い出す」「池澤先生と部員達の信頼関係」っていうのはちょっと違うかなと思い引っかかりました。美央の件にしても、商店街の不況のことにしても、本作では全然解決していないんです。な~んかヨサ気な感じで流れてっちゃった印象ですが、本当に良いんでしょうか? 結構重たい話だと思うんですけど、、、。

【まとめ】

青春映画の佳作として、どなたでも安心してポップコーンを食べながら見れます(笑)。そこまで絶賛するほど出来は良くないですが、なんか今月は変な映画ばっかりだったので感覚的には大当たりです(笑)。
シネコンでの公開ですので、もしお暇な方はフラっと入って見ると良いかも知れません。意外と拾いものでした。

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武士道シックスティーン

武士道シックスティーン

本日は2本です。

1本目は「武士道シックスティーン」です。

評価:(65/100点) – 邦画の中では文句なく良作。若干剣道描写が、、、アレか?


【あらすじ】

剣道の中学チャンピオンの磯山香織は、中学時代に唯一敗れた西荻早苗を追って東松高校に入学する。しかし高校で再会した西荻はへっぴり腰で気迫のない情けない少女であった。そこで磯山は西荻の潜在能力を発揮させるために特訓を企画する。剣道一筋の人生だった磯山は、西荻との交流で徐々に心を開いていく。しかしそれは磯山の強さを奪うことでもあった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 早苗と香織の出会い。
 ※第1ターニングポイント -> 香織が放課後に早苗を自宅に誘う。
第2幕 -> 地区大会と香織の苦悩。
 ※第2ターニングポイント -> 早苗が父と再会する。
第3幕 -> 早苗と香織の決闘。


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【感想】

さて本日は2本見てきました。一本目は武士道シックスティーンです。原作本の人気もあってか、結構混んでました。映画を見てる間中ずっ~と気持ち悪い笑い声を上げてるキテるアイドルオタク風の人が居る一方で、親子連れや年配の男性一人で来てる人など、観客層もさまざまでした。
でまぁ結論から先に言いますと、これがなかなか良い出来の青春スポーツものでした。本作のような内容はおそらく日本でしか成立しづらいものです。そういった意味で十分に邦画として見る価値のある佳作だと思います。

ストーリーについて

本作のストーリーは早苗と香織という2人の似たもの同士が互いに距離を測りながら友情を深めていく青春映画です。先日見た「海の金魚」とほぼ同じフォーマットです。
早苗の父親は、人が良すぎるために企業秘密を漏洩してしまい大借金を背負って蒸発してします。それを見た早苗は「負けること」に強烈な抵抗を示すようになり、逃げ回ってでも「絶対に負けない」事を信念に気迫のない腰の引けた剣道スタイルになっていきます。
一方の香織は母を亡くし、不器用な剣道家の父親に幼い頃から「勝つ剣道」を叩き込まれ続けます。「勝つこと」だけが生き甲斐で、趣味も剣道の鍛錬と剣道関連書の読書など、完全に剣道のみの人生を歩んできています。
このお互い「父親に理解して欲しい」という欲求を心の底にもったーーしかし表面への出方が180度違う2人が出会うことで相互に支え合うようになっていきます。
主演の成海璃子と北乃きいは結構な好演を見せてくれますし、剣道シーンは一部を除いてなかなか良く出来ています。剣道を囓った身としては、ここまで剣道シーンを描写してくれればもう十分及第点です。
しかしですね、実はこの剣道描写でちょいちょいガックリさせられるんです。
まずは北乃きいが勝つ2つのシーンです。両方とも相手が完全に棒立ちなのも酷いんですが、北乃きいが背中を反っちゃってるのがダメダメです。面を打つときは一足一刀から踏み込んで手を伸ばしつつ絞りますので、背中は絶対に反りません。胸は張りますが、背中が反り返ってるのは変です。
次に最後の決闘シーンです。ここは心底がっかりです。ここでは両者が制服姿で剣道をするんですが、2人とも下手なんです(苦笑)。しかもスゴい下手。もしかして他の剣道シーンはスタントマンの吹き替えなのかもと思ってしまって急に冷めてしまいました。

スポーツにおける「道」の問題。

あまり意識されることが少ないかも知れませんが、日本のスポーツや文化には「道」と言う文字が最後に付くものがあります。ちょっと思いつくだけでも、柔道、剣道、茶道、華道なんかがあります。この「道」という文字はそのまま「生き方」を表しています。要は柔道や剣道や茶道や華道は、単なる技術論や勝負論ではなく、そこから「人生とは?」というところまで拡張された価値観・精神を修行するものなんです。
本作で描いている「剣道」もまさにその典型です。「剣道」は相手の3部位を竹刀の先端から中結いまでの37~38センチで打つスポーツです(プラスで突きもあります)。ルールは超単純です。しかし単純過ぎるがゆえに、そこには技術論以上に精神論が大きくなっていきます。本作で描かれる早苗のように細かい横ステップを多用すると、普通はぶっ飛ばされます(笑)。っていうか本作の剣道シーンでは一足一刀の間合いに入っても動かなすぎです。
本作の早苗と香織は剣道を通じて人生について考えさせられます。剣道を続ける意味を互いに悩んだとき、そこには「父と自分の関係」であったり自分の人生観を見つめ直す事になります。
こういったスポーツと人生観を重ねるというのは非常に日本的な発想です。

【まとめ】

本作は剣道を通じて友情を深め合う2人のまっすぐな少女の成長物語です。役者陣はみなさん良いですし、ストーリーもちょっと類型的な嫌いはあるものの十分に及第点です。
必見というほどでもありませんが、もしお時間があれば映画館で見てみるのも良いかもしれません。随所に小笑いが起きるようなギャグも挟んできますので、剣道を知らない方でも全然問題ありません。万人におすすめできる佳作です。

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しあわせの隠れ場所

しあわせの隠れ場所

2本目は

「しあわせの隠れ場所」をみました。

評価:(75/100点) – 嘘のような本当の話の脚色。


【あらすじ】

マイケルはスポーツの才能を見込まれ、ブライアクレスト・クリスチャンスクールというお坊ちゃん高校に入学する。家族も生活する家も持たない彼は、大富豪のリー・アン・トゥヒーに招かれトゥヒー家の居候となる。父は生後一週間で居なくなり母親はドラッグ中毒という環境で幼い頃から州の保護を受けていたマイケルにとって、トゥヒー家は初めて味わう優しい家族であった。やがて彼はトゥヒー家のバックアップでアメフトの才能を開花させ、数々の名門大学からのスカウトを受けることになる。


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【感想】

さて、二本目はアカデミー賞ノミネート作品の「しあわせの隠れ場所」です。原題は「The Blind Side(=死角)」。チームの大黒柱であるクォーターバックの死角を守るオフェンシブタックルのポジションを表しています。
本作はとても丁寧な描き方でもってマイケルが家族を得て心を開いていく課程が描かれます。ちょっと劇的過ぎるのとどう考えてもリー・アン・トゥヒーが聖人として描かれすぎてるように見えるんですが、それは脚色部分として置いておきましょう。サンドラ・ブロックの大根演技を差し置いても十二分に面白い人間ドラマです。
そして彼が心を開く課程とアメフトで才能が開花する課程がほとんどシンクロして描かれるのも上手いです。
フローズンリバーほどではないですが、さらっと見られる良い話という意味では近作では一番かも知れません。
実は本作で一番不思議なのはサンドラがゴールデングローブ賞・ドラマ部門の主演女優賞を取ったことです。放送映画批評家協会賞はメリル・ストリープとの同時受賞なのでまだ分からなくはないのですが、正直なところ演技ではなくてキャラクターの魅力だけでとってるんじゃないかと思う部分です。たしかにドラマ部門の多作品が微妙だったのはあるんですが、それにしてもどうかなと。2007年のプロレス大賞MVPで、本来なら受賞者無しの所を過去の功績で三沢さんにあげた時のような微妙な感じがします。
もちろん嫌いじゃないですし、45歳にしては驚くほど綺麗ですけどね。
本作はインビクタスと一緒に見るのがオススメです。インビクタスで描いていなかった試合の部分が、本作ではかなり上手く描かれています。

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インビクタス‐負けざる者たち‐

インビクタス‐負けざる者たち‐

本日も二本立てです。一本目は「インビクタス‐負けざる者たち‐」。

評価:(65/100点) – 人間ドラマはなかなか。 試合はちょっと、、、。


【あらすじ】

ネルソン・マンデラはロペン島の刑務所から釈放されANC議長につく。その勢いのまま大統領に就任したマンデラだが、黒人と白人の対立構造は変わらなかった。ANCが政権を執ったとはいえ経済力や学力は白人の方が圧倒的に上である以上、国家の分裂は南アフリカの黒人にとっても得策ではない。そこでマンデラは白人達のスポーツであったラグビーを通じて、黒人達の愛国心を喚起しようとする。


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【感想】

昨年は「チェンジリング」と「グラン・トリノ」で未だ衰えない構成力を披露してくれたクリント・イーストウッド監督の最新作、「インビクタス」です。何はともあれイーストウッドの新作が出たら映画館に駆けつけるのは映画ファンの義務です。ということで、私もいそいそと出かけましたが、、、観客が入ってない!
300名のキャパで100名も居なかったでしょうか。マット・デイモンなのに、、、。スポーツ物なのに、、、。

ストーリー部分

本作はマンデラ役のモーガン・フリーマンのほぼ一人舞台です。その台詞もほとんどがアジテーションのようで、タクシー内での秘書との駄話しですらどんどん演説調になっていきます。これが結構くどくてどうかなと思ってしまいます。
もちろん話の根幹になるマンデラの考えはかなりのものですし、マンデラ自身には大いに頭が下がります。政治犯として27年も刑務所に入れられた上で、それでもなお白人と黒人の共生というところに向かう達観には恐怖すら覚えます。実際のマンデラの人柄に詳しい訳ではないので何とも言えませんが、本作では極度の絶望の果てに解脱してしまった聖人のように見えます。それでいて自身の家族については急に人間臭い面を見せるなど、大変魅力的に描かれます。
一方、本作のダブル主演といっても過言ではないマット・デイモン演ずるピナールについては正直なところだいぶ陰が薄いです。マンデラの信奉者として以外にはキャプテンとしての能力やチームでの立ち位置はあまり描かれません。あくまでも観客の感情移入先として、「マンデラを仰ぎ見る好青年」としての役割を果たします。実際に本作が微妙な印象になる原因は、多分にラグビーの描き方です。
スプリングボクスはアパルトヘイトの関係で国際試合に出られなかっただけで、90年代前半の時点でも十分に強豪でした。しかし本作の序盤であたかも弱小チームであるように描かれます。「評論家の予想では良くて準決勝どまりです」みたいなセリフ回しがあったりして「そうか、弱いのか」と一瞬思ってしまうんですが、でも当時は優勝候補だったんです。あまりにも無理に「弱小国が連帯感を持ってついに優勝!」という物語に当てはめようとしたために、むしろ何で強くなったかが良く分からないという弊害が生まれてしまいました。これでスプリングボクスの成長物語りも併せられればものすごい傑作だったと思うのですが、ラグビーの使い方が少し中途半端になってしまった印象を受けます。

【まとめ】

さすがはイーストウッドという感じで、凄くデリケートな題材を上手く軟着陸させています。もちろんいくらでも深読みは出来ます。イーストウッド自身も共和党員ですし、「なんでもかんでもチェンジすることが良いわけではない」と意味深なことを言いますし(笑)。
傑作というほどではありませんが、良作なのは間違いありません。
オススメはオススメなんですが、できればyoutubeで95年のワールドカップ決勝の映像を見ておいた方が良いかもしれません。再現性の高さに驚くこと請け合いです。

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