戦闘少女 血の鉄仮面伝説

戦闘少女 血の鉄仮面伝説

本日はようやっと

戦闘少女 血の鉄仮面伝説」を見てきました。

評価:(90/100点) – 僕、こういうの好き。勧めないですけどw。


【あらすじ】

いじめられっ子の高校性・渚凜は右腕の痛みに悩まされていた。16歳の誕生日に特殊部隊の襲撃で両親を惨殺された凜はヒルコとして覚醒、そのまま襲い来る人間達をなぎ倒していく。街で出会った如月と玲に従って訪れたヒルコ部隊で、彼女はヒルコの仲間と共に戦士として修行することになるが、、、。


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【感想】

本日はようやく「戦闘少女」を見て参りました。先週末は某フェスで踊り狂っていて渋谷に行けなかったので、念願の鑑賞です。やはり人気監督&アイドル映画ということなのか、お客さんはかなり入っていました。
本作の監督は井口昇・西村喜廣・坂口拓という悪趣味映画の第一線で活躍するトリオです。本作は、3幕構成に従ってきっちり章立てされており、各章毎にそれぞれの監督が仕切っています。しかし仲が良いのかあまりに趣味が似通っているのか、まったくチグハグした感じが無く、一人のディレクションで撮っているといわれても何の違和感も無いほど良く出来ています。
とはいえ、他の井口作品・西村作品と同じく、決して一般受けするような作品ではありません(笑)。なにせ基本は「外国人が見た誤解や偏見が入りまくった日本観」の誇張に乗っけて70年代の東映・女性アクション映画を好き放題やっている作品です。そこにはグロい肉体破損を徹底的にギャグとして描く悪趣味センスがあったり、人間では無いヒロインが苦悩しながらも人間との調和を目指すというデビルマン的な異形愛があります。中盤で玲がフリークス・ショーで見世物にされていたという過去エピソードが入りますが、これこそまさに典型的な一昔前のアメリカンモンスター/スラッシャームービーの設定そのものです。
そういった意味でも、やはり本作では主役級3人の魅力というものに大きな比重がかかってきます。結果としては、3人ともとても魅力的に見えますのでアイドル映画としても大成功だと思います。血みどろのアイドル映画ってのも変な話ですが(笑)、それこそ梶芽衣子とかかつてのグラインドハウスっぽいB級ならではの(雑な)熱量を物凄く感じます。特に自ら「コスプレナースの佳恵です!」と意味が分からない自己紹介をする森田涼花さんは主役を食うほどの存在観を見せてくれます。なんというか、笑いながら人を惨殺するシーンがこれほど似合う人は居ません。(←一応褒め言葉w) ファンの方には申し訳ないのですが、ちょっと腹黒い感じが漏れてしまっているような「無垢な笑顔」がとんでもなく可笑しくもあり怖くもあります。
杉本有美さんもきちんと回し蹴りが頭まで届いていますし、ちょっとギコチないなからも身体能力の高さが良く分かるアクションを見せてくれています。残念ながら私はあんまり特撮ヒーローものを見てないのでゴーオンジャーでの活躍を見てないのですが、これなら将来アクション路線に行っても通用するかもと思わせてくれる内容でした。
また、敵役ながらやはり竹中直人はいろんな意味で群を抜いています(笑)。下らないっちゃあ下らないんですが、天丼のくだりは完全に爆笑でした。反則というか場をぶちこわして全部持ってくというか、感服です。そして忘れていけないのがやはり亜紗美の存在感です。完全にB級映画のアクション女優として板についた彼女ですが、かなり驚くレベルの殺陣を見せてくれます。
ストーリーとしてはよくあるタイプではあります。異形の者が覚醒して、同種の仲間達に合流して、でも結局は人類との調和を目指し敵対者と戦う。ダレン・シャンもそういう話ですし、パーシー・ジャクソンもそうです。そこにとにかく悪趣味なものを詰め込みまくると本作になります。それが竹中式ギャグであったり、井口式のゴア・ギャグであったりするわけです。

【まとめ】

個人的にはかなり好きな作品ですが、他人には決して勧めません(苦笑)。あまりにも内容が偏り過ぎていてとてもじゃないですが映画としての完成度は低いです。でもそんなことはまったく問題ありません。決して日本ではメインストリームに行けないタイプの作品ですが、作り手達が本当に楽しんで作っていて、そしてファンサービスをしようとしているのがとても伝わってくるので、変な連帯感というか共犯感がついて回ります。
好きな人だけがこそこそ見に行って、好きな人同士で「面白かったね」って盛り上がる。そういうニッチでカルトよりな良作だと思います。

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パーマネント野ばら

パーマネント野ばら

昨日見ましたのは

「パーマネント野ばら」です

評価:(80/100点) – クライマックスが不満だが、上質な雰囲気映画。


【あらすじ】

なおこはバツ一子持ちで故郷の宿毛に戻ってきた。母の「パーマネント野ばら」を手伝いながら、恋人のカシマや親友のみっちゃん・ともちゃん達と日々を過ごしていく、、、。


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【感想】

さて、昨日見てきましたのは、「パーマネント野ばら」です。観客は6名、雨の日のレイトショーにしては入っている方だと思います。気になって数えたら、本作が今年100本目の映画でした。節目の100本目が面白い映画でちょっとホっとしています(笑)。
本作は、一言でいってしまえば「閉じた田舎の社会で悲惨ながらも逞しく生きる女性達」を描いた映画です。本作には数えるほどしか男性が映りません。それも各キャラの父親と旦那ばかりで、なおこの恋人・カシマ以外は揃いも揃ってダメ人間です(笑)。そういった意味では、昨年映画化されました「女の子ものがたり」とほとんど同じ内容です。しかし、吉田大八という「アクの強さ」によって、本作は特殊な多幸感に包まれています。

今作に出てくるメインの三人、菅野美穂・小池栄子・池脇千鶴は揃ってすばらしい演技を見せてくれます。そしてみっちゃん・ともちゃんの超悲惨な現実をポジティブに見せてくれます。本作はある意味では吉田大八の大きな特徴--キ○ガイを特別視せずに描くことで歪んでるのに幸せな世界を描くという資質に適しています。フィルム内の世界そのものが躁状態と言いましょうか、何があってもオールOKな感じがとてもドラッギーで私は大好きです(笑)。

冷静に考えると、話として変だったり適当だったりする箇所は多々あります。例えば、みっちゃん・ともちゃんは悲惨な人生を逞しく生きているにも関わらず、実は主役のなおこは言うほど悲惨ではありません。途中で別れた旦那が出てきますが、子供も懐いていますし、フィルム上は礼儀正しい男性に見えます。っていうかフィルムを見る限りだと離婚の原因がなおこにあるんじゃないかと思えてなりません。少なくとも、離婚のショックでおかしくなったようには見えません。そしてラストの描写でどうも彼女がイかれたのはかなり昔だということが分かります。

実は原作未読で映画を見たんですが、どうもこの辺りって原作から設定を変えているようなんですね。映画の描き方ですと、ストーリーがなおこの独りよがりに思えてきてしまいます。なので、思い切って、ラストの出オチはあえて見せなくても良かったのではと思います。あそこを具体的に描写してしまうと、単に過去を引きずっているように見えてしまうんです。話の趣旨としては「別に本人が幸せならなんだっていいんじゃないの?」っていう方向なのですから、やはりその点はあくまでも具体的なエピソードではなくボカして欲しかったです。

【まとめ】

クライマックスに不満が一杯なんですが全体としてはとても良く出来た面白い作品だと思います。悲惨なのにどこかホンワカするというか、とっても満腹感のある作品でした。何にせよ、もっとお客さんが入ってもいいと思える良作ですので、是非お近くに上映館がある方は劇場へ足をお運びください。
だいぶ飛び道具な作品ではありますが、こういうのはツボです。原作も読んでみようかと思います。
余談ですが、吉田大八で言えば、去年の「クヒオ大佐」は全然ダメでしたが、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は大好きでいまでもちょくちょく見返しています。もしよろしければ、レンタルDVDででもご覧になってみてください。変な作品ばっかり撮る監督です(笑)。

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鉄男 THE BULLET MAN

鉄男 THE BULLET MAN

昨日の二本目は

鉄男 THE BULLET MAN」です。

評価:(60/100点) – 鉄男が自分探しって、、、。


【あらすじ】

アンソニーは目の前で”ヤツ”に息子を轢き殺されてしまう。怒り狂うアンソニーはやがて体の異変に気付く。口からオイルのようなものが漏れ、歯茎が鉄に変わっていたのだ。謎の組織からの襲撃を受けたアンソニーは「地下を調べろ」というメッセージを受け取り、実家の地下室へと潜る。するとそこには自分の出生の秘密が隠されていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 息子が殺される。
 ※第1ターニングポイント ->アンソニーが 謎の組織の襲撃を受ける。
第2幕 -> 両親の秘密
 ※第2ターニングポイント ->”ヤツ”が勝負を仕掛ける。
第3幕 -> ”ヤツ”との決闘。


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【感想】

昨日の二本目は先週末公開の大本命、鬼才・塚本晋也の17年ぶりの「鉄男」続編です。皆さんは当然ご存じと思いますが、塚本監督は鉄男でインディカルトムービーの一時代を築き上げた大巨匠で、世界三大映画祭の1つ・ヴェネツィア国際映画祭で審査委員まで務めております。北野武が「HANA-BI」で金獅子賞を獲ったときに猛プッシュした張本人でもあります。
その塚本監督が自身のデビュー作でもあり代名詞でもある「鉄男」の続編を作るんですから、駆けつけるしかないわけです。しか~~~し、観客が少ない!!!! 日曜の夕方なのに3人ってどういうことですか!? あんまり一般受けする監督ではないんですが、にしても少なすぎます。

鉄男が、、、、あの鉄男が、、、、。

結論から言いますと、かなり (´・ω・`)ショボーンな出来です。といのも、事もあろうに鉄男が自分探しを始めてしまうんです。「鉄男」シリーズは元々勢い重視なところがありまして、その暴力的に格好良いカット割りと、ナンセンスすぎるアヴァンギャルドな設定・ストーリーが肝なんです。悪夢的といいますか、筋道立てて説明しようとすると妄言にしかならないような訳の分からない連なりが面白いんです。でも今回の「鉄男3」はあまりにも理路整然としています。見終わった後に映画秘宝のインタビューを読んだら、どうもハリウッド狙いで直しの入ったプロットだったようです。本作では、「アンソニーが何故鉄男なのか?」「”ヤツ”は何故アンソニーを付け狙うのか」というのがハッキリ言葉で説明されてしまいます。ですので、ミステリアスで気色の悪い感覚はかなり減じています。
構成にしてもいわゆるハリウッドスタイルになっていまして、中盤で全部言葉で説明してしまう場面ではやはり驚きと失望を隠せませんでした。あの「鉄男」が、、、「カルトムービー」の代表格のような「鉄男」が、、、「普通のハリウッドっぽい特撮アクション映画」になってる(涙)。
がっくし、、、、。
とはいえ、やはり鉄男だけあって、音響の使い方は大変すばらしいです。「爆圧体験」というキャッチコピーの通り、ちょっと耳鳴りするほどの音量で金属のこすれる音を観客に嫌がらせのごとく叩き付けてきます。

【まとめ】

音については、家ではどうしても環境を揃えづらい物です。本作のように、音響が重要となってくる、、、というか音環境以外に魅力が乏しい作品は、劇場で見ざるを得ません。
皆さんも是非、劇場へ足を運んで塚本ワールドを少しのぞいてみて下さい。本作公開による何よりの収穫は、遂に「鉄男」と「鉄男II」がDVDで発売されたことでした。過度な期待は禁物です。

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ランデブー!

ランデブー!

見に行った私が悪いんですが、昨日から

「ランデブー!」で怒髪天を衝きすぎて困ってます。

評価:(1/100点) – あ、うん。エンタメって簡単だよね。キュートだよね。


【あらすじ】

女優志望のめぐるはオーディションに行く途中のお茶の水・聖橋の横で、落ちていた携帯電話を拾う。着信した携帯電話に出ると、相手は矢島という男であった。矢島に頼まれ携帯電話を一時的に預かることになっためぐるだったが、なぜか謎の男達に追われるハメになってしまう。

【三幕構成】

第1幕 -> めぐるが携帯電話を拾う。
 ※第1ターニングポイント -> めぐるが後楽園の事務所で男達に見つかる。
第2幕 -> めぐるの逃走。
 ※第2ターニングポイント -> めぐるがネットのニュースで男達が警察だと知る。
第3幕 -> ドームでの一幕


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【感想】

あまりの出来にシネクイントを出た直後にTwitter!で予告してしまいましたが、昨日は「ランデブー!」を見てきました。上映前に尾崎将也監督と木原浩勝さんのトークショーがありましたが、お客さんは10数名ほどでした。
もうTwitter!で触りの部分を書いてしまったので結論を言います。
この糞映画が!!!!! が! が! が!!!!!
あまりにも酷い出来に終始口あんぐりでした。破綻したストーリー。ダサいカメラワーク。場面のトーンにそぐわない音楽。学芸会という言葉すらヌルい大根役者達。商業映画とは思えないクオリティの低さ。どこをとっても褒めるところが見当たりません。
もし上映前のトークショーが無ければ監督1作目という言い訳に免じて見なかったことにしたんですが、ちょっとトークショーでハードルを上げまくっていたので怒りがこみ上げてきました。言ったこと出来てないし、映画を舐めないでくれますかね!?

前置き:トークショーの内容

まずはこの怒りをこのブログを読んでいただいている方と共有するには、トークショーを体験いただくのが不可欠です。ということで、私の速記によりますトークショーメモをざっとまとめてしまいます(笑)。場所は渋谷シネクイント。2010年5月20日の21時20分上映回の前に行われたトークショーです。興味ない方が多数かと思いますが、少々おつきあい下さい。


【ここからトークショー】
木原: ランデブーの中で船頭役をやった木原です。
尾崎: 木原さんは怪談・新耳袋の小説を書かれていて、新耳袋トークライブに
     客として参加したのが出会いです。
木原: 元々映画が好きなので、尾崎さんには前から映画やるなら出して欲しいと
     言ってました。僕の役って必要な役でしたよね?
尾崎: 元から居た役ですよ。何も言わないとプロデューサがエキストラに毛の生え
     た子を連れてくるので、それならと思って。
木原: 船頭になるために生まれてきたと言われました(笑)。ほぼ半日船の上で撮影
     したんですが、映画ではこんなもん(指をちょい開く)でした。監督は楽しそうでしたね?
尾崎: 映画において乗り物って大事です。この映画は車とか出ないし、映画的な乗り物を
     出したいと思ったらたまたま安く借りられたから、船にしました。
木原: 一番最初の作品に作家のすべてが詰まるとよく言いますが、初監督の尾崎さんは
     どこに「自分らしさ」が出てると思いますか?
尾崎: 一作目は「巻き込まれ型サスペンス」をやりたかったです。お金を掛けなくても
     そこそこ面白くなる
し、キュートな画を撮りたかったんです。
     脚本とかみてもあんまり全体が分からないから、キュートをキーワードにやってみようかなと。
     できたかどうかは映画を見てもらって、、、。
木原: ここがキュートだってポイントはありますか?
尾崎: 時間とお金に余裕があればもっと出来るけど、やってる間にそんな時間ないなって、、、。
     どれくらい出来てるかは見た人に判断してもらって、、、。
木原: 僕は携帯電話を取る時ですね。この音楽じゃないと拾わないなって。
尾崎: 音楽の川井さんには「とにかくピチカートで」って言ったんで。
木原: この映画を見に来てるんだから皆さん映画好きだと思うんですが、観客にとっては
     「私はコレを持って帰る」ってものを発見するのが映画の楽しみだと思います。
     この映画を見ていろいろ発見があったんです。みんな昭和を知らない世代の中で、
     川野君だけが昭和の香りですよね。彼の背負ってるものっていうのが一番興味があります。
     この子がやってることは僕らの焼き直しのようで、
     今の子に無いひたむきさがあって美しかった。
部屋の中の物には嘘をついて無いって感じがね。
尾崎: 川野君の役は30代のオッサンでも成立するんですよね。でもキュートな映画のためには
     若い子の方が良いかと思って。リアリティが無くなるリスクはあるけど、面白いでしょう。
木原: 僕もこの役はこの年齢で良いのかって思ってたけど、見てる内に「いいんだ」って思えてきました。
     お客さんを騙そうとおもって作ったものに自分が騙されてるみたいな「やっちまった」感じがすごい伝わった。
尾崎: ストーリーを追っていくという意味ではエンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。
     後は映画のタッチがどう転がっていくかで、、、。
木原: 映画を見終わった後なら二時間は監督を離さないですよ(笑)。プラモデルが好きな人が
     金型師にはなかなかならないんですが、映画が好きな人が映画の撮り手になることは良くあります。
     映画って長い長い夢の残存率があるのかな。尾崎さんのプロフィールを見ると
     疑問が湧くんですが、これだけテレビの脚本を書いてる人が何故今映画なんですか?
尾崎: たまたまですよ。たまたま脚本家として知名度があったんで、
     映画撮りたいって言ったらプロデューサに良いよって。時期はたまたまです。
木原: この映画は前から撮ろうと思ってました?
尾崎: いや。映画を作るって決まってから「キュート」って決めて考えました。
     予算が少ない中で何をやるかっていう選択で、パッとキュートって思いついたんです。
木原: ランデブーってあんまり使わないですよね?
尾崎: 最近は言わないね。昭和(笑)。
木原: 地道に日常が重なっていって巻き込まれる。スタジオジブリの初期に宮崎がよく
     「映画をつくるなら巻き込まれ型だ」って言ってました。
尾崎: テレビって介入型が多いから、映画ではそうじゃないことをやりたかった。
木原: 介入型って簡単ですもんね。「俺はこういう職業だ」って言えばそれでいいから。
尾崎: そろそろ時間だからまとめろって言われた(笑)。
木原: はい、では(笑)。今回は尾崎さんに巻き込まれて映画に関わったんで、
     今度は僕が関わる作品に尾崎さんを巻き込みます(笑)。
【ここまでトークショー】


本編:私の怒りを聞いてけれ。

え~皆さん上記のトークショーの内容をお読みいただけましたでしょうか? 完全に客観的なメモなので、誤訳・意訳は戸田奈津子さんより少ないと思います(笑)。
で、ですね。まずトークショーから伝わってくるのは、作品への自信のなさとエンタメを舐めきった姿勢です(苦笑)。「この作品は予算も時間も無かったから微妙かも」「見た人が判断してね」っていうのを繰り返してます。この辺りはきちんと自分の作品の酷さを自覚している正常な判断です。ところが、、、、どうしてもスルー出来ないことを言ってます。
「エンターテイメントなんで退屈せずに見れると思います。」
あのさ、、、、退屈しないエンターテイメントってすっごいハードル高いの分かってますか? ハッキリ言いますが、こちとら上映開始5秒後から退屈しっぱなしですよ(笑)!!!
まず、この作品は台詞回しが酷すぎます。全員が独り言を大声でつぶやいてるんですよ。会話シーンなのに会話になってないんです。「機能的な台詞」と言いましょうか、「物語を伝えるために必要な事柄を説明するためだけの台詞」しか出てきません。例えば友達と会話してるシーンでもまったく親しそうに見えません。それは互いに物語の要請からくる言葉しか発しないからです。尾崎さんの本業は脚本家なわけですから、台詞回しなんて最も得意じゃなきゃいけません。この時点ですごい「あれっ?」って感じがし始めました。まだ上映開始から40秒ぐらいです(笑)。
次に、この作品の演出の問題です。要は全部テレビのメソッドなんです。顔のどアップばっかりのカメラフレームや、最低限しかない舞台装置。そして日常世界から確実に浮いた「常識のずれた世界観」。全てがテレビ演出の方法です。映画を撮る以上は映画の文法を使って下さい。タイトルの出方や、そこから地下鉄シーンで流れるオープニングのクレジットダイアログなど、完全に舐め腐ってます。尾崎さんは2時間ドラマが撮りたかったの?
そして音楽のだささも気になります。これは年初の「板尾創路の脱獄王」でもありましたが、明るめなMIDIの打ち込みを暗いトーンの場面で流すってすっごいしょぼくてダサいです。ちなみにこれは川井さんの責任では無いと思います。すくなくとも彼の劇盤をやってらっしゃる他作品は良い音楽を作ってますし、あくまでもオーダーの問題です。
最後に、コレが根幹なんですが、「話の組み立て」がグダグダですしそもそも「巻き込まれ型」になってません。この話はめぐるが携帯電話を拾う所から始まります。でも、彼女にはその携帯を警察に渡すという選択肢もありましたし、そもそも道端に捨てる選択肢もあります。彼女が本当に追い詰められるのは、後楽園遊園地で名前がバレた瞬間だけです。あとは全て自分から巻き込まれに行っています(笑)。だから見ている間中、めぐるがキ○ガイにしか見えません。っていうかワールドクラスのバカ。彼女は、自分で判断したり自分で行動を起こさないため、まったくどうでも良いキャラクターなんです。感情移入がまったくできません。
これ以外の細かい所も本当に酷く、すべてがコメディ風のファンシーイメージで覆い尽くされて粗だらけです。
一応書いておきますと、これらのダメポイントは予算や時間の問題ではなく監督のセンスの問題です。だから事は簡単で、要は尾崎さんは映画にはむいてないってだけですよ。っていうか監督がむいてません。いろんな要素を統括して作品を作る能力の問題です。

【まとめ】

これですね、ちょっと扱いに困る作品なんです。というのも「良い所」が本当に1カ所もないため、やろうと思えば全場面の全台詞に突っ込みが入れられます。そして監督の映画を舐めた姿勢。この怒りをどうすればいいんでしょう(苦笑)。とりあえずですね、もし1800円をドブに捨ててもいい方は一度見てみて下さい。ある意味すごい実験映画だと思います。「見た人が判断して」という尾崎監督のお言葉に次の言葉をお返しいたします。
く・そ・え・い・が・!

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書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園

例によって土曜は二本です。一本目は

書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。

評価:(55/100点) – ベタベタな青春映画。


【あらすじ】

愛媛県は四国中央市。紙産業が盛んな街だったが、商店街は寂れ相次ぐ閉店・倒産に見舞われていた。そんな中、三島高校に臨時教師として赴任してきた池澤先生は、書道部の顧問として書道パフォーマンスでの勧誘を行ってみせる。音楽を掛けながら大きな筆で大きな半紙に書くスタイルに、部長の里子は戸惑いを隠せないが、一方で清美はその姿に惚れ込んでしまう。清美は父の好永文具店の閉店記念に、部員みんなでの書道パフォーマンスを企画するが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 書道部の日常と池澤先生の赴任。
 ※第1ターニングポイント -> 池澤先生が書道パフォーマンスを披露する
第2幕 -> 書道パフォーマンスの練習。そして清美の転校。
 ※第2ターニングポイント -> 美央が書道部に復帰する
第3幕 -> 書道パフォーマンス甲子園


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【感想】

本日の1本目は「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」です。TV局映画だからか観客はかなり入っていました。客層もお年寄り夫婦からカップルから子連れまで幅広く、週末の興業ランクでは上位にくるかも知れません。
話の内容はこれ以上ないほどシンプルです。「真面目でぶっきらぼうな努力家」「陽気なムードメイカー」「変わりもの」「おとなしいミステリアスな美少女」「訳ありで部を離れた天才」と超類型的なキャラクター達による青春スポ根映画です(笑)。書道はスポーツじゃないと思ったそこのアナタ! 甘いですよ(苦笑)。本作では書道は完全にスポーツとして扱われます。大事なのは仲間とのチームワーク、そして強靱な足腰。特訓は走り込みと千本ノック的な反復練習。完全にスポ根です。
でまぁ結論を言ってしまうとですね、青春映画としては平均的な出来ですが、肝心の書道があんまり関係無いんです(笑)。せっかく里子の父親が厳しい書道家で「書道パフォーマンス」なる遊びに否定的なのに、里子自身に全然葛藤がないんです。多分この映画を見て「書道パフォーマンス」に興味がでた方はいるかも知れませんが、「書道ならではの楽しさ」が分かった人はあんまり居ないと思います。実際には「書き手の心が字に表れる」所が面白いわけですが、その喜びなり楽しさは表現されていません。だからせっかく本物を連れてきて書道パフォーマンス甲子園の本番を描いたのに、どこが優勝したかを言わないという酷い事になっています。本来なら「一番思いを込めて書いたチームが一番素晴らしい字を書いた」という所に着地しないといけないんですが、、、これもやはり実在の参加校への配慮でしょうか? この部分については、同じ成海璃子さん主演の武士道シックスティーンの方がきちんと描けていました。
とはいえ、 山下リオ、桜庭ななみ、小島藤子というアイドル・テンコ盛りの映画として見ることは十分にできますし、あまりにベタ過ぎてダサイっていう以外はそこそこ楽しめる作品ではあります。ぶっちゃけ病院のシーンで泣いちゃいましたし。
顔に墨汁が飛んで変な顔になるというギャグをしつこく重ねてくるのには正直辟易しましたが、この際桜庭ななみに免じて大丈夫です(苦笑)。
でもせっかくなのだから、エピローグとして「書道パフォーマンスの結果、商店街が活気づいた」ぐらいの描写は見せて欲しかったです。この作品では町興しのために書道パフォーマンス甲子園を開いて頑張ったわけですから、その結果が「池澤先生が書道の楽しさを思い出す」「池澤先生と部員達の信頼関係」っていうのはちょっと違うかなと思い引っかかりました。美央の件にしても、商店街の不況のことにしても、本作では全然解決していないんです。な~んかヨサ気な感じで流れてっちゃった印象ですが、本当に良いんでしょうか? 結構重たい話だと思うんですけど、、、。

【まとめ】

青春映画の佳作として、どなたでも安心してポップコーンを食べながら見れます(笑)。そこまで絶賛するほど出来は良くないですが、なんか今月は変な映画ばっかりだったので感覚的には大当たりです(笑)。
シネコンでの公開ですので、もしお暇な方はフラっと入って見ると良いかも知れません。意外と拾いものでした。

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劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル

劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル

さて、本日は予告通り新作二本です。

一本目は「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」です。

評価:(30/100点) – 二時間ドラマ以上でも以下でも無い。でも懐かしい。


【あらすじ】

ある日、上田の元に万練村から翔平という男がやってくる。万練村には代々カミハエーリという超能力者がおり、その者が村人を守るというしきたりがあるという。そして彼の祖母であった仙台のカミハエーリが死んだため、自身もカミハエーリの選定テストを受けなければいけないという。彼は自分に超能力が無いことを認めた上で、上田に全ての参加者がインチキであることを暴いてもらい、村の風習を止めてもらいたいと依頼する
一方、売れないマジシャンの奈緒子は浅草花やしきのショーをクビになってしまい、万練村のカミハエーリに応募して財宝をもらおうと企てる。
こうして奈緒子と上田の名コンビは、再び万練村で自称超能力者達を迎え撃つこととなった。

【三幕構成】

第1幕 -> 万練村に山田と上田が行く。超能力者達の紹介。
 ※第1ターニングポイント -> 鈴木が「霊能力者バトルロイヤル」を宣言。
第2幕 -> 三人が殺される。
 ※第2ターニングポイント -> 美代子の謎が明らかになる。
第3幕 -> 奈緒子vs鈴木


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【感想】

本日の一本目は「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」です。あいかわらずのTVドラマ映画の人気は凄まじく、初日の昼ということもあってか客入りは8~9割ぐらいでした。相当入っていました。

感想

ご存じの方が大多数だとは思いますが、本作は2000年に放送していた深夜TVドラマの劇場版3作目です。世間的には仲間由紀恵の出世作であり、アベちゃんの当たり役でもあります。
私は世代的に仲間由紀恵というと「井手功二のゲルゲットショッキングセンター」やエヴァの庵野監督が撮った実写映画「ラブ&ポップ」のイメージが強いんですが、たぶん一般的には「リング0」の貞子と「TRICK」の山田奈緒子で知った方が多いと思います。
そういった意味ではかなり初期からの仲間由紀恵ファンではありまして、TVドラマ版は深夜でやっていた第1/第2シーズンを全部リアルタイムで見てました。なので正直本作が映画としてゴミだとしても、あんまり悪く書く気はありません(笑)。
一応お約束としての指摘ですが、本作はまったく映画的ではありません。というか映画として作る事を最初から放棄しています。だっていきなりオープニングがテレビそのままですし、レギュラー・キャラクターについては一切の説明がありません。シリーズ初見の方は、野際陽子さんがいきなり出てきた時点で意味が分からないと思います。後半に出てくる回想シーンや単語も完全に過去のテレビシリーズを見ていることを前提としています。なので、本作はただの2時間特番(PPV)です。
映画ファンとしては「ふざけんな!そんなもんケーブルTVでやれ!」って話なんですが、一方でお客さんが入っているのも事実でして大変複雑なものがあります。
ちなみに二時間特番のPPVで1800円っていうのは、実は結構高いほうです。
話の内容自体については、特に書くことも無いほど「いつものTRICK」です。くだらない小ネタとオフビートなやりとりが全てで、はっきりいってサスペンス要素は一切ありません。ちなみに映画「プレステージ(2006)」を見ていれば全部分かります(笑)。たぶん今回の脚本の元ネタはこれでしょう。別にパクりとか言うつもりはありません。TRICKというシリーズ自体が巨大なコラージュものですから。「バンサンケツマ (マツケンサンバの逆読み)」とか「紀伊半多」とか、一部お客さんが受けていない小ネタもありましたが、まぁちょっと古いんで仕方ないかな、、、といった感じです。
テレビドラマ版のファンの方でも、いち早くみたいという方以外は劇場まで行く必要はないと思います。内容的にもテレビの2時間特番そのものですし、なによりどうせ来年のGWにはテレビで放送します(笑)。映画を見にいったというよりは、10年前の同窓会に行ったような懐かしい気分になりました。なんで映画としての出来は全っ然気になりません、、、、糞だけど(笑)。
映画を見るつもりなら止めた方がいいですが、TRICKのファンであれば是非。
なんか時が経つのは早いなと実感させられました。



明日TV版のDVD借りて来よっと(←長い連休で現実逃避中の社会人)。

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いばらの王 -King of Thorn-

いばらの王 -King of Thorn-

本日はアニメ映画の二本立てです。一本目は

いばらの王 -King of Thorn-」です。

評価:(4/100点) – ポスト・エヴァンゲリオンの有象無象の一つ。


【あらすじ】

体が石化してしまう謎の奇病”メデューサ”が流行した世界。コールドスリープカプセルセンターにて治療法が見つかるまでの眠りについたカスミ・イツキは、突如眠りから起こされる。するとそこにはモンスター達が蔓延っていた。逃げ惑う160人のほとんどは殺され、残ったのはわずかに7人。はたしてイツキはセンターから脱出することができるのか? そして世界に何が起こったのか?

【三幕構成】

第1幕 -> 世界観の説明。カスミとシズクとコールドスリープ。
 ※第1ターニングポイント -> カスミがコールドスリープから目覚める。
第2幕 -> 城からの脱出。
 ※第2ターニングポイント -> カスミがビデオカメラの映像を見て城に再突入する。
第3幕 -> 結末。


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【感想】

本日はアニメ映画の新作を2作見てきました。1作目は「いばらの王」です。さすがに平日の昼間でしたので、観客も数人でした。
基本的に本作はかなり駄目駄目だと思うのですが、原作のファンの方もいらっしゃると思いますので、どうしても具体的な指摘をせざるを得なくなってしまいます。ですので、以下は多大なネタバレを含んでしまいます(=というか結末も書きます。)ので、例によって原作未読の方や楽しみにしていらっしゃる方はご遠慮下さいo(_ _*)o。
ちなみに私は原作未読で、前知識もまったく無い状態で見ています。

本作の概要と基本プロット

まずは概要をざっとおさらいしておきましょう。本作のストーリーは、宇宙から飛来した細菌「メデューサ」が核となります。「メデューサ」は感染者の「夢」「空想」を具現化します。作中では「進化を促す存在」とされており、一種のオーパーツ的な存在、もっというと「2001年宇宙の旅」のモノリスのイメージです。
で、この「メデューサ」を宗教の信仰として利用としたのが「ヴィナスゲート社」の社長さんで、彼がイツキの双子の姉・シズクを適合者として確保するところから話しがややこしくなります。シズクは確保される直前に愛する妹を殺してしまっており、軽い錯乱状態にありました。ということで、シズクが「メデューサ」で生み出したのは「妹のコピー」と「茨のツタ」でした。彼女は茨のツタで世界から城を隔離して、妹のコピーと平和に暮らそうとしましたとさ、、、とまぁこんなところです。全部ネタバレ(笑)。
上記のような概要が背景で、基本プロットとしては「モンスター有りの脱出もの」です。ミラ・ジョボビッチの映画版「バイオハザード」一作目と同じプロットです。なんか良く分からない怪物達がウヨウヨする中で、サバイバル型の脱出作戦が展開されます。主人公一行は完全にテンプレ通りで、頼れる勇者(正義のマッチョマン)、物知りの案内役、母性剥き出しの介護キャラ、サブ・マッチョマン(キャラかぶってるので途中で脱落)、役に立たない嫌な奴、そして内通者。
襲い来るモンスターから逃げながら、彼らはサバイバルしていきます。
とまぁここまで書くとB級ホラーとして私の大好物なように思えるのですが、、、、、、。

シナリオがガタガタですよ、、、。

まずですね、開始して10分くらいで私の心が折れました(苦笑)。
というのも、見てるこっちが赤面するほど画面作りがダサイんです。本作の冒頭、世界各国のニュースで「メデューサ」と「ヴィナスゲート社」が報道されている映像がでます。ここでいきなり言語の不一致が起きています。日本のアニメですので、別に外人が日本語を喋っているのはそこまで気になりません。問題は、ヴィナスゲート社長の記者会見でイギリスの放送でも中国の放送でも日本語を喋っている点です。仮に劇中で本当は英語をしゃべっているのだとしたら、中国の放送では中国語の字幕が必要です。もし中国の放送が同時通訳の放送なら、LIVEとかのマークの横に訳者の名前が出ないといけません。そのくせ、囲いとか下のテロップは英語・中国語なんです。
その直後、城に入るときにケージにある英語の注意看板が写ります。これはわざわざ日本語字幕を付けてきます。意味不明。格好付けすぎてダサさが半端無いことになってます。イングロリアス・バスターズほど徹底しろとは言いませんが、背伸びするなら中途半端な事はしないで欲しいです。
次に心が折れるのは、7人になってから初めてモンスターが襲ってくるシーンです。このモンスターは目がほとんど見えないらしく音に反応するそうです。つまり、「ディセント」に出てくる地底人のアイツと一緒です(笑)。ところが、、、ガキが「走っちゃ駄目だよ!あいつらは音に反応するんだ!」って大声で叫ぶんです(苦笑)。しかもモンスターはその声をスルー(笑)。ちょ、おま(笑)。
このモンスターの「音に反応する」という設定は劇中通してメチャクチャ適当です。都合の良いときだけ反応して、都合の悪いときは完全スルーを何度もします。それって全然サバイバルホラーになってないんですけど、、、っていうか自分らで作った設定なら、最後までちゃんとやって下さいよ。
さらになんかいろいろあって、SDカードに機密データをいれたりとかを華麗にスルーしますと(←セキュリティ厳しいパソコンに外部記憶デバイスは普通無いです。)、やはり次なるがっかりは全部喋ってくれるヴェガの登場です。出来の悪いセカイ系作品の大きな特徴として「聞いても居ない裏設定をベラベラと長時間喋るキャラが出てくる」という要素があります(苦笑)。まさにそれ。ヴェガ独演会によって、ようやく話しの概要が浮き彫りになり、サバイバルホラーから一転してヘボいセカイ系作品に急展開します。
ここからがもう怒濤のツッコミどころです。まず「眠ってた時間が48時間ぽっちってどういうこと?」っていう所でしょうか?
また、モンスター達の存在も意味不明すぎます。だって彼らは途中でメデューサに罹って石化する描写があるんです。ところが一方でメデューサで夢が具現化した者はメデューサには罹らないとも言っています。ってことは、、、あのモンスターはメデューサから生まれたのでは無いんです。じゃあ、48時間で驚異の進化を遂げた謎の巨大生物なんでしょうか? 結局コイツらの正体は最後まで語られません。なんじゃそれ?
さらに、3幕に入る直前に、なんとA.L.I.C.E.が監視するための腕輪をポロッと外す描写があるんですね。あれはさすがにビックリしました。「え、はずれるの?それも簡単に?」っていう(笑)。よく洪水とか大爆発で外れなかったと感心します(笑)。それって物語上は外れちゃ駄目なんじゃないのでは、、、とか思っていると別に何にも使われていないみたいでそれもズッコケです。てっきり腕輪がキーかと思ったら、なんと首筋注射が鍵だった!、、、、、ミスリードにすらなってない、、、、。
とはいえ本作一番のツッコミどころはラストです。結局、本作では「メデューサ病」は何にも解決していないんです。唯一分かっているのは、メデューサによって具現化したコピー・カスミはメデューサには罹らないってことだけです。で、一緒に生き残るガキは生身なんです。だから本作が終わって数日後には、人類が全滅してカスミだけが生き残るはずです。ま、いっか、、、別に。セカイ系が恐ろしいのは、主人公さえ良ければハッピーエンドって所です。人類全滅おめでとうございます(笑)。

【まとめ】

一応フォローしておきますと、私は片山一良監督は大好きです。「THE ビッグオー」というアメコミ風(=バットマン風)アニメの傑作を世に出しましたし、なによりポスト・エヴァンゲリオンのアニメ群で最も私が好きな「アルジェントソーマ」の作者です。「アルジェントソーマ」は既存の「エヴァンゲリオン風セカイ系」というフォーマットを逆手に取って、最終的には「コミュニケーションの齟齬における悲劇」と「夢敗れたロマンチストがそれでも愛を貫こうとする執念」というすばらしいヒューマニズムに着地する離れ業をやってのけました。
だからこそ、そんな片山監督が本作のような「出来の悪いセカイ系」を監督しているのは、正直信じられません。彼は10年前にはもっと凄い作品を作っていたんです。私は今でも「エヴァンゲリオンのフォロワー」の中で最も重要な作品は「アルジェントソーマ」だと思っています。まぁ「ラーゼフォン」も好きなんですけど(苦笑)。
とにかく、すくなくとも本作は劇場で見るような作品ではありません。極端な事を言えばですね、こういう台詞で全部説明するようなセカイ系の作品は、全部ラジオドラマで十分です。
ですので、本作を見るぐらいなら今すぐレンタルDVD屋に走っていただいて、片山監督の「アルジェントソーマ」を一気鑑賞するのがオススメです!!!!!

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記事の評価
川の底からこんにちは

川の底からこんにちは

GWの中日となる今日は

川の底からこんにちは」です。

評価:(97/100点) – 頑張りますから!!!ってかもう頑張るしかないんですから!!!


【あらすじ】

木村佐和子はOLである。バツイチ子持ちの課長・健一と付き合い、何事にも無気力。東京に出てから5年で4人の男に捨てられた。
ある日、健一とのデート中に父が肝硬変で倒れたと連絡が入る。過去のしがらみから帰郷を拒否する佐和子だったが、丁度仕事の責任をとって退職したばかりの健一はノリノリであった。こうして、佐和子は健一と彼の連れ子の加代子を伴って帰郷する。佐和子は父が経営するしじみ工場「木村水産」を継ぐことになるのだが、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 佐和子の日常。
 ※第1ターニングポイント -> 佐和子が帰郷する。
第2幕 -> 佐和子と加代子としじみ工場。そして健一が出て行く。
 ※第2ターニングポイント -> 佐和子が朝礼で開き直り宣言。
第3幕 -> 父の死。


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【感想】

さて、GWも真ん中にさしかかった本日は「川の底からこんにちは」です。渋谷のユーロスペースでしか上映していないということもあってか、昼の回で立ち見まで出ていました。石井裕也監督の本格デビュー作であり、何より満島ひかりさんの主演作として(局所的に)話題の作品です。
いきなり結論から言いますと、私は大傑作だと思います。少なくとも今のところは今年見た中で一番面白かったです。テーマ自体はとても重たいんですが、それを軽妙なギャグとテンポの良い語り口でサクサクッと見せてくれます。監督もとてもメジャーデビュー作とは思えない手腕でして、堂々たる演出です。素晴らしかったです。

概要

本作のテーマをざっくりと言ってしまえば、「無気力だった女性がどん底から開き直り、それに周りも影響を受けてみんなで頑張る話。」です。
満島ひかり演じる木村佐和子は男に捨てられ続けて無気力そのものの「よくいる普通のOL」です。一方の健一は妻に逃げられたバツイチ子持ちで、しかも仕事もロクにできずに退職させられてしまいます。佐和子はこの自分と似て「中の下」「ロクなもんじゃない男」である健一のヘタレ全開で最低な行動を目の当たりにすることで、ついにキレて開き直るわけです。
満島さんの演技も、前半はローテンションで無気力な「いまどきの娘」像なんですが、一転して悲壮な程に「頑張ろう」とする後半にさしかかるとこれはもう本当に鬼気迫るというか素晴らしい演技を見せてくれます。昨年の「愛のむきだし」といいとても着実に女優としてのキャリアを積んでらして、とても素敵だと思います。
健一役の遠藤雅さんも良い存在感を見せてくれます。ちょっと間の抜けた(←失礼)顔といい、ちょっとおどおどした小者っぽい佇まいといい、完璧です。ナイスキャスト。
そしてはずしていけないのが加代子役の相原綺羅さんです。この子が出てくるコメディシーンは本当にとても良く出来ています。「両親の離婚でもの凄い速度で”ませ”てしまった子供」という役柄を完璧に見せてくれます。
総じて役者さんはどなたも素晴らしいです。木村水産のおばちゃん達の「田舎に居るオバタリアン」っぽい体型・仕草なんかは、出てきただけでちょっと笑いが起きる程です。

ストーリーについて

肝心の話ですが、これも大変良く出来ています。
本作にはいくつもの「相似形」が仕込まれています。
 1)  共に母親の居ない「佐和子(幼少で死別)」と「加代子(両親の離婚)」。
 2)  共に恋人を奪い合う「佐和子」と「友美」。
 3)  共に浮気をして出て行く「健一」と「敏子の旦那」。
 4)  共に浮気で駆け落ちして東京へ行く「佐和子」と「健一」。
 5)  「糞尿を撒く」行為と「父の遺灰を撒く」行為。
さらに良く出来ているのは、これらが全て「デ・ジャヴ」を意図して構成されていることです。演出上は「相似形ですよ!」と声高に見せずにしれっと流してくるんですが、これらは全て「前に起きたことと同じ事が後でも起きる」という連鎖になっているんです。だから例えば3)では、健一が目の前で敏子が旦那を叱るのを見ることで、自分も叱られる予感を感じます。
ここでもっとも大きいのは5)の「遺灰を撒く」行為です。前者は「糞尿を撒いた」結果として巨大スイカが取れるわけなので、当然「遺灰を撒いた結果」として何かポジティブな事が近未来に起こることが予感されます。だから本作は悲惨な状況の中でもハッピーエンドとして成立します。
また、どんなにシリアスな場面だったとしても、ウェットになりすぎそうになると細かいギャグで意図的に”泣きポイント”を外してきます。それは男女の修羅場だろうが、人が死ぬ場面だろうが、関係ありません。
この外し方がとても見事で、結果として凄く重たい話なのにコメディとして楽しく見られてしまうんです。笑わそうとして下らないギャグを詰めるのではなく、きちんと話を語る上で必要な時に的確にギャグを入れてくるんです。是非DVDが出ましたら、去年公開の「なくもんか」に関わったスタッフは全員繰り返し見ることをオススメします。これが正しい「映画としてのギャグ」です。

【まとめ】

とにかくですね、映画が好きな方はもう行ってるとは思いますが、それ以外の方も悪い事は言いませんので見に行っとくべきです。めちゃくちゃ面白い2時間を確約いたします。惜しむらくは、こういう映画をこそシネコンの全国公開プログラムに組み込んで欲しいものです。そりゃこんだけ面白い作品が150席しかないユーロスペースで1日4回じゃあ立ち見ぐらい出ますよ。
私も月末ぐらいにもう一回見に行こうと思っています。
あとavexさん!木村水産の社歌はCD化して下さい(笑)。絶対売れますから!

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