コララインとボタンの魔女

コララインとボタンの魔女

「コララインとボタンの魔女」を観てみました。

評価:(95/100点) – ヘンリー・セリックの狂気の職人芸


【あらすじ】

コララインは両親と共にピンク・パレス・アパートに引っ越してきた。両親に構ってもらえないコララインは、居間に壁紙で隠された小さなドアを発見する。その夜、小さなトビネズミを追ってそのドアをくぐると、そこには現実とうり二つの世界が広がっていた。しかもそちらの世界の両親はとても優しくコララインをもてなしてくれる。もう一つの世界はまさしく夢のようだった。ただ一つ、彼らの目がボタンであることを除けば、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> コララインが引っ越してくる。アンバーとの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> コララインがもう一つの世界に行く
第2幕 -> もう一つの世界での楽しみ。
 ※第2ターニングポイント ->コララインがボタンの魔女と賭けをする。
第3幕 -> 解決編。


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【感想】

遅ればせながら、本日はコララインとボタンの魔女を見てきました。監督はご存じ「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で有名なヘンリー・セリックです。ストップモーション・アニメ(=コマ撮りアニメ)の巨匠にして、ディズニーのファンタジアやバンビで有名なジュール・エンゲルの弟子筋に当たる御大です。
本作では「ナイトメア~」からさらに進化/深化した、狂気としか言いようのない程の精巧で緻密な人形コマ撮りを披露してくれます。そもそも、ストップモーション・アニメは一日気合いを入れてガッツリ撮影してようやく数秒の画が撮れるような世界です。
それをこの情報密度で100分間も突っ走るわけですから、もうただただ脱帽です。

物語の推進力

本作はそのストップモーションアニメの凄まじさもさることながら、それ以上に物語の語り口がとても良くできています。本作の様に登場人物が限られた作品の場合、もっとも難しいのは観客の興味を引っ張りながら物語の推進力を得ることです。そこで本作の場合には徹底してコララインを追い詰めていくことで実に上手く物語を進めていきます。
例えば序盤、コララインは両親から冷たく扱われることへの現実逃避としてもう一つの世界へ行きます。次はもう一つの世界で起こるある恐怖から逃げるために奔走します。あまり書くとネタバレになってしまいますが、さらに追加で2つの事件がコララインを襲います。要は映画100分間の内ほとんどで彼女は何かから逃げたり何かをやらざるを得ない状況に追い込まれています。それによって、観客も高いテンションを常に維持しながら画面に引き込まれ続けます。まったく気が休まるときがないですし、画面の情報量も物語の盛り上がりに比例してドンドン上がっていきます。

テーマ

さらに本作が圧倒的なのは、ホラー風味でかつ驚異的なルックスでありながらもテーマがとてもオーソドックスな教訓話だということです。「うまい話には罠がある」「家族は大切に」「変わり者のご近所さんでも実は良い人かも」。こんなに道徳的な話をこんなに怖く描ける人もそうそういないと思います。

【まとめ】

物語、画面構成、演出、全てが超一流レベルでまとまったとんでもない傑作です。アメリカで大ヒットした話は聞いていましたが、正直なところここまでは期待していませんでした。今年はのっけから高レベルな作品が目白押しでうれしい限りです。もし、子供向けアニメーションだと思って敬遠している方は、騙されたと思って是非見に行ってください。圧倒的な映像体験を確約します。
またストップモーションアニメと3D上映の親和性の高さも良く表れていました。ボタンの魔女が迫ってくる場面は本気で怖かったですし、なんか夢に出てきそうです。
もしかしたら早くも今年一番の作品かもと思いつつ、絶対にオススメな作品です!!!
一応最後に触れなければいけない点がありまして、それはGAGAで良くある吹き替え問題です。なにせオリジナルは天才・ダコタ・ファニングですよ。戸田恵子さんはまったく問題無いですが、やはり榮倉奈々と劇団ひとりをメイン級で使うのはどうかと思います。芸能人枠なら脇役でやってくださいよ、本当。でもそのノイズを差し引いても素晴らしい大傑作なのは間違いありません。

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コララインとボタンの魔女」への1件のフィードバック

  1. コララインの名前って本来は「コーラルライン」サンゴ色の繋がり、つまり「コララインが繋ぐ皆との絆」って意味なんだと思います。
    コララインはいつもコーラル色の服を着ていて、補色のターコイズの一歩手前の、青を基調としたカラーリングでしたから。
    オーラソーマの色の心理を調べてみないと深くは分かりませんが、この物語は、黒猫を受け入れて補色の白(光や希望、心の強さ)を手に入れたコララインがより安定した色(本質)に成長し、皆との心の繋がりを得た、という物語なのではないでしょうか。
    最初のコラライン(コーラル+ターコイズブルー=パープル、青紫)
    最後のコラライン(桜色+水色=藤色)
    青紫色のあの魔女は、負の感情に飲まれたコララインの末路や未来の姿、受け入れ難い寂しさや怒り・欲望や本音といった「コララインの影」だった可能性もあります。
    他にも、日本の桜色のサンゴは外国ではエンゼルスキンと呼ばれる、稀少でとても高価な宝石だったり、藤の花は幸せの象徴だったり、コララインはチョウトンボでワイビーはオオスズメバチがモチーフだったり、色んな面白い要素がこの映画には詰め込まれています。
    この映画を作った人は、そうとう日本が大好きなんだなぁと思うほど、日本への愛がそこかしこに見受けられる作品でした。

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