処刑剣 14BLADES

処刑剣 14BLADES

先週の日曜日は1本、2010年の香港お正月映画

処刑剣 14BLADES(原題:錦衣衛)」を見てきました。

評価:(90/100点) – 圧巻のドニー兄貴。グリーン・デスティニー風の剣劇武侠映画


【あらすじ】

時は明朝末期。洪武帝の作った秘密組織・錦衣衛は暗君の元で暗殺集団として恐れられていた。錦衣衛のリーダーは代々「青龍(チンロン)」の名を名乗り、敵を討つ14振りの剣を収めた箱を渡される。
ある日、当代のチンロンは宦官の賈(ジア)より大臣の趙(ジャオ)の謀反を止めるよう命令を受ける。いつものようにジャオの屋敷に忍び込み謀反の証したる箱を手に入れようとしたチンロンだったが、なんと箱には伝国璽が入っていた。ジャオの謀反は真っ赤なウソで、ジアが伝国璽を手に入れるための策略だったのだ!
企みに気付いたチンロンはジアに嵌められ謀反人として仲間の錦衣衛たちに命を狙われてしまう。チンロンは正義護送屋に逃げ込み、自身を嵌めたジアの真意を探り皇帝を守るため首都・京城(北京)へと向かう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> チンロンのジャオ邸襲撃。
 ※第1ターニングポイント -> チンロンが正義護送屋に逃げ込む。
第2幕 -> チンロンとチャオ・ホアの逃走と砂漠。
 ※第2ターニングポイント -> 脱脱(トゥオトゥオ)に玉爾を奪われる。
第3幕 -> 雁門関での死闘


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【感想】

日曜日は昨年の香港のお正月映画「処刑剣 14BLADES」を見てきました。香港ではかなりのヒット作ですが、日本では一年遅れな上に小規模公開の寂しい扱いになっています。とはいえお客さんは結構入っていました。今年はドニー兄貴の過去作が続々公開されて嬉しい限りです。まさか上半期だけで4本も見れるとはw
いきなりですが本作はバリバリのB級アクション映画です。ストーリーはある程度世界観が分かっている前提で進んで行きますので、ちょっと説明不足で流れが分かりづらいかも知れません。
本作は明朝の末期を舞台にしています。皇帝の叔父・チン親王(サモハン・キンポー!!!)はかつて皇帝に謀反を起こし、それを罰せられて両足首から先を切られました。しかしまだ帝位を諦めてはおらず、娘のトゥオトゥオに暗殺術を仕込んで機会を狙っています。一方の皇帝はと言うと、宦官のジアに接待漬けにされて完全に骨抜きになってしまっています。皇帝の良き臣下であるジャオはこの事態を重く見て、皇帝の証しである伝国璽(=三国志等でお馴染みの皇帝のハンコ)を隠して保護しています。ここまでの説明が冒頭のモノローグで2分ぐらいで一気に語られますw 香港映画に馴れていないと、このテンポは結構厳しいです。
ここからジアが伝国璽を奪おうとする展開になり、そこでチンロンが嵌められ追われる身になります。ジアはチン親王と繋がっており私腹を肥やすために売国をしようとします。皇帝直属の暗殺集団としての誇りをもったチンロンは、自身のプライドを賭けて皇帝を守り、裏切り者のジアを倒すために奮闘します。
本作は追われる身となった孤高の天才暗殺者・チンロンと道中連れだった少女チャオ・ホアとのロマンスを混ぜながら、漢(おとこ)の尊厳を取り戻す戦いを熱く描きます。つまり私達の大好物です!!!! よし、全部OK。オススメです!!!!!



で終わってもいいんですが、なんなのでちょっとだけ書きますw 本作ではドニー兄貴の得意な剣劇アクションがメインになっています。アクションは生身のものよりはワイヤーを使ったものが目立ち、さながらグリーン・デスティニーのような雰囲気になっています。そもそもからしてチンロンの持っている箱が「スパイ7つ道具」っぽい面白いギミックがテンコ盛りの漫画チックなものですので、あんまりゴリゴリした肉体アクションではありません。敵のトゥオトゥオも幻影を使って鋼鉄の鞭を振り回しますし、”砂漠の判事”はくっつけるとブーメランになる日月彎刀(にちげつわんとう)をつかいます。全体をとおして非常にファンタジックなアクションが多く、肉体的な説得力よりは格好良さを重視しています。
本作はアクションがすごいというよりは、そのアクションに至るプロセスの見せ方が大変愉快な映画です。ホアが役所に殴り込みをかける所なんかは緊張感がありつつも完全にコントになっています。熱血な展開の合間合間に息抜きを入れてくるバランスはとてもすばらしく、110分があっという間です。かなりオススメです!!!

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孫文の義士団

孫文の義士団

水曜日は久々にレイトショーで

「孫文の義士団(原題:十月囲城)」をみました。

評価:(70/100点) – 「長坂橋仁王立ち」が5回も見られるなんて!!!


【あらすじ】

時は1906年。西太后の圧政が吹きすさぶ清朝から逃れるため、民主革命を志す本州人達はイギリス領香港へと渡ってきていた。そんな時、日本へと逃げ延びていた革命運動の首謀者にして革命団体・中国同盟会の創設者・孫文が香港を訪れるとの情報が流れる。そして孫文の渡航に合わせて清の本土からも各地の革命指導者達が集合し会議が開かれるという。
しかし、この情報は西太后にも伝わっていた。西太后は反政府分子を一網打尽にするため、500人からなる暗殺集団を差し向ける。一方の革命家たちは香港で護衛団を結成する。孫文の滞在時間はわずか1時間。護衛団は果たして一時間を持ちこたえることが出来るのか、、、。


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【感想】

水曜日は昨年の香港電影金像奨のグランプリ作品、「孫文の義士団」です。レディースデーだからなのか香港スター全員集合だからなのか、女性の一人客が結構居てちょっとビックリしました。カンフー映画なのに、、、。
最近は「*****版エクスペンダブルズ」という表現が非常に多くて大変喜ばしい限りですが(笑)、本作も「香港版エクスペンダブルズ」の名に恥じぬオールスターっぷりを披露してくれます。ちょい役なのにいきなりサイモン・ヤムが出てきたり、いつも以上にヘタレなドニー・イエンや浮浪者のレオン・ライ、敵のパシリでストライクフォースのカン・リーまで出てきます。そして話しのフォーマットも昨年の「十三人の刺客」に似ています。少数対多数の集団戦をメインにして、それまでの過程を前振りとしての前半でさらっと見せます。
ただ、「十三人の刺客」と比べればまだ丁寧に前振りをしている方だと思います。本作の話しの軸は数々の親子関係です。革命に賛同しながらも息子にはまっとうな人生を臨むリー・ユータン。酒とギャンブルにおぼれて娘と会えなくなったシェン・チャンヤン。両親が自分のせいで死んでしまったリウ・ユーパイ。父の弔い合戦に挑むファン・ホン。育ての親の恩に報いるために命を賭けるアスー。革命家のシャオバイと破門僧ワン・フーミン以外の全ての護衛団は親子関係を動機として行動します。この辺はきちんと統一されていますし、きちんと描く部分を整理していて頑張った跡が見えます。
ところが、、、やっぱりアクションの繋ぎ方がちょっとワンパターン過ぎます。なにせ本編である「孫文の滞在1時間」が始まってからというもの、「刺客が襲ってくる」→「護衛団の誰か一人が仁王立ち」→「護衛が敵を決死で食い止めるが力尽きる」→「次の刺客が襲ってくる」というパターンを延々と見せられます。たしかに一回一回のシチュエーションは非常にテンションが上がりますし、特にドニー・イエンはやっぱり圧巻のクオリティです。ただ、、、ただですね、、、、全体的にワイヤーを使いすぎなのとカメラの動きで誤魔化しすぎで、正直なところアクションについてはおしなべて中の上っていう位のクオリティです。
なんというか、、、せっかく豪華なメンツを使ってお祭り的なエンタメ映画を作っているのに、いまいち絶賛しきれない感じなんです。もちろん所々演出上で上手い部分はあるんです。孫文が1905年に死んでいないのは誰でも知っていることなので、物語は途中で「孫文の影武者を守れるかどうか」という話しにスライドしてちゃんと最後までハラハラさせる展開にしますし、孫文ほどの大メジャー人物に興味が移らないようにワザと孫文の顔を最後の最後まで映さなかったり、工夫の跡は結構見られます。とはいえあんまりテンションが振り切れるような熱血展開も無いまま、気付いたらなんとな~く終わっています。決め絵は本当に格好良いんです。レオン・ライが鉄扇を持って階段で仁王立ちするのなんか鳥肌ものの格好良さです。
なにが物足りないかと考えると、キャラクターとアクションの説得力だと思います。本作では護衛団同士の連携があんまりありませんので、どうしても一種のシチュエーション演舞に見えてしまうんです。「ここから5分はクリス・リーの時間」とか「ここからはレオンの出番」となっているため、前後とのつながりが全然ありません。そうするとそこまでの流れが一切関係なく俳優のプロモーションタイムが始まっちゃうんです。それでいてアクションを誤魔化してるのはさすがにちょっと厳しいです。

【まとめ】

全体的には面白いですし、概ねエンタメ映画としては良く出来ています。個人的にアクションを期待しすぎていただけのような気もしますが少々物足りなさが残ってしまいました。さすがに「十三人の刺客」と比べるのは厳しいですが、面白い映画なのは間違いないですし歴史を知らなくてもシンプルなエンタメ構造なので十分に楽しめます。オススメかどうかと言われれば、それはもう当然オススメです。アクションはニコラス・ツェーも出ている新作「新・少林寺」に期待しましょう。オススメです。

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イップ・マン-序章-

イップ・マン-序章-

日曜日の3本目は

イップ・マン-序章-(葉問)」です。

評価:(90/100点) – ヘンテコな歴史風アクション映画の傑作。


【あらすじ】

中国の佛山は武家(=道場)が乱立するカンフーの盛んな地である。武家通りには多くの道場が開かれ切磋琢磨している。1935年、佛山に金山找と名乗る道場荒らしが現れる。数々の武家を破り最強を自負する金山找だったが、茶屋の主人に「佛山最強の葉問師匠を倒さずにどうする」と挑発され、葉問の家を訪ねる。しかし葉問は道場を開かず、妻と幼い一人息子に愛想をつかれながらも自己修練に励む日々を送っていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 葉問と廖師匠。
 ※第1ターニングポイント -> 佛山に金山找が現れる。
第2幕 -> 金山找の道場破りと葉問。
 ※第2ターニングポイント -> 1937年、日中戦争が勃発する
第3幕 -> 日本占領下の佛山と三浦将軍の武芸修練。
 ※第三ターニングポイント -> 葉問が日本人空手家10人をまとめて倒す。
第四幕 -> 葉問vs三浦将軍


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【感想】

日曜の3本目は「イップ・マンー序章ー」です。新宿武蔵野館の夕方の回でしたが、キャパ133人で100人近く入っていたでしょうか。「イップ・マン2」よりも入っていました。「イップ・マン2」に武蔵野館で5,000人入ったら「イップ・マンー序章ー」を公開するという元も子もないキャンペーンをやっていまして、その結果の本作上映です。本当に5,000人入ったのかは知りませんが(笑)、フィルム1巻なら公開してペイできると見込めたというのは非常に大きいと思います。

一応前提:そもそもこれは事実ではない

まず第一の前提としてそもそもこの話は「伝記物」っぽい体裁の完全フィクションです。本作は「伝記物」の雰囲気を見せながらナショナリズムを喚起する作りになっています。プルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」等を見ていれば戦時中~戦後すぐを舞台にした香港カンフー映画で嫌味な日本人が敵役なのは常識です。確かに渋谷天馬演じる佐藤はあまりにあんまりというか、「出っ歯でカメラぶら下げてるチビな日本人像」そのまんまでちょっと腹立つんですが、映画の出来とは関係無いので政治的な部分は目を瞑りましょう。あくまでも「イップ・マン2」のあまりにあんまりな調子扱いてる白人・ツイスターを見るときのような生暖かい目で微笑ましく見ましょう。
一応、葉問の本当の略歴をざっとまとめておきましょう。
葉問は1893年、広東省・佛山の裕福な家庭の次男として生まれます。兄と姉が1人ずつ、妹が1人の6人家族です。13歳で陳華順師匠の詠春拳に入門します。15歳で香港に引っ越すと、セント・ステファンズ高校というお坊ちゃん学校に入学します。10年後の1918年、葉問は佛山に戻り警察官になります。そして警察官の傍ら、仲間に内々で詠春拳を教え始めます。そしてこの内弟子達が広東省に散らばり、詠春拳葉問派を広げていきます。
1937年に日中戦争が始まると、彼は家族と共に弟子の一人・郭富(クォック・フー)を頼り疎開します。そして1945年、終戦と同時に佛山に戻り警察官に復職します。しかしわずか4年後の1949年、中国内戦で共産党が南京を制圧すると、裕福だった葉問は共産党に財産を没収されてしまいます。路頭に迷いかけた葉問は、学生時代を過ごした香港へ逃げます。当時内戦後の食糧難で物価が高くなっており、香港に来たものの葉問は大好きなアヘンが買えませんでした(苦笑)。そこで彼はついに内弟子だけでなく本格的な詠春拳の道場を開き収入を得ることにします。この時葉問は56歳。「イップ・マン2」の舞台はまさにここです。ドニー・イエンが若すぎてピンと来ませんけど。 ちなみに「イップ・マンー序章ー」や「イップ・マン2」で葉問が吸ってたタバコっぽいものはアヘン入りですw
いろいろ弟子をとったり香港詠春拳体育会を設立したりとかありまして、1972年にガンで亡くなります。79歳でした。
ということで、本作のように1937年の日本占領下の佛山で葉問が誇りをかけて戦うというのは全くのファンタジーです。実物はその頃にはいち早く弟子の所に逃げています。この辺りをもって「中国共産党のプロパガンダ映画だ!」と非難するのはたやすいですが、本作はあくまでもエンタテイメント映画です。それは宇宙戦艦ヤマトに「65,000トンの巨大軍艦大和が空を飛ぶわけないだろ!」というのと同じなので気にするだけ野暮です。
あくまでも本作は葉問というカンフー界の有名人を題材にして、それこそ「ドラゴン怒りの鉄拳」がそうであったようにナショナリズムという分かりやすく燃える展開をベタに乗せた作品です。

テーマは一緒。語るスタイルが別。

いきなりですが、実は本作の内容は「イップ・マン2」とあまり変わりませんw 両作品ともに最終的には友情と愛国心のためにイケ好かない外人をぶちのめします。違いがあるとすれば、「イップ・マン2」が「ロッキー4/炎の友情」と同じプロットでそのまんまハリウッド映画の作りをしているのに対して、「イップ・マンー序章ー」は前半・後半でガラッと話しが変わるヘンテコな構成になっている点です。
本作の前半・道場荒らしの件と後半・三浦大佐の件はまったく別物でなんの繋がりもありません。ですが、それを「日中戦争」という歴史的事件に乗せることで「歴史物」っぽさを演出しています。適当な歴史年表をググって見てもらえれば分かりますが、歴史年表はいわゆるストーリーの本筋としての事件の他に直接本筋とは関係無い事件がちょくちょく挟まってきます。この年表の雑多煮な感じと、前半・後半でガラッと話しが変わる感じが非常に相性が良いです。言うなれば年表の箇条書きを見ている感覚です。「1935年、佛山に道場荒らしが現れる。」「1937年、日中戦争が勃発する」というような事です。
ストーリー構成としてはヘンテコながら、この「本当の歴史っぽい」という一点において、この構成は大いに効果的です。
さらに本作は時間軸とイベントの配置が見事です。前半の舞台は言うなれば活気あふれる「ヤンチャな佛山」です。ここでは夫婦漫才的なギャグがどんどん入ってきますし、悪役として登場する道場破りの金山找もコミカルで熊さんっぽい魅力を放っています。画面は彩り豊かで、爆竹や青空が花を添えます。
しかし、これが後半になると一転して超シリアスな展開になっていきます。ギャグが入る余地は無く、色あせて粉塵が舞う黄色い荒廃した佛山が舞台の大半を占めます。室内のシーンでも全体的に暗く黒く、画面からは否応なく鬱屈したプレッシャーがにじみ出てきます。そしてこの鬱屈に合わせて、どんどん葉問も感情を表情に出すようになります。前半では全く無かった葉問が怒鳴り散らすシーンが繰り返され、彼のカンフーも寸止めではなく実戦仕様で相手を破壊するようになります。こういったスクリーン自体が鬱屈した中にあって、ラストのあるイベントの直後から急に画面に色が戻り始めます。その見事さとカタルシスたるや並のアクション映画ではありません。
歴史物っぽさと相まって、気付いたら「佐藤なんざやっちまえ!!!」と葉問を応援しています。で、ふと我に返って「あれ?なんだこの反日描写。チッ。」とかなるわけですw

【まとめ】

前述したように本作はあくまでもフィクションなので日本人に対する犬畜生的な腹立つ描写は気にしないのが一番です。三浦も佐藤も「敵役」以上の何者でもありませんから。ただ冷静に考えると「三浦って普通に弱くね?」とか、「葉問師匠が武器を練習する描写がないのに棒術上手すぎじゃね?」とか気になるところは出てきてしまいます。
これは推測ですが、「イップマンー序章ー」で比較的真面目な「伝記風アクション映画」をやってヒットしたため、続編「イップ・マン2」ではより分かり易くエンタテイメント性を重視したキャラもの作品にしたという流れだと思います。見やすさで言えば「イップ・マン2」の方が格段に上ですが、見易いというのは「話しが軽い」というのと表裏一体なので(苦笑)、是非どちらも見ていただきたいと思います。
そしてさすが柔道・黒帯の池内博之。もう日本の男子若手アクション枠はアンタに任せます!!!! G.J. !!!!!
オススメかって言われれば、そりゃもうオススメしないわけにはいきません。とりあえず「孫文の義士団」の前にドニー・イエン分を補給しておきましょう。オススメです!!!

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イップ・マン 葉問

イップ・マン 葉問

本日はアクション映画2本です。いぇ~~~い!!!
1本目は

イップ・マン2(葉問2/宗師傳奇)」です!

評価:(95/100点) -「ロッキー4/炎の友情」を再び!!!


【あらすじ】

日本兵から逃げ延びた葉問は、広東省から香港へと移り住んできた。独立系新聞の編集長である梁根を頼り場所を借りた葉問は、建物の屋上を利用して詠春拳の武館を開く。しかし弟子はまったく集まらない。
ある日、血気盛んに葉問に挑み掛かってきた黄梁を倒すと、彼は弟子入りを志願してくる。一番弟子となった黄梁は友人達を次々と紹介し、やがて葉問の武館はそれなりの規模になっていく。ところが香港の武館には組合があり、洪家拳武館の洪震南が全ての武館から上納金を集めて統治イギリス軍との仲介をおこなっていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 葉問が詠春拳武館を開く。
 ※第1ターニングポイント -> 黄梁の救出
第2幕 -> 葉問と洪震南とイギリス軍
 ※第2ターニングポイント -> 洪震南がツイスターと対決する。
第3幕 -> 葉問vsツイスター


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【感想】

本日の1本目は昨年大ヒットした香港映画「イップ・マン2」です。何故か日本では宣伝のリベロが「2」であることを微妙に隠していますが、歴とした「イップ・マン」の続編です。主演はご存じ香港アクション界2大スターの片割れドニー・イェンです。同級生のジェット・リーに比べて日本では不遇な扱いを受けていますが、間違いなく当代きってのスーパースターです。カンフー映画はあまりお客さんが入らない印象があるのですが今日は客席が7割方埋まっていました。とても素晴らしいことです。

私たちの目頭を熱くさせる漢同士の熱き友情

恥ずかしながら映画の後半は涙が止まらずに上手く見えていなかったのですが(苦笑)、本作は香港版「ロッキー4/炎の友情」といってもいいぐらい素晴らしい友情物語です。それはもちろんドニー・イェンとサモ・ハン・キンポーなわけです。方やジェントルマンとして知られ温和で頭も切れる詠春拳のイップ・マン。方や豪傑であり一見すると武館を仕切るヤクザのように見えながらも、実は誰よりも中国武術を愛するが故にイギリス軍の暴虐に耐え続ける洪家拳のハン・チュンナン。この二人が対立しながらも、そして決して表立って和解はしないながらも、お互いを認め合い静かに友情と信頼を深めていきます。その描写たるや本当にロッキーとアポロを彷彿とさせ、それだけで目頭が熱くなっていきますw
私達映画オタクの感覚からすれば(苦笑)、兄貴肌で傍若無人として知られるサモ・ハン・キンポーと、超ナルシストであるが故にジェントルマンなドニー・イェンという組み合わせが、そのまんまハン・チュンナンとイップ・マンに重なるわけです。それはつまり、香港アクション界の曲者スーパースター2人がきっと撮影中に幸せな時間を過ごしたのだろうという予感とともに、やっぱり目頭が熱くなりますw
そう。本作は完全に漢と書いて「おとこ」と読む漢人たちの繰り広げる、友情と誇りの物語です。本作に女・子供はイップとハンの家族以外はほとんど出てきません。その家族達も決戦の場には同席しません。漢達が自身と国家と民族の誇りを掛けて戦う場に、家族は不要です。あくまでも家族は「帰るべき場所」であり、誇りと尊厳は命をかけて守るべきものです。そのイップとハンの決意との対比として描かれるタイラー・ツイスターのなんとまぁ軽いことよ(苦笑)。
彼は絵に描いたような「調子コいてる嫌味な外人」像を存分に発揮し、同情の余地が無い完全なる悪として映画に華を添えます。前作で空手家・三浦将軍を演じた池内博之よりも明らかにマッチョなツイスターは、それだけで一目で分かるほど「細身vsマッチョ」「香港vsイギリス」「カンフーvsボクシング」「平和主義者vs荒くれ者」という対立構造を強調してきます。それがより一層、細身でちっちゃいドニー・イェンの凄みを引き出していきます。
本作において、ドニー・イェンは都合8回の対決で武術を披露します。最初の二回は素人相手のいわばデモンストレーション的な手合わせ。次の一度は本作内で唯一武器を使用する魚市場での2対多数の大乱闘。そして達人との三回の戦いと、ハンとの一騎打ち。最後に対ツイスター戦。最初から最後まで無敵の強さを見せながらも、ドニーの人間的な魅力と華麗さによって、ワクワクというよりは惚れ惚れとするアクションを披露してくれます。実は個人的な2010年ベスト10の隠れ4位がカンフー映画をパロディ的に脱構築した「ギャランツ~シニアドラゴン龍虎激闘」だったのですが、本作のようなド直球でハイレベルなカンフー映画を見せられると改めてその魅力というか凄みに恐れ入る気分です。やれアクション映画はもうタイの時代だなんだと言っていますが、私達にはまだドニー兄貴がいるんです!!!

【まとめ】

間違いなく香港アクション映画の歴史に残る名作です。五年後、十年後になっても間違いなくアクション映画の定番として長く見られることになるでしょう。こんな素晴らしい作品を映画館でやっているわけですから、これはもう行かないわけにはいきません。絶っっ対に損はしません。行っとくべきです。というか必須です。自信を持ってオススメできます。
カンフー最高!!!!!!!

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