グリーン・ホーネット

グリーン・ホーネット

2本目のアクション映画は

「グリーン・ホーネット」です。

評価:(30/100点) – 一瞬だけ楽しい気もするけど支離滅裂で意味不明。


【あらすじ】

ブリット・リードはボンボンの遊び人である。ロサンゼルスで新聞社を経営する父・ジェームズに構ってもらえなかったことからグレてしまい、豊富な私財を悪用してやりたい放題遊びほうけている。
ある日、ブリットが遊びから帰ると、父が庭で蜂に刺されて死んでいた。図らずも2代目社長となったブリットは、父のお抱えドライバー・カトーと一緒に父の銅像の首を切るイタズラをする。それがテレビ報道されるやいなや、彼は自らを覆面の悪党グリーン・ホーネットとして新聞で大々的に取り上げ、マッチポンプ的に有名人になっていく。「悪人に見せかけた正義のヒーロー」を目指すブリットとカトーは、やがてロスの犯罪王・チュドノフスキーに目を付けられてしまう、、、。


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【感想】

本日の二本目は「グリーン・ホーネット」です。今週公開の作品の中では間違いなく一番規模の大きい3D娯楽大作ですので、結構なお客さんが入っていました。
私が大好物なアメコミ・ヒーロー・アクションなのですが、本作は全然テンションが上がりませんでした。なのでさらっと流したいと思いますw
見ていて一番困惑したのは、そもそもブリットとカトーが「悪人(ヴィラン)のふりをする」という部分の描写と説得力の薄さです。ブリットとカトーは、「正義のヒーローは悪人に一般人を人質に取られたら手も足も出ない。でも悪人なら敵も人質なんて考えない。超クールなアイデアだ!」みたいなことを言うのですが、そもそも本作内でやった悪い事は銅像の首を切っただけです。それ以外はマフィアの麻薬工場をつぶしたぐらいで全然描写がありません。あとはちょっと警官とカーチェイスしたぐらいでしょうか。せっかくブリットがマッチポンプで「グリーン・ホーネットは街の脅威だ」みたいな記事を出させているにも関わらず、全然驚異に見えません。ですから、その後の行動がまったく意味が分からないですし、キャラクター達の「行動理念/行動基準」がグラグラです。
そうすると全体が行き当たりばったりのようにしか見えないため、せっかくのアクションもどうでもよく見えてしまいます。そのアクションもスローモーションを多用した非常にミュージックビデオっぽい作りでして、3Dとの相性は最悪です。実は上映途中で3Dメガネを外してみたのですが、まったく問題無く普通に見えていてちょっとビックリしましたw なんか全体的に志しが低いというか、いまいち「作り手が本気で笑わせよう/楽しませよう」としているように見えないんです。一応グリーンホーネットとカトーのコンビは「ボケとツッコミ」「バカと天才」のデコボコ・コンビになってはいるんですが、その二人のキャッキャとした感じ以外は見終わった後なんの印象も残っていません。キャメロン・ディアスもクリストフ・ヴァルツも完全に無駄使いです。
直前に見た「イップ・マン」が面白すぎたというせいがあるとは思いますが、最後まで冷めた見方をして入り込めませんでした。3Dもまったく意味がありませんので、どうしても見る場合には2D字幕で十分だとおもいます。

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記事の評価
僕が結婚を決めたワケ

僕が結婚を決めたワケ

日曜日は

僕が結婚を決めたワケ」を見ました。

評価:(55 /100点) – かなりブラックなヒューマンドラマ


【あらすじ】

ロニーは40歳を過ぎて独身である。相棒の自動車エンジニア・ニックとは学生時代からの中で、厳しいながらも小さなエンジン工場を経営している。ロニーはある日、デトロイトのゼネラルモーターズ本社にて役員プレゼンを行う絶好の機会を得る。ロニーとニックは大規模契約を獲得するべく、40万ドルの資金でエンジン音豊かな電気自動車の試作を請け負う。
一方ロニーは同棲しているベスにプロポーズを決意するが、下見に行った植物園でニックの妻・ジェニーヴァの浮気を目撃してしまう、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> GMへのプレゼンと試作請負。
 ※第1ターニングポイント -> ジェニーヴァの浮気。
第2幕 -> ロニーによる浮気調査。
 ※第2ターニングポイント -> 心理セラピー
第3幕 -> プレゼンの行方とプロポーズ


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【感想】

昨日は一本、「僕が結婚を決めたワケ」を見て来ました。意外だったのですが、結構なお客さんが入っていました。箱が違うので比べづらいですが、ソーシャル・ネットワークよりも密度は高かったように思います。監督はご存じロン・ハワード。あんまりコメディを撮っているイメージが無いですが、「エドtv」以来でしょうか。とか書いた途端にそういや昔人魚姫のパロディで「スプラッシュ」とか愉快なコメディを撮ってた気もします。
本作は「結婚を夢見る男が、目の前で結婚の欺瞞的な部分を見せつけられることで悩む」話です。あくまでもコメディなので出来るだけきつくならないようには描いていますが、「仕事でテンパっている胃潰瘍持ちの親友に嫁の浮気をどうやって告げるか」という聞いただけでこっちが胃潰瘍になりそうな話が1時間近く続きます。その居たたまれなさたるや並のものではありませんw
話自体は本当にそれだけなのですが、超演技派ヴィンス・ヴォーンの見るからにヘタレな野暮ったい目つきだけで十二分に説得力があります。わりとヘタレな独身貴族というのはテーマにはしやすいのですが、ここまでストレートに「結婚っていいかも」と思わせられるのはとてもすばらしいと思います。ただ、劇映画として見ると全体的に薄いかなという印象です。
ロニーは物語の冒頭で結婚を決意した状態で始まりますが、いろいろあって「結婚ってタフだな」と思い知り、結局その上で再度結婚を決心します。その心の流れに対して、明らかに作品の尺が長すぎます。途中のジップとの件のあたりは本筋とはまったく関係無いコメディ展開です。ただ、その馬鹿馬鹿しさは結構なものですので、素直に呆れながら笑えると思います。
ハッキリ言いまして、あんまり映画館で1800円払って見る映画では無いと思いますw ただ、主要登場人物が5人程度の小さな話ですが間違いなく愉快な作品です。レンタルDVDで出たら間違いなく要チェックな作品です。その他の作品を見に行ったついでに見るぐらいの期待度であれば、とっても気楽でとっても愉快な作品ではないでしょうか。オススメです。
あ、最後に。つきあい始めのカップルでいくのは止めた方がいいです。ある程度長い付き合いならば良いかもしれません。

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デッドクリフ

デッドクリフ

成人の日は

デッドクリフ」を見てきました。

評価:(40/100点) – 細かい所で意味が分からないが、勢いで押し切る!


【あらすじ】

クロエは友人のフレッドとカリーヌのカップル、恋人のルイック、元彼のギョームの5人でクロアチアにクライミングに来ていた。山頂に到達した後にケーブル滑空で降りてくる半日ほどの行程を選んだ一行だったが、途中、立ち入り禁止の行き止まりに会ってしまう。クライミング経験豊富なフレッドは看板の上の崖をよじ登り、注意書きを無視して道を拓いていく。しかしその山には、恐怖が待っていた、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 一行とクライミング
 ※第1ターニングポイント -> フレッドが行方不明になる。
第2幕 -> フレッドの捜索。
 ※第2ターニングポイント -> 山小屋に着く。
第3幕 -> アントンとの決着。


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【感想】

月曜の成人の日はシネパトスで「デッドクリフ」を見て来ました。完全に単館の上映でしかも2009年の作品ですが、かなりお客さんが入っていました。こういう誰がどう見てもB級なタイトル&ポスターでここまで入るというのは、大変素晴らしいことだと思います。
恥ずかしながらgoogleで検索してはじめて気付いたのですが、タイトルが「レッドクリフ」のパロディになってたんですね。非常にパチモノ臭くて完璧な邦題だと思います。フランスでの原題は「vertige」で「空間識失調」=「高いところでの極度の目眩い」のことです。本作では前半から高いところが苦手なルイックがずっーっと掛かってしまった症状です。とはいえ、もちろん本作の主役はクロエです。何せ5人の人間関係がクロエを橋渡しにして繋がっていますから。
さて、本作はいわゆるシリアルキラーものです。クロアチアの断崖に囲まれた山の頂で、五人は謎のハンターに狙われ、一人また一人と襲われていきます。いきますが、、、、、、本作は本当に割り切ったジャンルムービーでして、このハンターがいったい何なのかですとか、普段何してるのかとか、そういったことは全く分かりませんw ちょっとだけエンドロール直前にテロップで説明が出ますが特別どうという意味もありません。発想としては、ワイワイキャッキャな若者がシリアルキラーに襲われてギャーーーーッという「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」でお馴染みの例のフォーマットを山の上に移しただけですw
割り切るというと聞こえは良いですが、実際には結構雑です。前半はクライミング本来の部分での落下するスリルを重点的に見せておいて、二幕目と同時に急にシリアルキラーものに展開します。その展開のしかたがびっくりするほどやっつけ仕事でして(苦笑)、場面がまったく繋がらないというか、シリアルキラーものになった途端に”崖”要素が消えますw 山の上という体裁のだだっぴろい林&野原に場面が変わってしまうため、クリフハンガー的なスリルは一切ありません。タイトルに偽りありですw
そして唐突にでてくるシリアルキラー・アントンも、見た目が完全にロブ・ゾンビ版の「ハロウィン」に出てくるマイケル・マイヤーズです。
そうです。この映画は楽しそうな要素をごった煮にして適当に並べた、正しい意味での娯楽B級映画ですw 細かい所にツッコミは無用。その場面その場面を頭をカラッポにして楽しむ映画です。ですから、「あれ?おかしくね?まぁいいや。ウヒョー!!」みたいな感じで、観客の見ている態度まで雑になってきますw とはいえ間違いなく面白いですし、見ている間は勢いだけでノリノリになれます。
オススメはオススメですが、真面目な態度で見に行くのだけは絶対に止めた方が良いです。ちょっと半笑いな感じで劇場の席に座れれば、きっと楽しい100分が待っているはずです。

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しあわせの雨傘

しあわせの雨傘

日曜日は

「しあわせの雨傘」を見ました。

評価:(45/100点) – 話は酷いが女優のオーラで全てカバー。


【あらすじ】

スザンヌ・ピュジョルは資産家の娘として生まれ結婚して30年、つまらない日常をジョギングと詩とテレビ番組で送っていた。婿養子の夫・ロベールはスザンヌの父から継いだ雨傘工場でやりたい放題やっている。
ある日、労働者達のストライキを諫めにいったロベールは逆に社長室に監禁されてしまう。何とか解放したものの、ロベールは興奮のあまり持病の心臓病の発作を起こして倒れてしまう。労働組合との会合にでるため、今まで「お飾り」として生きてきたスザンヌがついに重い腰を上げる、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ストライキとロベールの発作。
 ※第1ターニングポイント -> スザンヌが代役として会合に出席する。
第2幕 -> スザンヌ社長の手腕。
 ※第2ターニングポイント -> 臨時株主総会。
第3幕 -> スザンヌの選挙。


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【感想】

日曜日はフランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴ主演の最新作「しあわせの雨傘」を見て来ました。実は去年の東京国際映画際のセレモニーで一番嬉しかったのが、本作で来場したカトリーヌ・ドヌーヴと(ソーシャルネットワークで来場したけど)ゾンビ・ランドの主演ジェシー・アイゼンバーグを生で見られたことでした。
自分は未見なのですが、「徹子の部屋」にドヌーヴが出てたりしたようで、結構中年~老年の夫婦が多数見られました。
本作は簡単に言ってしまえば「抑圧されていたオバさんが調子に乗る話」です。「スイーツ向け」とか「バカOL向け」とかいろんなジャンル映画がありますが、本作はそれよりもう2周りぐらい上の年代向けですw 話としては本当にそれだけでして、特筆するようなことは何もありません。亭主関白で抑圧されていたオバさんが、ふとしたことから表舞台に立ったら実は超やり手で男遊びもやりたい放題のプレイガールだった、、、というすごい微妙なお話しです。
例によって男女を逆転していただくとこの酷さが良く分かると思いますが(苦笑)、まぁでも世の専業主婦達の夢だと言われてしまえばそうかもしれませんので好きにして貰って良いと思いますw
これでもし主演が市原悦子とか浅丘ルリ子だったら観客の男がブチ切れても仕方無いと思いますが(笑)、なにせカトリーヌ・ドヌーヴの持つ強力な母性=人間力によってそこまで嫌味にならないのが凄い所です。そう、話はびっくりするほど酷いのに、全体としては結構面白いんです。これは凄いと思います。できるだけコメディタッチになるように作っているからでもあるんですが、主役のスザンヌがそこまで外道や天才に見えないのは本当に驚くべきことです。そういった意味では(70歳近い大女優に言うのはどうかとおもいますが)間違いなく本作はカトリーヌ・ドヌーヴのアイドル映画です。
2008年公開の「母べえ」で志田未来(当時15歳)の母親役を吉永小百合(当時63歳!)が演じて局所的に話題になりましたが(俗に言う「吉永小百合・不老説」)、フランスにも吉永小百合級の不老不死がいるぞと、そういう事ですw

【まとめ】

一般的にはあんまり好きこのんで見に行くような映画では無いと思いますが、カトリーヌ・ドヌーヴが好きな方は必見の映画です。久々にカトリーヌ・ドヌーヴが前面に出た映画というだけで十分に見る価値があると思います。ただ、できればあまり夫婦では行かない方が良いかもしれません。本質的には都合の良い女性の妄想話なので、旦那様の仕事のモチベーションに多大な支障がでる恐れがありますのでご注意下さいw
平日の昼間に女友達を誘って見に行くのをオススメしたいと思います。

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アンストッパブル

アンストッパブル

土曜の2本目は

アンストッパブル」です。

評価:(70/100点) – 再現映像風味ながらテンションが超高い!


【あらすじ】

ペンシルベニアの操車場で、鉄道会社AWVRの貨物列車777号がブレーキの操作ミスにより無人で暴走を始めてしまった。ペンシルベニアからオハイオへと向かう時速100K越えで向かう777号は化学燃料を山程積んでおり、まさに暴走する弾薬庫であった、、、。


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【感想】

土曜の二本目は「アンストッパブル」です。そこそこお客さんは入っていましたがスプライスほどではありませんでした。なんとなく予告でもある程度見せてしまってますので、そこまで引きが無かったのかも知れません。

実際の事件「CSX8888号暴走事故」と本作

本作は2001年にオハイオで発生したCSX8888号暴走事故を元にしています。実際の事故は機関士がブレーキを掛け間違った状態で列車を降りてしまったことにより暴走したもので、オハイオ州トレドから南部ケントンまでの106kmを走りました。途中脱線器の設置や燃料放出バルブの射撃等の手を尽くしましたが止めるまでにはいたらず、最終的には別の貨物車が後ろに取り付いて逆方向へのアクセルを掛けることで減速し、機関士が先頭車両まで渡っていって止めました。この事件が起きたオハイオ州の路線は基本的には一直線で、またCSX8888号自体も時速80km程度だったためこのような対応が可能でした。
さて、これをアレンジした本作では、この事件の全てがスケールアップしています。暴走する貨物車777号は時速100マイル(=時速160Km!!!)を越え、さらにロケーションも直線ではなくクライマックス用に大曲のスタントンカーブが用意されています。そして極めつけはデンゼル・ワシントン扮するベテラン機関士フランクの動機です。実際の事故では会社側からの命令で機関士が行動しましたが、本作では自ら進んで英雄的行動をとります。
本作の基本フォーマット自体は「CSX8888号暴走事故」をほぼ踏襲しています。しかし本作は、徹底的に類型的なキャラクター達を王道に沿って丁寧に配置することで、これ以上ない盛り上がりを生み出しています。人命軽視で会社の利益しか考えないガルビン運行部長、人命重視の作戦を訴えながらも上司に逆らえないドーソン、早期退職でリストラ寸前のベテラン機関士・フランク、浮気を疑ったことから妻子と離れて暮らさざるを得なくなった新米車掌のウィル。この4人を中心に、コテコテながらも超熱血なヒーローものが展開されます。所々で挟まれるテレビニュースの画面でちょいちょいテンションが落ちるのですが、しかしハイビートのBGMと暴走列車のエンジン音で化学調味料のように無理矢理テンションを上げてきますw
本作はこの演出力が全てです。内容は大したことありませんし、ある意味結末はみんな知ってるわけですから驚くような何かもありません。しかし、よくあるキャラクター達を適切に配置するとこんなに面白いんだという驚きはあります。
お正月からあまり大作・話題作がありませんが、本作は十分にお勧め出来ます。ポップコーンをボリボリ食べながら拳を握りしめて見ればテンションは最高潮です。きっと劇場の帰りには無駄に大股で歩いていることでしょうw
オススメです!!!

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シチリア! シチリア!

シチリア! シチリア!

今年最後の映画は

シチリア! シチリア!」です。

評価:(95/100点) – 感傷と郷愁の”胡蝶の夢”


【あらすじ】

ペッピーノはシチリアに生まれ、幼少時に第二次世界大戦を経験した。終戦のどさくさで大金を手に入れるが乳牛の生産に失敗して貧乏に戻ってしまう。彼の唯一の救いはイタリア共産党の仲間達。彼はやがて美しいマンニーナと恋に落ち、家庭を持ち、自身も政治家を志すようになる、、、。


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【感想】

今年(たぶん)最後の映画は「シチリア! シチリア!」です。「ニュー・シネマ・パラダイス」でお馴染みの、ジュゼッペ・トルナトーレ監督とスパゲッティ・ウェスタンの巨魁エンニオ・モリコーネのコンビ作品です。公開から日は経っていますがかなりお客さんが入っていました。
元も子もない言い方をしてしまいますと、本作は完全な雰囲気映画です。その雰囲気の作り方がもの凄い事になっています。
メインストーリーは家族愛もので、どうしようもないヘタレな男が共産主義に傾倒していき、そして夢を追って政治家になろうとします。彼の家族は仲睦まじく、三人の子供と優秀な妻、そして妻の母の6人で幸せに暮らします。でもそれだけです。後は特にどうという話もありません。劇的な何かがあるわけでは無いですし、特別なにかを表現しているわけでもありません。一番近いのは「ものすごく良く出来た三丁目の夕日」でしょうか。
ただその雰囲気自体はとても普遍的に見えますし、少なくとも「シチリア」=「ゴッドファーザー」「エトナ火山」ぐらいの知識しか無い私でも(苦笑)それなりにグッとくるものあありました。強いて言えば多少ラストで”ぶつ切り感”がありますがそこまで気になるものでもありません。音楽と相まって良い雰囲気に浸りたい場合にはベストチョイスな映画です。かなり良い感じの雰囲気映画だったので、今年の映画鑑賞はこれで締めにしようかと思っていますw
とか言いつつ明日はキック・アス3回目(BD鑑賞入れると7回目)にふらっと行きそうですけどねw

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キック・アス

キック・アス

本日は満を持して

キック・アス」を見ました。

評価:(100/100点) – 男は思い立ち、調子に乗り、挫折し、決意を胸に真の英雄になる!!!


【あらすじ】

コミックオタクで冴えないデイヴ・リズースキーは思い立ち、ebayで買ったコスチュームと靴を身につけヒーロー・キックアスになった。彼はパトロール中に偶然遭遇した車上荒らし達を止めようとするが、返り討ちに会ったあげく、朦朧としたところを車に撥ねられて全身を骨折してしまう。しかしそんなことで彼のヒーロー熱は冷めなかった。神経麻痺により痛みを感じなくなった彼は、生まれ変わったヒーロー・キックアスver2としてギャング達に襲われた男を助け、一躍スターになる。
そんな彼はある日意中の彼女・ケイティからヤク中の男に付きまとわれていると相談を受ける。キックアスの衣装に身を包み、意気揚々と男のアジトへと向かうデイヴだったが、、、、。。

【三幕構成】

第1幕 -> キック・アスの誕生と挫折。
 ※第1ターニングポイント -> キック・アスが人気者になる。
第2幕 -> ビッグダディとヒットガール。
 ※第2ターニングポイント -> ビッグダディが殺される。
第3幕 -> 復讐。


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【感想】

本日のレイトショーは満を持して「キック・アス」です。マーヴェルのアイコン・レーベルから発売されたコミックスが原作ですが、連載当初から映画化を前提に作られていたため、どちらが原作というよりは同時制作のような形になっています。アメリカでの評判や9月の「第3回したまちコメディ映画祭in台東」での先行上映の大評判ぶりからか、連日TOHOシネマズ川崎ではソールドアウト状態でまったくチケットがとれなくなっています。今日もレイトショーだというのに一列目以外は完全に満席でした。

話の概略

本作は一応カテゴリとして「コメディ」となっていますが、笑える要素が多いというだけで内容自体はいたってシリアスかつ王道なヒーローものに仕上がっています。作中では何度もバットマンやスパイダーマンを意識した台詞が登場します。つまり、この作品内では現実の私たちと同じように「ヒーローもの」の映画やコミックがあって、そういった内容を前提とした上で「ヘタレなオタクが真のヒーローになるまで」を重たいテンションと残酷な描写と、そして時折混じる笑いによって手際よく描いて見せます。
本作の主人公・デイヴはごく平凡で冴えない学生です。彼は毎日オタク友達と漫画カフェに入り浸り、女友達もいなく、バカ話をして過ごしています。そんな彼がガッツだけでスーパーヒーローになっていくわけです。そこには当然血も流れますし、苦悩も経験します。悪者達を華麗で無邪気に殺すヒットガールを目の前にして、彼は恐怖し一度はヒーローになることを捨てようとします。しかし暴力の連鎖は止まらず、マフィアとビッグダディ達との抗争に嫌でも巻き込まれてしまい、ついには逃げられない状態にまで追い込まれます。当初気軽にヒーローを目指していた彼は、スパイダーマン・ピーター・パーカーの台詞である「力には責任が伴う」と言う言葉を引用し、「力が無くても責任はあるんだ」と考えるに至ります。そして平凡な彼は、精一杯の正義感と勇気でもって、ついには真の意味でスーパーヒロイン・ヒットガールの相棒になります。
この物語は、私たちと同じ平凡な人間が「ヒーローになりたい」という無邪気な夢から調子に乗ってしまったことで本物の復讐劇に巻き込まれ、やがては挫折や痛みを知って真のヒーローに生まれ変わるまでを軽やかで残虐で誠実に描きます。本作は英雄譚であり、そこにはマッチョもスーパーマンも超人も居ない、平凡な人間達のあがきと苦悩とそして最後に訪れる真のヒーローへのカタルシスが詰まった大傑作です。

原作グラフィックノベルについて

原作グラフィックノベルは小学館集英社プロダクションから邦訳版が出ています。2008年2月から2010年2月まで全8冊の小冊子で刊行されたコミックスをまとめたものです。実際にグラフィックノベルと映画を比較すると、プロットはほぼ一緒でもまったく内容・印象が異なる作りになっています。
グラフィックノベル版と映画版の決定的な違いは、デイヴの性格設定とビッグダディ達の動機付けの部分です。
グラフィックノベル版ではデイヴはギーク特有の嫌味で根暗な部分が前面に出てきます。グラフィックノベルにおけるデイヴは、正義のために立ち上がるというよりはむしろ名声や優越感のためにヒーローになりたがります。彼が明確に「正義」を意識して行動を起こす場面は、火事に遭遇する第5話の1カ所のみです。このため、全体を通して自虐的で選民的な、感じの悪いオタク少年の自己憐憫が中心になります。
そしてビッグダディの部分です。こちらは映画版とはまったく異なります。ビッグダディはただのコミックオタクであり、自身がヒーローになるために勝手にストーリーを妄想してギャングに突っかかっていきます。そしてその自分の夢に娘を巻き込みます。こちらの設定は本当に救いやカタルシスがありません。ビッグダディはダメ人間のままで死にますし、デイヴも流されるだけ流されて手ひどい目に遭います。ただ、唯一ヒットガールにとっては、「親の敵討ち」という父の妄想が現実になるわけで、そこでまさに漫画的なヒロインに”一瞬だけ”なります。しかしヒットガールは何を得るでもなく鬱屈した日常へと戻っていきます。
グラフィックノベル版におけるテーマを考えるとすれば、それは「ヒーローなんて居るはずがない」という現実と絶望であり、しかしその一方で時折奇跡的に「ヒーローになってしまう瞬間がある」という幻です。
一方、映画版においては作りがぐっとシンプルかつエンターテイメント寄りになっています。ビッグダディ達とフランク・ダミコ・ファミリーの抗争や因縁は本物ですし、その中でキックアスが右往左往して巻き込まれながらも真のヒーローへと成長するのも本当です。そしてヒーローもののお約束であるヒロインとのラブロマンスもあります。これは「整理した」というよりは「エンターテイメントとして再構成した」と言った方が近いかも知れません。原作ファンには「原作の鬱屈した感じが無い」と言われてしまうかも知れませんが、私は映画版のストーリーの方が好きです。

【まとめ】

全男子必見のヒーロー・ムービーです。冒頭のモノローグで「一度は考えたろう?スーパーヒーローになりたいって。」というデイヴのセリフがあります。そう、私たちは子供の頃には誰もがウルトラマンになりたかったし仮面ライダーになりたかったはずです。でも当然現実にはなれるわけもないですし、実際に悪党(※例えばヤクザ)を敵に回したらとんでもないことになるんです。本作の主人公は、ヒーローになるためにひたすら根性で歯を食いしばります。ヒーローが実在した場合に起こりうる「悪党を惨殺する」という恐怖に駆られ、そしてその責任の重さを実感し、しかし彼はそれでも正義を信じて立ち上がります。これは「もし現実にヒーローが存在したら」という私たちが一度は夢見たことのあるファンタジーに現実を突きつけた上で、それでももしかしたら居るかも知れないという希望を残す堂々たる「英雄誕生譚」です。
是非劇場の大きなスクリーンでご鑑賞下さい。タイツを着たヒーローが苦手な人でも絶対に見て損はありません。近年稀に見る少年の成長物語の大傑作です。オススメです!

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シュレック フォーエバー

シュレック フォーエバー

今日は

シュレック フォーエバー」を見て来ました。

評価:(60/100点) – さすがの安定感だが、予告で全部見せすぎ。


【あらすじ】

シュレックはフィオナとの間に三人の子供を作り、幸せな生活を送っていた。しかし国の人気者という立場、父親という立場にどうしても物足りなさを感じてしまう。子供の1歳の誕生パーティでシュレックは遂に癇癪を起こしてしまい、フィオナから呆れられてしまう。一人パーティ会場を飛び出したシュレックは帰宅途中に馬車に下敷きになった男を助けるが、彼こそが悪名高き魔法使い・ランプルスティルスキンであった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> シュレックの平和な日常。
 ※第1ターニングポイント -> シュレックが契約書にサインする。
第2幕 -> シュレックとパラレルワールド。
 ※第2ターニングポイント -> オーガ達が捕まる。
第3幕 -> オーガ達の救出と結末。。


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【感想】

本日は「シュレック フォーエバー」を3D吹き替えで見て来ました。お客さんはまったく入っておらず250人の箱に一桁でした。比較的子供向けなアニメのレイトショーとしてはこんなものだと思います。

「シュレック」シリーズの意義と立ち位置

おなじみ有名なおとぎ話の主人公たちをブラックジョークのパロディにするシュレックですが、今回はグリム童話の「ランプルスティルスキン」がターゲットです。日本ではあまり馴染みのない話で、こちらのウィキペディアでは元ネタのドイツ語読みで「ルンペルシュティルツヒェン」となっていました。私は童話はわりと好きなほうなんですが、この話はまったく知りませんでした。
とはいえ本作の話自体にはあまり関係がありません。あくまでもディズニーが提唱する「夢と魔法の国」に悪意を剥き出しにした「夢もへったくれもない国」というブラックジョークの一要素です。
そうです。そもそもからしてこのシュレックというシリーズ自体が、アンチ・ディズニーという思想を前面に出した大人の悪ふざけ&ちょっぴり私怨のこもった作品です。何せ、元々80年代後半から90年代前半にディズニーの第二次黄金時代を引っ張ったジェフリー・カッツェンバーグが15年来の盟友マイケル・アイズナー社長に追い出されてスピルバーグやゲフィンとドリームワークスを作ったのが始まりですから。そしてアイズナーの暴走で「美女と野獣3」だの「ライオン・キング2」だのとふざけたOVAを作ってズタボロになったディズニーにトドメをさしたのが、2001年の「シュレック」です。「ドラゴンに捕まった眠り姫を救う運命の人」というこれ以上ないほどベタで「ディズニー的な」夢と魔法のプリンセスストーリーを見事に脱構築して見せ、あまつさえ「美醜の問題」「異種族間の恋愛」にまで完璧に納得せざるを得ない回答をずばっと出して見せた結末は、まさにディズニーとは違った角度からの「良質で道徳的な長編アニメーション」そのものでした。
「シュレック」が公開される2ヶ月前ですらディズニーは「わんわん物語2」なんぞ出してるわけですから、そのレベルの差はもう歴然だったわけです。
ご存じの通りこの「シュレック」を決定打にして、ディズニーは完全に経営難に陥ります。2005年にはアイズナーが辞任、直後にピクサーを買収、ディズニーの再建はジョン・ラセターに託されます。そして一昨年2008年に完全ラセター体制で作った「ボルト」によりディズニーは完全な復活を遂げます。
つまり、「ディズニーが迷走していた時期に登場した、ディズニーアニメに匹敵するレベルの大人も見られる長編劇場アニメ」としての「シュレック」シリーズは本家ディズニーの完全復活によって一旦その役割を終えたわけです。本作はそういった環境の中で発表されたシリーズの締めくくりであり、10年続いたシリーズへの供養でもあります。
そんな今作は、よりにもよって「パラレルワールドに迷い込んだシュレックが日常を取り戻そうと奮闘する」ストーリーです。考えすぎだとは思いますが、どうしても見ている間中ずっとこの「日常」と「パラレルワールド」との対比がそのまま「ディズニー・アニメ」と「ドリームワークス・アニメ」に見えて仕方がありません。見慣れているが故に当たり前になってしまった「ディズニー・アニメ」が、おとぎ話のパラレルワールドとしての「シュレック」に取って代わられるが、結局本家のすばらしさを再認識して「ディズニー・アニメ」へと回帰していく話。この構図だと「シュレック」が悪いみたいになってしまいますが(苦笑)、どうしてもこういった「ディズニーの完全復活に対する祝辞」に見えてきます。特にカッツェンバーグからしたら、アイズナーこそ憎けれど、古巣であり自らが黄金期を作り上げたディズニーやアメリカ・アニメ業界には相応の愛着があると思います。しかも本作の最後は一作目に回帰してくるわけです。いうなれば「ライバルの完全復活を素直に祝ったうえで、改めて宣戦布告している」のが本作です。それだけで十分に熱い話では無いでしょうか? 6割ぐらいは3Dメガネの疲労感で私が見た妄想かも知れませんけれどw

宣伝に対して思うこと

本作は内容だけを見れば文句なしの良作です。そりゃ多少ドタバタとせわしない印象もありますが、過去作のファンへの感謝をこめたキャラクターものとしては十分に満足出来る内容です。ただ、私は本作を見るのにどうしても抵抗がありました。というよりも「軽い失笑感」とでも言うべき嫌な感じがするんです。その要因は間違いなく本作の宣伝手法です。「ヒックとドラゴン」を見た際に、「シュレック フォーエバー 特別予告」なるものが劇場で流れていました。こういった特別予告自体はよくあるのですが、藤原紀香が出てきて二言三言しゃべった後に流れる予告編は完全に内容をすべてダイジェストで見せていました。「クライマックスは劇場で!」と藤原某が言った瞬間に「クライマックス手前まで見せたのかよ!!!」と突っ込んだのは私だけでは無いはずです。でまぁ実際に本作を見てみると、本当にラスト2分くらいまでを全部見せているわけですw この宣伝姿勢から見える作品への敬意や愛のなさと、そして質を無視した芸能人テンコ盛りな吹き替え陣が、間違いなく本作の価値を目減りさせています。
幸い何カ所かでは字幕版も公開されていますから、もし本作の宣伝に抵抗があるかたはそちらを選ばれた方が良いかもしれません。さすがに4作目なのでもう慣れましたが、それでも主役2人含めて違和感の多い吹き替え陣です。あまりにも山寺さん一人が上手すぎてドンキーの早口長台詞が浮いちゃってますしね。

【まとめ】

本作はシュレックのフィナーレに相応しいキャラものファンサービス満載の作品です。それだけに鑑賞にあたりシリーズを全てチェックしていることは前提になっています。是非子供連れで冬休みにご覧になっては如何でしょうか? 今年の洋画系冬休み映画はチェブラーシカとこれぐらいしか子供向けがありませんから、十分に選択肢に入ってくる良作だと思います。

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記事の評価