SCOOP!

SCOOP!

今日は

「SCOOP!」を見てきました。

評価:(38/100点) – レオン風アイドルPV映画


【あらすじ】

かつて優秀なカメラマンとして鳴らしていた都城静(みやこのじょう しずか)はいまやフリーの中年パパラッチ。芸能ネタを夜ごと撮り続け、ゴシップ週刊誌へ売って生活していた。ある日、かつての相棒で週刊誌「SCOOP!」の副編集長・定子から若手社員・野火(のび)の教育を頼まれる。いやいやながらも引き受けることになった静と野火のデコボコ・コンビは、スキャンダルを求め夜の街へ消えていく、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 静と野火の出会い
※第1ターニングポイント -> 野火初めての写真
第2幕 -> コンビの活躍と事件カメラマンへの復帰
※第2ターニングポイント -> 静と野火が関係を持つ
第3幕 -> チャラ源の暴走


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【感想】

さて、今日は大根仁監督の最新作「SCOOP!」を見てきました。本作は「モテキの監督最新作」かつ「福山雅治の主演作」と結構なネームバリューでキャパ500の箱でしたが、3組4人しか観客がおらず、さすがにちょっと心配になってしまいました。初日が映画の日だったのでもう見たい人はだいたい見ちゃったのでしょうか。

ここで、いつものお約束です。私、この映画には不満タラタラです。なのでばんばんグチっていきたいと思います(笑)。結末にも普通に触れますので、未見の方はご遠慮ください。また、本作は1985年の「盗写 1/250秒」のリメイクということですが、すみません。私はこの元を見ておりませんのでこちらと絡めてどうこうは語れません。ご容赦ください。

レオンのパロディ

この映画には2本のスト―リーがあります。

1つ目は新人ゴシップ記者の野火の成長の物語です。野火は「この仕事マジ最悪ッスね」が口癖で、完全にパパラッチを見下しています。自分はおしゃれファッション雑誌のライターになりたかったのに、人事異動でゴシップ誌に回されてしまったと不満タラタラです。ところが、ベテランである静と行動を共にすることで、徐々にその「一瞬のチャンスをものにするために頑張り続ける」というパパラッチの仕事にやりがいを見つけていきます。

もう一つはくすぶっているベテラン・静の尊厳回復話です。静はかつて”高尚な”事件担当のカメラマンとして活躍していました。ところが「チャラ源が関係する何らかの事件」のために会社を辞め、フリーの”低俗”パパラッチに身をヤツします。そこに純真な新人の野火がやってくるわけです。静は野火の「私も事件担当をしてみたい」という熱意に押され、”高尚な”事件担当への復帰を決めます。

さて、この2つが組み合わさるということで、これはもうどこからどうみてもリュック・ベッソンの「レオン(1994)」です。「盗写 1/250秒(1985)」をレオン風にアレンジしたのか、たまたま「盗写 1/250秒」がレオンと同じ話だったのかはわかりませんが、意識しているのは間違いありません。ここからは、「でもこれ全然出来てないじゃん」というグチを綴っていこうと思います(笑)。

てんこ盛りのグチ

一番の不満は「芸能パパラッチの扱い」です。上記の2つのストーリー紹介を見ていただくとわかるように、本作における「パパラッチ」の扱いはすごい適当です。一方では「やりがいがあり達成感のある仕事」として描かれ、一方では「低俗で中年になってまでやる価値のない仕事」としても描かれます。特にがっかりくるのが、このアンビバレントに主人公格の静が陥っているからなんですね。そこは嘘でもいいから「パパラッチにだってやりがいがあるんだよ!」っていうのを見せてほしいんです。「ゴキブリかドブネズミ以下なんだよ!」っていうのを本心でいわれちゃ形無しっていうね、、、。

例えば、「レオン」ではジャン・レノ扮するレオンは殺し屋としては超優秀ですが、学がなく文字も読めません。その一方でナタリー・ポートマン扮するマチルダは、文字は読めるが家族の復讐をする力がありません。この2人は完全に相互補完できるんですね。だからこそ、物凄い年齢差がありながらもそこに純愛が生まれるわけです。

では本作はどうかというと、静には写真を撮る経験と策略があり、野火には「高尚なことをしたい」という情熱があります。ここで補完していると言えなくはないのですが、そうすると前述の「結局野火はパパラッチを見下しているのか?」という部分に戻ってしまいます。

これは結構深刻な問題です。劇中でも2人の編集長の「週刊誌SCOOP!はどうあるべきか」という意見対立で表現されています。片や「SCOOP!はゴシップ誌であり、ラーメンやグラビアやスキャンダルなどの低俗なものを載せるんだ」というもの。(※余談ですがラーメンがとばっちりを食らってるのはちょっとカチンときます(笑)。)片や「SCOOP!だって高級雑誌には出来ないゲリラ的な方法で事件のスクープ写真を撮れるんだ」というもの。どっちにしても事件スクープと芸能ゴシップに明確な格差があるように描かれ、そこを否定した馬場が敗れてしまいます。

そして最終的には、静が実は事件カメラマンであり、マスコミの中でもっとも高尚である(とされる)「戦場カメラマン」に憧れていたという話にまで発展します。静自身もはっきりとパパラッチを見下しまくってるんですね。そうすると、そもそも芸能ゴシップの楽しさを理解して良きパートナーとなっていた野火の立場はどうなるんだという話があり、じゃあもう前半の芸能ゴシップ文脈がまるまるいらないんじゃないかと言う話になります。あくまでも「実力のある静が低俗な中年パパラッチに身をやつして己を戒めていた」ってな具合なんですね。そんなの「バットマン・ビギンズ(2005)」だったら開始30分で終わらせてるところじゃねぇかと。たぶん本作でやりたかったのは「露悪的だけど魅力的で実力もあるダークヒーロー」だと思うんですね。文句ばっか言っててゲスいけど、やる時はやる男。それが同一作品の後半で前半を全否定するという、、、さすがにどうなんでしょうね。

さらに言えば、この映画全体が顔のどアップとセリフで全部説明するタイプのテレビドラマ演出であり、しかも三幕というよりは前半後半でガラっと話が変わります。ですから、あきらかに不法なカーチェイスをやってるのにその件が何のお咎めも無いのは良いのかとか、バレバレの大砲を構えてるのに静だけ捕まって野火が逃げられた意味がわからんとか、最後娘だけ助けて自分は残った意味がわからんとか(※結果チャラ源の罪が重くなってるし)、そういうのは「どうせテレビドラマ調の映画だし」で割り切るしかありません。

良かった所:リリー・フランキー

グチばっかりもなんなので良かった所に行きましょう。なにせ一番いいのはリリー・フランキーです。というか全部持って行き過ぎ(笑)。殴り込みしかり最終盤しかり。もともと胡散臭いおっさん役が多いんですが、本作では輪をかけて怪しくなっておりとても魅力的に描かれます。これは大当たりです。一方の福山雅治は、良くも悪くももいつものアイドル要素が消せてません。静はもっとゲスいキャラじゃないとストーリーが成立しないんですが、なんかこうお上品になっちゃうんですね。これも彼のオーラの賜物なのか、それとも単に演技がアレなのか意見が別れる所です。
この映画自体がレオンを通って最終的には「ゲスいけど格好いい男の生き様/みんなが憧れる男の背中」という所に行くので、そういう意味では正しく福山雅治のプロモーションビデオです。ですから、福山雅治さえ格好良ければストーリーはどうでもいいって話はあります。

【まとめ】

穿った見方をすると、本作は福山雅治の「脱・アイドル化」を狙った企画ものです。リアルで結婚したし、もうアイドルって売り方でも無いだろうと。そのイメージチェンジとしての「ゲスいカメラマン」役なわけですが、結果としては「ゲスなはずなのに全然ゲスに見えない」という微妙なところに着地しています(笑)。正直これを見るならオリジナルのレオンを見たほうが手堅いですが、福山雅治ファンなら見ておいたほうが良いと思います。確かにいままでの映画の福山雅治よりは雰囲気が格好いいです。どっちかというとテレビドラマの福山ファンよりはオールナイトニッポンのファンでしょうか(笑)。

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記事の評価
グランド・イリュージョン 見破られたトリック

グランド・イリュージョン 見破られたトリック

今日はレイトで

「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」を見てきました。

評価:(20/100点) – 90億円かけたVシネマ


【あらすじ】

マジシャン義賊団・ホースメンは前作から一年間地下に潜っていた。そんな休止活動中のおり、リーダーのディランから新しいミッションを与えられる。次なるターゲットはモバイルのセキュリティ会社。個人情報を抜き取る悪巧みを暴露するため新作発表会に乗り込むホースメン達だったが、実はこれは宿敵の罠だった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> ホースメンの新人と、1年ぶりの復帰。
※第1ターニングポイント -> マカオに飛ばされる
第2幕 -> マカオでのチップ泥棒
※第2ターニングポイント -> ディランと合流する。
第3幕 -> アーサー親子退治大作戦


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【感想】

今日は、「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」を見てきました。たま~にある映画の日を初日にするパターンの変則公開作です。レイトショーでしたが、意外とお客さんが入ってました。
いきなりですが、本作は結構アレな感じになってまして、正直そんなに書くことが浮かびません(笑)。というかあんまりモチベーションの上がらない作品でした。なのでサラっと要点だけ書かせていただきます。

滅茶苦茶

本作は、「グランド・イリュージョン(2013)」の続編です。前作はいわゆる変人チームものとして、B級ながら結構良くできてました。手品の神様「ジ・アイ」という幻のチームに入るため、個性的なマジシャン4人組「フォー・ホースメン」がねずみ小僧よろしく上流階級をだまくらかしてお金を毟り取っていく「痛快ピカレスク映画」です。前作は、ホースメンのメンバー達のキャラクターを上手く立てながら、強烈にB級臭い「どんでん返しサスペンス」みたいなのを展開しており、楽しかったです。いわゆる「シネパトス映画」ですね(笑)。
当時乗りに乗っていたジェシー・アイゼンバーグと、一部でカルト的な人気があったウディ・ハレルソンの起用も手伝って、前作は制作費7,500万ドルに対して3億ドル近くを稼ぎ出しました。

そんな「グランド・イリュージョン」の期待の続編ですから、これはもうキャラモノに決まってるじゃん!、、、、と思っていると、なんとチームの紅一点アイラ・フィッシャーが降板しております。いきなり「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン(2011)」や「ベスト・キッド2(1986)」並の唐突なヒロイン交代劇に驚いていると、さらにですね、話の流れについていくのが精一杯なグダグダっぷり。基本的に今回はダニエル・ラドクリフ(ハリー・ポッター)が敵なんですが、この敵とのパワーバランスが凄い分かりにくいんです。前作でB級感むき出しで好評だったラストの「どんでん返し」を意識するあまり、作中に何回もどんでん返しを重ねていくため、おまえ「ワイルドシングス(1998)」か?っていうくらいの頻度で、もうなんか行き当たりばったりにしか見えないんですね。「ハリー・ポッターにはめられた!」→「でも出しぬいてやったぜ!」→「やっぱりはめられてた!」→「まだまだもっかい出し抜くぜ!」→「モーガン・フリーマンにもはめられた!」→「甘いわ!また出しぬいたぜ!」・・・・・これがもう2回くらい重なります。ワンパターンっていうよりも、なんかしつこいっていうか、適当っていうか、、、なんなんでしょう。
FBIは無能な上に何故か海外まで出張ってくるし、最高セキュリティのチップを盗むっていってるのにやってることは防犯カメラ1個で見破られるようなトリックだったり、細かいディテールも結構酷いです。

さすがになんかこの映画おかしいぞ、、、と思って調べたら、監督が変わってるんですね。前作は「トランスポーター(2002)」シリーズでお馴染みのルイ・レテリエ。対して今回は悪名高き「GIジョー バック2リベンジ(2013)」の朱 浩偉(ジョン・マレー・チュウ)。これね、、、だめだってこういうことしちゃ(笑)。どうせ誰がやってもキャラ人気でお客さんは入るからっていうこの、、、ね。

しかも、このシリーズって手品が題材ということで非常に映像化が難しいんですね。だって今の映画ってCGという名前の種も仕掛けもバリバリあるトリックを普通に使ってるんですから。スーパーマンはCGで空を飛べるし、ハリー・ポッターだってCGで姿を消せます。だから映画で手品を扱うってそもそも無理ゲーなんです。本作でも、手品の後に胡散臭い理屈が出てくるんですが、「いや、でもそれCGっしょ」というのが随所にあり結構冷めます。映画内でお盆がビジネスバッグに突然変わっても、別に驚かないんです。

そんなこんなで、作品中のホースメンの手品はほとんど魔法化しています。魔法使いチームのケイパー映画って言えば聞こえは良いんですが、ただあんまりお互いの能力を補完したりっていうチーム戦略は無いんですね。特にウディ・ハレルソン演じるメリットの催眠術は、もうなんでもアリです。あまりに便利すぎるため、敵側にも同じ能力の双子をおいちゃうくらいに(笑)。作ってる方も結構やっつけ仕事だなっていうのが露骨です。

【まとめ】

もともとがチームモノの続編なのでキャラさえ立ってればOKみたいな所はあるんですが、そのせっかくのキャラがボロボロのストーリーで完全に潰されちゃってました。あまつさえ前作を全否定するラストをもってくるって、一体この映画は誰向けなんでしょう。シーン単位では勢いがあるので、大枠にさえ目をつぶれば耐えられないことは無い、、、というぐらいのかなり厳しい印象でした。

超余談ですが、魔法使い軍団の敵が悪い顔のハリー・ポッターって時点で悪ふざけだよな、、、って感じなので、そこで爆笑できるセンスがあればいけると思います、、、。

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後妻業の女

後妻業の女

9月の映画の日は

「後妻業の女」を見てきました。

評価:(75/100点) – 大竹しのぶハンパねぇ!圧巻のブラック・コメディ


【あらすじ】

小夜子は資産家男性と結婚しては殺して遺産を奪う「後妻業」の女である。今度のターゲットは元女子大教授の中瀬耕造。いつもどおり首尾よく遺産を奪ったものの、耕造の次女・朋美は小夜子の胡散臭さに気付いてしまう。朋美は友人で法律事務所勤務の守屋に相談し、私立探偵を雇って調査することにする、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> 小夜子と耕造
※第1ターニングポイント -> 耕造の死
第2幕 -> 本多探偵の調査
※第2ターニングポイント -> 本多が柏木を脅す
第3幕 -> 決着


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【感想】

今日はですね、映画の日ということで「後妻業の女」を日劇で見てきました。高齢の夫婦で4割ぐらいは埋まっていました。劇場で流れる予告の「通天閣やない!スカイツリーや!!」というアレがあまりにもアレすぎてちょっと不安だったのですが、、、これ実際に見てみるとかなり面白いです。もちろんギャグが全体的に古臭いというのはあるんですが、終盤は結構本気でツボに入りました(笑)。悪いことはいいませんので、予告でちょっと引いたかたも見たほうがいいと思います。

今回は核心部分のネタバレは無しで書いていきますので、そのあたりはご安心ください。

男と女の化かしあい

本作は、ブラックコメディとピカレスクのハイブリッド映画です。

メインストーリーとしては「男と女の化かしあい」というものです。主人公・小夜子の「後妻業」は女が男の遺産を狙って遺言を書かせた上で死ぬのを待つという”捕食”の犯罪です。しかし、本作では最後のとあるオチで「いやいや男側だってある程度そういう女側の打算は看破してるんだぞ」というのを見せます。女は男の最後を看取るかわりに遺産をもらう。男は人生の最後を楽しむために遺産を渡して女に相手をしてもらう。この両者の打算的なWin-Win関係が、本当に悪いといえるのか、、、ってなところです。要は「結婚って実際はそういう打算的な部分もあるんだよ」っという教訓話ですね。これは本当に身につまされます。

犯罪モノから怒涛のブラックコメディへ

こういったシリアスな大人の(というか高齢者向けの)ストーリーをベースにして、終盤には怒涛のブラックコメディが展開されます。もうですね、大竹しのぶ扮する小夜子の魅力が全てを掻っ攫っていきます。それも反則じゃないかというレベルで(笑)。

本作には、大勢の”小悪党”が登場します。結婚相談所・所長で小夜子に高齢者のカモを紹介する柏木。探偵の癖にいろいろ黒い本多。ホステスで柏木を金蔓にするマユミとリサ。金庫破りに、ヤクザも見る獣医。登場人物が少ないにもかかわらず、出てくる人がみんな悪党だらけです。それもわりとショボい小悪党。そんな中にあって、とにかくなんせ凄いのが小夜子です。ネコはかぶるわ、人は殺すわ、遺族にドス効かせるわ、銀行員に小芝居打つわ。もうやりたい放題です。この小夜子がですね、最初は本当にうざくてうざくて仕方ないんですが、鶴瓶演じる舟山が出てきてからは一気に人間臭くなるんですね。急にホツれ始まるんです。このギャップが凄い良くて、なんかもうこのキャラだけで全部いいんじゃないかというアイドルオーラを感じます。

序盤はわりと大人しめのピカレスク(=格好いい犯罪者もの)が展開されるのですが、だんだんギャグがひどくなってきて、三幕目は完全に悪ふざけの大ブラックコメディ祭りになります。この祭りの勢いを一身に担っているのが小夜子の実の息子・岸上博司君です。
この博司君がですね、30歳にしてニートかつキ◯ガイかつ獰猛かつ小心者という最高に頭の悪い狂言回しでして、もはや会話が通じないレベルのスーパーコントを展開して来ます。博司君が出てくるパートはことごとくウザく、ことごとく面白いです。ボケの博司君とツッコミの柏木という布陣で展開しつつも、後半は柏木に起きた”ある事”によってツッコミすら不在になり、一切収拾がつかなくなります(笑)。

このあたりは、私それこそ「マルホランド・ドライブ(2001)」のドタバタ殺し屋パートを思い出しました。ゲスな犯罪者達にしょうもない間抜けなドタバタコメディをさせることで笑い飛ばしちゃおうというスノビスト的なセンスですよね。それこそ北野武の「アウトレイジ(2010)」もそういう方向性ですし、なんかこう「90年代的日本映画の臭い」みたいなものを感じてとても良かったです。それも、序盤がシリアス/シニカルであればあるほど、後半の超絶ドタバタコメディでの「ゲスな犯罪者達への軽蔑込みの笑い飛ばしっぷり」が加速するわけで、この辺のバランス感覚は本当にすばらしいです。

【まとめ】

書き方が難しいんですが、とても日本映画らしいバランスの文芸コメディ映画でした。つい最近”ザ・ハリウッド”な某コスプレコント映画を見たばっかりだったので、余計に安心して見れたのかも知れません。こういう良作がもっと流行ってほしいです。そういう意味では、一番のネックはあの予告編ですよね(笑)。あのド下品なオヤジギャグ予告だと、じぃちゃんばぁちゃん以外は劇場に呼べないです。もっと大竹しのぶのはじけっぷりを前に出せばいいのにと、そこだけがちょっと不満でした。

ちなみにこういった内容の作品ですので、当たり前ですがポリティカル・コレクトネスとかそういう道徳的なものは一切ありません(笑)。たぶんフェミニストの方が見ると気が気じゃないくらい怒り狂うと思いますので、ご注意下さい。「君の名は。」で恋人たちのロマンチシズムに浸りきった後にはね、コレでも喰らえ!(笑)
超オススメします。

■ おまけ(ネタバレあり)

この映画は、最後のオチが本当に良いと思うんです。最後に見つけた遺書って、本来は妻である小夜子が最初に見つけてしかるべき場所にあるんですね。小夜子にもし少しでも良心があったなら、当然仏壇に手を合わせて、お線香が足りなくなって、そしてサクっと遺書を見つけて、サクっともみ消せたんです。これは、耕造の最後のテストなんですね。「お前が遺産狙いなのは感づいてるぞ。でもそれは良い。きちんと”妻”を演じてくれるなら遺産は渡す。でも本当にお金が欲しいだけなら、そりゃあげないよ」という茶目っ気たっぷりの挑戦状です。そして見事にテストに不合格という、、、耕造/小夜子共々いいキャラでした。

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