本日の1本目は
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」です。
評価:
– ドラッカーがまったく関係ない (‘A`)【あらすじ】
川島みなみは親友で野球部のマネージャーの夕紀が入院したのを機に代役として臨時マネージャーに就任する。しかし、みなみは初日でいきなり部員達とぶつかってしまう。学校帰りに駆け込んだ本屋でマネージャーに関する本を探した彼女は、そこでドラッカーの「マネジメント」を購入する。マネージャーはマネージャーでも「管理職」の本を買ってしまったみなみだったが、彼女は「マネジメント」に書いてある教えが野球部にも活かせるのではないかと思い実行に移すことにする、、、。
【感想】
本日の1本目は「もしドラ」です。初日でしたが、驚いたことに中学生ぐらいの子と親子連れとアイドルオタクっぽい人が入り乱れてそこそこ観客が入っていました。かなり異様な組み合わせの客層ですw
そもそもの話し
本作はいろいろと「曰く付き」な作品ですw 元々この原作の仕掛け人は某アスキーに居た加藤さんという方でして、彼がダイヤモンド社に移ってやったことと言うのが「アスキー的な方法論」をお堅いダイヤモンド社に持ち込むことでした。すなわち「オタク的なもの」と「ビジネス的なもの」のコラボです。原作はそれだけを見るとまったく面白くないラノベですが、それをダイヤモンド社のビジネス書シリーズで売ることで「ドラッカーの入門書」という付加価値をつけることに成功し、見事にドラッカーを読めない(めんどくさがりやな)叔父様達への「HOW TO本」に仕立てたわけです。
ところが、、、ここからが面倒なのですが、、、原作者の岩崎夏海さんはあくまでも「自分の作品がおもしろいから売れたのだ」という自意識が強いかたでして、この加藤さんのやり方にものすごい反発しています。ぶっちゃけた話し、岩崎さんは文庫化するときにはダイヤモンドから版権を引き上げて別の出版社でお堅い装丁にして出すとまでおっしゃってました。なので、実は岩崎さんとしてはNHKでやってるアニメ化にはかなり消極的でして、どちらかというと実写の本作の方に力を入れています。元々、岩崎さん自身は秋元康の事務所で放送作家をやっていたバリバリの秋元チルドレンで初期のAKB48にも関わっていますので、映画で前田敦子が主役をやって主題歌がAKB48なのは当然の流れです。
ドラッカーが関係無い。
という背景の元での本作の話しに行きます。確かに原作には忠実なのですが、それを映画にすることでより直接的に問題点が浮かび上がってしまっています。
一番の問題はーーそしてこれは根本的な問題ですがーー本作の内容はドラッカーのマネジメントと全く関係がありません。本作は「高校野球のマネージャーがドラッカーのマネジメントを読んで、経営の方法論を高校野球部に持ち込んで成功する」というストーリーだと勘違いされがちですが、実際にはただ単に「天才の集まりなのに団結力と精神力に問題がある高校野球部員が悶え合った末に仲間の死で一致団結して力を発揮する」という大変安っぽい話しです。
本作には技術論や効率的な方法論はまったく出てきません。基本的には「みんな頑張るぞ!!!!」という根性論でなんとかなってしまいます。唯一マネジメントっぽいのはチーム分けをして内部競争を起こすという部分ですが、それも野球部であればどこでもやっていることなので別にマネジメントがどうこうではありません。
まったく野球を描いていない
ですので、本作はROOKIESと同じくただただ仲間がイチャイチャしているだけのどうしようもない作品です。敵校が誰かも良く分かりませんし、そもそも味方も主要人物以外は良く分かりません。ピッチャーとキャッチャーとショートと代走ぐらいしかまともに名前も出てきません。なんとなく雰囲気だけで野球っぽい体裁を整え、なんとなく野球っぽいことをやっているだけです。そもそも応援団がピッチャー交代でもないのにピッチャーのテーマ曲を演奏するなんぞ聞いたことがありません。守備側のブラバン応援は高野連の禁止要項です。この映画の監督はそんな常識も知らないのか!!! 相手チームに失礼だろ!!!!
本作で映し出されているのは野球ではなく、ただの悶えあいごっこです。大振りして相手を油断させて次でホームランを打つというのも、結局は相手を舐めているだけで作戦でもなんでもありません。2塁ランナーがいるのに1塁ランナーが8歩もリードするのはリスクこそあれメリットはありません。無茶苦茶です。劇中ではイノベーションとか言ってますが、ノーバント・ノーボール戦法もまったく新しくありません(※往年の権藤監督の横浜ベイスターズ1998年~2000年はまさにノーバント・ノーボール戦法でした)。ちなみにこの権藤監督の方針と酷似した戦法をマネジメントの観点から実戦したのがオークランド・アスレチックスのGM:ビリー・ビーンで、2003年に「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」として彼の考えが本にまとめられ日本でも知られるようになります。
ぶっちゃけていうと、そもそもからして原作は明らかにこの「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」に影響を受けています。ただ岩崎さんが野球に詳しくなかったのか、「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」の肝心なところをパクリ損なっているのがなんとも微妙です。
役者も野球の動きがまったくなっていない
そもそもロクに場面もないくせに野球の動きがおかしいです。
特に一番酷いのがピッチャーの慶一郎こと瀬戸康史の動きで、どん引きするぐらい「手投げ」です。左足がまったくあがらない上に腰が回っていないので、砲丸投げみたいなフォームになっていますw しかも運動音痴で足腰が弱いのか、投げた直後にちょっと可哀想になるぐらい体が一塁側に流れます。ストライクが入らないのは精神論ではなく明らかにフォームの問題と筋力不足です。つまり練習不足。せっかく良い役をもらったんだからせめてキャッチボールぐらいは練習しようよ、、、、別にいいですけど。
また、バッティングも悲しいぐらいヘッドが寝ています。バットの動きとボールのはじき方が不自然なので打球はCGだと思うんですが、それにしてもちょっと野球映画としては、、、、無理でしょう。
ちなみに名前が分かりませんが、レフト(サード?)の子がショートのエラーをカバーしたときだけはちゃんとした動きでした。もしかしてメイン所以外はそこそこ出来る人をつかったんでしょうか?
【まとめ】
とまぁ書いてきたように大変残念な作品となっています。ほとんどが原作の不出来による問題ですので映画の制作側に言っても仕方がないのですが、、、所詮は人気作品を人気アイドルで実写化するというだけの企画だって言うことです。唯一良かったのは、前田敦子や峯岸みなみよりも川口春奈が遙かに可愛くて遙かに魅力的だったというのが分かったことです。前田さんも頑張ってはいたんですが、、、どうもね、、、。彼女に演技させるなら、「マジすか学園」1期みたいになるべく喋らない役の方が良いと思います。しゃべると途端にボロがでてしまいますので。
オススメはなかなか難しいですが、野球のことやビジネスのことをまったく知らないのであれば意外と楽しめるかも知れません。川口春奈を見に行く目的ならギリギリありではないでしょうか。
また、どうでも良い部分ですが、前半30分ぐらいのホンジャマカ石塚と青木さやかのセンテンスは思わず劇場から逃げ出したくなるほど恥ずかしいです。しかもストーリー上はまったく意味がありませんので、本当になんでいれたんでしょう?
大変残念な作品でした。
「もしAKB48が「タッチ」をやったら?」に題名変えればしっくりくるとかでは?笑