バタフライエフェクト3/最後の選択

バタフライエフェクト3/最後の選択

バタフライエフェクト3/最後の選択
評価:(85/100点) – 第一作を踏襲したタイムスリップ・サスペンスの傑作。続編制作のお手本。


■ あらすじ

タイムスリップ能力を持つサム・リードは過去に行って事件現場を目撃することで、警察の捜査に協力していた。ある日彼の元にかつて殺された恋人の妹が訪ねてくる。彼女は犯人として死刑が迫ったロニーが無実であると確信し、真犯人の捜査を依頼してくる。彼は恋人の殺害現場へのタイムスリップを承諾するが、つい過去に介入してしまう。そこから全てが狂い始めた、、、。

■ 三幕構成

第1幕 ->サムの能力・人柄紹介
 ※第1ターニングポイント -> サムがレベッカの殺害現場へタイムスリップする
第2幕 -> 連続殺人事件の捜査
 ※第2ターニングポイント -> ビッキーが殺されサムが逮捕される
第3幕 ->解決編

■ 感想

傑作!!

この作品はバタフライエフェクト・シリーズの三作目ですが、前二作との直接のつながりはありません。実はこのシリーズは、第一作目がSF史に残る大傑作だった反面、二作目がとんでもない駄作でした。何故かというと、第一作目を傑作たらしめた重要な要素が二作目でごっそり削げ落ちてしまったからです。すなわち、「過去を変えたところで状況が改善される訳ではない(むしろ悲惨になる)」「タイムスリップは体への負担が高く寿命が縮まる」という事です。そしてもっとも重要なのは「状況を大きく変えたいのであれば、その状況の根本を変えるしかない」という事です。第一作目では物語設定の根本に立ち返ることで、それまでのストーリーを全てひっくり返し、結果ラブストーリーとして非常に上質な情緒を表現しました。このどんでん返しであり「厳しい現実的な完全解」こそが、バタフライ・エフェクトを名作にのし上げた大きな要因です。
さて、シリーズ三作目の本作はまさにこの第一作目の要素をリファインした作品です。とてつもなく控えめに張り巡らされた伏線とも気づかないほどの伏線は、まさにクライマックスの瞬間に全てが一点に集約されます。その見事さといったら、そんじょそこらのサスペンスには太刀打ちできないほどのレベルです。さらにその集約した一点というのが、前述の第一作目の要素を忠実に再現しているわけです。これは本当に凄いことです。ここからは「物語原型」という概念に焦点を絞って、人気作・傑作の続編について考えてみましょう

物語原型について

物語原型の話をする前に、まずはログラインについておさらいしましょう。「知ってるわ、ボケ~。」というかたは、次のタームまで読み飛ばしてください。
よく小学校の国語のテストで「物語のあらすじを書きなさい」という問題が出ると思います。僕も散々やりました。例として、みんなが知ってる「桃太郎」について考えてみましょう。地域ごとのバリエーションとかは特に気にせずにお願いします。
桃太郎のあらすじを乱暴に書いてみますと、、

ある日、川で洗濯していたおばあさんが川を流れてきた桃を見つけました。それを割ったら男の子がでてきます。男の子は正義感が強く、みんなを苦しめる鬼退治に出かけます。桃太郎と名付けられた男の子は、道中おばあさんにもらった吉備団子で犬・猿・キジを味方に付けて、見事に鬼を退治しました。めでたし、めでたし

こんな感じです。すごい乱暴すぎてバツつけられそうですが(笑)。
これはあくまでも「あらすじ」です。ではこれをログラインに直して見ましょう。ログラインとは「あらすじ」から具体性を徹底して削った「話の根幹」です。

ある所に突如やってきた「よそ者」が、困っている人を助けるために色々な仲間を集めて、ついには悪い奴を退治する話。

はい、こうです。これなら100点(笑)。
ここで、桃太郎のことは一旦忘れて上記のログラインだけを考えてください。さて問題です。上記のログラインを読んであなたが思い出す作品はなんですか?
ロード・オブ・ザ・リング?七人の侍?それともゲームのドラゴンクエスト?
全部正解です。もっと言うと西部劇の八割はこんな感じです(笑)。
すなわち、ある作品や映画を読んだり見たりしてログラインに起こすことで、物語の一番基本的な流れが分かるわけです。そして全然印象の違ういろんな作品が、実は同じログラインを共有していることに気付くはずです。こういったログラインの事を物語原型と言います。

バタフライエフェクトの物語原型

さて本題です。本作のストーリーをログラインとして端的に表すと、「ある特殊能力をもった人間が、嫌な過去を変えるために色々試みるが、挫折し、遂には根本的に世界を変える話」です。

つまり、第一作目と全く同じ物語原型を持っています。決定的に違うのは、第一作目はあくまでもラブストーリーであり、本作はサスペンスであるという点です。すなわち「バタフライ・エフェクト1」と「バタフライ・エフェクト3」は、全く同じ物語原型を共有しながら表面に出てくる肉付けが違う作品ということです

素晴らしい。まさに続編制作の鏡です。単体で見ても楽しめて旧作のファンも喜ぶ、まさに最高の手法です。セス・グロスマン監督Good Job!

■ まとめ

ここまで書いたように、本作は傑作である第一作目の安易な「焼き直し」に留まらない、しかし確実に忠実な作品です。
一作目を見た人も、はじめてシリーズを見る人も間違いなく楽しめる超良作です。惜しむらくは公開館が少ないことですが、是非、見てください。遠出してでも見る価値があります。オススメです!

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記事の評価
グッド・バッド・ウィアード

グッド・バッド・ウィアード

映画の日で安かったんで、レイトで「グッド・バッド・ウィアード」を見ました。
評価:(70/100点) – 楽しいけど、けどね、、、、。


あらすじ

る殺し屋が宝の地図を手に入れる仕事を引き受ける。一方、ケチな泥棒はひょんなことからその宝の地図を手に入れてしまう。こうして「殺し屋」と「泥棒」とそれを狙う「賞金稼ぎ」の追いかけっこが始まった。気がする。

感想

国映画ってあんまり見ないんですけど、ある意味レベル高いな~と素直に感心しました。っと取りあえず褒めるところから始めます。後半は悪口になりますので、好きな方は前半だけでやめといてください。
ず第一に「グッド・バッド・ウィアード」で褒めるべき点は、そのアメリカナイズされまくったエンタメ感です。これ、おそらく俳優の顔にモザイクかけて上映すればみんなハリウッド映画だと勘違いすると思います。特にドンパチの多さとアクションシーンの作りの強度は抜群で、本当に良い「バカ映画」に仕上がっています。まぁこのドンパチを後半でボロカス叩きますが、それはそれ。爽快感は残りますし、仕事帰りの適度に疲れた脳味噌で見るにはうってつけです。
者陣ではソン・ガンホがいいですね。ファンには怒られるかもしれませんが、出てくるだけで笑える「バカっぽさ」は間寛平レベルです。存在感抜群。ネットで画像検索すると普段の真面目そうな顔ばっかり出てきますが、コメディ・レリーフとしてもっと活躍してほしいです。
一方のイ・ビョンホンですが、なかなか良いけどイマイチ。この中途半端な評価の原因は、その「ジョニー・デップ感」です。良くも悪くも、演じ方がジョニー・デップなんです。具体的には「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキャプテン・ジャック=スパロウと「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のスウィニー=トッドです。ちょっと斜視で、いつも遠くを見てる感じで、無表情で人を殺せるタイプ。なんちゅうか超ステレオタイプな「ジョニー・デップ、マッドver.」で、ちょっと大丈夫かと思うくらいです。物まね紅白歌合戦状態。下手じゃないから貶しづらいですが、演技指導で「ジョニー・デップでお願いします」とか言われたんでしょうか?
最後のチョン・ウソンは一カ所見せ場がありますが、活躍の割に印象が薄いです。途中から仲村トオルにしか見えませんでした。残念。そしてチョン・ウソンと仲村トオルのファンの方々、すみません。
でも役者陣は基本的にすばらしいです。言葉がわかんないからかもしれませんが、かなりイけてます。
以上、褒め終了。ここからはちょっとテンションあげます。韓流ファンの方はページを閉じてください、マジで。


まず大前提としてこの映画を私は結構好きです。少なくとも今年公開された数多ある邦画と比べてもかなり上位に入ります。が、、、、が、、、、どうしても奥歯に物が挟まるのはひとえに以下の二点に依ります。
1) 政治的要素が強すぎる。しかも不快なレベル。
2) 「続・夕陽のガンマン」のリメイクorインスパイア作品と謳っている。

1)は言わずもがな。ほとんどギャグのレベルで中国or日本に対するしつこい対抗心がむき出しです。難しいのは、日本人の僕が見て不快なシーンもたぶん韓国人は大喜びで見てるんだろうなというこの文化ギャップ。自分は比較的に寛容な方だと思いますが、日本人の大群の中をチョン・ウソンがライフル銃片手に馬で逆送して皆殺しにする所とか、、、、、何だかね。
こういうドメスティック(=その国・土地特有のもの)なシーンを入れると、国際的なマーケットで売りづらくなるのは当たり前。そりゃ日本で受けないわ。映画としては面白いのにもったいないって言うか、それでも入れるところが韓国っぽいっていうか、、、、、ね。
2)は1)以上に、怒ってます、私。噴飯ものとはまさにこのこと。ご飯ブハって噴きますよ。「続・夕陽のガンマン」っていうのは言わずもがなですが、監督セルジオ・レオーネ、主演クリント・イーストウッド、音楽エンニォ・モリコーネのスリートップが送るマカロニ・ウエスタンの超金字塔です。
まず思うのが、「マカロニ・ウエスタン舐めてるのかワレ」ってこと。このキム・ジウン監督はマカロニ・ウエスタンを「なんか渋めの男がドンパチやって、ドンパチやって、酒飲んで、ドンパチやる話でしょ」とか思ってるのでしょうか?
ち・が・う・か・ら!
マカロニ・ウエスタンは乱暴に言うと「売れなかったアメリカの俳優とイタリアン監督が予算の関係で旧ユーゴの砂漠とかで撮影した、主流からはほど遠いカウンターカルチャーとしてのヘンテコ西部劇」なんですよ!要は主流派に対する反骨精神。そして、当時終わりかけていた「古き良きアメリカ純正西部劇」に対する劇薬なんです。ドンパチだけでは断じてない。この「グッド・バッド・ウィアード」を「続・夕陽のガンマン」のオマージュとして作るなら、何故韓国人の国際的な立ち位置を最大限利用しないのか!細かいことは政治的になるので控えますが、キミら韓国人の立ち位置はまさに反骨精神を出せる位置だろ!
おじさんガッカリです。こう言うの見ると、口はでかいのに韓国人の意識はまだだいぶ低いなと。

最後に

ちょっと長くなりましたが、この映画、私的には良作です。
ただ、DVDで見ても面白くないかな。大画面でちょっと頭を空っぽにして見るのが良いでしょう。
ということで、暇と小遣いがある人は是非行ってください。
見終わったら、是非お近くのレンタル屋で「続・夕陽のガンマン」も見てね。

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