本日は渋谷で二本+短編一本を見てきました。
一本目は「スナイパー:(神鎗手)」です。
評価:
– 燃える漢の狙撃戦!【あらすじ】
腕を見込まれて香港警察狙撃部隊に引き抜かれたOJはフォン隊長の下で一人前の狙撃手になるための訓練を受けていた。彼の部隊にはかつて狙撃大会で四連覇を達成し唯一500mのピンショットを可能にした天才リン・ジンが居たが、彼は過失致死で服役中であった。そんな天才リン・ジンは四年の刑期を満了した後、マフィアに手を貸して警察達を次々と射殺していく。果たして四年前に何があったのか?そしてリン・ジンの目的は?
四年前の真相が明らかになったとき、フォン隊長、リン・ジン、OJの三人の天才達が激突する。
【三幕構成】
第1幕 -> OJの特訓。
※第1ターニングポイント -> タオの脱走。
第2幕 -> リン・ジンとOJとフォン隊長
※第2ターニングポイント -> タオの銀行強盗開始。
第3幕 -> リン・ジンの復讐
【感想】
本日の一本目は香港映画の「スナイパー:」です。アクション映画といいますか香港ノワールといいますか、男臭~い熱血映画です。関東ではシネマ・アンジェリカでしか上映していませんが、その割にはあまりお客さんが入っていませんでした。正直もったいないです。めちゃくちゃ面白いですよ。
また、例によって以下はネタバレを多く含みますので、未見の方はご注意下さい。
本作の構造
さて、本作には三人の魅力的な男が登場します。香港映画界の宝にして近年では「ダークナイト」にも出ていた、そしてハメ撮り流出で休んでいたエディソン・チャン。ちなみに本作はお休みする前の最後の作品です。それに台湾の90年代を代表するアイドル歌手リッチー・レン。最後に中国の近年最高のアイドル・ホアン=シャオミン。このイケイケな3人が、ある意味歪んだ三人の男達を熱演します。でまぁ演技もさることながら、この三人のキャラの立て方が抜群に上手いです。
フォン隊長は、リン・ジンに射撃の腕が叶わず、出世レースでもリン・ジンに先を越されさらには妻がうつ病で自殺未遂までしてしまい自分の能力・境遇に強烈なコンプレックスを持っています。そのため、リン・ジンをハメてまで掴んだ狙撃隊長の座を唯一「自分がトップを張れる場所」として自己実現の場にしており、自分の言うことをあまり聞かないOJに対して激烈な反応を示します。
OJは父親がケチな雀荘の店番(=小者)だということに猛烈な不満を持っています。そしてその父親への反抗心から強烈なエリート意識があり、自分の能力に絶対的な自身を持っています。時には過信や傲慢とも取れる態度で独断専行も辞しません。
リン・ジンは孤高の天才肌で、人付き合いがよくないものの、その絶対的な射撃能力でいち早く出世していきます。しかし新婚早々に起きた銀行強盗事件でフォンの偽証により懲役刑を食らい、さらには八つ当たりをしてしまった妻は謝罪する間もなく事故死してしまいます。それ故にフォン隊長に対して恨みを募らせており、マフィアに手を貸してフォン隊長をおびき出し復讐を行います。
この三人をパッと見れば分かるように、明らかに悪であるリン・ジンが一番まともです。ともすればヒーローに描かれても可笑しく無いキャラクターなんです。っていうかセガールがやっても可笑しく無い(笑)。しかし本作ではあくまでも狙撃隊の新人・OJをメインとし、先輩二人の確執からくる決闘を描いていきます。パッと見ると善悪の二項対立みたいに見えかねないんですが、構造的にはOJのメンター(=師匠)はフォンでもありリン・ジンでもあるわけです。OJは、フォンから射撃の基本と心得を習い、リン・ジンからは独特の呼吸法とロングショットのコツを習います。だからこそ、本作のラストショットの意味が出てくるんです。新人のOJは、フォンとリン・ジン、それぞれの教えを受けて成長するんです。この描き方が抜群です。まるで熱血スポ根映画のようです。
【まとめ】
本作はもの凄く面白いんですが、でも実はあんまり書くことがありません(笑)。というのも、上記の三人のキャラクターを立てた時点でもうこの作品は”勝ってる”んです。しかもそこを取り巻く描写もアクションもほとんど完璧です。決して上品な作品ではありませんが、しかし男の子が大好きな要素は全てきっちり詰まっています。自宅が渋谷まで電車で一時間ぐらいの距離でしたら、十分に行って元は取れます。超オススメです。
強いて言えばちょっと画質が良くなかったんですが(というかデジタルノイズが乗ってました)、もしかしてDVDかBDでの上映だったんでしょうか? 何にせよ、ミニシアターとはいえこういう面白い作品をきっちり上映してもらえるのはありがたいことです。渋谷はミニシアターがいっぱいあって、本当に面白い街です。行くのはいつも裏通りばっかですけど(笑)。