二本目は今日見た作品です。
「プリンセスと魔法のキス」
評価:
– ディズニー・アニメ完全復活!!!【あらすじ】
ニューオリンズで母親と住むティアナは、亡き父との夢であるレストランを持つために二つの仕事を掛け持ちしてお金を貯めていた。ある時ニューオリンズにマルドニアのナヴィーン王子がやってくるニュースが飛び交う。プリンセスになることを夢見るティアナの友人にして金持ちのシャーロットは、父に頼んで王子とのパーティーを計画する。そしてパーティーの夜、ティアナはシャーロットの部屋で一匹のカエルと出会う。カエルは自身をナヴィーン王子だと言い張り、魔法を解くためのキスの見返りに開業資金の提供を申し出る、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> ティアナの半生と夢。
※第1ターニングポイント -> ティアナがカエルになる。
第2幕 -> 人間に戻る方法探し。
※第2ターニングポイント -> ティアナ一行がニューオリンズに戻る。
第3幕 -> 解決編。
【感想】
本日公開と同時に見て参りましたのは「プリンセスと魔法のキス」です。昨年「カールじいさんの空飛ぶ家」の時にも書きましたが、本作はジョン・ラセター体制になったディズニーの非3DCGの長編アニメーション第一作目です。「ボルト」でまだまだ実力があることを証明したディズニー・アニメーション部門が満を持して送る待望の「トラディッショナル・アニメ(=デジタル手塗り/非3DCG)」です。
監督はジョン・マスカーとロン・クレメンツで、80年代後半から90年代初頭のディズニー黄金期の終盤を担ったゴールデンコンビです。2004年に両名ともディズニーを辞めていましたが、ジョン・ラセターの依頼により復活しました。この配置を見ても、ラセターの「ディズニー黄金期復興計画」への想いが伺えます。
公開初日ですが私の見た箱では3割ぐらいの入りでした。子供連れも数組で、どちらかというと男・女問わず一人で見に来ている人が多かったように思います。
物語について
話のベースは劇中でも登場するグリム童話「かえるの王子様」です。ディズニーがかつて得意としていた「有名な童話をディズニー調に書き換えて家族向けのハートウォーム・テーマに噛み砕く」という手法を踏襲していまして、まさしくディズニー・クラシックスにふさわしい内容です。
物語の部分は文句のつけようがありません。ある種の”道徳的問題”を背負ったティアナとナヴィーンが一連のドタバタを通じて「本当の愛」に気がつき成長する普遍的ストーリーです。道徳的問題と書きましたが、ティアナは「働き過ぎ」、ナヴィーンは「女ったらし」というだけで、別にそんなに大問題ではありません。しかしそこはディズニー、「本当の愛」のためならそんな小さな人間的ほころびすら許しません(笑。とはいえこんな優等生的で正論すぎるテーマでも、押しつけがましくすることなく綺麗にストーリーの盛り上がりと併せて発信出来ています。その違和感の無さ(少なさ)がディズニーの特徴であり、そしてこの作品の脚本の巧さでもあります。
物語で言いますと、終盤にある悲劇的事件が起きます。これは過去のディズニー・アニメには無かった(※あったかも)シーンですが、これをエピローグで綺麗に回収して見せます。もしかしたら彼の夢も叶ったのかな、、、とか勝手な事を思えるシーンでして、私は完全に号泣モードでした。
一点気になることがあるとしたら、最後の最後の場面です。王子に起こったある事件は説明があって納得出来るのですが、でもその論法だとティアナに起こった事についてはまったく説明できないんです。なんか勢いで持って行かれますが、ちょっと引っかかりました。
「アナスタシア」について
実は本作を見ている最中に、ものすごい既視感を覚えていました。最後のエンドロールで気付いたんですが、原因は「アナスタシア」だったんです。
皆さん1997年公開の「アナスタシア」という劇場アニメをご存じでしょうか?アナスタシアは20世紀フォックスの作った長編アニメ第一号でして、80年代のディズニーアニメを支えたドン・ブルースとゲイリー・ゴールドマンがディズニーを辞めた後で制作しました。「アナスタシア」の名前は出しませんでしたが、「カールじいさんの空飛ぶ家」の時にちょろっと書いた作品です。
(※ カールじいさんの空飛ぶ家はこちら https://qbei-cinefun.com/up/)
この「アナスタシア」はメグ・ライアンが主役の声を当ててましたが、吹き替え版では本作と同じくミュージカル女優の鈴木ほのかさんが演じています。さらには敵役が優男の魔術師でして手下の影を使って主役を追い詰めます。この辺のディティールがそっくりなんです。これはパクリという意味ではなくて今回の作品がそれだけ「80年代ディズニー・クラシックス」のテイストを出せているということです。「アナスタシア」は完全にディズニーアニメのルックスでありながら(作ってるのがディズニーの人なので当然ですが)、ディズニーの枷をはずれたことで少し「怖い事」「酷い事」を描けていたのが画期的でした。本作はその「酷い事」の部分も上手に取り込んでいます。なので、必ずしも子供向けというわけでは無く、大人でも十分に楽しめる内容になっています。
数少ないノイズの部分
と、ここまで絶賛モードなんですが、どうかと思う部分が一点だけあります。それが「劇中内の日本語訳」です。私の気付いたところだと、「お父さんがイラストの上に書く”ティアナのレストラン”」「新聞の見出し”王子が来るよ”」「ティアナの店の看板」が、それぞれ日本語表記になったり英語表記になったりします。特に「ティアナのレストラン」は結構酷くて、同じシーンでもティアナが手に持ってる時は日本語で、額に入れた瞬間に英語になったりします。おそらくディズニーなりの「ローカライズ」なんだと思いますが、はっきり言ってズサンです。やるなら全部のシーンできっちり日本語表記にするべきだし、やらないなら他のアメリカ映画と同様に縦の字幕を出せば良いだけです。中途ハンパ過ぎてものすっごい気になりました。
見出しだけ日本語で本文が英語のニューオリンズ新聞ってどうなんでしょう?(苦笑
【まとめ】
最後にちょっとノイズ部分を書きましたが、作品全体ではとても素晴らしい出来です。なにせミュージカル・パートが楽しいですし、特にワニのルイスは最高です。ルイスのぬいぐるみがあれば欲しいですもの。そのためだけにディズニー・ストアに行くぐらいのテンションです(笑。
率直に言いまして、本作をもってディズニーアニメが完全復活をしたと思って間違いないと思います。
作品単体として見ても、そして歴史を目撃するという意味でも、間違いなくオススメの作品です!!!
ラセターはまだ53歳なので、あと20年はディズニーの第三黄金期が続くのでしょうか。いまからどんな傑作を量産してくれるのか楽しみで仕方がありません。