気を取り直して今日の2本めは
「秘密 THE TOP SECRET」です。
評価:(46/100点) – アイデアは良い。超惜しい!
【あらすじ】
警察官・青木は「第九」へ転属となった。「第九」は、死者と捜査官の脳をつなぐことで死者の記憶を覗き見ることができる「MRI捜査」を行う特殊チームである。しかしあくまでも「記憶」であるため、死者や捜査官の主観や妄想が入り混じってしまい、法的な証拠能力は認められていなかった。
「第九」のトップ捜査官であるであるマキは、第九の正式捜査機関への昇格のための最終試験を、よりによって新人の青木に託す。それは、娘を含む家族を皆殺しにした「露口一家殺人事件」の犯人・露口浩一死刑囚の記憶を覗き、唯一見つかっていない長女・絹子の遺体を探しだすというものだった、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 青木の転属と露口浩一の記憶
※第1ターニングポイント -> 一家殺人事件の犯人が判明する
第2幕 -> 絹子の秘密と、同時多発自殺事件
※第2ターニングポイント -> マキが鈴木の記憶を覗く
第3幕 -> 結末
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【感想】
今日の2本目は松竹映画「秘密 THE TOP SECRET」です。公開から2週間立っており、もうそろそろ打ち切りも始まっているかと思います。私の見た夜の回は女性の一人客ばかりでしたので、原作ファンか生田斗真/岡田将生を目当てにした客層でしょうか? 漫画が原作で一度アニメにもなっているとのことですが、私はノーチェクで完全に初見です。なので、先入観もなにもない状態です。ポスターを見ただけで勝手に「攻殻機動隊の公安9課のパロディかな?」と思ってたんですが、実際見てみると当たらずとも遠からずでした。
ここでお約束です。
本作は、ジャンルとしてはSFサイコサスペンスです。以降ネタバレを多数含みますので、未見の方はご注意ください。先に感想を書きますと、本作はとても良く出来た作品です。アラもありますがそれ以上に好感が持てる部分が多く、とても楽しめました。ゴーストバスターズと違って見て損はありませんので、是非、劇場で御覧ください。
本作のいいところ:語り口はかなりスマート
本作は「るろうに剣心」の大友啓史が監督をしています。そこが結構売りになっているようですが、思い出してください。確かに「るろうに剣心(2012)」「るろうに剣心-京都大火編-(2014)」は面白かったです。面白かったですが、あれは別に演出や話運びが上手かったわけではなく、カンフー映画としてきちんとアクションが撮れていたから面白かったんです。実際、「るろうに剣心-伝説の最期編-(2014)」はストーリーが酷すぎて、よかったアクションをすべて台無しにした上でお釣りが来るぐらい遥か地面の底までめり込むレベルの出来でした。その前の「プラチナデータ(2013)」は言わずもがな。そんなこんなで、個人的には結構不安がありました。
それでもって本作はどうかというと、これとても良く出来ています。今回は「MRI捜査」というギミックが重要になってくるわけですが、この概要を一幕目の冒頭で一気に説明するんですね。そして文字・セリフだけの説明ではなく実際どんなもんかというのも、やはり一幕目に「露口浩一の脳を覗く」ことで見せてくれます。「インセプション(2010)」もそうですが、こういうギミックSFについては、ベースとなるギミックのルールをいかに素早くかつ分かりやすく説明するかが肝心です。この映画はそこが大変スマートにできています。これ満点。とても良いです。
俺達の大好物=悪魔型サスペンス
本作は悪魔型サスペンスであり、そして悪魔が2人登場します。
1人は「貝沼清孝」。「28人連続殺人事件」の犯人で、すでに自殺していますが、彼の脳を覗いた第九捜査官がマキ以外全員発狂したという曰くつきのサイコ野郎です。この貝沼は捜査中にちょいちょい名前が出てきまして、ラスボス感を漂わせてきます。
もう1人は本作の中心人物「露口 絹子」。家族を殺害した嫌疑がかけられているものの物証が無く、やりたい放題の色仕掛けで捜査を撹乱します。
貝沼は文字通り亡霊として事件に関与してきて結果的にマキを苦しめ、一方の絹子はイカレた警官の眞鍋を翻弄し青木にもちょっかいを出します。
この2人を巡る捜査が本作のメインストーリーとなります。
悪魔が正しく機能できているのか問題
でですね、上記2人の悪魔が機能しているかというと、実はあんまり機能してないんですね(笑)。なので、劇中のトーンと事件がちょっと空回っちゃっています。
貝沼は、大昔に財布をネコババするところをマキに見つかり、でも見逃してもらった上に1万円もらったことがきっかけでマキに執着します。なんでそんなことで執着するかはよくわからんのですが(笑)、そういうことにしときましょう。その後、マキへの「捧げ物」として28人を殺すんですね。しかも殺した子達をマキと錯視する描写まであります。要は「マキを殺したくて殺したくて仕方ないので代わりに28人殺した」みたいな感じです。しかもワザワザ自分の脳内にマキへの遺言を残してきたりもします。別にマキ自身は悪くないんですが、すごいイヤ~な気分にさせる嫌がらせをやるド変態ストーカーです。ただこれが全てなので、あんまり悪魔になってないです(笑)。価値観を揺るがすような悪魔ではなく、ただの変態サイコパス。遊びで子どもたちを催眠にかけて将来自殺するようにしたりとかね。まぁド変態殺人28連チャンを追体験させられたと思えば、覗いた捜査官が全滅しちゃうという話は無くは無さそうです。
絹子の方は、すごく直情的なコントロール・フリーク・サイコパスです。男を次々に誘惑し、支配下に置いて気に入らないと殺しちゃうような。こっちのほうがまだ悪魔としては機能しているんですが、肝心の翻弄される眞鍋が元から頭がおかしいので翻弄された結果なのかどうかよくわかんないんですね(笑)。この眞鍋というキチ◯イ警官が本作の一番のノイズです。証拠もないのに勝手に逮捕してきたり(※本当に逮捕状をとってるのかも怪しい)、一人で絹子のところにいって癇癪起こしたり、捜査もストーリーも邪魔してきます。最後の最後に「死後に脳を覗かれることの気持ち悪さ=死後にだって秘密にしたいことは誰にでもある」みたいなメッセージを伝えるためだけの存在なんですが、あまりにそこに至るまでの行動が滅茶苦茶なので、説得力に欠けます。意図としては「眞鍋が絹子に翻弄されて一線を超える→青木と対立→究極の選択」みたいなことをやりたいんだと思います。惜しいです。たぶん「眞鍋が誤認逮捕で責められる/警察内で孤立する」みたいな描写がもうちょいあれば良かったと思います。「最初真面目だった眞鍋が絹子をぶっ殺したくなるくらい追い詰められる」描写が欲しかったですし、それがないと話が上手くつながりません。
【まとめ】
とまぁ全体としては今一歩といったところなのですが、間違いなく題材はいいですし、もうちょい整理できれば滅茶苦茶面白くなったんじゃないかな~という予感は随所に感じました。専門のちゃんとした人に脚本を頼めばいいのに、、、と思ってスタッフリストをみたらまさかの高橋泉。ランウェイ☆ビートの人(笑)。ちょっと目が泳ぎました、、、。
ちなみに映画の尺が長いですが、「頑張って捜査してるのに悪魔に翻弄されてウンザリ」という表現としての長さなので、そこはいいと思います。「ゾディアック(2007)」だって2時間半あるし、悪魔型ってどうしても長くなるんですよね。劇中の捜査がグダグダ=その間は画面もグダグダっていうシンクロです。
そうそう、最後に一個だけグチっておきたいんですが(笑)、最後のオチだけは絶対無い。あれはオカシイ。動物から見る人間の世界=理想的=みんな幸せそうっていうのは酷いプロパガンダです。本作を見終わった後で、是非連続で「ペット(2016)」を見て欲しいです。そうすると動物だって大変だぞってのがわかると思います(笑)。
制作側の志は十分に伝わるし、そこかしこに面白くなりそうな要素はいっぱいある映画なので、是非劇場で御覧ください。こういう映画は途中で逃げられない劇場で見るに限ります。テレビだと、途中でトイレに行ったり続きは明日でいいやって寝ちゃったりしますから(笑)。結構おすすめです。
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