土曜の3本目は
「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」です。
評価:
– あれ?ちょっ、、、、、え!?【あらすじ】
ザラチェンコを襲い瀕死の重傷を負ったリスベットは、強靱な生命力で大学病院へと運ばれ一命を取り留めていた。しかし対するザラチェンコもやはり生き延びてしまい、ニーダーマンに至ってはまんまと逃げ延びて潜伏してしまう。
一方その頃、ザラチェンコが裁判で過去を暴露することを恐れた秘密結社・特別分析班の創設者・エーヴェルト・グルベリは、ザラチェンコとリスベットの口封じを企む。そしてかつての捜査資料を元に国家の暗部へと近づくミカエル。首相からの勅令を受け公安内部の非公式結社の存在を捜査するトーステンとモニカ。特別分析班の息の掛かった検察をも巻き込み、舞台はリスベットの裁判へとなだれ込む、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> 特別分析班の登場。
※第1ターニングポイント -> フレドリック・クリントンが特別分析班に復帰する。
第2幕 -> ミカエルとリスベットの調査
※第2ターニングポイント -> 裁判が始まる。
第3幕 -> 裁判とニーダーマン。
【感想】
さて、昨日の3本目は「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」です。原題は「Luftslottet som sprangdes」なので「打ち砕かれた空虚な城」って感じなのですが、なんでこんな邦題になったかは良く分かりません。さすがに第2作が公開してすぐの続き物第3作ですので、そんなにお客さんは入っていませんでした。とはいえ、2作目がかなり良いところでぶった切られるので、見たら絶対に続きが気になる作品ではあります。
細かい前提はミレニアム2と同じなので割愛させていただきまして、いきなり本題に行きます。本作ではついに、ザラチェンコの所属していた組織が登場します。前作では思わせぶりで終わっていたんですが、今回でそれが国家ですら把握できていない秘密結社であることが分かります。そして、この”班”の連中達がリスベットをあの手この手で社会的に抹殺しようと企んできます。もちろん最凶ロリコン変態・テレボリアン医師も組織の手先です。そこをリスベットがどう切り抜けていくのか? そしてミカエルはどう援護していくのか? 壮大なリスベットの復讐劇の完結編です。
とか書くと面白そうに聞こえるんですが、、、正直ちょっと拍子抜けというか、、、なんかカタルシス不足を感じてしまいます。というのも、これは仕方が無いことなんですが、実は原作自体が作者の急死により中途半端に終わってしまってるんですね。原作では伏線を張りまくったのに続編が無いという大変微妙な事態が起きていますが、映画ではその伏線部分が綺麗さっぱりカットされています。その分、内容はリスベットと”班”との対決に絞られていてシンプルにはなっているんですが、一方でリスベットという稀代の名ヒロインの復讐劇としてはかなりショボイことになっています。いうなれば「僕らの旅がこれからだ!」エンドでして、ラストで晴れて自由の身となったリスベットがこれからミカエルと組んで大活躍するんだろうな、、、というちょっとした期待で終わってしまいます。本当に静かな終わり方でして、カタルシスはほとんどありません。リスベット物語の第一章で終わってしまったような感じです。もちろん、陰謀仕立ての法廷サスペンスとしては中の上ぐらいの出来ではあります。でも、やはり1作目で「現代のポアロか」ってくらいすばらしい「金持ち一家にまつわる謎を解く」という探偵物を高いレベルで実現し、2作目で「ピンチになったスーパーヒロインの意地と執念の逆襲」を見せてくれたシリーズとしては、ちょっとこの「まぁまぁよくできた法廷劇」では物足りません。
前作以上にミカエルとリスベットの連携が見られますし、よりプレイグ(疫病神)を巻き込んでの「チームもの」としての完成度は上がっています。それだけにもう一押し、せめて班の連中に対する復讐を見せて欲しかったです。いくらなんでも普通に逮捕じゃねぇ、、、。
一応申し訳程度に最後にアクションがあるんですが、それもあまりにショボすぎてむしろ要らないかなという位の感覚です。
惜しいです。
【まとめ】
もちろんシリーズ1作2作を観た方は絶対に行くべきですし、行かないと悶々として過ごすことになりますw また、完全に前作の続きですから、前作を見ずに本作だけ見るというのは限りなく無意味です。
リスベットは相変わらず良い味だしていますし、ミカエルの「船越英一郎化」も着々と進行しています。欲を言えば思い切ってオリジナルストーリーでテレビドラマにしちゃえばいいのにと思わないこともないのですが、これはこれで「ミレニアム3部作」としては無難な着地なのかなとも思います。
なんにせよ1作目と2作目は傑作ですので、観ていない方は1作目をDVD、2作目を劇場で見て、惰性で本作もご鑑賞いただくと良いかと思います。にしても見たのになんか煮え切らないというか悶々とするというか、、、スティーグ・ラーソン生き返って続編書いてくれないかな、、、。