日曜日は一本。
「17歳の肖像」です。
評価:
– キャリー・マリガン、すんげぇ~!!!【あらすじ】
ジェニーは高校三年生。オックスフォード大学を目指して教育熱心な両親のもと勉強に打ち込んでいた。ジェニーはある日、雨のなかチェロを持って立ち往生しているところを中年のデイヴィッドにナンパされる。初めて接する大人の男のアタックに、いつしか彼女も好意を寄せるようになっていく、、、。
【三幕構成】
第1幕 -> ジェニーの日常。
※第1ターニングポイント -> デイヴィッドとの出会い。
第2幕 -> デイヴィッドと付き合い、社会勉強をする。
※第2ターニングポイント -> デイヴィッドにプロポーズされる。
第3幕 -> ジェニーとデイヴィッドの結末。
【感想】
日曜日は「17歳の肖像」を見ました。ご存じ「彗星」「(オードリー・)ヘプバーンの再来」と絶賛の嵐で、24歳にして英アカデミー賞の主演女優賞をかっさらったキャリー・マリガンの主演作です。私も正直言いまして完全にキャリー・マリガンが目当てで行きました。客席は一人で来ている若めの女性が多く、おそらく世間認知としては「おしゃれ映画」に属すると思われます。とはいえ客入りは2割程度でして、日曜の夕方にしてはちょっと寂しい状況です。
今回は若干ですが雰囲気でネタバレな感じになってしまうかと思いますので、先に感想を要約してしまいます。
とにかく、キャリー・マリガンはとんでも無いバケモノです。そしてこの話の筋である「少女が大人一歩手前まで成長する」という部分を完全に体現しています。超一級のアイドル映画として、そして超一級の青春映画として、今後数年はちょくちょく名前が挙がるような作品になると思います。映画ファンなら間違いなく観るべきです。もしかしたらこの先50年後まで、「私はキャリー・マリガンの出世作を劇場で見た」と自慢できるかも知れません。もちろん彼女がグレなければですが(笑)。
話の大筋
話のキーワードは、ずばり原題そのものである「An Education(=教育)」です。本作の中でジェニーは3種類の「教育」を受けます。
1つは「学校教育(=学問)」です。教育熱心な親の元、ジェニーはオックスフォード大学に入るために学問に打ち込みます。序盤、彼女が親の薦めでオーケストラ部に入っているのに、チェロの練習をしようとすると怒られる場面があります。このシーンで、ジェニーの父の「高校教育や部活は大学に進むためのツールでしか無い」という価値観が明らかになります。
2つめは「社会勉強」です。ジェニーは大人のデイヴィッドと付き合うことで、オークションやジャズ・バーやクラシック・コンサートといった「学校で教えてくれない実地の文化学習」を行います。もちろんフランス旅行もその一環です。そしてこの文化学習の魅力にジェニーはすっかり嵌ってしまいます。
3つめは「挫折を味わう」ことです。最終盤にジェニーの元に訪れるあるイベントによって、彼女は大人になることが必ずしもポジティブな事ばかりでは無いことを知ります。
そしてこの一連の流れを通じて、彼女は学問の大切さを実感します。それは単にテストの点がどうこうという両親の薄っぺらい価値観とは別の、「社会を生き抜くためには学が必要だ」という切迫した要請から来るものです。これが彼女の成長であり、本作のテーマでもあります。
キャリー・マリガン
このテーマを完全に体現しているのがキャリー・マリガンです。本当に恐ろしいことですが、彼女は第一幕では「素朴な田舎の真面目な少女」にしか見えません。ちょっとそばかすがあって、スキがありそうで、服装にも無頓着な感じの女の子です。やがて第二幕に入ってデイヴィッドと付き合い始めると、ジェニーは髪をアップにしてドレスアップします。そうするとこれはもうヘップバーンとしか言いようのないほど、凜とした意志が見える美女にしか見えません。アカデミー賞の授賞式を見ているとこちらが女優・キャリー・マリガンに近いようです。そして色々あって第三幕、再び髪を下ろして田舎少女スタイルに戻るんですが、しかし明らかに目だけはちょっと怖いんです。そしてこれが少し世間ズレしてしまった大人になりかけのジェニーです。そして最終盤のラストカットで彼女は再び「素朴な田舎の真面目な少女」時の笑顔を取り戻します。
この一連の流れをキャリー・マリガンは完璧にこなしています。ものすっごい難しい役だと思いますが、お世辞抜きで完璧です。彼女は日本だと宮崎あおいとか蒼井優とか栗山千明とかの世代なわけですが、ちょっとレベルが違いすぎます。
【まとめ】
本作はキャリー・マリガンのためにあるといっても過言ではありません。ユアン・マクレガーをフライパンで正面から殴ったような顔のピーター・サースガードなんてどうでもいいです(←失礼)。
作品自体が成立するか否かがマリガンの力量に全て掛かってるというすごいプレッシャーの中でこれだけの演技を見せてくれるわけですから、これはもう絶賛せざるをえません。是非、劇場でご鑑賞下さい。個人的には「幸せの隠れ場所」のサンドラ・ブロックや「ジュリー&ジュリア」のジュリアン・ムーアより数段上だと思います。必見です。