RAILWAYS  49歳で電車の運転士になった男の物語

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

今月の映画の日は

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」を見ました。

評価:(25/100点) – 夢じゃなくて寝言。


【あらすじ】

筒井肇はエリートサラリーマンである。何事も会社が第一で娘とも上手く話せない。娘が大学に入って育児も一段落したことで、妻はハーブティー屋を始めるなど華やかな生活を送っていた。ある日、彼の元に田舎の母が倒れたとの知らせが届く。そして時を同じく同期の川平までもが交通事故で亡くなってしまう。彼は川平が常に口にしていた「楽しいことをやる」たに会社を辞め、バタデンの運転手になることを志す、、、。


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【感想】

少し遅くなりましたが、今月1日は「RAILWAYS」を見てきました。「意外と良かった」みたいな評判を聞いていましたから、それなりに楽しみにはしていたんですが、、、、、う~~~~~~~~~~~~~ん。1000円で良かったと言うべきか、1000円も取られたと言うべきか、、、なんにせよ微妙でした。
ROBOTの制作ということで完全に「ALLWAYS」を意識したタイトルなわけですが、本作では「ALWAYS 三丁目の夕日」にあったような反吐が出るほど気持ちの悪いファンタジー・ノスタルジーはほとんどありません。代わりにあるのは中年男のファンタジーであり、責任や家族から解放されて童心に戻る中年男のロマン溢れる夢舞台です。
本作はその全てがファンタジー(=究極のご都合主義)に覆われています。なにせ夢を追うために一流企業の取締役の座を捨てて月給14万の契約社員になる50歳の話です。そしてそれを当然のように受け入れる菩薩のような天才妻まで居ます。彼女は趣味で始めたハーブティー屋が雑誌で取り上げられるなどして一気に有名店の経営者となった天才辣腕経営者で、夫が田舎で高卒対象の契約社員になることを笑顔でOKしてくれます。一方の娘はといえば、父がエリートサラリーマンの時には険悪だったにも関わらず、田舎に単身赴任で引っ込むと聞いた途端に優しくなっておばあちゃんの看護のために大学を休んで顔をだしてくれるようにまでなります。
つまり、、、お金を持ってエリートサラリーマンをやっていたときよりも、田舎に引っ込んで月給14万の契約社員になった方が周りのみんながハッピーになっているんです。凄い事だと思います。It’s AMAZING!!!!!
「娘の学費は何処から出てるんだ」とか「東京の家のローンはどうしてるんだ」とかツッコミ所は山ほどありますが、そういったことは中年男の夢の前では些末なことです(苦笑)。
結局本作も近年の糞映画によくみられるエコロジー志向というか、反大都市・反近代的なメッセージに満ちあふれています。だからですね、こういう作品を良いと思った人には、まずは「パーマネント野ばら」を見るようお勧めしたいです。田舎は田舎で大変なんだぞと。閉鎖社会な上で経済活動も多岐にわたらない田舎ってのは、それこそ一回のけ者にされたら人生が終わっちゃうような危なさがあるんだぞと。
現実感のカケラもないような本作は、まさしくファンタジーそのものです。でも多分それこそが本作の狙いなわけで、早い話が人生に疲れちゃってる中年男性をターゲットにして適当なメッセージで癒してあげようというとっても広告代理店的な発想なわけです。まさか本作をみて本気で転職を考える人はいないと思いますが、そういった方には一言「50歳じゃ書類審査に通らないですよ」とつぶやいた上で、是非とも頑張っていただきたいと思います。
中年男性のファンタジーというと、今年「マイレージ、マイライフ」という作品がありました。「マイレージ~」ではあくまでも現実に起こりうる範囲でのリアリティを持って男のロマンを見せていますので、私もノリノリで見ることが出来ました。ところが、本作ではリアリティの片鱗すら見えません。そもそもおばあちゃんが乗り遅れそうだという理由で、独断で司令室の命令を無視して電車を遅延させまくる新人運転手ってなんですか? それって人情的には「良きこと」かもしれませんが、でもそれで秩序を破っても構わないっていうのは違うでしょう? だって目に見えている人は助かったかも知れませんけど、もしかしたら電車が10分遅れたことで親の死に目に会えなかった人が居るかも知れないじゃないですか。だから、決してそれは無条件に美談として了解できるような話ではないと思うんです。でも本作ではそういう傲慢な正義感から生じる歪みは描かれません。あくまでもみんながハッピーになるんです。
だから、ハッキリ言って本作は「誰かが私にキスをした」と変わりません。この世界の全ては主人公・筒井肇のためだけに存在しています。彼が夢を叶えると、世界の全てがハッピーになるんです。気持ち悪い。こんなんで喜ぶ中年男性って本当にいるんでしょうか?よっぽどじゃないと騙されない完成度です。少し前の作品ですが、去年の「プール」にも通じる思想的な気持ち悪さがあります。どんだけワガママ放題をやってものんびりした田舎に行けば全部許されるっていう、ある意味エコロジーで安い精神メッセージです。気持ち悪い。
結局、きっとこの主人公は山ほどお金を貯金して退職金ももらい、本当に道楽として鉄道の運転手になっただけなんでしょうね。せっかく「夢敗れて運転手くらいしか仕事がなかった」という生きるために運転手になった対比キャラまで出てくるのに、結局そのキャラも本作の思想に恭順してしまいます。なんかいろいろな事にたいして酷い作品でした。現役のバタデンの運転手さんは怒って良いと思いますよ。少なくとも本作で運転手は「電車でGO!」レベルの素人でもできる仕事として舐められてますから。

【まとめ】

電車ファンならば見ていおいて損はないとは思いますが、本作の思想に乗れるかどうかで結構評価が別れる作品だと思います。責任や家族を捨て去って田舎で童心に返りたいという野望を持った中年男性にはぴったりな作品ですので、是非劇場でご鑑賞を。

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