今日は「アーマード 武装地帯」を観てみました。
評価:
– 悪役のが格好良いって本末転倒では?【あらすじ】
元軍人のタイ・ハケットは弟との二人暮らしの生活を支えるために民間警備会社に就職する。そこには長年世話になっていたマイクや、そのほか個性的な面々がそろっていた。ある日、金に困っていたタイはマイクから輸送金の狂言強盗・着服計画を持ちかけられる。それは誰一人傷つけない計画だったはずだったが、、、。
【感想】
本日は「アーマード 武装地帯」です。マット・ディロンにジャン・レノにローレンス・フィッシュバーンと、個性派を揃えた豪華なポスターが目に付きます。予告を見た限りはB級アクション映画かなと思っていたのですが、蓋を開けたらヒーロー誕生を描いた人間賛歌でした。ありきたりなような、でもちょっと変わっているような、変テコな作品でした。
話のプロット
話は至って単純です。タイ・ハケットというヘタレな人間が、自身の正義感に目覚める話です。その正義感に目覚める過程で多くの障害を克服していきます。
まずは、弟の品行を含めた家庭の経済問題です。彼の弟はロクに学校にも行かず、問題行動ばかり起こしています。そして家計を支えるためという言い分で学校をサボっており、ついに州の保護が入りかけます。これにプラスで家が二重抵当に入っており、すぐにでも金が必要になります。この追い込まれた状況下で、彼は恩人のマイクから提案された犯罪行為への荷担を了承します。ここで嫌々やるという描写がしつこく示されます。
そして計画を実行するわけですが、ベインズが目撃者のホームレスを射殺したのに怖じ気づいて、装甲車に立てこもって現実逃避を始めます。しかし見回りの警官が撃たれて重傷を負ったのを見て、彼を助けるために奮起します。そしてそこから、反撃という名の救難無線を巡る話が始まります。そして最後には悪党を殺してでも生き残ろうとする根性を見せるまでに至ります。
これはヘタレで前科持ちの若者が、マッチョでゴツいならず者を敵に回して、一時的でも正義のヒーローになる話です。
キャラクター配置について
キャラクターの配置はかなり密接にテーマと結びついていると思います。
悪役側の主要人物3人(マット・ディロン、ジャン・レノ、ローレンス・フィッシュバーン)は俳優としても相当なビッグネームです。一方のヒーロー役であるコロンバス・ショートは、「REC/レック2」や「ホワイトアウト」には出てましたが、はっきり言ってまだまだ知名度は低いです。そしてこの両者の対比構造は「筋骨隆々と細身」「マッチョイズムとヘタレ」です。そういった状況の中で、いうなれば弱い方であり一般人に近いであろう後者が、正義感を発揮して圧倒的な強者である前者を(狡い)工夫でぶちのめすわけです。しかも彼は元軍人で、どうもイラクで傷心して帰ってきているような描写もあります。いうなれば一般的なアメリカ人の観客に対して、「君らも勇気をだして正義感を出せばヒーローになれるよ」と励ましているような構図になっています。そのためにはどうしてもヒーロー役は一般人寄りにする必要があるわけです。これがセガールだったら誰も心配しませんし、悪党なんて瞬殺して映画が30分で終わっちゃいますから(笑)。
気になった点
以上のような配役の意図は大変良いと思うのですが、非常に残念なことに完全に悪党側が映画を「食って」しまっています。なにせ役者力のある(=アクが強い)個性派ばかりですし、装甲車に籠城するヒーローとそれを工夫で突破しようとする悪党というシチュエーションがどうしても悪党側に有利でした。悪党側が強大な壁となる意図は達成されているんですが、壁が高すぎてイマイチ登り切れていません(笑)。基本的にタイ・ハケットがやっていることは隠れて救難無線を入れようとする事だけなんですね。スケール的な問題でカタルシスがあんまり無いんです。結果として悪役の方がどうしても格好良くなってしまいます。
また、これはテーマとあまり関係無いですが、BGMの使い方がダサいのが気になりました。爆音ロックばっかりで、緊迫感があんまり表現できて無いんです。この辺はサウンドデザインになってくると思うんですが、ちょっと話を邪魔してしまっているような箇所が目立ちました。
【まとめ】
ミニマムな舞台構成で見せるアクションものとしてはそこそこの佳作だと思います。小品ではありますが決してショボイ感じはしません。むしろ俳優好きな方には結構面白く見られると思います。とはいえ、盛り上がりに欠けるのも事実でして、正直な所、レンタルDVDを待っても良いかなと思ってしまいます。
ちなみに私は夕方の回で見ましたが、観客は自分を入れて7人だけでした(苦笑)。ポスターは本当に格好いいんですけどね、、、。