イレブン・ミニッツ

イレブン・ミニッツ

​今日の2本目は

「イレブン・ミニッツ」です。

評価:(90/100点) – スコリモフスキ meets ファイナル・デスティネーション!


【あらすじ】

ポーランドのワルシャワ、17時。女優はオーディションのため、夫を置いて一人で監督の部屋へ向かう。自殺未遂をした女は、同棲していた彼の犬を譲り受け、別れを告げられる。学生への性犯罪で保護観察中の男は、公園でホットドッグを売る。質屋に強盗に入った男は、そこでクビを吊った店主を発見する。そして17時11分、なにかが起こる、、、。


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【感想】

今日の2本目はイエジー・スコリモフスキの最新作「イレブン・ミニッツ」です。あんまりお客さんが入っていないのはある程度予想していたのですが、さすがに同じ列のサラリーマンが焼酎と唐揚げを食べ始めたのはびっくりしました(笑)。どうみても映画オタク向けの作品なのに、なんかいいんだか悪いんだか、、、というね、、、。

映画オタク向けと書きましたが、本作はイエジー・スコリモフスキらしからぬ、とても愉快なエンタメ色の強いジャンルムービーです。ですので、是非、映画オタクの方以外にも見ていただきたいです。ここから私はこの作品をがっちり褒めちぎります。細かいネタバレはいたしませんが、どうしても具体的に書かざるを得ない部分がありますので、実際に見てから読んで頂いたほうが良いかと思います。本当におすすめですので、是非劇場で御覧ください!

これは悪趣味ジャンルムービーだ!

いきなりですが、この作品には明確なストーリーがありません。いわゆる物語的な意味での起承転結がなく、ある日の世界の「17時~17時11分」までを切り取った形になっています。なぜ「11分」というハンパな時間なのか?これは映画を見ていただければわかります。

本作には起承転結が無いと書きました。では何があるのかというと、それは「不穏な空気とカタストロフの予感」です。本作では、全編を通して、ひたすら「不穏な空気」が描かれます。明らかに悪事を考えてるっぽいエロ監督と、狙われてるっぽいちょい頭の弱いグラマラスな女優。そこに乱入しようとする左目を怪我した女優の夫。保護観察中のホットドッグ売りと、その息子で麻薬中毒のバイク便配達屋。公園で彼氏を待つのは、手首を切って家に火を付けながらそれでも生き残ってしまった女。全ての登場人物が、何か犯罪の臭いというか危険な雰囲気を漂わせており、いたるところでちょっとしたアクシデントや不吉なイベントが頻発します。空にはよくわからない”何か”が浮かび、部屋には鳩が突っ込んでくる。

群像劇である以上はいつかはこの登場人物たちは交わるわけで、それはもうこの不穏さの積み重ねで破滅するしかあり得ないわけです。いつカタストロフがくるのか?いつこの不穏さが爆発するのか? 見ている私たちはヤキモキ・ハラハラしながら、それを待ち続けます。「お!バーナーに火がついた!」「うぉ、交通事故起きそう!」「うわ、飛行機が低空で!これは9・11か!?」「え!?隕石落ちちゃうの!?アルマゲドン!?」。そういったヤキモキが5分に1回くらいやってきます(笑)。まだこない、、、まだこない、、、うぉ、、、まだだ、、、。こうやってジレている内に、いつしかカタストロフを待ち焦がれてハードルが上がりまくっている自分がいるわけです。そしてついに来る破滅の瞬間!やっときた!ガッツポーーーーズ!しかも笑えるぐらい凄いあさっての方からカタストロフがやって来ます(笑)。この開放感!エクスタシー!最高にスッキリします(笑)。もう完全に「ファイナル・デスティネーション」です。

これだけだと普通のブラックホラー・コメディなんですが、さすがにこれで終わらないのがイエジー・スコリモフスキ。ちゃんとこの後に、「でもこういう劇的な事件は、実は世界中でしょっちゅう起きているんだ。」という締めが加わり、最終的には「人生の不条理さとだからこその面白さ」という人間讃歌に着地します。私たちが出会う人やすれ違っただけの人にも、すべてその瞬間に至る人生の物語があるんだってことですね。つまり、この映画は世界で常に起きていることを、たまたま11分だけ切り取ったという形なんですね。だから起承転結もないし、ドラマが途中から始まるんです。11分っていうのは、おそらく9・11の連想、つまり破滅の時ですね。ついでにホテルの部屋番号も「1111」です。

この結末はとても良くまとまってます。なんですが、なんかこういたずらっこの無理矢理なアリバイ言い訳に聞こえるんですね(笑)。「ほら!悪趣味だけど楽しいだろ!皆好きだろ!あ、一応道徳的な内容なんで、親御さんは子供が見ても怒らないでください。」みたいな変な言い訳(笑)。

とてもお茶目で素晴らしい映画です。

【まとめ】

もうすぐ80歳になる巨匠の最新作がまさかの直球ジャンルムービーという、よくも悪くもとても驚いた作品でした。逆に言うとですね、みんなホラーコメディのことを低俗だの下品だの文句いうなよ!ってことです(笑)。巨魁スコリモフスキも認めた素晴らしいジャンルです。是非是非、「ファイナル・デスティネーション(2000)」「デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2(2003)」「ファイナル・デッドコースター(2006)」「ファイナル・デッドサーキット(2009)」「ファイナル・デッドブリッジ(2011)」とセットで見て欲しい作品です。これホント名作です。絶対映画館で見ましょう!

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イレブン・ミニッツ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 笑う社会人の生活

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