エクスペリメント

エクスペリメント

12月に入ってようやく初映画です。
今日は

エクスペリメント」を観て来ました。

評価:(25/100点) – 何故リメイクしたか分からないほどes[エス]にほど遠い。


【あらすじ】

老人ホームで働いていたトラヴィスはある日リストラされてしまう。若くして職にあぶれた彼は反戦デモの最中に知り合った女性と恋に落ちるが、彼女は理想を求めてインドで暮らすと言い出してしまう。インドへ行く資金を稼ぐため、彼は新聞広告にのっていた高額なアルバイトに募集する。それは一週間「心理的実験」の被験者となるものであった、、、。

【三幕構成】

第1幕 -> トラヴィスとベイの出会い。
 ※第1ターニングポイント -> 心理実験が始まる。
第2幕 -> バリスの暴走とトラヴィスの反抗。
 ※第2ターニングポイント -> トラヴィスがカメラに実験終了をアピールする。
第3幕 -> 囚人役の決起。


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【感想】

ようやっと仕事に一段落つきまして、本日は「エクスペリメント」を見て来ました。公開から少し経っているからか、お客さんはほとんど入っていませんでした。

本作の作品位置と概要

本作は1971年のスタンフォード監獄実験を元にした作品です。とかいうと分かりにくいですが、早い話が2001年のドイツ映画「es[エス]」のハリウッドリメイク作品です。es[エス]のオリジナルタイトルも「Das Experiment(The Experiment)」でしたから、完全に同一タイトルでのリメイクとなります。

概要はほぼ同じですが、作品のタッチはかなり変更が加えられています。

オリジナルの「es」はどちらかというとサスペンスよりの作品でした。主人公のタレクはあらかじめ何が行われるかを知った上で取材と好奇心で実験に参加します。ところが本作のトラヴィスはまったく知らない状態でお金を手っ取り早く稼ぐために参加します。そのため、本作では一幕目を丸々使ってかなりどうでもいいトラヴィスのラブロマンスが展開されます。もちろん「反戦活動をしていた男が最後にはみずから戦争を始める」という痛烈な揶揄にはなっているんですが、作品を始めるにあたっての非常に事務的な説明パートですのでかなり退屈はしてしまいます。この退屈な部分を乗り切ると、ようやく本題となる監獄実験が始まります。始まるんですが、、、、はっきりいいますと、この監獄実験がかなり変な味付けになってしまっているように感じました。
というのも、実験開始早々のフラッシュバックで、ウィテカー演じるバリスがかなり母親に虐げられていて且つ厳格なキリスト教義に抑圧されているという描写が入ってくるためです。彼は看守という「支配者」を演じることで、そういった抑圧されたストレスフルな状態から現実逃避して自己実現を果たしていきます。

ちょっとここでそもそもの「スタンフォード監獄実験」に立ち返りましょう。スタンフォード監獄実験は心理学者のフィリップ・ジンバルドーが一般人21人を看守役と囚人役に分けてスタンフォード大学の地下に作った摸擬監獄に隔離したものです。結果、看守役による囚人役への暴行がはじまり、囚人役も被害妄想や精神的な錯乱を見せるようになっていきます。人道的にかなり無茶苦茶な実験ですが、この実験の肝は「普通の人でも特殊な環境下に入れられると”かくあるべし”というロールプレイを始める」ということです。

本作におけるバリスは「特殊な環境下だからロールプレイを始めた」のでは無く、日常の抑圧から解放されたために暴走していきます。なのでエンターテイメントのモンスターとしては申し分ないのですが、そもそものソリッドシチュエーションからは大分はずれてしまっています。それはトラヴィスも同じです。彼が囚人側のリーダーになっていく課程が全く描かれないため、「主人公だから」という理由以外に彼のカリスマ性を裏付ける根拠がありません。囚人側のキャラクターがほとんど立っていないという部分と相まって、かなり残念な感じになっています。またそれとは別に、そもそもソリッドシチュエーションなのに最低限のルールが守られていないという致命的な問題があります。

本作では厳密に規定されたルールが3つあります。一つは暴力行為の禁止。もう一つは囚人側への「相応の罰則」の行使。最後に、一人でも離脱意志がある場合の即時中止です。
そしてこの3つはまったく守られません。ですから「実はルールが存在しない(=実は監視者側のブラフであり実験の一貫)」というのが本当のルールなんです。
ところが、、、、恐ろしい事にこの3つのルールは最後の最後に中途半端に守られます。「人が死んでも止めないのに馬乗りで殴ると止める」というのがまったく意味不明です。この最後の赤ランプですべてが台無しです。しかも赤ランプがついているのに本作では報酬がきちんとでています。

この手のゲーム型ソリッドシチュエーションの場合、最初に決めたルールを守るのは大前提です。もちろんどんでん返しとしてルールをひっくり返すのは有りですが、いきなり最初から無視したあげくに中途半端に適用するというのはいくらなんでも酷すぎます。最後の赤ランプがついた瞬間にそこまで比較的楽しめていた時間が一気に冷めました。

【まとめ】

たしかにこの手の映画を映画館で見るのは楽しいんですが、さすがにこれですとDVDで「es[エス]」を見た方が良いと思います。アメリカでは9月にDVDが出ているタイトルですので、日本でも少しまでばすぐに出るかと思います。ジャンル好きな方は止めませんが、ふらっと入って見るには少々厳しい内容だと感じました。DVDを待って、エスと本作を2本立てで見比べてみるのも面白いかも知れません。
余談として、日本の宣伝はかなり「インシテミル」を意識しているようですが、さすがに「インシテミル」と比べれば本作の方が5億倍マシですw

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