今日は一本です。ロマン・ポランスキーの陰謀サスペンス、
「ゴーストライター」でした。
評価:
– ポランスキーの真骨頂!【あらすじ】
主人公はエージェントのリックの紹介で元イギリス首相・アダム=ラングの自伝のゴーストライターを引き受ける。前任者が酔って船から転落死してしまってリライトが中断してしまっているという。
自伝を書くためにアダムの滞在するアメリカのマーサズ・ヴィニヤード島を訪れた主人公だったが、今度は着いて早々にアダムが違法にスパイを米国に引き渡した嫌疑で国際裁判所に告発つされてしまう。果たして自伝は無事に完成するのだろうか?そして前任者・マイクは本当に事故死なのだろうか?
【三幕構成】
第一幕 -> 主人公の抜擢とヴィニヤード島への到着
※第1ターニングポイント -> ラングが国際裁判所に告発される
第二幕 -> 主人公の調査
※第2ターニングポイント -> 主人公がライカートと出会う
第三幕 -> 解決編
【感想】
今日は一本、ロマン・ポランスキーの「ゴーストライター」を見てきました。昨年の東京国際映画祭でも上映していましたし、さらに昨年度ベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲っています。その評判からなのかポランスキーのネームバリューからなのか、かなりのお客さんが入っていました。テレビ映画からもどんどんサスペンス映画が減ってきていますが、やっぱり面白いサスペンスには需要があるんですね。大変嬉しい限りです。
わりと静かな陰謀サスペンス
本作はゴーストライターとして首相の近くで働くこととなった男が、前任者の謎の死を興味本位で調べて行くうちに恐るべき陰謀に巻き込まれてしまうという陰謀サスペンスです。あっけらかんとした元首相アダムにその愛人とおぼしき秘書のアメリア。それに不満で冷め切っているアダムの妻・ルース。そして政敵のライカート。たったこれだけの主要キャストながら、主人公が興味本位で首を突っ込んでしまったばっかりに発覚する事実はイングランドの政治に大きく関わる重要な陰謀です。
本作は起こることの重要性に反してとても静かに進んで行きます。主人公が実際にやることと言えば前任者の部屋で秘密の書類を見つけてしまうことと、そしてたまたま乗った前任者の車のカーナビでその足取りを追ってしまうことぐらいです。「介入型サスペンス」でありながらも 限りなく「巻こまれ型」に近い展開を見せます。
そうです。本作の素晴らしい所は、主人公はあくまでも一市民であり、終始ただのしがないゴーストライターなんです。何か驚異的な能力を発揮するわけでもなければ、特別な立場にあるわけでもありません。「たまたま」がどんどん重なっていって、 しまいには国家を揺るがす陰謀と向き合うこととなってしまいます。その過程の好奇心と戸惑いがあまりにも普通かつ下世話すぎて、どうしようもなく見ている人間の興味を惹きつけます。本当によくできたサスペンスです。
そもそもアダム・ラングってブレア元首相のパロディ、、、。
下世話という意味ではここを外すわけには行きません。本作のラングは実在のイギリス首相トニー・ブレアをパロっています。実際にブレアは「テロとの戦い」を前面に出して米国の完全追従を打ち出し当時は「ブッシュの飼い犬」とまで言われていました。イギリスの左翼に言わせればそれがロンドン同時爆破テロにつながって行くわけです。 ブレアの良し悪しは置いておくとしても、前首相のほとんど悪口に近いネタを 使って陰謀サスペンスを作れるというところが、イギリスの懐の深さというか、エンターテイメントのアコギなところです。まぁポランスキーは少女強姦罪で指名手配中で米国から34年間も逃亡してる身ですので、そりゃアメリカが嫌いなのは当然ですけど。
【まとめ】
大変愉快なサスペンス映画です。あくまでも無力な主人公を通じて、ちょっとした正義感と野次馬根性を出してしまったがばっかりに巻き込まれる大き過ぎる陰謀に終始ドキドキしっぱなしです。間違いなく映画界トップクラスのポランスキーの演出とユアン・マクレガーの良い人すぎる困り顔を是非是非劇場でご覧ください。万人に受ける必見の作品です。
オススメです!!!
いや~今週は超豊作です。