本日も二本観てきました。一本目は
新作3D映画「スパイアニマル・Gフォース」です。
評価:
– 「可愛いだけじゃダメかしら?」「はい。ダメです。」【あらすじ】
FBIのベンは独自に動物をスパイ要員として育てるプロジェクトを立ち上げていた。しかし、FBI本部は研究費の削減を理由にプロジェクトの廃止を決定する。なんとか実績を上げてプロジェクト存続を狙うベンは、かねてよりFBIが目をつけていたセーバリング・テクノロジーのCEO・レオナルド=セーバー邸への潜入ミッションを計画する。実戦部隊は三匹のモルモットと一匹のモグラとハエ。こうしてGフォースの初ミッションが始まった。
【三幕構成】
第1幕 -> Gフォースの初ミッション。
※第1ターニングポイント -> Gフォースが研究室を追われる。
第2幕 -> ペットショップからの脱出。
※第2ターニングポイント -> ベンの元に合流する。
第3幕 -> セーバー邸への再突入。
【感想】
本日の一本目は「スパイアニマル・Gフォース」です。本当はワーナー・マイカルMMのRealDで見るつもりだったのですが寝過ごしてしまいまして、ブルク13のXpanDで見ました。観客は圧倒的に子供連れが多く、入りは6割といったところでしょうか? そういえば、そろそろ春休みが始まってるんでしょうかね。子供が多かった割には本編上映中はおとなしかったので、子供達はきっと集中して楽しんでいたと思います。
しかしですね、、、本作を子供連れで見に行くのは正直どうなんでしょうか? その理由を述べたいと思います。
本作の立ち位置と難点
本作は人間の言葉が話せるモルモットが活躍する戦隊ヒーローものです。「モンスターズ・インク」と「ボルト」で完全に確立された「動物の毛並みの表現」をフルに使用したモルモットは本当に可愛いです。ラブリーです。そして敵は家電業界のトップ。世界滅亡を企むテロリストとしてFBIが数年来マークしていたそうで、そこにGフォースが突入します。話の構図の単純さやルックスを見るにつけ、完全に子供連れファミリーをターゲットにしています。子供向けの勢い重視の作品で脚本の穴を指摘するのはヤボだと思いますが、しかし本作を私は子供騙しの酷い駄作だと思います。
まず、話に一切驚きや興奮がありません。スパイの大味ヒーローものというと真っ先に「ミッション・インポッシブル」が浮かびますが、あの作品で描かれていたようなハラハラドキドキのシチュエーションが一切ありません。「ミッション・インポッシブル」も決して褒められた作品では無いですが、それでも一時的なサスペンス・シチュエーションだけは作っていました。そういったハラハラが無いので、そもそもGフォースの活躍が良く分からないという事態になっています。
本作の倫理的な問題点
次に、本作の抱える倫理的な問題です。私が見る限り、許し難い問題点が3点あります。
1点目は途中でダーウィンが自信を無くすシーンです。彼は自分が遺伝子操作をされておらず、普通のモルモットだということにショックを受けます。そして、そこから立ち直る理由が「僕はエリートだから」なんですね。はぁ!!!???? 挙げ句の果てには「僕はペットショップのモルモットとは違う。訓練を積んだスペシャルなモルモットだ!!」とか言い出すわけです。これって素直に「僕は努力をしたから出来るはずだ」って言わせれば済むことなんです。なんでそんな差別的な表現をするんでしょうか? しかも肝心の努力をするシーンが全然映らないものですから、まったくのお笑い草です。
2点目は、ハムスターとフェレットの合いの子を「合いの子だから(純血じゃないから)」という理由で主人公・ダーウィンがいじめる描写です。しかも謝らない。それどころか、その合いの子が実は嫌な奴だというエクスキューズまで後からつけるんです。合いの子をいじめるのはOKなの? 合いの子って根性ひねくれるものなの? それってナチスに通じる純血主義そのものですよ。他民族国家アメリカでは一番センシティブな話題のはずです。もしやアメリカでは、父親が黒人で母親が白人だといじめてOKみたいな裏ルールでもあるんでしょうか?
3点目は、勧善懲悪のフォーマットがボロボロだという点です。今回の黒幕は「両親を人間に殺された」恨みをはらすために人間を皆殺しにする計画を立てます。そして実際に実行に移すのですが、ダーウィンの説得にあっさり応じて計画を緊急停止します。そして罰として自分の作った兵器の後片付けを命じられます。
まず、この緊急停止までにかなり時間があるため、作品内の描写の威力であれば間違いなく何(百)人かは死んでます。人が死んでいるのに後片付け程度で済んで良いのかというのが引っかかります。さらに、そもそも根本的な問題である「黒幕の両親が人間に殺された件」が完全にスルーされています。それは落とし前つけないとダメじゃないですか? 殺した人間が謝るでも良いし、今後殺さないようなルールや工夫ができるでもいいし、何かしら回収するべきです。ものっすごい人命軽視です。
【まとめ】
本作は話が単調でつまらないという以上に、倫理的に問題がありすぎます。可愛ければ/格好良ければなんでもOKという酷いスタンスです。もしあなたが子供連れの親御さんだとして、子供にこういう思想を持って欲しいですか? 「いじめ上等。」「人間は見た目が全て。」「人を殺してもせいぜい数年刑務所に入るだけならいいじゃん。」等々。もしこれがOKということであれば、いますぐお子さんを連れて劇場に行きましょう!! オススメです!!!
本作のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーの親はナチスから逃げてアメリカに来たユダヤ移民なんですが、本当にこれでいいんですかね? 「ブラックホーク・ダウン」でもソマリアの黒人をゾンビのように描いていましたし、ちょっとブラッカイマーはファミリー映画をやらせるには思想に問題がありすぎるように思えるんですが、、、。